JP4270651B2 - 化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は基材の表面に、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層を有する化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化粧材は、基材に印刷、塗装、凹凸の付与等を行なうことにより装飾を施したものであり、建築物の内外の仕上げや、間仕切り材、家具の素材等に使用されている。化粧材の基材としては、木の板、金属板、スレート板等の板状のものや、紙、プラスチックフィルム等のシート状のものが、用途によって使い分けられているが、印刷により模様を付与する際には、シート状のものを対象とした方が印刷効果が上がり、また、板のようにかさばらないため、シート状のものを使用することが多い。
ここで使用する化粧材の用語は、基材として板状のものを使用した化粧板、およびシート状のものを使用した化粧シートの両方の意味を含むものとする。
【0003】
装飾を施して化粧材を製造する際には、最表面を塗装して、いわゆる濡れ色を生じさせて装飾を明瞭に見せ、また、塗装の膜厚によって生じる奥行き感(=深み)を与え、併せて、表面の物理的、および化学的性状を向上させることが行なわれている。
従来、化粧材には、表面等を構成する樹脂の種類やそれに伴なう製造方法の違いにより様々なものが知られていて、例えば、フェノール樹脂含浸紙等を数枚重ねた上に、メラミン樹脂を含浸させた印刷紙や透明紙を重ね、熱プレスにより加熱および加圧して得られる高圧メラミン化粧板があり、表面の物理的、および化学的性状が極めて優れている。
【0004】
しかし、高圧メラミン化粧板の製造には、熱プレスを使用するため、製造が間欠的になり、連続生産が難しい。加えて、高圧メラミン化粧板は、木の板や金属板等に貼る必要があった。
そこで、印刷紙の表面に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線または電子線を照射して表面保護層を形成したものを、接着剤を使用して連続的なラミネータで貼ることにより、製造効率のよい化粧板が作られるようになり、特に、電子線を照射して硬化させたものは、電子線が塗膜に深く浸透するため、性能が優れたものが得られる特徴がある。
【0005】
しかしながら、実際に電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて化粧材を製造して使用して見ると、確かに表面の物理的、および化学的性状が優れているものの、新たな欠点が生じた。
一つはテープ剥離試験に対する耐久性(=耐セロハンテープ性)が乏しい点と、もう一つは表面のすべりが悪い点である。従来の化粧材において行なわれていたように、シリコーンの添加を検討し、電離放射線硬化性樹脂組成物と反応し得るシリコーンを添加することにより、テープ剥離試験に対する耐久性は解消され、残る表面のすべりが悪い点は、電離放射線硬化性樹脂組成物と反応し得るシリコーンの添加によっては解消せず、製造中やハンドリングの際に傷がつきやすい原因となっていたが、シリコーンオイルを併用することで一応の解決を見た。
【0006】
しかしながら、シリコーンやシリコーンオイルは離型剤であるため、電離放射線硬化性樹脂組成物と下層との接着性を低下させ、基材との接着性、あるいは基材上には模様層が形成されていることが普通だが、その場合には模様層との接着性を低下させるものである。
またこれとは別に、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜をなるべく表面に止めて、基材への電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透を抑制して塗膜の厚みの低下を防ぎ、使用する電離放射線硬化性樹脂組成物の量を過大にしないことが望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、上記の従来の化粧材において、電離放射線硬化性樹脂組成物を使用して形成した表面保護層と下層の接着性が向上し、また、電離放射線硬化性樹脂組成物が表面に止まって、表面保護層が十分な厚みを有する化粧材を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決する手段】
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物の下層との接着性の向上と下層への浸透の抑制の機能を持つプライマー層を、耐油性樹脂で構成することにより、あるいはさらにポリウレタン樹脂とで構成することにより、上記の課題を解決することができた。
【0009】
第1の発明は、基材の表面に、プライマー層を介して電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層が積層されており、前記プライマー層が、耐油性樹脂からなるものであり、
前記表面保護層が、シリコーンオイルと両末端、片方の末端、側鎖にメタクリル基を有するシリコーンを含有することを特徴とする化粧材に関するものである。第2の発明は、第1の発明において、前記プライマー層が、耐油性樹脂およびポリウレタン樹脂からなるものであることを特徴とする化粧材に関するものである。第3の発明は、第1または第2の発明において、前記耐油性樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする化粧材関するものである。
第4の発明は第1〜第3のいずれかの発明において、前記塗膜層は、艶消し性であることを特徴とする化粧材に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧材の例を図1を引用しながら説明すると、化粧材1は、例えば、基材2上に一様均一な着色層3が積層され、着色層3上には模様層4が積層され、模様層4上には、プライマー層5が積層され、プライマー層5上には、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したものからなっていて、かつ艶消し性の表面保護層6が積層された積層構造を有するものであって、特に、プライマー層5が少なくとも耐油性樹脂から、好ましくはさらにポリウレタン樹脂とからなっているものである。
【0011】
基材2として使用可能な素材は、大別すれば、各種の紙類、プラスチックフィルム又はプラスチックシート、金属箔、金属シート、又は金属板、木材などの木質系の板、各種の窯業系素材等の各群である。
これら各群に含まれる素材は単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラチスチックフィルムの複合体等、これら素材の任意の組合わせによる積層体も利用できる。基材2は色彩を整える意味で塗装を施されていたり、デザイン的な観点で通常の模様が予め形成されていたものであってもよい。塗装や通常の模様形成に先立って表面が平滑化されていたり、模様の密着度を上げるために、必要に応じて、接着性を向上させるために、コロナ放電処理等の物理的な処理のほか、プライマー層を形成する等の処理を行なってもよい。塗装や通常の模様形成後にも、後の加工を容易にするための接着性改善処理を施してあっても差し支えない。
【0012】
素材の各群の各々について説明すると、各種の紙類としては、以下のものが代表的なものとして例示される。即ち、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、予め紙間の強化の目的で樹脂を含侵してある樹脂含浸紙も使用できる。これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い一群の原反が挙げられる。
更には、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられる次の紙類も使用可能である。即ち、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等である。
又、以上の紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ次のような各種繊維の織布や不織布も基材2として使用できる。各種繊維とは即ち、ガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成繊維である。
【0013】
プラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、次に例示するような各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。各種の合成樹脂とは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等である。
【0014】
金属箔、金属シート、又は金属板としては、次のような金属ないし合金、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、真鍮、または銅等からなるものがある。他の金属や合金も原則的には使用できるが、比較的まれである。しばしば防錆等の目的でめっき等を施して使用することがある。
各種の木質系の板としては、木材の板、合板、パーチクルボード、またはMDFと呼ばれる中密度繊維板等が挙げられる。
窯業系素材としては、石膏ボード、珪酸カルシウム板、石綿スレート板、または木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、ホウロウ、焼成タイル等が例示される。これらの他、繊維強化プラスチックの板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂をサンドウィッチしたもの等、素材の各群に挙げた各種の素材の複合体も基材2として使用できる。
【0015】
着色層3と模様層4は、いずれも基材2に装飾性をもたらすものである。
着色層3の役割は、特に基材2上の表面の色を整えることにある。基材2自身が着色していたり、色ムラがあるときに、基材2の表面に意図した色彩を与えるのがこの着色層3である。不透明色で形成してあることが多いが、着色した透明色で形成したものもあり、下地が持っている模様を活かす場合、例えば、整った美しい木目の板、いわる銘木の場合によく見られる。
本やポスター等を造る際の紙への印刷では、白色の紙を使用することが多く、印刷濃度の薄い部分や網点が小さくてまばらな部分では、白色の下地が見えることによりハイライト部を形成するので、むしろ、着色層3は形成しないので、着色層3は省かれることもある。
通常、着色層3はベタ層(=一様均一な層)として形成される。
【0016】
模様層4は基材2に装飾性を与える重要な層であって、種々の模様を印刷用インキと印刷機を使用して印刷することにより形成されたものである。
模様層4の模様は、デザイン的な要素で決めるものなので、自由に決めてよいが、比較的大量に生産される製品においては、汎用性の高い模様が使われることが多い。例えば、木目模様、大理石模様等の岩石の表面を模した模様、布目や布上の模様を模した布地模様、もしくはタイル模様等や花や花の束を等間隔で並べた花模様等もよく使われる。また、基本的には以上のような模様であるが、これらの模様を複合した寄木、パッチワークによる模様もある。汎用性の高い以上の模様は、既に自然界等に存在するものをベースとするが、かなり自由な発想により作り変えたものであることが多いが、全く、人為的にデザインされた模様も使用できる。
更には、上記した模様を素材として、拡大・縮小、回転、切り抜き、繰り返し、合成、特徴点の抽出ないし間引き、またはデフォルメ等の手法を単独または組み合わせて使用し、新たに創出された模様も使用できる。
これらの模様は、単色印刷で形成されることもあるが、一般的には、プロセスカラー(赤、青、黄、および黒)による分色版の重ね刷りによって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行なう特色による重ね刷りによっても形成される。
【0017】
着色層3および模様層4は、通常は、互いにほぼ同様の塗料組成物またはインキ組成物を使用して形成されたものである。
使用する塗料組成物またはインキ組成物中の樹脂成分としては熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂が適している。
熱可塑性樹脂としては、ロジン変成マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン、またはアクリル樹脂等がある。
熱硬化性樹脂としては、種々のものがあり、原則的にいずれも使用できるが、本発明の大半を占めるシート状の化粧材においては、シートのフレキシビリティーを維持する意味で、熱硬化性樹脂としても、フレキシビリティーを有するものが望ましく、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等、特にポリウレタン樹脂が好ましい。
【0018】
電離放射線硬化性樹脂(電離放射線照射により架橋硬化する皮膜形成性成分を指し、高分子でないモノマーまたはオリゴマーも含める。)としては、分子中に重合性不飽和結合または、エポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜に混合したものを用いる。
電離放射線硬化性樹脂組成物中のプレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物中のモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置換の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等が挙げられる。
【0019】
通常、電離放射線硬化性樹脂組成物中のモノマーとしては、以上の化合物を必要に応じて1種若しくは2種以上を混合して用いるが、電離放射線硬化性樹脂組成物に通常の塗布適性を与えるために、前記のプレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/又はポリチオール化合物を95重量%以下とするのが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーが要求されるときは、モノマー量を減らすか、官能基の数が1又は2のアクリレートモノマーを使用するとよい。電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときの耐摩耗性、耐熱性、耐溶剤性が要求されるときは、官能基の数が3つ以上のアクリレートモノマーを使う等、電離放射線硬化性樹脂組成物の設計が可能である。ここで、官能基が1のものとして、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが挙げられる。官能基が2のものとして、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。官能基が3以上のものとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクレリート等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーや表面硬度等の物性を調整するため、電離放射線硬化性樹脂組成物に、電離放射線照射では硬化しない樹脂を添加することもできる。具体的な樹脂の例としては次のものがある。ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂である。中でも、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の添加がフレキシビリティーの向上の点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布後の硬化が紫外線照射により行われるときは、光重合開始剤や光重合促進剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いる。光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部である。
【0020】
上記の樹脂成分には、着色剤として顔料や染料、その他の添加剤、溶剤、希釈剤等を添加し、混練して塗料組成物またはインキ組成物が調製される。
着色層3または模様層4の形成は、上記の塗料組成物またはインキ組成物を使用して、公知の塗装方法ないし印刷方法により行なう。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング等の塗装方法、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、またはスクリーン印刷等の印刷方法である。
乾燥はこれらの手法を実施する際に使用するコーティングの機械または印刷の機械に付属している乾燥手段を利用して行なえばよいが、熱硬化性の樹脂成分を使用するときは、上記乾燥手段による加熱、コーティング後または印刷後に行なう比較的低い温度での長時間加温もしくは常温での放置により行ない、電離放射線硬化性の樹脂成分を使用するときは、紫外線または電子線の照射を行なう。
【0021】
本発明の化粧材においては、着色層3を伴なうか伴なわないで模様層4を有するか、あるいは着色層3、模様層4のいずれも伴なわずに、基材上2に、プライマー層5が積層され、プライマー層5上に、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した艶消し性の表面保護層6が積層されている。
【0022】
先にも説明したように、最上層の表面保護層6には、その表面のテープ剥離試験に対する耐久性を向上させるために添加するシリコーンと、表面のすべり性を改善するために添加するシリコーンオイルとが添加されていることから、表面保護層7と下層との接着性が不十分になりやすい点を解消し、また、表面保護層7を形成する際に電離放射線硬化性樹脂組成物の下層への浸透を抑制して塗膜をなるべく表面に止め、塗膜の厚みの低下を防ぎ、使用する電離放射線硬化性樹脂組成物の量を過大にしないことを目的とするものである。
プライマー層5は、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布の際に、実質上、電離放射線硬化性樹脂組成物に溶解しないことが望ましいので、耐油性樹脂、言い換えればアルコールや水に可溶である、比較的極性の高い樹脂の皮膜とすることが望ましく、そのような樹脂としては、具体的にはポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、あるいは各種のアクリル樹脂等が好適である。
これらの耐油性樹脂には、下層および上層との接着性を向上させる意味で、濡れ性のよいポリウレタン樹脂を添加して使用することが望ましい。
上記において、アクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の汎用されているものが使用可能であるが、これら以外のアクリル樹脂でもよい。
さらに又、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を加えるだけでなく、ポリウレタン樹脂等に電離放射線硬化性のプレポリマー又はオリゴマー、若しくはモノマーを加えてもよい。例えば、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールのポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネートからなる熱硬化性成分に対し、不飽和ポリエステル等の電離放射線硬化性のプレポリマー又はオリゴマーを加える。電離放射線硬化性のプレポリマー又はオリゴマー、若しくはモノマーについては、前記した着色層3および模様層4を形成するための塗料組成物またはインキ組成物中の樹脂成分として挙げたものと同様である。
【0023】
プライマー層5を形成するための塗料組成物ないしインキ組成物は、上記の樹脂成分に、必要に応じて、着色剤として顔料や染料、その他の添加剤、溶剤、希釈剤等を添加し、混練して調製され、プライマー層5の形成は公知の塗装方法ないし印刷方法により行なう。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング等の塗装方法、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、またはスクリーン印刷等の印刷方法である。
プライマー層5にはシリカ等の充填剤からなる艶消し剤を添加しておき、表面保護層には充填剤を添加せずに化粧材を構成すると、表面の艶の調整ができて、しかも表面保護層6により被覆されるので、充填剤を添加したことによる欠点が表面保護層6に生じない化粧材とすることができる。勿論、艶消し剤は、最上層の表面保護層6に添加してもよい。
プライマー層5を形成する際の乾燥はこれらの手法を実施する際に使用するコーティングの機械または印刷の機械に付属している乾燥手段を利用して行なえばよいが、熱硬化性の樹脂成分を使用するときは、上記乾燥手段による加熱、コーティング後または印刷後に行なう比較的低い温度での長時間加温もしくは常温での放置により行ない、電離放射線硬化性の樹脂成分を使用するときは、紫外線または電子線の照射を行なう。
プライマー層5は、厚い必要は必ずしもないが、過度に薄いと、塗布ムラによるプライマー効果が低下し、また、コーティング抜けや印刷抜けも発生し得るので、好ましくは2回以上塗布または印刷して、厚み1〜10μm程度とするのがよい。
【0024】
表面保護層6は、本発明の化粧材の最表面に被覆されたものであり、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したものである。表面保護層6を形成するための素材は、今までの説明で出てきたものと同様であり、さらに、シリコーンオイルに加えて、好ましくはシリコーンを含有している。
表面保護層6に含有させるシリコーンとしては、両末端、片方の末端、もしくは側鎖にメタクリル基もしくはアクリロイル基を有するシリコーンが好ましく、中でも、両末端にメタクリル基を有するシリコーンが耐セロハンテープ性が高く、好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物に必要に応じて、着色剤として顔料や染料、その他の添加剤、溶剤、希釈剤等を添加し、混練して調製された塗料組成物またはインキ組成物を使用し、公知の塗装方法ないし印刷方法、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング等の塗装方法、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、またはスクリーン印刷等の印刷方法によって表面保護層6を形成する。
表面保護層6には、化粧材の表面のつや調整するため、充填剤を添加して艶消し性としてもよく、無機または有機の公知の充填剤を使用することができる。表面保護層6を形成するための塗料組成物中における分散安定性や得られる表面保護層6の表面の性状が優れている点で、粒径1〜5μmのシリカが好ましい。
表面保護層6の厚みは、表面保護の目的からすれば、厚い方がよいが、要求される性能、経済性、基材がシート状である場合に必要なフレキシビリティー等の観点から、基材がシート状であれば、2〜10μmが好ましく、基材が板状であれば、5〜100μm程度が好ましい。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
薄葉紙(三興製紙(株)製、FLEX30、厚み30μm)にアクリル樹脂/ニトロセルロース樹脂=2/1(重量比)をバインダーとするグラビアインキ(ザ・インクテック(株)製、HAT)を用い、グラビア印刷により、着色ベタ層と模様層を順に形成した。
続いて、プライマー層形成用組成物((株)昭和インク工業所製、BUBプライマー2液)を用い、線数54線(1インチあたり)のグラビアベタ版を2版使用したグラビア印刷を行なって厚み2μmのプライマー層を形成した。ただし、プライマー層形成用組成物としては、主剤がポリビニルブチラール樹脂/アクリルポリオール樹脂/シリカ=10/5/1(重量比)で、これらを溶剤で溶解および希釈したものを使用し、硬化剤はトリレンジイソシアネートであり、主剤/硬化剤=100/5の割合で配合した。
プライマー層上に、電子線硬化型塗料(大日精化(株)製、EBM5000)をグラビア印刷により塗布量が5g/m2 になるよう塗布し、塗布後、印加電圧175KV、照射線量3Mradの電子線を照射して、塗料を硬化させ、化粧シートを得た。ただし、電子線硬化型塗料としては、アクリレートモノマー/シリカ(粒径4〜5μm)/シリコーンアクリレート(両末端メタクリル基)/シリコーンオイル=100/15/3/3のものを使用した。
【0026】
(実施例2)
電子線硬化型塗料中のシリカの重量比を5とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0027】
(実施例3)
電子線硬化型塗料中のシリコーンアクリレートとシリコーンオイルの重量比をいずれも2とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0028】
(比較例1)
電子線硬化型塗料として、シリコーンオイルを添加しないものを使用した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0029】
(比較例2)
電子線硬化型塗料として、シリコーンアクリレートを添加しないものを使用した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0030】
(比較例3)
シリコーンアクリレートとして両末端アクリロイル基のものを使用した以外は実施例1と同様に行なった。
【0031】
(比較例4)
プライマー層を形成しない以外は実施例1と同様に行なった。
(実施例および比較例の化粧シートの評価)
上記の実施例1〜3、および比較例1〜3で得られた木目化粧シートを次のようにして評価した結果を「表1」に示す。評価項目および評価方法は次のとおりである。
▲1▼動摩擦係数;摩擦係数測定試験機として、米国IMASS社製のSlip/Peel Tester SP−102C−3M90を使用して測定した。
大体、60以下であれば、表面のすべりについては問題ない。数値が小さい程、すべりは良くなるが、30未満になると、多少すべり過ぎのきらいがあり、このような表面の動摩擦係数を持つ化粧板を重ねたときに、すべりによる荷崩れが発生することがあるので、より好ましくは30〜60の範囲になるよう調整するとよい。
▲2▼表面グロス;米国ガードナー社製の75°グロス計で測定した。
▲3▼耐セロハンテープ性;表面にセロハンテープを貼り、90°の方向への急激な剥離を5回繰り返すし、化粧材の表面層等の剥離の有無を観察した。表面保護層の剥離が見られたものを×、見られなかったものを○とする。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
第1の発明によれば、プライマー層として耐油性樹脂からなるものを形成してあるので、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層が十分な厚みを有した化粧材を提供できる。第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、プライマー層にさらにポリウレタン樹脂が表面保護層と下層との接着性が向上した化粧材を提供できる。第4の発明によれば、第1〜第3いずれかの発明の効果に加え、表面の艶が消えた落ちついた感じの化粧材を提供できる。第5の発明によれば、第1〜第4いずれかの発明の効果に加え、模様層が積層されているために外観の意匠が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧材の実施例の断面図である。
【符号の説明】
1 化粧材
2 基材
3 着色層
4 模様層
5 プライマー層
6 表面保護層
Claims (4)
- 基材の表面に、プライマー層を介して電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層が積層されており、前記プライマー層が、耐油性樹脂からなるものであり、
前記表面保護層が、シリコーンオイルと両末端、片方の末端、側鎖にメタクリル基を有するシリコーンを含有することを特徴とする化粧材。 - 前記プライマー層が、耐油性樹脂およびポリウレタン樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1記載の化粧材。
- 前記耐油性樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする請求項1〜2に記載の化粧材。
- 表面保護層は、充填剤を含んで、艶消し性であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の化粧材。
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