JP4417474B2 - 化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は表面に模様が形成され、模様に応じた艶差もしくは凹部を有することにより凹凸感を有し、かつ模様を含めた表面の耐久性が優れた化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化粧材は、基材に印刷、塗装、凹凸の付与等を行なって得られるものであり、建築物の内外の仕上げや、家具の素材等に使用されている。基材としては、木の板、金属板、スレート板等の板状のものや、紙、プラスチックフィルム等のシート状のものが、用途によって使い分けられている。
印刷により模様の付与を行なう際には、後者のシート状である基材に印刷した方が印刷効果が上がり、また、シート状の基材の方が大量に扱っても、板のようにかさばらないため、シート状の基材を使用することが多い。ここで使用する化粧材の用語には、板状の基材を使用した化粧板、およびシート状の基材を使用した化粧シートの両方の意味を含めるものとする。
【0003】
化粧材の製造法においては、質感の付与も重要であり、そのため、模様の特定の部分に合わせて艶消しや凹凸を付与する方法が種々提案されており、これらの方法を利用することで、よりリアルな化粧材が得られる。
例えば、特公昭51−41364号公報には、艶差のある表面を持った木目化粧材の製造法として、任意の基体シート上に、粒状固形分の含有量を順次に増加させた3種類以上のインキを調製して、粒状固形分の少ない方から順に、木目の冬目模様、夏目模様、および導管模様を形成した後、全面に表面保護層を設けることにより、艶差のある表面を持った木目化粧材を得ることが開示してある。
ただ、上記公報に開示されている製造法においては、表面保護層形成用として硬化型のポリウレタン樹脂を使用しているものの、模様を形成するためのインキとしては、ニトロセルロースアルキッド樹脂やポリアミド樹脂をバインダーとするものを使用している程度であって、絵柄を含めた耐溶剤性についての考慮がなされていない。このように格別、耐溶剤性についての考慮がなされていない場合には、溶剤をしみ込ませた布等で拭くと、最表面から各層が次第に取り除かれると、やがては露出した模様が消失してしまう恐れがある。
また、従来から、シリコーン等の撥液性を利用して、撥液性模様を形成しておき、その上に塗装を行なうことにより、部分的に表面保護層形成用の塗料をはじかせて、凹部を形成することも行なわれている。このケースでは凹部の際の耐溶剤性、耐汚染性が低いことが知られている。
化粧材の分野においては、種々の物理的、または化学的な要求性能があるが、模様が消失してしまうと、基体シートが残っていたとしても、対象物に貼って、表面を化粧するという化粧材の本来的な機能を果たさなくなる。
このほか、化粧材においては、使用条件に合った表面の耐摩耗性も必要で、不足すると模様が速く消失するし、層間強度等も化粧の維持という点では重要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、上記の従来技術を踏まえ、表面に凹凸感を形成した化粧材において、耐溶剤性、耐摩耗性、あるいは層間強度の優れた化粧材を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明においては、得られる化粧材の表面の物理的、化学的性状の優れた電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて表面保護層を形成するが、電離放射線硬化性樹脂組成物の下層に、電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が良く、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な塗膜層を有し、その上に、電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が低い模様を形成するか、あるいは、電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性を抑制する、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な塗膜層を有し、その上に電離放射線硬化性樹脂組成物をはじく性質のある撥液性模様を形成することにより、課題を解決することができた。
【0006】
第1の発明は、基材の表面に、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層を有しており、前記基材と前記表面保護層との間に、基材側より、OH基を有している樹脂とイソシアネート化合物で架橋させる硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる一様均一な塗膜層、および硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる前記電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が前記塗膜層よりも低い模様層とが順に積層されていることを特徴とする化粧材に関するものである。第2の発明は、第1の発明において、前記OH基を有している樹脂がポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする請求項1記載の化粧材に関するものである。第3の発明は、第1の発明において、前記硬化性樹脂がOH基を有している樹脂とイソシアネート化合物で架橋させる2液硬化型ウレタンとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合物であることを特徴とする化粧材に関するものである。第4の発明は、基材の表面に、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層を有しており、前記基材と前記表面保護層との間に、基材側より、OH基を有している樹脂とイソシアネート化合物で架橋させる硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる一様均一な塗膜層、および前記電離放射線硬化性樹脂組成物をはじく性質のある撥液性模様層とを順に有していることを特徴とする化粧材に関するものである。第5の発明は、第4の発明において、前記塗膜層が、ポリエステルポリオールに、イソシアネートを加えて多官能モノマーが配合された硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる一様均一な塗膜層であることを特徴とする化粧材に関するものである。第6の発明は、第1〜第5のいずれかの発明において、前記塗膜層が、充填剤が配合され、且つ、該充填剤が樹脂成分100重量部に対して10〜200重量部添加されていることを特徴とする化粧材に関するものである。第7の発明は、第1〜第6のいずれかの発明において、前記塗膜層は、艶消し性であることを特徴とする化粧材に関するものである。第7の発明は、第1〜第6のいずれかの発明において、前記塗膜層は、艶消し性であることを特徴とする化粧材に関するものである。第8の発明は、第1〜第7のいずれかの発明において、前記基材は、別の模様層が表面に積層されたものであることを特徴とする化粧材に関するものである。第9の発明は、第1〜第7のいずれかの発明において、前記基材は、一様均一な着色層と別の模様層とがこの順に積層されているものであることを特徴とする化粧材に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧材の典型的な構造を図1および図2を引用して説明する。
まず、図1は、表面の保護層が、下層の浸透性の差により、その形成時に艶差を生じるタイプであって、化粧材1においては、基材2上に一様均一な着色層3が積層され、着色層3上に模様層4が積層されており、模様層4上には、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な塗膜層5が積層され、さらにその上に、下層の塗膜層5よりも電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が低い、硬化性樹脂が架橋硬化した模様層6が塗膜層5の露出部を残して積層されていて、最上層には、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層7が全面を覆って積層されている。そして、表面保護層7の上面の、下層の模様層6による塗膜層5の露出部に応じた位置には、電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透により生じた、艶が相対的に消えた艶消部8を有している。
【0008】
次に図2は、表面の保護層が、下層の表面の撥液性の有無により、その形成時に凹凸を生じるタイプであって、化粧材1’は、基材2、一様均一な着色層3、模様層4、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な塗膜層5を有している点は、図1に示すものと共通点を有するが、異なる点は、塗膜層5の上には、撥液性模様9が積層されていて、最上層に電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層7が全面を覆って積層されていることである。そして、これらの相違に基づくのであるが、表面保護層7の上面の、下層の撥液性模様9上に相当する位置には、電離放射線硬化性樹脂組成物がその塗布時にはじかれて生じた凹部8’を有している。
【0009】
以下に、図1に示すような、下層の浸透性の差により、その形成時に艶差を生じるタイプについて説明し、次いで、図2に示すような、下層の表面の撥液性の有無により、その形成時に凹凸を生じるタイプについて説明する。
【0010】
基材2としては、通常、化粧材に用いられている素材であれば、いずれも使用可能であり、大別すれば、各種の紙類、プラスチックフィルム又はプラスチックシート、金属箔、金属シート、又は金属板、木材などの木質系の板、各種の窯業系素材等の各群である。
これら各群に含まれる素材は単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラチスチックフィルムの複合体等、これら素材の任意の組合わせによる積層体も利用できる。これらの基体は、色彩を整える意味で塗装を施されていたり、デザイン的な観点で通常の模様が予め形成されていてもよい。塗装や通常の模様形成に先立って表面が平滑化されていたり、模様の密着度を上げるために、必要に応じて、接着性を向上させるために、コロナ放電処理等の物理的な処理のほか、プライマー層を形成する等の処理を行なってもよい。塗装や通常の模様形成後にも、後の加工を容易にするための接着性改善処理を施して差し支えない。
【0011】
各種の紙類としては、以下のものが代表的なものとして例示される。即ち、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、予め紙間の強化の目的で樹脂を含侵してある樹脂含浸紙も使用できる。これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い一群の原反が挙げられる。更には、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられる次の紙類も使用可能である。即ち、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等である。又、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ次のような各種繊維の織布や不織布も基材2として使用できる。各種繊維とは即ち、ガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成繊維である。
【0012】
プラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、次に例示するような各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。各種の合成樹脂とは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等である。
【0013】
金属箔、金属シート、又は金属板としては次に例示するような金属からなるものである。即ち、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等である。しばしばめっき等を施して使用することがある。各種の木質系の板としては、木材の板、合板、パーチクルボード、又はMDFと呼ばれる中密度繊維板等が挙げられる。窯業系素材としては、石膏ボード、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、ホウロウ、焼成タイル等が例示される。これらの他、繊維強化プラスチックの板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂をサンドウィッチしたもの等、各種の素材の複合体も基材2として使用できる。
【0014】
一様均一な着色層3と模様層4とは、いずれも基材2に装飾性をもたらす手段である。
着色層3の役割は、基材2上の表面の色を整えることで、基材2自身が着色していたり、色ムラがあるときに形成して、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。不透明色で形成してあることが多いが、着色した透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。
本やポスター等を造る際の印刷では、対象となるのは紙であり、それらの紙は多少の相違はあっても、いずれも白色であるものが多く、印刷濃度の薄い部分では、白色の下地が見えて、ハイライト部を形成するのて、むしろ、着色層3は形成しない。一般的に言って、基材2が白色であることを活かす場合や、基材2自身が適切に着色されているか、または自身がもともと着色している場合には、着色層3の形成は省略できる。
【0015】
模様層4は基材2に装飾性を与える主要な手段である。種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成されたものである。
模様としては、木目模様、大理石模様等の岩石の表面を模した模様、布目や布上の模様を模した布地模様、もしくはタイル模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は、既に存在するものをベースとするが、かなり自由な発想により作り変えたものである。あるいは、人為的にデザインされた模様も使用できる。更には、上記した模様から出発して、これを素材として、拡大・縮小、回転、切り抜き、繰り返し、合成、特徴点の抽出もしくは間引き、またはデフォルメ等を単独または組み合わせて使用し、新たな模様を創出することもできる。
これらの模様は通常のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行なう特色による多色印刷等によっても形成される。
なお、本発明の化粧材においては、表面保護層7の艶消部8または凹部8’により、化粧を施すことができるので、着色層3または模様層4のいずれかがあればよく、着色層3および模様層4の両方を省くこともできる。
【0016】
着色層3および模様層4は、互いにほぼ同様の塗料組成物またはインキ組成物を使用して形成することができる。
使用する塗料組成物またはインキ組成物中の樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性または電離放射線硬化性のもののいずれも適しているが、熱可塑性樹脂のバインダーを使用して作成した化粧材でも、通常の使用であれば十分な物性を発揮することができる。
熱可塑性樹脂としては、ロジン変成マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、もしくはスチレンマレイン樹脂等が使用できる。
熱硬化性樹脂としては、種々のものがあり、原則的にいずれも使用できるが、本発明の大半を占めるシート状の化粧材においては、シートのフレキシビリティーを維持する意味で、熱硬化性樹脂としても、フレキシビリティーを有するものが望ましく、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等、特にポリウレタン樹脂が好ましい。
【0017】
着色層3および模様層4を形成する際の塗料組成物またはインキ組成物中の樹脂成分としての電離放射線硬化性樹脂組成物としては、分子中に重合性不飽和結合または、エポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜に混合したものを用いる。
電離放射線硬化性樹脂組成物中のプレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物中のモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置換の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等が挙げられる。
【0018】
通常、電離放射線硬化性樹脂組成物中のモノマーとしては、以上の化合物を必要に応じて1種若しくは2種以上を混合して用いるが、電離放射線硬化性樹脂組成物に通常の塗布適性を与えるために、前記のプレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/又はポリチオール化合物を95重量%以下とするのが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーが要求されるときは、モノマー量を減らすか、官能基の数が1又は2のアクリレートモノマーを使用するとよい。電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときの耐摩耗性、耐熱性、耐溶剤性が要求されるときは、官能基の数が3つ以上のアクリレートモノマーを使う等、電離放射線硬化性樹脂組成物の設計が可能である。ここで、官能基が1のものとして、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが挙げられる。官能基が2のものとして、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。官能基が3以上のものとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクレリート等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーや表面硬度等の物性を調整するため、電離放射線硬化性樹脂組成物と、電離放射線照射では硬化しない樹脂を併用することもできる。具体的な樹脂の例としては次のものがある。ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂である。中でも、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等と併用がフレキシビリティーの向上の点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布後の硬化が紫外線照射により行われるときは、光重合開始剤や光重合促進剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いる。光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部である。
【0019】
上記の樹脂成分には、着色剤として顔料や染料、その他の添加剤、溶剤、希釈剤等を添加し、混練して塗料組成物またはインキ組成物を調製する。
着色層3または模様層4の形成は、上記の塗料組成物またはインキ組成物を使用して、公知の塗装方法ないし印刷方法により行なう。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング等の塗装方法、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、またはスクリーン印刷等が利用できる。
乾燥はこれらの手法を実施する際に使用する機械に付属しているものを使用して行なえばよいが、熱硬化性の樹脂成分を使用するときは、加熱、比較的低い温度での長時間加温、または常温での放置により硬化させ、電離放射線硬化性の樹脂成分を使用するときは、紫外線または電子線の照射を行なう。
【0020】
図1に示した、表面の保護層の形成時に、下層の浸透性の差により艶差を生じるタイプでは、着色層3を伴なうか伴なわないで模様層4を有するか、あるいは模様層4も伴なわずに、基材上2に、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な塗膜層5を有している。
塗膜層5の機能は、一つには、後述する表面保護層形成用の電離放射線硬化性組成物を基材2中に浸透させることを制御する機能である。塗膜層5が無いと、表面保護層7を形成するための電離放射線硬化性組成物を塗工した際に、下層の模様層4中に、着色層3がある場合には着色層3中に、あるいは基材が浸透性を有していれば、基材2中に、塗工された組成物のかなりの部分が浸透し、表面保護層7の厚みが減るために、必要な表面性能を得ることが出来なくなるからである。と言って、後述するように、艶消部8を生じさせる意味では、適度な浸透性を確保する必要があるからである。
また、塗膜層5は、基材2上に着色層3、模様層4等がある場合には、それらの表面をならし、それらに接着し、かつ後述する電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が低い模様層6、および表面保護層7との接着性を確保する役割をも有している。
【0021】
塗膜層5を形成するには、熱硬化性または電離放射線硬化性の塗料組成物ないしインキ組成物を用いるが、これら組成物の樹脂成分は、前記した着色層3および模様層4形成用の塗料組成物またはインキ組成物の説明において挙げたものと同様である。
ただ、この塗膜層5を形成する際には、下層の模様層4(着色層3を伴なう場合には着色層3も)が、基材に対して色彩や模様を与えているので、塗膜層形成用の塗料組成物またはインキ組成物には、顔料や染料を添加して着色する必要は本質的にはない。
塗膜層5には、充填剤を配合して、電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性を高くすることが好ましい。充填剤としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機質粒子、プラスチックのビーズの細かいもの、等が使用でき、模様層6の厚みにもよるが、模様層6形成用の塗料組成物またはインキ組成物中の樹脂成分(架橋硬化により樹脂固形分となるものを含める)100重量部に対して充填剤を10〜200重量部を添加して使用する。
なお、充填剤の中には、塗膜層6を白色化させるものがあり、その意味では、微粉シリカと呼ばれるものを使用する事がより好ましい。
なお、外観の艶をどのように設定するかにもよるが、この塗膜層5に艶消し剤を配合し、化粧材の艶を調整してもよい。
ポリビニルブチラール樹脂のように、OH基を有しているものを塗膜層5の素材として使用し、イソシアネート化合物で架橋させると共に、OH基を利用して、上層の表面保護層との間で反応を起こさせると、密着強度の改善ができ、好ましい。
また、ポリエステルポリオールに、イソシアネートに加えてトリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能モノマーを配合しておき、表面保護層を紫外線又は電子線の照射により硬化させる際に、架橋硬化させると、表面保護層との間で架橋が生じ、化粧材の耐久性、特に耐溶剤性をより一層向上させることかでき、より好ましい。
塗膜層5の厚みは、充填剤の添加量によっても多少異なるが、1〜5μm程度であり、均一性が要求されるときは、塗布手段または印刷手段を2回使用して連続的に2回形成するのがよい。
塗膜層5を形成する際の乾燥、硬化は前に述べた着色層3、模様層4の形成の際と同様である。
【0022】
塗膜層5上には、充填剤を含む硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が前記塗膜層5より低い模様層6を形成する。
ここで用いる塗料組成物またはインキ組成物は、前記した塗膜層5形成用の塗料組成物またはインキ組成物と同様であり、また、模様層6の形成方法は、着色層3、模様層4の形成方法と同様である。
使用する充填剤は、塗膜層5における場合と同様である。
模様層6の電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性を、前記塗膜層5よりも低くするには、塗膜層5におけるよりも、充填剤の配合割合を減らす。模様層6を形成する際に用いる塗料組成物もしくはインキ組成物中の樹脂成分100重量部に対する充填剤の添加割合を、塗膜層5を形成するときにくらべて、1/2以下とするか、添加割合は同じで、充填剤の粒径を1/2以下にするとよい。なお、充填剤の粒径が10μm以上の場合は、添加量を塗料組成物もしくはインキ組成物中の樹脂成分100重量部に対して100重量部以下にした方が、模様層6の白色化が過大とならず好ましい。
なお、充填剤の中には、浸透性が低い模様層6を形成したときに、模様層6を白色化させるものがあり、その意味では、微粉シリカと呼ばれるものを使用する事がより好ましい。
浸透性が低い模様層6としては、前記した装飾の意味の模様層4が表現しようとしている模様のうち、艶を消したい部分以外を抽出したものを、模様層4と同調させて形成するとよいが、あるいは下層の模様層4と必ずしも同調しないこともあり得る。木目模様のうちでも板目模様の導管等は同調させた方がよい。タイルの目地の模様も同様である。同調させてもまずくはないが、必ずしも同調させなくても違和感の生じないものとして、皮革の表面の凹凸、木目模様のうちの柾目模様の凹凸、布目模様の凹凸等がある。重要なことは、模様層6の積層されていない部分が艶差を生じる部分となることである。つまり、模様層6のパターンは、艶差を生じさせたい部分のパターンのネガパターンである。
一般的に言って、化粧材の模様が細かく、しかも繰り返し模様である場合には、浸透性が高い模様層6を必ずしも下層の模様層4と同調させなくてよいが、模様が大きく、繰り返し模様ではない場合には、同調させた方がよい。
【0023】
表面保護層7は、本発明の化粧材の最表面に被覆されたものであり、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したものであって、表面保護層7を形成するための素材は、今までの説明で出てきたものと同様である。なお、この表面保護層7は化粧材の表面の艶を調整する意味で、艶消し剤を含んでいてよい。
表面保護層7の厚みは、表面保護の目的から厚い方がよいが、要求される性能や、経済性、基材がシート状である場合に必要なフレキシビリティー等の観点から、基材がシート状であれば、2〜10μmが厚みとして好ましく、基材が板状であれば、5〜100μm程度の厚みが好ましい。
表面保護層7を形成する手法、乾燥、硬化等に関しても、前に述べた着色層3、および模様層4の形成の際と同様である。
【0024】
表面保護層7には、その形成時に、下層に模様層6のない部分において、周囲よりも艶消しとなった艶消部8が形成されるので、相対的に艶のある表面保護層7の表面に、相対的に艶が消えている艶消部8のパターンを有している。下層に模様層6がある部分にくらべ、模様層6のない部分の方が電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が大きいことに起因している。浸透が完全に近いときは、塗膜層5の充填剤を多く含んだことによる凹凸状態が露出し、かなりの艶消しになるが、浸透がそれほどではないときは、それよりも艶のある艶消部8が生じる。
【0025】
次に、図2に示すような、下層の表面の撥液性の有無により、その形成時に凹凸を生じるタイプについて説明する。
【0026】
前にも説明したように、図2に示す化粧材1’は、表面の保護層が、下層の表面の撥液性の有無により、その形成時に凹凸を生じるタイプであって、化粧材1’は、基材2、一様均一な着色層3、模様層4、電離放射線硬化性樹脂組成物の一様均一な塗膜層5を有している点は、図1に示すものと共通点を有する。従って、層1〜4については説明を省く。
図2の化粧材1’が図1のものと異なる点は、▲1▼塗膜層5は特に電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が良いものでなくてもよいこと、また、▲2▼塗膜層5の上には、撥液性模様9が積層されていて、最上層に電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層7が全面を覆って積層されていることである。そして、これらの相違に基づくのであるが、表面保護層7の上面の、下層の撥液性模様9上に相当する位置には、電離放射線硬化性樹脂組成物がその塗布時にはじかれて生じた凹部8’を有している。
【0027】
塗膜層5の役割は、広い意味では、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物が基材2等に浸透するのを制御することであるが、具体的には、浸透を抑制することである。電離放射線硬化性樹脂組成物が基材2等に過度に浸透すると、表面保護層7の厚みが減るために、必要な表面性能を得ることができなくなる事もあるが、後述するように、撥液性模様上で電離放射線硬化性樹脂組成物が弾かれたことにより生じる凹凸が、表面保護層7が薄いと目立ちにくいからである。
また、塗膜層5は、当然ながら、基材2上に着色層3、模様層4等がある場合には、それらの表面をならし、それらに接着し、かつ後述する電離放射線硬化性樹脂組成物をはじく性質のある撥液性模様9、および表面保護層7との接着性を確保する役割も果たす。
塗膜層5の厚みとしては、1〜5μm程度である。
【0028】
塗膜層5の形成については、図1を引用して説明した化粧材1に関するものと基本的には同じである。
ただし、この塗膜層5においては、充填剤はむしろ少なめに添加した塗料組成物ないしインキ組成物を使用するとよい。
【0029】
塗膜層5の上には、上層を形成するときに使用する電離放射線硬化性樹脂組成物をはじこうとする性質のある撥液性模様9を有している。
このような撥液性模様9は、着色層3や模様層4を形成するのに使用するインキ組成物や塗料組成物に、撥液性物質として、ワックス、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を添加して模様を形成する事により得られる。
【0030】
塗膜層5上の、このような模様9を含む全面に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、電離放射線照射により硬化させて表面保護層7を形成するが、同時に、撥液性模様9の上部において、電離放射線硬化性樹脂組成物が弾かれたことによって、凹部8’が形成される。
化粧材1’の凹部8’は、撥液性模様9上の表面保護層7が、その形成時に、はじかれて生じるものなので、下層の模様層4の模様の中の、凹部を形成したい箇所に同調させて撥液性模様9を形成するとなおよい。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
基材として、厚み30μmの薄葉紙(三興製紙(株)製、FLEX30)を用い、その片面に、2液硬化型のポリウレタン系樹脂をバインダーとするインキを用いて、着色ベタ層および模様層を形成した。
次に、ポリビニルブチラール樹脂とキシレンジイソシアネートとをバインダーとするグラビアインキ100重量部(樹脂固形分;10%)に、充填剤として粒径4μmのシリカ2重量部、および粒径0.02μmの沈降性炭酸バリウム10重量部とを添加したほぼ透明で若干艶消しのインキを用いて、着色ベタ層および模様層を形成した上に、版深54μmの版を2版使用し、グラビア印刷により、ベタ印刷を行なって、透明ベタ層を形成した。
その後、ポリウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いて、木目導管のネガパターンをベタ層上に形成した。これにより、ネガパターンで覆われなかった部分(即ち、導管パターンである。)が浸透性が高い状態となり、導管パターン以外の部分が浸透性の低い状態となる。
最後に、透明ベタ層および木目導管のネガパターンが印刷された面の全面に、電子線硬化型塗料をグラビア印刷にて5g/m2 塗工し、加速電圧175KV、照射線量3Mradの電子線を照射して化粧シートを得た。
得られた化粧シートは最上層の表面保護層が、下層の導管パターンに相当した位置の上において、下層の透明ベタ層に電子線硬化型塗料が浸透したことによって微細な凹凸状態が形成されて、周囲とくらべて艶消し状態となって凹凸感が形成された化粧材であり、表面保護層の密着性、耐摩耗性(スチールウールで摩擦し、肉眼判定)、および耐溶剤性のいずれも問題がなかった。
【0032】
(実施例2)
着色ベタ層および模様層の形成用のインキとして、アクリル樹脂とニトロセルロースとをバインダーとするもの(通常の化粧紙用のインキであり、バインダーは熱可塑性樹脂からなる。)に変更し、その他は実施例と同じようにして、同様の外観の化粧材を得た。
得られた化粧材は、インキが熱可塑性樹脂をバインダーとするために、耐溶剤性が実施例1のものより若干低下したが、表面保護層の密着性、および耐摩耗性(スチールウールで摩擦し、肉眼判定)のいずれも問題がなかった。
【0033】
(実施例3)
透明ベタ層を形成する際のインキのバインダーを2液硬化型ウレタンとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合物とした以外は、実施例1と同様に行なって、同様の外観の化粧材を得た。
得られた化粧材は、実施例1で得られたものと同等な性能を示した。
【0034】
(実施例4)
透明ベタ層を形成する際のインキ中の充填剤を、粒径1.5μmのシリカ10重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行なって、同様の外観の化粧材を得た。
得られた化粧材は、実施例1で得られたものと同等な性能を示した。
【0035】
(比較例1)
透明ベタ層を形成する際のインキのバインダーをポリビニルブチラール樹脂のみとし、充填剤を、粒径1.5μmのシリカ10重量部とした以外は、実施例1と同様に行なって、同様の外観の化粧材を得た。
得られた化粧材は、表面保護層の密着性および耐摩耗性(スチールウールで摩擦し、肉眼判定)のいずれも問題がなかったが、耐溶剤性が大幅に低下した。
【0036】
(比較例2)
透明ベタ層を形成する際のインキ中の充填剤を粒径4μmのシリカ2重量部のみとした以外は、実施例1と同様に行なった。
得られた化粧材は、表面保護層上に艶差のある部分がほとんど生じなかったので、凹凸感が少ないものであった。
ただし、表面保護層の密着性、耐摩耗性(スチールウールで摩擦し、肉眼判定)、および耐溶剤性のいずれも問題がなかった。
【0037】
(比較例3)
透明ベタ層を形成する際のインキ中の充填剤を粒径1.5μmのシリカ3重量部のみとした以外は、実施例1と同様に行なった。
得られた化粧材は、表面保護層上に艶差のある部分がほとんど生じなかったので、凹凸感が乏しいものであった。
ただし、表面保護層の密着性、耐摩耗性(スチールウールで摩擦し、肉眼判定)、および耐溶剤性のいずれも問題がなかった。
【0038】
上記の実施例1〜4、および比較例1〜3で得られた化粧シートの評価結果を次表の「表1」に示す。
各評価項目の内容は次のとおりである。
密着性;表面に2mm間隔の碁盤目状にカッターナイフで切り目を入れた部分にセロハンテープを使用して3回剥離試験を行ない、剥離しないものを○、剥離したものを×とする。
スチールウール性;スチールウールを用いて擦り、表面のきずの有無を観察し、傷が生じないものを○、生じたものを×とした。
耐溶剤性;1Kgのおもりにコットンを巻き付けたものを使用し、コットンにメチルエチルケトンをしみ込ませて往復させ、模様が消失したときの回数を示す。
凹凸感;目視で観察し、凹凸感の有無を判定し、良好なものを○、乏しいものを△、ないものを×とする。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例5)
基材として、坪量60g/m2 の含浸紙(興人(株)製、GF−601)を用い、その片面に、アクリル樹脂とニトロセルロースをバインダーとするインキを用いて、着色ベタ層および模様層を形成した。
次に、ポリエステルポリオール、イソシアネート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートをバインダーとする透明グラビアインキを用いて、着色ベタ層および模様層を形成した上に、グラビア印刷法により、透明ベタ層を形成した。
その後、ポリウレタン樹脂をバインダーとし、シリコーンを添加した撥液性インキを用いて、木目導管パターンを印刷した。
最後に、透明ベタ層および木目導管パターンを含む全面に、電子線硬化型塗料をグラビア印刷にて5g/m2 塗工し、加速電圧175KV、照射線量3Mradの電子線を照射して化粧シートを得た。
得られた化粧シートは最上層の表面保護層の、下層の導管パターンに相当した位置の上において、電子線硬化型塗料がはじかれたことにより凹部が形成されて、実物に近い外観を与えるものであった。
得られた化粧シートは、耐溶剤性、耐セロテープ試験、およびホフマンスクラッチのいずれの項目においても問題がなかった。
【0041】
(実施例6〜7)
基材を厚み30g/m2 の一般紙(三興製紙(株)製、ハイプリント30)に変更し、その他は実施例5と同様にして行なって得た化粧シート(実施例6)、および、基材を厚み30g/m2 の紙間強化紙(三興製紙(株)製、FLEX30)に変更し、その他は実施例5と同様にして行なって得た化粧シート(実施例7)については、実施例5と同様の結果が得られた。
【0042】
(比較例4)
透明ベタ層を形成しなかった以外は実施例5と同様に行なって得た化粧シートは、導管パターン以外の部分の電子線硬化型塗料が下層に浸透したため、凹凸感がほとんど得られなかった。
【0043】
(比較例5)
透明ベタ層を2液硬化型のポリウレタン樹脂をバインダーとする透明グラビアインキを用いて形成し、その他は実施例5と同様にして化粧シートを得た。
得られた化粧シートは導管パターン状に凹部が形成されており、凹凸感のある化粧材であった。また、耐溶剤性は問題がなかったが、ホフマンスクラッチと密着性(透明ベタ層と表面保護層の間の密着性)が実施例5〜7および比較例4のものとくらべると、低い結果であった。
【0044】
上記の実施例5〜7、および比較例4、5で得られた化粧シートの評価結果を次表「表2」に示す。
各評価項目のうち、「表1」に示した以外の項目は次の通りである。
ホフマンスクラッチ;米国ビーワイケー・ガードナー社(BYK−Gardner USA)製のホフマン引っ掻き硬度計(Hoffman ScratchHardness Tester)を使用し、荷重を測定毎に増やしながら、引っ掻き具で表面を引っ掻き、傷の付きはじめたときの荷重をもって、引っ掻き硬度とする。
密着性(常態);表面に碁盤目状の切り目を入れず、そのままの常態でセロハンテープを使用して剥離試験を行ない、剥離しない回数、もしくは剥離したときの回数を示す。
密着性(碁盤目);表面に碁盤目状の切り目を入れ、セロハンテープを使用して剥離試験を行ない、剥離しない回数、もしくは剥離したときの回数を示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
第1の発明によれば、下層への浸透性の差を利用して形成された艶差による凹凸感を有する表面保護層が、下層も架橋硬化した塗膜を有しているために、耐溶剤性、耐摩耗性、密着強度が優れている。第4の発明によれば、撥液性模様が塗料をはじくことを利用して形成された凹部を有する表面保護層が、下層も架橋硬化した塗膜を有しているために、耐溶剤性、耐摩耗性、密着強度が優れている。第7の発明によれば、第1または第4の発明の効果に加え、下層が艶消し性であるために表面が艶消し性となっており、表面保護層のみを艶消し性とする場合にくらべると、表面のざらつきやすべりの悪さが改善される。第8の発明によれば、第7の発明の効果に加え、基材自身が模様を有しているために、様々なパターンや色彩を付与することができる。第9の発明によれば、第7の発明の効果に加え、模様層の下層に着色層を有しているので、基材を隠蔽し、より一層、意図通りの意匠を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化粧材の実施例の断面図である。
【図2】化粧材の他の実施例の断面図である。
【符号の説明】
1 化粧材
2 基材
3 着色層
4 模様層
5 架橋硬化塗膜層
6 浸透性が低い架橋硬化模様層
7 表面保護層
8 艶消部(または凹部)
9 撥液性模様
Claims (9)
- 基材の表面に、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層を有しており、前記基材と前記表面保護層との間に、基材側より、OH基を有している樹脂とイソシアネート化合物で架橋させる硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる一様均一な塗膜層、および硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる前記電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性が前記塗膜層よりも低い模様層とが順に積層されていることを特徴とする化粧材。
- 前記OH基を有している樹脂がポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
- 前記硬化性樹脂がOH基を有している樹脂とイソシアネート化合物で架橋させる2液硬化型ウレタンとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
- 基材の表面に、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層を有しており、前記基材と前記表面保護層との間に、基材側より、OH基を有している樹脂とイソシアネート化合物で架橋させる硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる一様均一な塗膜層、および前記電離放射線硬化性樹脂組成物をはじく性質のある撥液性模様層とを順に有していることを特徴とする化粧材。
- 前記塗膜層が、ポリエステルポリオールに、イソシアネートを加えて多官能モノマーが配合された硬化性樹脂が架橋硬化したものからなる一様均一な塗膜層であることを特徴とする請求項4に記載の化粧材。
- 前記塗膜層が、充填剤が配合され、且つ、該充填剤が樹脂成分100重量部に対して10〜200重量部添加されていることを特徴とする請求項1〜5に記載の化粧材。
- 前記塗膜層は、艶消し性であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の化粧材。
- 前記基材は、別の模様層が表面に積層されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化粧材。
- 前記基材は、一様均一な着色層と別の模様層とがこの順に積層されているものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化粧材。
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