しかしながら、このような非球面レンズには(球面レンズも同様に)、コントラスト比や透過率と耐光性との両立が困難であるという問題点がある。そのため、マイクロレンズとして理想的な非球面形状を追求する必要がある。
また、非球面レンズを製造するのは、球面レンズと比べても基本的に困難である。特許文献1では、非球面レンズの構成について開示されているものの、その製造方法の詳細は不明である。特許文献2には、当該文献に記載の非球面レンズをドライエッチングとウエットエッチングとを併用して製造する方法などが記載されているが、工程が煩雑である。非球面レンズの製造においては、こうした工程の複雑高度化に伴い、製造コストの上昇や歩留まりの低下を招くと共に、非球面レンズのレンズ面の形状を制御すること自体、技術的に非常に困難であるという問題点がある。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、理想的非球面のマイクロレンズを比較的容易に製造可能なマイクロレンズ、該マイクロレンズの製造方法、並びに該マイクロレンズを備えた電気光学装置、及び該電気光学装置を具備してなる電子機器を提供することを課題とする。
本発明のマイクロレンズの製造方法は、上記課題を解決するために、基板上に、所定種類の第1エッチャントに対するエッチングレートが前記基板より高い第1膜を形成する工程と、形成すべきマイクロレンズの中心に対応する個所に開口部を有する第1マスクを前記第1膜上に形成する工程と、前記第1マスクを介して前記第1エッチャントによるウエットエッチングを施すことにより第1の凹部を形成する工程とを含む第1曲面形成工程と、前記第1曲面形成工程の後に行われ、前記基板上に、エッチングレートが前記基板より前記第1膜の方が高い第2エッチャントに対するエッチングレートが前記第1膜より高い第2膜を形成する工程と、前記マイクロレンズの中心に対応する個所に、前記第1マスクの開口部よりも開口径が小さい開口部を有する第2マスクを前記第2膜上に形成する工程と、前記第2マスクを介して前記第2エッチャントによるウエットエッチングを施すことにより第2の凹部を形成する工程とを含む第2曲面形成工程とを含む。
本発明のマイクロレンズの製造方法によれば、先ず第1曲面形成工程を行い、その後に第2曲面形成工程を行う。第1曲面形成工程では、先ず、例えば石英基板、ガラス基板等の基板上に、例えばフッ酸系などの所定種類のエッチャントに対するエッチングレートが基板と異なる第1膜を形成する。このような第1膜は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング等により形成する。続いて、形成すべきマイクロレンズの中心に対応する個所に穴が開けられた第1マスクを第1膜上に形成する。第1マスクは、例えば、第1膜上における穴を除く領域に直接形成してもよい。
その後、このような第1マスクを介して、第1膜及び基板をウエットエッチングする。ここで用いられるエッチャントに対するエッチングレートは、第1膜の方が基板よりも高い。そのため、側縁にテーパーがついた第1の凹部が、広く浅い形状に掘られることになる。その後、第1マスクを除去してから、第2曲面形成工程を実施する。
第2曲面形成工程については、その手順は概ね第1曲面形成工程と同様である。但し、この工程で用いられる第2エッチャントに対するエッチングレートは、基板、第1膜、第2膜の順に高くなっている。ここでは、上記のエッチングレートの大小関係が重要であり、第2エッチャントの種類は第1エッチャントと同一であっても相異なっていてもよい。また、この工程で用いる第2マスクでは、開口部の開口径が第1マスクの開口径よりも小さく形成されている。
このような条件下で、第1の凹部と同様、形成すべきマイクロレンズの中心に対応する個所に、第2の凹部を形成する。第2の凹部が構成する面は、第1の凹部を下地とする周縁部では、第1の凹部のテーパー形状に由来した平面的形状であるのに対し、周縁部の内側の基板を下地とする中心部では、上記のエッチングレートの違いによって底の浅いすり鉢状の曲面となり、両者で曲率が異なる。即ち、周縁部よりも中心部の方が曲率は大きく、第2の凹部は、中心部における、底面から周縁にかけての広がりを、周縁部が多少絞るような格好になる。例えば、第1膜と第2膜のエッチングレート差が大きい場合や、後述するように第2膜によるエッチング回数が少ない場合には、周縁部と中心部との境界は、第2の凹部の内側から外側に向かって膨らんだ曲面となる。但し、第2の凹部は、第1の凹部ないし第1の凹部を下地とする第2膜を表面から掘り進めて形成されるので、こうした曲率の異なる部分同士の境界は緩やかであり、曲率の変化は連続的になる。このように、基板、第1膜及び第2膜の各々におけるエッチングレートの具体的な値やこれらのエッチングレートの相違と、第1及び第2マスクの各々における開口径の値やこれらの開口径の相違とを変更することで、各種曲率或いは各種曲面形状を有する非球面のレンズを製造できる。実際のエッチングレートの設定や開口径の設定は、実験的、経験的、数学的又は理論的に若しくはシミュレーション等によって、所望の非球面に応じて個別具体的に決定すればよい。
その後、第2の凹部が規定する曲面を利用することにより、比較的容易に、理想的非球面であるレンズを製造できる。具体的には、基板を透明基板として、第2の凹部内に透明媒質を充填すればよい。或いは、第2の凹部を型に用いて製造することもできる。更に、このようなマイクロレンズが形成された基板を2枚用意して、相互に貼り合わせることにより、両凸レンズのマイクロレンズを製造することもできる。
ここで、「理想的非球面」とは、マイクロレンズの形状において、所定画素の開口領域内にできるだけ均一に光を照射させながら、そのコントラスト比や透過率と耐光性とを両立させるように各部の曲率が最適化された曲面を指す。そのような曲面の具体的形状は、周縁と中心とで連続的に曲率が変化する、底の浅いすり鉢状の凹面であり、まさに以上の製造工程における第2の凹部として実現可能である。
以上の結果、本発明のマイクロレンズの製造方法によれば、理想的非球面のマイクロレンズを比較的容易に製造可能である。また、本発明では、一貫してウエットエッチングを採用しているので、各曲面形成工程は、エッチング条件を異ならせる以外は殆ど同様のシーケンスで実行でき、ドライエッチング等を併用する場合よりも簡単にマイクロレンズを製造することが可能となる。
本発明のマイクロレンズの製造方法の一態様では、前記第2曲面形成工程は、n(但し、nは2以上の自然数)回繰り返し実施される。
この態様によれば、一旦形成された第2の凹部に、更にウエットエッチングが繰り返して施される。その際、基板上には第2膜と第2マスクとが形成されており、第2マスクを介して第2膜、更には第2の凹部がエッチングされる。このとき、基板、第1膜及び第2膜のエッチングレートの違いから横方向(即ち、基板に水平な方向)のエッチングが優位に進み、第2の凹部の曲面において、曲率が異なる部分同士の境界が削られる。
第2曲面形成工程を繰り返すことで、曲率が異なる部分同士の繋ぎ目が滑らかとなる。よって、境界における曲率変化がより連続的となり、境界付近における曲率も最適に制御することができる。このような第2の凹部を用いて製造されるマイクロレンズは、レンズ面の曲率が滑らかに変化し、各部の曲率が最適化された理想的な非球面レンズとなる。
この態様では、前記n回繰り返し実施される第2曲面形成工程のうち、j(但し、jは2以上n以下の自然数)回目の第2曲面形成工程における前記第2膜は、j−1回目の第2曲面形成工程における第2膜よりも前記第2エッチャントに対するエッチングレートが高くなるようにしてもよい。
この場合、一旦形成された第2の凹部に、更にウエットエッチングを繰り返して施す際に、第2膜のエッチングレートを段々高くなるように設定する。即ち、第j回目の第2曲面形成工程における第2膜のエッチングレートRjは、第j−1回目までの第2曲面形成工程における第2膜のエッチングレートRj-1よりも高い。これを式で表すと、
R1<…<Rj-1<Rj<…<Rn
となる。このため、第2の凹部の曲面は、繰り返し実施されるエッチングの度に、基板に対して水平方向と垂直方向とで速度比が異なることになる。そこで、エッチングレートの値を調整すれば、第2の凹部を、各部の曲率が最適に制御された理想的形状に整形することが可能である。
尚、ここでは、工程毎のエッチングレートの大小関係を規定しているが、エッチャントの種類まで規定するものではない。よって、第2エッチャントの種類を各回毎に異ならせてもよい。
この態様では、前記n回繰り返し実施される第2曲面形成工程のうち、j(但し、jは2以上n以下の自然数)回目の第2曲面形成工程における前記第2マスクの開口部は、j−1回目の第2曲面形成工程における前記第2マスクの開口部よりも開口径が小さくなるようにしてもよい。
この場合、一旦形成された第2の凹部に、更にウエットエッチングを繰り返して施す際に、第2マスクの開口径を段々大きくなるように設定する。即ち、第j回目の第2曲面形成工程における第2マスクの開口径djは、第j−1回目までの第2曲面形成工程における第2膜のエッチングレートdj-1よりも高い。これを式で表すと、
d1>…>dj-1>dj>…>dn
となる。このように開口径を絞ると、エッチングの度合いを、主に横方向に第2の凹部内を多少削ることで、外形に変形を加えるだけに留められる。よって、第2の凹部を、各部の曲率が最適に制御された理想的な形状に整形することが可能である。
本発明のマイクロレンズの製造方法の他の態様では、前記第1エッチャントと前記第2エッチャントとは種類が同じである。
この態様によれば、凹部の形成に関しては一貫して同種のエッチャントを用いることで、エッチングレートの設定を比較的容易に行うことが可能である。また、製造設備の簡略化や製造コストの抑制にも寄与する。
本発明のマイクロレンズの製造方法の他の態様では、前記エッチングレートの制御を、前記第1膜又は前記第2膜の膜種、形成方法、形成条件及び形成後に施される熱処理の温度のうち、少なくとも一つに係る条件設定により行う。
この態様によれば、第1膜又は第2膜における、例えば材質、密度、孔隙率等の種類、例えばCVD、スパッタリング等の形成方法、例えば400℃以下程度或いは400〜1000℃程度等の形成温度、及び第1膜又は第2膜の形成後に施される熱処理の温度、のうち少なくとも一つに係る条件設定により、エッチングレートの制御を行う。そして、係るエッチングレートの制御によって、最終的に得られる第2の凹部が規定する理想的非球面における曲率或いは曲率分布を比較的容易に制御できる。尚、第1膜又は第2膜の膜厚によっても、最終的に得られる第2の凹部が規定する理想的非球面における曲率或いは曲率分布を制御できる。
本発明のマイクロレンズの製造方法の他の態様では、前記基板は、透明基板からなり、前記第2の凹部内に前記透明基板よりも屈折率が大きい透明媒質を入れる工程を更に備えている。
この態様によれば、透明基板からなる基板に掘られた凹部内に、これより屈折率が大きい透明媒質を入れるので、透明基板上に、理想的非球面の凸レンズとしてマイクロレンズを製造可能となる。この際、透明媒質は、透明樹脂等からなり、接着剤を兼ねてもよい。例えば、カバーガラスを透明基板に貼り合わせる際の接着剤を兼ねてもよい。
また、透明基板としては、例えば石英がある。この場合、第1膜或いは第2膜を形成する際に、高温に曝されても基板が破壊されることはないので有利である。但し、第1膜や第2膜を低温で形成する場合には、透明基板に耐熱性は要求されない。例えば、ガラス板、プラスチック或いは樹脂板等でもよい。いずれにせよ、透明基板は、第1膜又は第2膜と共に所定種類のエッチャントによってエッチング可能な材質であれば問題は生じない。
尚、基板に掘られた凹部をマイクロレンズの型として用いる場合には、基板は透明である必要はない。
本発明のマイクロレンズの製造方法の他の態様では、前記基板上に前記マイクロレンズがアレイ状に複数形成される。
この態様によれば、上述の如き理想的非球面のマイクロレンズがアレイ状に複数形成されてなる、マイクロレンズアレイが製造される。このマイクロレンズアレイは、例えばアレイ状或いはマトリクス状に画素が配列された電気光学装置に好適に用いることができ、比較的簡単に製造することができる。
本発明のマイクロレンズは、上記課題を解決するために、上述した本発明のマイクロレンズの製造方法(但し、その各種態様を含む)により製造される。
本発明のマイクロレンズによれば、上述した本発明のマイクロレンズの製造方法により製造されるので、光源光、外光等を効率良く集光する一方で耐光性にも優れ、しかも製造が容易であり比較的安価で品質の安定したマイクロレンズ、更にはマイクロレンズアレイ或いはマイクロレンズアレイ板を実現できる。
尚、本発明のマイクロレンズは、レンズ曲面について、(i) 中心部が浅いすり鉢状をしており、周縁部の曲率が中心部より大きい非球面形状であって、(ii) 周縁部と中心部との境界にはある程度幅があり、境界における曲率変化は急峻ではないという本発明独自の構造上の特徴を有する。
また、このマイクロレンズの製造過程において、第2の凹部を理想非球面形状に形成する際に、第1膜又は第2膜が、第2の凹部の周縁部に残存していてもよい。これらは当該マイクロレンズで集光する光の光路の縁に位置しているため、仮に第1膜や第2膜を半透明膜或いは不透明膜から形成したとしても、マイクロレンズに係る光学性能に及ぼす悪影響は限定的である。この場合に製造されるマイクロレンズの周縁部は、第1膜或いは第1膜及び第2膜といった、所定種類のエッチャントに対するエッチングレートが基板よりも高い材料からなる。
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、上述した本発明のマイクロレンズと、該マイクロレンズに対向する表示用電極と、該表示用電極に接続された配線又は電子素子とを備える。
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明のマイクロレンズを備えるので、理想的非球面のマイクロレンズにより光源光、外光等を効率良く集光でき、明るく鮮明な画像表示が可能な電気光学装置を実現できる。同時に、この理想的非球面のマイクロレンズは、各画素の開口領域において、できるだけ均一に光を射出するように設計されているために、耐光性に優れ、良好な表示品質を維持可能な電気光学装置を実現できる。
尚、このような電気光学装置は、島状の画素電極或いはストライプ状電極等の表示用電極に、走査線、データ線等の配線やTFT等の電子素子が接続されてなるアクティブマトリクス駆動型液晶装置等の電気光学装置として構築される。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備する。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を具備して構成されているので、明るく、優れた表示品質が維持されたプロジェクタ、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。
本発明のこのような作用及び他の利得は、次に説明する実施形態から明らかにされる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(マイクロレンズアレイ板)
先ず、本実施形態に係るマイクロレンズ板について、図1から図5を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板の概略構成を表している。図2は、そのうち4つのマイクロレンズに係る部分を拡大して表している。図3は、本実施形態のマイクロレンズアレイ板の部分断面を拡大して表しており、図4は、更に1つのマイクロレンズにかかる部分を拡大して表している。図5は、図4に示したマイクロレンズとその比較例の光学特性を夫々表している。
図1に示すように、本実施形態のマイクロレンズアレイ板20は、カバーガラス200で覆われた、例えば石英板等からなる透明板部材210を備える。透明板部材210には、マトリクス状に多数の凹状の窪みが掘られている。そして、この凹状の窪みの中に、カバーガラス200と透明板部材210とを相互に接着する、例えば感光性樹脂材料からなる接着剤が硬化してなる、透明板部材210よりも高屈折率の透明な接着層230が充填されている。これらにより、マトリクス状に平面配列された多数のマイクロレンズ500が構築されている。
このように本実施形態では、透明板部材210から、本発明に係る「基板」の一例が構成されており、接着層230から、本発明に係る「透明媒質」の一例が構成されている。
図2及び図3に示すように、各マイクロレンズ500の曲面は、相互に屈折率が異なる透明板部材210と接着層230とにより概ね規定されている。そして、各マイクロレンズ500は、図3中で下側に凸状に突出した凸レンズとして構築されている。
本実施形態では、後述するように本発明独自の製造方法により製造されるため、マイクロレンズ500のレンズ面は、曲率が相異なる周縁部500Aと中央部500Bとで構成されている。周縁部500Aは、境界500Cより周縁側の、第1膜220から透明板部材210にかけて形成され、その内側の中央部500Bは透明板部材210により構成されている。第1膜220は、透明板部材210よりエッチングレートが高い材料、例えば透明な酸化シリコン膜からなり、接着剤層230を介してカバーガラス200に密着している。
マイクロレンズアレイ板20は、その使用時には、各マイクロレンズ500が、後述する液晶装置等の電気光学装置の各画素に対応するように配置される。従って、各マイクロレンズ500に入射する入射光は、マイクロレンズ500の屈折作用により、電気光学装置における各画素の中央に向けて集光される。
図4において、各マイクロレンズ500の中央部500Bは、周縁部500Aと比べて曲率が小さくなっている。この場合、マイクロレンズ500のレンズ面は、中心部500Bにおける、底面から周縁にかけての広がりを、周縁部500Aが多少絞るような格好になっている。このような非球面のマイクロレンズ500は、球面レンズの場合と比較して外周付近の曲率半径が大きく、非球面の度合いに応じてレンズ効率が向上している。
また、図4において、周縁部500Aの上縁に水平な面から、この上縁に対する接線Lt1のなす傾斜角度θは、例えば50〜60度とされる。そのため、傾斜角度θを30〜40度程度とした場合や、逆に傾斜角度θを70〜80度程度とした場合と比べて、非常に良好なレンズ効率が得られると共に、乱反射光等の発生を効果的に防止できる。尚、この傾斜角度θを電気光学装置の仕様に応じて適宜設定することによって、各マイクロレンズ500の中央付近のみならず縁付近を通して集光される入射光が、この電気光学装置内部の液晶層等を透過する際に、対応する画素の開口領域を通過するようにできる。そして、中央部500Bの上縁では、レンズ面は傾斜角度θを浅くする方向(図4中、矢印の方向)に曲げられている。
レンズ面における周縁部500Aと中央部500Bとの境界500Cは、特に何もしなければ、夫々に対応する2つの曲面が不連続に接合された格好となる。しかし、レンズ面の各部における曲率を理想的な特性が得られるように設計する場合、境界付近では曲率が急激に変化するのではなく、漸近的に変化させる方が好ましい。ここでは、後述の製造方法で製造されるために、曲率の異なる周縁部500Aと中央部500Bとの境界500Cは緩やかな曲面で構成され、周縁部500Aと中央部500Bの間で曲率は連続的に変化する。
マイクロレンズ500は、このような非球面形状にレンズ面が規定されることによって、対応する画素の開口領域内に均一化させた光を照射させるように機能する。図5において、電気光学装置の各画素の開口領域は、ブラックマトリクスBM等によって規定されており、マイクロレンズ500は、集光した光を、画素の開口領域内に分布d1でもって均一に入射する。このため、マイクロレンズ500は、球面レンズと比べて入射光の透過率が高く、電気光学装置が良好なコントラスト比で表示することを可能とする。
一方、本実施形態の比較例たる非球面レンズは、図4に示したレンズ曲面において、周縁部500Aが、中央部500Bとの境界500Cにおいても、その上縁と同じく急峻に切り立っている。そして、境界500Cで、曲率が急激に変化することで、球面収差を低減するように設計されており、焦点深度が深くなるように構成されている。従って、各画素に対する透過率が向上する。しかし、焦点深度が深くなると、光は画素の開口領域内に図5の分布d2でもって入射する(即ち、各画素において光が一点に集中して照射される)。このため、レンズの耐光性が低下する可能性がある。
これに対し、本実施形態のマイクロレンズ500は、収差を考慮せずに、出射光が分布d1で画素の開口領域内に入射されるようにしたので、耐光性も向上させることが可能である。耐光性の向上は、マイクロレンズの主用途であるプロジェクタにおける光強度の増大に伴い、重要な課題になってきている。
一般に、球面収差の観点から見ると、レンズの透過率と耐光性は、一方が良いと他方が悪化する性質のもの(所謂トレードオフの関係)であり、球面レンズは、透過率は低いがその分耐光性が高く、非球面レンズは逆に、透過率は高いが耐光性が低いとされている。しかしながら、以上に説明したように、本実施形態における非球面のマイクロレンズ500は、画素の開口領域に分布d1で光を入射させることで、光学的というよりは、実質的な利点である高透過率と良好な耐光性とを併せ持つようにレンズ面の各部の曲率が設計されている。即ち、マイクロレンズ500のレンズ面は、「理想的な非球面」となっている。
以上の結果、非球面レンズであるマイクロレンズ500の集光作用によって、図3又は図4において上側から入射する入射光を、効率的に表示に寄与する光として利用できる。従って、マイクロレンズアレイ板20を用いた電気光学装置において、明るく鮮明な画像表示が可能となる。
しかも、このように優れたレンズ特性を有する本発明のマイクロレンズアレイ板500は、後述する本発明の製造方法により製造されるので、製造が容易であり、比較的安価で且つ安定した品質が得られる。
<変形例>
図6に示すように、本実施形態の一変形形態として、マイクロレンズアレイ板に、マイクロレンズアレイ板が取り付けられる電気光学装置における非開口領域を少なくとも部分的に規定する遮光膜240を設けてもよい。より具体的には、格子状の非開口領域を単独で規定するように、格子状の平面パターンを有する遮光膜240を構成してもよい。或いは、格子状の非開口領域を、他の遮光膜と協働で規定するように、ストライプ状の平面パターンを有する遮光膜240を構成してもよい。
図6のように構成すれば、より確実に各画素の非開口領域を規定でき、各画素間における光り抜け等を防止できる。更に、電気光学装置の非開口領域に作り込まれる、光が入射すると光電効果による光リーク電流が発生して特性が変化してしまうTFT等の電子素子に、光が入射するのを確実に防ぐことも可能となる。
尚、図6において遮光膜240上には、保護膜241が形成されており、更に、この保護膜241に代えて又は加えて、後述の如き対向電極や配向膜が形成されてもよい。
加えて、図6に示した如きマイクロレンズアレイ板に対して、遮光膜240により区切られた各画素の開口領域にR(赤)、G(緑)又はB(青)のカラーフィルタを作り込むことも可能である。
(電気光学装置)
次に、本実施形態に係る電気光学装置について、図7及び図8を参照して説明する。ここでは、本発明の電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置について説明する。
図7は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に、対向基板として用いられる上述のマイクロレンズアレイ板側から見た平面図であり、図8は、図7のH−H’断面図である。
図7及び図8において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と、対向基板として用いられるマイクロレンズアレイ板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなる。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。こうした構成は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適しているが、当該電気光学装置が大型で等倍表示を行う液晶装置であれば、このようなギャップ材は液晶層50中に含まれていてもよい。
マイクロレンズアレイ板20上における、シール材52の内側には、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が設けられている。但し、このような額縁遮光膜の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられていてもよい。
TFTアレイ基板10上における、画像表示領域10aの周辺領域には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104及び外部回路接続端子102が設けられており、これらは複数の配線105によって相互に接続されている。その他、TFTアレイ基板10には、画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行してデータ線に供給するプリチャージ回路、或いは製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査する検査回路等を形成してもよい。また、マイクロレンズアレイ板20には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。
図7において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、マイクロレンズアレイ板20上には、前述したカバーガラス200、透明板部材210及びマイクロレンズ500の他、対向電極21が形成され、最上層部分(図7では、マイクロレンズアレイ板20の下側表面)に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
次に、この電気光学装置の回路構成と動作について、図9を参照して説明する。図9は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路を表している。
図9において、画像表示領域10aにマトリクス状に配列した複数の画素には夫々、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されている。そして、TFT30のソースにはデータ線6aが電気的に接続されている。画素列に対応して複数配列されたデータ線6aには、画像信号S1、S2、…Snが夫々供給される。画像信号S1、S2、…Snは、この順に線順次に供給されても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給されてもよい。
TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、水平走査に応じて走査線3aに走査信号G1、G2、…Gmを線順次に供給するように構成されている。即ち、走査信号G1、G2、…Gmの入力タイミングに応じてTFT30が開閉する。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、TFT30を所定タイミングで開閉させることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…Snが書き込まれ、対向電極21との間で一定期間保持される。液晶は、画素電極9aと対向電極21との間の電位レベルに応じて分子集合の配向や秩序が変化して光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。各蓄積容量70のうち画素電極9a側と反対側の電極は、固定電位の容量線300に共通に接続されている。
次に、この電気光学装置の画像表示領域10aの具体的な構成について、図10及び図11を参照して説明する。図10は、TFTアレイ基板10上の平面構成を表している。図11は、図10のA−A’断面図である。尚、図10においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
図10において、X方向及びY方向にマトリクス状に配置された各画素の開口領域には、夫々画素電極9a(点線部9a’により輪郭が示されている)が設けられている。また、画素の非開口領域は、データ線6aや走査線3a、容量線300等の、画素電極9aの縦横の境界に沿って延在する配線によって規定されている。また、半導体層1aにおけるチャネル領域1a’に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する。このように、走査線3aとデータ線6aとの交差する個所には夫々、画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
図10及び図11において、TFTアレイ基板10上には、上述した画素部の各回路要素が、導電膜としてパターン化され、積層されている。各回路要素は、下から順に、下側遮光膜11aを含む第1層、ゲート電極3a等を含む第2層、蓄積容量70を含む第3層、データ線6a等を含む第4層、画素電極9a等を含む第5層からなる。また、第1層−第2層間には下地絶縁膜12、第2層−第3層間には第1層間絶縁膜41、第3層−第4層間には第2層間絶縁膜42、第4層−第5層間には第3層間絶縁膜43が夫々設けられ、前述の各要素間が短絡することを防止している。
TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなる。TFTアレイ基板10上におけるTFT30の下層側には、下側遮光膜11aが格子状に設けられている。下側遮光膜11aは、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)等の高融点金属のうち少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。
TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。尚、高濃度ソース領域1dは、コンタクトホール81により、データ線6aに接続され、高濃度ドレイン領域1eは、コンタクトホール83により、蓄積容量70の中継層71に接続されている。
TFT30の上層には、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての中継層71と、固定電位側容量電極としての容量線300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。容量線300は、定電位源と電気的に接続されて固定電位とされる。容量線300は、平面的に見て、走査線3aに沿ってストライプ状に形成され、TFT30に重なる個所では図10中上下に突出している。このような容量線300は、例えば金属を含む遮光性の導電膜からなり、固定電位側容量電極としての機能の他、TFT30の上側において入射光からTFT30を遮光する遮光膜としての機能を併せ持つ。そして、図10中、格子状に形成された下側遮光膜11aと、縦方向に延在するデータ線6aと横方向に延在する容量線300とが交差してなす格子状の遮光膜により、各画素の開口領域が規定されている。
データ線6aは、コンタクトホール81を介して、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。尚、上述した中継層71と同一膜からなる中継層を形成して、当該中継層及び2つのコンタクトホールを介してデータ線6aと高濃度ソース領域1dとを電気的に接続してもよい。
画素電極9aは、中継層71を中継することにより、コンタクトホール83及び85を介して半導体層1aのうち高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続されている。画素電極9aの上層側には、ラビング処理等の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、ITO膜等の透明導電性膜からなる。配向膜16は、ポリイミド膜等の透明な有機膜からなる。
他方、マイクロレンズアレイ板20には、その全面に対向電極21が設けられており、その上層に、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は、ITO膜等の透明導電性膜からなる。また配向膜22は、ポリイミド膜などの透明な有機膜からなる。マイクロレンズアレイ板20には、図6に示した如く、各画素の非開口領域に対応して格子状又はストライプ状の遮光膜240を設けるようにしてもよい。遮光膜240もまた、マイクロレンズアレイ板20側から入射する光がチャネル領域1a’に侵入するのを阻止するのに寄与する。そして、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置された、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板20との間には液晶が封入され、液晶層50が形成される。
ここで図12を参照して、電気光学装置におけるマイクロレンズアレイ板20の集光機能について説明する。図12は、マイクロレンズアレイ板20における各マイクロレンズ500により入射光が集光される様子を表している。尚、図12では、各マイクロレンズ500は、そのレンズ中心が、各画素中心に一致するように配置されている。
図12において、マイクロレンズアレイ板20は、上方から入射される入射光を画素の開口領域に夫々集光する、マトリクス状に配置された複数のマイクロレンズ500と、そのレンズ縁部に形成された第1膜220とを備える。そして、透明板部材210の上に(図中下側に)、対向電極21及び配向膜22が形成されている。
このような構成の電気光学装置では、駆動時に、マイクロレンズアレイ板20側から入射される入射光は、複数のマイクロレンズ500が、夫々対応する画素の開口領域に集光する。そのため、マイクロレンズ500が無い場合と比べ、各画素における実効開口率が高められている。
また、マイクロレンズ500は、レンズ面の形状が「理想的な非球面」に規定されているためにレンズ効率に優れ、特に周縁部500Aにおける入射光の利用効率が極めて高いことから、コントラスト比の良好な表示が可能である。同時に、マイクロレンズ500に固有のレンズ形状から、入射光は、図5のように各画素の開口領域内に概ね均一な分布でもって入射される。その結果、レンズ内外で局所的に光強度の高い箇所が生じるのが防止され、マイクロレンズ500及び電気光学装置自体の耐光性が向上する。
尚、このような電気光学装置においては、マイクロレンズアレイ板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えばTN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
また、本実施形態では、対向基板としてマイクロレンズアレイ板20を用いているが、マイクロレンズアレイ板20をTFTアレイ基板として利用し、その上に回路を構築することも可能である。
(マイクロレンズアレイ板の製造方法)
次に、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板20の製造方法について、図13から図16を参照して説明する。図13及び図14は、マイクロレンズアレイ板20の製造工程を表している。図15は、マイクロレンズアレイ板20の比較例を表しており、図16は、マイクロレンズアレイ板20の変形例を表している。
ここでは、マイクロレンズ500に対応する凹部を、透明板部材210に対し2段階にエッチングを施すことで形成する。2段階のエッチングの夫々に関する工程は、「第1曲面形成工程」と「第2曲面形成工程」とに分けられている。
始めに「第1曲面形成工程」を実施する。
先ず、図13(a)の工程において、石英等からなる透明板部材210a上に、例えばフッ酸系などの所定種類の第1エッチャントに対するエッチングレートが透明板部材210aより高い第1膜220aを形成する。このような第1膜220aは、例えばCVD、スパッタリング等により、透明な酸化シリコン膜として形成される。その後、第1膜220aに対して、例えば800〜900℃程度である所定温度による熱処理或いはアニール処理を施して、第1膜220aのエッチングレートを制御する。その際、透明板部材210aは、例えば石英からなるので、このような比較的高温の熱処理を施しても、透明板部材210aが破壊する等の問題は特に生じない。
続いて、第1膜220aの上に、例えばCVD、スパッタリング等によりポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜からマスク層612を形成する。このマスク層612は、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いたパターニングにより、形成すべきマイクロレンズの中心に対応する個所に穴612aが形成される。穴612aの径は、形成すべきマイクロレンズ500の径と比べると小さくなるように開けておく。
次に、図13(b)の工程において、このような穴612aが開けられたマスク612を介して、第1膜220a及び透明板部材210aを、フッ酸系などの第1エッチャントにより、ウエットエッチングする。すると、第1膜220aのエッチャントに対するエッチングレートは、透明板部材210aより高いので、第1膜220aは、より早くエッチングされる。即ち、サイドエッチが相対的に大きく入るので、テーパーの付いた、底の浅い凹部が掘られることになる。
その後、時間管理等により、所定の大きさに凹部251が掘られた段階で、エッチングを終了する。こうして、形成すべきマイクロレンズの中心に対応する個所の夫々に、凹部251が掘られた透明板部材210bが形成される。
次に、図13(c)の工程において、マスク層612をエッチング処理によって除去する。尚、図13(b)の工程におけるエッチングによって、マスク層612が完全に除去されるようにマスク612の膜厚を設定すれば、図13(c)の工程は、省略可能である。
以上が本実施形態における「第1曲面形成工程」の一例である。次に、「第2曲面形成工程」の一例を実施する。
次に、図14(a)の工程において、透明板部材210bの上に、フッ酸系などの所定種類の第2エッチャントに対するエッチングレートが第1膜220aよりも高い第2膜222aを形成する。即ち、第2膜222a、第1膜220a、透明板部材210bの順にエッチングレートが大きくなるように、第2膜222aと第2のエッチャントが選定される。この第2エッチャントは、第1曲面形成工程におけるウエットエッチングに用いる第1エッチャントと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2膜222aは、第1膜220aと同様、例えばCVD、スパッタリング等により透明な酸化シリコン膜として形成することができ、例えば熱処理等によりエッチングレートが制御される。
続いて、第2膜222aの上に、例えばCVD、スパッタリング等によりポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜からマスク層622を形成する。マスク層622は、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いたパターニングにより、形成すべきマイクロレンズの中心に対応する個所に穴622aが形成される。穴622aの径は、穴612aの径よりも小さくなるように開けておく。
次に、図14(b)の工程において、穴622aが開けられたマスク622を介して、第2膜222a及び透明板部材210bを、フッ酸系などの第2エッチャントにより、ウエットエッチングする。このとき、第2膜222aの第2エッチャントに対するエッチングレートは透明板部材210b及び第1膜220より高いので、サイドエッチが相対的に大きく入り、底の浅い凹部が掘られる。そして、第2膜222a、第1膜220a、及び透明板部材210bのエッチングレートの大小関係から、ここで形成される凹部の曲面は、凹部251の側面よりも曲率が大きくなる。
その後、マイクロレンズ500に対応する大きさの凹部が掘られた段階で、エッチングを終了する。こうして、形成すべきマイクロレンズの中心に対応する個所の夫々に、凹部252が掘られた透明板部材210が完成する。
ここで、凹部252が構成する面は、凹部251を下地とする周縁部では、凹部251のテーパー形状に由来した平面的形状であるのに対し、周縁部の内側の透明板部材210を下地とする中心部では、上記のエッチングレートの違いによって底の浅いすり鉢状の曲面となる。即ち、周縁部よりも中心部の方が曲率は大きく、周縁部と中心部との境界は、凹部252の内側から外側に向かって膨らんだ曲面となる。但し、凹部252は、凹部251ないし凹部251を下地とする第2膜222aを表面から掘り進めて形成されるので、境界付近における曲率の変化は連続的になる。
よって、凹部252の曲面は、レンズ面としての理想的非曲面を構成する。また、このときのエッチングの進行度合いに応じて、第1膜220が、この凹部252の周縁部に残された本発明独自の構造が得られる。
本実施形態では特に、例えば材質、密度、孔隙率等の第1膜220a及び第2膜222aの種類、例えばCVD、スパッタリング等の第1膜220a及び第2膜222aの形成方法、例えば400℃以下程度或いは400〜1000℃程度等の第1膜220a及び第2膜222aの形成温度、第1膜220a及び第2膜222aの形成後における熱処理或いはアニール処理における温度のうち、少なくとも一つに係る条件設定により、エッチングレートの制御を行う。例えば、CVDとスパッタリングとでは、後者の方が、第1膜220a又は第2膜222aの膜質がより緻密となり、そのエッチングレートを高くできる。また、例えば、第1膜220a又は第2膜222a形成後の熱処理については、温度を高くすると膜質がより緻密となり、そのエッチングレートを低くでき、逆に温度を低くするとそのエッチングレートを高くできる。そして、係るエッチングレートの制御によって、最終的に得られる凹部252が規定する理想的非球面における曲率或いは曲率分布を比較的容易に制御できる。
尚、第1膜220a又は第2膜222aの膜厚によっても、最終的に得られる凹部252が規定する理想的非球面における曲率或いは曲率分布を制御できる。
このようなエッチングレート制御用の各種条件設定や、第1膜220aないし第2膜222aの膜厚設定は、実験的、経験的、理論的に、或いはシミュレーション等によって、実際に用いられるマイクロレンズ500のサイズ及びマイクロレンズ500として要求される性能や装置仕様等に応じて、個別具体的に設定すればよい。
次に、図14(c)に示すようにマスク層622をエッチング処理によって除去する。尚、図14(b)の工程におけるエッチングによって、マスク層622が完全に除去されるように、マスク622の膜厚を設定すれば、図14(c)の工程は、省略可能である。
以上が、本実施形態における「第2曲面形成工程」の一例である。
更に、図14(d)の工程において、マイクロレンズ500の表面に熱硬化性の透明な接着剤を塗布してネオセラム・石英等からなるカバーガラス200を押し付けて硬化させる。これにより、透明板部材210に掘られた各凹部内に、接着層230が充填されてなるマイクロレンズ500が完成する。この際、透明板部材210よりも高屈折率の接着層230を形成することで、各々が凸レンズからなる理想的非球面のマイクロレンズ500を比較的簡単に作成できる。尚、この工程では、カバーガラス200を研磨して、所望の厚みを有するカバーガラス200としてもよい。
以上説明したように本実施形態の製造方法によれば、図1から図4に示した如き理想的非球面のマイクロレンズ500がアレイ状に形成されたマイクロレンズアレイ板20を比較的効率良く製造できる。
また、ここでは、第2曲面形成工程を1回しか実施しない場合について説明したが、第2曲面形成工程は、n(但し、nは2以上の自然数)回繰り返し実施するようにしてもよい。即ち、一旦形成された凹部252に、ウエットエッチングが繰り返し施される。その場合、透明板部材、第1膜及び第2膜のエッチングレートの違いから、サイドエッチが優位に進み、凹部252の曲面において、曲率の境界にあたる部分が削られる。よって、第2曲面形成工程を繰り返すことで、境界での曲率変化がより連続的となり、境界付近における曲率もより適正に制御できるようになる。
その際、第2曲面形成工程の度毎に、第2膜のエッチングレートを段々高くなるように設定するとよい。また、マスクの穴の径も、第2曲面形成工程の度毎に段々小さくするとよい。そのような調整をすれば、凹部の形状を徐々に変形させるような加工ができ、凹部を各部の曲率が最適に制御された理想的形状に整形することが可能である。
尚、理想的非曲面の凹部を形成するには、以上説明したように、(i) 最低2回のエッチングを行うこと、(ii) 透明板部材上にエッチングレートがより高い膜を設けてエッチングすることが重要である。例えば、第1曲面形成工程しか実施しない場合は、図15(a)に示したように、得られる凹部251’は、曲率の境界500C’がどちらかというと凹部251’の内側に向かって突き出るように形成され、理想的非曲面ではなくなる。これは、第2膜を設けずに第2曲面形成工程実施する場合も同様である。また、図15(b)に示したように、第1膜も第2膜も設けずに2回のエッチングを行う場合には、得られる凹部252’は、曲率の異なる2つの球面で構成されたものとなり、理想的非曲面ではなくなる。
また、本発明独自の構造として、凹部252の周縁部に第1膜220が残された場合について説明したが、このような製造方法においては、エッチングの進行度合いに応じて、異なる形態の凹部が出来得る。例えば、エッチングの進行度合いが浅ければ、図16に示したように、周縁部に第1膜220だけでなく第2膜222も残された凹部253が形成されることになる。このような形態のマイクロレンズアレイ板もまた、本発明の技術的範囲に含まれる。
更に、図14(c)に示した凹部252が完成した段階にある透明板部材210を2枚用意して、これらを相互に貼り合わせることにより両凸レンズのマイクロレンズを製造することも可能である。或いは、凹部252を、2P法等における型として利用することにより、理想的非球面のマイクロレンズを製造することも可能である。
加えて、図6に示した変形形態におけるマイクロレンズアレイ板を製造する場合には、上述した図14(d)の工程に続いて、遮光膜240及び保護膜241などを、スパッタリング、コーティング等によりこの順に成膜すればよい。
また、上記実施形態では、TFTマトリクス駆動方式の液晶装置について説明したが、本発明の電気光学装置は、TFTの代わりに薄膜ダイオード(TFD:Thin Film Diode)により各画素が駆動される装置であってもよい。
(電子機器の実施形態)
次に、以上詳細に説明した電気光学装置をライトバルブとして用いた電子機器の具体例として、複板式カラープロジェクタの実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。ここに図17は、複板式カラープロジェクタの図式的断面図である。
図17において、本実施形態における複板式カラープロジェクタの一例たる、液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された電気光学装置を含む液晶モジュールを3個用意し、夫々RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。
液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。この際特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うマイクロレンズの製造方法、マイクロレンズ、電気光学装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…TFTアレイ基板、20…マイクロレンズアレイ板、50…液晶層、200…カバーガラス、210…透明板部材、220、220a…第1膜、222a…第2膜、230…接着層、240…遮光膜、500…マイクロレンズ、500A…周縁部、500B…中央部、500C…(周縁部と中央部との)境界。