JP4268462B2 - 高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、耐震性の観点からの低降伏比、高靭性と同時に、火災時の高温強度を保証し得る建築用鋼などとしての要求に耐える引張強さ590N/mm2級、板厚40mm以下の高張力鋼板の製造方法に関するもので、鉄鋼業においては厚板ミルへの適用が最も適している。なお、製造された高張力鋼板の用途としては、建築分野のみならず、土木、海洋構造物、造船、各種の貯槽タンクなどの一般的な溶接構造用鋼として広範な用途に適用できる。
【0002】
【従来の技術】
建築用鋼材は、弾性設計(許容応力度設計)から、1981年6月に施行された新耐震設計基準に基づく終局耐力設計への移行に伴い、低降伏比が求められている。低降伏比化を達成するため、一般に、鋼のミクロ組織の二相(Dual phase)化、すなわち、降伏を支配する軟質相(通常、フェライト)と引張強さを確保するための硬質相(パーライト、ベイナイト、マルテンサイトなど)を形成させる方法が広く用いられている。具体的には、制御圧延を含む熱間圧延後の鋼または焼入後の鋼を、フェライトとオーステナイトの二相域温度に再加熱して、フェライトとCが濃化されたオーステナイトとし、その後空冷以上の冷速で冷却(、さらにその後焼き戻し処理)する方法がある(例えば、特許文献1参照)。このとき、成分的には、C量が高いほど二相組織化が容易となるばかりでなく、硬質相がより硬化し、低降伏比化が容易となる。しかし、高C化は、溶接性や低温靭性には不利となるという問題があった。それに対し、低温靭性を改善するためには、低C化や制御圧延が有効ではあるが、いずれも降伏比を上昇させるため、低温靭性向上と低降伏比化とは相容れず、両立が極めて困難であった。従来、建築用途では、靭性要求レベルが低く、低降伏比化に有利な高C鋼でも大きな問題となることはなかったが、阪神大震災を契機とした近年の耐震性能への要求の厳格化傾向には、必ずしも十分に対応できないという問題があった。
【0003】
また、本発明が主として対象とする引張強さ590N/mm2級鋼は、一般には調質(焼入−焼戻)処理され、非調質(熱処理なし)で製造されることは少ない。比較的板厚が薄い場合には、制御圧延ままでも強度上は確保可能であるが、制御圧延ままでは建築用などとしての低降伏比要求を満足することは極めて困難であった。
【0004】
さらに、高温強度の保証を目的とした建築用途でのいわゆる耐火鋼として、含Mo鋼の製造方法が開示されている。しかし、Moは鋼の焼入れ性を顕著に高めるとともに、Cとの相互作用が極めて強いために、材質変化が製造条件の変動に敏感で、常温での強度−靭性バランスやそのばらつき、常温強度と高温強度のバランスを考慮した場合、高温強度上は有効ではあるが、一般的な溶接構造用鋼としては、多く添加されることはなかった。また、Moの多量添加は、溶接性の顕著な劣化に加え、母材および溶接部の靭性も著しく劣化させるため、高温強度を向上させる目的であってもあまり多く添加されることはなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−266378号公報
【特許文献2】
特開平2−77523号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すべく、優れた高温強度とともに、靭性や溶接性に優れ、さらには低降伏比をも同時に満足する高張力鋼を得るため、比較的多いMoをNbと複合添加した上で溶接割れ感受性組成PCMも限定し、さらに、鋼のミクロ組織を限定すること、そして、そのための製造方法を限定することで、上述した複合特性を有する鋼を非調質で工業的に安定して供給可能な方法を提供するものである。
【0006】
本発明によれば、低降伏比化の結果としての大きな塑性変形能(建築用途などでは耐震性)はもちろん、火災時など高温にさらされる環境でも十分な耐力を有し、また、靭性や溶接性にも優れた高張力鋼が大量かつ安価に、さらに非調質のため比較的短工期で供給できるため、種々の用途の広範な溶接鋼構造物の安全性向上に資することが可能となった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のポイントは、Nbと同時にMo量を比較的多く添加することで高温強度を安定して確保することを第一義とした上で、Mo多量添加による溶接性の劣化や靭性の劣化を補償するため、C、Si、Mnをはじめとする個々の合金元素量およびPCMを限定し、さらに鋼のミクロ組織およびそのための製造条件を限定することで、優れた高温強度と溶接性、靭性などの複合特性を両立し得ることにある。
【0008】
そのために鋼成分をはじめ製造方法を本発明の通り限定したものであるが、その要旨は、以下の通りである。
【0009】
(1) 鋼成分が質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.1〜0.6%、
Mn:0.8〜2.0%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Nb:0.01〜0.06%、
Mo:0.7〜1.2%、
Al:0.06%以下、
N:0.006%以下、
かつ
CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
と定義する溶接割れ感受性組成PCMが0.25%以下で、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分の鋼片または鋳片を1000〜1250℃の温度範囲に再加熱後、950℃以下での累積圧下量を50%以上として700〜800℃の温度で圧延を終了し、その後放冷することにより、鋼板の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置のミクロ組織がポリゴナルまたは擬ポリゴナル・フェライトを面積分率50%超とし、かつ、該鋼の全厚引張試験において上・下降伏点のないようにすることを特徴とする高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法
【0010】
(2) 上記鋼成分がさらに、質量%で
Ni:0.05〜1.0%、かつ、Cu添加量の1/2以上、
Cu:0.05〜1.0%、
Cr:0.05〜1.0%、
V:0.01〜0.06%、
B:0.0002〜0.003%、
Ti:0.005〜0.025%、
Mg:0.0002〜0.005%、
の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法
【0011】
(3) 上記鋼成分がさらに、質量%で
Ca:0.0005〜0.004%、
REM:0.0005〜0.010%
のいずれか1種を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明が、請求項の通りに鋼組成および製造方法を限定した理由について説明する。
【0014】
Cは、鋼材の特性に最も顕著に効くもので、下限0.05%は強度確保や溶接などの熱影響部が必要以上に軟化することのないようにするための最小量である。しかし、C量が多すぎると焼入れ性が必要以上に上がり、鋼材が本来有すべき強度、靭性バランス、溶接性などに悪影響を及ぼすため、上限を0.15%とした。
【0015】
Siは、本発明のポイントとなる元素の一つである。本発明においては、非調質で鋼のミクロ組織がポリゴナルあるいは擬ポリゴナル・フェライト主体でありながら、引張試験において上・下降伏点が出ないことを特徴としているが、これは本発明者らの研究によれば、硬質組織中へのマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相の生成によるものと推察している。本発明は上・下降伏点が出ないことで低降伏比化を達成するものであるが、これは降伏点が出ない場合、降伏応力として、便宜上0.2%オフセット耐力がとられるためである。Siは、セメンタイトに固溶し難く、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相の生成を助長する傾向にあり、本発明においては、0.1%以上の添加を必須とした。一方、多過ぎる添加は、溶接性、溶接熱影響部靭性を劣化させるため、上限を0.6%に限定した。
【0016】
Mnは、強度、靭性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.8%である。しかし、Mn量が多すぎると焼入性が上昇して溶接性、溶接熱影響部靭性を劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助長するので上限を2.0%とした。
【0017】
Pは、本発明鋼においては不純物であり、P量の低減は溶接熱影響部における粒界破壊を減少させる傾向があるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接熱影響部の低温靭性を劣化させるため上限を0.02%とした。
【0018】
Sは、Pと同様本発明鋼においては不純物であり、簿材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接熱影響部の低温靭性を劣化させるため上限を0.01%とした。
【0019】
Nbは、Moを比較的多量添加する本発明においては、重要な役割を演ずる元素である。まず、一般的な効果として、オーステナイトの再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を発揮する上で必須元素で、最低0.01%の添加が必要である。また、圧延に先立つ再加熱時の加熱オーステナイトの細粒化にも寄与する。さらに、析出硬化として強度向上効果を有し、Moとの複合添加により高温強度にも寄与する。しかし、過剰な添加は、溶接部の靭性劣化を招くため上限を0.06%とした。
【0020】
Moは、鋼の高温強度を確保する上で必要不可欠の元素で、本発明においては最も重要な元素の一つである。高温強度のみの観点では添加量の下限の緩和は可能であるが、Siの限定理由の中でも述べたように、フェライト主体組織となる制御圧延ままで硬質組織中に降伏点が現れない程度にマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相を生成させ、低降伏比化を達成するため、下限を0.7%とした。多すぎる添加は、母材材質の制御(ばらつきの制御や靭性の劣化)が困難になるとともに、溶接性も劣化させるため、1.2%以下に限定した。
【0021】
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本発明鋼においては、その下限は限定しない。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄性を損ね、母材の靭性を劣化させるだけでなく、溶接熱影響部の靭性も劣化するので上限を0.06%とした。
【0022】
Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、後述するTiを添加した場合。TiNを形成して前述のように鋼の性質を高めたり、Nbと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させる。このため、N量として最低0.001%必要である。しかしながら、N量の増加は溶接熱影響部靭性、溶接性に有害であり、本発明鋼においてはその上限は0.006%である。
【0023】
次に必要に応じて含有することができるNi、Cu、Cr、V、Ti、B、Mgの添加理由について説明する。
【0024】
基本となる成分に、さらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがって、その添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。
【0025】
Niは、過剰に添加しなければ、溶接性、溶接熱影響部靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。一方、過剰な添加は高価なだけでなく、溶接性にも好ましくないため、上限を1.0%とした。なお、Cuを添加する場合、熱間圧延時のCu−クラックを防止するため、前記添加範囲を満足すると同時に、Cu添加量の1/2以上とする必要がある。
【0026】
Cuは、Niとほぼ同様の効果、現象を示し、上限の1.0%は溶接性劣化に加え、過剰な添加は熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるため規制される。下限は実質的な効果が得られるための最小量とすべきで0.05%である。これは後述するCrについても同様である。
【0027】
Crは、母材の強度、靭性ともに向上させる。しかし、添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶接性を劣化させるため、上限を1.0%とした。
【0028】
上記、Ni、Cu、Crは、母材の強度、靭性上の観点のみならず、耐候性にも有効であり、そのような目的においては、溶接性を損ねない範囲で添加することが好ましい。
【0029】
Vは、Nbとほぼ同様の作用を有するものであるが、Nbに比べてその効果は小さい。また、Vは焼入性にも影響を及ぼし、高温強度向上にも寄与する。Nbと同様の効果は0.01%未満では効果が少なく、上限は0.06%まで許容できる。
【0030】
Tiは、母材および溶接部靭性に対する要求が厳しい場合には、添加することが好ましい。なぜならばTiは、Al量が少ないとき(例えば0.003%以下)、Oと結合してTi23を主成分とする析出物を形成、粒内変態フェライト生成の核となり溶接部靭性を向上させる。また、TiはNと結合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑え、圧延組織の細粒化に有効であり、また鋼板中に存在する微細TiNは、溶接時に溶接熱影響部組織を細粒化するためである。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし、多すぎるとTiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.025%である。
【0031】
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、ファライトの生成を抑制することを介して焼入性を向上させ、強度向上に寄与する。この効果を享受するため、最低0.0002%以上必要である。しかし、多すぎる添加は焼入性向上効果が飽和するだけでなく、靭性上有害となるB析出物を形成する可能性もあるため、上限を0.003%とした。なお、タンク用鋼などとして、応力腐食割れが懸念されるケースでは、母材および溶接熱影響部の硬さの低減がポイントとなることが多く(例えば、硫化物応力腐食割れ(SSC)防止のためにはHRC≦22(HV≦248)が必須とされる)、そのようなケースでは焼入性を増大させるB添加は好ましくない。
【0032】
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制し、細粒化する作用があり、溶接部の強靭化が図れる。このような効果を享受するためには、Mgは0.0002%以上必要である。一方、添加量が増えると添加量に対する効果代が小さくなるため、コスト上得策ではないので上限は0.005%とした。
【0033】
CaおよびREMは、MnSの形態を制御し、母材の低温靭性を向上させるほか、湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を低減させる。これらの効果を発揮するためには、最低0.0005%必要である。しかし、多すぎる添加は、鋼の清浄度を逆に悪化させ、母材靭性や湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を高めるため、添加量の上限はCa、REMそれぞれ0.004%、0.010%に限定した。CaとREMは、ほぼ同等の効果を有するため、いずれか1種を上記範囲で添加すればよい。
【0034】
鋼の個々の成分を限定しても、成分系全体が適切でないと優れた特性は得られない。このため、PCMの値を0.25%以下に限定する。PCMは溶接性を表す指標で、低いほど良好である。本発明鋼においては、PCMが0.25%以下であれば、優れた高温強度と同時に優れた溶接性を確保することが可能である。
【0035】
また、ミクロ組織は、本発明のようにMoを0.7%以上添加する場合、焼入性が高いために製造条件が適正でないと、圧延後放冷しても靭性上好ましくない、いわゆるベイニティックな組織が主体となる傾向にあり、この傾向はMo添加量が高いほど顕著である。そこで、本発明では、ミクロ組織は、ポリゴナルまたは擬ポリゴナル・フェライト主体組織に限定した。「主体組織」とは、文字通り主たる組織であり、本発明では広範の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置での組織構成比率(観察面での面積分率)で50%超であることを意味する。
【0036】
このほか、低降伏比化のため、Si量の限定理由の中で述べたように、硬質組織中にマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相を生成させることがポイントであるが、発明者らにはその生成量について必ずしも十分な知見がなく、引張試験における応力−歪(荷重−伸び)曲線に上・下降伏点が出ないことに限定することで、本発明の特徴を明確にしようと意図したものである。
【0037】
上述した組織を安定して得るためには、製造条件を本発明の通り限定する必要がある。その理由について以下に説明する。
【0038】
まず、圧延に先立つ加熱温度を1000〜1250℃に限定した理由は、加熱時のオーステナイト粒を必要以上に大きくさせず、圧延組織の微細化を図るためである。1250℃は加熱時のオーステナイトが極端に粗大化しない上限温度であり、加熱温度がこれを超えるとオーステナイト粒が粗大混粒化し、圧延オーステナイト粒も相対的に粗大となる。この結果、変態後の組織も相対的に粗大となるばかりでなく、粗粒なオーステナイトからの変態はミクロ組織もベイニティックなものになり易く、鋼の靭性が著しく劣化する。一方、加熱温度の下限は、熱間圧延時の制御圧延の効果や析出硬化を発現させるためのNbの溶体化の観点から1000℃に限定した。
【0039】
前記温度範囲に再加熱した鋳片または鋼片を、圧延では950℃以下での累積圧下量を50%以上として700〜800℃の温度で熱間圧延を終了する必要がある。950℃以下での累積圧下量が少ない場合、Nbと比較的多いMoを複合添加する本発明成分においても圧延オーステナイトの細粒化が不十分となり、前述したミクロ組織制御や低温靭性の安定確保が困難なため、本発明の通り限定した。同様に、圧延終了温度が高すぎると、圧延オーステナイトの細粒化が不十分となって、本発明のような高Mo成分下では焼入性が高くなりすぎ、ベイナイト主体組織となり、過剰な強度と靭性劣化を招くため、上限を700℃とした。また、圧延終了温度が700℃を下回ると、変態が一部開始する可能性が高まり、最終組織に加工(圧延)組織を残す恐れがあり、靭性上好ましくないばかりでなく、降伏比の上昇を招き、圧延ままでは製造が困難となるため、圧延終了温度は700℃以上に限定する。なお、これらの圧延温度はいずれもモニタリング可能な鋼板表面温度であることを申し添える。
【0040】
圧延後は放冷とし、調質処理は行わない。これは本発明が対象とする板厚領域(40mm以下)では加速冷却による鋼板の形状や残留応力制御の不安定性を回避でき、調質処理を行わないことは製造コストや工期短縮などの観点からも好ましい。圧延後の放冷、非調質化は、本発明が達成しようとする鋼材特性を得る上で必須というのではなく、むしろ、鋼成分、加熱・圧延条件を本発明の通り限定することで、圧延後放冷、非調質でも製造可能となったものである。
【0041】
【実施例】
転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分を用い、板厚40mm以下の鋼板を制御圧延ままの非調質で製造し、その組織、材質ほかを調査した。
【0042】
第1表に比較例とともに本発明鋼の鋼成分を、第2表に鋼板の製造条件と組織、材質ほかの調査結果を示す。本発明法に則った成分、組織および製造方法による鋼板(本発明鋼)は、すべて良好な特性を有する。これに対し、本発明の限定範囲を逸脱する比較鋼は、強度、靭性、降伏比などの基本特性や常温降伏強度に対する高温降伏強度比(高温YS比)のいずれかが劣り、PCMが高い鋼では室温での斜めy形溶接割れ試験によりルート割れが発生している。また、特に、比較例29では、Cu添加量に対してNi添加量が低いため、熱間圧延時にクラックが生じ、製造が困難となった。さらに、比較例31では、Mo添加量が高いために、PCMは本発明の限定範囲であるが、室温での斜めy形溶接割れ試験によりルート割れが発生した。比較例32では、Nb、Tiが高いため、溶接部の靭性が著しく劣化することが確認されている。
【0043】
【表1】
Figure 0004268462
【0044】
【表2】
Figure 0004268462
【0045】
【発明の効果】
本発明により、溶接性や靭性、低降伏比をも同時に満足する高温強度に優れた高張力鋼の提供が可能となった。その結果、建築用をはじめとする各種の溶接鋼構造物として高温強度のみならず、溶接性や靭性にも優れた低降伏比高張力鋼を、大量かつ安価に、しかも比較的短納期で供給できるようになった。このような鋼材を用いることにより、火災時などの高温での強度を維持し、さらに溶接性や靭性にも優れ、建築用鋼としては低降伏比も達成されているため、各種の溶接鋼構造物の安全性を一段と向上させることが可能となった。

Claims (3)

  1. 鋼成分が質量%で、
    C:0.05〜0.15%、
    Si:0.1〜0.6%、
    Mn:0.8〜2.0%、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Nb:0.01〜0.06%、
    Mo:0.7〜1.2%、
    Al:0.06%以下、
    N:0.006%以下、
    かつ
    CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
    と定義する溶接割れ感受性組成PCMが0.25%以下で、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分の鋼片または鋳片を1000〜1250℃の温度範囲に再加熱後、950℃以下での累積圧下量を50%以上として700〜800℃の温度で圧延を終了し、その後放冷することにより、鋼板の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置のミクロ組織がポリゴナルまたは擬ポリゴナル・フェライトを面積分率50%超とし、かつ、該鋼の全厚引張試験において上・下降伏点のないようにすることを特徴とする高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法
  2. 上記鋼成分がさらに、質量%で
    Ni:0.05〜1.0%、かつ、Cu添加量の1/2以上、
    Cu:0.05〜1.0%、
    Cr:0.05〜1.0%、
    V:0.01〜0.06%、
    B:0.0002〜0.003%、
    Ti:0.005〜0.025%、
    Mg:0.0002〜0.005%、
    の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法
  3. 上記鋼成分がさらに、質量%で
    Ca:0.0005〜0.004%、
    REM:0.0005〜0.010%
    のいずれか1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高温強度に優れた非調質低降伏比高張力鋼板の製造方法
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