JP4264928B2 - 連続炉における加熱・冷却方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱帯と冷却帯とが連続してトンネル状につながる連続炉における金属製品、特にステンレス鋼製の製品の加熱処理方法に係わるものである。
【０００２】
【従来の技術】
上述した種類の加熱処理方法においては、金属製品等の被加熱処理品は炉内の加熱帯と冷却帯とを同一の速度で通過して、加熱・冷却される。例えば、トレイプッシャー方式でトレイ上に載って連続して炉内へ押し込まれ、加熱帯と冷却帯とを通って熱処理される金属製品は、加熱のために適した速度で先ず加熱帯で加熱され、続いてこの速度で冷却帯で冷却される。従って、この速度は、冷却のための技術上で効果的な、または経済上で効率的な速度では必ずしもない。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
加熱帯で加熱された金属製品を、冷却帯では、加熱帯での速度とは独立した任意の速度で冷却、例えば従来の７倍程もの高い冷却速度で冷却するのが、技術上または経済的に望ましい事例が屡々ある。
ところが、このような事例の要望に見合うように、冷却帯での被加熱処理品の冷却速度を変えることは難しい。
その理由の一つは、連続炉の加熱帯と冷却帯で被加熱処理品を搬送する手段が同一であることである。更に、他の理由は、高温度に加熱され製品を急冷すると、製品を運ぶ搬送手段、例えばトレイプッシャー方式で用いられるトレイが、この際の急速な温度変化による膨張率に耐えられずに損傷してしまうためである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の方法では、連続炉における加熱・冷却方法において、炉の加熱帯での被加熱処理品の搬送にはトレイプッシャー方式を用い、これに続く冷却帯での被加熱処理品の搬送には、トレイイプッシャー方式の搬送とは独立して任意の速度で運転できるローラーハース方式を用いる。また、トレイプッシャー方式で使われるトレイを、線膨張係数が温度に係わらずに低く一定な黒鉛製とした。
【０００５】
本発明になる連続炉における加熱・冷却方法の更なる詳細を、以下に述べる実施の形態中の記述にて明らかにする。
【０００６】
【発明の実施の形態】
実施例：
図１では、本発明の方法を実施するのに好適な連続雰囲気加熱炉の一例が示される。
全体が符号１で示される連続雰囲気加熱炉は、加熱帯をなす加熱室２と冷却帯をなす冷却室３とからなる。この加熱室２と冷却室３とは連続してトンネル状に伸展する。
【０００７】
加熱室の中央を長手方向で水平に、炉床５が伸展し、その上下に複数の発熱体４が設けられている。この炉床５上に、黒鉛製のトレイ６が連続してプッシャー（図示せず）にて押し込まれる。トレイ６には被加熱処理品７が載せられる。
【０００８】
加熱室２につながる冷却室３は、水冷壁８によって囲まれる。この壁内には、ローラーハース方式の多数の搬送ローラー９が、炉の長手方向を横切る方向で設けられ、駆動装置（図示せず）によって所望の速度で回転して、被加熱処理品７を載せたトレイ６を（図１では右手方向へ）搬送する。
【０００９】
この連続雰囲気加熱炉を用いて、ステンレス鋼（ＪＩＳ Ｇ３４４８）になる外径４８．６ｍｍｘ厚さ１．２ｍｍｘ長さ２００ｍｍの鋼管（ＳＵＳ３０４ＴＰＤ）の固溶化熱処理を行った。炉内雰囲気はアルゴンガスとした。
この鋼管７の複数個を黒鉛製の各トレイ６上に載せ、加熱帯の加熱室２内へ連続して押し進め、ここで５分間で１０５０℃に加熱した。続いて冷却帯の冷却室３内へ進んだ鋼管７を、搬送ローラー９にて３．２分の急速で冷却室を通過させて、５００℃まで急速冷却した。このときの冷却速度は１５６．３℃／ｍｉｎであった。
【００１０】
本発明の上記実施例における鋼管７の加熱・冷却の温度の上昇と下降は、図２で示されるグラフの通りであった。
【００１１】
この固溶化処理を施した鋼管７を、JISZ2371の塩水噴霧試験方法で、その耐蝕性のテストをした。１０００時間経過しても、錆の発生がなかった。
この種の鋼管をなすステンレス鋼を固溶化処理するとき、鋼中のCrの炭化物が再析出して鋼マトリックス中のCr濃度が下がり、錆が発生し易くなるのを防ぐために、固溶化加熱温度の約１０００℃前後から少なくとも７００℃前後まで４〜５分間で急冷する必要がある。
【００１２】
対比例：
加熱帯をなす加熱室２のトレイプッシャー方式を延長して、冷却帯をなす冷却室３内でも従来通りに、被加熱処理品である鋼管７を加熱室内での搬送速度と同一の速度で送って、冷却した。
上記の実施例と同様に加熱室内で１０５０℃に加熱された鋼管７は２３分で冷却室を通過し、５００℃まで冷却した。このときの冷却速度は21.7℃/minであった。
JISZ2371による耐食性のテストを同様にした。２００時間で錆が見られた。
【００１３】
【発明の効果】
上述したところから明らかな通りに、本発明方法によれば、連続雰囲気加熱炉における加熱とそれに続く冷却を、それぞれに適した速度で行うことができる卓越した効果がある。この効果は技術的には勿論のこと、産業経済上においても優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の方法を実施するのに好適な連続炉の一例を示す説明的な側断面図である。
【図２】本発明の方法の一実施例における被加熱処理品の加熱・冷却の温度を示すグラフである。
【符号の説明】
１−連続炉
２−加熱室
３−冷却室
４−発熱体
５−炉床
６−複数の連続して送られる黒鉛製トレイ
７−被加熱処理品
８−水冷壁
９−搬送ローラー

Claims (1)

1. 加熱帯と冷却帯とが連続してトンネル状につながる連続炉内へ、方形の黒鉛製の各トレイ上にステンレス鋼製の被加熱処理品を載せて連続して送り入れ、該トレイ上の被加熱処理品を加熱帯内ではトレイプッシャー方式により所定の速度で押し進めて加熱し、この加熱帯に続く冷却帯内では該トレイ上の被加熱処理品をローラーハース方式で上記した所定速度より早い移動速度でかつ被加熱処理品のステンレス鋼中にクロムの炭化物が再析出しないような冷却速度で急冷することを特徴とする連続炉における加熱・冷却方法。

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