JP4260716B2 - ポリアルキレングリコールを含有する蓄熱材組成物 - Google Patents
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Description
また、従来、マイナスの温度領域での蓄熱は、水と水に溶解性のある物質を混合するだけで成し遂げられることから、水などを用いて比較的容易に行うことができたが、プラス温度領域の蓄熱材に関しては安全性、コスト等の課題が発生し、比較的困難であった。
また、潜熱型蓄熱材料は、物質の融解などの相転位を利用したものであり、顕熱型蓄熱材料に比べて相転位温度付近の狭い温度領域に大量の熱エネルギーを貯蔵できることから、温度制御が比較的容易であることや、小容量でコンパクトな装置とすることが可能となる。このために潜熱型蓄熱材料の開発が注目されてきている。例えば、硫酸ナトリウム・10水塩(融点32℃)、酢酸ナトリウム・3水塩(融点58℃)、4級アンモニウム塩水和物蓄熱材料、有機化合物パラフィン系蓄熱材料などを用いた蓄熱材料が開発されてきている。さらに、脂肪族炭化水素、またはエステル等を用いたものも開発されてきており、床暖房や人体接触暖房用として実用化されてきているものもある。水和塩型蓄熱材料は、他の有機系蓄熱材料に比べて高い蓄熱密度を有し、かつ不燃性という特長を有するが、一方で融解・凝固の繰り返しによる相分離や過冷却現象を生じやすく、そのために、相分離防止剤や、過冷却防止剤を添加しなければ実用的でないという欠点がある。さらに、金属に対する腐食性が大きいため、収納容器材質には十分な配慮が必要であるという欠点もある。
また、本発明は、前記した本発明の蓄熱材組成物を蓄熱材料として用いた蓄熱装置に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の蓄熱材組成物を蓄熱材料として用いた蓄熱方法を提供するものである。
本発明者らは、このような結果になる原因を検討したところ、ポリアルキレングリコールの融解点(例えば、100%ポリエチレングリコール400では約4〜8℃、ポリエチレングリコール10000では56〜61℃)では、水は通常液体の水として存在する温度であり、水の融解熱は水−ポリアルキレングリコール系の融解点における融解熱に大きな寄与はしていないと考えられ、水に溶解しているポリアルキレングリコールの量だけ、ポリアルキレングリコールの融解熱が減少したのではないかと考えられた。仮にそうであるならば、ポリアルキレングリコールの水に対する溶解度を減少させておけば、水に溶解しているポリアルキレングリコールの量が減少し、その分だけ融解熱が回復するはずである。
この結果は、前記した本発明者らの仮定が正しいことを実証するものである。即ち、水−ポリエチレングリコール系の蓄熱材組成物において、ポリエチレングリコールに対して不溶であり、かつ水に対して易溶な塩類の少なくとも1種を添加し、これを水に溶解させることにより、水の添加によって減少させられていたポリエチレングリコールの融解熱の減少を回復することができることが判明した。
前記した表1には他の塩類を使用した場合の結果も同様に記載されている。これらの結果からは、回復の程度に多少の差が見られているが、これは添加した塩類の融解熱量やポリエチレングリコールとの相溶性の程度の相違によるものと考えられる。
なお、塩化マグネシウムの場合(表1の6番目)は、水が20質量%の場合よりも低い値になっているが、これは水溶液の量が45質量%と多くなっているためであり、ポリエチレングリコール55%−水45%の系では測定不能な程度に融解熱は小さくなっており、ポリエチレングリコール4000が70質量%で水が30質量%の場合では融解熱は18.96J/gであり、融解点は16.7℃あり、単に水だけと混合するよりも融解熱は68.99J/gと極めて大きくなっていることが明らかにされている。
同様に、ポリエチレングリコール10000(第一工業製薬社製)(以下の表2参照)、及びポリエチレングリコール1540(第一工業製薬社製)(以下の表3参照)についての結果を次の表2、及び表3にそれぞれ示す。
本発明におけるポリアルキレングリコールとしては、水と混合することができるものであれば特に制限はないが、好ましくはポリアルキレングリコールにおけるアルキレン基が、炭素数2〜6、好ましくは2〜3の直鎖状又は分枝状のアルキレン基からなるものが挙げられる。本発明の好ましいポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メチル−エチレン)グリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられるが、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールがより好ましい。
本発明の当該塩類としては、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールに実質的に不溶であって、かつ水に溶解し、水溶液中において当該塩類の少なくとも一部が実質的にイオン化するものであれば特に制限はないが、好ましくは20℃で水100g当たり5g以上、好ましくは10g以上、より好ましくは15g以上の溶解度を有する塩類が挙げられる。
本発明の塩類としては、前記した水に対する溶解度を有するものであれば、有機塩類でも無機塩類であってもよい。本発明の好ましい塩類としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩が挙げられるが、アルカリ金属塩がより好ましい。これらのアルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩としては、カルボン酸やスルホン酸などの有機酸塩でもってもよいし、ハロゲン化酸、炭酸、硫酸、硝酸などの無機酸塩であってもよい。好ましい塩類としては、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、ハロゲン化アンモニウム、炭酸アルカリ金属、炭酸アルカリ土類金属、及びアルカリ金属カルボン酸塩の群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。安全性や価格の点から、塩化ナトリウムが好ましい。
本発明者らの知見によれば、本発明の水溶液についてはイオン強度を考慮した質量モル濃度が潜熱量と融解点に大きく寄与しており、水溶液中に何モルの分子が存在しているかによって、融解熱と融解点がほぼ決定される。例えば、各種の塩類を用いた80質量%のポリエチレングリコール4000の水溶液の融解熱(J/g)と融解点(℃)の測定結果を次の表4に示す。
これらの結果をグラフ化したものを図1に示す。図1は表5におけるNaCl濃度(モル/kg)と融解熱(J/g)の関係を示したものである。これらのグラフからも融解熱がNaClのモル濃度に依存しているが明確にされている。
このことは本発明の蓄熱材組成物は、使用される塩類の分子種よりもそのモル濃度に大きく依存しており、より安価な塩類の使用が可能であることが示されていることになる。
本発明の水溶液における塩類の好ましい質量モル濃度としては、2個のイオンを生成する塩類の濃度で、1モル/kg以上、好ましくは2モル/kg以上、3モル/kg以上から各塩類の飽和濃度までの範囲とすることができる。
本発明の蓄熱材組成物における前記した水溶液の配合量としては、特に制限はないが、好ましくは塩類の水溶液が、蓄熱材組成物の全量に対して5〜60重量%、より好ましくは10〜60質量%、10〜45質量%程度である。好ましい水の含有量としては、例えば、3〜50質量%、より好ましくは10〜50質量%、20〜40質量%程度が挙げられる。
本発明の蓄熱材組成物は、蓄熱材料として、さらに他の添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、腐食防止剤、酸化防止剤、耐電防止剤、着色剤、防黴剤などが挙げられる。また、保形性や流動性を改善するために、粒状化してその表面を架橋性ポリマーなどで被覆してもよいし、カプセル化して使用することも可能である。
ポリエチレンやナイロンなどの合成樹脂を、本発明の蓄熱材組成物の容器とすことが好ましいが、これに限定されるものではない。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、DSC SEIKO6200(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
Claims (10)
- ポリアルキレングリコールに対して不溶で、かつ水溶性の塩類の少なくとも1種の水溶液、及びポリアルキレングリコールを含有してなり、当該塩類の水溶液が、水1kg当たり1モルの濃度から塩類の飽和濃度までの塩類を含有している水溶液である蓄熱材組成物。
- 塩類の水溶液が、当該塩類の飽和水溶液である請求項1に記載の蓄熱材組成物。
- 塩類が、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属の塩である請求項1又は2に記載の蓄熱材組成物。
- 塩類が、無機化合物の塩である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
- 塩類が、有機カルボン酸塩である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
- 塩類が、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、炭酸アルカリ金属、炭酸アルカリ土類金属、及びアルカリ金属カルボン酸塩の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
- 塩類の水溶液が、蓄熱材組成物の全量に対して5〜60重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
- ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールである請求項1〜7のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
- ポリアルキレングリコールの分子量が、1000以上である請求項1〜8のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の蓄熱材組成物を蓄熱材料として用いた蓄熱装置。
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