JP4244654B2 - エンジンの点火時期制御装置 - Google Patents

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  • Electrical Control Of Ignition Timing (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式エンジンの点火時期制御装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の点火時期制御装置として、特許文献1に示したようなものが知られている。この種の従来の点火時期制御装置では、エンジンの回転数や負荷などの運転状態信号に基づいて定めた基本点火時期を冷却水温度や燃焼の速さなどを考慮した所定の補正を施すことにより基本的に最大トルク点であるMBTの付近に点火時期を制御するようにしている。ただし、制御目標となるのは常にMBTというわけではなく、例えばノッキングが発生する領域ではトレースノックとなるようにMBTよりも遅らせた点火時期となるように補正する必要があり、低回転低負荷の領域ではMBTでは燃焼安定度が低下して吹き消えによる部分燃焼や失火が発生し、またHC排出量も多いことから、やはり点火時期リタードが必要となる。このような点火時期補正には、例えば回転と負荷で補正量を割り付けたトリミングマップを参照する手法が用いられている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10-30535号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンの運転環境ないしは運転条件の変化、あるいは機器類のバラツキや劣化によりノッキング特性や燃焼安定度が変化した場合には、これに対応するように点火時期を補正しようとすると、そのような外乱因子が作用する領域を正確に特定できないため、余計な領域まで補正して燃費や排気性能を損なうおそれが生じる。もしこのような外乱因子に対して正確な点火時期補正を実施しようとすると、判定条件が増加して制御ロジックが複雑化し、あるいは事前のマッチングに非常に多くの工数が必要となってしまう。
【0005】
【発明の概要】
本発明では、火花点火式エンジンの基本的な点火時期の要素として、MBT点火時期と燃焼安定限界点火時期とをそれぞれ運転状態に応じて求め、これらのうち遅いほうに基づいて点火時期制御を行う。これにより、MBTまたは燃焼安定限界点火時期のいずれかが外乱により変化したとしてもそれぞれを別個に補正した結果として、燃費および排気性能の点からより好ましい点火時期を設定することが可能となる。またこの場合、外乱に対する補正を演算により行うので、比較的簡単なロジックおよび工数で最適点火時期制御を実現することができる。
【0006】
前記MBT点火時期またはノック限界点火時期は、それぞれシリンダ内混合気の燃焼速度を用いて算出することができ、これによりメモリ容量や演算時間などの演算負荷を少なくしながら精度の高い演算結果を得ることができる。
【0007】
外乱に影響される点火時期の要素として、さらに燃焼安定限界の点火時期(以下単に燃焼限界という。)を付加することができ、これを運転状態から求めて前記MBT点火時期、ノック限界点火時期と比較し、最も遅い点火時期を選択する構成とすることにより、さらに精度の高い点火時期制御を行うことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のシステムを説明するための概略図である。
【0009】
空気は吸気コレクタ2に蓄えられた後、吸気マニホールド3を介して各気筒の燃焼室5に導入される。燃料は各気筒の吸気ポート4に配置された燃料インジェクタ21より噴射供給される。空気中に噴射された燃料は気化しつつ空気と混合してガス(混合気)を作り、燃焼室5に流入する。この混合気は吸気弁15が閉じることで燃焼室5内に閉じこめられ、ピストン6の上昇によって圧縮される。
【0010】
この圧縮混合気に対して高圧火花により点火を行うため、パワートランジスタ内蔵の点火コイルを各気筒に配した電子配電システムの点火装置11を備える。すなわち、点火装置11は、バッテリからの電気エネルギーを蓄える点火コイル13と、点火コイル13の一次側への通電、遮断を行うパワートランジスタと、燃焼室5の天井に設けられ点火コイル13の一次電流の遮断によって点火コイル13の二次側に発生する高電圧を受けて、火花放電を行う点火プラグ14とからなっている。
【0011】
圧縮上死点より少し手前で点火プラグ14により火花が飛ばされ圧縮混合気に着火されると、火炎が広がりやがて急速に燃焼し、この燃焼によるガス圧がピストン6を押し下げる仕事を行う。この仕事はクランクシャフト7の回転力として取り出される。燃焼後のガス(排気)は排気弁16が開いたとき排気通路8へと排出される。
【0012】
排気通路8には三元触媒9を備える。三元触媒9は排気の空燃比が理論空燃比を中心とした狭い範囲(ウインドウ)にあるとき、排気に含まれるHC、CO、NOxといった有害三成分を同時に効率よく除去できる。空燃比は吸入空気量と燃料量の比であるので、エンジンの1サイクル(4サイクルエンジンではクランク角で720°区間)当たりに燃焼室5に導入される吸入空気量と、燃料インジェクタ21からの燃料噴射量との比が理論空燃比となるように、エンジンコントローラ31ではエアフローメータ32からの吸入空気流量の信号とクランク角センサ(33、34)からの信号に基づいて燃料インジェクタ21からの燃料噴射量を定めると共に、三元触媒9の上流に設けたO2センサ35からの信号に基づいて空燃比をフィードバック制御している。
【0013】
吸気コレクタ2の上流には絞り弁23がスロットルモータ24により駆動される、いわゆる電子制御スロットル22を備える。運転者が要求するトルクはアクセルペダル41の踏み込み量(アクセル開度)に現れるので、エンジンコントローラ31ではアクセルセンサ42からの信号に基づいて目標トルクを定め、この目標トルクを実現するための目標空気量を定め、この目標空気量が得られるようにスロットルモータ24を介して絞り弁23の開度を制御する。
【0014】
吸気弁用カムシャフト25、排気弁用カムシャフト26及びクランクシャフト7の各前部にはそれぞれカムスプロケット、クランクスプロケットが取り付けられ、これらスプロケットにタイミングチェーン(図示しない)を掛け回すことで、カムシャフト25、26がエンジンのクランクシャフト7により駆動されるのであるが、このカムスプロケットと吸気弁用カムシャフト25との間に介在して、作動角一定のまま吸気弁用カムの位相を連続的に制御し得る吸気バルブタイミングコントロール機構(以下、「吸気VTC機構」という。)27と、カムスプロケットと排気弁用カムシャフト26との間に介在して、作動角一定のまま排気弁用カムの位相を連続的に制御し得る排気バルブタイミングコントロール機構(以下、「排気VTC機構」という。)28とを備える。吸気弁15の開閉時期や排気弁16の開閉時期を変えると燃焼室5に残留する不活性ガスの量が変化する。運転条件によっては燃焼室5内の不活性ガスの量が増えるほどポンピングロスが減って燃費がよくなるので、運転条件によりどのくらいの不活性ガスが燃焼室5内に残留したらよいかを目標吸気弁閉時期や目標排気弁閉時期にして予め定めており、エンジンコントローラ31ではそのときの運転条件(エンジンの負荷と回転速度)より目標吸気弁閉時期と目標排気弁閉時期を定め、それら目標値が得られるように吸気VTC機構27、排気VTC機構28の各アクチュエータを介して吸気弁閉時期と排気弁閉時期を制御する。
【0015】
吸気温度センサ43からの吸気温度の信号、吸気圧力センサ44からの吸気圧力の信号、排気温度センサ45からの排気温度の信号、排気圧力センサ46からの排気圧力の信号が、水温センサ37からの冷却水温の信号と共に入力されるエンジンコントローラ31では、パワートランジスタ13を介して点火プラグ14の一次側電流の遮断時期である点火時期を制御する。
【0016】
図2はエンジンコントローラ31内で行われる点火時期制御のブロック図で、主としてMBTとなる点火時期MBTCALを求める部分の詳細を示している。このシステムは、大きくは点火時期演算部51と点火時期制御部61とからなる。点火時期演算部51はさらに初期燃焼期間計算部52、主燃焼期間計算部53、燃焼期間計算部54、基本点火時期計算部55、前回燃焼開始時期計算部56、点火時期指令値計算部57からなる。
【0017】
初期燃焼期間計算部52では、混合気が着火してから火炎核が形成されるまでの期間を初期燃焼期間BURN1として計算する。主燃焼期間計算部53では、火炎核が形成されてから燃焼圧力が最大値Pmaxに達するまでの期間を主燃焼期間BURN2として計算する。燃焼期間計算部54では、これら初期燃焼期間BURN1と主燃焼期間BURN2との合計を、点火より最大燃焼圧力Pmaxに至るまでの燃焼期間BURNとして計算する。基本点火時期計算演算部55では、この燃焼期間BURNに基づいてMBTの得られる点火時期(この点火時期を「基本点火時期」という。)MBTCALを計算する。
【0018】
点火時期指令値計算部57では、図14のフローに示したように、前記MBTCALを基本として、これを後述する手法により算出したノック限界点火時期KNKCALさらには燃焼限界点火時期CCLCALと比較し、これらのうち最小値(最も遅い点火時期)を点火時期最小値PADVとして選択し、この点火時期最小値PADVに各種の補正を加えて点火時期指令値QADVを算出して点火時期制御部61に出力する。なお、図14を含めて、以下の説明にて使用するフローチャートは一定時間、例えば約10ms周期でコントローラ31により繰り返し実行される演算処理の手順を表している。
【0019】
点火時期制御部61ではこのようにして求められた点火時期指令値QADVで点火プラグ14が燃焼室5内の混合気に対して着火するように、イグニッションコイル13への通電角と非通電角を制御する。
【0020】
以下、前述した基本点火時期MBTCAL、ノック限界点火時期KNKCAL、燃焼限界点火時期CCLCALの算出手法の一例につき、さらに詳細に説明する。
【0021】
図3に示すようにMBT(最大トルクの得られる最小進角値)で混合気に点火した場合に混合気の燃焼圧力が最大値Pmaxとなるべきクランク角を基準クランク角θPMAX[degATDC]とする。基準クランク角θPMAXは燃焼方式によらずほぼ一定であり、一般に12〜15度、最大で10〜20度の範囲内にある。
【0022】
図4に火花点火エンジンにおける燃焼室内の燃焼解析により得られた燃焼質量割合Rの変化を示す。燃焼室に供給された燃料に対する燃焼質量の比率を表す燃焼質量割合Rは、点火時に0%であり、完全燃焼によって100%に達する。基準クランク角θPMAXにおける燃焼質量割合Rmaxは一定で約60%である。
【0023】
燃焼質量割合Rが0%から基準クランク角θPMAX相当の約60%に達するまでの燃焼期間は、点火直後で燃焼質量割合にも燃焼圧力にもほとんど変化のない期間である初期燃焼期間と、燃焼質量割合と燃焼圧力が急激に増加する主燃焼期間とに分けられる。初期燃焼期間は、燃焼の開始から火炎核が形成されるまでの段階であり、火炎核が形成されるのは燃焼質量割合で2%〜10%のタイミングである。この期間中は、燃焼圧力や燃焼温度の上昇速度が小さく、燃焼質量割合の変化に対して初期燃焼期間は長い。初期燃焼期間の長さは燃焼室内の温度や圧力の変化の影響を受けやすい。
【0024】
一方、主燃焼期間においては、火炎核から外側域へと火炎が伝播し、燃焼速度が急上昇する。そのため、主燃焼期間の燃焼質量割合の変化は初期燃焼期間の燃焼質量割合の変化に比べて大きい。
【0025】
エンジンコントローラ31では、燃焼質量割合が2%に達するまでを初期燃焼期間BURN1[deg]とし、初期燃焼期間BURN1の終了後、基準クランク角θPMAXに至るまでの区間(燃焼室量割合でいえば2%より約60%に達するまでの間)を主燃焼期間BURN2[deg]として区別する。そして、初期燃焼期間BURN1に主燃焼期間BURN2を加えた合計である燃焼期間BURN[deg]を計算し、この燃焼期間BURNから基準クランク角θPMAX[degATDC]を差し引き、さらに後述する点火時期無駄時間相当クランク角IGNDEAD[deg]を加えたクランク角位置を、MBTの得られる点火時期である基本点火時期MBTCAL[degBTDC]として設定する。
【0026】
火炎核の形成される初期燃焼期間での燃焼室5内の圧力、温度は、点火時の圧力、温度とほぼ等価になるが、これから点火時期を計算しようとしているのに、最初から正確な点火時期を設定することはできない。そこで、図2に示したように前回燃焼開始時期計算部56で基本点火時期の前回値を前回燃焼開始時期MBTCYCL[degBTDC]として計算し、この値を初期燃焼期間計算部52に対して与えるようにし、初期燃焼期間計算部52において初期燃焼期間の計算をサイクリックに繰り返すことで、精度の高い結果を時間遅れなしに出すようにしている。
【0027】
次に、エンジンコントローラ31で実行される点火時期指令値QADVの計算を以下のフローチャートを参照しながら詳述する。
【0028】
図5は点火時期の計算に必要な各種の物理量を計算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0029】
まずステップ11では、吸気弁閉時期IVC[degBTDC]、温度センサ43により検出されるコレクタ内温度TCOL[K]、温度センサ45により検出される排気温度TEXH[K]、内部不活性ガス率MRESFR[%]、温度センサ37により検出される冷却水温TWK[K]、目標当量比TFBYA、クランク角センサにより検出されるエンジン回転速度NRPM[rpm]、点火無駄時間DEADTIME[μsec]を読み込む。
【0030】
ここで、クランク角センサはクランクシャフト7のポジションを検出するポジションセンサ33と、吸気用カムシャフト25ポジションを検出するフェーズセンサ34とからなり、これら2つのセンサ33、34からの信号に基づいてエンジン回転速度NRPM[rpm]が計算されている。
【0031】
吸気弁閉時期IVCは吸気VTC機構27に与える指令値から既知である。あるいはフェーズセンサ34により実際の吸気弁閉時期を検出してもかまわない。
【0032】
内部不活性ガス率MRESFRは燃焼室内に残留する不活性ガス量を燃焼室内の総ガス量で除した値で、その算出手法は例えば特開2001−221105号公報等により知られている。点火無駄時間DEADTIMEは一定値である。
【0033】
目標当量比TFBYAは図示しない燃料噴射量の計算フローにおいて計算されている。目標当量比TFBYAは無名数であり、理論空燃比を14.7とすると、次式により表される値である。
【0034】
TFBYA=14.7/目標空燃比 … (1)
例えば(1)式より目標空燃比が理論空燃比のときTFBYA=1.0となり、目標空燃比が例えば22.0といったリーン側の値であるとき、TFBYAは1.0未満の正の値である。
【0035】
ステップ12では、燃焼室5の吸気弁閉時期IVCにおける容積(つまり圧縮開始時期での容積)VIVC[m3]を計算する。燃焼室5の吸気弁閉時期における容積VIVCは、ピストン6のストローク位置によって決まる。ピストン6のストローク位置はエンジンのクランク角位置によって決まる。
【0036】
図6を参照して、エンジンのクランクシャフト71の回転中心72がシリンダの中心軸73からオフセットしている場合を考える。コネクティングロッド74、コネクティングロッド74とクランクシャフト71との結節点75、コネクティングロッド74とピストンをつなぐピストンピン76が図に示す関係にあるとする。このときの、燃焼室5の吸気弁閉時期における容積VIVCは次式(2)〜(6)で表すことができる。
【0037】
Figure 0004244654
ただし、Vc :隙間容積[m3]、
ε :圧縮比、
D :シリンダボア径[m]、
ST :ピストンの全ストローク[m]、
H :ピストンピン76のTDCからの距離[m]、
CND :コネクティングロッド74の長さ[m]、
CRoff :結節点75のシリンダ中心軸73からのオフセット距離[m]、
PISoff :クランクシャフト回転中心72のシリンダ中心軸73からのオフセット距離[m]、
θivc :吸気弁閉時期のクランク角[degATDC]、
θoff :ピストンピン76とクランクシャフト回転中心72とを結ぶ線がTDCにおいて垂直線となす角度[deg]、
X :結節点75とピストンピン76との水平距離[m]
吸気弁閉時期のクランク角θivcは前述のように、エンジンコントローラ31から吸気VTC機構27への指令信号によって決まるので、既知である。式(2)〜(6)にこのときのクランク角θivc(=IVC)を代入すれば、燃焼室5の吸気弁閉時期における容積VIVCを計算することができる。したがって、実用上は燃焼室5の吸気弁閉時期における容積VIVCは吸気弁閉時期IVCをパラメータとするテーブルで設定したものを用いる。吸気VTC機構27を備えないときには定数で与えることができる。
【0038】
ステップ13では、燃焼室5の吸気弁閉時期IVCにおける温度(つまり圧縮開始時期温度)TINI[K]を計算する。燃焼室5の吸気弁閉時期IVCにおける温度TINIは、燃焼室5に流入する新気と燃焼室5に残留する不活性ガスとが混じったガスの温度であり、燃焼室5に流入する新気の温度は吸気コレクタ2内の新気温度TCOLに等しく、また燃焼室5内に残留する不活性ガスの温度は排気ポート部近傍の排気温度TEXHで近似できるので、吸気コレクタ2内の新気温度TCOL、排気温度TEXH、燃焼室5内に残留する不活性ガスの割合である内部不活性ガス率MRESFRから次式により求めることができる。
【0039】
TINI=TEXH×MRESFR+TCOL×(1−MRESFR)… (7)
ステップ14では、燃焼室5内の混合気の燃えやすさを表す反応確率RPROBA[%]を計算する。反応確率RPROBAは無次元の値であり、残留不活性ガス率MRESFR、冷却水温TWK[K]、目標当量比TFBYAの3つのパラメータに依存するので、次式により表すことができる。
【0040】
RPROBA=f3(MRESFR、TWK、TFBYA) … (8)
具体的に説明すると、MRESFR、TWK、TFBYAの3つのパラメータの組み合わせによって得られる反応確率の最大値を100%とし、これらのパラメータと反応確率RPROBAの関係を実験的に求め、求めた反応確率RPROBAをパラメータに応じたテーブルとしてエンジンコントローラ31のメモリに予め格納しておく。ステップ14ではパラメータに応じてこのテーブルを検索することにより反応確率RPROBAを求める。
【0041】
具体的には、冷却水温TWKに応じて図7に示すような特性を有する水温補正係数のテーブルと、同様に設定された内部不活性ガス率補正係数のテーブル(図示しない)と、目標当量比Tfbyaに応じて図8に示すような特性を有する当量比補正係数のテーブルを予めメモリに格納しておく。各補正係数の最大値はそれぞれ1.0であり、3種類の補正係数の積に反応確率の最大値100%を掛け合わせることで、反応確率RPROBAを算出する。
【0042】
各テーブルを説明すると、図7に示す水温補正係数は冷却水温TWKが高いほど大きく、冷却水温TWKが80℃以上では1.0になる。図8に示す当量比補正係数は目標当量比TFBYAが1.0のとき、つまり理論空燃比のときに最大値の1.0となり、目標当量比が1.0より大きくても小さくても当量比補正係数は減少する。内部不活性ガス率補正係数は図示しないが、内部不活性ガス率MRESFRがゼロの場合に1.0となる。
【0043】
ステップ15では、基準クランク角θPMAX[degATDC]を計算する。前述のように基準クランク角θPMAXはあまり変動しないが、それでもエンジン回転速度NRPMの上昇に応じて進角する傾向があるため、基準クランク角θPMAXはエンジン回転速度NRPMの関数として次式で表すことができる。
【0044】
θPMAX=f4(NRPM) … (9)
具体的にはエンジン回転速度NRPMから、エンジンコントローラ31のメモリに予め格納された図9に示す特性のテーブルを検索することにより基準クランク角θPMAXを求める。計算を容易にするために、基準クランク角θPMAXを一定とみなすことも可能である。
【0045】
最後にステップ16では、点火無駄時間相当クランク角IGNDEAD[deg]を計算する。点火無駄時間相当クランク角IGNDEADは、エンジンコントローラ31から点火コイル13の一次電流を遮断する信号を出力したタイミングから点火プラグ14が実際に点火するまでのクランク角区間で、次式により表すことができる。
【0046】
IGNDEAD=f5(DEADTIME、NRPM) … (10)
ここでは、点火無駄時間DEADTIMEを200μsecとする。(10)式は、エンジン回転速度NRPMから点火無駄時間DEADTIMEに相当するクランク角である点火無駄時間相当クランク角IGNDEADを計算するためのものである。
【0047】
図10は初期燃焼期間BURN1[deg]を計算するためのもの、また図12は主燃焼期間BURN2[deg]を計算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。図10、図12は図5に続けて実行する。
図10、図12はどちらを先に実行してもかまわない。
【0048】
まず図10から説明すると、ステップ21では、前回燃焼開始時期MBTCYCL[degBTDC]、図5のステップ12で計算されている燃焼室5の吸気弁閉時期における容積VIVC[m3]、図5のステップ13で計算されている燃焼室5の吸気弁閉時期における温度TITI[K]、エンジン回転速度NRPM[rpm]、図5のステップ14で計算されている反応確率RPROBA[%]を読み込む。
【0049】
ここで、前回燃焼開始時期MBTCYCLは、基本点火時期MBTCALの[degBTDC]の1サイクル前の値であり、その計算については後述する。
【0050】
ステップ22では燃焼室5の燃焼開始時期における容積V0[m3]を計算する。前述したように、ここでの点火時期(燃焼開始時期)は今回のサイクルで演算する基本点火時期MBTCALではなく基本点火時期の1サイクル前の値である。すなわち、基本点火時期の1サイクル前の値であるMBTCYCLから次式により燃焼室5の燃焼開始時期における容積V0を計算する。
【0051】
V0=f6(MBTCYCL) … (11)
具体的には前回燃焼開始時期MBTCYCLにおけるピストン6のストローク位置と、燃焼室5のボア径から、燃焼室5のMBTCYCLにおける容積V0を計算する。図5のステップ12では、燃焼室5の吸気弁閉時期IVCにおける容積VIVCを、吸気弁閉時期をパラメータとする吸気弁閉時期容積のテーブルを検索することにより求めたが、ここではMBTCYCLをパラメータとする前回燃焼開始時期容積のテーブルを検索することにより、燃焼室5の前回燃焼開始時期MBTCYCLにおける容積V0を求めればよい。
【0052】
ステップ23では燃焼開始時期における有効圧縮比Ecを計算する。有効圧縮比Ecは無次元の値であり、次式に示すように燃焼室5の燃焼開始時期における容積V0を燃焼室5の吸気弁閉時期における容積VIVCで除した値である。
【0053】
Ec=f7(V0、VIVC)=V0/VIVC … (12)
ステップ24では吸気弁閉時期IVCから燃焼開始時期に至る間の燃焼室5内の温度上昇率TCOMPを次式に示すように有効圧縮比Ecに基づいて計算する。
【0054】
TCOMP=f8(Ec)=Ec^(κ−1) … (13)
ただし、κ:比熱比
(13)式は断熱圧縮されるガスの温度上昇率の式である。なお、(13)式右辺の「^」は累乗計算を表している(以下、同様)。
【0055】
κは断熱圧縮されるガスの定圧比熱を定容比熱で除した値で、断熱圧縮されるガスが空気であればκ=1.4であり、簡単にはこの値を用いればよい。ただし、混合気に対してκの値を実験的に求めることで、一層の計算精度の向上が可能である。
【0056】
図11は(13)式を図示したものである。従って、このような特性のテーブルを予めエンジンコントローラ31のメモリに格納しておき、有効圧縮比Ecに基づき当該テーブルを検索することにより温度上昇率TCOMPを求めることも可能である。
【0057】
ステップ25では、燃焼室5の燃焼開始時期における温度T0[K]を、燃焼室5の吸気弁閉時期における温度TINIに温度上昇率TCOMPを乗じることで、つまり
T0=TINI×TCOMP … (14)
の式により計算する。
【0058】
ステップ26では、次式(公知)により層流燃焼速度SL1[m/sec]を計算する。
【0059】
SL1=SLstd×(T0×Tstd)2.18×(P0/Pstd)-0.16…(15)
ただし、Tstd :基準温度[K]、
Pstd :基準圧力[Pa]、
SLstd:基準温度Tstdと基準圧力Pstdにおける基準層流燃焼速度[m/sec]、
T0 :燃焼室5の燃焼開始時期における温度[K]、
P0 :燃焼室5の燃焼開始時期における圧力[Pa]
基準温度Tstdと基準圧力Pstdと基準層流燃焼速度SLstdは実験により予め定められる値である。
【0060】
燃焼室5の通常の圧力である2bar以上の圧力下では、(15)式の圧力項(P0/Pstd)-0.16は小さな値となる。従って、圧力項(P0/Pstd)-0.16を一定値として、基準層流燃焼速度SLstdを基準温度Tstdのみで規定することも可能である。
【0061】
従って、基準温度Tstdが550[K]で、基準層流燃焼速度SLstdが1.0[m/sec]で、圧力項が0.7である場合の燃焼開始時期における温度T0と層流燃焼速度SL1との関係は近似的に次式で定義することができる。
【0062】
SL1=f9(T0)
=1.0×0.7×(T0/550)2.18 … (16)
ステップ27では、初期燃焼におけるガス流動の乱れ強さST1を計算する。このガス流動の乱れ強さST1は無次元の値であり、燃焼室5に流入する新気の流速と燃料インジェクタ21の噴射燃料のペネトレーションとに依存する。
【0063】
燃焼室5に流入する新気の流速は、吸気通路の形状と、吸気弁15の作動状態と、吸気弁15を設ける吸気ポート4の形状に依存する。噴射燃料のペネトレーションは燃料インジェクタ21の噴射圧力と、燃料噴射期間と、燃焼噴射タイミングに依存する。
【0064】
最終的に、初期燃焼におけるガス流動の乱れ強さST1は、エンジン回転速度NRPMの関数として次式で表すことができる。
【0065】
ST1=f10(NRPM)=C1×NRPM … (17)
ただし、C1:定数
乱れ強さST1を回転速度NRPMをパラメータとするテーブルから求めることも可能である。
【0066】
ステップ28では層流燃焼速度S1と乱れ強さST1から、初期燃焼におけるガスの燃焼速度FLAME1[m/sec]を次式により計算する。
【0067】
FLAME1=SL1×ST1 … (18)
燃焼室5内にガス乱れがあるとガスの燃焼速度が変化する。(18)式はこのガス乱れに伴う燃焼速度への寄与(影響)を考慮したものである。
【0068】
ステップ29では、次式により初期燃焼期間BURN1[deg]を計算する。
【0069】
Figure 0004244654
ただし、AF1:火炎核の反応面積(固定値)[m2
ここで、(19)式右辺のBR1は燃焼開始時期より初期燃焼期間BURN1の終了時期までの燃焼質量割合の変化量であり、ここではBR1=2%に設定している。(19)式右辺の(NRPM×6)は単位をrpmからクランク角(deg)に変換するための措置である。火炎核の反応面積AF1は実験的に設定される。
【0070】
次に図12のフローに移ると、ステップ31では回転速度NRPM、図5のステップ14で計算されている反応確率RPROBAを読み込む。
【0071】
ステップ32では主燃焼におけるガス流動の乱れ強さST2を計算する。このガス流動の乱れ強さST2も初期燃焼におけるガス流動の乱れ強さST1と同様に、エンジン回転速度NRPMの関数として次式で表すことができる。
【0072】
ST2=f11(NRPM)=C2×NRPM … (20)
ただし、C2:定数
乱れ強さST2を回転速度をパラメータとするテーブルから求めることも可能である。
【0073】
ステップ33では、層流燃焼速度SL2[m/sec]と主燃焼におけるガス流動の乱れ強さST2とから、主燃焼における燃焼速度FLAME2[m/sec]を次式により計算する。
【0074】
FLAME2=SL2×ST2 … (21)
ただし、SL2:層流燃焼速度[m/sec]
(21)式は(18)式と同様、ガス乱れに伴う燃焼速度への寄与を考慮したものである。
【0075】
前述のように主燃焼期間BURN2の長さは燃焼室5内の温度や圧力の変化の影響を受けにくい。従って、層流燃焼速度SL2には予め実験的に求めた固定値を適用する。
【0076】
ステップ34では、主燃焼期間BURN2[deg]を(19)式に類似した次式で計算する。
【0077】
Figure 0004244654
ただし、V2 :燃焼室5の主燃焼期間開始時容積[m3]、
AF2:火炎核の反応面積[m2
ここで、(22)式右辺のBR2は主燃焼期間の開始時期より終了時期までの燃焼質量割合の変化量である。初期燃焼期間の終了時期に燃焼質量割合が2%になり、その後、主燃焼期間が開始し、燃焼質量割合が60%に達して主燃焼期間が終了すると考えているので、BR2=60%−2%=58%を設定している。AF2は火炎核の成長行程における平均の反応面積であり、(19)式のAF1と同様に、予め実験的に定めた固定値とする。燃焼室5の主燃焼期間開始時における容積V2も固定値である。
【0078】
図13は基本点火時期MBTCAL[degBTDC]を計算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。図10、図12のうち遅く実行されるフローに続けて実行する。
【0079】
ステップ41では、図10のステップ29で計算されている初期燃焼期間BURN1、図12のステップ34で計算されている主燃焼期間BURN2、図5のステップ16で計算されている点火時期無駄時間相当クランク角IGNDEAD、図5のステップ15で計算されている基準クランク角θPMAXを読み込む。
【0080】
ステップ42では、初期燃焼期間BURN1と主燃焼期間BURN2の合計を燃焼期間BURN[deg]として計算する。
【0081】
ステップ43では次式により基本点火時期MBTCAL[degBTDC]を計算する。
【0082】
MBTCAL=BURN−θPMAX+IGNDEAD … (23)
ステップ44では、この基本点火時期MBTCALから点火無駄時間相当クランク角IGNDEADを差し引いた値を前回燃焼開始時期MBTCYCL[degBTDC]として計算する。
【0083】
このようにして計算した基本点火時期MBTCALは、後述するノック限界もしくは燃焼限界の点火時期と比較され、これらのうちの最小値(最も近く側の値)が点火時期最小値PADV[degBTDC]として選択される。この点火時期最小値PADVに対して、早期排温上昇のための遅角化、変速時トルクダウンのための遅角化等、各種の補正を加えて、点火時期指令値QADV[degBTDC]を算出する。この点火時期指令値QADVは点火レジスタに移され、実際のクランク角がこの点火時期指令値QADVと一致したタイミングでエンジンコントローラ31より一次電流を遮断する点火信号が点火コイル13に出力される。
【0084】
また、今サイクルの点火時期指令値としてステップ43で計算された基本点火時期MBTCALが用いられたとすると、次サイクルの点火時期になるまでの間、ステップ44で計算された前回燃焼開始時期MBTCYCLが図10のステップ22において用いられる。
【0085】
以上のように、本実施形態においては、燃焼室5内の未燃ガス量などの質量計算を行わずにMBTの得られる点火時期である基本点火時期MBTCALを計算するので、計算負荷を小さく抑えることができる。
【0086】
また、上記(19)式に示したように初期燃焼期間BURN1を、燃焼開始時期における燃焼室容積V0と、混合気の燃焼のしやすさを表す反応確率RPROBAと、燃焼速度FLAME1の関数で表している。ここで、燃焼開始時期における燃焼室容積V0が大きいほど、反応確率RPROBAが小さいほど、燃焼速度FLAME1が遅いほど、それぞれ初期燃焼期間BURN1が長くなり、結果として基本点火時期MBTCALが進角する。
【0087】
同様に、上記(22)式に示したように主燃焼期間BURN2を、主燃焼期間の開始時期における燃焼室容積V2と、混合気のしやすさを表す反応確率RPROBAと、燃焼速度FLAME2の関数で表している。ここで、主燃焼期間開始時期における燃焼室容積V2が大きいほど、反応確率RPROBAが小さいほど、燃焼速度FLAME2が遅いほど、それぞれ主燃焼期間BURN2が長くなり、結果として点火時期MBTCALが進角する。
【0088】
このように、燃焼期間BURN1とBURN2を、燃焼期間に影響を与える様々なパラメータの関数として計算することで、燃焼期間BURN1とBURN2を正確に計算することができる。結果として、燃焼期間BURN1とBURN2に基づき計算される基本点火時期MBTCALも高精度に計算することができる。また、燃焼期間BURNを温度や圧力が大きく影響を受けやすい火炎核成長期間に相当する初期燃焼期間BURN1と、温度や圧力の影響の少ない主燃焼期間とに分けて計算しているので、燃焼期間BURNの計算精度が向上する。燃焼期間BURNを3以上にさらに分割することで、計算精度のさらなる向上も可能である。
【0089】
なお、ここでは初期燃焼期間BURN1の計算に用いる燃焼速度FLAME1を層流燃焼速度SL1と乱れ強さST1の積として、また主燃焼期間BURN2の計算に用いる燃焼速度FLAME2を層流燃焼速度SL2と乱れ強さST2の積としてそれぞれ計算しているが、特開平10−30535号公報に記載されているように加算による計算方法で求めても良い。また、初期燃焼期間を燃焼質量割合でゼロから2%まで(つまりBR1=2%)、主燃焼期間を燃焼質量割合で2〜60%まで(つまりBR2=58%)と規定したが、本発明は必ずしもこの数値に限定されるものでない。
【0090】
次に、ノック限界の点火時期KNKCALの算出につき図15〜図18を用いて説明する。
【0091】
図15は算出手法を示すフローチャートである。図において、まずステップ61にて燃料がハイオクタンガソリンかレギュラーガソリンかを判定する。この判定手法は種々公知であり、例えばノックセンサを用いた点火時期フィードバック制御により行う。次いで、この判定結果に応じて、ハイオクガソリンであった場合にはステップ62にて、レギュラーガソリンであった場合にはステップ63にて、それぞれのマップからノック限界に対応する点火時期補正量の基本値KNM[deg]を求める。図16に前記マップの一例を示す。図示したようにこのマップはエンジン回転速度Neと負荷(燃料噴射量)TpをパラメータとしてKNMの値が割り付けられている。一般に低回転高負荷ほどノッキングが発生しやすいため小さい値つまり遅角側の値が設定されるが、同一回転速度・負荷であっても、燃料オクタン価が高いほど値は大きくなる。
【0092】
次いで、ステップ64にて次式により吸入混合気の温度T0a[K]を求める。
【0093】
T0a=Ta×WTTA#+Tw(1−WTTA#) … (24)
ただし、Ta:吸気温度[K]、
Tw:冷却水温度[K]
WTTA#:エンジンに応じて定めた常数
このT0aはエンジンの冷却水温度Twと吸気温度Taの間を内分するある値となる。すなわち、シリンダに吸入された吸気の温度は、外気の温度(≒Ta)に対し、吸気系でのエンジン温度の影響で温度上昇することから、これを冷却水温度Twで補正している。
【0094】
次のステップ65では、前記吸入混合気温度T0aから図17に示したようなテーブルを参照して温度による補正量KNT[deg]を求める。さらに、ステップ66にて、既知の手法により求めた湿度(水蒸気分圧)から図18に示したようなテーブルを参照して湿度による補正量KNW[deg]を求める。前記各補正量KNT、KNWは図示したように単純な線形特性で変化するので、対応する一次関数を設定して計算により求めるようにしてもよい。なお、吸入混合気温度T0aの代わりに、式(14)で求めた燃焼室温度T0を用いて温度補正量KNTを設定するようにしてもよい。
【0095】
最後に、ステップ67にて前述のKNM、KNT、KNWを加算したものをノック限界点火時期KNKCALとして設定する。
【0096】
次に、燃焼限界の点火時期CCLCALの算出につき図19〜図22を用いて説明する。
【0097】
図19は算出手法を示すフローチャートである。図において、まずステップ71にて、図20に示したマップを参照して基本値CCL[deg]を求める。パラメータはエンジン回転速度Neと負荷Tpである。一般に、低回転低負荷時ほど混合気の流速が低く、シリンダ内残留ガスと新気との混合が悪いため燃焼火炎が伝搬しにくいことから、安定燃焼する限界点火時期はマップに示されるように遅角側に移動する。
【0098】
次いで、ステップ72にて、前出の式(24)にて求めた吸入混合気温度T0a(または燃焼室温度T0)から図21に示したテーブルを参照して温度による補正量CCLT[deg]を求める。高温時ほど燃焼安定性が高くなることから、テーブルの特性も図示したように高温時ほどCCLTの値が大きくなるように設定されている。
【0099】
次に、ステップ73にて、吸気系にスワールコントロールバルブを備える場合に、その開度に応じた補正量CCLS[deg]を求める。スワールコントロールバルブは、エンジン吸入ポート部の開口面積を制約することによりシリンダ内に流入する吸入混合気の流速を高める装置である。その開度を減じるほど吸気流速が速くなり、新気と残留ガスとの混合が促されることなどから燃焼限界も進角側に移動する。そこで、図22に示したように、スワールコントロールバルブの開度が小さくなるほど進角側の値を与えるように設定されたテーブルを参照することでCCLSを設定する。
【0100】
図21および図22の特性も線形であるので、テーブル検索ではなく関数式を演算する手法によりCCLT、CCLSを求めるようにしてもコントローラの演算負荷を過大にするおそれはない。
【0101】
最後のステップ74にて前述のCCL、CCLT、CCLSを加算したものを燃焼安定限界点火時期CCLCALとして設定する。
【0102】
前述のようにして求められた基本点火時期MBTCAL、ノック限界点火時期KNKCAL、燃焼限界点火時期CCLCALのうち、図14により説明したように最小のもの、すなわち最も遅角側の点火時期を与えるものが外乱に対応した点火時期最小値PADVとして選択され、この点火時期最小値PADVに対して各種の補正を施して算出された点火時期指令値QADVが図2の点火時期制御部61に付与される。
【0103】
この実施形態ではMBTを与える基本点火時期MBTCAL、ノック限界点火時期KNKCAL、燃焼限界点火時期CLCCALの三者を比較して最小のものを選択するようにしているが、基本点火時期MBTCALと、ノック限界点火時期KNKCALまたは燃焼限界点火時期CLCCALの何れか一方とを比較して、より小さいほうを最適点火時期最小値PADVとして選択するようにしてもよい。
【0104】
このようにして、基本点火時期MBTCALを基本としてこれをノック限界点火時期KNKCALまたは燃焼限界点火時期CLCCALと比較し、最遅角となる点火時期を選択する構成とすることにより、外乱によって変動する点火時期の特性からより適切なものを比較的簡単な演算処理により求めて適切に点火時期を制御することが可能となる。
【0105】
図23〜図25は本発明の点火時期算出手法に関する第2の実施形態を示している。この実施形態は、前提となるエンジンシステムおよび点火時期システムの構成は図1または図2に示したものと同じであるが、既出の基本点火時期MBTCALの演算に用いた主燃焼期間(BURN2)をノック限界点火時期KNKCALの算出にも適用することにより、より物理モデルに近い形で高精度に最適点火時期値PADVを求められるようにした点で第1の実施形態と相違する。
【0106】
図23に沿って説明すると、まずステップ81にてシリンダ内で排気されずに残る残留ガスの量MASSZと温度Teを算出する。残留ガス量MASSZは燃焼室容積分の残ガス量と吸排気弁オーバーラップ中に排気系から吸気系へ逆流した排気ガスの量を加算して求めることができる。温度Teは吸入空気量等から近似的にテーブルで求めることができる。何れも算出手法そのものは例えば特開2001−221105号公報等により公知である。
【0107】
続いて、ステップ82にて、エアフローメータ32、吸気温度センサ43(図1参照)の出力結果からそれぞれ新気の量MASSAとその温度Taを読み込む。
【0108】
次に、ステップ83では、前記MASSZ、Te、MASSA、Taを用いて、次の(25)式、(26)式により、それぞれ圧縮開始時(吸気弁閉時)の混合気の量MASSC、混合気温度Tc0を求める。
Figure 0004244654
また、圧縮開始時の圧力Pc0を、吸気圧力センサ44(図1参照)の出力結果から求める。圧力Pc0は、吸入空気量と回転速度から予測した値を用いてもよい。
【0109】
次のステップ84では、既述した手法によりMBTとなる基本点火時期MBTCALを求める。なお、この実施形態では前記MBTCALの演算過程(図12)で求めた主燃焼期間BURN2を燃焼速度の代表値として後の演算に用いている。
【0110】
ステップ85以降は、ノック限界点火時期KNKCALの計算をするためのフローである。まずステップ85にてノック指標値MBTKNを求める。ノック指標値MBTKNはMBT時の燃焼圧最大値クランク角から温度最高値クランク角近傍での瞬間的な自己着火時間(ms)であり、ここでは圧力最大値を示すクランクアングルを13degATDC(以下、θPMAX=13度と表す。)に設定した場合の例を、図26のタイムチャートを参照しながら説明する。最初にθPMAX=13度での平均温度Tcと圧力Pcとをそれぞれ次の(27)式、(28)式から求める。
Figure 0004244654
ただし、ε :圧縮比率、
Q :燃焼発熱量、
TUP#:温度上昇係数、
pt :ポリトロープ指数=1.35
VUP#:ガス容積変化率
圧縮比率εは、吸気弁閉時(IVC)の容積の、θPMAX=13度時の容積に対する比率である。吸気弁の開閉時期を制御可能な可変吸気弁機構を備えたエンジンではその制御値から求めればよいし、開閉時期固定であれば既知の定数として設定すればよい。さらに精度を上げるには実質吸気量が確定するIVC=実効IVCを用いればよいが、それは回転速度によってクランク角で進角方向に移動するため、回転速度からεを求める手法としてもよい。
【0111】
燃焼発熱量Qは、θPMAX=13度での燃焼割合を60%としたときの混合気の燃焼による発熱量である。
【0112】
温度上昇係数TUP#は、前記燃焼発熱量QがMASSCの量の混合気を加熱するときの計算に適用する係数である。TUP#にはもちろん比熱分も含まれる。
【0113】
ガス容積変化率VUP#は、ガソリンと空気の混合気が60%燃焼して燃焼途中のガスになったときの分子量変化によるガス容積変化率である。具体的には、1より若干大きな値(例えば1.03程度)を適用すればよい。
【0114】
また、ピストンの上昇と燃焼ガスの昇温膨張で圧縮された未燃混合気の温度Tを、次式から求める。
T=Tc0×εpt-1(Tc/Tc0×εpt-1pt-1 [K]… (29)
最後に、前述のようにして求めたθPMAX=13度での圧力Pcと未燃混合気温度Tを用いて、次式からノック指標値MBTKNを求める。
MBTKN=OCT×Pc-1.7×exp(3800/T)[ms]… (30)
式中のOCTは燃料のオクタン価によって決まる係数であり、例えばハイオクタンガソリンで15程度、レギュラーガソリンで10程度の値を用いる。この式は素反応の自己着火時間を求める式であり、基本的に従来から知られているものに基づいている。
【0115】
次のステップ86では、ノック指標値MBTKNに対する燃焼速度補正係数KNFLVを求める。エンジンのノッキングの発生においては温度・圧力が時々刻々と変化するため、実際の自己着火時間は温度・圧力が高く保持される時間の影響を強く受けるので、燃焼が早いとノックが起きにくく、遅いとノッキングが起きやすい。そこでこの実施形態では、MBT計算で求めた主燃焼期間BURN2を用いて前記補正係数KNFLVを求める。その特性例を図24に示すが、主燃焼期間BURN2が長い、つまり燃焼が遅いと小さな値となり、ノッキングが起きやすい方向に補正される特性となっている。
【0116】
次に、ステップ87にて、前記MBTKNとKNFLVを用いたマップ検索により、トレースノックを得るためのMBTからの遅角量KNRTを求める。図25にその特性例を示すが、縦軸MBTKN×KNFLVで割り付けられ、横軸回転速度Neで割り付けられたマップから遅角量KNRTを求める。これは縦軸の数値が増大するほど、回転速度が低下するほど、遅角量が増大する特性となっている。
【0117】
次のステップ88で、次式からノック限界点火時期KNKCALを求める。
KNKCAL=MBTCAL−KNRT … (31)
ステップ89,90では、MBTCALとKNKCALのうちから小さい方つまり遅角側のものを点火時期最小値PADVとして選択し、これに各種の補正を加えたものを図2の点火時期制御部61に引き渡す点火時期指令値QADVとして設定して今回の処理を終了する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの制御システム図。
【図2】エンジンコントローラで実行される点火時期制御のブロック図。
【図3】燃焼室の圧力変化図。
【図4】燃焼質量割合の変化を説明する特性図。
【図5】物理量の計算を説明するためのフローチャート。
【図6】エンジンのクランクシャフトとコネクティングロッドの位置関係を説明するダイアグラム。
【図7】水温補正係数の特性図。
【図8】当量比補正係数の特性図。
【図9】基準クランク角の特性図。
【図10】初期燃焼期間の計算を説明するためのフローチャート。
【図11】温度上昇率の特性図。
【図12】主燃焼期間の計算を説明するためのフローチャート。
【図13】基本点火時期の計算を説明するためのフローチャート。
【図14】本発明による点火時期制御に係る第一の実施形態の処理手順を表したフローチャート。
【図15】ノック限界点火時期の計算を説明するためのフローチャート。
【図16】ノック限界点火時期の基本値を与えるマップの説明図。
【図17】ノック限界点火時期に対する温度補正量を与えるテーブルの説明図。
【図18】ノック限界点火時期に対する湿度補正量を与えるテーブルの説明図。
【図19】燃焼限界点火時期の計算を説明するためのフローチャート。
【図20】燃焼限界点火時期の基本値を与えるマップの説明図。
【図21】燃焼限界点火時期に対する温度補正量を与えるテーブルの説明図。
【図22】燃焼限界点火時期に対してスワールコントロールバルブ開度に応じた補正量を与えるテーブルの説明図。
【図23】本発明による点火時期制御に係る第二の実施形態の処理手順を表したフローチャート。
【図24】ノック指標値の特性図。
【図25】トレースノックを与えるMBTからの遅角量の特性図。
【図26】第二の実施形態の制御に係るタイムチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
5 燃焼室
13 点火コイル
14 点火プラグ
15 吸気弁
16 排気弁
21 燃料インジェクタ
27 吸気VTC機構
28 排気VTC機構
31 エンジンコントローラ
33、34 クランク角センサ
43 吸気温度センサ
44 吸気圧力センサ
45 排気温度センサ
46 排気圧力センサ

Claims (2)

  1. 火花点火式エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、
    前記運転状態を用いてMBT点火時期を算出するMBT算出手段と、
    前記運転状態を用いて燃焼安定限界の点火時期を算出する燃焼安定限界算出手段と
    前記MBT点火時期と燃焼安定限界点火時期のうちの遅い方を選択する点火時期選択手段と、
    前記選択した点火時期に基づいて点火時期を出力する点火時期制御手段
    とを備えたことを特徴とするエンジンの点火時期制御装置。
  2. 火花点火式エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、
    前記運転状態を用いてMBT点火時期を算出するMBT算出手段と、
    前記運転状態を用いてノック限界点火時期を算出するノック限界算出手段と
    前記運転状態を用いて燃焼安定限界の点火時期を算出する燃焼安定限界算出手段と、
    前記MBT点火時期、ノック限界点火時期、燃焼安定限界点火時期のうちの最も遅い点火時期を選択する点火時期選択手段と、
    前記選択した点火時期に基づいて点火時期を出力する点火時期制御手段
    とを備えたことを特徴とするエンジンの点火時期制御装置。
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