JP4241124B2 - スピンドルモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピンドルモータに係り、特にハードディスクドライブ(以下HDD)用として好適なスピンドルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、HDDにおいて、信号記録再生ディスクに帯電する電荷が磁気ヘッドに放電してこのヘッドを破壊したり、信号記録再生ディスクに記録した信号を破壊するのを防止するため、シャフトを回転自在に支持するスリーブをモータベースに設けた軸孔に嵌め込み、嵌合する両面間に導電性接着剤を充填して固着しつつ両者間の導通をとるようにしたモータが知られている。一例として、特許文献1に記載されたモータがある。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−167765号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スピンドルモータのスリーブとモータベースとは、高い精度で強固に固着されている必要がある。
しかしながら、導電性接着剤は、非導電性の接着剤に比べて強度や長期信頼が必ずしも充分ではなく、スリーブとモータベースとはできるだけ非導電性接着剤で強固に固定されるのが望ましい。
【0005】
そこで、スリーブの外周面とこのスリーブが挿入されるモータベースの軸孔の内面との間に非導電性接着剤を充填して両者を固定し、さらに、モータベースの底面における両者の端面に、両者を跨ぐように導電性接着剤を塗布して導通を得たモータが提案されている。
【0006】
このモータについて図4を用いて説明する。
図4は、ロータハブ105に固着されたシャフト102を、ラジアル動圧軸受110とスラスト動圧軸受111とでモータベース101に対して回転自在に支持したスピンドルモータの半断面図である。
シャフト102が挿嵌されるスリーブ106とモータベース101とは、非導電性接着剤116で接着固定されている。
また、スリーブ106とモータベース101とは、モータベース101の底面側(当図の下側面)において、両者の端面を跨ぐように塗布された導電性接着剤18により導通がとられている。
【0007】
これにより、ロータハブ105に取り付けられた信号記録再生ディスク22に発生した電荷を、ロータハブ105,シャフト102,スリーブ106をそれぞれ経由し、導電性接着剤18を介してモータベース101に逃がすことができる。
【0008】
ところで、HDDは小型化が要求されており、モータは全体の寸法を可能な限り小さくする必要があるが、塗布した導電性接着剤18が固化して盛り上がった部分がモータの底面より突出し、モータの高さ寸法がその分(図4の寸法t)大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
一方、スリーブ106とモータベース101間の固着を非導電性接着剤で行うため、両者の導通をより確実にとるには、この導電性接着剤18を多量に塗布しなければならず、突出がさらに大きくなってしまうという問題があった。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、モータの軸方向高さを大きくすることなく信号記録再生ディスクに発生する静電気をモータベースに確実に放電して磁気ヘッドや信号記録再生ディスクに記録した信号の破壊を防止するスピンドルモータを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本願発明は手段として次の1)〜3)の構成を有する。1) ディスクを装着するハブに一方の先端部を固定されたシャフトが、モータベースの貫通孔に立設したスリーブに回転自由に嵌挿されるとともに他方の先端部側に設けられたスラスト軸受でスラスト方向に支持されて成る一方、
前記スラスト軸受が、前記スリーブと、前記シャフトの前記他方の先端部に設けたフランジと、前記フランジに対向するように前記スリーブに固着されたスラストプレートとで構成されて成るスピンドルモータにおいて、
前記モータベースにおける前記ハブとは反対側となる底面の一部に、前記貫通孔に一方が開放するよう形成された凹部と、
前記凹部と前記スラストプレートとを、間にスリーブを挟んで跨ぐように塗布された導電性接着剤と、を有し、
前記導電性接着剤を介して前記モータベースと前記スラストプレートとが電気的に接続されていることを特徴とするスピンドルモータである。
2) 前記モータベースの底面に対し、前記凹部の底面と前記スラストプレートの前記ハブとは反対側の面とがほぼ同じ深さにされると共に、前記導電性接着剤は、前記モータベースの底面から突出していないことを特徴とする1)に記載のスピンドルモータである。3) ディスクを装着するハブに一方の先端部を固定されたシャフトが、モータベースの貫通孔に接着固定されたスリーブに回転自由に嵌挿されて成るスピンドルモータにおいて、
配線パターンを有し前記モータベースにおける前記ハブとは反対側となる底面に取り付けられた基板と、
前記底面における前記シャフトを挟んで前記基板に対向する位置に、前記貫通孔に一方が開放するよう設けられた凹部と、
前記凹部に塗布された導電性接着剤と、を有し、
前記シャフトはその他方の先端部側に設けられたスラスト軸受でスラスト方向に支持されており、
前記スラスト軸受は、前記スリーブと、前記シャフトの前記他方の先端部に設けられたフランジと、前記フランジと対向するように前記スリーブに接着固定されたスラストプレートと、を有して構成されており、
前記導電性接着剤は、前記凹部と前記スラストプレートとを、間に前記スリーブを挟んで跨ぐように塗布されて前記モータベースと前記スラストプレートとを電気的に接続するように構成されて成ることを特徴とするスピンドルモータである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1乃至3を用いて説明する。
このスピンドルモータは、ロータ部21とステータ部20とで構成され、ラジアル動圧軸受10とスラスト動圧軸受11とによりロータ部21はステータ部20に対して回転自在に支持される構造となっている。
まず、その構造をステータ部、ロータ部、軸受部、導電性接着剤の塗布の順に説明する。
【0013】
(1)ステータ部について
ステータ部20はモータベース1、スリーブ6及びコイル12を巻回したコア13で構成される。
モータベース1はアルミまたはアルミ合金で形成され、そのほぼ中央部には筒状壁1Aが立設されている。
この筒状壁1Aの内面に形成されたスリーブ用孔1Bにはスリーブ6が接着により固定される。
このスリーブ6はステンレス系又は銅系の材料を用い、軸孔6Eを有する略円筒状に形成される
【0014】
軸孔6Eの内周面の2ヶ所には、へリングボン(魚骨)状の第1、第2の動圧溝10a,10bがそれぞれ全周にわたって設けられている。図1はこの第1,第2の動圧溝10a,10bを模式的に示している。
また、軸孔6Eの第1の動圧溝10aと第2の動圧溝10bとに挟まれた部分の内径は、第1、第2の動圧溝10a,10bの部分の内径よりも大きく形成されている。
【0015】
また、軸孔6Eの下端(モータベース1への挿着側)には、第1の壁部6A、第2の壁部6Bがそれぞれ径の異なる環状に形成され、第1の壁部6Aに連結した第1の座面6C,第2の壁部6Bと連結した第2の座面6Dとにより、この下端部は階段状に開口している(図2参照)。
その第1の壁部6Aに、円形のスラストプレート7が圧入により固定され、その圧入部分は非導電性接着剤16でシールされている。
この実施例では、スラストプレート7の厚さt3は約0.5mmである。
【0016】
(2)ロータ部について
ロータ部21は、ハブ5、シャフト2、フランジ8、マグネット14及びロータヨーク15とで構成されている。
ハブ5は、アルミ又はアルミ合金材によって軸孔5Aを有した略円筒状に形成され、この軸孔5Aにはステンレス系材により形成されたシャフト2が圧入により固定されている。
このシャフト2の下端部(ハブに圧入した反対側)には円環状フランジ8が圧入により固定されている。
【0017】
ハブ5の外周面には信号記録再生ディスク22が取付けられ、このハブ5の下部にはマグネット14とロータヨーク15とが、それぞれ接着やカシメにより固着されている。
【0018】
(3)軸受について
(a)ラジアル方向軸受
シャフト2とスリーブ6の軸孔6Eとの間には僅かな隙間があり、そこには粘性流体である潤滑油17が充填保持されている。
そして、スピンドルモータの動作時にシャフト2が回転することにより、軸孔6Eの内面に形成された第1,第2の動圧溝10a,10bが、シャフト2を外側から中心軸方向に押す動圧を発生させることでラジアル動圧軸受10となる。
【0019】
(b) スラスト方向軸受
シャフト2の下端部に圧入固定されたフランジ8の上面と下面とには、へリングボン状(図示しない)動圧溝がそれぞれの全面に形成されている。
また、このフランジ8の厚さは、第2の壁部6Bの深さ(軸方向)よりも10〜20μm薄く形成され、一方のスラストプレート7は、第1の座面6Cに密着するように固定されるので、フランジ8とスラストプレート7、及び、フランジ8と第2の座面6Dは、それぞれ10〜20μmの隙間を有して対向配置される。
【0020】
この隙間には粘性を有する流体である潤滑油17が充填保持されるので、シャフト2とフランジ8とが一体で回転する動作時には、フランジ8の上面と下面の動圧溝によって動圧が発生する。
この動圧は、フランジ8の上面の動圧溝によってロータ部21を押し下げる方向に、また、フランジ8の下面の動圧溝によってロータ部21を押し上げる方向に発生する。
そして、これら両方向の動圧が均衡してロータ部21を回転自在に軸方向に安定して保持するスラスト動圧軸受11となる。
【0021】
以上説明した(a)、(b)においては、動圧溝を対向する2つの面の一方に形成した例を説明したが、対向する他方の面に、あるいは両方の面に形成してもよい。 また、粘性流体は空気等の他の流体を用いてもよい。
【0022】
次に、(1)〜(3)で説明した構成の主要部について、その組立て手順を説明する。
▲1▼ シャフト2の下端部にフランジ8を圧入する。
▲2▼ スリーブ6の軸孔6Eにその下端部からシャフト2を挿入する。
▲3▼ スリーブ6における第1の壁部6Aの壁面にスラストプレート7を圧入や接着剤16により固定しシールをする。
▲4▼ シャフト2の上端部にハブ5を圧入する。
▲5▼ スリーブ6の下端部をモータベース1に挿着するとともに非導電性接着剤16で固着する。
【0023】
(4) 導電性接着剤の塗布
信号記録再生ディスク22に発生した静電気を効果的に放電させる経路として、ディスク22,ハブ5,シャフト2,ラジアル動圧軸受10,スリーブ6をそれぞれ経由してモータベース1に至る第1の経路がある。
本実施例は、この第1の経路に加えて、ディスク22,ハブ5,シャフト2,スラスト動圧軸受11,スラストプレート7をそれぞれ経由してモータベース1至る第2の経路を設けたものであり、以下、図2,図3を用いて詳述する。図2は、図3におけるA−A断面図である。
【0024】
図3は、実施例を図1の下側からみたスピンドルモータの底面3を示す図である。
当図に示す様に、底面3において、導電性接着剤18は、スラストプレート7とモータベース1とを、間にスリーブ6を挟むように跨いで塗布されている。
このモータベース1の底面3には、外部との電気的接続を行うための配線パターン19を有するフレキシブルプリント基板9(以下FPC9)が図示しない接着剤等により取り付けられている。
【0025】
モータベース1の底面3において、導電性接着剤18を塗布する部分は、幅Wが3mmで深さt1が0.5mmの凹部4とされ、その凹部4の底面4Aに導電性接着剤18は塗布される(図2参照)。
一方、スラストプレート7の底面7Aは、モータベース1の底面3から深さt2だけ凹んだ位置に配置され、底面4Aと底面7Aとは、それぞれの深さt1,t2がほぼ同じになるように設定される。
【0026】
従って、スラストプレート7とモータベース1とを跨ぐように塗布された接着剤18が他の部分に流れることがないので、両者を確実に接着することができる。
また、この凹部4は、シャフト2を挟んでFPC9と概ね対向する位置に設けてある。
そのため、接着剤18が何らかの要因で流れたとしてもFPC9に到達することはなく、FPC9の配線パターン19を短絡させることがない。
【0027】
本実施例において、導電性接着剤18は、一例として株式会社スリーボンド社製のTB3380Bを使用することができる。
塗布する量は、0.002cc〜0.005ccであるが、この量は適宜最適な量を設定できる。
また、凹部4の深さと大きさ(底部4Aの面積)も、この塗布量に応じて、導電性接着剤18が固化した際の高さtに対して、これがモータベース1の底面3から突出しないように設定することができる。
【0028】
これにより、モータベース1とスラストプレート7との導電路が確保されるのでデイスク22に発生した静電気をシャフト2、フランジ8、スラストプレート7から導電性接着剤18を介しモータベース1へと導く導電路が確保出来る。
また、上述した構成によれば、モータベース1の底面3から固化した導電性接着剤18が突出しないので、モータ本体の高さを小さくすることができる。
【0029】
また、スリーブ6とモータベース1とが非導電性接着剤16により接着されて絶縁抵抗が高くなっていても、スラストプレート7とモータベース1間に電気的導通が得られる。
また、両者に挟まれたスリーブ6にも導電性接着剤18が塗布されるので、スリーブ6,スラストプレート7,モータベース1の3者間の電気的導通が得られ、さらに確実に放電を行うことができる。
従って、信号記録再生ディスク22から静電気がモータベース1に放電され、磁気ヘッドが破損することなく、HDDの記録再生にエラーを生じさせたり、記録した信号を破損することがない。
【0030】
さて、本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更が可能である。
例えば、スラストプレート7は、導電性接着剤18が塗布される部分のみを凹ませた底面7Aとされていてもよい。もちろんこの凹部である底面7Aは、モータベース1に導電性接着剤が塗布される凹部4の底面4Aと同じ深さであることが望ましい。
また、HDD装置に搭載されるスピンドルモータに限るものではなく、他の装置に搭載されるスピンドルモータであってもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、本願発明によれば、モータの軸方向高さを大きくすることなく信号記録再生ディスクに発生する静電気をモータベースに確実に放電して磁気ヘッドや信号記録再生ディスクに記録した信号の破壊を防止するという効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスピンドルモータの実施例を示す半断面図である。
【図2】本発明のスピンドルモータの実施例における要部を示す半断面図である。
【図3】本発明のスピンドルモータの実施例における要部を示す底面図である。
【図4】従来のスピンドルモータを説明する半断面図である。
【符号の説明】
1、101 モータベース
1A 筒状壁
1B スリーブ用孔
2,102 シャフト
3 (モータベースの)底面
4 凹部
4A 底面(塗布面)
5,105 (ロータ)ハブ
5A,6E 軸孔
6,106 スリーブ
6A,6B 第1,第2の壁部
6C,6D 第1,第2の座面
6E 軸孔
7 スラストプレート
7A 底面(塗布面)
8 フランジ
9 フレキシブルプリント基板(FPC)
10,110 ラジアル動圧軸受
10a,10b 動圧溝
11,111 スラスト動圧軸受
12 コイル
13 コア
14 マグネット
15 ロータヨーク
16,116 非導電性接着剤
17 潤滑油
18 導電性接着剤
19 配線パターン
20 ステータ部
21 ロータ部
22 信号記録再生ディスク
t 高さ
t1,t2 深さ
t3 厚さ
W 幅
Claims (3)
- ディスクを装着するハブに一方の先端部を固定されたシャフトが、モータベースの貫通孔に立設したスリーブに回転自由に嵌挿されるとともに他方の先端部側に設けられたスラスト軸受でスラスト方向に支持されて成る一方、
前記スラスト軸受が、前記スリーブと、前記シャフトの前記他方の先端部に設けたフランジと、前記フランジに対向するように前記スリーブに固着されたスラストプレートとで構成されて成るスピンドルモータにおいて、
前記モータベースにおける前記ハブとは反対側となる底面の一部に、前記貫通孔に一方が開放するよう形成された凹部と、
前記凹部と前記スラストプレートとを、間にスリーブを挟んで跨ぐように塗布された導電性接着剤と、を有し、
前記導電性接着剤を介して前記モータベースと前記スラストプレートとが電気的に接続されていることを特徴とするスピンドルモータ。 - 前記モータベースの底面に対し、前記凹部の底面と前記スラストプレートの前記ハブとは反対側の面とがほぼ同じ深さにされると共に、前記導電性接着剤は、前記モータベースの底面から突出していないことを特徴とする請求項1記載のスピンドルモータ。
- ディスクを装着するハブに一方の先端部を固定されたシャフトが、モータベースの貫通孔に接着固定されたスリーブに回転自由に嵌挿されて成るスピンドルモータにおいて、
配線パターンを有し前記モータベースにおける前記ハブとは反対側となる底面に取り付けられた基板と、
前記底面における前記シャフトを挟んで前記基板に対向する位置に、前記貫通孔に一方が開放するよう設けられた凹部と、
前記凹部に塗布された導電性接着剤と、を有し、
前記シャフトはその他方の先端部側に設けられたスラスト軸受でスラスト方向に支持されており、
前記スラスト軸受は、前記スリーブと、前記シャフトの前記他方の先端部に設けられたフランジと、前記フランジと対向するように前記スリーブに接着固定されたスラストプレートと、を有して構成されており、
前記導電性接着剤は、前記凹部と前記スラストプレートとを、間に前記スリーブを挟んで跨ぐように塗布されて前記モータベースと前記スラストプレートとを電気的に接続するように構成されて成ることを特徴とするスピンドルモータ。
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