JP4240351B2 - 蒸発濃縮装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体を蒸発させて濃縮させる蒸発濃縮装置に係り、更に詳しくは、凝縮水の熱エネルギーを利用し熱交換器を使用して原水を予熱することで装置稼動に必要なエネルギーを低減させることのできる蒸発濃縮装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来公知の蒸発濃縮装置における原水及び凝縮水の供給、排出方法としては、装置内の液面制御で行う方法(特開平9−57001号公報、特開平10−118402号公報等)、或いは原水の供給側での流量計測及び流量調整する方法(特許第1117733号)などが知られている。
これら従来技術の問題点は、原水の供給量または凝縮水の排出量のどちらか一方を制御するため、原水を凝縮水で予熱するために設けた熱交換器内における熱エネルギーの授受バランスが崩れることである。
このため、原水の供給温度にばらつきが生じ、減圧下での蒸発濃縮処理では供給温度が高い場合は装置内で突沸するという問題が発生し、供給温度が低い場合には蒸発量が低下するためヒータによる加熱など余分なエネルギーを使用する問題が生じる。突沸が発生するとミストや発泡による凝縮水の汚染が生じて、装置を一時停止または回避するための運転に移行せざるを得ない。いずれにしても、安定した装置稼働が得られないため、余分な稼働エネルギーを使用することになる。
【0003】
例えば、蒸発濃縮装置内の液面制御を用いた流量制御方法では、供給される原水の流量は調整されず、装置内の原水が一定量になると供給停止するといった断続的な供給となり、原水の供給温度にばらつきを生じる。また、原水の供給側で供給量を測定し流量調整制御する方法においても、長期の稼働により蒸発濃縮装置内の配管や熱交換器にスケール等の異物が付着し、伝熱効率が低下したり、濃縮工程が進むにつれ、単位時間当たりの蒸発量が減少するため、得られる凝縮水量も減少することになる。
したがって、流量計で原水の供給量を調整しただけでは、凝縮水量の低下のような経時的流量変化に対応できないため、原水と凝縮水の流量バランスが崩れてしまうことになる。同様に真空蒸発処理の場合では各機器取付部及び配管継手部等からの洩れにより装置内の真空度が下がり、当初の処理温度では原水が沸騰せず凝縮水量が減少したりして、突然、排出される凝縮水が蒸発濃縮装置の初期で得られる凝縮水量以下になる事態も発生することがある。
原水を凝縮水で予熱する熱交換器において、仮に凝縮水の流量が低下し原水との流量バランスが崩れると、下記(式1)から明らかなように、凝縮水の流量G2が低下した場合、原水の流量G1が変化しなければ(t2-t1)は低下することがわかる。つまり、原水が熱交換器より排出された時の温度t2が下がることを示し、低い温度のまま原水は処理タンクに移送され、ヒータで余分なエネルギーを用いて加熱しなければならない。
Q=G1C1(t2−t1)=G2C2(t1’−t2’) (式1)
Q;熱交換器における単位時間の伝熱量
G1;原水の流量 G2;凝縮水の流量
C1:原水の比熱 C2;凝縮水の比熱
t1;原水が熱交換器に流入する前の温度
t2;原水が熱交換器より排出された時の温度
t1';凝縮水が熱交換器に流入する前の温度
t2';凝縮水が熱交換器より排出される時の温度
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、蒸発濃縮装置の凝縮水の流量を計測し原水の供給量を調整することで、熱交換器部分での流量のバランスがくずれず、また、余分なエネルギーを消費することなのない蒸発濃縮装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、濃縮すべき原水を原水から排出される凝縮水で予熱する熱交換器を備えた蒸発濃縮装置において、排出される凝縮水の排出量を計測する手段と原水を供給する際に供給量を計測する手段、前記排出量及び供給量を調整するための手段並びに、これらの手段を制御する制御手段を有し、前記凝縮水の排出量と原水の供給量とが同じになるように制御することを特徴とする蒸発濃縮装置に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を示す蒸発濃縮装置の概略フロー図を基に説明する。図1の蒸発濃縮装置は、原水1を貯溜する処理タンク5、装置内を減圧する真空ポンプ16、原水1を加熱するためのヒータ7、原水1を凝縮水14で予熱するための熱交換器4、減圧下から凝縮水14を引抜くための回転数制御による流量調整可能な凝縮水ポンプ12、凝縮水14の流量を計測するための上限レベル計18、下限レベル計19が設置された凝縮水タンク11、原水1の流量を計測調整するための流量計3及び流量調整弁2、凝縮水ポンプ12の排出量を計測するための流量計13、これらの機器を制御する制御部22を備えた蒸気圧縮式濃縮装置である。
本発明において、蒸発濃縮する方法は蒸気圧縮式だけに限定されず、凝縮水の液温が原水より高い液温で排出され原水を凝縮水で予熱する、あるいは凝縮水を原水で冷却することが可能な他の蒸発濃縮装置でもよい。
【0007】
凝縮水14の流量を計測する方法は、電磁流量計や渦流量計などの信号出力可能な流量計であればよい。図1の場合は、凝縮水タンク11に設けた上限レベル計18と下限レベル計19の間を凝縮水14が上昇、若しくは下降する時間を計測し、レベル計間の一定容積と計測した時間より制御部22で流量を算出する。このとき使用するレベル計は液面を感知できるものであれば、その方法及び手段は問わない。
運転開始時の動作は、凝縮水タンク11に溜まる凝縮水を上限レベル計18が検知するまでは凝縮水ポンプ12による凝縮水14の引抜きは行わず、検知後に引抜きを開始する。仮に装置の最大凝縮水の排出量がF(L/min)であった場合、F+α(L/min)の流量で凝縮水タンク11より凝縮水14の引抜きを開始する。このとき、αの値は0<α<Fとする。上限レベル計18、下限レベル計19間の容積をW(L)とすれば、W/α(min)の時間で下限レベル19まで引抜くことができる。また、下限レベル計19が検知後の引抜き量をF−α(L/min)とすると、容積W(L)を満たす時間はW/α(min)を要する。これらW/α(min)を実際の上限レベル計18、下限レベル計19の検知するまでの時間を計測し次式より実際の排出量が計算できる。
V1=(F+α)−W/T1 (式2)
V2=(F−α)+W/T2 (式3)
【0008】
(式2)は凝縮水タンク11から容積W(L)を引抜いた時に用いる計算式、(式3)は容積W(L)が満たされる時に用いる計算式で、V1及びV2(L/min)は実際の装置から得られている排出量、T1(min)は容積W(L)を引抜くために要した実際の時間、T2(min)は容積W(L)が満たされる時に要した実際の時間である。そこで、算出したV1及びV(L/min)を比較し大きい方の数値をV0(L/min)とし、V0(L/min)からF(L/min)を引いて算出された数値を新たなαとし装置を運転させる。
算出した数値を基に原水1の供給量を流量調整弁2の開度変更と流量計3を用いて自動的に調整すれば、連続的に流量制御しながら原水1の供給することが可能となり、供給される原水1と排出される凝縮水14の流量バランスは±αの精度で保つことができる。
αは実際の装置から得られた排出量V1及びV2を監視しながら0に近づけることで流量バランスの精度を向上させることができる。そこで、(式2)、(式3)で算出した流量となるように原水1の流量を調節することによって、熱交換器4から排出される原水1の温度低下を防止することができる。
【0009】
原水1と凝縮水14を熱交換する熱交換器4は、プレート式、多重管式、蛇管式などを用いてもよく、効率よく原水1と凝縮水14を熱交換する手段であればよい。また、原水や凝縮水の流量を調節する方法に絞り弁やニードルバルブ、回転数制御可能なポンプなどを用い、望ましくは制御部22より算出した凝縮水14の流量に合わせて自動的に調節できる機構を設けるのが好ましい。
このように本発明の蒸発濃縮装置は、凝縮水14の流量が変化しても原水1の流量を制御部22によって自動で流量を制御することができるため、熱交換器4での流量バランスが崩れず、効率を落とすことなく原水1を予熱することができ、装置が原水1を加熱するエネルギーの消費量を増加させることなく安定した運転をすることができる。
【0010】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図1に示した蒸発濃縮装置の概略フローを基に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。。
図1の蒸発濃縮装置は、蒸気圧縮式を用いた蒸発濃縮装置である。本実施例では、加工部品の脱脂洗浄装置から排水されるリンス廃水を原水とした。原水1は流量計3より得られる信号を制御部22で検知し、流量調整弁2の開度を調整することにより流量調整される。
熱交換器4に流入した原水1は、凝縮水14と熱交換されて昇温し、配管を通り処理タンク6へと流入する。処理タンク5へ原水1を供給する方法は、処理タンク5を含めた装置内を真空ポンプ16で19.99kPaに減圧したのち流量調整弁2を開くことで装置内に吸込まれ、ポンプ等の動力を必要せず、原水1を供給することができる。
【0011】
処理タンク5に入った原水1は循環ポンプ6によりヒータ7に送られ加熱された後、配管を通り熱交換器8に流入し処理タンク5へ戻る。この一連の循環工程で原水1の温度を装置立上げ時はヒータ7を使用して60℃まで温度上昇させる。60℃に達した原水1は19.99kPaの減圧下で蒸発を開始し、水蒸気は処理タンク5内に充満される。水蒸気は気水分離器9で水蒸気と液滴に分離され、水蒸気のみが配管を通り圧縮機10に吸引される。
吸引された水蒸気は、圧縮機10により圧縮されて65〜70℃の過熱蒸気となって熱交換器8に送られる。定常運転になると原水1は熱交換器8内部でこの過熱蒸気によって昇温されることになり、ヒータ7の稼働率は低減される。
過熱蒸気は熱交換器8内部で凝縮され、凝縮水14として気水分離器15を通り凝縮水タンク11に送られる。非凝縮性ガスと凝縮しきれない微量の水蒸気は真空ポンプ16により大気中に排出される。
【0012】
凝縮水タンク11に集められた凝縮水14の温度は60〜65℃であり、凝縮水14はインバータで回転数制御された凝縮水ポンプ12で熱交換器4に送られ、原水1と熱交換される。原水1の温度は25〜30℃であったが、熱交換器4から排出された時の温度は55〜60℃まで昇温することを確認した。この時の原水1と凝縮水14の流量は、凝縮水タンク11に設けられた上限レベル計18と下限レベル計19によって凝縮水14の増減の時間を測定することによって、制御部22で凝縮水流量を算出し、原水1と凝縮水14の流量が同じとなるよう制御部22によって流量調整弁2と凝縮水ポンプ12を制御する。
また、熱交換器4については設計時に原水の温度、凝縮水の温度、及び処理能力より求める凝縮水の流量より、機器の選定が可能である。温度が25〜30℃となった凝縮水14は、流量計13で排出量を計測した後、装置外に排出される。なお、流量計13は、凝縮水タンク11内で測定、算出した流量と比較し誤動作の有無も確認させている。また、処理タンク5内の濃縮された原水は、濃縮水ポンプ20によって装置外に排出される。
上記一連の工程を連続して行うことで処理タンク5の温度は、昇温された原水1が流入するため、極端な温度変化もなく安定した蒸発濃縮処理が可能となる。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、蒸発濃縮装置から排出される凝縮水の流量が変化した場合でも、変化に応じた原水を蒸発濃縮装置に供給することができ、熱交換器での流量のバランスが崩れず、目的温度まで達していない原水を加熱する操作はなくなり、省エネルギーに優れた蒸発濃縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す蒸発濃縮装置の概略フロー図である。
【符号の説明】
1.原水 2.流量調整弁 3.流量計
4.熱交換器 5.処理タンク 6.循環ポンプ
7.ヒータ 8.熱交換器 9.気水分離器
10.圧縮機 11.凝縮水タンク 12.凝縮水ポンプ
13.流量計 14.凝縮水 15.気水分離器
16.真空ポンプ 18.上限レベル計 19.下限レベル計
20.濃縮水ポンプ 21.濃縮水 22.制御部
Claims (3)
- 濃縮すべき原水を原水から排出される凝縮水で予熱する熱交換器を備えた蒸発濃縮装置において、排出される凝縮水の排出量を計測する手段と原水を供給する際に供給量を計測する手段、前記排出量及び供給量を調整するための手段、並びにこれらの手段を制御する制御手段を有し、前記凝縮水の排出量と原水の供給量とが同じになるように制御することを特徴とする蒸発濃縮装置。
- 排出される凝縮水の排出量を計測する手段が、一定容積の容器に凝縮水が増減する時間を計測し算出することを特徴とする請求項1に記載の蒸発濃縮装置。
- 蒸発濃縮装置が減圧下で濃縮処理を行う蒸気圧縮式濃縮装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸発濃縮装置。
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