ところで、上述のシート搬送装置では、普通紙の他に光沢紙やインクジェット紙等の厚みや表面状態の異なる記録用紙が搬送される。記録用紙が搬送される搬送路は、Uターンするように湾曲形成されているのが一般的である。このため、例えば光沢紙等の記録用紙が搬送路に沿って搬送される場合、記録用紙と搬送路との摩擦力により記録用紙の搬送を妨げる方向へ記録用紙に対して力(バックテンション)が作用する。また、記録用紙は、上記給紙ローラから離れるまでは給紙ローラが圧接されている。このため、給紙ローラからの押圧力により記録用紙にバックテンションが作用する。その結果、搬送ローラに対する記録用紙の滑りが生じ、搬送量がショートするという問題がある。換言すれば、一回の搬送動作で上記改行幅を搬送されるべきシートの搬送量が、改行幅に満たないという現象が起こる。
このような搬送量のショート量はセンサ等を用いて検出できるものではなく、従来のシート搬送装置では搬送量のショートを正確に補正することができなかった。シート搬送装置が上述のように画像記録装置に搭載されたものである場合、搬送量のショートは、記録用紙に記録される画像の画質低下を引き起こす。また、シート搬送装置がスキャナにおける原稿の搬送手段として使用される場合、搬送量のショートは、原稿から読み取られた画像の画質低下を引き起こす。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、シートに作用するバックテンションが原因で起こる搬送量のショートを正確に補正することができるシート搬送装置、及びシート搬送方法を提供することを目的とする。
(1) 本発明に係るシート搬送装置は、シートを狭持して単位送り量を搬送する第1動作を繰り返す一対の第1ローラと、上記シートの搬送経路に設けられ、上記第1動作に対してバックテンションを与える負荷部材と、1回の上記第1動作における上記第1ローラの回転を測定し、該第1動作による上記シートの搬送量を検出する第1検出手段と、上記第1検出手段により検出された搬送量が上記単位送り量未満であるか否かを判定する第1判定手段と、上記第1判定手段により上記単位送り量未満であると判定されたことを条件に、その判定された第1動作の次の第1動作により上記単位送り量に加えて上記第1動作に対して予め定められた第1設定量を上記シートが搬送されるように上記第1ローラの回転を制御する第1制御手段と、を具備する。
本発明のシート搬送装置には、一対の第1ローラが設けられている。一対の第1ローラは、シートが搬送される搬送経路を挟んで対向配置されている。この第1ローラにシートが供給されると、第1動作が開始される。第1動作は、第1ローラがシートを狭持して単位送り量を搬送する動作であり、シートの搬送が完了するまで繰り返される。すなわち、シートは、第1動作が繰り返されることによって単位送り量ずつ搬送される。このように第1ローラにより搬送されるシートの搬送経路には、負荷部材が設けられている。負荷部材は、第1動作に対してバックテンションを与えるものである。このため、シートは、第1動作による搬送中に負荷部材から搬送を妨げる方向へ力を受ける。その結果、シートの円滑な搬送が妨げられ、1回の第1動作によるシートの搬送量が上記単位送り量に満たないという現象が起こる。換言すれば、シートの搬送経路に負荷部材が設けられているために、シートの搬送量がショートするという問題が生じる。なお、負荷部材としては、いわゆる搬送路や給紙ローラ等が挙げられる。
ところで、上記搬送量のショートは、シートが搬送される過程において常に起こるものではない。これは、バックテンションの大きさが、負荷部材とシートとの位置関係等によって変化するからである。このため、1枚のシートが搬送される間に繰り返される複数回の第1動作のうちの一部において搬送量がショートする。本発明のシート搬送装置では、この搬送量のショートを補正するために、第1ローラの回転が第1制御手段により制御される。第1ローラは、一部の第1動作において、単位送り量に加えて少なくとも第1設定量をシートが搬送されるようにその回転が制御される。具体的には、第1ローラの回転は、上記第1判定手段により上記単位送り量未満であると判定されたことを条件に、その判定された第1動作の次の第1動作により上記単位送り量に加えて上記第1動作に対して予め定められた第1設定量を上記シートが搬送されるように、第1制御手段によって制御される。この構成により、搬送量がショートしたと判定された第1動作の次の第1動作で第1制御手段による制御が行われるので、適切なタイミングで搬送量が補正される。また、上記制御は、搬送量がショートしたと判定された場合にのみ行われるので、シートの送り過ぎが防止される。なお、第1設定量は、バックテンションの大きさ、シートの種類、単位送り量等に基づいて予め適切な値に設定される。
(2) 上記第1検出手段により検出された搬送量の上記単位送り量に対する不足量を検出する第2検出手段を備え、上記第1制御手段は、上記次の第1動作により上記単位送り量、上記第1設定量、及び上記第2検出手段が検出した不足量を上記シートが搬送されるように上記第1ローラの回転を制御するものでもよい。
この構成により、シートの滑りを原因とする搬送量のショート分を第1設定量として設定しておくことにより、第1動作による搬送量のショートが正確に補正される。
(3) 上記第1制御手段は、上記次の第1動作が上記第1ローラに供給されたシートに対する第1動作が開始されてから何回目の第1動作であるかによって上記第1設定量を変更するものでもよい。
第1動作に対するバックテンションの大きさは、シートが搬送される過程で変化する。このため、第1動作に対する搬送量のショート量も当然変化する。したがって、第1動作に対するバックテンションの変化を考慮して各第1動作に対する第1設定量が変更されることにより、搬送量の補正がより正確に行われる。
(4) 上記第1設定量は、上記第1動作時に起こる上記バックテンションにより生じる上記第1ローラに対する上記シートの滑りを予測して設定されたものであることが好ましい。
シート搬送装置では、上記バックテンションが原因で第1ローラに対するシートの滑りが起こる場合がある。このシートの滑りは、第1ローラの回転をセンサ等で監視したとしても検出できないものである。第1設定量は、この滑りを予測して設定されている。このため、センサで検出されないシートの滑りが原因で起こる搬送量のショートを補正することが可能となる。
(5) 上記負荷部材は、上記シートが搬送される湾曲形成された搬送路を含み、上記第1ローラは、その搬送路の下流側に設けられたものであってもよい。
第1ローラに供給されたシートは、第1動作が繰り返されることによって搬送路に沿って搬送される。この搬送路は、湾曲形成されている。このため、第1ローラによりシートが搬送されることによってシートが搬送路から摩擦力を受ける。この摩擦力が、上記バックテンションとしてシートの搬送を妨げる。摩擦力は、シートの大部分が搬送路に位置しているとき、すなわち搬送開始直後ほど大きい。そして、摩擦力は、シートが搬送路を抜けるに伴って徐々に小さくなる。第1設定量は、この摩擦力の変化を考慮して適切な値に設定される。これにより、搬送量のショートを的確に補正することが可能となる。
(6) 上記負荷部材は、シートと圧接して該シートを上記第1ローラへ供給する第2ローラを含むものでもよい。
第2ローラは、シートを第1ローラに供給するものであり、該シートに圧接されている。このため、第1動作に対して第2ローラがバックテンションを与える場合がある。所定の設定量は、このバックテンションの大きさを考慮して適切な値に設定される。これにより、第2ローラが原因で起こる搬送量のショートを的確に補正することが可能となる。
(7) 上記第1制御手段は、上記第1ローラへ供給されるシートの種類によって上記第1設定量を変更するものでもよい。
第1ローラへ供給されるシートとしては、普通紙、光沢紙、インクジェット紙等が挙げられる。これらのシートは、厚さや表面状態の違いにより、第1動作により受けるバックテンションの大きさが異なる。上記構成では、シートの種類に応じて第1設定量が変更されるので、シートの種類に関わらず搬送量のショートを安定的に補正することが可能となる。
(8) 上記第1ローラにより搬送されるシートに画像を記録する記録手段を備え、上記第1制御手段は、上記記録手段により上記シートに記録される画像の解像度によって上記第1設定量を変更するものでもよい。
シート搬送装置には、記録手段が設けられている。この記録手段は、例えば、第1ローラよりもシートの搬送方向下流側に配置されている。シートは、所定の第1動作とその次の第1動作との間の期間では、一時的に停止される。この期間に、シートの搬送方向と略直交する方向を主走査方向とする所定ライン分の画像がシートに記録される。このため、第1動作と上記画像の記録とが交互に繰り返されることにより、シート全体に対する画像形成が行われる。シートにはこの要領で画像が記録されるので、単位送り量が変更されることで副走査方向の解像度が変更される。すなわち、上記構成では、単位送り量に応じて第1設定量が変更されるので、搬送量のショートが原因で起こる画像の画質低下、いわゆるバンディングを効果的に低減することが可能となる。
(9) 本発明に係るシート搬送装置は、シートを狭持して分割送り量を搬送する第2動作をn回繰り返して単位送り量を搬送する第1動作を繰り返す一対の第3ローラと、上記シートの搬送経路に設けられ、上記第1動作に対してバックテンションを与える負荷部材と、1回の上記第2動作における上記第3ローラの回転を測定し、該第2動作による上記シートの搬送量を検出する第3検出手段と、上記第3検出手段により検出された搬送量が上記分割送り量未満であるか否かを判定する第2判定手段と、上記第2判定手段により上記分割送り量未満であると判定されたことを条件に、その判定された第2動作の次の第2動作により上記分割送り量に加えて上記第2動作に対して予め定められた第2設定量を上記シートが搬送されるように上記第3ローラの回転を制御する第2制御手段と、を具備するものであってもよい。
第1ローラにシートが供給されると、第2動作が開始される。第2動作は、第1ローラがシートを狭持して分割送り量を搬送する動作である。この第2動作がn回繰り返されることにより、1回の第1動作が完了する。すなわち、1回の第1動作は、n回の第2動作に分けて行われる。第3検出手段により検出された搬送量が分割送り量未満であると第2判定手段により判定されると、搬送量のショートを補正すべく第1ローラの回転が制御される。このため、適切なタイミングで搬送量が補正され、且つシートの送り過ぎが防止される。また、第2動作が行われる毎に第2判定手段による判定が行われることで、搬送量を細かに補正することが可能となる。したがって、各第1動作が完了した段階での搬送量のずれをできるだけ小さくすることができ、バンディングの低減に有効である。なお、第2動作では、第1動作がn回に分割して行われるので、第2設定量は、第1設定量の略1/nに相当するものである。
(10) 上記第3検出手段により検出された搬送量の上記分割送り量に対する不足量を検出する第4検出手段を備え、上記第2制御手段は、上記次の第2動作により上記分割送り量、上記第2設定量、及び上記第4検出手段が検出した不足量を上記シートが搬送されるように上記第3ローラの回転を制御するものでもよい。
この構成により、シートの滑りを原因とする搬送量のショート分を第2設定量として設定しておくことにより、第2動作による搬送量のショートが正確に補正される。
(11) 上記第2制御手段は、上記次の第2動作が上記第3ローラに供給されたシートに対する第2動作が開始されてから何回目の第2動作であるかによって上記第2設定量を変更するものでもよい。
第2動作に対するバックテンションの大きさは、シートが搬送される過程で変化する。このため、第2動作に対する搬送量のショート量も当然変化する。したがって、第2動作に対するバックテンションの変化を考慮して各第2動作に対する第2設定量が変更されることにより、搬送量の補正がより正確に行われる。
(12) 上記第2設定量は、上記第2動作時に起こる上記バックテンションにより生じる上記第3ローラに対する上記シートの滑りを予測して設定されたものであることが好ましい。
(13) 上記負荷部材は、上記シートが搬送される湾曲形成された搬送路を含み、上記第3ローラは、その搬送路の下流側に設けられたものであってもよい。
(14) 上記負荷部材は、シートと圧接して該シートを上記第3ローラへ供給する第4ローラを含むものでもよい。
(15) 上記第2制御手段は、上記第3ローラへ供給されるシートの種類によって上記第2設定量を変更するものでもよい。
(16) 上記第3ローラにより搬送されるシートに画像を記録する記録手段を備え、上記第2制御手段は、上記記録手段により上記シートに記録される画像の解像度によって上記第2設定量を変更するものでもよい。
(17) また、本発明に係るシート搬送方法は、シートを狭持して単位送り量を搬送する第1動作を繰り返す一対の第1ローラと、上記シートの搬送経路に設けられ、上記第1動作に対してバックテンションを与える負荷部材と、を備えるシート搬送装置に適用されるシート搬送方法であって、上記第1動作が繰り返される第1ステップと、1回の上記第1動作における上記第1ローラの回転が測定され、該第1動作による上記シートの搬送量が検出される第2ステップと、上記第2ステップにおいて検出された搬送量が上記単位送り量未満であるか否かが判定される第3ステップと、上記第3ステップにおいて上記単位送り量未満であると判定されたことを条件に、その判定された第1動作の次の第1動作により上記単位送り量に加えて上記第1動作に対して予め定められた第1設定量を上記シートが搬送されるように上記第1ローラの回転が制御される第4ステップと、を含む。
第1ステップでは、第1ローラに供給されたシートに対して上記第1動作が繰り返される。これにより、シートが搬送される。上述のように、1枚のシートが搬送される間に繰り返される複数回の第1動作のうちの一部において搬送量がショートする。第2ステップでは、1回の上記第1動作における上記第1ローラの回転が測定され、該第1動作による上記シートの搬送量が検出される。第3ステップでは、上記第2ステップにおいて検出された搬送量が上記単位送り量未満であるか否かが判定される。そして、第4ステップでは、上記第3ステップにおいて上記単位送り量未満であると判定されたことを条件に、その判定された第1動作の次の第1動作により上記単位送り量に加えて上記第1動作に対して予め定められた第1設定量を上記シートが搬送されるように上記第1ローラの回転が制御される。なお、第1設定量は、バックテンションの大きさ、シートの種類、単位送り量等に基づいて予め適切な値に設定される。
これにより、搬送量がショートしたと判定された第1動作の次の第1動作で第1ローラの回転が制御されるので、適切なタイミングで搬送量が補正される。また、上記制御は、搬送量がショートしたと判定された場合にのみ行われるので、シートの送り過ぎが防止される。
(18) 上記第3ステップと上記第4ステップとの間に、上記第2ステップにおいて検出された搬送量の上記単位送り量に対する不足量が検出される第5ステップを含み、上記第4ステップは、上記次の第1動作により上記単位送り量、上記第1設定量、及び上記第5ステップにおいて検出された不足量を上記シートが搬送されるように上記第1ローラの回転が制御されてもよい。
これにより、シートの滑りを原因とする搬送量のショート分を第1設定量として設定しておくことにより、第1動作による搬送量のショートが正確に補正される。
(19) 上記第4ステップは、上記次の第1動作が上記第1ローラに供給されたシートに対する第1動作が開始されてから何回目の第1動作であるかによって、上記第1設定量が変更されてもよい。
(20) 上記第1設定量は、上記第1動作時に起こる上記バックテンションにより生じる上記第1ローラに対する上記シートの滑りを予測して設定されたものが好ましい。
シート搬送装置では、上記バックテンションが原因で第1ローラに対するシートの滑りが起こる場合がある。このシートの滑りは、第1ローラの回転をセンサ等で監視したとしても検出できないものである。第1設定量は、この滑りを予測して設定されている。このため、センサで検出されないシートの滑りが原因で起こる搬送量のショートを補正することが可能となる。
(21) 上記負荷部材は、上記シートが搬送される湾曲形成された搬送路を含み、上記第1ローラがその搬送路の下流側に設けられていてもよい。
第1ローラに供給されたシートは、第1動作が繰り返されることによって搬送路に沿って搬送される。この搬送路は、湾曲形成されている。このため、第1ローラによりシートが搬送されることによってシートが搬送路から摩擦力を受ける。この摩擦力が、上記バックテンションとしてシートの搬送を妨げる。摩擦力は、シートの大部分が搬送路に位置しているとき、すなわち搬送開始直後ほど大きい。そして、摩擦力は、シートが搬送路を抜けるに伴って徐々に小さくなる。第1設定量は、この摩擦力の変化を考慮して適切な値に設定される。これにより、搬送量のショートを的確に補正することが可能となる。
(22) 上記負荷部材は、シートと圧接して該シートを上記第1ローラへ供給する第2ローラを含むものでもよい。
第2ローラは、シートを第1ローラに供給するものであり、該シートに圧接されている。このため、第1動作に対して第2ローラがバックテンションを与える場合がある。第1設定量は、このバックテンションの大きさを考慮して適切な値に設定される。これにより、第2ローラが原因で起こる搬送量のショートを的確に補正することが可能となる。
(23) 本発明のシート搬送方法は、シートを狭持して分割送り量を搬送する第2動作がn回繰り返されて単位送り量を搬送する第1動作を繰り返す一対の第3ローラと、上記シートの搬送経路に設けられ、上記第1動作に対してバックテンションを与える負荷部材と、を備えるシート搬送装置に適用されるシート搬送方法であって、上記第2動作が繰り返される第6ステップと、1回の上記第2動作における上記第3ローラの回転が測定され、該第2動作による上記シートの搬送量が検出される第7ステップと、上記第7ステップにおいて検出された搬送量が上記分割送り量未満であるか否かが判定される第8ステップと、上記第8ステップにおいて上記分割送り量未満であると判定されたことを条件に、その判定された第2動作の次の第2動作により上記分割送り量に加えて上記第2動作に対して予め定められた第2設定量を上記シートが搬送されるように上記第3ローラの回転が制御される第9ステップと、を含むものであってもよい。
第3ローラにシートが供給されると、第2動作が開始される。第2動作は、第3ローラがシートを狭持して分割送り量搬送する動作である。この第2動作がn回繰り返されることにより、1回の第1動作が完了する。すなわち、1回の第1動作は、n回の第2動作に分けて行われる。第7ステップにおいて検出された搬送量が分割送り量未満であると第8ステップで判定されたことを条件に、搬送量のショートを補正すべく第3ローラの回転が制御される。このため、適切なタイミングで搬送量が補正され、且つシートの送り過ぎが防止される。また、各第2動作が行われる毎に第8ステップにおける判定が行われることで、搬送量が細かに補正される。したがって、各第1動作が完了した段階での搬送量のずれをできるだけ小さくすることが可能となり、バンディングの低減に有効である。なお、第2動作では、第1動作がn回に分割して行われるので、第2設定量は、第1設定量の略1/nに相当するものである。
(24) 上記第8ステップと上記第9ステップとの間に、上記第7ステップにおいて検出された搬送量の上記分割送り量に対する不足量が検出される第10ステップを含み、上記第9ステップは、上記次の第2動作により上記分割送り量、上記第2設定量、及び上記第10ステップにおいて検出された不足量を上記シートが搬送されるように上記第3ローラの回転が制御されてもよい。
これにより、シートの滑りを原因とする搬送量のショート分を第2設定量として設定しておくことにより、第2動作による搬送量のショートが正確に補正される。
(25) 上記第9ステップは、上記次の第2動作が上記第3ローラに供給されたシートに対する第2動作が開始されてから何回目の第2動作であるかによって、上記第2設定量が変更されてもよい。
(26) 上記第2設定量は、上記第2動作時に起こる上記バックテンションにより生じる上記第3ローラに対する上記シートの滑りを予測して設定されたものであることが好ましい。
(27) 上記負荷部材は、上記シートが搬送される湾曲形成された搬送路を含み、上記第3ローラがその搬送路の下流側に設けられていることが好ましい。
(28) 上記負荷部材は、シートと圧接して該シートを上記第3ローラへ供給する第4ローラを含むものであってもよい。
本発明によれば、一部の第1動作において単位送り量に加えて第1設定量又は第2設定量をシートが搬送されるように第1ローラ又は第3ローラの回転が制御される。したがって、第1ローラ又は第3ローラに対するシートの滑り量、シートの種類等に応じて所定の設定量を適切な値に設定しておくことにより、搬送量のショートを正確に補正することができる。
以下に、適宜図面が参照されて本発明の実施形態が説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更されてもよい。
まず、本発明のシート搬送装置の一実施形態に係る複合機10の構成及び動作について説明する。図1は、複合機10の外観構成を示す斜視図である。
複合機10は、図1に示されるように、プリンタ部20を下部に備え、スキャナ部12を上部に備えて構成された多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。この複合機10は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部20は、本発明のシート搬送装置が搭載されたインクジェットプリンタである。すなわち、プリンタ部20において給紙トレイ29から排紙トレイ21へ記録用紙(シートの一例)を搬送する手段が本発明のシート搬送装置に相当する。したがって、プリンタ機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部12がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタにも本発明は適用可能である。なお、本実施形態においては、本発明のシート搬送装置がプリンタ部20に搭載された形態について説明されるが、本発明のシート搬送装置は、スキャナ部12に適用されてもよい。すなわち、本発明のシート搬送装置は、スキャナ部12において読み取られる原稿(シートの一例)を搬送する自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)に採用されてもよい。
複合機10は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された印刷データに基づいて記録用紙に画像や文書を記録する。なお、複合機10は、デジタルカメラ等が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録することができる。また、複合機10は、メモリカード等の各種記憶媒体が装填されて、該記憶媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することもできる。
図1に示されるように、複合機10は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体形状を呈する。プリンタ部20は、正面に開口16が形成されている。給紙トレイ29及び排紙トレイ21は、開口16の内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ29には、記録用紙が収容され、例えばA4サイズ以下の各種サイズの記録用紙が収容される。記録用紙としては、普通紙、光沢紙、インクジェット紙等が挙げられる。
プリンタ部2の正面の右下部には、扉28が開閉自在に設けられている。扉28の内側にはカートリッジ装着部(不図示)が設けられている。扉28が開かれると、カートリッジ装着部が正面側に露出されてインクカートリッジが装抜可能になる。インクカートリッジは、インクが貯留されたメインタンクを有する。インクカートリッジは、カートリッジ装着部に装着されることにより、インクチューブ41(図6参照)を介して記録ヘッド39(図8参照)と連結される。記録ヘッド39は、後述の搬送ローラ67及びピンチローラ64により搬送される記録用紙に画像を記録するものである。すなわち、記録ヘッド39は、本発明の記録手段の一例である。インクカートリッジには、記録ヘッド39へ供給されるインクが貯留されている。複合機10では、画像の記録に4色のカラーインクが使用される。この4色のカラーインクは、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び顔料インクであるブラック(Bk)である。したがって、カートリッジ装着部には、これら4色にそれぞれ対応する4つのインクカートリッジが装着される。なお、使用されるインクは4色に限定されるものではなく、例えば、染料インクであるフォトブラック(PBk)を追加した5色のインクが使用されてもよい。また、後述のキャリッジ38(図6参照)には、記録ヘッド39と共にサブタンクが設けられている。サブタンクは、インクカートリッジから供給されたインクを貯留するものである。記録ヘッド39には、このサブタンクからインクが供給される。
複合機10の上部はスキャナ部12である。スキャナ部12は、原稿の画像を読み取るものである。このスキャナ部12は、フラットベッドスキャナ(FBS:Flat Bed Scanner)や自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)を有して構成されている。なお、本実施形態においては、本発明のシート搬送装置がプリンタ部20に搭載された形態について説明されるので、スキャナ部12の詳細な説明は省略する。複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、各種情報を表示する液晶ディスプレイ、ユーザが情報を入力する入力キー等から構成される。複合機10は、この操作パネル14からの操作入力又は上記コンピュータ等から送信される情報に基づいて動作する。
図2は、複合機10の内部構成を示す縦断面図である。
図2に示されるように、複合機10の底側には給紙トレイ29が設けられている。そして、この給紙トレイ29の奥側(図2の紙面の右側)に分離傾斜板22が設けられている。分離傾斜板22は、装置背面側(図2の紙面の右側)へ倒れるように傾斜している。この分離傾斜板22は、給紙トレイ29から供給された記録用紙を分離して上方へ案内する。分離傾斜板22の上方には搬送路23(本発明の負荷部材の一例)が設けられている。搬送路23は、記録用紙の搬送経路に設けられている。搬送路23は、記録用紙が搬送されるものであり、その一部が湾曲形成されている。具体的には、搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、複合機10の正面側へ曲がって正面側へと延び、画像記録ユニット24を通過して排紙トレイ21へ通じている。給紙トレイ29に収容された記録用紙は、搬送路23に沿って下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後に排紙トレイ21に排出される。搬送路23は、画像記録ユニット24が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。
図3は、プリンタ部20の主要構成を示す部分拡大断面図である。
図3に示されるように、給紙トレイ29の上側には給紙ローラ25(本発明の負荷部材の一例、本発明の第2ローラ及び第4ローラに相当)が設けられている。給紙ローラ25は、記録用紙と圧接してその記録用紙を搬送ローラ67(図3及び図10参照)及びピンチローラ64(図10参照)へ供給するものである。搬送ローラ67及びピンチローラ64は、本発明の第1ローラ及び第3ローラの一例である。給紙ローラ25は、図3及び図10に示されるように、湾曲形成された搬送路23よりも記録用紙の搬送方向の上流側(以下、単に「上流側」とも称される。)に設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ29に積載された記録用紙に圧接して分離傾斜板22へ供給する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27により、LFモータ85(図9参照)から駆動力が伝達されて回転される。
図3に示されるように、給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として、給紙トレイ29に接離可能に上下動される。給紙アーム26は、自重により給紙トレイ29に接触するように下側に回動される。これにより、給紙ローラ25が給紙トレイ29に接触される。給紙トレイ29に記録用紙が収容されている場合、給紙ローラ25は、給紙トレイ29における最上位置の記録用紙に圧接される。給紙トレイ29及び排紙トレイ21が開口16(図2参照)から挿抜される際には、給紙アーム26が上側へ退避される。給紙ローラ25は、給紙トレイ29上の記録用紙の表面に圧接された状態でLFモータ85から伝達される駆動力により回転される。これにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力によって最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ向けて送り出される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ、つまり搬送路23へ案内される。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
図3に示されるように、湾曲形成された搬送路23よりも記録用紙の搬送方向の下流側(以下、単に「下流側」とも称される。)には、搬送ローラ67が設けられている。図10に示されるように、搬送路23を挟んで搬送ローラ67と対向する位置には、ピンチローラ64が設けられている。なお、ピンチローラ64は、図3には表れていない。これら搬送ローラ67及びピンチローラ64は、本発明の一対の第1ローラ及び第3ローラに相当するものである。ピンチローラ64は、搬送ローラ67に圧接可能に付勢されている。記録用紙は、給紙ローラ25により搬送路23へ供給されると、搬送ローラ67とピンチローラ64との間へ進入する。このように、給紙トレイ29に収容された記録用紙は、給紙ローラ25により搬送路23を通じて搬送ローラ67及びピンチローラ64へ供給される。その際、ピンチローラ64は記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を搬送ローラ67とともに狭持する。搬送ローラ67は、LFモータ85(図9参照)から駆動力が伝達されて回転される。搬送ローラ67の回転力が確実に記録用紙へ伝達され、記録用紙がプラテン42(図3参照)上へ搬送される。搬送ローラ67には、図3に示されるように、ロータリーエンコーダ83(図9参照)のエンコーダディスク19が設けられている。エンコーダディスク19は、搬送ローラ67と同軸に設けられており、搬送ローラ67と共に回転する。このため、このエンコーダディスク19の回転を検出することにより、搬送ローラ67の回転を検出することができる。エンコーダディスク19については、後に詳述される。
上述の記録用紙の搬送は、搬送ローラ67及びピンチローラ64が第1動作又は第2動作を繰り返すことにより行われる。ここで、第1動作は、記録用紙を狭持して単位送り量を搬送する動作である。記録用紙P(図10参照)の先端が搬送ローラ67及びピンチローラ64の間へ到達した後、後述の制御部100は、搬送ローラ67を単位送り量に相当する回転量毎に間欠して回転させる。「単位送り量」は、本実施形態においては、記録ヘッド39(図10参照)により記録用紙Pに画像を連続的に記録する際の改行幅である。すなわち、記録用紙Pは、搬送ローラ67及びピンチローラ64に狭持されて記録ヘッド39の下方を改行幅ずつ搬送される(図10参照)。制御部100は、この改行幅ずつの搬送に対して、記録ヘッド39を主走査方向(図10の紙面に垂直な方向)へ走査しながらインクを吐出させて画像を記録する。すなわち、改行幅毎に画像記録と単位送り量の搬送とが交互に繰り返されることにより、記録用紙Pの全域に連続的な画像が記録される。
第2動作は、記録用紙を狭持して分割送り量を搬送する動作である。この第2動作がn回繰り返されることにより、1回の第1動作が行われる。すなわち、単位送り量をN、分割数をnとすると、分割送り量はN/nとなる。1回の第1動作がn回(例えば2回)の第2動作から構成されるので、上記連続的な画像の記録は、n回の第2動作と改行幅毎の画像の記録とが交互に繰り返されることにより行われる。この第2動作は、1枚の記録用紙が搬送される過程の全てにおいて行われるものではない。第2動作は、本実施形態においては、図12に示されるように、記録用紙Pの先端がエリア2の範囲内に位置している際に行われる。換言すれば、記録用紙Pの先端がエリア2内にある状態では、第1動作が第2動作に置き換えて行われる。第1動作及び第2動作については、後に詳述される。
図3に示されるように、搬送ローラ67の下流側には、画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、主走査方向(図3の紙面に垂直な方向)へ往復動するキャリッジ38(図6参照)を備えている。ここで、主走査方向は、記録用紙の搬送方向と略直交する方向である。このキャリッジ38には、記録ヘッド39が搭載されている。記録ヘッド39には、上述のインクカートリッジからインクチューブ41(図6参照)を通じて4色のインクが供給される。4色のインクは、上述のように、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)である。記録ヘッド39は、これらの各インクを微小なインク滴として選択的に吐出する。記録用紙は、搬送ローラ67及びピンチローラ64によりプラテン42上を搬送される。この過程において、キャリッジ38が記録用紙の搬送方向と略直交する方向へ往復動されつつ記録ヘッド39からインク滴が選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を通過する記録用紙に画像が記録される。上記単位送り量及び上記分割送り量は、この記録ヘッド39による画像記録の改行幅に応じて設定される。すなわち、記録ヘッド39により記録される画像の解像度を変更するためには、改行幅が変更される。この場合、変更された改行幅に対応するように、単位送り量及び分割送り量も変更される。
画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラ68が設けられている。搬送路23を挟んで排紙ローラ68と対向する位置には、拍車ローラ69が設けられている。拍車ローラ69は、排紙ローラ68に圧接されている。記録用紙は、プラテン42を通過する過程において画像記録ユニット24により画像が記録される。この記録用紙が搬送ローラ68と拍車ローラ69との間へ進入すると、記録用紙は排紙ローラ68及び拍車ローラ69により狭持される。LFモータ85(図9参照)からの駆動力は、搬送ローラ67と共に排紙ローラ68へも伝達される。これにより、搬送ローラ67及び排紙ローラ68は、所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ67及び排紙ローラ68の回転は同期されている。
図4は、積層姿勢にある給紙トレイ29の斜視図である。図5は、開放姿勢にある給紙トレイ29の斜視図である。
給紙トレイ29は、図4に示されるように、全体として薄肉の直方体形状に形成されており、第1トレイ91及び第2トレイ92からなる。第2トレイ92は、第1トレイ91の上方に積み重ねられるように配置される。第2トレイ92は、第1トレイ91に対して起伏するように構成されている(図4及び図5参照)。すなわち、第2トレイは、第1トレイ91の上に積層されるように配置された積層姿勢(図4参照)と、第1トレイ91を開放する開放姿勢(図5参照)との間で姿勢変化される。
第1トレイ91には、記録用紙として例えばA4サイズ以下の普通紙が収容される。第2トレイ91には、記録用紙として例えばL版光沢紙やインクジェット紙等の特殊紙が収容される。このように、給紙トレイ29は、同時に2種類の記録用紙を収容することができる。なお、第1トレイ91及び第2トレイ92に収容される記録用紙は上記のものに限定されない。すなわち、例えば、第1トレイ91に光沢紙が収容され、第2トレイ92に普通紙が収容されてもよい。
第1トレイ91は、図5に示されるように一対の側端ガイド93,94を備える。側端ガイド93,94は、複合機10の幅方向(図5における矢印50で示される方向)へスライド可能に構成されている。側端ガイド93は、第1トレイ91内に水平配置された載置板95、及び載置板95に垂設された側板96からなる。側端ガイド94は、第1トレイ91内に水平配置された載置板97、及び載置板97に垂設された側板98からなる。記録用紙は、載置板95,97に載置され且つ側板96,98が両側縁に当接した状態で第1トレイ91に保持される。側端ガイド93,94は、第1トレイ91の幅方向(矢印50の方向)の中心を基準として対称にスライドされる。このため、第1トレイ91に収容される記録用紙のサイズに関わらず、記録用紙の幅方向の中心が第1トレイ91の幅方向の中心と常に一致する。
第1トレイ91は、スライド板76を備える。このスライド板76は、第1トレイ91の底77に立設されており、前後方向(図4における矢印51の方向)にスライド可能である。スライド板76がスライドされることにより、第1トレイ91に収容された記録用紙の後端にスライド板76が当接し、記録用紙の前後方向が位置決めされる。記録用紙は、第1トレイ91内で左右方向及び前後方向に位置決めされるので、記録用紙が第1トレイ91から送り出される際に斜行が効果的に抑制される。
第2トレイ92は、第1トレイ91に対して前後方向(図4の矢印51で示される方向)へスライド可能に構成されている。図4には、第2トレイ92が第1トレイ91の後端側へスライドされた状態が示されており、第2トレイ92が第1トレイ91の前端側へスライドされた状態は図には示されていない。第2トレイ92が第1トレイ91の前端側から後端側へスライドされると、給紙ローラ25が上方へ押し上げられて給紙アーム26が上方(図10における矢印18の方向)へ回動される。これにより、給紙ローラ25は、第2トレイ92に収容された最上位置の記録用紙に圧接される。このため、LFモータ85(図9参照)が駆動されると、第2トレイ92に収容された記録用紙が搬送路23へ供給される。第2トレイ92が第1トレイ91の後端側から前端側へスライドされると、給紙ローラ25に対する第2トレイ92からの押圧力が除かれて給紙アーム26が下方へ回動される。これにより、給紙ローラ25は、第1トレイ91に収容された最上位置の記録用紙に圧接される。このため、LFモータ85が駆動されると、第1トレイ91に収容された記録用紙が搬送路23へ供給される。
図6は、プリンタ部20の主要構成を示す平面図である。
図6に示されるように、搬送路23の上側(図3の紙面の上側)には、一対のガイドレール43,44が設けられている。ガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向(図6の紙面の上下方向)に所定距離を隔てられて、記録用紙の搬送方向と直交する方向(図6の紙面の左右方向)に延設されている。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして記録用紙の搬送方向と直交する水平方向に往復動可能に載置されている。
ガイドレール43は、ガイドレール44よりも上流側に配設されている。ガイドレール43は、搬送路23の幅方向の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板のものである。ガイドレール43における下流側の上面がガイド面43Aである。キャリッジ38における上流側の端部は、このガイド面43Aに摺動可能に支持される。
ガイドレール44は、ガイドレール43よりも下流側に配設されている。このガイドレール44は、搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ平板状のものである。ガイドレール44における上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール44における下流側の上面がガイド面44Aである。キャリッジ38における下流側の端部は、このガイド面44Aに摺動可能に支持される。キャリッジ38は、縁部45を不図示のローラ等により狭持する。これにより、キャリッジ38が、ガイドレール43,44のガイド面43A,44A上に摺動自在に担持される。そして、キャリッジ38は、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する水平方向に往復動可能となる。
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が設けられている。ベルト駆動機構46は、ガイドレール44に沿って設けられている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48、及びタイミングベルト49を有する。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられている。タイミングベルト49は、内側に歯が設けられた無端環状のものであり、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に張り渡されている。駆動プーリ47の外周には、タイミングベルト49の歯と噛合する歯が形成されている。このため、駆動プーリ47の回転がタイミングベルト49に確実に伝達され、タイミングベルト49が周運動される。キャリッジ38は、このタイミングベルト49と連結されている。このため、キャリッジ38は、ベルト駆動機構46の動作に基づいてガイドレール43,44上を往復動する。記録ヘッド39は、このキャリッジ38に搭載されている。このため、記録ヘッド39は、搬送路23の幅方向(図6の紙面の左右方向)を主走査方向として往復動可能となっている。
駆動プーリ47は、ガイド面44Aと直交する方向を軸として、ガイドレール44の上面の一方端(図6では右端)に回転自在に設けられている。つまり、駆動プーリ47の軸方向は、鉛直方向である。図6には表れていないが、ガイドレール44の下側にはCRモータ80(図9参照)が設けられている。CRモータ80の駆動力は、駆動プーリ47の軸へ伝達される。これにより、駆動プーリ47が回転されてキャリッジ38が往復動される。
ガイドレール44の縁部45に沿って、リニアエンコーダ84(図9参照)のエンコーダストリップ54(図6参照)が配設されている。リニアエンコーダ84は、エンコーダストリップ54をキャリッジ38に搭載されたフォトインタラプタ55(図6参照)により検出するものである。リニアエンコーダ84の検出信号に基づいて、キャリッジ38の往復動が制御される。
図6に示されるように、搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものである。このため、記録用紙は、その両端が常にプラテン42の上を通過するように搬送路23に沿って搬送される。プラテン42とガイドレール43,44とは所定間隔が隔てられた状態で平行している。このため、ガイドレール43,44上をスライド移動される記録ヘッド39の下面と、プラテン42の上面とが所定のヘッドギャップで対向される。
記録ヘッド39には、不図示のインクカートリッジと連結されたインクチューブ41(図6参照)を通じてインクが供給される。インクカートリッジはインク色毎に設けられており、各色毎に独立したインクチューブ41により記録ヘッド39へ各色インクが供給される。各インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり可撓性を有する。したがって、各インクチューブ41は、キャリッジ38の往復動に伴って姿勢変化しながら記録ヘッド39に追従する。
図7は、記録ヘッド39のノズル形成面を示す底面図である。
記録ヘッド39は、図7に示されるように、その下面にノズル35が、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インク毎に、記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、同図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ38の往復移動方向である。各色インクのノズル35は、それぞれ記録用紙の搬送方向に列をなしており、各色インクのノズル35の列が、キャリッジ38の往復移動方向に並んでいる。なお、各ノズル35の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定される。また、カラーインクの種類や数に応じてノズル35の列数を増減することも可能である。
図8は、記録ヘッド39の内部構成を示す概略的な部分拡大断面図である。
図8に示されるように、記録ヘッド39の下面に形成されたノズル35の上流側には、圧電素子61を備えたキャビティ62が形成されている。圧電素子61は、ヘッド制御基板33(図9参照)によって所定の電圧が印加されることにより変形される。これにより、キャビティ62の容積が縮小される。このキャビティ62の容量の変化によって、キャビティ62内のインクがノズル35からインク滴として吐出される。
キャビティ62は、ノズル35毎に設けられており、複数のキャビティ62に渡ってマニホールド63が形成されている。マニホールド63は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色のインク毎に設けられている。マニホールド63の上流側にはインク供給口57が設けられている。インク供給口57には、上記サブタンクが連結されており、インク供給口57から記録ヘッド39の内部へインクが供給される。インク供給口57からマニホールド63へ供給されたインクは、マニホールド63により各キャビティ62に分配される。マニホールド63を介してキャビティ62に流れ込んだインクは、圧電素子61の変形によってノズル35からインク滴として記録用紙に吐出される。このように構成された記録ヘッド39は、キャリッジ38が往復動される過程において、搬送路23に沿って搬送される記録用紙にインクを吐出して画像を記録する。
図9は、複合機10の制御部100の構成例を示すブロック図である。
制御部100は、複合機10の全体動作を制御するものである。この制御部100は、本発明の第1制御手段、第2制御手段、第1判定手段、第2検出手段、第2判定手段、第4検出手段に相当するものである。制御部100は、図9に示されるように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)104を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部100は、バス107を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)109と接続されている。
ROM102には、CPU101が複合機10の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。本実施形態においては、このROM102に後述の設定量テーブル120,125が記憶されている(図16及び図18参照)。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域として使用される。本実施形態においては、ロータリーエンコーダ83により検出された記録用紙Pの搬送量、後述の不足量などがこのRAM103に一時的に記憶される。EEPROM104には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC109には、ヘッド制御基板33、駆動回路82、駆動回路81、スキャナ部12(図1参照)、操作パネル14(図1参照)、ロータリーエンコーダ83、及びリニアエンコーダ84が接続されている。
ヘッド制御基板33は、ASIC109から入力される画像信号に基づいて、記録ヘッド39を駆動制御する。これにより、記録ヘッド39のノズル35(図8参照)から所定のタイミングで各色インクが選択的に吐出され、記録用紙に画像が記録される。なお、ヘッド制御基板33は、記録ヘッド39と共にキャリッジ38(図6参照)に搭載されている。
駆動回路82は、ASIC109から入力される相励磁信号等に基づいて、CR(キャリッジ)モータ80に駆動信号を通電する。この駆動信号を受けたCRモータ80が回転することにより、キャリッジ38(図6参照)の往復動が制御される。
駆動回路81は、LFモータ85を駆動させるものである。LFモータ85には、給紙ローラ25(図3参照)、搬送ローラ67(図3参照)、排紙ローラ68(図3参照)が接続されている。駆動回路81は、ASIC109からの出力信号を受けてLFモータ85を駆動させる。LFモータ85の駆動力は、ギヤや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ67、及び排紙ローラ68へ選択的に伝達される。
スキャナ部12は、原稿の画像を読み取るものである。操作パネル14は、ユーザが情報を入力する入力キー、各種情報を表示する液晶表示装置(Liquid Crystal Display)等を有して構成されている。
ロータリーエンコーダ83は、搬送ローラ67の回転を測定して記録用紙P(図10参照)の搬送量を検出するものである。具体的には、ロータリーエンコーダ83は、1回の第1動作における搬送ローラ67の回転を測定し、その第1動作によるシートの搬送量を検出する。また、ロータリーエンコーダ83は、1回の第2動作における搬送ローラ67の回転を測定し、その第2動作によるシートの搬送量を検出する。すなわち、ロータリーエンコーダ83が本発明の第1検出手段、第3検出手段に相当する。制御部100は、このロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて、記録用紙Pの搬送、すなわち搬送ローラ67を回転させるLFモータ85(図9参照)を制御する。リニアエンコーダ84は、往復動するキャリッジ38の移動量を検出するものである。制御部100は、このリニアエンコーダ84の検出結果に基づいてキャリッジ38の往復動を制御する。
なお、詳述しないが、ASIC109には、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース(パラレルI/F)、USBインタフェース(USBI/F)等が接続されている。
図10は、搬送路23によるUターンパスを示す模式図である。
図10に示されるように、搬送路23における搬送ローラ67及びピンチローラ64の上流側には、レジストセンサ71が配置されている。レジストセンサ71は、搬送路23に沿って搬送される記録用紙Pの有無を検出するものである。レジストセンサ71は、本実施形態においては、メカニカルセンサである。このレジストセンサ71は、反射型の光センサ(フォトインタラプタ)及び回動可能に軸支されたフィーラを備える。フォトインタラプタは、フィーラへ向けて光を出射する発光部、及びフィーラからの反射光を受光する受光部を有する。レジストセンサ71は、このフォトインタラプタの受光部により受光された光の輝度に基づいてセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)を出力する。フィーラがフォトインタラプタの対向位置にある状態では、フィーラで反射した光が受光部により受光される。この場合、受光部により受光された光の強度に応じたセンサ信号がレジストセンサ71から出力される。すなわち、フィーラが検出されているので、レジストセンサ71はON状態にある。記録用紙Pが位置P1(図10参照)に到達すると、記録用紙Pがフィーラに当接してフィーラが回動される。これにより、フィーラがフォトインタラプタと対向する姿勢から姿勢変化される。このため、発光部からフィーラへ出射した光がフィーラから受光部へ向けて反射されず、発光部から出射された光は受光部により受光されない。この場合、受光部からは電流が出力されない。すなわち、レジストセンサ71はOFF状態となる。このように、記録用紙Pが到達することでレジストセンサ71の状態が変化するので、制御部100は、レジストセンサ100から出力されるセンサ信号に基づいて、記録用紙Pを検出することができる。
図10に示されるように、搬送ローラ67には、エンコーダディスク19及び光センサ73が設けられている。エンコーダディスク19は、搬送ローラ67と共に回転する透明な円盤状のものであり、放射状のマークが所定ピッチで記されている。すなわち、エンコーダディスク19は、搬送ローラ67の軸に固定されており、搬送ローラ67と共に回転する。光センサ73は、搬送ローラ67と近接する位置に配置されている。光センサ73は、発光素子と受光素子との間の空間にエンコーダディスク19の周縁が位置するように配置されている。ロータリーエンコーダ83は、エンコーダディスク19のマークを光センサ73の検出結果に基づいてカウントすることにより、エンコーダディスク19の回転を検出するものである。搬送ローラ67は、エンコーダディスク19と共に回転されるので、このエンコーダディスク19の回転を検出することにより搬送ローラ67の回転を検出することができる。エンコーダディスク19のマークが検出される毎に、光センサ73から1のパルス信号が出力される。ロータリーエンコーダ83は、このパルス数(以下、「エンコーダ量」とも称される。)をカウントすることにより、搬送ローラ67の回転を検出する。例えば、光センサ73により50個のマークが検出された場合、エンコーダ量は「50」である。
以下、記録用紙Pの搬送方法について説明する。制御部100は、給紙トレイ29から搬送ローラ67へ記録用紙Pを供給する。具体的には、制御部100は、LFモータ85を駆動させて給紙ローラ25を回転される。給紙ローラ25は、給紙トレイ29に収容された最上位置の記録用紙に圧接されている。このため、最上位置の記録用紙が分離傾斜板22(図3参照)へ向けて送り出される。給紙トレイ29から送り出された記録用紙Pは、分離傾斜板22により搬送路23へ案内される。これにより、給紙トレイ29から搬送路23へ記録用紙が供給される。
搬送路23における位置P1(図10参照)には、上記レジストセンサ71が配置されている。記録用紙Pが位置P1に到達する前は、レジストセンサ71が上記ON状態である。記録用紙Pが位置P1に到達すると、レジストセンサ71がON状態から上記OFF状態へと変化する。このため、制御部100は、レジストセンサ71から出力されるセンサ信号の変化を監視することにより、記録用紙Pが位置P1に到達したか否かを判断することができる。制御部100は、レジストセンサ71から出力されるセンサ信号に基づいて記録用紙Pが位置P1に到達したと判断すると、その後の給紙ローラ25を回転させるLFモータ85のステップ数をカウントする。制御部100は、カウントしたステップ数が所定値に達したことを条件として、記録用紙Pの先端が搬送ローラ67とピンチローラ64との間へ到達したと判断する。なお、この時点で、搬送ローラ67は、LFモータ85から伝達される駆動力により、記録用紙Pを搬送する方向とは逆方向(図10における反時計回りの方向)に回転されている。
制御部100は、記録用紙Pの先端が搬送ローラ67とピンチローラ64との間へ到達してから所定のカウント数をカウントする。その後、制御部100は、LFモータ85を制御して記録用紙Pを搬送する方向(図10における時計回りの方向)へ搬送ローラ67を回転させる。上記カウント数がカウントされる間に、記録用紙Pの先端は搬送ローラ67のローラ面に当接した状態で撓む。これにより、記録用紙Pの斜行が矯正される。その後、搬送ローラ67の回転により、記録用紙Pは、搬送ローラ67及びピンチローラ64に狭持されてプラテン42上へ搬送される。
搬送ローラ67及びピンチローラ64は、第1動作を繰り返すことにより記録用紙Pを搬送路23に沿って搬送する。第1動作は、上述のように記録用紙Pを狭持して単位送り量搬送する動作である。単位送り量は、記録ヘッド39が記録用紙Pに画像を連続的に記録する際の改行幅である。すなわち、記録用紙Pは、搬送ローラ67及びピンチローラ64に狭持されて、記録ヘッド39の下方を改行幅づつ搬送される。このように、記録用紙Pが改行幅ずつ搬送される過程において、制御部100は、記録ヘッド39を主走査方向へ走査しながらインクを吐出させて記録用紙Pに画像を記録する。すなわち、制御部100は、改行幅毎に画像の記録と記録用紙Pとの搬送を交互に繰り返しながら記録用紙Pの全域に連続的な画像を記録する。なお、画像記録の方式は特に限定されず、例えばインターレース方式で画像記録が行われる。
上述のように、第1動作は、搬送ローラ67及びピンチローラ64が記録用紙Pを狭持して単位送り量を搬送する動作であり、記録用紙Pの搬送が完了するまで繰り返される。すなわち、記録用紙Pは、第1動作が繰り返されることによって単位送り量ずつ搬送される。このように記録用紙Pが搬送される記録用紙Pの搬送経路には、第1動作に対してバックテンションを与える搬送路23及び給紙ローラ25が設けられている。ここで、バックテンションは、記録用紙Pの搬送を妨げる方向へ記録用紙Pに作用する力である。
搬送ローラ67及びピンチローラ64に供給された記録用紙Pは、第1動作が繰り返されることによって搬送路23に沿って搬送される。この搬送路23は、Uターンするように湾曲形成されている(図3参照)。このため、搬送ローラ67及びピンチローラ64により記録用紙Pが搬送されることによって記録用紙Pが搬送路23から摩擦力を受ける。摩擦力は、記録用紙Pの表面のコーティングや記録用紙Pのコシによるものである。この摩擦力がバックテンションとして記録用紙Pの搬送を妨げる。特に、記録用紙Pがインクジェット紙や光沢紙等である場合、普通紙に比べて搬送路23から受けるバックテンションは大きい。また、給紙ローラ25は、記録用紙Pが給紙ローラ25から離れるまでは記録用紙Pに圧接されている。このため、第1動作に対して給紙ローラ25がバックテンションを与える場合がある。例えば、搬送ローラ67及びピンチローラ64による記録用紙Pの搬送が開始された後に、給紙ローラ25へ駆動力が伝達されないような場合である。
このように、記録用紙Pは、第1動作による搬送中に搬送路23及び給紙ローラ25から搬送を妨げる方向へ力を受ける。その結果、記録用紙Pの円滑な搬送が妨げられ、1回の第1動作による記録用紙Pの搬送量が上記単位送り量に満たないという現象が起こる。換言すれば、記録用紙Pの搬送経路に搬送路23及び給紙ローラ25が設けられているために、搬送ローラ87及びピンチローラ64に対する記録用紙Pの滑りが起こる。結果として、記録用紙Pの搬送量がショートする。
図11は、搬送路23によるUターンパスを示す模式図であり、記録用紙Pの先端がエリア1内にある状態を示す。図12は、搬送路23によるUターンパスを示す模式図であり、記録用紙Pの先端がエリア2内にある状態を示す。図13は、搬送路23によるUターンパスを示す模式図であり、記録用紙Pの先端がエリア3内にある状態を示す。
図11に示されるように、搬送ローラ67及びピンチローラ64による第1動作の開始直後は、記録用紙Pの先端が搬送ローラ67のローラ面に当接して記録用紙Pが撓んだ状態である。このため、記録用紙Pに給紙ローラ25が圧接されているものの、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置している状態では、第1動作に対するバックテンションはそれほど大きいものではない。図12に示されるように、記録用紙Pの先端がエリア2内に進入すると、記録用紙Pの撓みがなくなり、記録用紙Pは、給紙ローラ25が圧接された状態で搬送ローラ67及びピンチローラ64により引っ張られるように搬送される。記録用紙Pが搬送路23の湾曲部分から受ける摩擦力は、徐々に大きくなる。このため、第1動作に対するバックテンションは、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置している状態よりもエリア2内に位置している状態の方が大きい。図13に示されるように、記録用紙Pの先端がエリア3内に進入すると、記録用紙Pは、給紙ローラ25から離れる。また、記録用紙Pは、徐々に搬送路23の湾曲部分から脱するので、記録用紙Pが該湾曲部分から受ける摩擦力は徐々に小さくなる。このため、第1動作に対するバックテンションは、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置している状態よりもエリア3内に位置している状態の方が小さい。
この説明から明らかなように、記録用紙Pの先端がエリア1からエリア2へ移動するにつれて第1動作に対するバックテンションが徐々に大きくなり、搬送量のショート量が大きくなる。そして、記録用紙Pの先端がエリア2からエリア3へ移動するにつれて第1動作に対するバックテンションが徐々に小さくなる。そして、記録用紙Pが搬送路23の湾曲部分から完全に抜けると、第1動作に対するバックテンションはなくなり、搬送量がショートすることはなくなる。
このように、第1動作に対するバックテンションは、記録用紙Pが搬送される過程で徐々に変化し、それに併せて搬送量のショート量が変化する。本実施形態においては、記録用紙Pの先端の位置に対して上述のように3つのエリア(領域)が設定されている。そして、エリア毎に搬送方法が変更されることにより、搬送量のショートを正確且つ効果的に補正することが可能である。以下、本実施形態に係るシートの搬送方法について図14〜図18に基づいて説明する。なお、以下のフローチャートに基づいて説明する複合機10の処理は、ROM102に格納されているプログラムに基づいて制御部100が発行する命令に従って行われる。
図14は、記録用紙Pの搬送の手順を示すフローチャートである。図15は、図14におけるステップS3及びステップS7の第1動作の手順を示す詳細フローチャートである。図16は、設定量テーブル120の模式図である。図17は、図14におけるステップS5の第2動作の手順を示す詳細フローチャートである。図18は、設定量テーブル125の模式図である。
図14に示されるように、制御部100は、記録用紙Pが搬送ローラ67及びピンチローラ64へ供給されたか否かを判断する(S1)。具体的には、制御部100は、給紙ローラ25により記録用紙Pが供給される過程において、記録用紙Pがレジストセンサ71(図10参照)により検出されてからのLFモータ85(図9参照)のステップ数が上記所定ステップ数に達したか否かを判断する。制御部100が記録用紙Pが供給されていないと判断した場合(S1:NO)、処理がステップS1へ戻される。制御部100は、記録用紙Pが供給されたと判断した場合(S1:YES)、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置しているか否かを判断する(S2)。このステップS2の判断は、ロータリーエンコーダ83により検出される記録用紙Pの搬送量に基づいて判断される。例えば、最初の第1動作が開始されてから光センサ73(図10参照)により検出されたエンコーダ量が0〜100の範囲内にあれば、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置していると判断される。
制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置していると判断した場合(S2:YES)、第1動作を行う(S3)。この第1動作が行われると、処理がステップS2へ戻される。すなわち、制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置していないと判断するまで上記ステップS3の処理を繰り返す(本発明の第1ステップに相当)。すなわち、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置している間にステップS3の処理が繰り返されることにより、記録用紙Pが搬送される。なお、ステップS3における第1動作については、図15に基づいて後に詳述される。
制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置していないと判断した場合(S2:NO)、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置しているか否かを判断する(S4)。このステップS4の処理は、上記ステップS2の処理と同様に行われる。例えば、最初の第1動作が開始されてから光センサ73により検出されたエンコーダ量が101〜200の範囲内にあれば、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置していると判断される。制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置していると判断した場合(S4:YES)、第2動作を行う(S5)。この第2動作が行われると、処理がステップS4へ戻される。すなわち、制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置していないと判断するまで、上記ステップS5の処理を繰り返す(本発明の第6ステップに相当)。すなわち、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置している間にステップS5の処理が繰り返されることにより、記録用紙Pが搬送される。なお、ステップS5における第2動作については、図17に基づいて後に詳述される。
制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置していないと判断した場合(S4:NO)、記録用紙Pの先端がエリア3内に位置しているか否かを判断する(S6)このステップS6の処理は、上記ステップS2の処理と同様に行われる。例えば、最初の第1動作が開始されてから光センサ73により検出されたエンコーダ量が201〜300の範囲内にあれば、記録用紙Pの先端がエリア3内に位置していると判断される。制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア3内に位置していると判断した場合(S6:YES)、第1動作を行う(S7)。この第1動作が行われると、処理がステップS6へ戻される。すなわち、制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア3内に位置していないと判断するまで、上記ステップS7の処理を繰り返す(本発明の第1ステップに相当)。すなわち、記録用紙Pの先端がエリア3内に位置している間にステップS7の処理が繰り返されることにより、記録用紙Pが搬送される。このステップS7における第1動作は、ステップS3における第1動作と同様の処理である。したがって、このステップS7における第2動作についても、図17に基づいて後に詳述される。
制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア3内に位置していないと判断した場合(S6:NO)、記録用紙Pの搬送が完了したか否かを判断する(S8)。例えば、最初の第1動作が開始されてから光センサ73により検出されたエンコーダ量が700を超えていれば記録用紙Pは排紙トレイ21(図2参照)に排出され、記録用紙Pの搬送が完了したと判断する。制御部100は、記録用紙Pの搬送が完了していないと判断した場合(S8:NO)、記録用紙Pを単位送り量搬送する(S9)。換言すれば、制御部100は、記録用紙Pを所定の改行幅ぶん搬送する。このステップS9の処理が行われると、処理がステップS8へ戻される。すなわち、記録用紙Pの先端がエリア3から退出するまでステップS9の処理が繰り返され、これにより記録用紙Pが搬送される。制御部100は、記録用紙Pの搬送が完了したと判断した場合(S8:YES)、処理が終了する。
このように、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置している間(図11参照)は、ステップS3の第1動作が繰り返されて記録用紙Pが搬送される。続いて、記録用紙Pの先端がエリア2内に進入すると(図12参照)、ステップS5の第2動作が繰り返されて記録用紙Pが搬送される。そして、記録用紙Pの先端がエリア3内に進入すると(図13参照)、ステップS7の第1動作が繰り返されて記録用紙Pが搬送される。そして、記録用紙Pの先端がエリア3を抜けると、ステップS9の処理が繰り返されて記録用紙Pが搬送される。このように、記録用紙Pが搬送される過程において、制御部100が記録ヘッド39から記録用紙Pへインクを選択的に吐出させることにより、画像記録が行われる。
次に、図14におけるステップS3及びステップS7の第1動作について図15及び図16に基づいて説明する。制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置していると判断した場合(S2:YES)、補正量が設定されているか否かを判断する(S31)。具体的には、制御部100は、RAM103に補正量が記憶されているか否かを判断する。この補正量については、後述される。制御部100は、補正量が設定されていないと判断した場合(S31:NO)、搬送量がショートしていないと判断し、記録用紙Pを単位送り量だけ搬送する(S32)。換言すれば、制御部100は、所定の改行幅だけ記録用紙Pを搬送する。制御部100は、補正量が設定されていると判断した場合(S31:YES)、RAM103に記憶されている補正量を読み出し、記録用紙Pを単位送り量に加えて補正量を搬送する(S33)。これにより、ステップS32の処理が行われる場合に比べて、単位送り量に加えて補正量の分だけ記録用紙Pがさらに搬送されることになる。
制御部100は、ステップS32又はステップS33の処理を行った後、搬送量を検出する(S34)。具体的には、制御部100は、ステップS32又はステップS33の処理による搬送ローラ67の回転をロータリーエンコーダ83により測定して記録用紙Pの搬送量を検出する。このステップS34が本発明の第2ステップに相当する。そして、制御部100は、ステップS34において検出された搬送量が単位送り量未満であるか否かを判定する(S35)。換言すれば、ステップS32又はステップS33の処理において、記録用紙Pの搬送量がショートしたか否かを判定する。このステップS35が本発明の第3ステップに相当する。制御部100は、上記検出された搬送量が単位送り量未満ではないと判定した場合(S35:NO)、処理が上記ステップS2へ戻される。なお、ステップS6においてYESの判断がなされて処理がステップS31へ進められた場合には、処理が上記ステップS6へ戻される。
制御部100は、上記検出された搬送量が単位送り量未満であると判定した場合(S35:YES)、搬送量がショートしていると判断し、上記ステップS34において検出された搬送量の単位送り量に対する不足量を検出する(S36)。具体的には、制御部100は、単位送り量からステップS34において検出された搬送量を差し引くことにより不足量を検出する。このステップS36が本発明の第5ステップに相当する。
上記不足量は、ロータリーエンコーダ83の検出結果から得られるものである。この不足量には、搬送ローラ67及びピンチローラ64に対する記録用紙Pの滑り量は含まれていない。このため、単位送り量に単に不足量を加えて記録用紙Pを搬送しただけでは、搬送量のショートを正確に補正することはできない。本実施形態に係る複合機10では、図16に示されるように、ROM102に設定量テーブル120が格納されている。この設定量テーブル120により、種々の条件に対応づけて設定量がROM102に記憶されている。ここで、設定量は、バックテンションにより生じる搬送ローラ67及びピンチローラ64に対する記録用紙Pの滑りを予測して設定された記録用紙Pの搬送量である。この設定量は、第1動作が行われる場合に加え、第2動作が行われる場合にも使用される。図16において、用紙種別は、操作パネル14又は外部のコンピュータから設定された記録用紙Pの種類である。解像度は、操作パネル14又は外部のコンピュータから設定された記録用紙Pに記録される画像の解像度である。エリアは、記録用紙Pの先端の位置に対して設定された領域である(図11〜図13参照)。
例えば、記録用紙Pが光沢紙であり、解像度が1200dpiであり、記録用紙Pの先端が位置しているエリアがエリア1である場合、制御部100は、設定量テーブル120から設定量「4」を読み出す。また、例えば、記録用紙Pがインクジェット紙であり、解像度が2400dpiであり、記録用紙Pが位置しているエリアがエリア3である場合、制御部100は、設定量テーブル120から設定量「2」を読み出す。
制御部100は、上記ステップS36の処理を行った後、次の第1動作に対して、第1設定量及び不足量を補正量として設定する(S37)。具体的には、制御部100は、上述の要領で設定量テーブル120から読み出した設定量(第1設定量)に上記ステップS36において検出された不足量を加えて補正量を算出する。そして、制御部100は、次の第1動作において、単位送り量に加えて上記算出した補正量を記録用紙Pが搬送されるように、該補正量をRAM103に格納する。このステップS37が本発明の第4ステップに相当する。このようにしてRAM103に補正量が格納されている場合に上記ステップS31においてYESと判断され、ステップS33において単位送り量に加えてこの補正量だけ記録用紙Pがさらに搬送される。また、ステップS35においてNOの判定がなされた場合にはRAM103に補正量は格納されず、上記ステップS31においてNOの判断がなされる。
このように、制御部100は、ステップS35において単位送り量未満であると判定したことを条件に、その判定された第1動作の次の第1動作により、第1設定量及び不足量を記録用紙Pが搬送されるように、搬送ローラ67の回転を制御する。ここで、単位送り量、第1設定量、不足量、及び第1設定量と不足量とを加算した補正量は、いずれも光センサ73(図10参照)により検出されるエンコーダ量で表される。例えば、単位送り量が「100」に設定され、RAM103に補正量「5」が格納されている場合、次の第1動作では、光センサ73により検出されるエンコーダ量が「105」となるように、搬送ローラ67を回転させるLFモータ85の駆動が制御される。なお、制御部100は、設定量テーブル120を用いることにより、搬送ローラ67へ供給される記録用紙Pの種類によって第1設定量を変更する。また、制御部100は、設定量テーブル120を用いることにより、次の第1動作が搬送ローラ67に供給された記録用紙Pに対する第1動作が開始されてから何回目の第1動作であるかによって、第1設定量を変更する。なお、この第1設定量の変更は、本実施形態においては、記録用紙Pの先端が位置しているエリアがエリア1〜3のいずれのエリア内であるかを判断して変更される。つまり、例えば、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置している間の第1動作に対しては同じ第1設定量が使用され、記録用紙Pの先端が位置するエリアが変わることにより、第1設定量が変更される。
次に、図14におけるステップS5の第2動作について図16〜図18に基づいて説明する。この第2動作は、第1動作が分割されたものである。すなわち、n回の第2動作が繰り返されることにより1回の第1動作が行われる。本実施形態においては、n(分割数)が「2」である形態について説明するが、分割数nは複数であれば「2」に限定されるものではない。
制御部100は、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置していると判断した場合(S4:YES)、補正量が設定されているか否かを判断する(S51)。具体的には、制御部100は、RAM103に補正量が記憶されているか否かを判断する。この補正量は、上記S37において説明したのと同じ要領でRAM103に記憶されるものである。制御部100は、補正量が設定されていないと判断した場合(S51:NO)、搬送量がショートしていないと判断し、記録用紙Pを分割送り量を搬送する(S52)。本実施形態においては、分割数が「2」であるので、上記所定の改行幅の半分が分割送り量となる。制御部100は、補正量が設定されていると判断した場合(S51:YES)、RAM103に記憶されている補正量を読み出し、記録用紙Pを分割送り量に加えて補正量を搬送する(S53)。これにより、ステップS52の処理が行われる場合に比べて、分割送り量に加えて補正量の分だけ記録用紙Pがさらに搬送されることになる。
制御部100は、ステップS52又はステップS53の処理を行った後、搬送量を検出する(S54)。具体的には、制御部100は、ステップS52又はステップS53の処理による搬送ローラ67の回転をロータリーエンコーダ83により測定して記録用紙Pの搬送量を検出する。このステップS54が本発明の第7ステップに相当する。そして、制御部100は、ステップS54において検出された搬送量が分割送り量未満であるか否かを判定する(S55)。換言すれば、ステップS52又はステップS53の処理において、記録用紙Pの搬送量がショートしたか否かを判定する。このステップS55が本発明の第8ステップに相当する。制御部100は、上記検出された搬送量が分割送り量未満ではないと判定した場合(S55:NO)、処理が上記ステップS4へ戻される。
制御部100は、上記検出された搬送量が分割送り量未満であると判定した場合(S55:YES)、搬送量がショートしていると判断し、上記ステップS54において検出された搬送量の分割送り量に対する不足量を検出する(S56)。具体的には、制御部100は、分割送り量からステップS54において検出された搬送量を差し引くことにより不足量を検出する。このステップS56が本発明の第10ステップに相当する。
図18に示されるように、ROM102に設定量テーブル125が格納されている。この設定量テーブル125により、種々の条件に対応づけて設定量がROM102に記憶されている。この設定量は、第1動作が行われる際には使用されず、第2動作が行われる際に使用される。ここで、設定量は、バックテンションにより生じる搬送ローラ67及びピンチローラ64に対する記録用紙Pの滑りを予測して設定された記録用紙Pの搬送量である。図18における設定量は、図16に示される設定量と同様にROM102に記憶されている。
ステップS5の第2動作が行われる場合、設定量テーブル120,125の両方が使用される。制御部100は、上記第1動作の場合と同様に、条件に該当する設定量(設定量aとする)を設定量テーブル120から読み出す。そして、制御部100は、同様に設定量テーブル125から設定量(設定量bとする)を読み出す。この場合、不足量と共に分割送り量に加えられる第2設定量は、a/2+bとなる。例えば、記録用紙Pが光沢紙であり、解像度が1200dpiである場合、エリア2に対応する設定量「4」を設定量テーブル120から読み出し、同様に設定量テーブル125から設定量「1」を読み出す。この場合、第2設定量は3となる。
制御部100は、上記ステップS56の処理を行った後、次の第2動作に対して、第2設定量及び不足量を補正量として設定する(S57)。具体的には、制御部100は、上述の要領で設定量テーブル120,125から求めた第2設定量に上記ステップS56において検出された不足量を加えて補正量を算出する。そして、制御部100は、次の第2動作において、分割送り量に加えて上記算出した補正量を記録用紙Pが搬送されるように、該補正量をRAM103に格納する。このステップS57が本発明の第9ステップに相当する。このようにしてRAM103に補正量が格納されている場合に上記ステップS51においてYESと判断され、ステップS53において分割送り量に加えてこの補正量だけ記録用紙Pがさらに搬送される。また、ステップS55においてNOの判定がなされた場合にはRAM103に補正量は格納されず、上記ステップS51においてNOの判断がなされる。
このように、制御部100は、ステップS55において分割送り量未満であると判定したことを条件に、その判定された第2動作の次の第2動作により、第2設定量及び不足量を記録用紙Pが搬送されるように、搬送ローラ67の回転を制御する。ここで、単位送り量、第2設定量、不足量、及び第2設定量と不足量とを加算した補正量は、いずれも光センサ73(図10参照)により検出されるエンコーダ量で表される。例えば、分割送り量が単位送り量「100」の半分である「50」に設定され、RAM103に補正量「3」が格納されている場合、次の第2動作では、光センサ73により検出されるエンコーダ量が「53」となるように、搬送ローラ67を回転させるLFモータ85の駆動が制御される。なお、制御部100は、設定量テーブル120,125を用いることにより、搬送ローラ67へ供給される記録用紙Pの種類によって第2設定量を変更する。
上述のように、搬送ローラ67及びピンチローラ64の回転により記録用紙Pが搬送される過程で、記録用紙Pは搬送路23から摩擦力を受ける。この摩擦力がバックテンションとして記録用紙Pに作用する。摩擦力は、記録用紙Pが搬送路23に位置しているとき、すなわち、搬送ローラ67及びピンチローラ64による記録用紙Pの搬送が開始された直後ほど大きい。そして、摩擦力は、記録用紙Pが湾曲形成された搬送路23を抜けるに伴って徐々に小さくなる。記録用紙Pが収容された給紙トレイ29は、上述のように第1トレイ91及び第2トレイ92を備えている。第2トレイ92に収容された記録用紙Pが搬送路23へ給送される場合、給紙ローラ25は第2トレイ92からの押圧力を受けて上方(図10における矢印18の方向)へ回動された状態となる。このため、給紙ローラ25が記録用紙Pに圧接する力は、給紙ローラ25が第1トレイ91に収容された記録用紙Pに圧接されている場合よりも第2トレイ92に収容された記録用紙Pに圧接されている場合の方が大きい。また、記録用紙Pが搬送されて給紙ローラ25から離れることにより、記録用紙Pが給紙ローラ25から受けるバックテンションが除かれる。
プリンタ部20では、上記バックテンションが原因で搬送ローラ67及びピンチローラ64に対する記録用紙Pの滑りが起こる場合がある。この記録用紙Pの滑りは、搬送ローラ67の回転をロータリーエンコーダ83等で監視したとしても検出できないものである。設定量テーブル120,125の設定量は、この滑りを予測して設定されている。このため、センサ等で検出されない記録用紙Pの滑りが原因で起こる搬送量のショートを補正することが可能である。また、設定量テーブル120,125に格納された設定量は、記録用紙Pが搬送路23から受けるバックテンションの大きさ、及び、記録用紙Pが給紙ローラ25から受けるバックテンションの大きさをも考慮して適切な値に設定されている。このため、搬送路23及び給紙ローラ25が原因で起こる記録用紙Pの搬送量のショートを的確に補正することができる。
搬送ローラ67及びピンチローラ64へ供給される記録用紙Pとしては、上述のように普通紙、光沢紙、インクジェット紙等が挙げられる。これらの記録用紙Pは、厚さや表面状態の違いにより、第1動作又は第2動作により受けるバックテンションの大きさが異なる。本実施形態においては、設定量テーブル120,125を使用することにより、記録用紙Pの種類に応じて第1設定量と第2設定量が変更されるので、記録用紙Pの種類に関わらず搬送量のショートを安定的に補正することが可能である。
第1動作又は第2動作に対するバックテンションの大きさは、記録用紙Pが搬送される過程で変化する。このため、第1動作又は第2動作に対する搬送量のショート量も当然変化する。設定量テーブル120,125を使用して第1動作又は第2動作に対する第1設定量又は第2設定量がエリア毎に変更されることにより、搬送量の補正がより正確に行われる。
記録用紙Pは、所定の第1動作とその次の第1動作との間の期間では、一時的に停止される。この期間に、記録用紙Pの搬送方向と略直交する方向を主走査方向とする所定ライン分の画像が記録ヘッド39により記録用紙Pに記録される。このため、第1動作と上記画像の記録とが交互に繰り返されることにより、記録用紙Pの全体に対する画像形成が行われる。記録用紙Pにはこの要領で画像が記録されるので、単位送り量が変更されることで副走査方向の解像度が変更される。すなわち、設定量テーブル120を使用して解像度に応じて第1設定量が変更されるので、搬送量のショートが原因で起こる画像の画質低下、いわゆるバンディングを効果的に低減することが可能である。
また、搬送量がショートしたと判定された第1動作の次の第1動作で、又は搬送量がショートしたと判定された第2動作の次の第2動作で制御部100による制御が行われるので、適切なタイミングで搬送量が補正される。また、上記制御は、搬送量がショートしたと判定された場合にのみ行われるので、記録用紙Pの送り過ぎが防止される。
また、本実施形態においては、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置している状態では第2動作が行われる。第2動作は、上述のように、搬送ローラ67及びピンチローラ64が記録用紙Pを狭持して分割送り量を搬送する動作である。この第2動作がn回繰り返されることにより、1回の第1動作が完了する。すなわち、記録用紙Pの先端がエリア2内に位置している間(ステップS4においてYESと判断されている間)は、1回の第1動作は、n回の第2動作に分けて行われる。ロータリーエンコーダ83により検出された搬送量が分割送り量未満であると制御部100により判定されると、搬送量のショートを補正すべく搬送ローラ67の回転が制御される。このため、適切なタイミングで搬送量が補正され、且つ記録用紙Pの送り過ぎが防止される。また、第2動作が行われる毎に判定が行われることで、搬送量を細かに補正することが可能となる。したがって、各第1動作が完了した段階での搬送量のずれをできるだけ小さくすることができ、バンディングの低減に有効である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下の形態であってもよい。
本実施形態においては、所定の設定量がバックテンションにより生じる搬送ローラ67及びピンチローラ64に対する記録用紙Pの滑りを予測して設定されたものである場合について説明したが、所定の設定量はこれに限定されるものではない。すなわち、所定の設定量は、ロータリーエンコーダ83を用いて検出される搬送量のショート量を予測し、該ショート量と上記予測した滑り量とを加えた値に設定されてもよい。この場合、第1動作が繰り返される過程において、上記不足量の検出が不要となる。
また、本実施形態においては、記録用紙Pの先端の位置がエリア2内である場合に第2動作が行われる形態について説明したが、他のエリアにおいて第2動作が行われてもよい。すなわち、第1動作が行われるエリアと第2動作が行われるエリアは変更されてもよい。例えば、上記エリア1〜エリア3の全てのエリアにおいて第2動作を行うようにしてもよい。この場合、設定量テーブル120,125を用いて、次の第2動作が搬送ローラ67に供給された記録用紙Pに対する第2動作が開始されてから何回目の第2動作であるかによって、第2設定量を変更することが好ましい。この第2設定量の変更は、記録用紙Pの先端が位置しているエリアがエリア1〜3のいずれのエリア内であるかを判断して変更される。つまり、例えば、記録用紙Pの先端がエリア1内に位置している間の第2動作に対しては同じ第2設定量が使用され、記録用紙Pの先端が位置するエリアが変わることにより、第2設定量が変更される。
また、本実施形態においては、記録用紙Pの先端の位置に対するエリアが3つ設定されている形態について説明したが、エリアの数はこれに限定されるものではない。例えば、記録用紙Pの先端の位置に対するエリアの数は5つ以上でもよく、また2つでもよい。また、全てのエリアで第1動作又は第2動作が行われてもよい。また、複数のエリアに分割することなく、第1動作又は第2動作が行われてもよい。