JP4238944B2 - 4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、4,6−ジアミノレゾルシノールまたはその塩の製造方法に関する。更に詳しくいえば、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの還元により4,6−ジアミノレゾルシノールまたはその塩の製造方法に関する。
【0002】
4,6−ジアミノレゾルシノールは、ポリベンゾオキサゾールのモノマーであり、このポリベンゾオキサゾールは高強度、高弾性率を有し、また耐熱性、耐薬品性に優れた特性を有するポリマーである(特表昭61−501452号公報、特開平2−229143号公報参照)。
【0003】
【従来の技術】
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールの還元は通常、貴金属触媒を用い水素で還元する(特開平7−242604号公報)。特開平7−242604号公報によれば、還元は中性条件で溶媒中で実施されている。溶媒としては、水、低級アルコール、芳香族炭化水素類、ハロ置換ベンゼン類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、低級ケトン類を単独、または組み合わせて使用することが記載されている。また、還元反応終了後の後処理は2つの方法が記載されている。1つは、窒素雰囲気下そのままセライト濾過して4,6−ジアミノレゾルシノールを得た後、酸を加え酸性塩とし、触媒およびセライトを濾別後、精製し単離する方法である。2つ目は、反応液に酸を加えて塩とし溶解して、触媒を濾別後、精製し単離する方法である。
【0004】
前者は、反応で生成するアニリンの回収が容易で、精製工程が簡単であるという効果があるが、濾過性が非常に悪い。濾液への4,6−ジアミノレゾルシノールのロスが多く収率が60%と悪く、工業的方法とは言い難い。
【0005】
後者は、酸を加えて塩としているので空気中の安定性は良く操作性は良い。また、濾過性も良く、問題になることはない。ただし、副生成するアニリンと4,6−ジアミノレゾルシノールの分離精製が酸性溶液中のため甚だ複雑になる欠点も有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの還元では、4,6−ジアミノレゾルシノールの他に2当量のアニリン誘導体が副生する。このアニリン誘導体をいかに簡便に、生成した目的物の4,6−ジアミノレゾルシノールのロスを少なく分離できるかが、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの還元方法の最大の課題である。
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、4,6−ジアミノレゾルシノールをフリーで工業的に扱う方法を見出し本発明を完成させた。すなわち、4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール誘導体の還元反応を、選ばれた溶媒中で貴金属触媒下水素で還元することにより、高収率で4,6−ジアミノレゾルシノールを得た。
【0008】
ただし、溶媒によっては濾過性が悪い場合もある。その時は、活性炭などの濾過助剤を加えて反応すると、濾過性が著しく改善される。
【0009】
本発明の目的は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールより、高純度の4,6−ジアミノレゾルシノールを高収率で容易に得る事が出来る方法の提供にある。これによりアニリン誘導体の回収率も向上し、経済的に有利になる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決する方法を見出し本発明を完成した。即ち、本発明は、式〔1〕
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ヒドロキシカルボニル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表し、nは0又は1〜5のいずれかの整数を表し、2個以上のRは互いに同一又は異なっていてもよい。)で表される4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを金属触媒の存在下に水素還元し、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩(その塩とは、4,6−ジアミノレゾルシノールの酸塩を意味する。以下、同じ)を得る方法において、溶媒として脂肪族ニトリル化合物を用いることを特徴とする4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、上記の式〔1〕で表される4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを金属触媒及び溶媒の存在下に水素還元し、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩を得る還元方法において、溶媒として脂肪族ニトリル化合物、炭素数3〜5の脂肪族アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジオキサンから選ばれる少なくとも一種の有機溶媒を用い、更に濾過助剤の存在下に還元を行うことを特徴とする4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の出発原料である4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールは、式〔2〕
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、Rとnは式〔1〕中と同じに定義される。)
で表される(置換)アニリンをジアゾ化し(置換)ベンゼンジアゾニウム塩を得、該ジアゾニウム塩を、レゾルシノールとカップリング反応させて得ることができる。具体的には、置換アニリンと5〜10重量倍の水との混合物中に、冷却下、アニリンに対して2.5〜4当量の無機酸を滴下し、この混合液中へ、(置換)アニリンに対し2〜3重量倍の水に溶解した1〜1.5倍モルの亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムを10℃以下で滴下することにより(置換)ベンゼンジアゾニウム塩を得る。無機酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸及び燐酸の中から選ばれた少なくとも1種の無機酸が用いられる。これらの無機酸の中で塩酸が工業上経済的に好ましい。
【0017】
具体的には、例えばアニリン、2−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、アントラニル酸、o−アニシジン、m−アニシジン及びp−アニシジン等を挙げることができ、これらのアニリンのいずれかを使用することが好ましい。経済性、化合物の安定性などでアニリンが最も好ましい。
【0018】
(置換)ベンゼンジアゾニウム塩とレゾルシノールのカップリング反応は、公知の方法が用いられるが、本出願人が特開平9−124575号として出願した式〔3〕
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、Rとnは式〔1〕中と同じに定義され、XはCl、Br、OSO3H又はOPO3H2を表す。)
で表される(置換)ベンゼンジアゾニウム塩をアルカリ性にした溶媒中で反応させることによる方法、或いは特開平9−157239号として出願した、式〔3〕で表される(置換)ベンゼンジアゾニウム塩の溶液とアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の溶液又は懸濁液とを混合し、アルカリ性とした混合液を得、この混合液とレゾルシノール及び/又はそのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を混合し反応させる方法が、好ましい。
【0021】
この様に本願発明の原料である4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールはレゾルシノールとアルカリ性(置換)ベンゼンジアゾニュウム塩を反応したのち、酸性とした後濾集し、水洗したものである。これをそのまま用いても良いし、乾燥して用いても良い。還元反応の収率的に見れば水の混入は、濾液への4,6−ジアミノレゾルシノールの逃げを大きくするので、乾燥品が好ましい。反応混合物を精製しないで使用する為、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの純度は80%前後であり、他に4−フェニルアゾレゾルシノールや2,4,6−トリフェニルアゾレゾルシノールや構造不明のものも含まれるが、大きな問題はない。この混合物をトルエンなどで再結晶し精製したものも、当然使用でき結果は良いが、4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールの精製は、その溶解性の悪さの為に非常に困難である。
【0022】
次に、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの金属触媒及び溶媒の存在下の水素還元方法について述べる。還元反応に用いられる溶媒としては、、脂肪族ニトリル化合物、炭素数3〜5の脂肪族アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジオキサンから選ばれる少なくとも一種の有機溶媒を用いられる。メタノール、エタノールでは、4,6−ジアミノレゾルシノールの濾液への逃げが多く、経済性に問題がある。ニトリル類以外は生成した4,6−ジアミノレゾルシノールの濾集の際に、極めて濾過性が悪く工業的操作は問題がある。その際に反応中に濾過助剤を加えると、濾過性は大幅に改善される。 一方、ニトリル類は濾過性も良く、濾液への逃げも少なく好ましい。濾過助剤の添加はニトリル類でも、濾過性改良に効果的である。
【0023】
濾過助剤としては、活性炭、セライト、活性白土及びセルロースが用いられ、特には活性炭が好ましい。
【0024】
濾過助剤の量としては4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して1〜100重量%であるが、濾過性が悪い場合は多く、良い場合は少なくて良い。好ましくは5〜30重量%である。反応系への濾過助剤の添加は、濾過性の向上のみならず、反応時間の短縮にも効果的である。原料中の不純物を吸着し、触媒の劣化を防いでるのであろう。また、場合により、反応終了後に濾過助剤を添加しても濾過性の改善が見られる。
【0025】
脂肪族ニトリル化合物としては、炭素数2〜6のモノシアノ化合物が好ましい。具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル及び4−メチルバレロニトリル等が挙げられる。特に好ましいものは、反応が速く、経済的に安価なアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル及びイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0026】
更に、具体的に示せば、反応基質を4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールを用いた場合、4,6−ジアミノレゾルシノールの反応収率は98〜99%で、4,6−ジアミノレゾルシノールの結晶収率は93〜96%で得られ、更に、4,6−ジアミノレゾルシノールの粗結晶中のアニリン収率は、1〜2%となり、高純度の4,6−ジアミノレゾルシノールが高収率で結晶として単離することができる。一方、濾液には、ほぼ理論量のアニリンが含まれている。
【0027】
溶媒の使用量は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを基準として1〜50重量倍、好ましくは2〜20重量倍である。
【0028】
本発明で使用する金属触媒としては、銅及び周期律表第8族元素の中から選ばれた少なくとも一種の金属である。周期律表第8族元素としては白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、イリジウム等が挙げられる。これらの金属触媒の中で白金及びパラジウムが、本反応では4,6−ジアミノレゾルシノールを高収率で得ることができ好ましい。
【0029】
触媒の形態としては、例えばパラジウム黒や白金黒等の単体、ラネーニッケルやコバルト等の合金、塩化パラジウムや酢酸パラジウム等の金属塩、酸化銅や酸化白金等の金属酸化物、アセチルアセトン銅やアセチルアセトンパラジウム等の金属錯体及び炭素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト等の酸化物に担持させた担体付き金属等が挙げられる。これらの中で特には担体付き金属が回収再使用の都合上好ましく、パラジウム−炭素や白金−炭素が好ましい。特に白金−炭素が、低担持量にもかかわらず、パラジウム−活性炭より高活性で好ましい。
【0030】
更に、活性を向上させる目的と反応及び酸処理等による劣化を抑制し、再使用を可能にする目的から、白金、パラジウムまたはルテニウム等の第一金属に、第二金属を添加した多元金属系触媒にすることもできる。第二金属としては、レニウム、イリジウム、錫、アンチモン、ゲルマニウム、インジウム及びロジウム等の一種以上を、第一金属に対して2〜50原子モル%添加する事が好ましい。
【0031】
具体的には、例えば5%Pd/1%Re−C、5%Pd/2%In−C、2%Pt/0.5%Re−C、1%Pt/0.2%Ge−C等を挙げることができる。
【0032】
触媒の使用量は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対し金属分として0.0005〜10重量%が好ましく、特には0.001〜10重量%で使用される。
【0033】
水素圧は、常圧〜10000kPaであるが、好ましくは常圧〜1000kPaである。反応温度は、−10〜150℃で可能であるが、好ましくは0〜100℃より好ましくは10〜80℃である。
【0034】
反応液は、4,6−ジアミノレゾルシノールが固体となり存在している。取り出し方法について説明する。空気に触れないようにして、濾過することで4,6−ジアミノレゾルシノールを触媒、濾過助剤とともに得る事ができる。アニリンは濾液に行くが、濾過性が悪いとケーキの含液が多くアニリンの除去が不充分になるので、少量の反応溶媒、低級アルコール、水のいずれかで洗浄する。
【0035】
4,6−ジアミノレゾルシノールはフリーでは、酸素、温度とも不安定であるので酸を加えて塩とする必要がある。酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸等が使用できるが塩酸がもっとも工業的に好ましい。2倍モル以上の塩酸水溶液に加えて、加熱溶解するか、ロート上に2倍モル以上の塩酸水溶液を加えて溶解または懸濁して抜き出し、加熱溶解する。不溶物を濾別し、必要によっては活性炭処理を行い、活性炭を濾別し塩酸を加えて冷却して析出した4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩を濾集する。活性炭は脱色に卓効がある。
【0036】
塩酸水溶液を用いて4,6−ジアミノレゾルシノールを溶解するとき、塩酸量は2〜10倍モル使用するが、塩酸が多いと溶解度が下がるので、4,6−ジアミノレゾルシノールの2〜3倍モルが好ましい。水は4,6−ジアミノレゾルシノールの1〜20部使用するが、溶解度及び晶析の関係で3〜10部が好ましい。活性炭は着色と目的に応じて必要量が変わるが、0〜100重量%、好ましくは5〜30重量%である。
【0037】
活性炭処理後、濃塩酸を加えて塩析で固体を析出するが、加える塩酸は4,6−ジアミノレゾルシノールの4〜20倍モルが良い。経済的には水量にも影響されるが、4〜8倍モルが好ましい。更に濾過後乾燥して4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩を得る。
【0038】
4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩も酸化を受けやすいが、塩化第1錫を加えると酸化に対して抵抗効果がある。
尚、前記還元反応は、連続的に行う事が出来る。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本願発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
参考例−1
アニリン41g、35%塩酸98g、水100gの混合溶液中に、0〜5℃で亜硝酸ナトリウム30gを水55gに溶解させた溶液を滴下し、塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液を合成した。この塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液を水酸化ナトリウム55g、水110gよりなる混合液に10℃以下で滴下した。
【0040】
この混合液をレゾルシノール22g、水酸化ナトリウム24g、水22gよりなる混合液に10℃で40分かけ滴下した。滴下終了後10℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に塩酸を加え酸性とし、析出した固体を濾集、水洗、乾燥して62gの暗赤色固体を得た。4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールの純度は79.5%であり、約5%の2,4,6−トリフェニルアゾレゾルシノールを含む。
【0041】
実施例1
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(純度79.5%)10.0g(0.025mol)、アセトニトリル50g、5%Pd−C2.0gを100mlハステロイ製オートクレーブに仕込み、水素を300kPaの一定圧力で水素蓄圧器より供給しながら、攪拌速度600rpm、30℃で反応させた。反応時間2.5時間で、水素蓄圧器の圧力減少が停止した。そこで攪拌停止後、オートクレーブを室温に戻してから、窒素置換後反応物を取り出した。スラリー状の反応物を窒素雰囲気下濾過によりケーキと濾液に分離した。この濾過時間は20分であった。ケーキは、アセトニトリルで洗浄し、湿品を得た。湿品およびろ洗液(濾液と洗液を混合したもの)は塩酸塩として以下の分析を行った。
【0042】
即ち、湿品及びろ洗液中に生成した4,6−ジアミノレゾルシノール(DAR)とアニリンの収率を液体クロマトグラフィーで分析した。結果を表1に示す。湿品中のDAR収率は、92.5%、ろ洗液中の収率は、4.5%で合計収率は97%であった。アニリンの収率は、湿品中1.5%、ろ洗液中222.0%で合計収率は223.5%であった。
【0043】
尚、アニリン収率が、200%を越えるのは、原料の不純物として含まれる4−アゾレゾルシノール及び2,4,6−トリアゾレゾルシノールが水素化分解されてアニリンを遊離するためである。
【0044】
比較例1
実施例1において溶媒をイソプロパノールに代えた他は実施例1と同様に還元反応を行った。濾過時間が、約1時間かかっても終わらないのでその後の処理を中断した。
【0045】
実施例2
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(純度79.5%)10.0g(0.025mol)、アセトニトリル50g、5%Pd−C2.0g及び活性炭1.0gを100mlハステロイ製オートクレーブに仕込み、水素を300kPaの一定圧力で水素蓄圧器より供給しながら、攪拌速度600rpm、30℃で反応させた。反応時間2.5時間で、水素蓄圧器の圧力減少が停止した。そこで攪拌停止後、オートクレーブを室温に戻してから、窒素置換後反応物を取り出した。スラリー状の反応物を窒素雰囲気下濾過によりケーキと濾液に分離した。この濾過時間は10分であった。ケーキは、アセトニトリルで洗浄し、湿品を得た。実施例1と同様に分析を行った。湿品中のDAR収率は、93.1%、濾洗液中の収率は、4.9%で合計収率は98.0%であった。アニリンの収率は、結晶中1.5%、濾洗液中222.0%で、合計収率は223.5%であった。
【0046】
実施例3〜11、比較例2〜6
実施例2に於いて、アセトニトリルを他の溶媒に変えた他は、実施例2と同様に反応させた。結果を表1に示す。なお、濾過時間は、いずれも30分以下であった。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示す様に還元反応溶媒として、アセトニトリル、プロピオニトリル及びブチロニトリルを用いることにより、結晶としてアニリン含量が少なく、DAR収率が高い結果が得られた。メタノールやエタノールの場合は、濾液に溶解した4,6−ジアミノレゾルシノールが多く、結晶として得られた4,6−ジアミノレゾルシノールの収率が低い。
【0049】
実施例12
4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(純度79.1%)161g(0.4mol)、アセトニトリル636g、5%Pd−C5.09g及び活性炭(50%含水品)38.2gを2lSUS製オートクレーブに仕込み、水素を3kg/cm2の一定圧力で水素蓄圧器より供給しながら、攪拌速度400rpm、30℃で反応させた。反応時間3時間で、水素蓄圧器の圧力減少が停止した。そこで攪拌停止後、オートクレーブを室温に戻してから、窒素置換後反応物を取り出しした。スラリー状の反応物を濾過によりケーキと濾液に分離した。ケーキは、アセトニトリル77gと230gで2回洗浄した。湿品158.6g、濾液704gと洗液を得た。
【0050】
ケーキ中、濾液中および洗液中に生成した4,6−ジアミノレゾルシノール(DAR)とアニリンを塩酸塩とした後、液体クロマトグラフィーで分析した結果、ケーキ中のDAR収率は、93.8%、アニリン収率は3.4%であり、濾液中のDAR収率は、1.1%で、アニリン収率は、203.1%であった。更に、洗液中のDAR収率は、0.1%、アニリン収率6.5%であった。
【0051】
次にこのケーキ67.4g(DAR0.16mol)を35%塩酸水34.4g(2.2モル倍)、水153g及び塩化第一スズ・2水和物0.61gの溶液に加え60℃で1時間で溶解させた。続いて濾過により触媒と活性炭を分離した。尚、この触媒と活性炭は、1%塩酸水15.3gと30.7gで2回洗浄した。
【0052】
こうして得られた濾液に活性炭(50%含水品)13.4gを加え、80℃で2時間攪拌した。
続いて、熱濾過により活性炭を分離した後、濾液に35%塩酸水112gを加え、80℃で20分間加温後、10℃まで冷却した。析出した結晶を濾別し20%塩酸水9.2gで洗浄後50℃で3時間減圧乾燥し、4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩24.3g(純度99.3%)を得た。
【0053】
実施例13、14
実施例1に於いて触媒を1%Pt−C1.0g、2%Pt/0.5%Re−Cに変えた以外は、同様に反応及び後処理操作を行い、それぞれ9.83g、9.61gの結晶(湿品)を得た。
この結晶及び及び濾液の分析結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
反応溶媒として脂肪族ニトリル化合物を用いることにより、或いは、反応溶媒として脂肪族ニトリル化合物、炭素数3〜5の脂肪族アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジオキサンから選ばれる少なくとも一種の有機溶媒を用い、更に濾過助剤の存在下に還元を行うことにより、高収率で4,6−ジアミノレゾルシノールが生成し、かつその4,6−ジアミノレゾルシノールの大部分が、スラリーとして分離するために濾過により高収率のまま捕集することができ、しかも副生するアニリン誘導体は、濾液として高回収率で分離することができる。こうして、反応直後に単離された4,6−ジアミノレゾルシノールの固体(粗結晶)は、アニリン誘導体含量が少なく、以降の精製を容易にし、且つ精製ロスを少なくすることができる。即ち、高純度の4,6−ジアミノレゾルシノールを高精製収率で容易に得ることができる。
Claims (5)
- 式〔1〕
- 請求項1において脂肪族ニトリル化合物が、炭素原子数2〜6のモノシアノ炭化水素化合物である、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。
- 請求項1において金属触媒が白金である、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。
- 請求項1において金属触媒が、白金、ルテニウム又はパラジウムに、レニウム、インジウム、錫、アンチモン、ゲルマニウム、イリジウム及びロジウムから選ばれた一種以上の元素を添加した多元素系触媒である、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。
- 濾過助剤の量が4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して1〜100重量%である、請求項1記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。
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