しかしながら、上記従来技術では、バーリング部に接合するためだけの棒状突起部を接続端子に別途設ける必要があり、工程数の増加やコスト高を招くという問題があった。
一方、接合用の棒状突起部を接続端子に設けない場合は、以下に示すような問題があった。すなわち、バスバーに接合する電子部品の種類によって接続端子の径や材質等がそれぞれ異なることから、この接続端子に対する入熱条件も端子毎に大きく異なる。このため、上記従来技術のように接続端子を加熱・溶融させることによりバーリング部と接続端子とを接合する技術では、以下に示すように接合方法も各電子部品の接続端子毎に変更しなければならない。したがって、各接合方法毎に異なる溶接機をそれぞれ準備する必要があり、電子機器のコスト高や製造工程の複雑化を招いていた。
例えば、接続端子が銅系材料よりなる場合、銅系材料は熱伝導率が高いとともにレーザ光の反射率が高いことから、特に線径の太い銅系接続端子をレーザ光の照射により溶融させようとすると、かなり大きなパワーが必要となり効率が極端に悪くなってしまう。また、銅系材料よりなるバスバーに対して銅系接続端子を抵抗溶接により接合しようとしても、両部材間における抵抗値の差が小さいため、良好に接合することができない。このため、線径がφ2mm以上の銅系接続端子はプラズマ溶接により、線径がφ2mm未満の銅系接続端子はTIG溶接により、銅系材料よりなるバスバーに接合していた。一方、接続端子が鉄系材料よりなる場合は、線径がφ2mm以上のときはレーザ溶接又はプラズマ溶接により(線径がφ2mm以上になると、抵抗溶接によりジュール熱を発生させることが困難になるため)、線径がφ2mm未満であれば抵抗溶接により、銅系材料よりなるバスバーに接合していた。
他方、電子部品の接続端子が接合されたバスバーを備えた電子機器について、例えば振動試験を行う場合、接続端子とバスバーとの接合部における接合強度は、接続端子の母材強度よりも高い強度が必要とされる。このため、接続端子の線径が太くなれば、その接続端子とバスバーとの接合強度は、線径の細い接続端子とバスバーとの接合強度よりも高い強度が必要とされる。したがって、線径の太い接続端子とバスバーとの接合は高い接合強度を確保することのできる溶接方法を採用する必要があった。
さらに、上記従来技術では、バーリング部等のスルーホール内に挿通させた棒状突起部の先端部をスルーホールから飛び出させた状態で、該棒状突起部の先端部に向けてレーザ光を照射して該棒状突起部の該先端部を溶融させていた。このため、バスバーに接続端子をセットする際に該先端部の飛び出し量の管理を高精度に行わないと、接合不良が発生してしまうという問題があった。
すなわち、例えば、棒状突起部の先端部がバーリング部の突出先端から飛び出す飛び出し量が不足した状態にセットされると、この先端部が加熱・溶融されて溶接に寄与する溶融金属の量が不足することによる接合不良が発生してしまう。また、接続端子の先端部がバーリング部の突出先端から飛び出すことなくスルーホール内に止まった状態にセットされると、レーザ光の照射により接続端子の溶融自体がなされなかったり、仮にバーリング部がレーザ光の照射により加熱・溶融したとしても、その溶融金属と接続端子との接触面積が不足したりすることから、同様に接合不良が発生してしまう。
したがって、上記従来技術では、良好な接合状態を得るためには、バスバーに接続端子をセットする際に該先端部の飛び出し量の管理を高精度に行う必要があり、セット工程の作業が面倒であるという問題があった。
加えて、接続端子の棒状突起部が鉄系材料よりなる場合は、レーザ光の照射により棒状突起部が加熱・溶融されると鉄系材料中に含まれる低沸点添加成分や不純物が沸騰することによりスパッタが多量発生するという問題もあった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、バスバーに対して材質や線径の異なる接続端子を溶接する場合であっても、接合のためだけの棒状突起部等を接続端子に別途設けることなく、また接続端子毎に溶接方法(溶接機)を変更することなく、各接続端子を良好に溶接することのできる電子機器用バスバーと接続端子の接合構造及び電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法を提供することを第1の課題とするものである。
また、本発明は、バスバーに対して高さ方向における位置決めを正確に行いつつ接続端子を簡易にセットすることができ、良好に溶接することのできる電子機器用バスバーと接続端子の接合構造及び電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法を提供することを第2の課題とするものである。
さらに、本発明は、鉄系材料よりなる接続端子を溶接する場合であっても、スパッタの発生を効果的に抑えることのできる電子機器用バスバーと接続端子の接合構造及び電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法を提供することを第3の課題とするものである。
請求項1記載の電子機器用バスバーと接続端子の接合構造は、銅系材料よりなる本体部と、挿入孔をもつように該本体部から一体に***して筒状に突出するとともに突出先端側に先端側溶融部をもつ筒状突起部とを有し、接続端子が該挿入孔に挿入された状態で、該先端側溶融部が高エネルギ密度の加熱源により溶融されることによって該筒状突起部と該接続端子とが溶接される電子機器用バスバーと接続端子の接合構造であって、前記筒状突起部は、周方向に間隔を隔てて該筒状突起部の突出方向に沿って延びる少なくとも2条のスリットにより少なくとも2分割された分割体よりなり、各前記分割体は、前記加熱源により溶融される前記先端側溶融部と、該先端側溶融部と一体に設けられ、前記接続端子が前記挿入孔に挿入されることで各該分割体が遠心方向に弾性変形することにより生ずる弾性力を介して、該挿入孔に挿入された該接続端子を保持可能でかつ該先端側溶融部が溶融された状態でも該挿入孔に挿入されている該接続端子を保持可能な基端側保持部とをそれぞれが有していることを特徴とするものである。
ここに、先端側溶融部とは、筒状突起部の突出先端側の部分であって、高エネルギ密度の加熱源により加熱・溶融されて溶融金属となる部分をいう。
この電子機器用バスバーと接続端子の接合構造においては、筒状突起部の先端側溶融部が高エネルギ密度の加熱源により優先的に加熱・溶融され、この先端側溶融部が溶融した溶融金属が筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の隙間に埋まって固化する(互いに溶融して溶接されるか、接続端子がバスバーより融点の高い異種材の場合はバスバー材の銅系金属によりろう付けされる)ことにより、筒状突起部と接続端子とが接合される。すなわち、筒状突起部の先端側溶融部が加熱源により加熱・溶融された溶融金属が、筒状突起部と接続端子との溶接に主に寄与する。ここに、加熱源により加熱・溶融される筒状突起部の溶融量(溶融金属量)が多いほど、接合面積が大きなって接合部における接合強度が高くなる。このため、接合される接続端子の材質及び線径に応じて予め筒状突起部の突出高さを調整して先端側溶融部の長さを適切に調整しておけば、あとはこの先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることで、その筒状突起部に接合される接続端子に応じた適切な接合面積を確保して所望の接合強度を得ることが可能となる。したがって、接合される接続端子に応じて異なる溶接方法(溶接機)を採用することなく、筒状突起部の先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることが可能な高エネルギ密度の加熱源を利用する単一の溶接方法(溶接機)を採用することのみによって、筒状突起部と接続端子とを良好に接合することが可能となる。
また、各筒状突起部の各先端側溶融部を加熱・溶融させることで、各筒状突起部と各接続端子とを良好に接合することができるので、接合端子側に接合性を確保するための前記従来の棒状突起部等を別途設ける必要がない。したがって、棒状突起部を接続端子に別途設けることによる、工程数の増加やコストの高騰を回避することが可能となる。
さらに、筒状突起部の挿入孔に接続端子が挿入されると、この接続端子の挿入に伴い各分割体が遠心方向にそれぞれ弾性変形することにより弾性力が生じ、挿入孔に挿入された接続端子がこの弾性力を介して各基端型保持部に保持され、これによって接続端子のそれ以上の挿入が規制される。すなわち、挿入孔に挿入された接続端子が筒状突起部を構成する各分割体の弾性力を介して各基端側保持部に保持されることにより、筒状突起部に対する接続端子の高さ方向における位置決めが正確に行われる。また、このように接続端子が各分割体の各基端側保持部に弾性力を介して保持されることにより、筒状突起部に対する接続端子の横方向における位置決めも正確に行われる。したがって、単に筒状突起部の挿入孔に接続端子を挿入してその挿入作業を接続端子が各分割体の各基端側保持部に保持されるまで行うという極めて簡易な手法により、この電子機器用バスバーの筒状突起部に対して高さ方向及び横方向における位置決めを正確に行いつつ接続端子を容易にセットすることができる。
そして、このように筒状突起部に対して高さ方向に正確に位置決めされて接続端子がセットされていれば、筒状突起部と接続端子との高さ方向における相対位置関係が安定する。このため、筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融して溶接に寄与する溶融金属が、筒状突起部と接続端子との間の隙間等に安定に供給される。したがって、溶接に寄与する溶融金属量が不足したり、溶融金属と接続端子との接触面積が不足したりするようなことがなく、筒状突起部と接続端子とを溶融金属の固化を介して良好に溶接することが可能となる。
また、筒状突起部に対して横方向に正確に位置決めされて接続端子がセットされていれば、筒状突起部と接続端子との横方向における相対位置関係が安定する。このため、筒状突起部の挿入孔の中心に対して偏った状態で接続端子がセットされるようなことがない。したがって、筒状突起部と接続端子との間の隙間に周方向に均等に溶融金属が供給されることになるため、筒状突起部と接続端子とを周方向に均等に良好に溶接することが可能となる。
さらに、筒状突起部を構成する各分割体の各基端側保持部は、各先端側溶融部が溶融された状態でも挿入孔に挿入されている接続端子を保持可能であるため、筒状突起部に対して高さ方向及び横方向に正確に位置決めしたまま、筒状突起部と接続端子とを溶接することができ、より良好な溶接が可能となる。
また、筒状突起部の挿入孔に接続端子を挿入する際、各分割体が遠心方向に弾性変形することから、その挿入作業が容易となる。そして、挿入孔への接続端子の挿入に伴って各分割体が遠心方向へ弾性変形すれば、それをカメラ、視覚又はセンサ等で確認することができるので、各分割体の遠心方向への弾性変形量により挿入孔への接続端子の挿入状態を確実に把握することが可能となる。このため、先端側溶融部を加熱源により加熱・溶融させる際に、接続端子の挿入状態に応じた加熱条件の設定が可能となる。したがって、溶接に寄与する溶融金属量を確実に確保することができ、筒状突起部と接続端子とをより良好に溶接することが可能となる。また、挿入孔に対して正常に接続端子が挿入されていないことが予め確認できるので、接続端子のセットのやり直しをすることにより、接合不良が発生することを未然に防止することが可能となる。なお、挿入孔に接続端子が挿入された状態では、各分割体の突出先端の間には隙間が形成されるので、この隙間を通して、挿入孔への接続端子の挿入状態を確認してもよい。
請求項2記載の電子機器用バスバーと接続端子の接合構造は、請求項1記載の電子機器用バスバーと接続端子の接合構造において、各前記分割体は、前記挿入孔の一部を塞ぐように該分割体の突出先端から求心方向に一体に延設されて前記先端側溶融部の一部を構成するフランジ部をそれぞれが有していることを特徴とするものである。
この電子機器用バスバーと接続端子の接合構造においては、各分割体の突出先端から求心方向に一体に延設された各フランジ部により、筒状突起部の突出先端側における挿入孔の開口部が部分的に閉塞されている。このため、この筒状突起部の挿入孔に挿入された接続端子は、先端面が各フランジ部に当接することにより、それ以上の挿入が規制される。すなわち、接続端子の先端面が各分割体の各フランジ部に当接することによって、筒状突起部に対する接続端子の高さ方向における位置決めが正確に行われる。したがって、単に筒状突起部の挿入孔に接続端子を挿入してその挿入作業を接続端子の先端面が各分割体の各フランジ部に当接するまで行うという極めて簡易な手法により、この電子機器用バスバーの筒状突起部に対して高さ方向における位置決めを正確に行いつつ接続端子を容易にセットすることができる。したがって、筒状突起部と接続端子とを良好に溶接することが可能となる。
また、各分割体の各フランジ部が、挿入孔を部分的に塞ぐことから、筒状突起部の先端側溶融部が加熱源により加熱・溶融される際に、挿入孔内に挿入されている接続端子が該加熱源により直接加熱されることがフランジ部により制限される。このため、接続端子が鉄系材料よりなる場合であっても、スパッタの発生を効果的に抑えることができる。
請求項3記載の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、銅系材料よりなる本体部と、挿入孔をもつように該本体部から一体に***して筒状に突出するとともに突出先端側に先端側溶融部をもつ筒状突起部とを有し、接続端子が該挿入孔に挿入された状態で、該先端側溶融部が高エネルギ密度の加熱源により溶融されることによって該筒状突起部と該接続端子とが溶接される電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法であって、前記筒状突起部は、周方向に間隔を隔てて該筒状突起部の突出方向に沿って延びる少なくとも2条のスリットにより少なくとも2分割された分割体よりなり、各前記分割体は、前記加熱源により溶融される前記先端側溶融部と、該先端側溶融部と一体に設けられた基端側保持部とをそれぞれが有しており、前記筒状突起部の前記挿入孔に前記接続端子を挿入して各前記分割体をそれぞれ遠心方向に弾性変形させることにより生ずる弾性力を介して、該挿入孔に挿入された該接続端子を各前記基端側保持部に保持させるとともに、該接続端子の前記先端面を各該分割体の各前記先端側溶融部の近傍に位置させるセット工程と、前記加熱源としてのレーザ光を各前記分割体の各前記先端側溶融部に向けて照射することにより、前記接続端子を各該分割体の各前記基端側保持部に前記弾性力を介して保持させつつ、各該先端側溶融部を溶融させて前記筒状突起部と該接続端子とを接合する接合工程とを備えていることを特徴とするものである。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、高エネルギ密度の加熱源としてレーザ光を利用して筒状突起部の先端側溶融部を接続端子よりも優先的に加熱・溶融させる。この接合方法のセット工程では、挿入孔に挿入した接続端子を筒状突起部の基端側保持部に保持させるとともに、該接続端子の先端面を該筒状突起部の先端側溶融部の近傍に位置させる。そして、接合工程で、筒状突起部の先端側溶融部に向けてレーザ光を照射する。レーザ光の照射により先端側溶融部が加熱・溶融されれば、同先端側溶融部が溶融した溶融金属が筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の隙間に埋まり、それが固化することによって各筒状突起部と各接続端子とが接合される。したがって、接合される接続端子に応じて異なる溶接方法(溶接機)を採用することなく、筒状突起部の先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることが可能な照射条件でレーザ光を各該先端側溶融部に向けて照射するというレーザ溶接を採用することのみによって、筒状突起部と接続端子とを良好に接合することが可能となる。
また、この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、セット工程で、挿入孔に接続端子が挿入されることに伴い、各分割体が遠心方向にそれぞれ弾性変形することにより弾性力が生じ、挿入孔に挿入された接続端子がこの弾性力を介して各該基端型保持部に保持される。これにより、接続端子のそれ以上の挿入が規制され、筒状突起部に対する接続端子の高さ方向及び横方向における位置決めが正確に行われる。したがって、単に挿入孔に接続端子を挿入してその挿入作業を接続端子が各分割体の各基端側保持部に保持させるという極めて簡易な手法により、筒状突起部に対して高さ方向及び横方向における位置決めを正確に行いつつ接続端子を容易にセットすることができる。そして、接合工程では、筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融して溶接に寄与する溶融金属を、筒状突起部とこの筒状突起部に対して高さ方向及び横方向に位置決めされた接続端子との間の隙間等に安定に供給することができるので、溶接に寄与する溶融金属量が不足したり、溶融金属と接続端子との接触面積が不足したりするようなことがなく、筒状突起部と接続端子とを溶融金属の固化を介して良好に溶接することが可能となる。
また、セット工程で、筒状突起部の挿入孔に接続端子を挿入する際、各分割体が遠心方向に弾性変形することから、その挿入作業が容易となる。そして、確認工程で、この挿入孔への接続端子の挿入に伴う各分割体の遠心方向への弾性変形をカメラ、視覚又はセンサ等で確認することができるので、挿入孔に対する接続端子の挿入状態を確実に把握することが可能となる。このため、接合工程で、先端側溶融部を加熱源により加熱・溶融させる際に、接続端子の挿入状態に応じた加熱条件の設定が可能となる。したがって、溶接に寄与する溶融金属量を確実に確保することができ、筒状突起部と接続端子とをより良好に溶接することが可能となる。また、確認工程で、接続端子の挿入異常を予め確認できるので、接続端子のセットのやり直しをすることにより、接合不良が発生することを未然に防止することが可能となる。
さらに、接合工程で、各基端側保持部で接続端子を確実に保持することにより筒状突起部に対して接続端子を高さ方向及び横方向に正確に位置決めしたままの状態で、各先端側溶融部を加熱・溶融させることができるので、より良好な溶接が可能となる。
請求項4記載の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、請求項3に記載の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法であって、各前記分割体は、前記挿入孔の一部を塞ぐように該分割体の突出先端から求心方向に一体に延設されて前記先端側溶融部の一部を構成するフランジ部をそれぞれが有しており、前記セット工程で、前記接続端子の前記先端面を各前記分割体の各前記フランジ部に当接させることを特徴とするものである。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、セット工程で、接続端子の先端面を各分割体の各フランジ部に当接させるので、単に先端面がフランジ部に当接するまで接続端子を挿入孔に挿入するという極めて簡易な手法により、接続端子をセットすることができる。
また、この接合方法では、接合工程で、筒状突起部の先端側溶融部が加熱源により加熱・溶融される際に、挿入孔内に挿入されている接続端子が該加熱源により直接加熱されることをフランジ部である程度防ぐことができるので、接続端子が鉄系材料よりなる場合であっても、スパッタの発生を効果的に抑えることができる。
請求項5記載の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、請求項3又は4記載の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法において、前記接合工程で、前記筒状突起部の前記先端側溶融部に向けて、前記レーザ光を該筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射することを特徴とするものである。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、接合工程で、先端側溶融部に向けて、レーザ光を筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射するので、安定にかつ効率的に該先端側溶融部を加熱・溶融させることができる。また、仮に接続端子からスパッタが発生したとしても、垂直照射されるレーザ光の熱によりスパッタを蒸発させることができる。
したがって、本発明に係る電子機器用バスバーと接続端子の接合構造及び電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法によれば、バスバーに対して材質や線径の異なる接続端子を溶接する場合であっても、接合のためだけの棒状突起部等を接続端子に別途設けることなく、また接続端子毎に溶接方法や溶接機を変更することなく、筒状突起部と接続端子とを良好に溶接することが可能となる。
また、バスバーに対して高さ方向における位置決めを正確に行いつつ接続端子を簡易にセットすることができるので、筒状突起部と接続端子とを良好に溶接することが可能となる。
さらに、筒状突起部がフランジ部を有する場合や、レーザ光を垂直照射する場合は、鉄系材料よりなる接続端子からのスパッタの発生を効果的に抑えることができる。
本発明の電子機器用バスバーと接続端子の接合構造に係る電子機器用バスバーは、銅系材料よりなる本体部と、挿入孔をもつように該本体部から一体に***して筒状に突出するとともに突出先端側に先端側溶融部をもつ筒状突起部とを有している。この筒状突起部の数は特に限定されず、単数でも複数でもよく、溶接しようとする接続端子の数に応じて適宜設定される。
この電子機器用バスバーは、本体部と単数又は複数の筒状突起部とが、平板状等の銅系材料からプレス加工等により一体に形成されている。この銅系材料としては、特に限定されず、銅や真鍮等の銅合金を用いることができる。
この電子機器用バスバーでは、単数又は複数の電子部品の各接続端子が各筒状突起部にそれぞれ接合される。この電子部品の種類や接続端子の材質及び線径については特に限定されず、銅系材料や鉄系材料等よりなる接続端子を接合することができる。
筒状突起部は、本体部の所定位置から挿入孔を持つように一体に***して所定の突出高さ及び肉厚をもつ筒状に突出している。このように単数又は複数の筒状突起部を有する本発明の電子機器用バスバーでは、単数又は複数の電子部品の接続端子が挿入孔に挿入された状態で、筒状突起部の先端側溶融部が高エネルギ密度の加熱源により溶融されることによって筒状突起部と接続端子とが溶接される。
筒状突起部の挿入孔は、その挿入孔に挿入されて接合される接続端子の線径に応じて、筒状突起部の内周面と接続端子の外周面との間に所定の隙間を形成しうるように、所定の孔径で形成されている。すなわち、挿入孔は、接続端子を容易に挿入することができるように接続端子の線径よりも所定量大きな孔径で、かつ、筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融した溶融金属で前記隙間を適切に埋めて所望の接合強度を発揮することができるような大きさの孔径とされている。なお、筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融した溶融金属量に対して前記隙間が相対的に大きすぎると、この隙間を溶融金属で適切に埋めることができないため、所望の接合強度を得ることができない。
ここに、前記筒状突起部は、挿入孔に接続端子が挿入された後でかつ先端溶融部が溶融される前の状態で、該筒状突起部と該接続端子との間の隙間が最小となる位置における最小隙間が0.05〜0.4mmとなるように設定されていることが好ましく、0.05〜0.2mmとなるように設定されていることがより好ましい。この筒状突起部と接続端子との間の隙間とは、筒状突起部の挿入孔の中心に接続端子が挿入されている場合における該筒状突起部と該接続端子との間の片側隙間を意味する。この筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の最小隙間が上記所定範囲に設定されていれば、筒状突起部と接続端子との間の隙間を同筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融された溶融金属で適切に埋めて所望の接合強度を確実に得ることができる。また、筒状突起部と接続端子との間の最小隙間が上記所定範囲に設定されていれば、先端側溶融部が加熱・溶融した溶融金属により筒状突起部と接続端子との間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得るのに適する加熱源から先端側溶融部への入熱量の適正範囲が広がり、生産性が向上する。筒状突起部と接続端子との間の隙間が大きすぎると、挿入孔内で接続端子が偏ること等により溶融金属の溶け落ちが発生したり、溶融金属量の不足により隙間を適切に埋めることができなくなったりするため、接合不良が発生し易くなる。一方、筒状突起部と接続端子との間の隙間が小さすぎると、筒状突起部の挿入孔に対する接続端子の挿入性が低下するとともに、毛細管現象により溶融金属が隙間内を流れ落ちてしまうことがあり接合不良が発生し易くなる。
本発明の電子機器用バスバーと接続端子の接合構造に係る電子機器用バスバーでは、筒状突起部は、溶接される接続端子との接合強度が所定値以上となるように、該接続端子の材質及び線径に応じて突出高さがそれぞれ調整されることにより先端側溶融部の長さがそれぞれ調整される。筒状突起部に接合される接続端子の線径が大きくなれば、それに応じて接合部に要求される接合強度も高くなる。このため、接合される接続端子の線径が大きくなれば、それに応じて筒状突起部の突出高さも高く設定されて先端側溶融部の長さが長く設定される。また、接合される接続端子の材質と電子機器用バスバーの材質とが異種である場合は、同種である場合と比較して溶接され難い。このため、接合される接続端子の材質と電子機器用バスバーの材質とが異種である場合は、同種である場合と比較して、筒状突起部の突出高さが高く設定されて先端側溶融部の長さが長く設定される。
ここに、筒状突起部の肉厚は、厚すぎるとこの筒状突起部の先端側溶融部を加熱・溶融させることが困難になる一方、薄すぎるとこの筒状突起部の挿入孔に挿入された接続端子と同筒状突起部との間の隙間を先端側溶融部が溶融した溶融金属で適切に埋めて所望の接合強度を得ることが困難になる。このため、筒状突起部の肉厚は、同筒状突起部の先端側溶融部が溶融した溶融金属により、同筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、同先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることができるように調整される。このとき、加熱源により加熱・溶融される筒状突起部の溶融量(溶融金属量)が多いほど、言い換えれば加熱源により加熱・溶融される先端側溶融部の長さが長いほど接合面積が大きなって接合部における接合強度が高くなる。このため、先端側溶融部の長さを適切に調整しておけば、筒状突起部と先端側溶融部との接合部において適切な接合面積を確保することができ、したがって所望の接合強度を得ることが可能となる。
このように構成された本発明の電子機器用バスバーと接続端子の接合構造に係る電子機器用バスバーは、筒状突起部の挿入孔に接続端子が挿入された状態で、該接続端子よりも該筒状突起部の先端側溶融部が優先的に加熱・溶融されることにより、筒状突起部と接続端子とが溶接される。このとき、筒状突起部の先端側溶融部を加熱・溶融させる加熱源としては、各筒状突起部の各先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることができる高エネルギ密度の加熱源であれば特に限定されず、レーザ、プラズマやTIGを利用することができる。ただし、生産性向上や設備の小型化等の観点より、レーザ照射を利用することが好ましい。
レーザ照射を利用して筒状突起部の先端側溶融部を加熱・溶融する際は、レーザ光の照射により筒状突起部の先端側溶融部を過不足なく確実に加熱・溶融させることができるように、各筒状突起部の各先端側溶融部の長さや肉厚に応じてレーザ光の照射条件を予め適切に設定しておく。なお、レーザ光の照射により先端側溶融部が過剰に溶融することは、所望の接合強度を得ることができる範囲内で許容される。
また、レーザ光の照射は、筒状突起部の先端側溶融部に向けて、レーザ光を該筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射することが好ましい。レーザ光のエネルギ密度を先端側溶融部の加熱・溶融のために有効利用することができるとともに、鉄系材料よりなる接続端子のスパッタを抑制することができるからである。
本発明の電子機器用バスバーと接続端子の接合構造に係る電子機器用バスバーでは、筒状突起部が、加熱源により溶融される先端側溶融部と、該先端側溶融部と一体に設けられ、挿入孔に挿入される接続端子を保持可能でかつ該先端側溶融部が溶融された状態でも該挿入孔に挿入されている該接続端子を保持可能な基端側保持部とを有している。この電子機器用バスバーに接続端子をセットする際には、筒状突起部の挿入孔に接続端子を挿入して該接続端子を該筒状突起部の基端側保持部に保持させるとともに、該接続端子の先端面を該筒状突起部の先端側溶融部の近傍に位置させる。このとき、接続端子の先端面は筒状突起部の突出先端面(先端側溶融部の突出先端面)よりも突出していないことが好ましく、接続端子の先端面が筒状突起部の突出先端面よりも低い位置にセットされることがより好ましい。こうすれば、接合工程においてレーザ光の照射により筒状突起部の先端側溶融部を接続端子よりも優先的に加熱・溶融させることが容易になる。また、先端側溶融部に向けて照射されたレーザ光が接続端子の先端面に照射され難くなることから、先端側溶融部を加熱・溶融させるために照射されたレーザ光のエネルギを該先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用することができるとともに、接続端子が鉄系材料である場合におけるスパッタの発生を抑えることが可能となる。したがって、接続端子が鉄系材料である場合は、スパッタの発生を抑えるべく、セット工程で、接続端子の先端面が筒状突起部の突出先端面(先端側溶融部の突出先端面)よりも突出していないことが好ましく、接続端子の先端面が筒状突起部の突出先端面よりも低い位置にセットされることがより好ましい。
このような基端側保持部を有する筒状突起部としては、周方向に間隔を隔てて該筒状突起部の突出方向に沿って延びる少なくとも2条のスリットにより少なくとも2分割された分割体よりなり、各前記分割体は、前記加熱源により溶融される前記先端側溶融部と、該先端側溶融部と一体に設けられ、前記接続端子が前記挿入孔に挿入されることで各該分割体が遠心方向に弾性変形することにより生ずる弾性力を介して、該挿入孔に挿入された該接続端子を保持可能な前記基端側保持部とをそれぞれが有しているものとする。筒状突起部を分割する数(分割体の数)は、特に限定されず、2分割、3分割、4分割、…とすることができる。また、分割体は、挿入孔の一部を塞ぐように該分割体の突出先端から求心方向に一体に延設されて先端側溶融部の一部を構成するフランジ部をそれぞれが有していることが好ましい。このフランジ部は、挿入孔に挿入された接続端子の先端面が当接可能なもので、挿入孔に挿入された接続端子の先端面との当接により、接続端子のそれ以上の挿入を規制する。
以下、本発明に係る電気機器用バスバーと接続端子の接合構造及び電気機器用バスバーへの接続端子の接合方法についての具体的な実施例と参考例を、図面を参照しつつ説明する。
(参考例1)
本参考例は、本発明の参考となる形態である。
この電子機器用バスバー1は、図1及び図2に示されるように、銅よりなる本体部2と、第1〜第3挿入孔3A〜3C(図2に3Aのみを示す)をもつように本体部2から一体に***してテーパ筒状にそれぞれ突出するとともに各突出先端側に第1〜第3先端側溶融部4A〜4C(図2に4Aのみを示す)をそれぞれもつ6個の第1〜第3筒状突起部5A〜5Cとを有している。この電子機器用バスバー1は、銅板を絞り加工することにより、本体部2と6個の第1〜第3筒状突起部5A〜5Cとを一体に形成したものである。
この6個の第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの基本的形状は全て同じであり、各筒状突起部5A〜5Cは、各第1〜第3挿入孔3A〜3Cを塞ぐように各第1〜第3該筒状突起部5A〜5Cの突出先端に一体に設けられて各第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cの一部を構成する第1〜第3頂部10A〜10Cを有している。この第1〜第3頂部10A〜10Cは、第1〜第3挿入孔3A〜3Cに挿入された後述する第1〜第3接続端子の先端面が当接可能となされている。
この6個の第1〜第3筒状突起部5A〜5Cは、2個で一対の組が3組あり、第1組をなす第1筒状突起部5A、5Aと、第2組をなす第2筒状突起部5B、5Bと、第3組をなす第3筒状突起部5C、5Cとされている。なお、各組を構成する一対の筒状突起部は形状や大きさ(挿入孔の孔径、突出高さや肉厚等)がそれぞれ同じものである。そして、第1組をなす第1筒状突起部5A、5Aには、第1電子部品(ダイオード)Aから延びる一対の第1接続端子7A、7Aがそれぞれ接合される。第2組をなす第2筒状突起部5B、5Bには、第2電子部品(コンデンサ)Bから延びる一対の第2接続端子7B、7Bがそれぞれ接合される。第3組をなす第3筒状突起部5C、5Cには、第3電子部品(コイル)Cから延びる一対の第3接続端子7C、7Cがそれぞれ接合される。
ここに、第1接続端子7A、7Aは、銅よりなり、線径がφ1.2mmとされている。そして、この第1接続端子7A、7Aがそれぞれ接合される第1筒状突起部5A、5Aは、第1挿入孔3A、3Aの最小孔径(第1挿入孔3Aの上端位置における孔径)が、第1接続端子7Aの線径よりも所定量大きなφ1.4mmとされている。すなわち、この第1挿入孔3Aの中心に第1接続端子7Aが挿入された状態における第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間の最小隙間(第1挿入孔3Aの上端位置(第1筒状突起部5Aの突出先端位置)での片側隙間)は、0.1mmとされている。また、第1筒状突起部5A、5Aの突出高さは2mmとされており、この第1筒状突起部5A、5Aの第1先端側溶融部4A、4Aの長さは2mmとされている。なお、第1筒状突起部5A、5Aの肉厚は、第1筒状突起部5Aの第1先端側溶融部4Aが溶融した溶融金属により、第1筒状突起部5Aと第1挿入孔3Aに挿入された第1接続端子7Aとの間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、第1先端側溶融部4Aを後述する接合工程で確実に加熱・溶融させることができるように調整されている。
第2接続端子7B、7Bは、軟鉄よりなり、線径がφ0.8mmとされている。そして、この第2接続端子7B、7Bがそれぞれ接合される第2筒状突起部5B、5Bは、第2挿入孔3B、3Bの最小孔径(第2挿入孔3Bの上端位置における孔径)が、第2接続端子7Bの線径よりも所定量大きなφ1.0mmとされている。すなわち、この第2挿入孔3Bの中心に第2接続端子7Bが挿入された状態における第2筒状突起部5Bと第2接続端子7Bとの間の最小隙間(第2挿入孔3Bの上端位置(第2筒状突起部5Bの突出先端位置)での片側隙間)は、0.1mmとされている。なお、第2筒状突起部5B、5Bの肉厚は、第2筒状突起部5Bの第2先端側溶融部4Bが溶融した溶融金属により、第2筒状突起部5Bと第2挿入孔3Bに挿入された第2接続端子7Bとの間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、第2先端側溶融部4Bを後述する接合工程で確実に加熱・溶融させることができるように調整されている。
また、第3接続端子7C、7Cは、銅よりなり、線径がφ2.4mmとされている。そして、この第3接続端子7C、7Cがそれぞれ接合される第3筒状突起部5C、5Cは、第3挿入孔3C、3Cの最小孔径(第3挿入孔3の上端位置における孔径)が、第3接続端子7Cの線径よりも所定量大きなφ2.6mmとされている。すなわち、この第3挿入孔3Cの中心に第3接続端子7Cが挿入された状態における第3筒状突起部5Cと第3接続端子7Cとの間の最小隙間(第3挿入孔3Cの上端位置(第3筒状突起部5Cの突出先端位置)での片側隙間)は、0.1mmとされている。なお、第3筒状突起部5C、5Cの肉厚は、第3筒状突起部5Cの第3先端側溶融部4Cが溶融した溶融金属により、第3筒状突起部5Cと第3挿入孔3Cに挿入された第3接続端子7Cとの間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、第3先端側溶融部4Cを後述する接合工程で確実に加熱・溶融させることができるように調整されている。
上記構成を有する電子機器用バスバー1に対して、第1〜第3電子部品A〜Cの第1〜第3接続端子7A〜7Cを、レーザ溶接を利用して、以下のようにして接合した。
<セット工程>
先ず、第1〜第3接続端子7A〜7Cを上方に向けながら第1〜第3電子部品A〜Cを図示しない部品保持治具に保持させることにより、第1〜第3電子部品A〜Cを所定位置に配置した(図1参照)。そして、第1〜第3電子部品A〜Cの上方から電子機器用バスバー1を降ろすことにより、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3挿入孔3A〜3Cに第1〜第3接続端子7A〜7Cをそれぞれ挿入して、第1〜第3接続端子7A〜7Cの各先端面を第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3頂部10A〜10Cにそれぞれ当接させた(図2参照)。
このセット工程では、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cに導入ガイド部6がそれぞれ設けられていることから、この導入ガイド部6に沿って第1〜第3接続端子7A〜7Cが案内されて第1〜第3挿入孔3A〜3C内に挿入されるので、その挿入作業が容易となる。
<接合工程>
そして、図示しないレーザ照射装置を用いてレーザ光8を、一方の第1筒状突起部5Aの第1先端側溶融部4Aを構成する第1頂部10Aに向けて、同第1筒状突起部5Aの突出方向に沿って垂直照射した(図2参照)。このレーザ光8の第1頂部10Aに対する垂直照射により、同第1先端側溶融部4Aの全体が溶融し、この第1先端側溶融部4Aが溶融した溶融金属で第1接続端子7Aの先端面を覆うとともに第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間の隙間を埋めた状態とし、この状態で溶融金属を固化させてロー付け部9とし、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとを一体的に接合した(図3参照)。なお、このレーザ光8の垂直照射によっては、レーザ光8が第1接続端子7Aの先端面に直接照射されなかった。次に、同様にして、他方の第2筒状突起部5Aと第2接続端子7Aとを一体的に接合した。
同様にして、第2筒状突起部5B、5Bと第2接続端子7B、7Bとをレーザ溶接により一体的に接合した。さらに、同様にして第3筒状突起部5C、5Cと第3接続端子7C、7Cとを一体的に接合した。
なお、前記レーザ照射装置は、レーザ発振器と、このレーザ発振器から出射したレーザ光の光軸上に配置され、そのレーザ光の焦点位置、照射方向(照射角度)や照射位置等を任意に制御可能となるような所定の光学系要素をミラースキャン装置とを備えている。
また、レーザ溶接する際のレーザ出力や照射時間等の照射条件は、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1先端側溶融部4A〜4Cの全体をそれぞれ過不足なく加熱・溶融させることができるように、第1〜第3筒状突起部5A〜5C毎に予め設定したおいた。
このように本参考例では、第1〜第3接続端子7A〜7Cの材質及び線径に応じて第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの突出高さが調整されることにより第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cの長さがそれぞれ調整されている。そして、レーザ光8の第1〜第3頂部10A〜10Cに対する垂直照射により第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cを優先的に確実に加熱・溶融している。このため、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cに接合される第1〜第3接続端子7A〜7Cにそれぞれ応じた適切な接合面積を確保することができ、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとを所望の接合強度で接合することが可能となる。
したがって、本参考例によれば、接合される第1〜第3接続端子7A〜7Cに応じて異なる溶接方法(溶接機)を採用することなく、また、接合端子側に接合性を確保するための前記従来の棒状突起部等を別途設けることなく、線径や材質の異なる第1〜第3接続端子7A〜7Cと第1〜第3筒状突起部5A〜5Cとを良好に接合することができる。
また、本参考例では、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cが第1〜第3頂部10A〜10Cをそれぞれ有していることから、セット工程で、単に第1〜第3挿入孔3A〜3Cに第1〜第3接続端子7A〜7Cを挿入してその挿入作業を第1〜第3接続端子7A〜7Cの先端面が第1〜第3頂部10A〜10Cに当接するまで行うという極めて簡易な手法により、この電子機器用バスバー1の第1〜第3筒状突起部5A〜5Cに対して高さ方向における位置決めを正確に行いつつ第1〜第3接続端子7A〜7Cを簡易にセットすることができる。したがって、接合工程では、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cが加熱・溶融して溶接に寄与する溶融金属が、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとの間の隙間等に安定に供給されるので、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとを溶融金属の固化を介して良好に溶接することが可能となる。
さらに、接合工程で、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cがレーザ光8により加熱・溶融される際に、第1〜第3接続端子7A〜7Cにレーザ光8が直接照射されることが第1〜第3頂部10A〜10Cにより遮られる。こんため、が該加熱源により直接加熱されることはない。このため、レーザ光8のエネルギを効率的に利用しつつ第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cを加熱・溶融させることができるとともに、第1〜第3接続端子7A〜7Cが鉄系材料である場合におけるスパッタの発生を効果的に抑えることが可能となる。
加えて、本参考例では、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとの間の最小隙間が所定範囲に設定されていることから、第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cが加熱・溶融された溶融金属で第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとの間の隙間を適切に埋めて所望の接合強度を確実に得ることができる。
(参考例2)
本参考例は、本発明の参考となる他の形態である。
本参考例では、図4に示されるように、各第1〜第3頂部10A〜10Cの中央に、各第1〜第3挿入孔3A〜3Cに挿入された状態の後述する第1〜第3接続端子の先端面を確認可能な第1〜第3確認用穴11A〜11C(図4に11Aのみを示す)がそれぞれ貫設されている。
この参考例では、前記セット工程で、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3挿入孔3A〜3Cに第1〜第3接続端子7A〜7Cをそれぞれ挿入して、第1〜第3接続端子7A〜7Cの各先端面を第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3頂部10A〜10Cにそれぞれ当接させた後、以下に示す確認工程を実施した。
<確認工程>
第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3挿入孔3A〜3Cに第1〜第3接続端子7A〜7Cが挿入されてセットされた状態で、第1〜第3頂部10A〜10Cに設けられた第1〜第3確認用穴11A〜11Cを通して、各第1〜第3接続端子7A〜7Cの先端面をCCDカメラ又はレーザセンサで確認した。
したがって、この参考例では、セット工程の後に、第1〜第3挿入孔3A〜3Cに対する第1〜第3接続端子7A〜7Cの挿入状態を確実に把握することができるので、接合工程で、第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cをレーザ光8により加熱・溶融させる際に、第1〜第3接続端子7A〜7Cの挿入状態に応じた照射条件の設定が可能となる。よって、溶接に寄与する溶融金属量を確実に確保することができ、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとをより良好に溶接することが可能となる。また、第1〜第3挿入孔3A〜3Cに対する第1〜第3接続端子7A〜7Cの挿入異常が予め確認できるので、第1〜第3接続端子7A〜7Cのセットのやり直しをすることにより、接合不良が発生することを未然に防止することが可能となる。
その他の構成及び作用効果は、前記参考例1と同様である。
(実施例1)
本実施例は、請求項1、3又は5に係る発明を具現化したものである。
すなわち本実施例では、図5に示されるように、第1筒状突起部5Aが、周方向に180°の等間隔を隔てて第1筒状突起部5Aの突出方向に沿って延びる2条のスリットにより2分割された第1分割体12a及び第2分割体12bよりなり、第1及び第2分割体12a及び12bは、レーザ光8により加熱・溶融される先端側溶融部13a及び13bと、先端側溶融部13a及び13bと一体に設けられ、第1接続端子7Aが第1挿入孔3Aに挿入されることで第1及び第2分割体12a及び12bがそれぞれ遠心方向に弾性変形することにより生ずる弾性力を介して、第1挿入孔3Aに挿入された第1接続端子7Aを保持可能な基端側保持部14a及び14bとをそれぞれが有している。
このような第1及び第2分割体12a及び12bよりなる第1筒状突起部5Aは、銅板に二条のスリットを所定間隔を隔てて直列させて設け、各スリットの中心を目がけて棒状物を下から突き上げ加工することにより、所定形状に***させ、最後にその中心の頭部をプレスで打ち抜いて貫通させることにより製造した。
なお、第2及び第3筒状突起部5B及び5Cも、第1筒状突起部5Aと同様の基本構成を有しており、第1筒状突起部5Aと同様の作用効果を奏する。
したがって、この実施例では、セット工程で、第1筒状突起部5Aの第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aが挿入されると、この第1接続端子7Aの挿入に伴い第1及び第2分割体12a及び12bが遠心方向にそれぞれ弾性変形することにより弾性力が生じ、第1挿入孔3Aに挿入された第1接続端子7Aがこの弾性力を介して各基端側保持部14a及び14bにテンションをかけられた状態で挟持され、これによって第1接続端子7Aのそれ以上の挿入が規制される(図6参照)。すなわち、第1挿入孔3Aに挿入された第1接続端子7Aが第1筒状突起部5Aを構成する第1及び第2分割体12a及び12bの各基端側保持部14a及び14bに弾性力を介してテンションがかかった状態で保持されることにより、第1筒状突起部5Aに対する第1接続端子7Aの高さ方向及び横方向における位置決めが正確に行われる。よって、単に第1筒状突起部5Aの第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aを挿入してその挿入作業を第1接続端子7Aが第1及び第2分割体12a及び12bの各基端側保持部14a及び14bに保持されるまで行うという極めて簡易な手法により、この電子機器用バスバー1の第1筒状突起部5Aに対して高さ方向及び横方向における位置決めを正確に行いつつ第1接続端子7Aを容易にセットすることができる。よって、接合工程で、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとを良好に溶接することが可能となる。
また、第1筒状突起部5Aの第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aを挿入する際、第1及び第2分割体12a及び12bが遠心方向に弾性変形することから、その挿入作業が容易となる。そして、第1挿入孔3Aへの第1接続端子7Aの挿入に伴って第1及び第2分割体12a及び12bが遠心方向へ弾性変形すれば、それをCCDカメラやレーザセンサ等で確認することができるので、第1及び第2分割体12a及び12bの遠心方向への弾性変形量により第1挿入孔3Aへの第1接続端子7Aの挿入状態を確実に把握することが可能となる。なお、第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aが挿入された状態では、第1分割体12aの突出先端と第2分割体12bの突出先端との間には確認用隙間15が形成されるので、この確認用隙間15を通して、第1挿入孔3Aへの第1接続端子7Aの挿入状態を確認してもよい。
このため、先端側溶融部13a及び13bをレーザ光8により加熱・溶融させる際に、第1接続端子7Aの挿入状態に応じた照射条件の設定が可能となる。したがって、溶接に寄与する溶融金属量を確実に確保することができ、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとをより良好に溶接することが可能となる。また、第1挿入孔3Aに対する第1接続端子7Aの捜入異常を予め確認できるので、第1接続端子7Aのセットのやり直しをすることにより、接合不良が発生することを未然に防止することが可能となる。
さらに、第1筒状突起部5Aを構成する第1及び第2分割体12a及び12bの各基端側保持部14a及び14bは、各先端側溶融部13a及び13bが溶融された状態でも第1挿入孔3Aに挿入されている第1接続端子7Aを保持可能であるため、第1筒状突起部5Aに対して第1接続端子7Aを高さ方向及び横方向に正確に位置決めしたまま、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとを溶接することができ、より良好な溶接が可能となる。
その他の構成及び作用効果は、前記参考例1と同様である。
(実施例2)
本実施例は、請求項2、4又は5に係る発明を具現化したものである。
すなわち、本実施例では、図7に示されるように、前記第1筒状突起部5Aにおいて、第1及び第2分割体12a及び12bは、第1挿入孔3Aの一部を塞ぐように第1及び第2分割体12a及び12bの突出先端から求心方向に一体にそれぞれ延設されて各前記先端側溶融部13a及び13bの一部を構成するフランジ部16a及び16bをそれぞれが有している。各フランジ部16a及び16bは、前記実施例1の第1筒状突起部5Aの突出先端側を内側に折り曲げ加工することにより形成した。
なお、第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aが挿入される前の状態で、各フランジ部16a及び16b間の隙間はほとんど零に等しく、フランジ部16aの内側(求心側)端面と、フランジ部16bの内側(求心側)端面とはほとんど当接状態となっている。そして、第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aが挿入された後の状態で、フランジ部16aの内側端面とフランジ部16bの内側端面との間に確認用隙間15が形成される。
また、第2及び第3筒状突起部5B及び5Cも、第1筒状突起部5Aと同様の基本構成を有しており、第1筒状突起部5Aと同様の作用効果を奏する。
この電子機器用バスバー1では、第1及び第2分割体12a及び12bの突出先端から求心方向に一体に延設された各フランジ部16a及び16bにより、第1筒状突起部5Aの突出先端側における第1挿入孔3Aの開口部が部分的に閉塞されている。このため、この第1筒状突起部5Aの第1挿入孔3Aに挿入された第1接続端子7Aは、先端面が各フランジ部16a及び16bに当接することにより、それ以上の挿入が規制される。すなわち、第1接続端子7Aの先端面が第1及び第2分割体12a及び12bの各フランジ部16a及び16bに当接することによって、第1筒状突起部5Aに対する第1接続端子7Aの高さ方向における位置決めが正確に行われる。したがって、単に第1筒状突起部5Aの第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aを挿入してその挿入作業を第1接続端子7Aの先端面が第1及び第2分割体12a及び12bの各フランジ部16a及び16bに当接するまで行うという極めて簡易な手法により、この電子機器用バスバー1の第1筒状突起部5Aに対して高さ方向における位置決めを正確に行いつつ第1接続端子7Aを容易にセットすることができる。したがって、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとを良好に溶接することが可能となる。
また、第1及び第2分割体12a及び12bの各フランジ部16a及び16bが、第1挿入孔3Aを部分的に塞ぐことから、第1及び第2分割体12a及び12bの各先端側溶融部13a及び13bがレーザ光8により加熱・溶融される際に、第1挿入孔3A内に挿入されている第1接続端子7Aがレーザ光8により直接加熱されることが各フランジ部16a及び156により制限される。このため、第1接続端子7Aが鉄系材料よりなる場合であっても、スパッタの発生を効果的に抑えることができる。
その他の構成及び作用効果は、前記実施例1と同様である。