JP4221906B2 - 電動パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動パワーステアリング装置の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電動パワーステアリング装置は、操向ハンドルの操作によりステアリングシヤフトに発生する操舵トルクと車速を検出し、その検出信号に基づいてモータを駆動して操向ハンドルの操舵力を補助するものである。このような電動式パワーステアリング装置の制御は電子制御回路で実行されるが、その制御の概要は、トルクセンサで検出された操舵トルクと車速センサで検出された車速に基づいてモータに供給する電流の大きさを演算し、その演算結果に基づいてモータに供給する電流を制御する。
【0003】
即ち、電子制御回路は、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生しているときに、検出された車速が零あるいは低速の場合は大きな操舵補助力を供給し、検出された車速が速い場合は小さな操舵補助力を供給するように操向ハンドルの操舵力と車速に応じてモータ出力の制御目標値であるモータ電流指令値を演算し、この演算結果であるモータ電流指令値と実際にモータに流れる実電流値の差が零になるように電流フィードバック制御を行なうことで、走行状態に応じた最適の操舵補助力を与えることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の電動パワーステアリング装置の制御装置では、モータ電流指令値Ir の演算には、操舵トルクと車速とをパラメータとし、モータの回転速度が考慮されていないため、モータ駆動回路が正常であつてもモータに異常電流が流れていると誤つた判断をする場合がある。
【0005】
即ち、図8に示すように、直流モータに流れる実電流値iはモータの回転速度に応じた逆起電力が発生するため、回転速度が高くなると減少する特性を有している。
【0006】
一方、モータ電流指令値Ir は操舵トルクと車速に基づいて決定され、モータの回転速度は考慮されないから、電流フィードバック制御でモータの回転により発生する逆起電力の影響が補償されないと、モータ電流指令値Ir とモータの実電流値iとの差が大きくなり、モータに異常電流が流れていると誤つて判断してしまう不都合が生じる。
【0007】
また、バッテリ電圧、モータの特性定数が変動すると、制御特性が悪化してモータ電流指令値Ir とモータの実電流値iとの差が大きくなり、モータに異常電流が流れていると誤つて判断してしまう不都合が生じる。
【0008】
本発明は、上記した不都合を解消することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を解決するもので、請求項1の発明は、少なくともステアリングシャフトに発生する操舵トルクと検出された車速に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御する電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記制御装置は、制御対象のパラメータの変化に応じて適応制御できるロバスト制御系で構成され、前記制御装置は、検出された操舵トルクと検出された車速に基づいてモータ出力の制御目標値であるモータ電流指令値を演算するモータ電流指令値演算手段と、前記モータ電流指令値に対し、前記ロバスト制御系の応答特性を乗算し、モータ電流推定値を演算するモータ電流推定値演算手段と、モータに流れる実電流を検出するモータ電流検出手段と、前記演算されたモータ電流推定値と検出されたモータ電流検出値との差に基づいて駆動系の故障を検知する監視手段とを備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の前記監視手段を規定するもので、監視手段は演算されたモータ電流推定値と検出されたモータ電流値との差が予め設定された所定の許容値を越えた回数が、予め設定された所定の回数を越えたとき、駆動系の故障と判定する監視手段であることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の制御装置である
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明を実施するに適した電動パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図で、操向ハンドル1の軸2は減速ギア4、ユニバーサルジョイント5a、5b、ピニオンラツク機構7を経て操向車輪のタイロツド8に結合されている。軸2には操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が設けられており、また、操舵力を補助するモータ10がクラツチ9、減速ギア4を介して軸2に結合している。
【0012】
パワーステアリング装置を制御する電子制御回路13は、バッテリ14からイグニッションキー11を経て電力が供給される。電子制御回路13は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと車速センサ12で検出された車速に基づいてモータ電流指令値Ir を演算し、演算されたモータ電流指令値(以下、電流指令値という)Ir に基づいてモータ10に供給する電流制御値Eを制御する。
【0013】
クラツチ9は電子制御回路13により制御される。クラツチ9は通常の動作状態では結合しており、電子制御回路13によりパワーステアリング装置の故障と判断された時、及び電源がOFFとなつている時に切離される。
【0014】
図2は、電子制御回路13の構成を示したブロツク図である。この実施例では電子制御回路13は主としてCPUから構成されるが、ここではそのCPU内部においてプログラムで実行される機能を示してある。例えば、位相補償器21は独立したハードウエアとしての位相補償器21を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示す。なお、電子制御回路13をCPUで構成せず、これらの機能要素をそれぞれ独立したハードウエア(電子回路)で構成できることは言うまでもない。
【0015】
以下、電子制御回路13の機能と動作を説明する。トルクセンサ3から入力された操舵トルク信号は、位相補償器21で操舵系の安定を高めるために位相補償され、電流指令値演算器22に入力される。また、車速センサ12で検出された車速も電流指令値演算器22に入力される。
【0016】
電流指令値演算器22は、入力されたトルク信号、車速信号、及びモータ角速度推定値ω、その他のパラメータに基づいて所定の演算式によりモータ10に供給する電流の制御目標値である電流指令値Ir を演算する。
【0017】
30は制御部で、電流指令値Ir を入力信号として電流制御値Eを得て制御対象であるモータを駆動する。従来の制御部は、例えば比較器、微分補償器、比例演算器及び積分演算器から構成され、モータに実際に流れる実電流値iがモータ電流指令値Ir に一致するように電流フィードバック制御を行つていたが、この発明では、制御部30はロバスト制御を行う制御部としている。これについては後で詳細に説明することにする。
【0018】
制御部30から出力される電流制御値Eはモータ駆動回路41に供給され、モータ10を駆動する。モータ10の実電流値iはモータ電流検出回路42により検出され、制御部30にフィードバックされる。
【0019】
図3にモータ駆動回路41の構成の一例を示す。モータ駆動回路41は制御部30から入力された電流制御値EをPWM信号(パルス幅変調信号)と電流方向信号とに分離変換する変換部44、FET1 〜FET4 、及びそれ等のゲートを開閉駆動するFETゲート駆動回路45等からなる。なお、昇圧電源46はFET1 、FET2 のハイサイド側を駆動する電源である。
【0020】
PWM信号は、Hブリツジ接続されたFET(電界効果トランジスタ)スイツチング素子FET1 〜FET2 のゲートを駆動する信号で、制御部30において演算された電流制御値Eの絶対値によりPWM信号のデユーテイ比(FETのゲートをON/OFFする時間比)が決定される。
【0021】
電流方向信号は、モータに供給する電流の方向を指示する信号で、制御部30で演算された電流制御値Eの符号(正負)により決定される信号である。
【0022】
FET1 とFET2 は前記したPWM信号のデユーテイ比に基づいてゲートがON/OFFされるスイツチング素子で、モータに流れる電流の大きさを制御するためのスイツチング素子である。また、FET3 とFET4 は前記した電流方向信号に基づいてゲートがON或いはOFFされる(一方がONの時、他方はOFFとなる)スイツチング素子で、モータに流れる電流の方向、即ちモータの回転方向を切り換えるスイツチング素子である。
【0023】
FET3 が導通状態にあるときは、電流はFET1 、モータ10、FET3 、抵抗R1 を経て流れ、モータ10に正方向の電流が流れる。また、FET4 が導通状態にあるときは、電流はFET2 、モータ10、FET4 、抵抗R2 を経て流れ、モータ10に負方向の電流が流れる。
【0024】
モータ電流検出回路42は、抵抗R1 の両端における電圧降下に基づいて正方向電流の大きさを検出し、また、抵抗R2 の両端における電圧降下に基づいて負方向電流の大きさを検出する。検出されたモータ実電流値iは制御部30にフィードバックして入力される(図2参照)。
【0025】
以上説明した電子制御回路は、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生しているときに、検出された操舵トルクが大きく、また検出された車速が零あるいは低速の場合は電流指令値Ir を大きく設定し、検出された操舵トルクが小さく、また検出された車速が速い場合は電流指令値Ir を小さく設定するから、走行状態に応じた最適の操舵補助力を与えることができる。
【0026】
次に、この発明の制御部30について説明するが、その前に、まず、従来の電流フィードバック制御部30fの構成を説明する。
【0027】
図4は従来のフィードバック制御系の構成を伝達関数で示したブロツク図であつて、23は比較器、24は微分要素(KDs)、25は比例要素(Kp )、26は積分要素(Kt /s )、27は加算器を示し、フィードバック制御部30fは以上の回路要素により構成される。また、29は制御対象であるモータを示しており、29aは比例定数(K)、29bはモータ要素(Lはモータのインダクタンス、Rはモータの内部抵抗、sはラプラス演算子で、1/(Ls +R)でモータ要素を示す)である。
【0028】
また、図4では、加算器28を介して制御対象の入力側に逆起電力Ke ωが印加されているが、これはモータの回転により発生する逆起電力の影響を等価的に示したもので、モータの回転により発生する逆起電力が入力側の電流制御値に現れることを示している。なお、Ke はモータの逆起電力定数、ωはモータの角速度、ωa はモータの角加速度を示す。
【0029】
この制御系では、電流指令値Ir を入力信号とし、これに制御対象であるモータに実際に流れる実電流値iをフィードバックして、両者の差の信号の微分値、比例値、及び積分値を加算して電流制御値Eを得る。そしてこの電流制御値により制御対象であるモータを駆動している。
【0030】
しかしながら、従来のフィードバック制御系では、バッテリ電圧の変動や温度変化などの変動に対してシステムの安定性を失うおそれがある。
【0031】
そこで、この発明では、制御部30を、上記した従来のフィードバック制御系に代えて図5に示すロバスト制御系で構成することにより、制御系の応答特性を維持し、バッテリ電圧の変動や温度変化などの変動要素があつてもシステムの安定性を確保するようにした。
【0032】
図5は、ロバスト制御系の構成を伝達関数で示したブロツク図である。50は制御対象であるモータを示しており、モータのインダクタンスL、モータの内部抵抗R、ラプラス演算子をs とすると、モータ要素は1/(Ls +R)で表される。
【0033】
51は電流指令値Ir (s) に対するモータ電流値Id (s) の応答特性を定義するためのフィードフォワード補償器である。ここでLn はモータのインダクタンスの設計値、Rn はモータの内部抵抗の設計値、T2 は時定数、s はラプラス演算子である。
【0034】
52はフィードフォワード補償器51の出力r(s) と後述するフイルタ57の出力とを加算する加算器であつて、後述する加算器56の出力da (s) がフイルタ57を経て加算器52にフィードバックされて、制御器出力r(s) に加算される。これにより制御対象50のもつ変動分とモータの回転により発生する逆起電力の変動分が補償される。
【0035】
53は加算要素で、制御対象の入力側にモータの回転により発生する逆起電力Ke ωが加算器52の出力に加算されてモータ電流値Id (s) に現れることを示し、モータ電流値Id (s) に現れる逆起電力Ke ωの影響を等値的に示したものである。ここでKe はモータの逆起電力定数、ωはモータの角速度を示す。加算要素53の出力はモータに供給する電流を規定する電流制御値Eである。
【0036】
55は希望するモータ特性の逆特性を示す回路要素で、この実施例ではモータの逆起電力の影響を防ぐ目的から逆起電力の項を除いた電気的特性の数学モデルを採用して設計しており、Ln 、Rn はそれぞれモータのインダクタンスの設計値、モータの内部抵抗の設計値、s はラプラス演算子である。
【0037】
56は加算器で、回路要素55の出力と加算器52の出力との差、即ち、制御器出力基準における希望するモータ制御特性と実際の制御特性の差を演算するものである。加算器56の出力da(s)は以下の式(1)で表される。
【0038】
【数1】
Figure 0004221906
【0039】
式(1)より、加算器56の出力da(s)は制御対象の変動分と逆起電力の和であることが分かる。ここで、L、Rはそれぞれ制御対象のモータのインダクタンス、モータの内部抵抗、Ln 、Rn はそれぞれモータのインダクタンスの設計値、モータの内部抵抗の設計値、s はラプラス演算子、Ke ωは逆起電力、Kは定数である。
【0040】
57は加算器56の出力da(s)をフィードバックする制御系の動作を安定させるフイルタで、その特性はQ(s) で表される。この実施例では一次のローパスフイルタを用いており、図5におけるフイルタ特性Q(s) =1/(T1s+1)は、伝達関数で表されたフイルタ特性Q(s) の一例を示している。ここで、T1 は時定数、s はラプラス演算子である。
【0041】
特性Q(s) をもつフイルタ57の出力をフィードバックすることにより、制御対象の変動と逆起電力と抑制し、定義した数学モデルの特性と一致させるように構成されている。以下、これについて説明する。
【0042】
フイルタ57の出力をフィードバックした場合、モータ電流値Id (s) は以下の式(2)で表される。
【0043】
【数2】
Figure 0004221906
【0044】
式(2)における、Pn (s) はモータ特性の数学モデルである。また、Δ(s) は、以下の式(3)で定義される。ここで、Δ(s) は数学モデルと実際の特性との差を乗法的摂動モデルを用いて表したときの摂動分である。
【0045】
【数3】
Figure 0004221906
【0046】
フイルタの特性Q(s) が近似的に1の場合は、式(2)は以下の近似式(4)で表わすことができ、モータ電流値Id (s) を求めることができる。
【0047】
【数4】
Figure 0004221906
【0048】
フィードフォワード補償器の出力r(s) は、電流指令値Ir (s) にフィードフォワード補償器の特性(Lns+Rn )/(T2s+1)を乗算した以下の式(5)で表すことができる。ここで、T2 は時定数、s はラプラス演算子である。
【0049】
【数5】
Figure 0004221906
【0050】
従つて、モータ電流値Id (s) を示す前記近似式(4)は、近似式(4)のr(s) に式(5)を代入することにより以下の式(6)で表すことができる。モータ電流値Id (s) を示す近似式(6)は、特性Q(s) を持つフイルタのカットオフ周波数1/2π・T2 までは成立する。
【0051】
【数6】
Figure 0004221906
【0052】
一方、乗法的摂動を受ける制御系が安定である為の十分条件として、以下の式(7)に示す最小ゲイン定理がある。
【0053】
【数7】
Figure 0004221906
【0054】
ここで、T(s) は制御対象とその数学モデルが一致しているときの相補感度関数、即ち、図5においてLn =L、Rn =R、K=1のときの伝達特性である。この実施例では、T(s) =Q(s) であるので、以下の式(8)が満足するように特性Q(s) を持つフイルタ57の時定数T1 を決定する。
【0055】
【数8】
Figure 0004221906
【0056】
この実施例では、予想されるモータのインダクタンスL、内部抵抗R、及び定数Kの変動幅を考慮して上記式(3)で定義されるΔ(s) の範囲を定め、Δ(s) の全範囲において上記式(8)が満たされるように特性Q(s) を持つフイルタ57の時定数T1 を定めれば、ロバスト安定性を確保することができる。
【0057】
以上の検討によれば、図5に示す制御系はフイルタ57の特性Q(s) のカットオフ周波数以下(1/2π・T2 )であれば、更に図6の(a)に示す等価ブロツク図で表すことができ、更に図6の(b)に示す等価ブロツク図のように簡略化して表すことができる。即ち、図5のフィードフォワード補償器51の特性式の分子に数学モデルの逆特性を与え、分母に前記フイルタの時定数T1 よりも大きい時定数T2 を与えることにより、時定数T2 で定義される応答特性を実現することができる。
【0058】
また、以上のように制御系を構成することにより、モータの回転により発生する逆起電力による変動が補償される。
【0059】
応答性の速さについては、図6で示したように、特性Q(s) のフイルタの時定数T1 よりも大きい時定数T2 で定める任意の範囲で設定することができ、実用上十分な応答特性を実現することができる。
【0060】
更に、従来の電流フィードバック制御系とは異なり、式(2)で示したようにバッテリ電圧、モータ端子間抵抗、モータトルクの変動に対し、特性Q(s) のフイルタのカットオフ周波数までは設計性能を維持し、且つ式(6)で示したように安全性も確保できるという重要な利点を有する。
【0061】
次に、電動パワーステアリング装置の駆動系の故障の検出について説明する。先に、発明が解決しようとする課題において説明したとおり、逆起電力の影響や制御対象の変動が十分に補償されないと、モータ電流指令値Ir とモータの実電流値iとの差が大きくなる。
【0062】
このため、単純にモータ電流指令値Ir とモータの実電流値iとを比較してその差が設定値を越えたとき、駆動系に故障が発生したと判断したのでは、駆動系が正常に動作しているにも関わらず、故障の発生であると誤つて判断してしまうおそれがある。
【0063】
そこで、この発明では、先に説明したロバスト制御系に対して、以下に説明する方法により駆動系の故障を検出する。駆動系が故障していないときには、先に説明したように式(6)によつて表わされるように、モータ電流が制御されるので、以下の式(9)によつてモータに流れる電流の推定値Ied(s)(以下、モータ電流推定値という)を演算することができる。駆動系が故障したときは、式(6)は成立しなくなる。
【0064】
【数9】
Figure 0004221906
【0065】
そして、以下の式(10)で示すように、モータ電流推定値Ied(s)とモータ電流値Id(s)との差eの絶対値が予め設定した設定値ERを越えたとき、駆動系に故障が発生したと判断するようにした。
【0066】
【数10】
Figure 0004221906
【0067】
図5を参照して故障監視部の構成を説明する。図5において故障監視部60はモータ電流推定値Ied(s)を演算・推定する演算器61と、比較器62とから構成され、演算器61はモータ電流指令値Ir (s) に基づいてモータ電流推定値Ied(s)を演算・推定し、比較器62は推定したモータ電流推定値Ied(s)とモータ電流値Id(s)とを比較し、その差eが所定の許容値ERを越えた時、駆動系に故障が発生したことを示すエラー信号を出力する。
【0068】
モータ電流推定値Ied(s)は前記したとおり、前記近似式(9)により演算しした駆動系が正常な状態のときのモータ電流推定値と同じであり、モータ電流値Id(s)(実電流値)は、具体的にはモータに流れる実電流をモータ電流検出回路42(図2参照)により検出した実電流値iを使用する。
【0069】
図7は、制御部30のCPUで実行される故障監視部60の監視動作を説明するフローチャートである。なお、以下説明する監視動作は、所定時間間隔で繰り返しサンプル値を抽出して演算・判断等の処理が実行されるものである。
【0070】
まず、電流指令値演算器22(図2参照)からのモータ電流指令値Ir を読み込み(ステップP1)、読み込まれたモータ電流指令値Ir に基づいてモータ電流推定値Iedを演算する(ステップP2)。次に、モータ電流検出回路42(図2参照)によりモータ実電流値iを検出する(ステップP3)。
【0071】
モータ電流推定値Iedとモータ実電流値iとの差の絶対値eが所定の許容値ERを越えているか否かを判定し(ステップP4)、許容値を越えていない場合はカウンタをリセットする(ステップP5)。また、許容値を越えている場合はカウンタを1だけインクリメントする(ステップP6)。
【0072】
カウンタのカウント値が予め設定した規定値を越えているか否かを判定し(ステップP7)、規定値を越えていない場合は正常と判断して主ルーチンに戻る。また、規定値を越えている場合は故障の発生と判断して故障フラグを1に設定して警告表示、その他の図示しない故障処理ルーチンへの移行準備を行い(ステップP8)、主ルーチンに戻る。
【0073】
なお、上記したカウンタのカウント値の判定に使用される規定値は、上記したモータ電流推定値Iedとモータ実電流値iとの差の絶対値が許容値を越えたと判定された回数を計数して故障の発生を判断するための値であり、計数した回数が複数回、例えば10回を越えたとき故障の発生と判断するための値で、実験により適宜決定するものとする。
【0074】
以上説明した故障監視部によれば、モータ電流推定値Iedとモータ実電流値iとを比較する際に、ロバスト制御系がモータに発生する逆起電力および制御対象の変動を補償するので、モータ電流推定値とモータ実電流値との差が異常に大きくなることが無く、駆動系が正常に動作しているにも関わらず、故障の発生であると誤つて判断してしまうおそれがない。
【0075】
なお、上記実施の形態では、制御部の構成要素を伝達関数で示してあるが、具体的な回路構成は、伝達関数で示した特性を持つ回路要素であれば適宜の回路要素を使用することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明の電動パワーステアリング装置の制御装置は、制御系に入力される電流指令値と出力であるモータ電流値に基づいて、制御器出力基準における希望するモータ制御特性(モータの設計特性)と実際のモータ制御特性との差を演算し、その差を補正するようにフィードバックするものであるから、バッテリ電圧やモータの端子間抵抗、モータのトルク定数などの特性定数が温度その他の環境の変化その他の原因により変動しても、希望するモータ制御特性を維持することができ、制御系の安定性を失うことがない。
【0077】
そして、故障監視部において、演算により求めたモータ電流の推定値とモータの実電流値とを比較する際に、ロバスト制御系がモータに発生する逆起電力および制御対象の変動を補償するので、モータ電流推定値とモータ実電流値との差が異常に大きくなることは無く、駆動系が正常に動作しているにも関わらず故障の発生であると誤つて判断してしまうおそれがなくなり、常に正確に駆動系の動作状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動式パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図。
【図2】この発明の電子制御回路のブロツク図。
【図3】モータ駆動回路の構成の一例を示すブロツク図。
【図4】従来の電流フィードバック制御系を伝達関数で示したブロツク図。
【図5】この発明の制御系の構成を伝達関数で示したブロツク図。
【図6】この発明の制御系の等価回路を伝達関数で示したブロツク図。
【図7】制御部で実行される故障監視部の監視動作を説明するフローチャート。
【図8】従来の電動パワーステアリング装置の制御装置におけるモータの回転速度に対するモータ電流指令値とモータ実電流値の関係を説明する図。
【符号の説明】
3 トルクセンサ
10 モータ
11 イグニッションキー
12 車速センサ
13 電子制御回路
21 位相補償器
22 電流指令値演算器
30 制御部
41 モータ駆動回路
42 モータ電流検出回路
50 制御対象(モータ)
51 フィードフォワード補償器
52 加算器
53 加算要素
55 モータ逆特性回路要素
56 加算器
57 フイルタ
60 故障監視部
61 演算器
62 比較器

Claims (2)

  1. 少なくともステアリングシャフトに発生する操舵トルクと検出された車速に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御する電動パワーステアリング装置の制御装置において、
    前記制御装置は、制御対象のパラメータの変化に応じて適応制御できるロバスト制御系で構成され、前記制御装置は、
    検出された操舵トルクと検出された車速に基づいてモータ出力の制御目標値であるモータ電流指令値を演算するモータ電流指令値演算手段と、
    前記モータ電流指令値に対し、前記ロバスト制御系の応答特性を乗算し、モータ電流推定値を演算するモータ電流推定値演算手段と、
    モータに流れる実電流を検出するモータ電流検出手段と、
    前記演算されたモータ電流推定値と検出されたモータ電流検出値との差に基づいて駆動系の故障を検知する監視手段とを備えること
    を特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
  2. 前記監視手段は、演算されたモータ電流推定値と検出されたモータ電流値との差が予め設定された所定の許容値を越えた回数が、予め設定された所定の回数を越えたとき、駆動系の故障と判定する監視手段であることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
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