JP4210446B2 - ハニカム押出成形用口金及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハニカム押出成形用口金及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車排気ガス浄化用触媒は、セラミック製のハニカム担体(ハニカム構造体)の各セル表面に触媒成分が担持されていわゆるハニカム触媒を形成するが、その軸方向強度が断面(径)方向のそれよりも高いことから、ハニカム担体の軸方向で把持する構造が採用されていた。この場合、その軸方向に把持する際に外周部付近で破損することを防ぐため、外周部のセル隔壁(リブ)を内部よりも厚くして、ハニカム担体の軸方向の耐圧強度を高めていた。
【0003】
しかしながら、最近、エンジンの高出力化指向に伴うハニカム触媒での圧力損失の低減要求や、排ガス規制強化に伴う触媒担体全体の有効利用の要請により、ハニカム触媒担体を軸方向把持するのではなく、ハニカム触媒担体の外周面で主に把持する構造が採用され始めた。これは、排ガス規制強化により触媒容積が増加して触媒質量が増加するため、エンジン振動に対して軸方向把持では把持面積が少なくて十分に把持できなくなったことも一因であった。
【0004】
また、一方では触媒の浄化性能を向上させるために、ハニカム担体のセル隔壁厚さを薄くしてハニカム担体を軽量化することにより、触媒の熱容量を低減して浄化性能の暖機特性を向上させる動きが始まっている。
【0005】
このため、セル隔壁の薄壁化でハニカム担体の外周面からの外圧による破壊強度は一層低下する傾向となっている。
さらに、最近の排ガス規制の更なる強化のため、エンジン燃焼条件の改善、触媒浄化性能の向上を狙いとして、排気ガス温度が年々上昇してきており、ハニカム担体に要求される耐熱衝撃性も厳しくなってきている。
このように、セル隔壁の薄壁化、ハニカム担体の外周面把持採用、及び排ガス温度の上昇等により、セル隔壁やハニカム外壁の厚さ設定及びハニカム構造体のアイソスタティック強度向上並びに外形形状及び隔壁形状の高精度化が大きな課題となってきている。
【0006】
以上の点を鑑み、特願2000−236122においては、図9〜10に示すセラミック製ハニカム構造体1が提案されている。
上記セラミック製ハニカム構造体は、図9に示すように、複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)2と、このセル複合体の最外周に位置する最外周セルを囲繞して保持する外壁4とから構成されており、セル隔壁2により仕切られた複数の貫通孔(セル)3の複合体からなっている。
また、上記セラミック製ハニカム構造体は、図10に示すように、外壁4に最も近接して最外周セル8があり、最外周セル8から内方に2番目のセル9が連続している。なお、セル隔壁2は、隔壁厚の厚い外周セル隔壁2aと、隔壁厚の薄い基本セル隔壁2bとに大別される。
これにより、上記セラミック製ハニカム構造体は、従来のセラミック製ハニカム構造体と比較して、圧力損失の増大及び耐熱衝撃性の低下によるマイナス面とアイソスタティック強度の向上並びに隔壁形状及びハニカム構造体形状の高精度化によるプラス面との調和をバランスよく実現することができるため、自動車排気ガス浄化触媒用担体等として期待されている。
【0007】
ここで、上記ハニカム構造体を押出成形する時に用いる口金は、例えば、図1に示すようなものであり、通常、内側部22のスリット幅狭部(例えば、2mil[約0.05mm])が研削又はワイヤ放電等で加工され、外周部24のスリット幅広部(例えば、3mil[約0.075mm])がカーボン電極による放電で加工されている。
【0008】
しかしながら、上記口金10は、内側部22のスリット幅と、外周部24のスリット幅が異なるため、円板状砥石による研削加工のみで行うと、内側部22と外周部24との境界部付近で、例えば、図5(b)に示すような砥石切込み深さと接触弧による軌跡(図5(b)の斜線部)を描き、X方向の幅広部のスリット深さL1とY方向の幅広部のスリット深さL2との間に差が生じてしまう。
このため、上記口金で押出し成形されたセラミック製ハニカム構造体は、図6〜7に示すように、外周セル隔壁2aと基本セル隔壁2bとの境界部に線状サクラ(セル変形欠陥)30が発生してしまうという問題点があった。
【0009】
また、外周部24のスリット幅広部は、カーボン電極による放電加工が行われているが、特に、2〜3mil(約0.05〜0.075mm)以下の口金を作製する場合、スリット幅の加工精度(±2〜3μm)が十分でなく、また、研削加工と放電加工との間における加工面の表面粗さに差があり、外周部24と内側部22との表面粗さの比が10以上と大きくなってしまうため、口金の押出しパターンが悪いという問題点があった。
【0010】
更に、上記口金10は、内側部22と外周部24とのスリット幅が異なるため、成形原料の流動性にもよるが、そのまま押出成形すると、外周部24の成形速度が内側部22の成形速度よりも早くなってしまうため、図8に示すように、パターンが巻き込まれ、ハニカム構造体50の不良が発生し易いという問題点があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、線状サクラ等のセル変形不良及び巻込みパターン不良等の外壁形成不良を防止することにより、セルを形成する隔壁が薄壁であり、セル密度が部位によって異なり且つ小さいハニカム構造体においても、より高い寸法精度と強度を付与することができるハニカム押出成形用口金及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、成形原料を導入する裏孔と、該成形原料を押し出すスリットとを備えてなり、ハニカム構造体を押出成形する口金であって、該口金は、内側部、外周部及び最外周部とからなり、該口金に配設されたスリットの全てが円板状砥石による研削加工で形成されており、該外周部に配設されたスリット幅が、該内側部に配設されたスリット幅よりも大きく、且つ外周部及び内側部のスリットの表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であり、該内側部と該外周部との境界部の各交点における幅広部のスリット深さの絶対値差が0.2mm未満であることを特徴とするハニカム押出成形用口金が提供される。このとき、内側部は、外周部よりも凹状に形成されていることが好ましく、外周部と内側部とのスリット幅の差は、5〜50μmであることが好ましい。
【0013】
本発明では、外周部のスリット数が、1〜20であることが好ましく、最外周部に配設されたスリット幅が、内側部に配設されたスリット幅よりも大きいことが好ましい。
【0015】
更に、本発明では、スリットの全てが、それぞれ所定のスリット寸法に仕上がるように、1〜150μmの膜厚で硬質コーティングされていることが好ましく、硬質コーティングが、無電解メッキ又はCVDであることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、成形原料を導入する裏孔と、該成形原料を押し出すスリットとを備え、該スリットが、内側部、外周部及び最外周部とからなり、それぞれのスリット幅が異なるハニカム構造体を押出成形する口金の製造方法であって、該スリットの全てを、円板状砥石による研削加工で格子状に溝切り加工して形成するとともに、該円板状砥石による研削加工時に、スリット交点におけるスリット深さが最適化されるように、該円板状砥石の切り込み深さを適宜調整しながら加工し、該内側部と該外周部との境界部の各交点における幅広部のスリット深さの絶対値差が0.2mm未満としたことを特徴とするハニカム押出成形用口金の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明では、スリットの全てを、それぞれ所定のスリット寸法に仕上がるように、1〜150μmの膜厚で硬質コーティングすることが好ましく、硬質コーティングが、無電解メッキ又はCVDであることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、ハニカム押出成形用口金の一例を示すものであり、(a)は正面図、(b)は(a)のB部の部分拡大図である。
本発明の口金は、図1に示すように、成形原料を導入する裏孔16と、成形原料を押し出すスリット12,14とを備えてなり、ハニカム構造体を押出成形する口金20である。
上記口金20は、内側部22、外周部24及び最外周部26とからなり、外周部24に配設されたスリット14の幅が、内側部22に配設されたスリット12の幅よりも大きく、且つ外周部及び内側部のスリット14,12の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下のものである。
このとき、図2(a)に示すように、外周部24のスリット数αは、1〜20であることが好ましい。
【0021】
尚、本発明では、最外周部に配設されたスリット15の幅が、内側部に配設されたスリット12の幅よりも大きいことが、ハニカム構造体の押出し成形時における成形性を良好にできるため好ましい。
【0022】
ここで、本発明の口金は、図2(b)に示すように、スリット12,14の全てが、格子状に溝切り加工して得られたものであり、各交点における幅広部のスリット深さ(L1,L2)の比が10:7〜10:10であるか、又は幅広部のスリット深さの絶対値差(│L1−L2│)が0.2mm未満であることが好ましい。
また、本発明の口金20は、スリット12,14の全てが、砥石による研削加工で形成されていることが好ましい。
【0023】
尚、本発明の口金は、スリット12,14の全てが、それぞれ所定のスリット寸法に仕上がるように、1〜150μmの膜厚で硬質コーティングされていることが好ましい。
尚、上記硬質コーティングは、特に限定されないが、無電解メッキ又はCVDであることが好ましい。
【0024】
また、本発明の口金は、図3に示すように、内側部22が、外周部24よりも凹状になるように段差部18が配設されていることが好ましい。
これは、押出成形時における内側部22のスリット12と外周部24のスリット14との成形原料の押出抵抗が同じになるように、内側部22のスリット高さを外周部24のスリット高さよりも低くすることにより、成形パターンを平坦にすることができるため、ハニカム構造体の巻込みパターン不良(図8参照)を防止するとともに、成形パターンの調整も容易であるため、ハニカム構造体の生産効率を上げることができるからである。
このとき、本発明の口金は、外周部24と内側部22とのスリット幅の差が5〜50μmであることが好ましい。
【0025】
尚、本発明の口金は、図4に示すように、外周部24のスリット14の上流側に裏押さえ板40を配設することが好ましい。
これにより、押出成形時におけるスリット14の成形原料の押出速度を調節することができるので、図3の口金と同じ効果を得ることができる。
【0026】
次に、本発明の口金の製造方法について説明する。
本発明の口金の製造方法の主な特徴は、スリットの全てを砥石による研削加工で形成したことにある。
これにより、2〜3mil(約0.05〜0.075mm)以下の口金を作製する場合であっても、スリット幅の加工精度(±2〜3μm)を十分確保することができるため、口金の押出しパターンを良好にすることができる。
【0027】
このとき、本発明の研削方法は、図2(b)に示すように、スリット12,14の全てを格子状に溝切り加工する。
このとき、各交点における幅広部のスリット深さL1、L2の比が10:7〜10:10であるか、又は幅広部のスリット深さの絶対値差(│L1−L2│)が0.2mm未満になるように、砥石の切り込み深さを適宜調整しながら加工することが好ましい。
【0028】
以上のことから、本発明の口金は、線状サクラ等のセル変形不良及び巻込みパターン不良等の外壁形成不良を防止することができる。
これにより、セルを形成する隔壁が薄壁であり、セル密度が部位によって異なり且つ小さいハニカム構造体においても、より高い寸法精度と強度を付与することができるとともに、歩留まり良くハニカム構造体を製造することが可能となるため、ハニカム構造体の製造コストを更に低減することができる。
【0029】
【実施例】
900cpsi(セル/inch2)、製品外径φ100用の口金(図1参照)は、図2(b)に示すように、スリット12,14の全てが、砥石により格子状に溝切り加工され、各交点のX,Y方向における幅広部のスリット深さの絶対値差(│L1−L2│)が0.05mm未満になるように、Z方向の切り込み深さを適宜調整しながら研削加工された。
このとき、外周部及び内側部のスリット14,12の表面粗さ(Ra)が、表1に示すような口金をそれぞれ用意した(実施例1、参考例1、比較例1〜2)。
【0030】
次に、上記口金は、図1(b)に示す所定のスリット幅(スリット12の幅:50μm、スリット14の幅:80μm[内側部22から約10セル分])になるように、Niめっきでコーティングされた後、図3に示すように、内側部22が外周部24よりも凹状になるように、内側部22のスリット出口面を0.3mm削り込んだ。
【0031】
上記口金を用いて、タルク、カオリン、アルミナ、水、バインダーの混練原料を押出成形した後、焼成することにより、900cpsi(セル/inch2)のコージェライト質ハニカム構造体(図9〜10参照)をそれぞれ作製した。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
(考察)
実施例1は、外周部及び内側部のスリットの表面粗さ(Ra)が0.1μm以下で、かつ各交点における幅広部のスリット深さの絶対値差が0.05mm未満であるため、基本セル隔壁2aの変形(例えば、線状サクラ)や最外周セル8の変形がなく、成形パターンが良好であるため、ISO強度10kg/cm2以上のハニカム構造体を得ることができた。
一方、比較例1〜2は、基本セル隔壁2aの変形(例えば、線状サクラ)や最外周セル8の変形が発生していた。
【0034】
また、実施例1は、スリット出口面を凹状にすることにより、成形パターンを平坦にすることができるため、ハニカム構造体の巻込みパターン不良(図8参照)を防止するとともに、成形パターンの調整も容易であるため、ハニカム構造体の生産効率を上げることができた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、線状サクラ等のセル変形不良及び巻込みパターン不良等の外壁形成不良を防止することにより、セルを形成する隔壁が薄壁であり、セル密度が部位によって異なり且つ小さいハニカム構造体においても、より高い寸法精度と強度を付与することができるハニカム押出成形用口金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ハニカム押出成形用口金の一例を示すものであり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のB部の部分拡大図である。
【図2】 本発明のハニカム押出成形用口金の研削加工方法を説明するものであり、(a)は模式図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図3】 本発明のハニカム押出成形用口金の一例を示す部分断面図である。
【図4】 本発明のハニカム押出成形用口金の他の例を示す部分断面図である。
【図5】 従来のハニカム押出成形用口金の研削加工方法を説明するものであり、(a)は模式図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図6】 ハニカム構造体のセル変形発生状況を示す模式図である。
【図7】 図6の要部拡大図である。
【図8】 ハニカム構造体の巻込みパターン不良の一例を示す斜視図である。
【図9】 セラミック製ハニカム構造体の一例を模式的に示す説明図で、(a)は斜視図、(b)は平面図をそれぞれ示す。
【図10】 図9(b)のA部の部分拡大図である。
【符号の説明】
1…セラミック製ハニカム構造体、2…セル隔壁、2a…外周セル隔壁、2b…基本セル隔壁、3…セル、4…外壁、6…外周部、7…内側部、8…最外周セル、9…最外周から2番目のセル、10…口金(従来)、12…スリット(内側部)、14…スリット(外周部)、15…スリット(最外周部)、16…裏孔、18…段差部、19…押さえ板、20,21…口金(本発明)、22…内側部、24…外周部、26…最外周部、30…線状サクラ(セル変形欠陥)、40…裏押さえ板、50…ハニカム構造体。
Claims (8)
- 成形原料を導入する裏孔と、該成形原料を押し出すスリットとを備えてなり、ハニカム構造体を押出成形する口金であって、
該口金は、内側部、外周部及び最外周部とからなり、該口金に配設されたスリットの全てが円板状砥石による研削加工で形成されており、該外周部に配設されたスリット幅が、該内側部に配設されたスリット幅よりも大きく、且つ外周部及び内側部のスリットの表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であり、該内側部と該外周部との境界部の各交点における幅広部のスリット深さの絶対値差が0.2mm未満であることを特徴とするハニカム押出成形用口金。 - 該内側部が、該外周部よりも凹状に形成されている請求項1に記載のハニカム押出成形用口金。
- 該外周部と該内側部とのスリット幅の差が、5〜50μmである請求項2に記載のハニカム押出成形用口金。
- 該外周部のスリット数が、1〜20である請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム押出成形用口金。
- 該スリットの全てが、それぞれ所定のスリット寸法に仕上がるように、1〜150μmの膜厚で硬質コーティングされてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム押出成形用口金。
- 硬質コーティングが、無電解メッキ又はCVDである請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカム押出成形用口金。
- 成形原料を導入する裏孔と、該成形原料を押し出すスリットとを備え、該スリットが、内側部、外周部及び最外周部とからなり、それぞれのスリット幅が異なるハニカム構造体を押出成形する口金の製造方法であって、
該スリットの全てを、円板状砥石による研削加工で格子状に溝切り加工して形成するとともに、該円板状砥石による研削加工時に、スリット交点におけるスリット深さが最適化されるように、該円板状砥石の切り込み深さを適宜調整しながら加工し、該内側部と該外周部との境界部の各交点における幅広部のスリット深さの絶対値差が0.2mm未満としたことを特徴とするハニカム押出成形用口金の製造方法。 - 該スリットの全てを、それぞれ所定のスリット寸法に仕上がるように、1〜150μmの膜厚で硬質コーティングする請求項7に記載のハニカム押出成形用口金の製造方法。
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