JP4209232B2 - ポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸及びその製造方法並びにその仮撚加工糸を含む織編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光沢感とフクラミ感を有するとともに、自然な斑感と柔らかさを織編物に付与可能なポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸及びその製造方法並びにその仮撚加工糸を含む織編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
スポーツ衣料やファッション衣料において、光沢感およびフクラミ感を有する素材が必要とされ、従来、このようなニーズに対して、ポリエステル繊維等の熱可塑性合成マルチフィラメント糸を低温及び/又は低撚数で仮撚加工を施して得た捲縮加工糸が一般的に利用されてきた。
【0003】
また、光沢感の更なる向上が必要とされるニーズに対しては、例えば、異型断面糸を低温低撚数条件で仮撚加工して得た捲縮加工糸が提案(特許文献1、2参照)されている。しかしながら、異型断面糸の仮撚加工糸は、異型断面の効果により良好な光沢感は得られるものの、糸条全体としては糸条が曲げ硬いものとなり、仮撚捲縮が付与されているにも拘わらず、織編物としたときにソフト感が不十分であった。また、昨今の消費者ニーズの多様化は著しく、従来の光沢感だけではなく、新たな表面効果の付与も望まれている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭51−11947号公報
【特許文献2】
特開昭63―243346号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術における問題点を解消し、光沢感とフクラミ感を有するとともに、特に自然な斑感と柔らかさを織編物に付与可能で、かつ後工程通過性が良好なポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を提供し、またその仮撚加工糸によって光沢感とフクラミ感とともに、特に自然な斑感と柔らかさを有する織編物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の発明の要旨は、糸長手方向に太部と細部が形成されたポリエステル単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸を仮撚加工してなる仮撚加工糸であって、下記(1)〜(4)の要件を満足することを特徴とするポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸にあり、
(1)残留捲縮率:2.0〜15.0%
(2)ヤング率 :3.0〜7.0N/mm2
(3)引張り強さ:0.6〜2.5cN/dtex
(4)伸び率 :20〜50%
第2の発明の要旨は、糸長手方向に太部と細部が形成された単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸を、仮撚加撚域に供給し、加工糸繊度当たりの仮撚加撚張力が0.05〜0.25cN/dtex、仮撚セット温度がTg+20℃〜Tg+70℃(但し、Tgはポリエステルマルチフィラメント糸のガラス転移点(℃)である)の条件下で仮撚捲縮加工を施すことを特徴とするポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸の製造方法にあり、さらに第3の発明の要旨は、前記ポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を含む織編物にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚糸加工糸は、糸長手方向に太部と細部が形成されたポリエステル単繊維からなり、かつ下記(1)〜(4)の要件を備えるものである。
(1)残留捲縮率:2.0〜15.0%
(2)ヤング率 :3.0〜7.0N/mm2
(3)引張り強さ:0.6〜2.5cN/dtex
(4)伸び率 :20〜50%
【0008】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を構成するポリエステル単繊維が、糸長手方向に太部と細部が形成されていることで、太部は濃色に、細部は淡色に染色され、織編物に異色による斑効果を付与することが可能となる。また、本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、太さ変化のないストレートな通常のポリエステルマルチフィラメント糸と比較して、太さ変化があるために糸が屈曲し易くなり、織編物にしたときに柔らかな風合いを付与することが可能となる。更に仮撚加撚〜解撚における撚り効果は、一般に細部に集中するため、本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、各単繊維での太部と細部とでは捲縮形態が異なり、斑感の付与並びに糸の柔らかさをより一層効果的に付与可能なものとする。
【0009】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸において、単繊維の太部と細部の形成状態は特に限定されるものではないが、構成単繊維間で太部と細部がそれぞれランダムに形成位置を変えていることが好ましく、更に自然な斑感を付与可能となる。なお、構成単繊維間でそれぞれランダムに太部と細部の形成位置が変わっているとは、該仮撚加工糸の任意の糸条断面を光学顕微鏡で観察したときに、断面積の異なる複数種の構成フィラメント糸が観察されるものをいう。
【0010】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸における残留捲縮率、ヤング率、引張り強さ及び伸び率は、それぞれ前記範囲、好ましくは、残留捲縮率が3.0〜12.0%、ヤング率が4.0〜6.0N/mm2、引張り強さが0.8〜2.3cN/dtex及び伸び率が25〜40%である。すなわち、本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、残留捲縮率、ヤング率、引張り強さ及び伸び率が前記範囲にあることで、光沢感とフクラミ感を有するとともに、柔らかさを織編物に付与可能で、かつ後工程通過性が良好となるものである。
【0011】
ポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸の残留捲縮率が2%未満になると、捲縮が小さくなるためにフクラミ感がなくなり、織編物がペーパーライクとなり、15%を超えると、捲縮による光の乱反射が強くなり光沢感が損なわれてしまう。また、ヤング率が3.0N/mm2未満になると、仮撚加工糸が柔らかくなりすぎて所謂コシのない織編物となり、7.0N/mm2を超えると、柔らかさが不十分な織編物となる。引張り強さが0.6cN/dtex未満になると、後工程通過時に糸切れ等が発生し易くなるとともに、織編物の強力に問題が発生し、2.5cN/dTexを超えると、単繊維の太部と細部の構造差が小さくなり、斑感が不十分になるとともに、風合いも粗硬となる。また、伸び率が20%未満となると、単繊維の太部と細部の構造差が小さくなり、斑感が不十分になるとともに、風合いも粗硬となり、伸び率が50%を超えると、後工程通過性が不良となるとともに織編物としたときに寸法安定性等に問題が発生する。
【0012】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、残留捲縮率が2.0〜15.0%であることにより、織編物としたときに捲縮による光沢感を与えるが、スポーツ衣料やファッション衣料として使用する織編物として、より好ましい光沢感を与えるためには、光沢度が4以上であることが好ましい。
【0013】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を構成するポリエステル単繊維は、本発明の目的の範囲であれば、単繊維を構成するポリエステルに酸化チタン、導電性物質、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤等の他成分が含有されていてもよく、また単繊維を構成するポリエステルが共重合成分を含有する共重合ポリエステルであってもよい。また、構成単繊維の断面形状も特に限定されるものではなく、多角形断面、多葉型断面、扁平断面、中空断面等のいずれであってもよく、更に構成単繊維は、サイドバイサイド型や芯鞘型等に複合紡糸されたものでもよく、目的とする織編物の風合いや光沢感等を考慮して決定すればよい。
【0014】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、単独で仮撚加工糸の形態のまま或いは撚糸の形態で使用してもよいし、また、他繊維との合撚糸として使用してもよい。
【0015】
次に、本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸の製造方法について説明する。本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、糸長手方向に太部と細部が形成された単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸を、仮撚加撚域に供給し、加工糸繊度当たりの仮撚加撚張力が0.05〜0.25cN/dtex、仮撚セット温度がTg+20℃〜Tg+70℃(但し、Tgはポリエステルマルチフィラメント糸のガラス転移点(℃)である)の条件下で仮撚捲縮加工を施すことによって得られる。
【0016】
本発明の製造方法において、糸長手方向に太部と細部が形成された単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸を仮撚加工する際、仮撚加撚張力及び仮撚セット温度が光沢感、フクラミ感、斑感及び柔らかさに重大な影響を与える製造条件であり、前記条件下で仮撚捲縮加工を施すことで、糸長手方向に太部と細部を形成した単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸を適正な捲縮形態並びに糸物性にすることが可能となる。
【0017】
本発明の製造方法における仮撚加撚張力は、加工糸繊度当たりの仮撚加撚張力が、前記範囲、好ましくは0.08〜0.18cN/dtexであり、仮撚加撚張力が0.05cN/dtex未満となると、仮撚施撚体上部のバルーニング大きくなり加工性が不安定となり、糸切れが発生し、0.25cN/dTexを超えると、仮撚加撚域に供給された太部と細部が形成された単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸が一様に延伸されてしまうため、斑感が消失してしまう。
【0018】
本発明の製造方法における仮撚セット温度は、前記範囲、好ましくはTg+30℃〜Tg+60℃であり、仮撚セット温度がTg+20℃未満となると、ポリエステルマルチフィラメント糸の熱可塑化が不十分で仮撚捲縮が賦与できず、得られる仮撚加工糸に捲縮が殆どなく、織編物としたときにペーパーライクなものとなり、Tg+70℃を超えると、熱可塑化に伴う分子構造変化により光沢感が消失してしまうとともに、低張力化で延伸され易くなり、太部と細部が形成された単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸が延伸されてしまい、斑感が消失してしまう。
【0019】
なお、本発明の製造方法において、仮撚数は、目的とする仮撚加工糸の性能に応じて設定すればよいが、光沢感やフクラミ感を考慮すると、15000〜40000/D1/2・T/mであることが好ましい。また、本発明の製造方法において、仮撚方法は、特に限定されず、ピン方式、摩擦方式、エア旋回流方式等の公知の方法を採用することができる。また、仮撚トルクの低減による後工程通過性等の目的に応じて、仮撚後に第2ヒーターを用いて熱セットを行なうことも可能である。
【0020】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を含む織編物は、その混率並びに織編物組織を、目的の風合いや製品外観が得られる範囲で決定すればよく、本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸単独からなる織編物、又は本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸と他繊維との合撚糸からなる織編物、或いは本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を織編物の一部に用いた織編物でもよく、本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸の効果が得られる範囲内で種々の織編物を得ることが可能である。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明による各物性は次の方法で求めた。
【0022】
(1)残留捲縮率:
JIS L−1015に準拠して測定した。
【0023】
(2)ヤング率、引張り強さ、伸び率:
JIS L−1013に準拠して測定した。
【0024】
(3)光沢度:
光沢計(日本電色(株)製PG−1M)を用いて、JIS L−1013に準拠して光沢度測定用試料を作成し、60度鏡面反射法にて測定を行なった。
【0025】
(4)風合い、斑感:
得られた加工糸を用い、20ゲージの一口通編み機で製編し、この編地を常法により精練(70℃、15分)し、次いで、分散染料を用いて染色(120℃、30分)を行った。その後、ハンドリング並びに目視判定による評価を行なった。
【0026】
(実施例1)
構成単繊維間で太部と細部がランダムに形成されたポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex/36フィラメント、Tg:74.1℃)を用いて、三菱重工業(株)製LS−6加工機で、加工速度100m/分、仮撚オーバーフィード率−6%、仮撚セット温度120℃、仮撚数1800T/m、巻き取り速度97m/分、仮撚加撚時の張力0.14cN/dtexにて仮撚捲縮加工を行い、仮撚加工糸を得た。
【0027】
得られた仮撚加工糸は、残留捲縮率6.4%、ヤング率5.1N/mm2、引張り強さ1.04cN/dtex、伸び率34.7%、光沢度7.2であった。得られた仮撚加工糸を用いて風合い及び斑感を評価した結果、製編時に特に問題なく、また得られた編地は、光沢感とフクラミ感を有するとともに、特に自然な斑感と柔らかさを有するものであった。
【0028】
(実施例2)
構成単繊維間で太部と細部がランダムに形成されたポリエステルマルチフィラメント糸(78dtex/36フィラメント、Tg:76.3℃)を用いて、三菱重工業(株)製LS−6加工機で、加工速度100m/分、仮撚オーバーフィード率−8%、仮撚セット温度120℃、仮撚数2000T/m、巻き取り速度96m/分、仮撚加撚時の張力0.16cN/dtexにて仮撚捲縮加工を行い、仮撚加工糸を得た。
【0029】
得られた仮撚加工糸は、残留捲縮率3.6%、ヤング率5.7N/mm2、引張り強さ1.25cN/dtex、伸び率35.2%、光沢度4.7であった。得られた仮撚加工糸を用いて風合い及び斑感を評価した結果、製編時に特に問題なく、また得られた編地は、光沢感とフクラミ感を有するとともに、特に自然な斑感と柔らかさを有するものであった。
【0030】
(比較例1)
構成単繊維に太部と細部がなくストレートなポリエステルマルチフィラメント糸(56dtex/24フィラメント、Tg:76.3℃)を用いて、実施例1と同様に、加工速度100m/分、仮撚オーバーフィード率2.5%、仮撚セット温度120℃、仮撚数2500T/m、巻き取り速度96m/分、仮撚加撚時の張力0.13cN/dtexにて仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸は、ヤング率10.4N/mm2で、糸長手方向に太部と細部が形成されていないために、風合い及び斑感評価では、風合いが硬く、斑感のないものであった
【0031】
(比較例2)
仮撚オーバーフィード率を−1%、仮撚加撚時の張力を0.03cN/dtexにする以外は、実施例1と同様の条件で仮撚加工を行ったところ、仮撚施撚体上部でのバルーニングが大きくなり、仮撚加工が困難であった。
【0032】
(比較例3)
仮撚オーバーフィード率を−14%、仮撚加撚時の張力を0.30cN/dtexにする以外は、実施例1と同様の条件で仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸を用いた編地の風合い及び斑感評価は、フラットでフクラミ感がなく、また斑感が殆どないものであった。
【0033】
(比較例4)
仮撚オーバーフィード率を−2%、仮撚セット温度を80℃とする以外は、実施例1と同様の条件で仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸は、残留捲縮率が0.8%で殆ど仮撚捲縮がなく、また伸び率は63.9%と高く、風合い及び斑感評価を実施したところ、光沢感はあるもののフクラミ感がなくペーパーライクな風合いとなった。また、得られた編地は、これを引っ張るとたやすく伸びてしまい、実用に耐えないものであった。
【0034】
(比較例5)
仮撚オーバーフィード率を−4%、仮撚セット温度を170℃とする以外は、実施例1と同様の条件で仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸は、引張り強さが0.48cN/dtex、伸び率が6.8%と低く、製編が困難であり、実用上問題のあるものとなった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、従来の仮撚加工糸にはない、光沢感とフクラミ感を有するとともに、特に自然な斑感と柔らかさを織編物に付与可能で、かつ後工程通過性が良好なるものであり、またその仮撚加工糸によった織編物は、光沢感とフクラミ感とともに、特に自然な斑感と柔らかさを有するものであり、本発明の仮撚加工糸或いはその織編物は、スポーツ衣料やファッション衣料等の素材糸或いは素材布帛として有用なるものである。
Claims (5)
- 糸長手方向に太部と細部が形成されたポリエステル単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸を仮撚加工してなる仮撚加工糸であって、下記(1)〜(4)の要件を満足することを特徴とするポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸。
(1)残留捲縮率:2.0〜15.0%
(2)ヤング率 :3.0〜7.0N/mm2
(3)引張り強さ:0.6〜2.5cN/dtex
(4)伸び率 :20〜50% - 単繊維における太部と細部の形成位置が、単繊維間でランダムに形成されている請求項1記載のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸。
- 光沢度が、4以上である請求項1又は2記載のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸。
- 糸長手方向に太部と細部が形成された単繊維からなるポリエステルマルチフィラメント糸を、仮撚加撚域に供給し、加工糸繊度当たりの仮撚加撚張力が0.05〜0.25cN/dtex、仮撚セット温度がTg+20℃〜Tg+70℃(但し、Tgはポリエステルマルチフィラメント糸のガラス転移点(℃)である)の条件下で仮撚捲縮加工を施すことを特徴とするポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸の製造方法。
- 請求項1、2又は3に記載のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を含む織編物。
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JP2003087056A JP4209232B2 (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | ポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸及びその製造方法並びにその仮撚加工糸を含む織編物 |
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