JP4207295B2 - 筒内噴射式エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタを備えるとともに、エンジンの排気通路に酸素過剰雰囲気でNOxを吸収して酸素濃度が減少するに伴いNOxを放出するNOx触媒を備えた筒内噴射式エンジンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、低負荷運転領域でリーン運転が行われるエンジンにおいて、酸素過剰雰囲気でNOxを吸収して酸素濃度が減少するに伴いNOxを放出する性質を有するNOx触媒を排気通路に設け、リーン運転状態のときに排気中のNOxがNOx触媒に吸収され、空燃比がリッチ側に変化したときにNOxがNOx触媒から放出されて還元されるようにしたものが知られている。このようなNOx触媒によると、NOxを還元により浄化することが困難なリーン運転時にも、NOxを吸収することにより外部へのNOxの排出を防止することができる。
【0003】
また、この種のNOx触媒を備えたエンジンにおいて、例えば特開平8−61052号公報に示されるように、NOx触媒の硫黄吸収量が所定値に達したとき、強制的に触媒温度を高めることにより触媒から硫黄を脱離させるようにしたものが知られている。
【0004】
すなわち、この種のNOx触媒は、燃料やエンジンオイルに硫黄成分が含まれている場合に、排気中のNOxを吸収するよりも排気中の硫黄酸化物(SOx)を吸収し易いという性質を有し、硫黄によって被毒されたNOx触媒は事後のNOx吸収性が大きく低下する。そして、触媒温度を、リーン運転域でのNOx吸収性能の高い温度域よりもさらに高くするとともに、空燃比を略理論空燃比もしくはそれよりリッチとすることにより、触媒から硫黄を脱離することが可能である。
【0005】
このため、上記公報に記載の装置では、NOx触媒の硫黄吸収量が所定値に達し、かつ、排ガス温度が規定温度以上となるような所定運転領域にある場合に、硫黄被毒解消のための制御として、触媒に燃料と空気を供給してその燃料を燃焼させることにより、触媒温度を上昇させるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記NOx触媒の酸素過剰雰囲気におけるNOx吸収性能は、特定温度域(250〜400°C程度)にあるときに高くなるため、リーン運転状態にあるときは触媒温度が上記特定温度域内に保たれることが望ましい。
【0007】
しかし、例えば上記公報に示されるようにNOx触媒の硫黄被毒解消のために触媒温度を上昇させる制御が行われて、その直後にリーン運転域に移行した場合や、排ガス温度が高い高負荷運転領域からリーン運転域に移行した場合に、触媒温度が上記特定温度より高くなっていることがある。
【0008】
このように触媒温度が上記特定温度域より高い状態でリーン運転が行われると、充分なNOx吸収性能が得られない。そして、リーン運転状態が持続すると排ガス温度の低下に伴って次第に触媒温度が低下し、NOx吸収性能が高められる温度状態となるが、この状態になるまでの間におけるNOx浄化性能の低下が問題となる。
【0009】
そこで、触媒温度が上記特定温度域より高い間はリーン運転へ移行せずに、空燃比を理論空燃比以下(空気過剰率λがλ≦1)のリッチ状態にすれば、NOxがNOx触媒の還元作用によって浄化されるので、NOx浄化作用を良好に保つことができる。ただし、このようにする場合に、触媒温度が速やかに低下しなければ、リーン運転への移行が遅れ、燃費の悪化を招く。
【0010】
本発明は、これらの事情に鑑み、触媒温度がNOx吸収性能の高い特定温度域よりも高温の状態でリーン運転域へ移行したときに、NOx浄化作用を良好に保ち、かつ、速やかに触媒温度を上記特定温度域まで低下させることができる筒内噴射式エンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、酸素過剰雰囲気でNOxを吸収して酸素濃度が減少するに伴いNOxを放出するNOx吸収材を有するNOx触媒をエンジンの排気通路に具備するとともに、燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタを備え、かつ、空燃比が理論空燃比よりも大きくされるリーン運転領域と空燃比が理論空燃比もしくはそれより小さくされる運転領域とが予め設定されている筒内噴射式エンジンにおいて、NOx触媒がNOx吸収性を阻害する所定の硫黄吸収状態となったとき、NOx触媒の温度をNOx吸収率が高い所定温度幅の特定温度域よりも高い高温状態に加熱して硫黄を脱離させる硫黄脱離制御を行う手段と、硫黄脱離制御直後に上記リーン運転領域に移行させるとき、理論空燃比よりも大きい空燃比への変更を遅延する遅延手段と、その遅延期間中に吸入空気量の調整により空燃比を略理論空燃比とする空燃比制御手段と、上記遅延期間中に吸気行程内でインジェクタから燃料を噴射させる燃料噴射制御手段と、上記遅延期間中に排ガス温度を低減する排ガス温度低減手段とを備えたものである。
【0012】
この構成によると、上記高温状態に触媒が加熱されている硫黄脱離制御直後に上記リーン運転領域に移行したときは、触媒温度がNOx吸収率の高い温度域よりも高温の状態(NOx吸収率が低い温度状態)となり、このときに、リーンへの空燃比の変更が遅延されて、その遅延期間中に空燃比が略理論空燃比とされることにより、NOx触媒のNOx還元作用による浄化が行われる。そして、この遅延期間中に吸気行程内でインジェクタから燃料が噴射されて均一燃焼が行われるとともに、排ガス温度低減手段によって排ガス温度が低減されることにより、速やかに触媒温度がリーン運転状態でのNOx吸収率が高い温度域へ低下し、その後にリーンへの空燃比の変更が行われることにより、リーン空燃比となったときはNOxの吸収による浄化が良好に行われる。
【0015】
上記硫黄脱離制御は、例えばインジェクタからの燃料噴射を吸気行程と圧縮行程とに分割して行わせる制御を含むようにしておけばよく、このようにすれば、硫黄離脱に有用な排気ガス中のCOが増加するとともに、排気ガス温度が高められるため、硫黄の離脱が促進される。
【0018】
上記燃料噴射制御手段は、上記遅延期間中に、インジェクタからの燃料噴射を複数回に分割して行わせ、かつ、吸気行程を3等分した前期、中期、後期のうちの前期から中期にかけての期間内に各噴射を開始させるように制御することが好ましい。このようにすると、燃焼効率が高められ、それに伴って排気ガス温度が低くなって、触媒温度の低下促進に有利となる。また、燃焼安定性が高められることから、次に述べるようなEGR率増加の許容度も高められる。
【0019】
また、上記排ガス温度低減手段は、上記遅延期間中に、排気ガスの一部を吸気系に還流させるEGR手段を、EGR率を増加するように制御するものであることが効果的であり、とくにEGR率が30%以上となるようにEGR手段を制御することが好ましい。
【0020】
なお、この明細書においていうEGR率とは、次式で求められる値である。
【0021】
(InCO2−AtCO2)/(ExCO2−InCO2)
InCO2:吸気中のCO2濃度
AtCO2:大気中のCO2濃度
ExCO2:排気中のCO2濃度
大気中のCO2濃度を近似的に0とすれば、EGR率は次のようになる。
【0022】
InCO2/(ExCO2−InCO2)
上記のようにEGR率を大きくすれば、燃焼温度及び排気ガス温度が低下し、触媒温度の低下が促進される。しかも、EGRによってエンジンの燃焼室からのNOx排出量が減少するため、上記遅延期間中のNOxの浄化にも有利となる。
【0023】
NOx触媒が所定の硫黄吸収状態となったときの硫黄脱離制御は、点火時期をMBTよりもリタードさせる制御を含むものとしておけばよく、この場合に、硫黄脱離制御直後に上記リーン運転領域に移行したときの上記遅延期間中に上記排ガス温度低減手段は、点火時期を硫黄脱離制御時と比べてアドバンスさせるように制御するとともに、EGR率が増加するようにEGR手段を制御することが効果的である。
【0024】
このようにすると、硫黄脱離制御は点火時期リタードにより排気ガス温度が上昇され、硫黄脱離制御直後に上記リーン運転領域に移行したときには点火時期のアドバンスとEGRとにより排気ガス温度が低減される。
【0025】
EGR手段は、排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路中に還流ガス冷却手段を備えることが好ましい。また、EGR状態は、排気マニフォールドから所定距離離れたエンジン下方位置ないしはそれより下流の排気通路から排気ガスを取出すようにすることが好ましい。
【0026】
このようにすると、低温の排気ガスが還流され、排気ガス温度及び触媒温度を低下させる作用がさらに高められる。
【0027】
上記の比較的低温の排気ガスを還流させるEGR手段のほかに、比較的高温の排気ガスを還流させる高温側EGR手段を備え、リーン運転領域における低負荷低回転領域では上記高温側EGR手段を駆動し、NOx触媒の温度が所定値以上の状態で上記リーン運転領域に移行したときの上記遅延期間中には比較的低温の排気ガスを還流させるEGR手段を駆動するようにしておくようにしてもよい。
【0028】
このようにすると、リーン運転領域における低負荷低回転領域では高温の排気ガスが還流されることでNOx低減及び燃焼安定性の確保が図られ、NOx触媒の温度が所定値以上の状態で上記リーン運転領域に移行したときの上記遅延期間中には、低温の排気ガスが還流されることでNOx低減とともに触媒温度の低下が図られる。
【0029】
このようにする場合に、吸気弁の開閉タイミングを可変とすることにより吸気弁と排気弁の開弁オーバーラップ期間を可変とするバルブタイミング可変機構を備え、高温側EGR手段は上記開弁オーバーラップ期間を増大させるようにバルブタイミング可変機構を制御することにより内部EGRを行わせるものであり、NOx触媒の温度が所定値以上の状態で上記リーン運転領域に移行したときの上記遅延期間中には吸気弁の開閉タイミングを遅らせて上記開弁オーバーラップ期間を小さくするようにバルブタイミング可変機構を制御するようになっているものとしてもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は本発明が適用される直噴エンジンの全体構造を概略的に示したものである。この図において、エンジン本体10は複数の気筒12を有し、各気筒12には、そのシリンダボアに挿入されたピストン14の上方に燃焼室15が形成されており、この燃焼室15には吸気ポート及び排気ポートが開口し、これらのポートは吸気弁17及び排気弁18によってそれぞれ開閉されるようになっている。
【0032】
上記燃焼室15の中央部には点火プラグ20が配設され、そのプラグ先端が燃焼室15内に臨んでおり、この点火プラグ20に、点火コイル等からなる点火回路21が接続されている。また、燃焼室15内には側方からインジェクタ22の先端部が臨み、このインジェクタ22から燃焼室15内に直接燃料が噴射されるようになっている。上記インジェクタ22には図外の高圧燃料ポンプ、プレッシャレギュレータ等を具備する燃料回路が接続され、各気筒のインジェクタ22に燃料が供給されるとともにその燃圧を圧縮行程における筒内圧力よりも高い所定圧力となるように燃料回路が構成されている。
【0033】
上記エンジン本体10には吸気通路24及び排気通路34が接続されている。上記吸気通路24には、その上流側から順に、エアクリーナ25、吸気流量を検出するエアフローセンサ26、モータ27により駆動されるスロットル弁28及びサージタンク30が設けられている。
【0034】
また、上記排気通路34には、NOx触媒35が配設されている。このNOx触媒35は、空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン運転状態でもNOx浄化性能を有するものであって、酸素過剰雰囲気で排気ガス中のNOxを吸収し、空燃比がリーンからリッチ側に変化して酸素濃度が低下したときに、吸収していたNOxを放出するとともに、雰囲気中に存在するCO等の還元材によりNOxを還元させるようになっている。
【0035】
より詳しく説明すると、上記NOx触媒35は、コージェライト製ハニカム構造体等からなる担体の上にNOx吸収材層と触媒材層とが前者を下(内側)、後者を上(外側)にして層状に形成されたものである。上記NOx吸収材層は、比表面積の大きな活性アルミナにPt成分とNOx吸収材としてのBa成分とを担持させたものを主成分として構成されている。また、触媒材層は、ゼオライトを担持母材としてこれにPt成分及びRh成分を担持させてなる触媒材を主成分として構成されている。なお、上記触媒材層の上にセリア層を形成してもよい。
【0036】
さら排気通路34と吸気通路24との間には、排気ガスの一部を吸気系に還流させるEGR手段が設けられ、このEGR手段は、排気通路34と吸気通路24とを接続するEGR通路37と、このEGR通路37に介設されたEGR弁38とを備えている。上記EGR弁38はアクチュエータ(図示せず)により駆動されて開閉作動するようになっている。
【0037】
上記EGR通路37は、排気マニフォールドから所定距離離れたエンジン下方位置ないしはそれより下流の排気通路34に一端側が接続されて、この位置から比較的低温の排気ガスを導くようになっており、EGR通路37の他端側は吸気通路24におけるサージタンク30の上流等に接続されている。また、EGR通路37の途中には、この通路37を通るガスを冷却するEGRクーラー39(還流ガス冷却手段)が設けられている。こうして、EGR通路37により低温の排気ガスが吸気系に還流されるように構成されている。
【0038】
なお、図1では上記EGR通路37をNOx触媒35の下流の排気通路34に接続しているが、NOx触媒35の上流の排気通路34に接続してもよい。
【0039】
このエンジンには、上記エアフローセンサ26の他、サージタンク30内の吸気負圧を検出するブーストセンサ40、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ41、エンジンのクランク角を検出するクランク角センサ42、アクセル開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ43、吸気温を検出する吸気温センサ44、大気圧を検出する大気圧センサ45、エンジン冷却水温を検出する水温センサ46、排気ガス中の酸素濃度の検出によって空燃比を検出するO2センサ47等のセンサ類が装備され、これらセンサの出力信号(検出信号)がECU(コントロールユニット)50に入力されている。
【0040】
上記ECU50は、インジェクタ22からの燃料噴射量及び噴射タイミングを制御するとともに、スロットル弁28を駆動するモータ27に制御信号を出力することによりスロットル弁28の制御を行ない、また、点火回路21に制御信号を出力することにより点火時期を制御し、さらに、EGR弁38の制御も行なうようになっている。
【0041】
当実施形態の筒内噴射式エンジンの基本的な制御としては、上記インジェクタ22からの燃料噴射時期及び空燃比等が異なる各種運転モードが選択可能とされ、運転領域によって運転モードが変更されるようになっており、例えば温間時には図2に示すようなマップに基づいて運転領域に応じた運転モードの選択が行われる。
【0042】
すなわち、低負荷低回転側の特定運転領域が成層燃焼領域A、それ以外の領域が均一燃焼領域Bとされる。そして、成層燃焼領域Aでは、上記インジェクタ22から圧縮行程の後期に燃料が噴射されることにより、点火プラグ20付近に混合気が偏在する成層状態で燃焼が行なわれるような成層燃焼モードとされ、この場合、スロットル弁28の開度が大きくされて吸入空気量が多くされることにより燃焼室全体の空燃比としては大幅なリーン状態(例えばA/F≧30)とされる。一方、均一燃焼領域Bでは、上記インジェクタ22から吸気行程の前期に燃料が噴射されることにより、燃焼室15全体に均一に混合気が拡散する状態で燃焼が行なわれる均一燃焼モードとされる。この均一燃焼モードでは空気過剰率λがλ=1、つまり理論空燃比(A/F=14.7)とされる。なお、均一燃焼領域Bのうち、アクセル全開域やその付近の高負荷域及び高回転域では、空燃比を理論空燃比よりもリッチ(λ<1)に設定しておいてもよい。
【0043】
また、このような運転領域の設定に基づく基本的な制御に加え、NOx触媒35がNOx吸収性を阻害する所定の硫黄吸収状態となったとき、NOx触媒35の温度を所定値以上に上昇させて硫黄を脱離させる硫黄脱離制御を行うようになっている。後述のフローチャートに示す具体例では、エンジン回転数Neが第1設定回転数N1と第2設定回転数N2との間にあり、かつ、エンジン負荷(平均有効圧力Pe)が第1の関数f(Pe1)で表される曲線と第2の関数f(Pe2)で表される曲線との間にある中回転中負荷の所定運転領域(図2参照)において、硫黄吸収量が所定値以上となっている場合に硫黄脱離制御が行われる。この硫黄脱離制御は、空燃比を略理論空燃比もしくはそれより多少リッチとしつつ、インジェクタ22からの燃料噴射を吸気行程と圧縮行程とに分割して行わせる制御を含んでいる。
【0044】
すなわち、図3に示すように、成層燃焼領域Aでは、空燃比がリーンとされつつ、噴射タイミングINJDが圧縮行程後期に設定された燃料噴射により成層燃焼が行われ、均一燃焼領域Bでは、空燃比が理論空燃比とされつつ、噴射タイミングINJPが吸気行程前期に設定された燃料噴射により均一燃焼が行われるが、上記所定運転領域Cでの硫黄脱離制御時には、空燃比が略理論空燃比もしくはこれより多少リッチとされつつ分割噴射が行われ、例えば噴射タイミングINJPS,INJDSが吸気行程前期と圧縮行程中期とに設定された2回の分割噴射が行われる。上記噴射タイミングとは、噴射開始のタイミングを意味する。
【0045】
硫黄脱離制御としては上記分割噴射のほかに、EGR弁開度を小さくすることによりEGR率を低減する制御、及び点火時期をリタードさせる制御等が行われる。
【0046】
さらに上記ECU50は、NOx触媒の温度が所定値以上の状態で上記リーン運転領域に移行したとき、理論空燃比よりも大きい空燃比への変更を遅延する遅延手段51を有するとともに、空燃比制御手段52、燃料噴射制御手段53及び排ガス温度低減手段54を有している。
【0047】
上記遅延手段51は、例えば上記硫黄脱離制御が行われた直後に成層燃焼領域A(リーン運転領域)へ移行したときや、図2中に示す第3の関数f(Pe3)及び第4の関数f(Pe4)で定められた境界よりも高負荷側の領域(NOx触媒の温度が所定値以上となる高負荷運転状態)から成層燃焼領域Aへ移行したときに、リーン空燃比(理論空燃比より大きい空燃比)への移行を遅延する。
【0048】
空燃比制御手段52は、リーン空燃比への移行の遅延期間中に、リーン運転時と比べ、スロットル開度を小さくして吸入空気量を少なくすることにより、空燃比を略理論空燃比とする。燃料噴射制御手段53は、上記遅延期間中に吸気行程内で燃料を噴射させるようにインジェクタ22を制御する。
【0049】
上記排ガス温度低減手段54は、上記遅延期間中に排ガス温度を低減し、例えば上記EGR弁38を開いてEGR通路37から充分な排気ガスを還流させることにより、燃焼温度及び排気温度を低減する。また、硫黄脱離制御が行われた直後に成層燃焼領域Aへ移行した場合には、硫黄脱離制御においてリタードされていた点火時期をMBT側へアドバンスする。
【0050】
上記ECU50による制御の具体例を、図4〜図6のフローチャートによって説明する。
【0051】
このフローチャートに示す処理がスタートすると、先ず図4のステップS1でアクセル開度、クランク角信号の周期計測値、エアフローセンサ26の計測値及び水温等の信号が入力され、続いてステップS2で硫黄脱離制御許可フラッグFSREが「1」か否かが判定される。
【0052】
上記フラッグFSREが「1」でなければ、運転領域の設定に基づく制御を行うべく、ステップS3で、上記周期計測値から求められるエンジン回転数と上記アクセル開度等から求められるエンジン負荷とによるエンジン運転状態が図2中の成層燃焼領域Aにあるか否かが判定される。成層燃焼領域Aにあることが判定されれば、さらにステップS4で後述の移行タイマがセット中か否かが判定される。
【0053】
成層燃焼領域Aにあって、かつ、移行タイマがセット中でない場合(ステップS4の判定がNOの場合)は、成層燃焼領域Aでの通常の制御としてステップS5〜S17の処理が行われる。
【0054】
すなわち、空燃比をリーンとしつつ圧縮行程後期に燃料噴射を行うことにより成層燃焼を行わせるべく、その圧縮行程噴射の噴射量QDが算出され(ステップS5)、それに応じた噴射パルス幅TDと噴射タイミングINJDとが算出される(ステップS6)とともに、EGR弁開度EGRVがエンジン回転数Ne及び負荷Peに応じて求められ(ステップS7)、さらに点火タイミング(Igタイミング)IGTがエンジン回転数及Neび負荷Peに応じて求められる(ステップS8)。
【0055】
そして、EGR制御タイミングとなれば上記EGR弁開度EGRVとなるようにEGR弁38が制御され(ステップS9,S10)、噴射タイミングINJDとなれば上記パルスTDでインジェクタ22からの燃料噴射が実行され(ステップS11,S12)、点火タイミングIGTとなれば点火が実行される(ステップS13,S14)。
【0056】
さらに、成層燃焼時にNOx触媒に硫黄が吸収されるので、硫黄吸収量GSAの推定が行われる(ステップS15)。この硫黄吸収量GSAの推定の仕方としては、例えば、エンジン回転数Ne及び負荷Peに応じてマップから単位期間当りの量fSA(Ne,Pe)が求められ、これが累計される。そして、上記硫黄吸収量GSAが設定値KSA以上となったか否かが判定され(ステップS16)、設定値KSAに達していなけばそのままリターンされるが、設定値以上になれば再生制御許可フラッグFSREが「1」にセットとされてから(ステップS17)、リターンされる。
【0057】
上記ステップS3で成層燃焼領域にないことが判定されたときは、均一燃焼領域Aでの通常の制御として図5のステップS18以降の処理が行われる。
【0058】
すなわち、空燃比を理論空燃比(もしくはそれよりリッチ)としつつ吸気行程前期に燃料噴射を行うことにより均一燃焼を行わせるべく、吸気行程噴射の噴射量QPが算出され(ステップS18)、それに応じた噴射パルス幅TPと噴射タイミングINJPとが算出される(ステップS19)とともに、EGR弁開度EGRVがエンジン回転数Ne及び負荷Peに応じて求められ(ステップS20)、さらに点火タイミング(Igタイミング)IGTがエンジン回転数及Neび負荷Peに応じて求められる(ステップS21)。
【0059】
そして、EGR制御タイミングとなれば上記EGR弁開度EGRVとなるようにEGR弁38が制御され(ステップS22,S23)、噴射タイミングINJPとなれば上記パルスTPでインジェクタ22からの燃料噴射が実行され(ステップS24,S25)、点火タイミングIGTとなれば点火が実行される(ステップS26,S27)。
【0060】
さらに、負荷PeがPe≧f(Pe3)かつPe≧f(Pe4)となる高負荷領域か否かが判定され(ステップS28)、この判定がNOであればそのままリターンし、YESであれば、移行タイマをセットした上で(ステップS29)、後記の硫黄脱離度推定(ステップS43)等の処理に移る。このような高負荷領域にあれば特別な硫黄脱離制御を行わなくても触媒温度が充分に高くなって、硫黄の脱離が行われるためである。
【0061】
上記移行タイマは、後述のように成層燃焼領域へ移行したときの遅延時間を設定してこれを計測するものであり、上記高負荷領域にある間は移行タイマが繰り返しセットし直されるだけで実質的にカウントダウンされることはない。
【0062】
また、上記ステップS2で硫黄脱離制御許可フラッグFSREが「1」であると判定されたときは、それに続いて図6のステップS30で、N1≦Ne≦N2かつf(Pe4)≦Pe≦f(Pe3)の所定運転領域Cにあるか否かが判定され、所定運転領域になければステップS18以降の処理に移る。
【0063】
ステップS30で所定運転領域Cにあることが判定されたときは、図6のステップS31以降の硫黄脱離制御に移行する。
【0064】
すなわち、ステップS31で理論空燃比もしくはこれより多少リッチな空燃比となるように噴射量QPが算出され、続いてステップS32で吸気行程と圧縮行程の分割噴射を行うようにその各噴射パルス幅TPS,TDS及び噴射タイミングINJPS,INJDSが算出される。この場合、噴射パルス幅は噴射量QPをパルス幅に換算した値f(QP)と分割比aとから、TPS=f(QP)×a,TDS=f(QP)×(1−a)と演算される。
【0065】
続いてステップS33,S34でEGR弁開度EGRVの算出及び点火タイミングIGTの算出が行われる。この場合、EGR弁開度EGRVは、エンジン回転数及び負荷に応じた値fEGRP(Ne,Pe)に1より小さい補正係数KEGRが掛けられることにより、通常運転時よりも小さい値とされる。また、点火タイミングIGTは、エンジン回転数及び負荷に応じた進角値fIGTP(Ne,Pe)からリタード補正量KIGが減じられることにより、通常運転時よりリタードされる。
【0066】
そして、EGR制御タイミングとなれば上記EGR弁開度EGRVとなるようにEGR弁38が制御され(ステップS35,S36)、分割噴射のうちの先の噴射タイミングINJPSとなればパルス幅TPSでインジェクタ22からの燃料噴射が実行され(ステップS37,S38)、後の噴射タイミングINJDSとなればパルス幅TDSでインジェクタ22からの燃料噴射が実行され(ステップS39,S40)、点火タイミングIGTとなれば点火が実行される(ステップS41,S42)。
【0067】
さらに、上記ステップS31〜S42の硫黄脱離制御によりNOx触媒から硫黄が脱離されるので、硫黄脱離度SREの推定が行われる(ステップS43)。この硫黄脱離度SREの推定の仕方としては、例えば、エンジン回転数Ne及び負荷Peに応じてマップから単位期間当りの量fSRE(Ne,Pe)が求められ、これが累計される。そして、上記硫黄脱離度SREが設定値KSRE以上となったか否かが判定され(ステップS44)、設定値KSREに達していなけばそのままリターンされる。一方、硫黄脱離度SREが設定値KSRE以上になれば、硫黄脱離制御許可フラッグFSREが「0」にリセットとされる(ステップS45)とともに、硫黄吸収量GSA及び硫黄脱離度SREの各推定値が「0」にリセットされ(ステップS46)、さらに、移行タイマがセットされてから、リターンする。
【0068】
上記硫黄脱離制御が終了した直後に運転状態が成層燃焼運転領域に移行すれば、ステップS2の判定がNO(フラッグFSREが「0」)、それに続くステップS3の判定かYES(成層燃焼領域)、それに続くステップS4の判定がYES(移行タイマセット中)となる。また、所定高負荷域(ステップS28での判定がYESとなる運転域)から成層燃焼領域へ移行したときも同様となる。これらの場合は、ステップS18以降の処理が行われ、つまり、均一燃焼領域にあるときと同様に、空燃比が理論空燃比とされつつ、燃料噴射が吸気行程で行われる。
【0069】
この場合、フローチャート中では示していないが別のルーチンによりリーン運転時と比べて吸入空気量を少なくするようにスロットル弁が制御される。また、EGR弁開度は運転状態に応じて設定されるが、EGR率がこの場合には比較的大きくなるように、運転状態とEGR弁開度との関係が予め設定されている。また、点火時期は運転状態に応じた基本点火時期とされ、硫黄脱離制御時と比べるとアドバンスされる。
【0070】
このような制御が所定の遅延時間だけ行われ、遅延時間が経過すると、移行タイマがタイムアップしてステップS4の判定がNOに変ることにより、本来の成層燃焼領域での制御であるステップS5以降の処理に移る。
【0071】
以上のような当実施形態の制御装置を備えた筒内噴射式エンジンによると、基本的な制御としては、運転状態が低負荷低回転側の成層燃焼領域Aにあるとき、空燃比がリーンとされつつ圧縮行程で燃料が噴射されて成層燃焼が行われることにより燃費が改善される。そして、このリーン運転状態では上記NOx触媒35によって排気ガス中のNOxが吸収される。
【0072】
運転状態が高負荷側や高回転側の均一燃焼領域Bにあるときには、空燃比が理論空燃比もしくはそれよりリッチとされつつ吸気行程で燃料が噴射されて均一燃焼が行われる。そして、運転状態が成層燃焼領域Aから均一燃焼領域Bに移行したときに、空燃比が理論空燃比もしくはそれよりリッチの状態に変化することにより、成層燃焼領域Aでのリーン運転中にNOx触媒35に吸蔵されていたNOxが放出され、そのNOxが排気ガス中のCOなどにより還元される。なお、上記NOx触媒35は理論空燃比付近において三元触媒と同様に三元浄化機能を有するので、均一燃焼領域Bにおいて略理論空燃比で運転されているときはNOx及びCO、HCが浄化される。
【0073】
また、硫黄吸収量が所定値以上になり、かつ、運転状態が図2中の運転領域C内にある状態となったときには硫黄脱離制御が行われる。この制御では空燃比がリッチとされるとともに吸気行程と圧縮行程の分割噴射が行われ、この吸気・圧縮行程分割噴射によると、後の噴射により点火プラグ付近に局部的にリッチな混合気が形成されて、着火直後の燃焼速度は速くなるが、酸素が少ないことからその燃焼によりCOが発生し易くなり、また、先の噴射により燃焼室周辺部に均一でリーンな混合気が形成されて、燃焼期間の後半において燃焼が緩慢になり、点火時期をリタードとさせたのと同様の効果が得られて、排気温度が高められる。さらに、EGR弁開度の補正によってEGR量が少なくされることと、点火時期がリタードされることとによっても排気ガス温が高められる。これらの作用により、硫黄の脱離が促進される。
【0074】
ところで、触媒温度とリーン空燃比でのNOx吸収率との関係は図7に実線で示すようになり、特定温度域(250°C程度から400°C程度まで)でNOx吸収率が高くなり、この温度域より触媒温度が高くなるとNOx吸収率が低下する。一方、硫黄脱離性能は図7中に一点鎖線で示すように450°C乃至500°C程度以上の高温度で高められ、硫黄脱離制御にはこのような高温度に触媒が加熱されている。このため、硫黄脱離制御の終了直後に成層燃焼領域Aに移行すると、触媒温度がNOx吸収率の高い温度域よりも高温となる。また、所定高負荷域から成層燃焼領域Aに移行したときも同様に触媒温度が高くなる。
【0075】
このような場合に、上記ステップS4等の処理によりリーンへの空燃比の変更が遅延される。そしてこの遅延期間中に、空燃比が理論空燃比とされることにより、NOx触媒のNOx還元作用が得られる状態が維持され、NOx浄化性能の悪化が避けられる。また、燃料噴射が吸気行程で行われることにより、硫黄脱離制御時のような吸気・圧縮行程分割噴射と比べると排気ガス温度が低くなり、高負荷の均一燃焼領域内で均一燃焼が行われているときと比べても負荷が低くて燃料噴射量が少ないため、排気ガス温度が低くなる。
【0076】
さらに、図1に示すEGR手段のEGR通路37から低温の排気ガスの還流が行われて、そのEGR量が比較的多くなるようにEGR弁38が制御されることにより、エンジンの燃焼室から排出されるNOxの量が低減されるとともに、燃焼温度及び排気ガス温度が引き下げられる。また、硫黄脱離制御時に行われていた点火時期のリタードが停止されることによっても排気ガス温度を低くする作用が得られる。
【0077】
このように排気ガス温度が低くされることにより、触媒温度がNOx吸収率の高い温度域まで比較的速やかに低下するため、移行タイマによる遅延時間は比較的短く設定しておけばよい。そして、遅延時間の経過後は空燃比がリーンに変更されて成層燃焼が行われるが、そのときには触媒温度がNOx吸収率の高い温度域まで低下しているため、NOx吸収による浄化が良好に行われることとなる。
【0078】
なお、本発明の具体的構成は上記実施形態に限定されず、種々変更可能であり、以下に他の実施形態を説明する。
【0079】
EGR手段としては、図1中に示すように排気マニフォールドから所定距離以上離れた排気通路下流側からEGRクーラー39を介して低温の排気ガスを還流するようにしたEGR手段のほかに、比較的高温の排気ガスを還流させる高温側EGR手段を設け、リーン運転領域における低負荷低回転領域では、燃焼安定性を確保するとともに触媒温度が低下しすぎることを避けるため、高温側EGR手段によって排気ガスを還流するようにしてもよい。
【0080】
高温側EGR手段は、図示しないが、排気通路上流の排気マニフォールドもしくはその近傍から高温の排気ガスを、EGRクーラーを通さずに吸気通路に還流させるように構成すればよい。
【0081】
あるいは、図8に示すように吸気弁の開閉タイミングを可変とすることにより吸気弁と排気弁の開弁オーバーラップ期間を可変とするバルブタイミング可変機構を設け、高温側EGR手段は上記開弁オーバーラップ期間を増大させるようにバルブタイミング可変機構を制御することにより内部EGRを行なわせるものとしてもよい。この場合、リーン運転領域における低負荷低回転領域では、図8に破線で示すように吸気弁の開閉タイミングを早くして開弁オーバーラップ期間を大きくし、NOx触媒の温度が所定値以上の状態でリーン運転領域に移行したときの遅延期間中には、図8に実線で示すように吸気弁の開閉タイミングを遅くして開弁オーバーラップ期間を小さくするようにバルブタイミング可変機構を制御しつつ、図1に示すEGR手段で外部EGRを行なわせるようにしておけばよい。
【0082】
また、上記実施形態では、図4のステップS4で移行タイマがセット中であると判定されたとき(NOx触媒の温度が所定値以上の状態で成層燃焼領域に移行した場合の遅延期間中)に、均一燃焼領域にある場合と同様のステップS18以降の処理を行なうようにしているが、図9に示すような処理を行なうようにしてもよい。
【0083】
すなわち、図9の処理は図4のステップS4の判定がYESの場合に続くものであって、ステップS51で理論空燃比となるように噴射量QPが算出されるとともに、燃料噴射を吸気行程内で2回に分割して行なうように、ステップS52で各噴射の噴射パルス幅TP1,TP2及び噴射タイミングINJP1,INJP2が演算される。この場合、各噴射の噴射パルス幅TP1,TP2は、噴射量QPをパルス幅に換算した値と予め設定した分割比とから求められる。また、各噴射タイミングINJP1,INJP2は、図10に示すように、吸気行程を3分割した前期、中期、後期のうちの前期から中期にかけての期間内に噴射が開始されるように設定されている。
【0084】
続いてステップS53でEGR弁開度EGRVが求められ、この場合にEGR率が30%以上に大きくなるようなEGR弁開度とされる。さらに、ステップS54で点火タイミングIGTがエンジン回転数及び負荷に応じて求められる。
【0085】
そして、EGR制御タイミングとなれば上記EGR弁開度EGRVとなるようにEGR弁38が制御され(ステップS55,S56)、分割噴射のうちの先の噴射タイミングINJP1となればパルス幅TP1でインジェクタ22からの燃料噴射が実行され(ステップS57,S58)、後の噴射タイミングINJP2となればパルス幅TP2でインジェクタ22からの燃料噴射が実行され(ステップS59,S60)、点火タイミングIGTとなれば点火が実行される(ステップS61,S62)。
【0086】
この実施形態によっても、硫黄脱離制御の終了直後に成層燃焼領域Aに移行した場合や所定高負荷域から成層燃焼領域Aに移行した場合に、リーンへの空燃比の変更が遅延されて、その遅延期間中に空燃比が理論空燃比とされることにより、NOxが還元される状態が維持されて、NOx浄化性能の悪化が避けられる。また、この実施形態では上記遅延期間中に燃料噴射が吸気行程の前期から中期にかけての期間内に分割して行われ、このようにすると噴射燃料の拡散、均一化及び空気とのミキシングが良好に行われることにより、燃焼効率が高められる。この燃焼効率の向上に伴い、吸気行程一括噴射と比べても排気ガス温度がさらに低くなる。
【0087】
その上、この吸気行程分割噴射により燃焼安定性が高められるため、EGR量を増量することが可能となり、この運転領域が比較的低負荷低回転の領域(本来の成層燃焼領域A)であるために、例えばEGR率を30%以上としても燃焼安定性が充分に確保される。そして、図1中に示すEGR手段により低温の排気ガスを還流させるようにしつつこのようにEGR率を大きくすることにより、排気ガス温度がより低減される。
【0088】
このように吸気行程分割噴射とEGR率の増大により、NOx吸収率の高い温度域への触媒温度の低下が促進されることとなる。
【0089】
【発明の効果】
以上のように本発明は、高温状態に触媒が加熱されている硫黄脱離制御直後に上記リーン運転領域に移行したとき、リーン空燃比への変更を遅延し、その遅延期間中に略理論空燃比とするとともに吸気行程内でインジェクタから燃料を噴射させるようにし、かつ、排ガス温度低減手段により排ガス温度を低減するとようにしているため、触媒温度が所定値以上に高い状態でのリーン運転域への直後はNOxを還元により浄化し、かつ、速やかに触媒温度を所定値以下に低下させて、その後にリーン空燃比となったときにNOxの吸収による浄化を良好に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の一実施形態を示す全体概略図である。
【図2】燃料噴射の制御等のための運転領域の設定を示す説明図である。
【図3】成層燃焼領域、均一燃焼領域及び所定運転領域での硫黄脱離制御時における燃料噴射のタイミング等を示す説明図である。
【図4】制御の具体例を示すフローチャートを3分割したうちの第1の部分である。
【図5】上記フローチャートの第2の部分である。
【図6】上記フローチャートの第3の部分である。
【図7】触媒温度とリーン空燃比でのNOx吸収率及び硫黄脱離性能との関係を示すグラフである。
【図8】バルブ機構可変機構を設けた場合のバルブタイミングを示す説明図である。
【図9】触媒温度が所定値以上の状態で成層燃焼領域へ移行したときの制御の別の実施形態を示すフローチャートである。
【図10】図9に示す制御における燃料噴射のタイミング等を示す説明図である。
【符号の説明】
10 エンジン本体
15 燃焼室
20 点火プラグ
21 点火装置
22 インジェクタ
35 NOx触媒
37 EGR通路
38 EGR弁
50 ECU
51 遅延手段
52 空燃比制御手段
53 燃料噴射制御手段
54 排ガス温度低減手段
Claims (10)
- 酸素過剰雰囲気でNOxを吸収して酸素濃度が減少するに伴いNOxを放出するNOx吸収材を有するNOx触媒をエンジンの排気通路に具備するとともに、燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタを備え、かつ、空燃比が理論空燃比よりも大きくされるリーン運転領域と空燃比が理論空燃比もしくはそれより小さくされる運転領域とが予め設定されている筒内噴射式エンジンにおいて、NOx触媒がNOx吸収性を阻害する所定の硫黄吸収状態となったとき、NOx触媒の温度をNOx吸収率が高い所定温度幅の特定温度域よりも高い高温状態に加熱して硫黄を脱離させる硫黄脱離制御を行う手段と、硫黄脱離制御直後に上記リーン運転領域に移行させるとき、理論空燃比よりも大きい空燃比への変更を遅延する遅延手段と、その遅延期間中に吸入空気量の調整により空燃比を略理論空燃比とする空燃比制御手段と、上記遅延期間中に吸気行程内でインジェクタから燃料を噴射させる燃料噴射制御手段と、上記遅延期間中に排ガス温度を低減する排ガス温度低減手段とを備えたことを特徴とする筒内噴射式エンジンの制御装置。
- NOx触媒が所定の硫黄吸収状態となったときの硫黄脱離制御は、インジェクタからの燃料噴射を吸気行程と圧縮行程とに分割して行わせる制御を含むことを特徴とする請求項1記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- 上記燃料噴射制御手段は、上記遅延期間中に、インジェクタからの燃料噴射を複数回に分割して行わせ、かつ、吸気行程を3等分した前期、中期、後期のうちの前期から中期にかけての期間内に各噴射を開始させるように制御することを特徴とする請求項1又は2記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- 排ガス温度低減手段は、上記遅延期間中に、排気ガスの一部を吸気系に還流させるEGR手段を、EGR率が増加するように制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- 排ガス温度低減手段は、上記遅延期間中に、EGR率が30%以上となるようにEGR手段を制御することを特徴とする請求項4記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- NOx触媒が所定の硫黄吸収状態となったときの硫黄脱離制御は、点火時期をMBTよりもリタードさせる制御を含むものであり、硫黄脱離制御直後に上記リーン運転領域に移行したときの上記遅延期間中に上記排ガス温度低減手段は、点火時期を硫黄脱離制御時と比べてアドバンスさせるように制御するとともに、EGR率が増加するようにEGR手段を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- EGR手段は、排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路中に還流ガス冷却手段を備えることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- EGR手段は、排気マニフォールドから所定距離離れたエンジン下方位置ないしはそれより下流の排気通路から排気ガスを取出すことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- 比較的低温の排気ガスを還流させるEGR手段のほかに、比較的高温の排気ガスを還流させる高温側EGR手段を備え、リーン運転領域における低負荷低回転領域では上記高温側EGR手段を駆動し、NOx触媒の温度が所定値以上の状態で上記リーン運転領域に移行したときの上記遅延期間中には比較的低温の排気ガスを還流させるEGR手段を駆動するようにしたことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
- 吸気弁の開閉タイミングを可変とすることにより吸気弁と排気弁の開弁オーバーラップ期間を可変とするバルブタイミング可変機構を備え、高温側EGR手段は上記開弁オーバーラップ期間を増大させるようにバルブタイミング可変機構を制御することにより内部EGRを行わせるものであり、NOx触媒の温度が所定値以上の状態で上記リーン運転領域に移行したときの上記遅延期間中には吸気弁の開閉タイミングを遅らせて上記開弁オーバーラップ期間を小さくするようにバルブタイミング可変機構を制御することを特徴とする請求項9記載の筒内噴射式エンジンの制御装置。
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