JP4198354B2 - 光学活性ジホスフィン配位子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規光学活性ジホスフィンに関する。更に詳細には、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどの金属と錯体を形成することによって、種々の不斉合成反応における有用な触媒となり得る新規なホスフィン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、ロジウム、ルテニウム、パラジウムなどの金属元素にキラルな第3級ホスフィン化合物を配位させた錯体の中には、不斉合成用触媒として優れた性能を有するものが多く知られている。第4版 実験化学講座26 有機合成VIII 第25頁ないし第26頁に列挙されているように、この触媒性能を高めるために様々な構造のホスフィン化合物がこれまで多数開発されている。その中の代表例として、軸不斉ジホスフィン化合物とそれ以外のホスフィン化合物を下記に示す。
【0003】
軸不斉ジホスフィン化合物
【化3】
【0004】
軸不斉以外のジホスフィン化合物
【化4】
【0005】
ここで使用する略号は下記のとおりである。
BINAP 2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル
CHIRAPHOS 2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン
DABINAP 2,2´−ビス(ジ−3,5−ジアルキルフェニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル
DIOP 4,5−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン
DIPAMP 1,2−ビス(2−メトキシフェニル−フェニルホスフィノ)エタン
SKEWPHOS 2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン
TolBINAP 2,2´−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル
TolSKEWPHOS 2,4−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)ペンタン
XylSKEWPHOS 2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)ペンタン
【0006】
これまで多数開発されたジホスフィン化合物の中で、軸不斉の光学活性ジホスフィン化合物をもつ金属触媒が、優れた性能を有するものであることが報告されている。
BINAPは、その中でも優れたものの一つである(特開昭55−61937号公報参照)。また、2,2´−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル(特開昭64−68386号公報参照)が、不斉合成反応に応用されていることが報告されている。
【0007】
また、TolBINAPのロジウム錯体(特開昭60−199898号公報参照)、BINAPとTolBINAPのルテニウム錯体(特開昭61−63690号公報参照)とDABINAPおよびこれを配位子とする遷移金属錯体(特開平3−255090号公報参照)については、不斉水素化反応、不斉異性化反応および不斉脱水素反応が良好な結果を持って行われたことが報告されている。
【0008】
最近、特開平11-189600号公報に記載されているジホスフィン−ルテニウム−ジアミン錯体触媒が、ケトン類の不斉水素化反応に高い性能を示すことが報告されおり、特に、軸不斉のジホスフィン化合物である光学活性BINAPからなる錯体触媒が、高い光学純度で光学活性アルコール化合物を与えている。
【0009】
以上、軸不斉のジホスフィン化合物をもつ金属触媒は、不斉合成反応に利用され高い性能を有しているが、原料である軸不斉の光学活性ジホスフィン化合物は、▲1▼合成が多段階である、▲2▼光学分割工程を要する等の理由により、非常に高価な場合が多い。そのため、軸不斉のジホスフィン化合物をもつ金属触媒は、工業的に用いるには必ずしも好適ではない。
これに対して、軸不斉以外のジホスフィン化合物は、▲1▼合成が容易であり、▲2▼光学分割工程が不要であり安価に製造できることから、不斉合成反応への利用が期待される。
【0010】
軸不斉以外のジホスフィン化合物をもつ金属触媒のうち、ジホスフィン−ルテニウム−ジアミン錯体触媒以外の金属錯体が多くの不斉合成反応に利用されている。例えば、DIOP、CHIRAPHOS、およびDIPAMP配位子をもつ光学活性ロジウム錯体が、エナミドの不斉還元反応に有効であると報告されている(第4版 実験化学講座26 有機合成VIII 第27頁)。
【0011】
また、SKEWPHOS、TolSKEWPHOS、およびXylSKEWPHOS配位子をもつ金属触媒も不斉合成反応に利用されている。
例えば、Macromolecules,32,4183-4193(1999)に(meso−skewphos)Pd(OCOR)( R=CH3,CF3)と(rac−skewphos)Pd(OCOR)(R=CH3,CF3)錯体を触媒に用い、エテンと一酸化炭素の重合反応が報告されている。
また、特開2000−26407号公報には、ジホスフィン化合物(SKEWPHOSあるいは、TolSKEWPHOS)とロジウム錯体の存在下に不斉ヒドロホルミル化を行い、カルバペネム系抗生物質の中間体化合物が製造されることが記載されている。
【0012】
さらに、Tetrahedron Letters,Vol.38,No.37,6603-6606(1997)にRuBr2(skewphos)錯体を触媒に用い、β−ケトエステル類、β−ケトホスフィネート類、およびフェニルチオスルフィド類の水素化反応が良好な結果を持って行われたことが報告されているが、性能はBINAP錯体触媒より劣る。
【0013】
また、Tetrahedron:Asymmetry,9,3241-3246(1998)に [Rh(Tolskewphos)(シクロオクタ−1,5−ジエン)]BF4と[Rh(Xylskewphos)(シクロオクタ−1,5−ジエン)]BF4錯体を触媒に用い、2-(6’-メトキシ-2’-ナフチル)プロペン酸の水素化反応がそれぞれ13%ee、26%eeの光学純度で行われたことも報告されている。
【0014】
先に軸不斉のジホスフィン化合物である光学活性BINAPをもつジホスフィン−ルテニウム−ジアミン錯体触媒が、ケトン類の不斉水素化反応に高い性能を示し、高い光学純度で光学活性アルコール化合物を与えることを述べたが、BINAP以外の光学活性ジホスフィン化合物をもつルテニウム錯体触媒も報告されている。例えば、CHIRALITY 12,514−522(2000)に光学活性SKEWPHOSと光学活性ジフェニルエタンジアミンをもつルテニウム錯体を触媒とするアセトフェノンの不斉水素化反応が報告されているが、得られる光学活性アルコールの光学純度は84%eeであり、光学活性BINAPをもつジホスフィン−ルテニウム−ジアミン錯体触媒と比較して低く、真に実用的な錯体触媒とは言えない。
【0015】
以上のように、軸不斉以外の光学活性ジホスフィン化合物をもつ金属触媒も多くの不斉合成反応に利用され、高い性能を示す錯体の開発がなされている。しかし、軸不斉以外の光学活性ジホスフィン化合物と光学活性ジアミン化合物をもつ金属触媒によるケトン類の不斉水素化反応は、反応性とエナンチオ選択性の面で満足いくものではない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、従来の軸不斉のジホスフィン化合物に比べて合成が容易かつ安価であり、およびこれを配位子とする遷移金属錯体が、様々な不斉合性反応において、転化率、選択性などの面で従来の軸不斉以外の光学活性ジホスフィン化合物を有する触媒の触媒性能を遙かに上回る、新しいホスフィン化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、軸不斉以外の光学活性ジホスフィン化合物に種々の置換基を導入することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、 一般式(I)
【化5】
(R1およびR2は互いに同一または異なっていてもよく、置換基を有してもよい、鎖状または環状の炭素数1から20の炭化水素基であり、R3およびR4は互いに同一または異なっていてもよい、水素または炭素数1から3の炭化水素基であり、R5、R6、R7およびR8は互いに同一または異なっていてもよく、置換基を有してもよい、炭素数1から30の炭化水素基を示す。ただし、R1およびR2がメチル基であり、R3およびR4が水素である場合、R5、R6、R7およびR8はフェニル基、4−トリル基、および3,5−キシリル基からなる群から選択される基のいずれでもなく、ならびにR1およびR2がフェニル基であり、R3およびR4が水素である場合、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つはフェニル基ではない。)で表される光学活性ジホスフィン化合物に関する。
【0018】
また、本発明は、R1およびR2がメチル基であり、R3が水素であり、R4がメチル基であり、R5、R6、R7およびR8が互いに同一で、かつ、フェニル基、4−トリル基、および3,5−キシリル基からなる群から選択される、請求項1に記載の光学活性ジホスフィン化合物に関する。
【0019】
さらに、本発明は、R1およびR2がフェニル基であり、R3およびR4が水素であり、R5、R6、R7およびR8が同一で、かつ、4−トリル基、および3,5−キシリル基からなる群から選択される、前記光学活性ジホスフィン化合物に関する。
【0020】
そして、本発明は、R1およびR2がフェニル基であり、R3が水素であり、R4がメチル基であり、R5、R6、R7およびR8が互いに同一であり、かつ、フェニル基、4−トリル基、または3,5−キシリル基からなる群から選択される基である、前記光学活性ジホスフィン化合物に関する。
【0021】
そしてまた、本発明は、前記一般式(I)で表される光学活性ジホスフィン化合物を製造するための方法であって、ジアリールホスフィンオキシドとジメチルスルフィドボランを反応させ、ジアリールホスフィンボランを得る工程を含むことを特徴とする、前記方法に関する。前記ジアリールホスフィンボランをアルキルリチウムと反応させてリチウム塩を得て、さらにこれを光学活性ジオール体をメシル化あるいはトシル化した化合物と反応させ、ジホスフィンジボラン配位子を得る。その後、テトラフルオロボロン酸ジメチルエーテル錯体を用いてホスフィンボラン配位子の脱ボロン化を行うことにより、一般式(I)の化合物を得ることができる。
【0022】
本発明の光学活性ジホスフィン化合物は、既知の合成系を用いることによって容易に合成することができる。また、本発明の光学活性ジホスフィン化合物を配位子とする遷移金属錯体を触媒として用いることによって、各種ケトン類の不斉水素化反応を、従来より高い反応性および選択性で行うことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、以上のとおりの特徴をもつものであるが、以下に詳しくその実施の形態について説明する。まず、この発明の新規光学活性ジホスフィン化合物を表す一般式(I)において、R1、R2は同じであっても互いに異なってもよく、置換基を有してもよい、鎖状または環状の炭素数1から20の炭化水素基であり、R3、R4は同じであっても互いに異なってもよい、水素または炭素数1から3の炭化水素基であり、R5、R6、R7、R8は同じであってもお互いに異なってもよく、置換基を有してもよい、炭素数1から30の炭化水素基を示す。
【0024】
ここで、置換基を有してもよい、鎖状または環状の炭素数1から20の炭化水素基であるR1およびR2は、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、あるいは置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものはメチル基、エチル基、プロピル基、または置換若しくは無置換のフェニル基であり、特に好適なものはメチル基、フェニル基である。
また、炭素数1から3の炭化水素基であるR3およびR4は脂肪族の飽和炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が好適である。
そして、置換基を有してもよい、炭素数1から30の炭化水素基であるR5、R6、R7およびR8は、前記のR1、R2と同様のもののうちから適宜に選択されたものであってよい。例としてはフェニル基および置換フェニル基が挙げられ、フェニル基およびメチル基、エチル基またはプロピル基の1種又は2種以上が1から5個置換した置換フェニル基が好適である。特に、フェニル基、4−トリル基、および3,5−キシリル基が好適である。
【0025】
一般式(I)で表される光学活性ジホスフィン化合物の例として、以下の化合物が挙げられる。
[1]2位、4位にジフェニルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素数1から3の1個または2個のアルキル基置換基を有する、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジメチルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−エチルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジエチルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−3−エチル−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルペンタンなどが例示される。
【0026】
[2]2位、4位にジ−4−トリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素数1から3の1個または2個のアルキル基置換基を有する、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジメチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジエチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルペンタンなどが例示される。
【0027】
[3]2位、4位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素数1から3の1個または2個のアルキル基置換基を有する、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジメチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジエチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルペンタンなどが例示される。
【0028】
[4]2位、4位にジフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1から3の1個または2個のアルキル基置換基を有する、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどが例示される。
【0029】
[5]2位、4位にジ−4−トリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1から3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2、2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどが例示される。
【0030】
[6]2位、4位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1から3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノリル)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどが例示される。
【0031】
しかし、この発明に用いることのできる化合物は、これらに何ら限定されるものではない。
【0032】
本発明のホスフィン化合物の合成は、例えば次式のように行われる。
【化6】
【0033】
市販の臭化アリール(1)をマグネシウムと処理してグリニャール試薬(2)をつくり、これにジエチルホスファイトを加え反応させて、ジアリールホスフィンオキシド(3)を得る。これとジメチルスルフィドボランを反応させて、ジアリールホスフィンボラン(4)を得る。
【0034】
ジアリールホスフィンボラン(4)を得る際、一般にはジアリールホスフィンオキシド(3)を三塩化シランにより還元後ボロン化する二段階反応が用いられる。還元して得られるジアリールホスフィンは、酸化されやすく後処理工程で一部ジアリールホスフィンオキシド(3)に変換される。この混合物を酸化に安定なボロン化物に誘導し、精製を行い高純度のジアリールホスフィンボラン(4)を得るため、収率が低下する傾向があった。一方、本発明の発明者らは、ジアリールホスフィンオキシド(3)とジメチルスルフィドボランを反応することによって、還元を伴い一段階で高収率、高純度のジアリールホスフィンボラン(4)を得ることを見出した。そこで、本発明においては、ジアリールホスフィンボラン(4)を得るルートとして、前記のようにジアリールホスフィンオキシド(3)とジメチルスルフィドボランを反応させるルートを用いる。
【0035】
光学活性3−メチル−2, 4−ペンタンジオールは、J. Am. Chem. Soc., Vol.110,No.2, p629-631(1988)に記載されている方法によって、ルテニウム−BINAP錯体を触媒に用い、3−メチル−2,4−ペンタンジオンを水素加圧下、水素化反応を行い合成される。また、光学活性1,3−ジフェニルプロパンジオール(7)と光学活性2−メチル−1,3−ジフェニルプロパンジオール(8)は、特開昭63−316742号に記載されている方法によって、ルテニウム−BINAP錯体を触媒に用いて、それぞれ1,3−ジフェニルプロパンジオンと2−メチル−1,3−ジフェニルプロパンジオンを水素加圧下、水素化反応を行い合成される。
【0036】
この光学活性3−メチル−2,4−ペンタンジオール(6)と塩化p−トルエンスルホニルを反応させて、トシル化体(9)を得る。これに、(4)をアルキルリチウムで処理して得られたリチウム塩(5)を反応させ、ジホスフィンジボラン配位子(12)を得る。その後、既知の方法[Tetrahedron Vol.51, No.28, pp.7655-7666(1995)]により、テトラフルオロボロン酸ジメチルエーテル錯体を用いて脱ボロン化を行い、本発明の光学活性ホスフィン化合物である2,4−ビス(ジアリールホスフィノ)−3−メチルペンタン(15)を得る。また、光学活性1,3−ジフェニルプロパンジオール(7)、および、光学活性2−メチル−1,3−ジフェニルプロパンジオール(8)を用い、同様の操作により、本発明の光学活性ホスフィン化合物である1,3−ビス(ジアリールホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン(16)、および1,3−ビス(ジアリールホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン(17)を得ることができる。この方法で合成される光学活性ジホスフィン化合物は、上記の化合物に限定されるものではない。
【0037】
本発明の新規ジホスフィン化合物は、ルテニウム、ロジウム及びパラジウムなどの金属元素と錯体を形成する。これらのうち光学活性ルテニウム錯体触媒は、ケトン類の不斉水素化反応に用いられ光学活性アルコール化合物を与える。
【0038】
ここで、光学活性ルテニウム錯体は、下記に示した一般式(II)
RuXY(P−P) (II)
の光学活性ルテニウム−ジホスフィン錯体および一般式(III)
RuXY(P−P)(N−N) (III)
の光学活性ジホスフィン−ルテニウム−ジアミン錯体である。
【0039】
ここで、X、Yは同じでも異なってもよく、水素、ハロゲンやカルボキシル基または他のアニオン基を示すが、この場合の、その他のアニオン基としては各種のものであってよく、例えばアルコキシ基、ヒドロキシ基などが例示される。P-Pは、前記の新規光学活性ジホスフィン化合物を示す。また、N-Nは一般式(IV)
【化7】
で表される光学活性ジアミン化合物を示す。
【0040】
上記一般式(IV)において、R9、R10、R11およびR12は、互いに同一または異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよい、鎖状または環状である炭素数1から30の炭化水素基を示し、これらの基のうちの少なくとも一つは水素原子であり、R13、R14、R15およびR16は、互いに同一または異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよい、鎖状または環状である炭素数1から30の炭化水素基を示し、Zは置換基を有していてもよい、鎖状もしくは環状である炭素数1から10の炭化水素基または単結合を示す。ここで、前記の少なくとも一つの水素原子、置換基を有していてもよい、鎖状または環状である炭素数1から30の炭化水素基であるR9、R10、R11およびR12は、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、あるいは置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものはR9とR11が水素原子、R10とR12が水素原子、アルキル基、フェニル基またはフェニルアルキル基であるものであり、特に好適なものは全てが水素原子であるものである。
【0041】
また、水素原子、置換基を有してもよい、鎖状または環状の炭素数1から30の炭化水素基であるR13、R14、R15およびR16は、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、あるいは置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。前記炭化水素基としては、例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基と、これら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基および置換フェニル基であり、特に好適なものは水素原子、イソプロピル基、フェニル基、4-メトキシフェニル基である。
【0042】
一般式(IV)で表される光学活性ジアミン化合物の例として、1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘプタンジアミン、2,3−ジメチルブタンジアミン、1−メチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、 1−イソプロピル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−ベンジル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジナフチルエチレンジアミンなどが例示される。
さらに用いることのできる光学活性ジアミン化合物は、例示した光学活性エチレンジアミン誘導体に限るものではなく、光学活性なプロパンジアミン、ブタンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン誘導体等も用いることができる。
【0043】
一般式(II)で表される光学活性ルテニウム錯体の合成は、光学活性ジホスフィン化合物と、原料であるルテニウム錯体と反応することにより合成できる。また、一般式(III)で表される光学活性ルテニウム錯体の合成は、一般式(II)で表されるルテニウム錯体と、光学活性ジアミン化合物と反応することにより合成できる。
【0044】
一例として、一般式(II)で表される光学活性ルテニウム錯体の合成は、Tetrahedron:Asymmetry,5,665−674(1994)に記載されているGenetらの方法によって実施される。すなわち、出発原料のビス(メチルアリル)ルテニウム(シクロオクタ−1,5−ジエン)錯体と光学活性ジホスフィン化合物を反応し得られるビス(メチルアリル)ルテニウム(P-P)錯体とハロゲン化水素と反応させ合成する。得られる光学活性ルテニウム錯体は、反応試剤である有機化合物を1ないし複数個含む場合がある。ここで、有機化合物は配位性の有機溶媒を示し、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキシルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリル、DMF、N-メチルピロリドン、DMSO、トリエチルアミンなどヘテロ原子を含む有機溶剤などが例示される。
【0045】
一般式(III)で表される光学活性ルテニウム錯体は、DMF中で一般式(II)で表される光学活性ルテニウム錯体と光学活性ジアミン化合物を反応させ合成できる。
その他の合成法として、ビス(メチルアリル)ルテニウム(シクロオクタ−1,5−ジエン)錯体を原料に用いる代わりに、[2塩化ルテニウム(シクロオクタ−1,5−ジエン)]多核体等のジエンが配位したルテニウム錯体、あるいは、[2塩化ルテニウム(ベンゼン)]多核体、[2塩化ルテニウム(p−シメン)]多核体等の芳香族化合物が配位したルテニウム錯体を用いて、光学活性ジホスフィン化合物と光学活性ジアミン化合物を順次、もしくは、逆の順で、または同時に、反応する方法も用いられる。例えば、DMF中で[2塩化ルテニウム(ベンゼン)]多核体と光学活性ジホスフィン化合物とを反応することにより、RuXY (P-P)(dmf)n(dmfはジメチルホルムアミドを示す。nは1または2以上の整数を示す。)が合成できる。その後、RuXY (P-P)(dmf)nに光学活性ジアミン化合物を加えると、RuXY (P-P)(N-N)錯体を与える。
一般式(II)および一般式(III)の光学活性ルテニウム錯体を用いた水素化反応は、それぞれ次の手法で行われる。
【0046】
つまり、一般式(II)で表される光学活性ルテニウム錯体は、 X、Yが水素の場合は、塩基を添加することなしに、光学活性ジアミン化合物存在下、ケトン類と混合後、水素圧をかけるか、または、水素供与体の存在下に攪拌する。これにより、ケトン類の水素化を行うことができる。触媒に対してケトン類を大過剰に用いた場合には、塩基を添加した方が望ましい場合もある。一方、X、Yが、水素以外の基である場合には、塩基と光学活性ジアミン化合物存在下、ケトン類と混合後、水素圧をかけるか、または、水素供与体の存在下に攪拌することにより、ケトン類の水素化を行うことが有効でもある。ここで、光学活性ジアミン化合物は前記の一般式(IV)と同様なものから適宜に選択されたものであってよい。また、添加する光学活性ジアミン化合物の使用量は、一般式(II)で表されるルテニウム錯体に対し、0.5〜2.5等量で好ましくは1〜2等量である。
【0047】
ここで、塩基は、KOH、KOCH3、KOCH(CH3)2、KOC (CH3)3 、KC10H8、LiOH、LiOCH3、LiOCH(CH3)2、LiOC(CH3)3等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩あるいは4級アンモニウム塩等が用いられる。また、添加する塩基の使用量は、一般式(II)で表されるルテニウム錯体に対し、0.5−100等量、好ましくは、2−40当量である。ここで、水素供与体とは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール、およびギ酸を示す。
以上のとおり、触媒として使用する一般式(II)で表される光学活性ルテニウム錯体と光学活性アミンと塩基の3成分は、不斉水素化反応が円滑に進行し高い不斉収率を達成するためには必要不可欠の成分であり、1成分たりとも不足すると十分な反応活性で高い光学純度の光学活性アルコールは得られない。
【0048】
一般式(III)で表される光学活性ルテニウム錯体は、X、Yが水素の場合は、塩基を添加することなしにケトン類と混合後、水素圧をかけるか、または、水素供与体の存在下に攪拌する。これにより、ケトン類の水素化を行うことができる。触媒に対してケトン類を大過剰に用いた場合には、塩基を添加した方が望ましい場合もある。一方、X、Yが、水素以外の基である場合には、塩基存在下ケトン類と混合後、水素圧をかけるか、または、水素供与体の存在下に攪拌することにより、ケトン類の水素化を行うことが有効でもある。ここで、塩基および水素供与体とは前述と同様なものから適宜に選択されたものであってよい。
【0049】
以上のとおり、触媒として使用する一般式(III)で表される光学活性ルテニウム錯体と塩基の2成分は、不斉水素化反応が円滑に進行し高い不斉収率を達成するためには必要不可欠の成分であり、1成分たりとも不足すると十分な反応活性で高い光学純度の光学活性アルコールは得られない。
【0050】
なお、一般式(II)および一般式(III)で表される光学活性ルテニウム錯体中の光学活性ジホスフィン化合物は、いずれも(+)体または(−)体のいずれかとして得られるが、その表示は省略した。また、これらの(+)体または(−)体のいずれかを選択することにより、所望する絶対位置の光学活性アルコール体を得ることができる。また、一般式(II)で表される光学活性ルテニウム錯体中のジホスフィン化合物の絶対構造と添加する光学活性ジアミン化合物の絶対構造の組み合わせ、および一般式(III)で表される光学活性ルテニウム錯体中のジホスフィン化合物の絶対構造とジアミン化合物の絶対構造の組み合わせが、高い光学収率を得るためには重要であり、例えば後述の比較例で示すように(S,S)-SKEWPHOS誘導体と(S)−ジアミン化合物の組み合わせが最適であり(R)−体のアルコールを与える。(S,S)−ジホスフィン化合物と(R)−ジアミン化合物の組み合わせは反応は進行するものの、不斉収率が低下する。
【0051】
【実施例】
以下に、実施例、使用例、応用例および比較例をあげて、本発明を更に詳しく説明する。 なお、以下の測定には次の機器を用いた。
NMR:LA400型装置(400MHz)
(日本電子社製)
内部標準物質:1H−NMR…テトラメチルシラン
外部標準物質:31P−NMR…85%リン酸
光学純度:ガスクロマトグラフィー
Chirasil−DEX CB(0.25mm×25m、DF=0.25μm)
(CHROMPACK社製)
【0052】
〔実施例1〕 (S,S)−3−メチル−XylSKEWPHOS(15)の合成
(1)ジ−(3,5−キシリル)ホスフィンオキシド(3)の合成
300mlの4口フラスコにマグネシウム(3.42g,140.7mmol)を仕込み、アルゴン置換した。そこに、テトラヒドロフランを浸る程度加え、5−ブロモ−m−キシレン(25.47g,137.6mmol)のテトラヒドロフラン70ml溶液を室温で55分かけて滴下した。滴下終了後、45分間60℃で攪拌した。次に、ジエチルホスファイト(6.0ml,45.6mmol)のテトラヒドロフラン50ml溶液を室温で40分かけて滴下した。滴下終了後、3時間還流した。反応溶媒を留去し、酢酸エチルを加え氷冷後、10%塩酸水150mlを加え反応停止した。飽和炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗ジ−(3,5−キシリル)ホスフィンオキシドを得た。アルミナカラムにより精製し、ジ−(3,5−キシリル)ホスフィンオキシド10.56gを得た。その収率は、90%であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ7.95(d,1H),7.26−7.32(m,6H),2.35(s,12H)
31P−NMRスペクトル(CDCl3):δ22.9(s)
【0053】
(2)ジ−(3,5−キシリル)ホスフィンボラン(4)の合成
アルゴン置換した100mlシュレンク管に、ジ−(3,5−キシリル)ホスフィンオキシド(2.0g,7.74mmol)を仕込み、ジエチルエーテル20mlに溶解した。これに、ジメチルスルフィドボラン(0.92ml,9.69mmol)を氷冷下に滴下した。同温で15分攪拌後、室温で一晩攪拌した。アルゴン雰囲気で反応液をガラスフィルターで濾過し、溶媒留去して、粗ジ−(3,5−キシリル)ホスフィンボラン1.82gを得た。その収率は、92%であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ7.26(d,4H),7.24(s,2H),6.16(dq,1H),2.33(s,12H)
31P−NMRスペクトル(CDCl3):δ1.98(d)
【0054】
(3)(S,S)−3−メチル−2,4−ペンタンジトシレート(9)の合成
50mlのナス型フラスコに、p−TsCl(3.55g,18.62mmol)、ピリジン(1.72ml,21.27mmol)および塩化メチレン2mlを仕込んだ。そこに、(R,R)−3−メチル−2,4−ペンタンジオールの塩化メチレン5ml溶液を氷冷下ゆっくり滴下した。室温に戻し、一晩攪拌した。反応液に酢酸エチル60mlを加え、10%塩酸水(25ml×2)、飽和炭酸水素ナトリウム水25mlおよび飽和食塩水25mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗(S,S)−3−メチル−2,4−ペンタンジトシレートを得た。シリカゲルカラムにより精製し、(S,S)−3−メチル−2,4−ペンタンジトシレート1.92gを得た。その収率は、52%であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ7.78(dd,4H),7.33(dd,4H),4.66(m,2H),2.45(d,6H),1.90(m,1H),1.21(t,6H),0.96(d,3H)
【0055】
(4)(S,S)−3−メチル−XylSKEWPHOSボラン(12)の合成
アルゴン置換した150mlシュレンク管に、ジ−(3,5−キシリル)ホスフィンボラン(1.82g,7.11mmol)を仕込み、テトラヒドロフラン12mlに溶解した。これに、n−ブチルリチウム(4.55ml,7.14mmol)を−78℃で滴下し、同温で15分攪拌後、室温で20分攪拌した。次いで、(S,S)−3−メチル−2,4−ペンタンジトシレート(1.08g,2.49mmol)のジメチルホルムアミド12ml溶液を−40℃で滴下し、室温で一晩攪拌した。反応液にジエチルエーテル60mlを加え、10%塩酸水40mlを氷冷下で加え反応を停止後、水(65ml×3)および飽和食塩水65mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗(S,S)−3−メチル−XylSKEWPHOSボランを得た。シリカゲルカラムにより精製し、(S,S)−3−メチル−XylSKEWPHOSボラン638mgを得た。その収率は、43%であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ6.92−7.45(m,12H),3.18(m,1H),2.54(m,1H),2.29(24H),1.09(dq,6H),0.95(d,3H)
31P−NMRスペクトル(CDCl3):δ20.37(s)
【0056】
(5)(S,S)−3−メチル−XylSKEWPHOS(15)の合成
アルゴン置換した100mlシュレンク管に、(S,S)−3−メチル−XylSKEWPHOSボラン(638mg,1.07mmol)を仕込み、塩化メチレン11mlに溶解し、凍結脱気した。これに、テトラフルオロボロン酸ジメチルエーテル錯体(1.31ml,10.8mmol)を−5℃で滴下し、同温で15分攪拌後、室温で一晩攪拌した。反応液にジエチルエーテル30mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水35mlを氷冷下で加え反応を停止後、水(30 ml×2)および飽和食塩水30mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗(S,S)−3−メチル−XylSKEWPHOS 581mgを得た。その収率は、96%であった。1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ6.83−7.36(m,12H),2.72(m, H),2.20(dd,24H),1.62(m,H),1.26(d,3H),0.9(m,6H)
31P−NMRスペクトル(CDCl3):δ−3.17(s)
【0057】
〔使用例1〕 RuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen]の調製
(1)Ru [(S,S)−3−メチル−Xylskewphos](メチルアリル)2の調製
アルゴン置換した100mlシュレンク管に (S,S)−2−メチル−Xylskewphos (581mg,1.03mmol)、アクロス社製Ru(シクロオクタ−1,5−ジエン)(メチルアリル)2(328mg,1.03mmol)を仕込んだ。その後、ヘキサン25mlを加え70℃で5時間攪拌した。不溶物をガラスフィルターで濾過し、溶媒留去後、精製せずに次の反応に用いた。
(2)RuBr2 [(S,S) −3−メチル−Xylskewphos]の調製
Ru [(S,S)−3−メチル−Xylskewphos](メチルアリル)2(723mg、0.929mmol)をアセトン65mlに溶解し、0.2M-HBrメタノール溶液(9.3ml、1.86mmol)を加え、脱気を行い室温で1時間攪拌した。溶媒留去後、精製せずに次の反応に用いた。
(3)RuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen]の調製
RuBr2 [(S,S) −3−メチル−Xylskewphos](379mg、0.458mmol)に(S)−DAIPEN(144mg,0.458mmol)を仕込み、アルゴン置換した。次いで、ジメチルホルムアミド(19ml)を加え、脱気を行い室温で一晩攪拌した。反応液をシリカゲルを詰めたガラスフィルターを通して濾過後、溶媒留去した。塩化メチレン/イソプロピルエーテルから再結晶し330mg(63%)を得た。
31P−NMRスペクトル(C6D6):major:δ67.45(d,J=49Hz),53.92(d,J=49Hz)
minor: 66.85(d,J=49Hz),51.96(d,J=49Hz)
【0058】
〔応用例1〕
RuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen](2.3mg,0.002mmol)を100mlのガラス製オートクレーブに仕込み、アルゴン置換後、アセトフェノン(2.3ml,20mmol)、0.01M KOC(CH3)3/イソプロピルアルコール溶液(8ml,0.08mmol)を添加し、脱気アルゴン置換した。水素を9気圧まで仕込み反応を開始した。反応液を19時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻し、反応液のガスクロマトグラフィーにより生成物であるフェネチルアルコールの定量と光学純度を求めた。反応基質はすべて消費され、生成物の収率は99%以上であった。また、得られたフェネチルアルコールは、(R)−体が94.4%eeで生成していた。
【0059】
〔比較例1〕
応用例1と同様にRuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen]の代わりにRuCl2[(R)−binap][(R)−daipen]を触媒に用いて、アセトフェノンの水素化を行い、生成物であるフェネチルアルコールを得た。生成物の収率は99%以上で、(R)−体が85.0%eeで生成していた。
【0060】
〔比較例2〕
応用例1と同様にRuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen]の代わりにRuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(R)−daipen]を触媒に用いて、アセトフェノンの水素化を行い、生成物であるフェネチルアルコールを得た。生成物の収率は99%以上で、(R)−体が92.1%eeで生成していた。
【0061】
〔応用例2〕
RuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen](2.3mg,0.002mmol)を100mlのガラス製オートクレーブに仕込み、アルゴン置換後、プロピオフェノン(2.7ml,20mmol)、0.01M KOC(CH3)3/イソプロピルアルコール溶液(8ml,0.08mmol)を添加し、脱気アルゴン置換した。水素を9気圧まで仕込み反応を開始した。反応液を19時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻し、反応液のガスクロマトグラフィーにより生成物である1−フェニル−1−プロパノールの定量と光学純度を求めた。反応基質はすべて消費され、生成物の収率は99%以上であった。また、得られたフェネチルアルコールは、(R)−体が95.7%eeで生成していた。
【0062】
〔比較例3〕
応用例2と同様にRuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen]の代わりにRuCl2[(R)−binap][(R)−daipen]を触媒に用いて、プロピオフェノンの水素化を行い、生成物である1−フェニル−1−プロパノールを得た。生成物の収率は99%以上で、(R)−体が91.5%eeで生成していた。
【0063】
〔比較例4〕
応用例2と同様にRuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(S)−daipen]の代わりにRuBr2[(S,S)−3−メチル−Xylskewphos][(R)−daipen]を触媒に用いて、プロピオフェノンの水素化を行い、生成物である1−フェニル−1−プロパノールを得た。生成物の収率は99%以上で、(R)−体が92.6%eeで生成していた。
【0064】
〔実施例2〕 (R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン(16)の合成
(1)(S,S)−1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジメシレート(10)の合成
100mlのシュレンク管に、(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオール(1.0g,4.38mmol)を仕込み、アルゴン置換した。そこに、ピリジン(1.53ml,10.95mmol)およびテトラヒドロフラン33mlを仕込んだ。そこに、メシルクロライド(1.53ml,8.76mmol)を0℃でゆっくり滴下し、同温で一晩攪拌した。ピリジンの塩酸塩をガラスフィルターで濾過し、溶媒留去し、(S,S)−1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジメシレート1.68gを得た。その収率は、100%であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ7.40(m,10H),5.69(dd,2H),2.76(s,6H),2.53(t,2H)
【0065】
(2)(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパンボラン(13)の合成
アルゴン置換した100mlシュレンク管に、ジ-3,5-キシリルホスフィンボラン(1.11g,4.34mmol)を仕込み、テトラヒドロフラン5mlに溶解した。これに、n−ブチルリチウム(2.7ml,4.34mmol)を−78℃で滴下し、同温で15分攪拌後、室温で20分攪拌した。次いで、(S,S)−1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジメシレート(697mg,1.81mmol)のジメチルホルムアルデヒド7ml溶液を−40℃で滴下し、室温で一晩攪拌した。反応液にジエチルエーテル40mlを加え、10%塩酸水25mlを氷冷下で加え反応を停止後、水(40ml×3)および飽和食塩水40mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパンボランを得た。シリカゲルカラムにより、(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパンボラン674mgを得た。その収率は、53%であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ6.58−7.24(m,22H),3.24(m,2H),2.41(m,2H),2.34(m,12H),2.06(m,12H),0.3-1.3(br,6H)
31P−NMRスペクトル(CDCl3):δ24.13(s)
【0066】
(3)(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン(16)の合成
アルゴン置換した100mlシュレンク管に、(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパンボラン(668mg,0.948mmol)を仕込み、塩化メチレン10mlに溶解し、凍結脱気した。これに、テトラフルオロボロン酸ジメチルエーテル錯体(1.2ml,9.48mmol)を−5℃で滴下し、同温で15分攪拌後、室温で一晩攪拌した。反応液にジエチルエーテル18mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水36mlを氷冷下で加え反応を停止後、水(28 ml×2)および飽和食塩水28mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン531mgを得た。その収率は、96%であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ6.19−7.36(m,22H),3.48(q,2H),2.33(s,12H),2.13(m,2H),1.97(s,12H)
31P−NMRスペクトル(CDCl3):δ1.85(s)
【0067】
〔使用例2〕 RuBr2[(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン][(S)−daipen]の調製
(1)Ru [(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン](メチルアリル)2の調製
アルゴン置換した100mlシュレンク管に (R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン(531mg,0.784mmol)、アクロス社製Ru(シクロオクタ−1,5−ジエン)(メチルアリル)2(251mg,0.784mmol)を仕込んだ。その後、ヘキサン6mlを加え70℃で5時間攪拌した。不溶物をガラスフィルターで濾過し、溶媒留去後、精製せずに次の反応に用いた。
(2)RuBr2 [(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン]の調製
Ru [(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン](メチルアリル)2(696mg、0.784mmol)をアセトン54mlに溶解し、0.2M-HBrメタノール溶液(7.84ml、1.568mmol)を加え、脱気を行い室温で1時間攪拌した。溶媒留去後、精製せずに次の反応に用いた。
(3)RuBr2[(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン][(S)−daipen]の調製
RuBr2 [(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン](735mg、0.784mmol)に(S)−DAIPEN(254mg,0.784mmol)を仕込み、アルゴン置換した。次いで、ジメチルホルムアミド(30ml)を加え、脱気を行い室温で一晩攪拌した。反応液をシリカゲルを詰めたガラスフィルターを通して濾過後、溶媒留去した。塩化メチレン/イソプロピルエーテルから再結晶し777mg(79%)を得た。
31P−NMRスペクトル(C6D6):major:δ69.46(d,J=49Hz),66.22(d,J=49Hz)
minor: δ69.05(d,J=49Hz),67.54(d,J=49Hz)
【0068】
〔応用例3〕
RuBr2[(R,R)−1,3−ジフェニル−1,3−ビス(3,5−キシリルホスフィノ)プロパン][(S)−daipen](2.5mg,0.002mmol)を100mlのガラス製オートクレーブに仕込み、アルゴン置換後、プロピオフェノン(2.7ml,20mmol)、0.01M KOC(CH3)3/イソプロピルアルコール溶液(8ml,0.08mmol)を添加し、脱気アルゴン置換した。水素を9気圧まで仕込み反応を開始した。反応液を24時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻し、反応液のガスクロマトグラフィーにより生成物である1−フェニル−1−プロパノールの定量と光学純度を求めた。反応基質はすべて消費され、生成物の収率は99%以上であった。また、得られたフェネチルアルコールは、(R)−体が81.6%eeで生成していた。
【0069】
【発明の効果】
本発明の新規ジホスフィン化合物は、不斉合成用触媒の配位子として優れたものであり、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどの遷移金属との錯体は、種々の不斉合成用触媒として優れた触媒活性を有し、これを用いることによって光学純度の高い光学活性体を製造することができる。
また、本発明の新規ジホスフィン化合物の製法を用いることによって、本発明の新規ジホスフィン化合物を効率的かつ安価に製造することができる。
したがって、本発明は、関連する産業分野、すなわち医薬品等の製造業の発展に寄与するところ大であると考えられる。
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