JP4196919B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

内燃機関の空燃比制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4196919B2
JP4196919B2 JP2004283163A JP2004283163A JP4196919B2 JP 4196919 B2 JP4196919 B2 JP 4196919B2 JP 2004283163 A JP2004283163 A JP 2004283163A JP 2004283163 A JP2004283163 A JP 2004283163A JP 4196919 B2 JP4196919 B2 JP 4196919B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
air
fuel ratio
upstream
value
pass filter
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004283163A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006097521A (ja
Inventor
憲保 足立
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2004283163A priority Critical patent/JP4196919B2/ja
Publication of JP2006097521A publication Critical patent/JP2006097521A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4196919B2 publication Critical patent/JP4196919B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Exhaust Gas After Treatment (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

本発明は、内燃機関の排気通路に三元触媒(以下、単に「触媒」と云うこともある。)の上流側及び下流側の排気通路にそれぞれ配設された上流側空燃比センサ、及び下流側空燃比センサの各出力値に基づいて機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する内燃機関の空燃比制御装置に関する。なお、以下、内燃機関を、単に「機関」と云うこともある。
従来より、この種の空燃比制御装置が広く知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この空燃比制御装置(排気浄化装置)は、下流側空燃比センサの出力値と同センサの出力の目標値である下流側目標値との差に基づいて(具体的には、サブフィードバックコントローラで同差を比例・積分・微分処理(PID処理)して)サブフィードバック補正量を算出する。
また、この装置は、上流側空燃比センサの出力値を上記算出したサブフィードバック補正量で補正した値と同上流側空燃比センサの出力の目標値である上流側目標値との差に基づいて(具体的には、メインフィードバックコントローラで同差を比例・積分処理(PI処理)して)メインフィードバック補正量を算出する。そして、この装置は、上記算出したメインフィードバック補正量により燃料噴射量を補正することで機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御するようになっている。
特開2004−183585号公報
上記開示された装置は、サブフィードバック補正量の値に応じてメインフィード補正量を算出するための値(即ち、PI処理される値)が直接変更されるように構成されている。換言すれば、メインフィードバック補正量を算出するメインフィードバックコントローラとサブフィードバック補正量を算出するサブフィードバックコントローラとが直列に配置されている。
従って、メインフィードバックコントローラに使用されるメインフィードバック制御定数(比例ゲイン、及び積分ゲイン)とサブフィードバックコントローラに使用されるサブフィードバック制御定数(比例ゲイン、積分ゲイン、及び微分ゲイン)のいずれか一方側の適合を行う際には他方側の値が強く影響する。
換言すれば、フィードバック制御ループ(閉ループ)毎にそれぞれのフィードバック制御定数の適合を互いに独立して実行することができない。従って、各フィードバック制御定数の適合が困難であって同適合を行う際の労力が多大であるという問題があった。
係る問題に対処するためには、メインフィードバックコントローラとサブフィードバックコントローラとを燃料噴射量の補正に関して並列に配置することが好ましいと考えられる。この場合、具体的には、サブフィードバックコントローラにより下流側空燃比センサ出力値と上記下流側目標値との差に基づいてサブフィードバック補正量が算出されるとともに、メインフィードバックコントローラにより上流側空燃比センサ出力値と上記上流側目標値との差に基づいてメインフィードバック補正量が算出される。そして、上記算出されたメインフィードバック補正量と上記サブフィードバック補正量とによりそれぞれ独立に燃料噴射量が直接補正されることで機関に供給される混合気の空燃比がフィードバック制御される。
これにより、フィードバック制御ループ毎にそれぞれのフィードバック制御定数の適合を互いに独立して実行することができるようになり、各フィードバック制御定数の適合を行う際の労力が低減され得る。
ところで、触媒は、通常、流入する排ガスの空燃比がリーン空燃比のとき同排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元して同窒素酸化物から奪った酸素を内部に貯蔵するとともに同流入する排ガスの空燃比がリッチ空燃比のとき同貯蔵している酸素により同排ガス中のHC,CO等の未燃成分を酸化する機能(以下、「酸素吸蔵機能」と称呼する。)を有している。係る酸素吸蔵機能により、触媒上流の排ガスの空燃比変動における比較的周波数の高い高周波数成分、及び同空燃比変動における比較的周波数が低くて振幅(理論空燃比からの偏移量)が比較的小さい低周波数成分は完全に吸収されることで触媒下流の排ガスの空燃比変動として現れ難い傾向がある。
一方、触媒上流の排ガスの空燃比変動における比較的周波数が低くて振幅が比較的大きい低周波数成分(以下、「触媒通過低周波数成分」と称呼する。)は上記触媒の酸素吸蔵機能では完全には吸収されずに触媒を通過し、この結果、少し遅れて触媒下流の排ガスの空燃比変動として現れ易い傾向がある。換言すれば、酸素吸蔵機能を有する触媒が触媒通過低周波数成分に対してフィードバック制御上の「むだ時間要素」として機能する。
このように、触媒が触媒通過低周波数成分に対して「むだ時間要素」として機能することにより、上流側空燃比センサの出力値と下流側空燃比センサの出力値とが理論空燃比に対して互いに逆方向に偏移した空燃比を示す値となる場合が存在する。この場合、上記メインフィードバック補正量に基づく機関の空燃比制御(メインフィードバック制御)とサブフィードバック補正量に基づく機関の空燃比制御(サブフィードバック制御)とが互いに干渉することになるので良好な機関の空燃比制御を行うことができない。
係るメインフィードバック制御とサブフィードバック制御との干渉は、排ガスの空燃比変動に関するメインフィードバック制御の制御周波数帯域とサブフィードバック制御の制御周波数帯域とを互いに重複しないように設定することで回避され得る。このためには、上記触媒通過低周波数成分に係る周波数帯域をメインフィードバック制御の制御周波数帯域から外すことが有効であると考えられる。
更には、この場合、下流側空燃比センサの出力値に不可避的に現れるノイズ等に起因する高周波数成分を除去することがメインフィードバック制御とサブフィードバック制御との間の制御周波数帯域の重複を確実に回避する上で好ましいと考えられる。
以上のことから、本出願人は、特願2004−13225において、以下のような空燃比制御装置(排気浄化装置)を既に提案している。この装置は、図14にそれらの周波数−ゲイン特性を示した共通のカットオフ周波数ω1を有するハイパスフィルタとローパスフィルタとを使用する。このカットオフ周波数ω1は、例えば、上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値(上限値)近傍に設定されている。
この提案された装置は、下流側空燃比センサ出力値と上記下流側目標値との差の値をローパスフィルタ処理した後の値に基づいてサブフィードバックコントローラによりサブフィードバック補正量を算出する。これにより、下流側空燃比センサ出力値の変動におけるカットオフ周波数ω1以上の高周波数成分が減衰されるから、サブフィードバック制御の制御周波数帯域は同カットオフ周波数ω1以下の帯域となり得る。
また、この提案された装置は、上流側空燃比センサ出力値と上記上流側目標値との差の値をハイパスフィルタ処理した後の値に基づいてメインフィードバックコントローラによりメインフィードバック補正量を算出する。これにより、上流側空燃比センサ出力値の変動におけるカットオフ周波数ω1以下の低周波数成分が減衰されるから、メインフィードバック制御の制御周波数帯域は同カットオフ周波数ω1以上の帯域となり得る。
そして、この提案された装置は、上記算出されたメインフィードバック補正量と上記サブフィードバック補正量とによりそれぞれ独立に燃料噴射量を直接補正することで機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する。
これにより、上述したように、各フィードバック制御定数の適合を行う際の労力が低減され得る。また、メインフィードバック制御の制御周波数帯域とサブフィードバック制御の制御周波数帯域とが互いに重複しないように設定され得るから、上述したメインフィードバック制御とサブフィードバック制御との干渉が回避でき、この結果、良好な機関の空燃比制御が達成され得る。
ところで、近年、内燃機関の更なる低燃費化を達成するため、内燃機関の運転中において常時稼働される気筒(以下、「常時稼働気筒」と称呼する。)と、同運転中において休止され得る気筒(以下、「休止対象気筒」と称呼する。)とからなる複数の気筒を備え、運転状態に応じて休止対象気筒を休止させる気筒休止機構を備えた内燃機関が開発されてきている。
そして、本出願人によるその後の更なる研究により、係る気筒休止機構を備えた内燃機関に上記提案された装置を適用する場合、上記フィルタ(特に、ハイパスフィルタ)の特性を一定に維持すると、必ずしも安定した空燃比制御が達成され得ない場合があることが判明した。
従って、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、気筒休止機構を備えた内燃機関に適用される空燃比制御装置であって、触媒の上流、及び下流の排気通路にそれぞれ配設された空燃比センサに基づくそれぞれの空燃比フィードバック制御間の相互干渉を回避し得るとともに、気筒の稼働・休止状態にかかわらず安定した空燃比制御を維持し得るものを提供することにある。
本発明に係る空燃比制御装置は、内燃機関の運転状態に応じて複数の気筒の全てが稼働する全気筒稼働状態と休止対象気筒が休止する一部気筒休止状態との何れかを選択するとともに同複数の気筒の状態を同選択された状態に設定する気筒休止機構と、少なくとも一つの常時稼働気筒と少なくとも一つの休止対象気筒とから排出される排ガスが集合せしめられて成る排ガスが通過する排気通路(以下、「集合排気通路」と称呼する。)に配設された触媒と、前記触媒よりも上流の集合排気通路に配設された上流側空燃比センサと、前記触媒よりも下流の集合排気通路に配設された下流側空燃比センサと、前記内燃機関の運転状態に応じた量の燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えた内燃機関に適用される。
ここにおいて、触媒は、例えば、少なくとも一つの常時稼働気筒と少なくとも一つの休止対象気筒とを含む気筒群の各排気ポートに連通したそれぞれのエキゾーストマニホールドが集合した集合部よりも下流の集合排気通路に配設されている。
本発明に係る空燃比制御装置は、上流側空燃比センサの出力値に基づく値であってハイパスフィルタ処理がなされている値に基づいて(上流側フィードバックコントローラにより)上流側フィードバック補正量を算出し、前記算出された上流側フィードバック補正量により前記燃料噴射手段により噴射される燃料噴射量を補正することで前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する上流側フィードバック制御手段と、下流側空燃比センサの出力値に基づく値に基づいて(下流側フィードバックコントローラにより)下流側フィードバック補正量を算出し、前記算出された下流側フィードバック補正量により前記燃料噴射手段により噴射される燃料噴射量を補正することで前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する下流側フィードバック制御手段とを備えている。
これによれば、上流側フィードバック制御手段により算出された上流側フィードバック補正量と下流側フィードバック制御手段により算出された下流側フィードバック補正量とによりそれぞれ独立に燃料噴射量を直接補正するように構成することで、上記提案された装置と同様、各フィードバック制御定数の適合を行う際の労力が低減され得る。
また、上流側フィードバックコントローラには上流側空燃比センサの出力値に基づく値であってハイパスフィルタ処理がなされている値が入力される。ここで、ハイパスフィルタ処理におけるハイパスフィルタのカットオフ周波数は、一般に、触媒の酸素吸蔵機能の程度に照らして決定されるべきであり、好ましくは、上述したように、上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値(上限値)近傍に設定される。
これにより、上述のように、上流側フィードバック制御の制御周波数帯域と下流側フィードバック制御の制御周波数帯域とが互いに重複しないように設定され得、上記提案された装置と同様、上流側フィードバック制御と下流側フィードバック制御との干渉が回避され得る。
ここにおいて、「上流側空燃比センサの出力値に基づく値であってハイパスフィルタ処理がなされている値」は、例えば、前記上流側空燃比センサの出力値(或いは、検出空燃比)、又は前記上流側空燃比センサの出力値と同センサの出力の目標値である上流側目標値との相違の程度に応じた値、をハイパスフィルタ処理した後の値である。
また、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」は、例えば、前記下流側空燃比センサの出力値と同センサの出力の目標値である下流側目標値との相違の程度に応じた値である。
「上流側目標値」、及び「下流側目標値」は理論空燃比に相当する値に設定されることが好適であり、或いは、これらの値は対応する空燃比が互いに等しくなるように設定されることが好適である。
また、「センサの出力値と目標値との相違の程度に応じた値」は、例えば、センサの出力値と目標値との偏差、センサの出力値に対応する検出空燃比(実空燃比)と目標値に対応する目標空燃比との偏差、筒内吸入空気量をセンサの出力値に対応する検出空燃比で除した値である実際の筒内燃料供給量と同筒内吸入空気量を目標値に対応する目標空燃比で除した値である目標筒内燃料供給量との偏差であって、これらに限定されない。
なお、上記構成によれば、機関が過渡運転状態にある場合等、排ガスの空燃比が上記ハイパスフィルタ処理におけるハイパスフィルタのカットオフ周波数以上の高周波数で急変・変動するような場合における空燃比制御(即ち、過渡運転状態における空燃比の急変に対する補償)は、上流側フィードバック制御により迅速に行われる。
また、触媒下流の空燃比変動として現れ得る上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域(一般には、極低周波数帯域)の定常的な空燃比変動に対する空燃比制御は、下流側フィードバック制御により確実に達成され得る。
更に、上記本発明による空燃比制御装置の特徴は、前記全気筒稼働状態が選択されているか前記一部気筒休止状態が選択されているかによって前記上流側フィードバック制御手段による前記ハイパスフィルタ処理におけるフィルタ特性を変更するフィルタ特性変更手段を備えたことにある。ここで、「フィルタ特性」としては、例えば、カットオフ周波数、ゲイン等が挙げられる。
気筒休止機構を備えた内燃機関においては、一部気筒休止状態が選択されている場合(以下、「減筒運転時」と称呼する。)、全気筒稼働状態が選択されている場合(以下、「全筒運転時」と称呼する。)に比して、気筒の排気弁から排ガスが集合排気通路へ向けて実際に排出される周期が長くなるとともに、同排出される排ガスの1回あたりの排出量が増大する。
従って、減筒運転時においては、集合排気通路へ向けて排出される排ガスの1回あたりの排出量が増大することに起因して、集合排気通路を通過する排ガス中の酸素濃度の、実際の排出周期に対応する変動幅が増大する。また、一般に、空燃比センサは排ガス中の酸素濃度と大気中の酸素濃度の差に基づく出力を発生するセンサである。
よって、減筒運転時においては、触媒上流の集合排気通路に配設された上流側空燃比センサ出力における、排ガスの実際の排出周期に相当する周波数成分(以下、「排出周期相当周波数成分」と称呼する。)の振幅が増大する。この場合、係る排出周期相当周波数成分を含んだ振幅の大きい上流側空燃比センサ出力(信号)を上流側フィードバックコントローラに入力すると、上流側フィードバック補正量が空燃比を不必要に過補正する値に算出され得、この結果、適切な上流側フィードバック制御が実行され得なくなる可能がある。
係る問題に対処するため、例えば、減筒運転時において、係る排出周期相当周波数成分に係る周波数を上流側フィードバック制御の制御周波数帯域から外すことが考えられる。換言すれば、ハイパスフィルタ処理におけるハイパスフィルタのカットオフ周波数を上記排出周期相当周波数成分に係る周波数近傍(或いは、同排出周期相当周波数成分に係る周波数よりも高い周波数)に設定することが考えられる。
ここで、上記排出周期相当周波数成分に係る周波数は、機関の回転速度に依存して変化し、上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域(一般には、極低周波数帯域)の最大値よりも大きくなる場合がある。従って、この場合、減筒運転時において設定されるべき適切なハイパスフィルタのカットオフ周波数は、上流側及び下流側フィードバック制御間の干渉回避のために触媒の酸素吸蔵機能の程度に照らして決定されるべき適切なハイパスフィルタのカットオフ周波数(即ち、全筒運転時において設定されるべきカットオフ周波数)よりも高くなる。
本発明は係る知見に基づくものである。即ち、上記構成のように、全筒運転時か減筒運転時かによってハイパスフィルタのフィルタ特性を変更するように構成すれば、例えば、減筒運転時においては、全筒運転時に比してハイパスフィルタのカットオフ周波数をより高くすることができ、この結果、全筒運転時か減筒運転時かにかかわらず安定した空燃比制御を維持することができる。
この場合、上述した排出周期相当周波数成分を含んだ振幅の大きい上流側空燃比センサ出力(信号)を上流側フィードバックコントローラに入力することを防止するため、ハイパスフィルタのゲインを小さくしてもよい。即ち、減筒運転時においては、全筒運転時に比してハイパスフィルタのゲインを小さくしてもよい。これにより、減筒運転時において、上流側フィードバックコントローラに入力される上流側空燃比センサ出力(信号)の振幅を小さくすることができる。この結果、上流側フィードバック補正量が空燃比を不必要に過補正する値に算出され得なくなり、減筒運転時においても適切な上流側フィードバック制御が維持され得る。
上記本発明に係る空燃比制御装置において、前記フィルタ特性変更手段が減筒運転時において全筒運転時に比してハイパスフィルタのカットオフ周波数をより高くするように構成されていて、且つ、前記下流側フィードバック制御手段が下流側空燃比センサの出力値に基づく値であってローパスフィルタ処理がなされている値に基づいて前記下流側フィードバック補正量を算出するように構成されている場合、前記フィルタ特性変更手段は、更に、減筒運転時において、全筒運転時に比してローパスフィルタのカットオフ周波数をより高くするように構成されることが好適である。
ここにおいて、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値であってローパスフィルタ処理がなされている値」は、例えば、下流側空燃比センサの出力値と上記下流側目標値との相違の程度に応じた値をローパスフィルタ処理した後の値、又は下流側空燃比センサの出力値(或いは、検出空燃比)をローパスフィルタ処理した後の値と下流側目標値(或いは、下流側目標空燃比)との相違の程度に応じた値である。
この場合、上記ハイパスフィルタ処理される対象となる上記2つの値(即ち、上流側空燃比センサの出力値と、上流側空燃比センサの出力値と上流側目標値との相違の程度に応じた値)と、下流側フィードバックコントローラに入力される上記2つの値(即ち、下流側空燃比センサの出力値と下流側目標値との相違の程度に応じた値をローパスフィルタ処理した後の値と、下流側空燃比センサの出力値をローパスフィルタ処理した後の値と下流側目標値との相違の程度に応じた値)の組み合わせは何れの組み合わせであってもよい。
空燃比制御装置が、減筒運転時において全筒運転時に比してハイパスフィルタのカットオフ周波数をより高くするように構成される場合において、ローパスフィルタのカットオフ周波数が常に一定に維持される場合について考える。この場合、減筒運転時において、ハイパスフィルタのカットオフ周波数がローパスフィルタのカットオフ周波数よりも高い値となることで、何れの空燃比フィードバック制御の制御周波数帯域にも含まれない周波数帯域(以下、「制御対象外周波数帯域」と称呼する。)が発生し得る。
ここで、係る制御対象外周波数帯域が発生することは、確実な空燃比制御を維持する上で、一般に好ましくないと考えられる。従って、上記構成のように、減筒運転時において全筒運転時に比してハイパスフィルタのカットオフ周波数をより高くすることに加えて、減筒運転時において全筒運転時に比してローパスフィルタのカットオフ周波数をもより高くするように構成すれば、上記制御対象外周波数帯域が発生することが防止され得る。従って、確実な空燃比制御が維持され得る。
以下、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空燃比制御装置を火花点火式V型8気筒内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。この内燃機関10は、V字型を構成する2つのバンク(バンクA及びバンクB)を有していて、各バンクには部分気筒群としての4つの気筒が(図1において紙面垂直方向に)それぞれ1列に配置されている。
なお、図1は、各バンクにおける特定の気筒の概略構成をそれぞれ示しているが、他の気筒の概略構成も同様である。以下、バンクA側に関連する構成・処理等については符号・変数の末尾等に「A」又は「(A)」の符号を付し、バンクB側に関連する構成・処理等については符号・変数の末尾等に「B」又は「(B)」の符号を付して説明する。
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21A,21B、ピストン22A,22B、コンロッド23A,23B、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22A,22Bはシリンダ21A,21B内をそれぞれ往復動し、ピストン22A,22Bの往復動がそれぞれコンロッド23A,23Bを介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21A,21Bとピストン22A,22Bのヘッドは、シリンダヘッド部30とともにそれぞれ燃焼室25A,25Bを形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25A,25Bにそれぞれ連通した吸気ポート31A,31B、吸気ポート31A,31Bをそれぞれ開閉する吸気弁32A,32B、吸気弁32A,32Bをそれぞれ駆動する吸気弁駆動装置33A,33B、燃焼室25A,25Bにそれぞれ連通した排気ポート34A,34B、排気ポート34A,34Bをそれぞれ開閉する排気弁35A,35B、排気弁35A,35Bをそれぞれ駆動する排気弁駆動装置36A,36B、点火プラグ37A,37B、及び燃料を吸気ポート31A,31B内にそれぞれ噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)38A,38Bを備えている。点火プラグ37A,37B、及びインジェクタ38A,38Bはそれぞれ、後述する電気制御装置70からの指示により駆動されるようになっている。
吸気弁駆動装置33A,33B(排気弁駆動装置36A,36Bについても同様である。)は、気筒毎に、吸気弁(排気弁)を中立位置に付勢する図示しない2つのスプリングと、同吸気弁(排気弁)を開弁方向又は閉弁方向に付勢する電磁力をそれぞれ発生する図示しない2つの電磁石とを備えていて、後述する電気制御装置70からの指示により同2つの電磁石への通電を制御することで吸気弁32A,32B(排気弁35A,35B)のリフト量をそれぞれ制御できるようになっている。
また、吸気弁駆動装置33A,33B(排気弁駆動装置36A,36Bについても同様である。)は、対応するバンク側の4つの気筒の状態を、機関10の運転状態に応じた電気制御装置70からの指示に応じて選択される全気筒稼働状態及び一部気筒休止状態の何れかの状態に設定できるようになっている。
一部気筒休止状態が選択されている場合(即ち、減筒運転時)では、各バンクにつき2つ(合計4つ)の所定の気筒(即ち、前記休止対象気筒)についての吸気弁、及び排気弁が閉弁状態に維持されるとともに他の4つの気筒(即ち、前記常時稼働気筒)についての吸気弁、及び排気弁に対してはクランク軸24の回転に応じた所定のリフト量制御が実行されるようになっている。一方、全気筒稼働状態が選択されている場合(即ち、全筒運転時)では、8つの気筒(即ち、4つの休止対象気筒と4つの常時稼働気筒)についての吸気弁、及び排気弁の全てに対して上記所定のリフト量制御が実行されるようになっている。
更に、減筒運転時においては、電気制御装置70からの指示により、休止対象気筒についての点火プラグ37A,37B及びインジェクタ38A,38Bは非駆動状態に維持されるようになっている。このように、機関10の運転状態に応じて、8つの気筒の全てが稼働する全気筒稼動状態と、各バンクにつき2つ(合計4つ)の休止対象気筒が休止する一部気筒休止状態との何れかを選択し、8つの気筒の状態を同選択された状態にする機構(手段)が気筒休止機構に相当する。
吸気系統40は、バンクA側の4つの吸気ポート31A,バンクB側の4つの吸気ポート31Bにそれぞれ連通し同吸気ポート31A,31Bとともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、及びスロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ44を備えている。
排気系統50は、バンクA側(バンクB側)の4つの排気ポート33A(33B)にそれぞれ連通した4本のエキゾーストマニホールド51A(51B)、4本のエキゾーストマニホールド51A(51B)の下流側端部にそれぞれ接続されるとともに同下流側端部を集合させたエキゾーストパイプ(排気管)52A(52B)、エキゾーストパイプ52A(52B)にそれぞれ配設(介装)された上流側触媒(三元触媒、又はスタート・コンバータとも云う。)53A(53B)、エキゾーストパイプ52A,52Bの下流側端部にそれぞれ接続されるとともに同下流側端部を集合させた下流側エキゾーストパイプ54、及び下流側エキゾーストパイプ54に配設(介装)された下流側触媒(三元触媒、又は、車両のフロア下方に配設されるため、アンダ・フロア・コンバータとも云う。)55を備えている。
即ち、上流側触媒53A(53B)は、バンクA側(バンクB側)の2つの常時稼働気筒及び2つの休止対象気筒から排出される排ガスが集合せしめられて成る排ガスが通過する前記集合排気通路としてのエキゾーストパイプ52A(52B)に配設されている。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、クランクポジションセンサ63、上流側触媒53A(53B)の上流のエキゾーストパイプ52A(52B)(即ち、集合排気通路)に配設された空燃比センサ64A(64B)(以下、「上流側空燃比センサ64A」(「上流側空燃比センサ64B」)と称呼する。)、上流側触媒53A(53B)の下流のエキゾーストパイプ52A(52B)(即ち、集合排気通路)に配設された空燃比センサ65A(65B)(以下、「下流側空燃比センサ65A」(「下流側空燃比センサ65B」)と称呼する。)、及びアクセル開度センサ66を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の質量流量に応じた電圧Vgを出力するようになっている。かかるエアフローメータ61の出力Vgと、計測された吸入空気流量Gaとの関係は、図2に示したとおりである。スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。クランクポジションセンサ63は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。
上流側空燃比センサ64A,64Bは、図3に示したように所謂限界電流式の酸素濃度センサであって、空燃比A/Fに応じた電流を出力し、この電流に応じた電圧vabyfs(A),vabyfs(B)をそれぞれ出力するようになっていて、特に、空燃比A/Fが理論空燃比であるとき値vstoichを出力するようになっている。図3から明らかなように、上流側空燃比センサ64A,64Bによれば、広範囲にわたる空燃比A/Fを精度良く検出することができる。
下流側空燃比センサ65A,65Bは、図4に示したように所謂濃淡電池式の酸素濃度センサであって、理論空燃比において急変する電圧Voxs(A),Voxs(B)をそれぞれ出力するようになっている。より具体的に述べると、下流側空燃比センサ65A,65Bは、空燃比が理論空燃比よりもリーンのときは略0.1(V)、空燃比が理論空燃比よりもリッチのときは略0.9(V)、及び空燃比が理論空燃比のときは略0.5(V)(値Voxsref)の電圧を出力するようになっている。アクセル開度センサ66は、運転者によって操作されるアクセルペダル67の操作量を検出し、同アクセルペダル67の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
更に、このシステムは電気制御装置70を備えている。電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、及びADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース75は、前記センサ61〜66と接続され、CPU71にセンサ61〜66からの信号を供給するとともに、同CPU71の指示に応じて吸気弁駆動装置33A,33B、排気弁駆動装置36A,36B、点火プラグ37A,37B、インジェクタ38A,38B、及びスロットル弁アクチュエータ44に駆動信号を送出するようになっている。
(空燃比フィードバック制御の概要)
次に、上記のように構成された空燃比制御装置が行う機関に供給される混合気の空燃比(以下、単に「機関の空燃比」と云うこともある。)のフィードバック制御の概要について説明する。
上流側触媒53A,53Bのような三元触媒(以下、単に「触媒」と云うこともある。)は、触媒に流入するガスの空燃比が理論空燃比であるときに、HC,COを酸化するとともにNOxを還元し、これらの有害成分を高い効率で浄化する。また、触媒は、酸素を吸蔵・放出する前述した酸素吸蔵機能(酸素吸蔵・放出機能)を有し、この酸素吸蔵・放出機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC,CO、及びNOxを浄化することができる。即ち、機関の空燃比がリーンとなって触媒に流入するガスにNOxが多量に含まれると、触媒はNOxから酸素分子を奪って同酸素分子を吸蔵するとともに同NOxを還元し、これによりNOxを浄化する。また、機関の空燃比がリッチになって触媒に流入するガスにHC,COが多量に含まれると、触媒はこれらに吸蔵している酸素分子を与えて(放出して)酸化し、これによりHC,COを浄化する。
従って、触媒が連続的に流入する多量のHC,COを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を多量に貯蔵していなければならず、逆に連続的に流入する多量のNOxを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を十分に貯蔵し得る状態になければならないことになる。以上のことから、触媒の浄化能力は、同触媒が貯蔵し得る最大の酸素量(最大酸素吸蔵量)に依存する。
一方、上流側触媒53A,53Bのような三元触媒は燃料中に含まれる鉛や硫黄等による被毒、或いは触媒に加わる熱により劣化し、これに伴い最大酸素吸蔵量が次第に低下してくる。このように最大酸素吸蔵量が低下した場合であっても、エミッションの排出量を継続的に抑制するには、触媒から排出されるガスの空燃比(従って、触媒に流入するガスの空燃比)が、理論空燃比に極めて近い状態となるように制御する必要がある。
そこで、本実施形態の空燃比制御装置は、バンク毎に、上流側、及び下流側空燃比センサ64A(64B),65A(65B)の出力値が対応するセンサ目標値(原則的に理論空燃比に対応する値)にそれぞれ一致するように、上流側空燃比センサ出力値vabyfs(A)(vabyfs(B))(即ち、上流側触媒53A(53B)上流の空燃比)、及び下流側空燃比センサ出力値Voxs(A)(Voxs(B))(即ち、上流側触媒53A(53B)下流の空燃比)に応じて機関の空燃比をフィードバック制御する。
より具体的に述べると、この空燃比制御装置(以下、「本装置」と云うこともある。)は、その機能ブロック図である図5に示したように、A1〜A15の要素を含んで構成されている。なお、本装置は、実際には、A1〜A15の要素をバンク毎にそれぞれ備えているが、対応する要素の内容・機能はそれぞれ同一である。従って、以下、バンクの区別をすることなく、A1〜A15の要素について、図5を参照しながら説明していく。従って、以下の説明においては、名称・変数の末尾等に本来付されるべきバンクの別を示すための「A」又は「B」等の符号を付すことを省略する。
<基本燃料噴射量の決定>
先ず、基本燃料噴射量Fbaseの決定について説明する。筒内吸入空気量算出手段A1は、エアフローメータ61が計測している吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ63の出力に基づいて得られるエンジン回転速度NEと、ROM72が記憶しているテーブルMapMcとに基づいて今回の吸気行程を迎える気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mcを求める。
上流側目標空燃比設定手段A2は、内燃機関10の運転状態であるエンジン回転速度NE、及びスロットル弁開度TA等に基づいて上流側空燃比センサ出力の目標値(上流側目標値)に対応する上流側目標空燃比abyfr(k)を決定する。ここで、添え字の(k)は、今回の吸気行程に対する値であることを示している(以下、他の物理量についても同様。)。この上流側目標空燃比abyfr(k)は、例えば、内燃機関10の暖機終了後においては、特殊な場合を除き理論空燃比に設定されている。また、上流側目標空燃比abyfrは、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
基本燃料噴射量算出手段A3は、筒内吸入空気量算出手段A1により求められた筒内吸入空気量Mc(k)を上流側目標空燃比設定手段A2により設定された上流側目標空燃比abyfr(k)で除することにより、機関の空燃比を同上流側目標空燃比abyfr(k)とするための今回の吸気行程に対する基本燃料噴射量Fbaseを求める。
このように、本装置は、筒内吸入空気量算出手段A1、上流側目標空燃比設定手段A2、及び基本燃料噴射量算出手段A3を利用して、基本燃料噴射量Fbaseを求める。
<燃料噴射量の算出>
次に、燃料噴射量Fiの算出について説明する。燃料噴射量算出手段A4は、基本燃料噴射量算出手段A3により求められた基本燃料噴射量Fbaseに、後述するサブフィードバック補正係数KFisub(下流側フィードバック補正量)と後述するメインフィードバック補正係数KFimain(上流側フィードバック補正量)とを乗算することで、下記(1)式に基づいて、(最終)燃料噴射量Fiを求める。
Fi=Fbase・KFisub・KFimain ・・・(1)
本装置は、このようにして、燃料噴射量算出手段A4により基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック補正係数KFimainとサブフィードバック補正係数KFisubとによりそれぞれ独立に補正することにより得られる燃料噴射量Fiの燃料を今回の吸気行程を迎える気筒に対してインジェクタ38により噴射する。
<サブフィードバック制御>
続いて、上流側フィードバック制御としてのサブフィードバック制御について説明する。下流側目標値設定手段A5は、上述した上流側目標空燃比設定手段A2と同様、内燃機関10の運転状態であるエンジン回転速度NE、及びスロットル弁開度TA等に基づいて下流側空燃比センサ出力の目標値である下流側目標値Voxsrefを決定する。この下流側目標値Voxsrefは、例えば、内燃機関10の暖機終了後においては、特殊な場合を除き理論空燃比に対応する値である0.5(V)に設定されている(図4を参照。)。また、本例では、下流側目標値Voxsrefは、同下流側目標値Voxsrefに対応する下流側目標空燃比が上述した上流側目標空燃比abyfr(k)と常時一致するように設定される。
出力偏差量算出手段A6は、下記(2)式に基づいて、下流側目標値設定手段A5により設定されている現時点での下流側目標値Voxsrefから現時点での下流側空燃比センサ65の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。この出力偏差量DVoxsは、「下流側空燃比センサ65の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの相違の程度に応じた値」に相当する。
DVoxs=Voxsref-Voxs ・・・(2)
ローパスフィルタA7(LPF)は、その特性をラプラス演算子sを用いて表した下記(3)式に示すように、一次のフィルタ(ソフトフィルタ、デジタルフィルタ)である。下記(3)式において、τlpfはローパスフィルタA7の時定数、GlpfはローパスフィルタA7の入力信号周波数「0」でのゲイン(以下、単に「ゲイン」と称呼する。本例では、Glpf=1)である。このローパスフィルタA7の周波数−ゲイン特性は図6に示したとおりである。図6に示したように、ローパスフィルタA7は、入力値(入力信号)の変動におけるカットオフ周波数ωlpf(=1/τlpf)以上の高周波数成分を減衰することで同高周波数成分が通過することを実質的に禁止する。なお、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfは、後述するLPF特性変更手段A15により変更されるようになっている。
Glpf・(1/(1+τlpf・s)) ・・・(3)
ローパスフィルタA7は、出力偏差量算出手段A6により求められた前記出力偏差量DVoxsの値を入力するとともに、上記(3)式に従って同出力偏差量DVoxsの値をローパスフィルタ処理した後の値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを出力する。従って、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowは、「下流側空燃比センサ65の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの相違の程度に応じた値をローパスフィルタ処理した後の値」である。
PIDコントローラA8(上流側フィードバックコントローラ)は、ローパスフィルタA7の出力値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを比例・積分・微分処理(PID処理)することで、下記(4)式に基づいて下流側フィードバック補正量としてのサブフィードバック補正係数KFisub(>0)を求める。
KFisub=(Kp・DVoxslow+Ki・SDVoxslow+Kd・DDVoxslow)+1 ・・・(4)
上記(4)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間積分値であり、DDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間微分値である。
このようにして、本装置は、下流側空燃比センサ65の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの相違の程度に応じた値をローパスフィルタ処理した後の値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslow(下流側フィードバック入力値)をPIDコントローラA8に入力することでサブフィードバック補正係数KFisubを求め、前記基本燃料噴射量Fbaseに同サブフィードバック補正係数KFisubを乗算することで、後述するメインフィードバック制御による(前記メインフィードバック補正係数KFimainによる)基本燃料噴射量Fbaseの補正とは独立に同基本燃料噴射量Fbaseを補正してサブフィードバック制御を実行する。
例えば、機関の平均的(定常的)な空燃比がリーンであるために下流側空燃比センサ65の出力値Voxsが理論空燃比よりもリーンである空燃比に対応した値を定常的に示すと、出力偏差量算出手段A6により求められる出力偏差量DVoxsの値が定常的に正の値となる(図4を参照)。従って、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowも正の値となり、PIDコントローラA8にて求められるサブフィードバック補正係数KFisubは「1」より大きい値となる。これにより、燃料噴射量算出手段A4にて求められる燃料噴射量Fiは基本燃料噴射量Fbaseよりも大きくなって、機関の空燃比がリッチとなるように制御される。
反対に、機関の定常的な空燃比がリッチであるために下流側空燃比センサ出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチである空燃比に対応した値を定常的に示すと、出力偏差量DVoxs(従って、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslow)が負の値となるので、サブフィードバック補正係数KFisubは「1」より小さい値(>0)となる。これにより、燃料噴射量Fiは基本燃料噴射量Fbaseよりも小さくなって、機関の空燃比がリーンとなるように制御される。
また、PIDコントローラA8は積分処理を実行する(即ち、積分(I)項「Ki・SDVoxslow」が使用されている)から、機関が定常運転状態にある場合、出力偏差量DVoxsが「0」になることが保証される。換言すれば、下流側空燃比センサ65の出力値Voxsの下流側目標値Voxsrefからの定常偏差がゼロになる。そして、定常運転状態では、出力偏差量DVoxsが「0」になることで比例項Kp・DVoxslowが「0」となるから、サブフィードバック補正係数KFisubは積分項Ki・SDVoxslowの値に「1」を加えた値となる。この値が基本燃焼噴射量Fbaseに乗算されることにより、インジェクタ38の誤差(指令される燃料噴射量である燃料噴射量Fiと実際の燃料噴射量の差)、エアフローメータ61の誤差(吸入空気流量計測値Gaと実際の吸入空気流量の差)が補償されつつ、定常運転状態において上流側触媒53の下流の空燃比(従って、機関の空燃比)が下流側目標値Voxsrefに対応する目標空燃比(即ち、原則的に理論空燃比)に収束する。以上、燃料噴射量算出手段A4、下流側目標値設定手段A5、出力偏差量算出手段A6、ローパスフィルタA7、及びPIDコントローラA8が下流側フィードバック制御手段に相当する。
<メインフィードバック制御>
続いて、上流側フィードバック制御としてのメインフィードバック制御について説明する。テーブル変換手段A9は、上流側空燃比センサ64の出力値vabyfsと、先に説明した図3に示した上流側空燃比センサ出力値vabyfsと空燃比A/Fとの関係を規定したテーブルとに基づいて、上流側空燃比センサ64による現時点における検出空燃比abyfsを求める。
目標空燃比遅延手段A10は、上流側目標空燃比設定手段A2により吸気行程毎に求められRAM73に記憶されている上流側目標空燃比abyfrのうち、現時点からNストローク(N回の吸気行程)前に吸気行程を迎えた気筒についての上流側目標空燃比abyfrをRAM73から読み出し、これを上流側目標空燃比abyfr(k-N)として設定する。ここで、前記値Nは、内燃機関10の排気量、及び燃焼室25から上流側空燃比センサ64までの距離等により異なる値である。
このように、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)が使用されるのは、燃焼室25内で燃焼された混合気が上流側空燃比センサ64に到達するまでには、Nストロークに相当する時間Lを要しているからである。
上流側空燃比偏差算出手段A11は、下記(5)式に基づいて、テーブル変換手段A9により求められた現時点での上記検出空燃比abyfsから、目標空燃比遅延手段A10により設定された現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)を減じることにより、上流側空燃比偏差Dabyfを求める。この上流側空燃比偏差Dabyfは、Nストローク前の時点での実際の空燃比と目標空燃比との差を表す量であって、「上流側空燃比センサ64の出力値vabyfsと上流側目標値との相違の程度に応じた値」に相当する。
Dabyf=abyfs−abyfr(k-N) ・・・(5)
ハイパスフィルタA12(HPF)は、その特性をラプラス演算子sを用いて表した下記(6)式に示すように、一次のフィルタ(ソフトフィルタ、デジタルフィルタ)である。下記(6)式において、τhpfはハイパスフィルタA12の時定数、GhpfはハイパスフィルタA12の入力信号周波数「∞」でのゲイン(以下、単に「ゲイン」と称呼する。本例では、Ghpf=1)である。このハイパスフィルタA12の周波数−ゲイン特性は図6に示したとおりである。図6に示したように、ハイパスフィルタA12は、入力値(入力信号)の変動におけるカットオフ周波数ωhpf(=1/τhpf)以下の低周波数成分を減衰することで同低周波数成分が通過することを実質的に禁止する。なお、図6では、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfとハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfとが共に、値ωcut(後述するように全筒運転時にて使用される定数)に設定されている場合が示されている。また、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfは、後述するHPF特性変更手段A14により変更されるようになっている。
Ghpf・(1−1/(1+τhpf・s)) ・・・(6)
ハイパスフィルタA12は、前記上流側空燃比偏差算出手段A11により求められた前記上流側空燃比偏差Dabyfの値を入力するとともに、上記(6)式に従って同上流側空燃比偏差Dabyfの値をハイパスフィルタ処理した後の値であるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを出力する。従って、ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiは、「上流側空燃比センサ64の出力値vabyfsと上流側目標値との相違の程度に応じた値をハイパスフィルタ処理した後の値」である。
PIコントローラA13(上流側フィードバックコントローラ)は、ハイパスフィルタA12の出力値であるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを比例・積分処理(PI処理)することで、下記(7)式に基づいてメインフィードバック補正係数KFimain(>0)を求める。
KFimain=(Gp・Dabyfhi+Gi・SDabyfhi)+1 ・・・(7)
上記(7)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Giは積分ゲイン(積分定数)である。また、SDabyfhiはハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiの時間積分値である。
このようにして、本装置は、メインフィードバック制御回路とサブフィードバック制御回路とを基本燃料噴射量Fbaseの補正に関して並列に接続している。また、本装置は、上流側空燃比センサ64の出力値vabyfsと上流側目標空燃比abyfrに対応する上流側目標値との相違の程度に応じた値をハイパスフィルタ処理した後の値であるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhi(上流側フィードバック入力値)をPIコントローラA13に入力することでメインフィードバック補正係数KFimainを求め、前記基本燃料噴射量Fbaseに同メインフィードバック補正係数KFimainを乗算することで、前記サブフィードバック制御による基本燃料噴射量Fbaseの補正とは独立に同基本燃料噴射量Fbaseを補正してメインフィードバック制御を実行する。
例えば、機関の空燃比が急変してリーンとなると、図3から理解できるように、上流空燃比センサ出力値に基づく検出空燃比abyfsは上流側目標空燃比設定手段A2により設定されている上流側目標空燃比abyfrも大きな値となる。このため、上流側空燃比偏差算出手段A11により求められた上流側空燃比偏差Dabyfは正の値となる。ここで、機関の空燃比の急変によりこの上流側空燃比偏差Dabyfを示す信号には前記カットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分が含まれている。係る高周波数成分は、ハイパスフィルタA12を通過し得る。従って、ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiも正の値となる。この結果、PIコントローラA13により算出されるメインフィードバック補正係数KFimainが「1」より大きい値となる。これにより、燃料噴射量算出手段A4にて求められる燃料噴射量Fiは、基本燃料噴射量Fbaseよりも大きくなって、機関の空燃比がリッチとなるように制御される。
反対に、機関の空燃比が急変してリッチとなると、検出空燃比abyfsは上流側目標空燃比abyfrよりも小さい値となる。このため、上流側空燃比偏差Dabyfは負の値となる。この場合も、上流側空燃比偏差Dabyfを示す信号にはハイパスフィルタA12を通過し得る前記カットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分が含まれている。従って、ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiも負の値となる。この結果、メインフィードバック補正係数KFimainが「1」より小さい値(>0)となる。これにより、燃料噴射量Fiは、基本燃料噴射量Fbaseよりも小さくなって、機関の空燃比がリーンとなるように制御される。
以上、燃料噴射量算出手段A4、テーブル変換手段A9、目標空燃比遅延手段A10、上流側空燃比偏差算出手段A11、ハイパスフィルタA12、及びPIコントローラA13は上流側フィードバック制御手段に相当する。
<空燃比フィードバック制御間の相互干渉の回避>
上述したように、上流側フィードバックコントローラであるPIコントローラA13に入力される値Dabyfhiには、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分のみが含まれているから、上流側フィードバック制御の制御周波数帯域はωhpf以上の帯域となる。
同様に、下流側フィードバックコントローラであるPIDコントローラA8に入力される値DVoxslowには、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpf以下の低周波数成分のみが含まれているから、下流側フィードバック制御の制御周波数帯域はωlpf以下の帯域となる。
更に、本装置は、カットオフ周波数ωhpfとカットオフ周波数ωlpfとを常に等しい値に設定する。これにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御の制御周波数帯域が互いに重複しないように設定されることで上記2つの空燃比フィードバック制御間の相互の干渉が回避される。更には、上述した制御対象外周波数帯域の発生が防止される。
更には、機関が過渡運転状態にある場合等、排ガスの空燃比がハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf以上の高周波数で急変・変動するような場合、係る空燃比変動により、上流側空燃比センサ出力値に基づく検出空燃比abyfsにはカットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分が含まれる。この高周波数成分はハイパスフィルタA12を通過する。従って、本装置においては、過渡運転状態における空燃比の急変に対する空燃比制御(補償)はメインフィードバック制御により迅速、且つ確実に行われ得る。
また、上流側触媒53の下流の空燃比変動として現れ得る程度の、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpf以下の極低周波数での定常的な空燃比変動が発生するような場合、係る定常的な空燃比変動により、下流側空燃比センサ65の出力値Voxsにはカットオフ周波数ωlpf以下の低周波数成分が含まれる。この低周波数成分はローパスフィルタA7を通過する。従って、本装置においては、このような定常的な空燃比変動に対する空燃比制御は、サブフィードバック制御により確実に達成され得る。
<フィルタのカットオフ周波数の変更>
次に、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf、及びローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfの変更について説明する。一般に、ハイパスフィルタへの入力信号が定常状態から過渡状態に移行する場合(例えば、入力信号が或る値に維持された状態からステップ状に変化するような場合)、ハイパスフィルタは、入力信号が過渡状態に移行した時点から同ハイパスフィルタの時定数に相当する期間に亘って、同入力信号におけるあらゆる周波数成分を実質的に通過させてしまう。換言すれば、ハイパスフィルタのカットオフ周波数より低い周波数成分をも実質的に通過させてしまう。
従って、カットオフ周波数より低い周波数成分の通過をできるだけ禁止するという観点からはハイパスフィルタの時定数はなるべく小さい方が好ましい。ここで、ハイパスフィルタの時定数は同ハイパスフィルタのカットオフ周波数と反比例する関係にある。以上のことから、係る観点からすれば、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfはなるべく大きい方が好ましい。
他方、上述したように、上流側触媒53のような三元触媒を通過し得る前記触媒通過低周波数成分の周波数帯域には上限がある。即ち、排ガスの空燃比変動における、触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値を超える周波数成分は、触媒を通過し得ない。従って、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfを上流側触媒53に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値を超える値に設定すると、上述した制御対象外周波数帯域が実質的に発生してしまう。
よって、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfは上流側触媒53に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値(或いは、その近傍)に設定されることが好ましいと考えられる。ここで、或る三元触媒に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値は、同三元触媒が劣化していくほど大きくなる傾向がある。換言すれば、上流側触媒53に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値は、同上流側触媒53が新しいほど(延べ使用期間が短いほど)小さくなる。
以上のことから、上述した制御対象外周波数帯域の実質的な発生を確実に防止するためには、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfは新品の上流側触媒53に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値(以下、「値ωcut」と称呼する。)に設定されるべきである。上記値ωcutは、新品の上流側触媒53を用いた実験等を通して取得され得る。
係る知見に基づき、本装置(HPF特性変更手段A14(及びLPF特性変更手段A15))は、全筒運転時において、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf(従って、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpf)を、上記値ωcut(一定値)に設定する(図6を参照)。
一方、減筒運転時においては、本装置(HPF特性変更手段A14(及びLPF特性変更手段A15))は、上記カットオフ周波数ωhpf(従って、カットオフ周波数ωlpf)を、上記値ωcutと異なる値に設定する。以下、その理由について説明する。
本例では、4つの常時稼働気筒のみが稼働する減筒運転時において、8つの気筒全てが稼働する全筒運転時に比して、気筒の排気弁35から排ガスがエキゾーストパイプ52(集合排気通路)へ向けて実際に排出される周期(排気周期)が2倍になるとともに、同排出される排ガスの1回あたりの排出量が2倍になる。
この結果、減筒運転時においては、全筒運転時に比して、エキゾーストパイプ52を通過する排ガス中の酸素濃度の変動周期が2倍になるとともに、その変動幅も大きくなる。また、所謂限界電流式の上流側空燃比センサ64の出力vabyfsは、排ガス中の酸素濃度と大気中の酸素濃度の差に基づく値である。
従って、図7に示すように、減筒運転時においては、全筒運転時に比して、上流側空燃比センサ出力vabyfsの変動周期が2倍になるとともに、上流側空燃比センサ出力vabyfsにおける、同変動周期(従って、排気周期)に相当する周波数成分(即ち、前記排気周期相当周波数成分)の変動幅が大きくなる。図7において、Tallは全筒運転時における排気周期であり、Thlfは減筒運転時における排気周期である。なお、理解を容易にするため、図7は、上流側空燃比センサ出力vabyfsにおける排気周期相当周波数成分のみを示している。
このような振幅の大きい排出周期相当周波数成分を含んだ上流側空燃比センサ出力(信号)をPIコントローラA13に入力すると、メインフィードバック補正係数KFimainが空燃比を不必要に過補正する値に算出され得、この結果、適切なメインフィードバック制御が実行され得なくなる可能がある。
このため、減筒運転時においては、係る排出周期相当周波数成分に係る周波数(以下、「減筒運転時排出周期相当周波数ωhlf」と称呼する。)をメインフィードバック制御の制御周波数帯域から外すことが好ましい。ここで、減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfはエンジン回転速度NEに依存して、図6に示すように、最小値ωhlfminから最大値ωhlfmaxの間で変化し得、係る最大値ωhlfmaxは、上記値ωcutよりも大きくなる。
従って、減筒運転時においては、係る排出周期相当周波数成分をメインフィードバック制御の制御周波数帯域から確実に外すため、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfを上記減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfの最大値ωhlfmax(一定値)に設定することが好ましいと考えられる。
以上のことから、本装置(HPF特性変更手段A14(及びLPF特性変更手段A15))は、減筒運転時において、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf(従って、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpf)を、上記最大値ωhlfmax(>ωcut)に設定する(図8を参照)。
即ち、本装置(HPF特性変更手段A14、及びLPF特性変更手段A15)は、減筒運転時において、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf、及びローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfを共に、全筒運転時に比してより高い値に設定する。以上、HPF特性変更手段A14、及びLPF特性変更手段A15はフィルタ特性変更手段に相当する。以上が、本装置が行う機関の空燃比のフィードバック制御の概要である。
(実際の作動)
次に、上記実施形態に係る空燃比制御装置の実際の作動について説明する。CPU71は、図9〜図12にフローチャートにより示したそれぞれのルーチンをバンク毎に独立して実行する。以下も、上記と同様、バンクの区別をすることなく図9〜図12のルーチンについて順に説明していく。従って、以下の説明においても、名称・変数の末尾等に本来付されるべきバンクの別を示すための「A」又は「B」等の符号を付すことを省略する。
<空燃比フィードバック制御>
CPU71は、図9に示した燃料噴射量Fiの計算、及び燃料噴射の指示を行うルーチンを、現時点で稼働中の気筒のクランク角が吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が前記所定クランク角度になると、CPU71はステップ900から処理を開始してステップ905に進み、エアフローメータ61が計測している吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ63の出力に基づいて得られるエンジン回転速度NEと、前記テーブルMapMcとに基づいて今回の吸気行程を迎える気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mcを求める。
次に、CPU71はステップ910に進み、上記求めた筒内吸入空気流量Mcを現時点での上流側目標空燃比abyfr(k)で除することで、機関の空燃比を同上流側目標空燃比abyfr(k)とするための基本燃料噴射量Fbaseを求める。
次いで、CPU71はステップ915に進み、上記求めた基本燃料噴射量Fbaseに、後述するルーチンで計算されているメインフィードバック補正係数KFimainとサブフィードバック補正係数KFisubとをそれぞれ乗じることで上記(1)式に従って燃料噴射量Fiを算出する。
そして、CPU71はステップ920に進み、燃料噴射量Fiの燃料を噴射するための指示を今回の吸気行程を迎える気筒のインジェクタ38に対して行った後、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上により、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御によりそれぞれ独立に補正された後の燃料噴射量Fiの燃料が現時点で稼働中の吸気行程を迎える気筒に対して噴射される。
<気筒休止制御>
次に、気筒休止制御における作動について説明すると、CPU71は、図10に示した気筒休止制御を行うルーチンを所定時間(例えば、8msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んで、クランクポジションセンサ63の出力に基づいて取得されるエンジン回転速度NEと、先のステップ905にて算出されている現時点での(最新の)筒内吸入空気量Mcと、ステップ1005内に記載したテーブルとに基づいて全気筒稼動フラグALLの値を「0」、又は「1」のいずれか一方に設定する。ここで、全気筒稼動フラグALLは、その値が「1」のとき機関10が全気筒稼動状態(全筒運転時)にあることを示し、その値が「0」のとき機関10が一部気筒休止状態(減筒運転時)にあることを示す。
次に、CPU71はステップ1010に進み、全気筒稼動フラグALLの値が「1」であるか否かを判定し、「Yes」と判定する場合には、ステップ1015に進んで対応するバンク側の4つの気筒全てが稼動状態となるように4つの気筒全てについての吸気弁駆動装置33、排気弁駆動装置36、及び点火プラグ37に所定の駆動指示を付与した後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップ1010の判定において「No」と判定する場合には、CPU71はステップ1020に進んで、対応するバンク側の2つの休止対象気筒が休止状態となるように同2つの休止対象気筒についての吸気弁駆動装置33、及び排気弁駆動装置36に吸気弁32、及び排気弁35を共に閉弁状態に維持するための駆動指示を付与するとともに、同2つの休止対象気筒についての点火プラグ37及びインジェクタ38を非駆動状態に維持する。また、CPU71は、2つの休止対象気筒を除いた残りの2つの気筒(即ち、常時稼働気筒)についての吸気弁駆動装置33、排気弁駆動装置36、及び点火プラグ37には全気筒稼動フラグALLの値が「1」である場合と同様の前記所定の駆動指示を付与する。
これにより、機関10の運転状態に応じて、機関10(吸気弁駆動装置33、及び排気弁駆動装置36)が全気筒稼動状態(全筒運転時)、或いは、休止対象気筒が休止気筒となる一部気筒休止状態(減筒運転時)の何れか一方になるように制御される。
<メインフィードバック補正係数の計算>
次に、メインフィードバック制御においてメインフィードバック補正係数KFimainを算出する際の作動について説明すると、CPU71は図11にフローチャートにより示したルーチンを所定時間(例えば、8msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1100から処理を開始し、ステップ1105に進んでメインフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
このメインフィードバック制御条件は、例えば、図示しない水温センサにより検出される機関の冷却水温が第1所定温度以上であって、機関の一回転当りの吸入空気量(負荷)が所定値以下であって、上流側空燃比センサ64が完全活性状態にある場合に成立する。
いま、メインフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進み、現時点の上流側空燃比センサ64の出力値vabyfsを図3に示したテーブルに基づいて変換することにより、現時点における検出空燃比abyfsを求める。
続いて、CPU71はステップ1115に進んで、上記求めた検出空燃比abyfsから、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k−N)を減じることで上記(5)式に従って、現時点からNストローク前の実際の空燃比と目標空燃比との差を表す上流側空燃比偏差Dabyfを求める。
次いで、CPU71はステップ1120に進み、全気筒稼動フラグALLの値が「1」であるか否かを判定し、全筒運転時である場合(即ち、「Yes」と判定する場合)、ステップ1125に進んでハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfを上記値ωcutに設定する。一方、減筒運転時である場合(即ち、「No」と判定する場合)、CPU71はステップ1130に進んで上記カットオフ周波数ωhpfを上記減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfの最大値ωhlfmaxに設定する。
続いて、CPU71はステップ1135に進み、前記上流側空燃比偏差Dabyfを、上記設定されたカットオフ周波数ωhpfのハイパスフィルタA12によりハイパスフィルタ処理してハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを取得し、続くステップ1140にて上記(7)式に従ってメインフィードバック補正係数KFimainを求める。ここで、SDabyfhiとしてはステップ1145にて前回の本ルーチン実行時において求められている最新値が使用される。
即ち、CPU71はステップ1145に進むと、その時点におけるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差の積分値SDabyfhiに上記ステップ1135にて求めたハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを加えて、新たなハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差の積分値SDabyfhiを求める。
そして、CPU71はステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上により、メインフィードバック補正係数KFimainが求められ、このメインフィードバック補正係数KFimainが前述した図9のステップ915により燃料噴射量Fiに反映されることで上述したメインフィードバック制御に基づく機関の空燃比制御が実行される。また、全筒運転時であるか減筒運転時であるかによって、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfが変更される。
一方、ステップ1105の判定時において、メインフィードバック制御条件が不成立であると、CPU71は同ステップ1105にて「No」と判定してステップ1150に進んでメインフィードバック補正係数KFimainの値を「1」に設定し、続くステップ1155にてハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差の積分値SDabyfhiの値を「0」にリセットした後、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、メインフィードバック制御条件が不成立であるときは、メインフィードバック補正係数KFimainの値を「1」としてメインフィードバック制御に基づく機関の空燃比の補正を行わない。
<サブフィードバック補正係数の計算>
次に、サブフィードバック制御においてサブフィードバック補正係数KFidownを算出する際の作動について説明すると、CPU71は図12にフローチャートにより示したルーチンを所定時間(例えば、8msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進んでサブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
サブフィードバック制御条件は、例えば、機関の冷却水温が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上であって、機関の一回転当りの吸入空気量(負荷)が所定値以下であって、下流側空燃比センサ65が完全活性状態にある場合に成立する。
いま、サブフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ1205にて「Yes」と判定してステップ1210に進み、上記(2)式に従って、現時点での下流側目標値Voxsrefから現時点での下流側空燃比センサ65の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。
次に、CPU71はステップ1215に進んで、全気筒稼動フラグALLの値が「1」であるか否かを判定し、全筒運転時である場合(即ち、「Yes」と判定する場合)、ステップ1220に進んでローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfを上記値ωcutに設定する。一方、減筒運転時である場合(即ち、「No」と判定する場合)、CPU71はステップ1225に進んで上記カットオフ周波数ωlpfを上記減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfの最大値ωhlfmaxに設定する。
次に、CPU71はステップ1230に進んで、前記出力偏差量DVoxsを、上記設定されたカットオフ周波数ωlpfのローパスフィルタA7によりローパスフィルタ処理してローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを取得する。
次いで、CPU71はステップ1235に進み、下記(8)式に基づきローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの微分値DDVoxslowを求める。
DDVoxslow=(DVoxslow-DVoxslow1)/Δt ・・・(8)
上記(8)式において、DVoxslow1は前回の本ルーチン実行時において後述するステップ1250にて設定(更新)されたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの前回値である。また、Δtは本ルーチンの実行間隔時間(所定時間)である。
次いで、CPU71はステップ1240に進み、上記(4)式に従って、サブフィードバック制御係数KFisubを求めた後、ステップ1245に進んで、その時点におけるローパスフィルタ通過後出力偏差量の積分値SDVoxslowに上記ステップ1230にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを加えて、新たなローパスフィルタ通過後出力偏差量の積分値SDVoxslowを求め、続くステップ1250にて、上記ステップ1230にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowをローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの前回値DVoxslow1として設定した後、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上により、サブフィードバック制御係数KFisubが求められ、このサブフィードバック制御係数KFisubが前述した図9のステップ915により燃料噴射量Fiに反映されることで上述したサブフィードバック制御に基づく機関の空燃比制御が実行される。また、全筒運転時であるか減筒運転時であるかによって、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωhpfが変更される。
一方、ステップ1205の判定時において、サブフィードバック制御条件が不成立であると、CPU71は同ステップ1205にて「No」と判定してステップ1255に進んでサブフィードバック制御係数KFisubの値を「1」に設定し、続くステップ1260にてローパスフィルタ通過後出力偏差量の積分値SDVoxslowを「0」にリセットした後、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、サブフィードバック制御条件が不成立であるときは、サブフィードバック制御係数KFisubを「1」としてサブフィードバック制御に基づく機関の空燃比の補正を行わない。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の実施形態によれば、上流側触媒53の上流に配設された上流側空燃比センサ64の出力値vabyfsに基づく空燃比制御である上流側フィードバック制御(メインフィードバック制御)において、上流側空燃比センサ出力値vabyfsに基づく値(上流側空燃比偏差Dabyf)をハイパスフィルタA12(カットオフ周波数:ωhpf)によりハイパスフィルタ処理した後の値を上流側フィードバックコントローラ(PIコントローラA13)で比例・積分処理(PI処理)することでメインフィードバック補正係数KFimainが求められる。
また、上流側触媒53の下流に配設された下流側空燃比センサ65の出力値Voxsに基づく空燃比制御である下流側フィードバック制御(サブフィードバック制御)において、下流側空燃比センサ出力値Voxsに基づく値(出力偏差量DVoxs)をローパスフィルタA7(カットオフ周波数:ωlpf(=ωhpf))によりローパスフィルタ処理した後の値を下流側フィードバックコントローラ(PIDコントローラA8)で比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック補正係数KFisubが求められる。
そして、メインフィードバック補正係数KFimain、及びサブフィードバック補正係数KFisubで互いに独立に燃料噴射量Fiを補正することにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御がそれぞれ実行される。
これにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御の制御周波数帯域はそれぞれ、高周波数帯域(ωhpf以上)、低周波数帯域(ωlpf(=ωhpf)以下)となり、それぞれが互いに重複しないように設定され得る。これにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御の間の相互干渉が回避されるから、良好な空燃比制御が達成され得、この結果、エミッションの排出量を安定して抑制することができる。
また、これにより、メインフィードバック制御は、機関が過渡運転状態にある場合等における高周波数の空燃比変動(外乱等による高周波数の変動を含む。)に対する空燃比制御を達成し得る。サブフィードバック制御は、上流側触媒53の下流の空燃比変動として現れ得る程度の極低周波数での定常的な空燃比変動に対する空燃比制御を達成し得る。また、サブフィードバック制御では、PIDコントローラA8にて積分処理が実行されるから、第1触媒下流の空燃比の目標空燃比(理論空燃比)からの定常偏差が「0」になることが保証される。この結果、定常運転状態でのエミッションの排出量を効果的に低減することができる。
また、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf、及びローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfは、全筒運転時においては、上述した制御対象外周波数帯域の実質的な発生を確実に防止することを優先して、新品の上流側触媒53に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値ωcutに設定される。一方、減筒運転時においては、上述した排出周期相当周波数成分をメインフィードバック制御の制御周波数帯域から確実に外すことを優先して、上記減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfの最大値ωhlfmax(>ωcut)に設定される。これにより、全筒運転時か減筒運転時かにかかわらず安定した空燃比制御が維持され得る。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、減筒運転時において、ハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpf、及びローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfを、エンジン回転速度NEにかかわらず上記減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfの最大値ωhlfmax一定に維持するように構成されているが、減筒運転時において、現時点でのエンジン回転速度NEに応じた減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfに一致するように同カットオフ周波数ωhpf、及びωlpfを逐次変更するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfは、常にハイパスフィルタA12のカットオフ周波数ωhpfと一致するように、上記値ωcut、及び値ωhlfmax(>ωcut)の何れかに設定されるが、例えば、ローパスフィルタA7のカットオフ周波数ωlpfは、常に上記値ωcut一定に維持されてもよい。
また、上記実施形態においては、減筒運転時において、上述した排出周期相当周波数成分をメインフィードバック制御の制御周波数帯域から確実に外すため、上記カットオフ周波数ωhpf、及びωlpfを、上記値ωcutよりも大きい上記減筒運転時排出周期相当周波数ωhlfの最大値ωhlfmaxに設定しているが、減筒運転時において、上記カットオフ周波数ωhpf、及びωlpfを上記値ωcutに維持するとともに、ハイパスフィルタA12のゲインGhpfを「1」より小さい値に設定してもよい。これにより、上記排出周期相当周波数成分を含んだ振幅の大きい上流側空燃比センサ出力(信号)が上流側フィードバックコントローラ(PIコントローラA13)に入力することが防止されるため、これによっても、減筒運転時において適切な上流側フィードバック制御(メインフィードバック制御)が維持され得る。
また、上記実施形態においては、「上流側空燃比センサの出力値に基づく値」である「上流側空燃比センサの出力値と上流側目標値との相違の程度に応じた値」として、上流側空燃比センサ64の検出空燃比abyfsと上流側目標空燃比abyfrとの差が使用されているが、上流側空燃比センサ出力値vabyfsそのものと上流側目標空燃比abyfrに対応する上流側目標値との差、或いは、筒内吸入空気量Mcを検出空燃比abyfsで除した値である実際の筒内燃料供給量と同筒内吸入空気量Mcを目標空燃比abyfrで除した値である目標筒内燃料供給量との差を使用してもよい。
同様に、上記実施形態においては、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」である「下流側空燃比センサの出力値と下流側目標値との相違の程度に応じた値」として、下流側空燃比センサ出力値Voxsそのものと下流側目標値Voxsrefとの差が使用されているが、下流側空燃比センサ65の検出空燃比(図4を参照。)と目標空燃比abyfrとの差を使用してもよい。
また、上記実施形態においては、上流側フィードバック補正量としてのメインフィードバック補正係数KFimain(>0)を基本燃料噴射量Fbaseに乗じることでメインフィードバック制御を実行しているが、同メインフィードバック補正係数KFimainに相当する正負の値を採りえるメインフィードバック補正量を基本燃料噴射量Fbaseに加算することによりメインフィードバック制御を実行してもよい。
同様に、上記実施形態においては、下流側フィードバック補正量としてのサブフィードバック補正係数KFisub(>0)を基本燃料噴射量Fbaseに乗じることでサブフィードバック制御を実行しているが、同サブフィードバック補正係数KFisubに相当する正負の値を採りえるサブフィードバック補正量を基本燃料噴射量Fbaseに加算することによりサブフィードバック制御を実行してもよい。
また、上記実施形態においては、下流側空燃比センサ65の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの差DVoxsをローパスフィルタ処理した後の値DVoxslowに基づいてサブフィードバック補正係数KFisubを算出しているが、同下流側空燃比センサ65の出力値Voxsをローパスフィルタ処理した後の値と同下流側目標値Voxsrefとの差に基づいて同サブフィードバック補正係数KFisubを算出するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、フィルタ(ハイパスフィルタA12、ローパスフィルタA7)として、1次フィルタを使用しているが、各フィルタが分担するそれぞれの帯域をさらに明白に分ける必要がある場合、これらのフィルタとして2次以上のフィルタを使用してもよい。
加えて、上記実施形態においては、「上流側空燃比センサの出力値と上流側目標値との相違の程度に応じた値」としての上流側空燃比偏差DabyfをハイパスフィルタA12に入力してメインフィードバック補正係数KFimainを算出するようになっているが(図5を参照)、図13に示すように、前記上流側空燃比偏差Dabyfの代わりに上流空燃比センサ64の検出空燃比abyfsを直接ハイパスフィルタA12に入力してメインフィードバック補正係数KFimainを算出するように構成してもよい。
上記実施形態においてハイパスフィルタA12に入力される上流側空燃比偏差Dabyfは、上流空燃比センサ64の検出空燃比abyfsから上流側目標空燃比abyfr(原則的に、理論空燃比で一定)を減じた値である。従って、上流側空燃比偏差Dabyfを示す信号は、検出空燃比abyfsを示す信号と、変動の中心値が異なる一方で同じタイミング、同じ振幅で増減する同一の波形を有する信号となる。
よって、ハイパスフィルタA12を通過した後のカットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分からなる上記ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを示す信号は、検出空燃比abyfsをハイパスフィルタA12に入力した場合の同ハイパスフィルタA12の出力値を示す信号と、全く同一の値をとる信号となる。
以上のことから、図5に示した機能ブロック図において上流側空燃比偏差算出手段A11を省略した図13に示した機能ブロック図に基づく構成においても、上記実施形態と全く同一の作用・効果が得られる。
本発明の実施形態に係る空燃比制御装置を適用した内燃機関の概略図である。 図1に示したエアフローメータの出力電圧と計測された吸入空気流量との関係を示したグラフである。 図1に示した上流側空燃比センサの出力電圧と空燃比との関係を示したグラフである。 図1に示した下流側空燃比センサの出力電圧と空燃比との関係をそれぞれ示したグラフである。 図1に示した空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を実行する際の機能ブロック図である。 図5に示したハイパスフィルタ、及びローパスフィルタについての全筒運転時における周波数−ゲイン特性をそれぞれ示した図である。 上流側空燃比センサ出力における排気周期相当周波数成分の変化の一例を全筒運転時と減筒運転時とで比較しながら示したタイムチャートである。 図5に示したハイパスフィルタ、及びローパスフィルタについての減筒運転時における周波数−ゲイン特性をそれぞれ示した図である。 図1に示したCPUが実行する燃料噴射量計算のためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する気筒休止制御を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するメインフィードバック補正係数を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するサブフィードバック補正係数を計算するためのルーチンを示したフローチャートである。 本発明の実施形態の変形例に係る空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を実行する際の機能ブロック図である。 従来の空燃比制御装置が使用するハイパスフィルタ、及びローパスフィルタについての周波数−ゲイン特性をそれぞれ示した図である。
符号の説明
10…内燃機関、25A,25B…燃焼室、38A,38B…インジェクタ、52A,52B…エキゾーストパイプ(排気管)、53A,53B…三元触媒(上流側触媒)、64A,64B…上流側空燃比センサ、65A,65B…下流側空燃比センサ、70…電気制御装置、71…CPU、A7…ローパスフィルタ、A12…ハイパスフィルタ、A14…HPF特性変更手段、A15…LPF特性変更手段

Claims (3)

  1. 内燃機関の運転中において常時稼働される気筒である少なくとも一つの常時稼働気筒と、同内燃機関の運転中において休止され得る気筒である少なくとも一つの休止対象気筒と、からなる複数の気筒を備えるとともに、
    前記内燃機関の運転状態に応じて、前記複数の気筒の全てが稼働する全気筒稼働状態と前記休止対象気筒が休止する一部気筒休止状態との何れかを選択するとともに同複数の気筒の状態を同選択された状態に設定する気筒休止機構と、
    少なくとも一つの前記常時稼働気筒と少なくとも一つの前記休止対象気筒とから排出される排ガスが集合せしめられて成る排ガスが通過する排気通路に配設された触媒と、
    前記触媒よりも上流の前記排気通路に配設された上流側空燃比センサと、
    前記触媒よりも下流の前記排気通路に配設された下流側空燃比センサと、
    前記内燃機関の運転状態に応じた量の燃料を噴射する燃料噴射手段と、
    を備えた内燃機関に適用される内燃機関の空燃比制御装置であって、
    前記上流側空燃比センサの出力値に基づく値であってハイパスフィルタ処理がなされている値に基づいて上流側フィードバック補正量を算出し、前記算出された上流側フィードバック補正量により前記燃料噴射手段により噴射される燃料噴射量を補正することで前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する上流側フィードバック制御手段と、
    前記下流側空燃比センサの出力値に基づく値に基づいて下流側フィードバック補正量を算出し、前記算出された下流側フィードバック補正量により前記燃料噴射手段により噴射される燃料噴射量を補正することで前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する下流側フィードバック制御手段と、
    前記全気筒稼働状態が選択されているか前記一部気筒休止状態が選択されているかによって前記上流側フィードバック制御手段による前記ハイパスフィルタ処理におけるフィルタ特性を変更するフィルタ特性変更手段と、
    を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記フィルタ特性変更手段は、
    前記一部気筒休止状態が選択されている場合、前記全気筒稼働状態が選択されている場合に比して、前記上流側フィードバック制御手段による前記ハイパスフィルタ処理におけるハイパスフィルタのカットオフ周波数をより高くするように構成された内燃機関の空燃比制御装置。
  3. 請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記下流側フィードバック制御手段は、
    前記下流側空燃比センサの出力値に基づく値であってローパスフィルタ処理がなされている値に基づいて前記下流側フィードバック補正量を算出するように構成されるとともに、
    前記フィルタ特性変更手段は、
    前記一部気筒休止状態が選択されている場合、前記全気筒稼働状態が選択されている場合に比して、前記下流側フィードバック制御手段による前記ローパスフィルタ処理におけるローパスフィルタのカットオフ周波数をより高くするように構成された内燃機関の空燃比制御装置。
JP2004283163A 2004-09-29 2004-09-29 内燃機関の空燃比制御装置 Expired - Fee Related JP4196919B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004283163A JP4196919B2 (ja) 2004-09-29 2004-09-29 内燃機関の空燃比制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004283163A JP4196919B2 (ja) 2004-09-29 2004-09-29 内燃機関の空燃比制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006097521A JP2006097521A (ja) 2006-04-13
JP4196919B2 true JP4196919B2 (ja) 2008-12-17

Family

ID=36237588

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004283163A Expired - Fee Related JP4196919B2 (ja) 2004-09-29 2004-09-29 内燃機関の空燃比制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4196919B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007291984A (ja) * 2006-04-26 2007-11-08 Toyota Motor Corp 内燃機関の空燃比制御装置
JP4931740B2 (ja) * 2007-07-04 2012-05-16 日立オートモティブシステムズ株式会社 内燃機関の制御装置
JP5152097B2 (ja) * 2009-05-08 2013-02-27 株式会社デンソー ガスセンサの信号処理装置
JP5494564B2 (ja) * 2011-05-02 2014-05-14 トヨタ自動車株式会社 排気ガスセンサの信号処理装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006097521A (ja) 2006-04-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3846480B2 (ja) 内燃機関の排気浄化装置
KR100773276B1 (ko) 내연 기관의 공연비 제어 장치
JP4957559B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP2004028029A (ja) 触媒劣化判定装置
JP2013011222A (ja) 内燃機関の制御装置
JP5644291B2 (ja) 内燃機関の燃料噴射量制御装置
JP5617616B2 (ja) 多気筒内燃機関の制御装置
JP2008150970A (ja) 内燃機関の制御装置
JP3922091B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP6451688B2 (ja) 内燃機関の排気浄化システム
JP6915440B2 (ja) 内燃機関の制御装置
JP4305358B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
WO2016143822A1 (ja) 排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法
JP4196919B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
WO2018193833A1 (ja) 内燃機関の排気処理装置
JP2012145054A (ja) 多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置
JP4936018B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP4139373B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP4299218B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP4245535B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP2006112274A (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP2009030478A (ja) 内燃機関のpm排出量推定システム及び内燃機関の排気浄化システム
JP4883000B2 (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP2013047484A (ja) 内燃機関の空燃比制御装置
JP2010048184A (ja) エンジンの空燃比制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070508

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080630

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080909

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080922

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111010

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111010

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111010

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121010

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121010

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131010

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees