JP4194387B2 - 加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、複写機・プリンタ等の画像形成装置において、熱軟化樹脂トナー画像を形成担持させた記録材を加熱して、記録材上に固着像を形成する定着装置として用いて好適な加熱装置に関する。
【0002】
より詳しくは、内部に熱源がない回転体と、前記回転体と共にニップ部を形成する加圧部材と、前記回転体を前記ニップ部とは異なる加熱部で前記回転体の外周面から加熱する加熱部材と、を有し、前記ニップ部で被加熱材を挟持搬送して前記回転体の熱により加熱する加熱装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
便宜上、電子写真複写機・プリンタ・ファックス等の画像形成装置を例にして説明する。
【0004】
画像形成装置における定着装置は、画像形成装置の作像部に於いて電子写真・静電記録・磁気記録などの適宜の画像形成プロセス手段により、加熱溶融性の樹脂等よりなるトナー(顕画剤)を用いて記録材の面に直接方式若しくは間接(転写)方式で形成した未定着トナー画像を記録材面に固着画像として加熱定着処理をする装置である。
【0005】
従来、そのような定着装置としては、熱ローラ方式やフィルム加熱方式をあげることができる。
【0006】
熱ローラ方式は定着ローラ(熱ローラ)と加圧ローラとの回転ローラ対を形成して、定着ローラ内にハロゲンランプ等の熱源を内蔵させて所定の定着温度に加熱・温調し、ローラ対の圧接ニップ部(定着ニップ部)に、被加熱材としての、未定着トナー画像を形成担持させた記録材を導入して挟持搬送させることで未定着のトナー画像を記録材面に加熱定着させる加熱装置である。
【0007】
フィルム加熱方式は上記熱ローラの代わりに小熱容量のフィルムを用いて、フィルムと加圧ローラとで記録材を挟持・搬送するとともに、フィルム内面に配されたヒータにより記録材を加熱する加熱装置である。フィルム加熱方式は昇温時間が短く、オンデマンド定着装置として利用されている。
【0008】
一方、定着ローラやフィルムにゴム等の弾性層被覆を設ける場合には、内面からの加熱では弾性層が断熱層として働いて、フィルム加熱方式においても昇温時間が延びてオンデマンド性を確保することが難しくなる。
【0009】
被加熱材としての記録材を加熱するための回転体の表面に弾性層や離型層等の断熱的な被覆を設ける場合には、その回転体の表面側から加熱する表面加熱方式の装置も考案されている(例えば、特許文献1参照)。この方式の装置によれば、加熱用回転体に熱を表面から供給できるために加熱源としてのヒータの点灯に対する応答がよく、弾性層が被覆された回転体を用いる場合でも立ち上げ時間の短縮を図ることができる。
【特許文献1】
特開平10−133505号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこの表面加熱方式の装置においては、回転体の温度は表面から深部に向けて低くなる温度勾配となり、被加熱材としての記録材を挿通して回転体の表面から熱が奪われても、回転体内側からの熱供給はほとんど行われない。その結果、蓄熱量の多い回転体1周目と、それ以降とで記録材に与える熱量が異なり、加熱ムラによるグロスムラ(光沢度の不均一)が発生するという問題があった。
【0011】
したがって、立ち上げ時間を短縮し、グロスムラなどの加熱ムラに起因する画像不良が発生しない定着装置が要望されている。
【0012】
本発明はこのような要望に応え得る表面加熱方式の加熱装置を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内部に熱源がない回転体と、前記回転体と共にニップ部を形成する加圧部材と、前記回転体を前記ニップ部とは異なる加熱部で前記回転体の外周面から加熱する加熱部材と、を有し、前記ニップ部で被加熱材を挟持搬送しつつ前記回転体の熱により加熱する加熱装置において、前記加熱部材を制御する制御手段を有し、前記回転体の回転方向において前記ニップ部から前記加熱部までの距離をL、前記回転体の移動速度をVとすると、前記制御手段は、前記回転体から被加熱材に供給する熱量が被加熱材の先端から後端に亘って一定となるように、被加熱材先端が前記ニップ部に進入した時点から時間L/V経過したタイミング、または時間L/Vよりも前記加熱部材の温度上昇に要する時間分早いタイミングで前記加熱部材の温度を上昇させて、被加熱材と一度接触した前記回転体の表面の領域が再び同一の被加熱材と接触する前に、その表面温度を一度目の接触時より高くすることを特徴とする加熱装置、である。
【0014】
〈作 用〉
すなわち、被加熱材を挿通して加熱するニップと異なる回転体表面部位にて加熱部材により表面加熱方式で熱補給を受ける回転体が、ニップに対する被加熱材挿通開始後、一周分回転する前に、回転体を加熱する加熱部材の制御温度を上げることにより、回転体の被加熱材への熱供給能力を一定に保つことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
〈実施形態例1〉(図1〜6、11、12)
(1)画像形成装置例
図2は画像形成装置の一例の概略構成図である。本例の画像形成装置は電子写真フルカラープリンタであり、記録材の幅中央を装置長手方向の中央に揃えて通紙する中央基準の装置である。
【0018】
11は有機感光体でできた電子写真感光体ドラム(像担持体)であり、矢印の時計廻りに所定のプロセススピード(周速度)V(=120mm/sec)で回転駆動される。
【0019】
感光体ドラム11はその回転過程で帯電ローラなどの帯電装置12で所定の極性・電位の一様な帯電処理を受ける。
【0020】
次いでその帯電処理面にレーザ光学箱(レーザスキャナ)13から出力されるレーザ光13aによる、目的画像情報の走査露光処理を受ける。レーザ光学箱13は不図示のコンピュータ等の画像信号発生装置からの目的画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調(オン/オフ)したレーザ光13aを出力して感光体ドラム面を走査露光するもので、この走査露光により感光体ドラム11面に走査露光した目的画像情報に対応した静電潜像が形成される。13bはレーザ光学箱13からの出力レーザ光13aを感光体ドラム11の露光位置に反射させるミラーである。
【0021】
フルカラー画像形成の場合は、目的のフルカラー画像の第1の色分解成分画像、例えばイエロー成分画像についての走査露光・潜像形成がなされ、その潜像が4色現像装置14のうちイエロー現像器14Yの作動でイエロートナー像として現像される。そのイエロートナー像は感光体ドラム11と中間転写ドラム16との接触部(或いは近接部)である一次転写部T1において中間転写ドラム16の面に転写される。中間転写ドラム16面に対するトナー像転写後の感光体ドラム11面はクリーナ17により転写残りトナー等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
【0022】
上記のような帯電・走査露光・現像・一次転写・清掃のプロセスサイクルが、目的のフルカラー画像の、第2(例えばマゼンタ成分画像、マゼンタ現像器14Mが作動)、第3(例えばシアン成分画像、シアン現像器14Cが作動)、第4(例えば黒成分画像、黒現像器14BKが作動)の各色分解成分画像について順次に実行され、中間転写ドラム16面にイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、黒トナー像の都合4色のトナー像が順次重ねて転写されて、目的のフルカラー画像に対応したカラー画像が合成形成される。
【0023】
中間転写ドラム16は金属ドラム上に中抵抗の弾性層と高抵抗の表層を有するもので、感光体ドラム11に接触して或いは近接して感光体ドラム11と略同じ周速度で矢印の反時計方向に回転駆動され、金属ドラムにバイアス電位を与えて感光体ドラム11との電位差で感光体ドラム11側のトナー像を該中間転写体ドラム16面側に転写させる。
【0024】
上記の中間転写ドラム16面に合成されたカラートナー画像は、該中間転写ドラム16と転写ローラ15との接触ニップである二次転写部T2において、該二次転写部T2に不図示の給紙部から所定のタイミングで送り出された記録材Pの面に転写されていく。転写ローラ15は記録材Pの背面からトナーと逆極性の電荷を供給することで中間転写ドラム16面側から記録材P側へ合成カラートナー画像を順次に一括転写する。
【0025】
二次転写部T2を通過した記録材Pは中間転写ドラム16の面から分離されて定着装置10へと導入され、未定着トナー像の加熱定着処理を受けてカラー画像形成物として機外の不図示の排紙トレーに排出される。
【0026】
定着装置10は本発明に従う加熱装置である。定着装置10については次の(2)項で詳述する。
【0027】
記録材Pに対するカラートナー像転写後の中間転写ドラム16はクリーナ18により転写残りトナー・紙粉等の付着残留物の除去を受けて清掃される。このクリーナ18は常時は中間転写ドラム16に非接触状態に保持されており、中間転写ドラム16から記録材Pに対するカラートナー画像の二次転写実行過程において中間転写ドラム16に接触状態に保持される。
【0028】
また、転写ローラ15も第4の色(BK)が画像形成される前は中間転写ドラム16に非接触状態に保持されており、中間転写ドラム16から記録材Pに対するカラートナー画像の二次転写実行過程において中間転写ドラム16に接触状態に保持される。
【0029】
上記フルカラー画像形成動作に対して、モノカラー画像形成動作では黒現像器14BKのみを動作させて、現像器を切り替えることをしない。中間転写ドラム16上には引き続いて次ページの画像を形成可能であり、転写ローラ15及びクリーナ18は中間転写ドラム14に対して当接状態のまま一連の画像形成動作を行う。したがって、モノカラー画像形成時にはフルカラー画像形成の約4倍の速度で画像形成可能になり、本例ではフルカラーで毎分4ページ(A4サイズ)、モノカラーで毎分16ページの記録速度となる。
【0030】
以上の動作を繰り返すことで、次々と画像形成を行なうことができる。図11にこの画像形成装置の動作工程図を示した。
【0031】
1)前多回転工程
画像形成装置の始動(起動)動作期間(ウォーミング期間)である。画像形成装置のメイン電源スイッチのONにより、画像形成装置のメインモータを起動させて、所要のプロセス機器の準備動作を実行する。
【0032】
2)スタンバイ
所定の始動動作期間終了後、メインモータの駆動が停止し、プリントジョブ開始信号が入力されるまで画像形成装置をスタンバイ(待機)状態に保持する。
【0033】
3)前回転工程
プリントジョブ開始信号の入力に基づいて、メインモータを再駆動させて、所要のプロセス機器のプリントジョブ前動作を実行する期間である。
【0034】
より実際的は、▲1▼画像形成装置がプリントジョブ開始信号を受信、▲2▼フォーマッタで画像を展開(画像のデータ量やフォーマッタの処理速度により展開時間は変わる)、▲3▼前回転工程開始、という順序になる。
【0035】
なお、前記1)の前多回転工程中にプリントジョブ開始信号が入力している場合は、前多回転工程の終了後、前記2)のスタンバイ無しに、引き続き前回転工程に移行する。
【0036】
4)プリントジョブ実行
所定の前回転工程が終了すると、引き続いて前記の画像形成プロセスが実行されて、画像形成済みの記録材が出力される。
【0037】
連続プリントジョブの場合は前記の画像形成プロセスが繰返されて所定枚数分の画像形成済みの記録材が順次に出力される。
【0038】
5)紙間工程
連続プリントジョブの場合において、一の記録材Pの後端と次の記録材Pの先端との間隔工程であり、転写部や定着装置においては非通紙状態期間である。
【0039】
5)後回転工程
1枚だけのプリントジョブの場合その画像形成済みの記録材が出力された後(プリントジョブの終了)、あるいは連続プリントジョブの場合その連続プリントジョブの最後の画像形成済みの記録材が出力された後(プリントジョブの終了)もメインモータを引き続き駆動させて、所要のプロセス機器のプリントジョブ後動作を実行する期間である。
【0040】
6)スタンバイ
所定の後回転工程終了後、メインモータの駆動が停止し、次のプリントジョブ開始信号が入力されるまで画像形成装置をスタンバイ(待機)状態に保持する。
【0041】
(2)定着装置10
図1は定着装置10の横断面模型図である。この定着装置10は本発明に従う表面加熱方式の加熱装置であり、被加熱材である記録材Pを加熱するための回転体としての定着ローラ1(内部に熱源がない回転体)と、この定着ローラ1と共にニップ(ニップ部)N1を形成する対向部材としての加圧ローラ3(加圧部材)と、定着ローラ1を表面加熱する加熱部材(回転体を外周面から加熱する加熱部材)としての表面加熱ユニット2と、この表面加熱ユニット2による定着ローラ加熱温度を制御する温度制御手段(加熱部材を制御する制御手段)5・100・101と、を具備している。
【0042】
定着ローラ1は、芯金1aと、該芯金の外周を被覆させた3mm厚のシリコーンゴム層1b、さらにその外周を被覆させた50μm厚のPFA樹脂1cからなる外径20mmの弾性ローラである。
【0043】
同様に加圧ローラ3は、芯金3aと、該芯金の外周を被覆させた3mm厚のシリコーンゴム層3b、さらにその外周を被覆させた50μm厚のPFA樹脂3cからなる外径20mmの弾性ローラであり、所定の加圧力(100N)で定着ローラ1に加圧されて、被加熱材加熱用ニップ部としての定着ニップN1を形成する。
【0044】
表面加熱ユニット2は、加熱手段(加熱源)としてのセラミックヒータ2bを支持するヒータホルダ2cの周囲に回転自在にエンドレスベルト状(円筒状)の加熱フィルム2aを外嵌したもので、加圧ステー2dによりヒータホルダ2cを定着ローラ1に対し定着ローラ1の弾性層1bの弾性に抗して加圧して、ヒータ2bを定着ローラ1に対し加熱フィルム2aを介して圧接させることで、加熱ニップN2(ニップ部N1とは異なる加熱部)を形成させてある。
【0045】
加熱フィルム2aは厚み40μmのPI(ポリイミド)樹脂の表面に10μmのPFA樹脂を被覆したもので、周長は56.5mmのものを用いた。セラミックヒータ2bは幅8mm、厚み1mmのアルミナの上に抵抗体を印刷により形成し、その上をガラスで保護した出力700Wのものを用いた。
【0046】
定着ローラ1は駆動手段Mにより図1において矢印の時計方向に回転駆動される。この定着ローラ1の回転駆動に伴い加圧ローラ3が定着ニップN1内の摩擦により矢印の反時計方向に従動回転する。また表面加熱ユニット2の加熱フィルム2aが加熱ニップN2内の摩擦によりその内面側がヒータ2bの面に密着摺動しながらヒータホルダ2cの外回りを矢印の反時計方向に従動回転する。
【0047】
また、表面加熱ユニット2の加熱手段としてのセラミックヒータ2bは給電回路101から通電発熱抵抗層に対して通電がなされることで迅速に昇温する。このヒータ2bの発熱により加熱ニップN2において回転定着ローラ1の表面が加熱フィルム2aを介して加熱される。
【0048】
本例ではセラミックヒータ2bの裏面に温度検知手段としてのサーミスタ5を当接させてある。このサーミスタ5による検知温度を基に、温度制御手段であるところの制御回路100は給電回路101からセラミックヒータ2bへの給電状態を制御して定着ローラ1の表面温度が所定の定着温度に保たれるように温調制御している。
【0049】
定着ローラ1が回転駆動され、これに伴い加圧ローラ3および表面加熱ユニット2の加熱フィルム2aが従動回転し、表面加熱ユニット2のセラミックヒータ2bに通電がなされて定着ローラ1の表面温度が所定の定着温度に加熱温調された状態において、定着ローラ1と加圧ローラ3との間の定着ニップN1に被加熱材としての、未定着トナー像tを担持した記録材Pが導入されることで、記録材Pは定着ローラ1の外面に密着して該定着ローラ1と一緒に定着ニップN1を通過していき、該定着ニップ通過過程で、定着ローラ1からの熱伝導によってトナー像tが加熱されてトナー像の加熱定着がなされる。定着ニップN1を通った記録材Pは定着ニップN1の記録材出口側で定着ローラ1の外面から分離されて搬送される。
【0050】
(3)温度制御
本例では、定着ローラ1に対して表面加熱ユニット2により定着ローラ表面から熱を供給しており、この定着ローラ1に与えられた熱で記録材Pを加熱する。定着ローラ表面の温度変化に追従し、且つ目標温度にすばやく収束させるために、制御回路(CPU)100はPID(過去の温度の時間変化を基に比例・積分・微分処理して次の状態を決定する)制御によってセラミックヒータ2bの給電状態を制御する。
【0051】
図3は本例の制御を経過時間とともに示したもので、定着ニップN1に記録材Pが挿入された時(被加熱材先端がニップ部に進入した時点)を起点に、目標温度及びセラミックヒータ2bに投入する電力を示している。
【0052】
本例では、定着ローラ1の記録材Pに対する熱供給能力を一定に保つために、目標温度を1周目はT1=200℃、2周目以降はT2=250℃に変更する。本例におけるセラミックヒータ2b及び加熱フィルム2aの熱容量が非常に小さく、瞬間的に加熱フィルム2aを昇温させることができる(停止時昇温速度は約80deg/sec)。したがって、記録材Pが定着ニップN1に挿入された時から、定着ローラ1が、定着ニップN1から加熱ニップN2までの距離L(L=40mm)を回転(移動速度をVとする)する時間s1(=L/V)後に、目標温度をT1からT2に切り替えればよい。
即ち、制御手段は、回転体から被加熱材に供給する熱量が被加熱材の先端から後端に亘って一定となるように、被加熱材先端が前記ニップ部に進入した時点から時間L/V経過したタイミングで、加熱部材の温度を上昇させて、被加熱材と一度接触した回転体の表面の領域が再び同一の被加熱材と接触する前に、その表面温度を一度目の接触時より高くする。
【0053】
以下図12のフローチャートに沿って本例の動作を説明する。
【0054】
1)プリント開始とともにセラミックヒータ2bに通電が開始され、サーミスタ5の検知温度を基に目標温度T1に温度制御する。
【0055】
2)記録材が定着ニップN1に到達した時点でタイマーsを初期化し、上記時間s1経過したタイミングで目標温度をT2に切り替える。
【0056】
3)連続プリント動作の場合には次の記録材に備えて、記録材が定着ニップN1から排出されるタイミングから、定着ローラ1が加熱ニップN2から定着ニップN1の距離を回転する時間s2さかのぼって目標温度をT2からT1に戻す。この動作により紙間での定着ローラ1の過昇温を避けることができる。
【0057】
4)プリント終了時にはヒータ通電をOFFにする。
なお、制御回路100は、記録材Pが給紙されてそれが定着ニップに到達して挿入される時点および定着ニップから排出される時点を、記録材Pが給紙された時点あるいは、レジストローラでタイミング給送された時点、記録材Pの搬送速度、記録材サイズ等の情報から演算して上記図3の温度制御を経過時間とともに行う。
【0058】
(4)比較例
図4は本例の現象を説明するためのモデル図である。図4の(a)は、従来例である定着ローラ内側から加熱するタイプのシリコーンゴム層内の温度分布を示したもので、定着ローラ表面(ゴム外側)の温度T0を得るためにゴム深層部は高い温度に保持されていている。このような状態に達するには多くの熱量を必要とし、したがって定着可能な温度に達するまで時間がかかることになる。一方、定着ローラ表面が記録材に熱供給した後、持続的に深層部の高温域より熱が供給されて、2周目においてもほぼ1周目と同様な状態が保たれる。
【0059】
図4の(b)は表面加熱方式の定着装置を用いて、定着ローラ1の表面を一定の温度T1(180℃)に維持した比較例の場合であり、記録材Pを定着ニップN1に挿通する場合のシリコーンゴム層1b内の温度分布変化を示したモデルである。
【0060】
記録材Pが通紙されて、定着ローラ1が1周する間は、記録材が通紙される前(紙間や前回転)の加熱により表面のみならず、ローラ深部及び表面近傍で蓄熱しており熱供給能力は高い。一方、2周目以降の加熱ニップN2内ではローラ表面近傍のみが加熱されるため温度は上昇するものの、定着ニップN1では熱緩和(熱拡散により温度が平均化される現象)して実際の温度は低く、熱供給能力は低下すると考えられる。
【0061】
このような状態で、排紙された記録材Pの温度を観測すると図5に示すように1周目と2周目以降に相当する部分とで階段状に低下する様子が確認される。
【0062】
図4の(c)は本例の特徴を示すもので、上記温度制御を実施した場合のシリコーンゴム層1b内の温度分布変化を示したモデルである。
【0063】
本例では上記温度制御により、蓄熱量が多い1周目と、蓄熱量が少ない2周目以降とで定着ローラ1の表面温度をT1からT2に変更し、熱緩和後の温度分布状態が1周目と2周目以降で同等になるようにし、熱供給能力を均一に維持する。
【0064】
これによって、この排紙された記録材の温度が図6に示すようにほぼ一定(90℃)になるようにセラミックヒータ2bに給電されて制御される。
【0065】
上記図4の(b)温度分布変化の比較例と本例の画像形成装置で出力した記録材上の画像グロスを測定すると、表1の結果となる。
【0066】
【表1】
【0067】
比較例のように階段状の温度変化が発生する定着装置では、温度変化の切り変わり目である1周目と2周目とで大きなグロス変化が見られるのに対して、本例の温度制御によれば、グロス変化が抑えられていることがわかる。
【0068】
なお、本例では、昇温速度が高いフィルム加熱方式による例を示したが、昇温に時間を要する熱容量の大きい加熱手段を用いる場合には、昇温に要する時間分先立って、目標温度の切り替えを行うことにより、即ち、時間L/Vよりも加熱部材の温度上昇に要する時間分早いタイミングで、加熱部材の温度を上昇させることにより、本例と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、セラミックヒータ1bに供給する電力を1周目と2周目以降とで変更して、定着ローラの熱供給能力の均一化を図り同様な効果を得ることができる。
【0070】
〈実施形態例2〉(図7、8、13)
図7は本実施形態例2における定着装置10の横断面模型図である。本例の装置10は前述図1の装置との対比において、サーミスタ5の配置が異なる点及び温度制御を除いて他は同じである。
【0071】
本例における定着装置10の場合は、図7のように、表面加熱ユニット2においてヒータ2b(加熱ニップN2)よりも定着ローラ回転方向上流側においても加熱フィルム2aが定着ローラ面に接触するフィルム延長接触部C1が形成されるようにヒータホルダ2cのフィルムガイド面形状を構成してある。すなわち、加熱フィルム2aはヒータホルダ2cにガイドされて加熱ニップN2及びその上流の接触部C1で定着ローラ1に接触する。
【0072】
そして、上記表面加熱ユニット2のフィルム延長接触部C1において、加熱フィルム2aの定着ローラ1が接触する面の逆側のフィルム面、すなわちフィルム内面(裏面)に、温度検知手段であるところのサーミスタ5を押圧バネ等により常時加圧当接させて具備させてある。
【0073】
上記温度検知方式によれば、通紙による定着ローラ1の温度低下が検知温度に反映されるため、目標温度との乖離がセラミックヒータ2bに供給される電力にフィードバックされやすく、一層定着ローラ1の熱供給能力を均一に維持することができる。
【0074】
図8は本例の制御を経過時間とともに示したもので、定着ニップN1に記録材Pが挿入された時を起点に、目標温度、セラミックヒータ2bに投入する電力を示している。
【0075】
本例ではサーミスタ5は、定着ローラ1に記録材先端が接した部分が加熱ニップN2に達する前に温度低下を検知し、この検知により制御回路100はセラミックヒータ2bに供給する電力をある程度増加させる。
【0076】
図13は本例の制御フローを示したものである。本例では定着ローラ1に記録材先端が接した部分が加熱ニップN2に達するタイミングs1で、目標温度をT3=190℃からT4=220℃に切り替えることにより、不足分を補って定着ローラ1に十分な熱量を供給し、2周目以降も記録材Pへの熱供給能力を維持させることができる。
【0077】
したがって、前記実施形態例1と同様に、記録材Pの排紙温度を一定に保つことができて、周回によるグロスの低下を抑えることができる。
【0078】
〈実施形態例3〉(図9、10、14)
図9は本実施形態例2における定着装置10の横断面模型図である。本例の装置10は前述図1の装置10との対比において、サーミスタ5の配置が異なる点及び温度制御を除いて他は同じである。
【0079】
すなわち、本例の装置は、ヒータ2b(加熱ニップN2)よりも定着ローラ回転方向下流側において加熱フィルム2aが定着ローラ面に接触するフィルム延長接触部C2が形成されるようにヒータホルダ2cのフィルムガイド面形状を構成してあり、加熱フィルム2aはヒータホルダ2cにガイドされて加熱ニップN2及びその下流の接触部C2で定着ローラ1に接触する。そして、上記表面加熱ユニット2のフィルム延長接触部C2において、加熱フィルム2aの定着ローラ1が接触する面の逆側のフィルム面、すなわちフィルム内面(裏面)に、温度検知手段であるところのサーミスタ5を押圧バネ等により常時加圧当接させて具備させてある。
【0080】
本例の制御フローを図14に示す。本例では、サーミスタ5を加熱源であるセラミックヒータ2bよりもフィルム回転方向下流側に配置してあるため、セラミックヒータ2bの加熱状況をサーミスタ5が高い応答性で検知し、フィードバック制御の安定性(収束性)を高めることができる。
【0081】
一方、定着ローラ1に記録材Pの先端が接触した部分が、加熱ニップN2に到達した時点s1でサーミスタ5はその温度低下を検知することができない。そこで、そのタイミングで目標温度をT5=180℃からT6=200℃へと変更する。なお、このタイミングは記録材Pが給紙されて、定着装置10に到達する時間から正確に予測することができる。さらに、定着ローラ1に記録材の先端が接触した部分がサーミスタ5の位置にきた時点s3で、目標温度をT7=230℃に変更することにより、定着ローラ1の熱供給能力を維持する。
【0082】
T7としては排紙後の記録材の温度が1周目と2周目以降が同じになるように設定するのが好ましい。T6はT5とT7の間の温度であり、PID制御による立ち上がり時間を考慮して、T5とT6の目標温度差で速やかに電力供給が行われるように設定する。
【0083】
図10は本例の制御を経過時間とともに示したもので、定着ニップN1に記録材Pが挿入した時を起点に、目標温度、セラミックヒータ2bに投入する電力を示している。
【0084】
上記温度制御により、定着ローラの2周目以降の表面温度を上昇させて、1周目と2周目以降の記録材に対する熱供給量を均一にすることができて、グロスムラ等の画像不均一性を無くすことができる。
【0085】
〈その他〉
a)加熱用回転体1はローラ体に限られず、回動ベルト体にすることもできる。
【0086】
b)表面加熱ユニット2について、加熱源としてはセラミックヒータ2bに限られない。例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータや、電磁誘導発熱部材などを用いることもできる。またセラミックヒータはセラミックの絶縁基板の代わりに金属板の表面を絶縁処理したものを用いることもできる。
【0087】
またフィルム2aは金属製フィルムにすることもできる。該金属製フィルム自体を電磁誘導発熱性のものにして、励磁手段で発熱させる構成にすることもできる。
【0088】
表面加熱ユニット2は赤外線ランプ装置等の非接触型の加熱部材にすることもできる。
【0089】
c)実施形態例1〜3において加圧用回転体3は、加圧ローラの代わりに、特開2001−228731公報に開示されているエンドレスベルトと加圧部材からなる加圧フィルムユニットを用いて小熱容量化を図ってもよい。
【0090】
d)本発明の加熱装置は実施形態例の画像加熱定着装置に限らず、画像を担持した記録材を加熱してつや等の表面性を改質する像加熱装置、仮定着する像加熱装置、その他、被加熱材の加熱乾燥装置、加熱ラミネート装置など、広く被加熱材を加熱処理する手段・装置として使用できる。
【0091】
以上、本発明の様々な例と実施例が示され説明されたが、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲は本明細書内の特定の説明と図に限定されるのではなく、本願特許請求の範囲に全て述べられた様々の修正と変更に及ぶことが理解されるであろう。本発明の実施態様の例を以下に列挙する。
【0092】
〔実施態様1〕回転体と、前記回転体とニップを形成する対向部材と、前記回転体を前記ニップとは異なる回転体表面部位で加熱する加熱部材と、前記加熱部材による回転体加熱温度を制御する温度制御手段と、を具備し、前記ニップに被加熱材を挿通して挟持搬送させ前記回転体の熱により加熱する加熱装置であって、前記温度制御手段は前記ニップに対する被加熱材挿通開始後、前記回転体が一周分回転する前に、前記加熱部材の制御温度を上げることを特徴とする加熱装置。
【0093】
〔実施態様2〕前記温度制御手段は、前記被加熱材の前記ニップからの排出完了以前に、前記加熱部材の制御温度を下げることを特徴とする実施態様1に記載の加熱装置。
【0094】
〔実施態様3〕前記回転体の回転方向に沿って、前記ニップから前記加熱部材による回転体表面加熱部位までの距離をLとし、前記回転体の回転する接線速度をVとするとき、前記温度制御手段は、前記被加熱材の前記ニップに対する挿通開始後、L/V前に、前記加熱部材の制御温度を上げることを特徴とする実施態様1または2に記載の加熱装置。
【0095】
〔実施態様4〕回転体と、前記回転体とニップを形成する対向部材と、前記回転体を前記ニップとは異なる回転体表面部位で加熱する加熱部材と、前記加熱部材による回転体加熱温度を制御する温度制御手段と、を具備し、前記ニップに被加熱材を挿通して挟持搬送させ前記回転体の熱により加熱する加熱装置であって、前記温度制御手段は、前記被加熱材の前記ニップに対する挿通開始後、前記回転体が一周分回転する前に、前記加熱部材に供給する電力を上げることを特徴とする加熱装置。
【0096】
〔実施態様5〕前記温度制御手段は、前記被加熱材の前記ニップからの排出完了以前に、前記加熱部材に供給する電力を下げることを特徴とする実施態様4に記載の加熱装置。
【0097】
〔実施態様6〕前記回転体の回転方向に沿って、前記ニップから前記加熱部材による回転体表面加熱部位までの距離をLとし、前記回転体の回転する接線速度をVとするとき、前記温度制御手段は、前記被加熱材の前記ニップに対する挿通開始後、L/V前に、前記加熱部材に供給する電力を上げることを特徴とする実施態様4または5に記載の加熱装置。
【0098】
〔実施態様7〕前記加熱部材はフィルムを介して前記回転体の表面加熱を行うものであって、前記温度制御手段は、前記フィルムが前記回転体の表面に接触する部位において、前記回転体が接触するフィルム面とは逆側のフィルム面に接触する温度検知手段を具備することを特徴とする実施態様1乃至6の何れか一つに記載の加熱装置。
【0099】
〔実施態様8〕前記温度検知手段を、前記フィルムが前記回転体の表面に接触する部位において回転体回転方向上流側に配したことを特徴とする実施態様7に記載の加熱装置。
【0100】
〔実施態様9〕前記温度検知手段を、前記フィルムが前記回転体の表面に接触する部位において回転体回転方向下流側に配したことを特徴とする実施態様7に記載の加熱装置。
【0101】
〔実施態様10〕前記加熱部材はセラミックヒータを加熱源として具備し、前記温度制御手段の温度検知手段を前記セラミックヒータの裏面に配したことを特徴とする実施態様1乃至6の何れか一つに記載の加熱装置。
【0102】
〔実施態様11〕前記対向部材は回転体であることを特徴とする実施態様1乃至10の何れか一つに記載の加熱装置。
【0103】
〔実施態様12〕前記被加熱材が画像を担持した記録材であることを特徴とする実施態様1乃至11の何れか一つに記載の加熱装置。
【0104】
〔実施態様13〕記録材上に未定着トナー画像を形成担持させる作像手段と、記録材上の未定着トナー画像を記録材上に加熱定着させる定着手段を有し、該定着手段が実施態様1乃至12の何れか一つに記載の加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、表面加熱方式の加熱装置において、一枚の被加熱材のうち、先端から回転体の一周目が接触する領域と、回転体の二周目以降が接触する領域の加熱状態の変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態例1における定着装置の横断面模型図
【図2】 実施形態例1における画像形成装置の概略構成図
【図3】 実施形態例1における制御を示す図
【図4】 実施形態例1における現象を説明するモデル図
【図5】 比較例における記録材の排紙温度を示す図
【図6】 実施形態例1における記録材の排紙温度を示す図
【図7】 実施形態例2における定着装置の横断面模型図
【図8】 実施形態例2における制御を示す図
【図9】 実施形態例3における定着装置の横断面模型図
【図10】 実施形態例3における制御を示す図
【図11】 画像形成装置の動作工程図
【図12】 実施形態例1における画像形成装置の制御フローを示す図
【図13】 実施形態例2における画像形成装置の制御フローを示す図
【図14】 実施形態例3における画像形成装置の制御フローを示す図
【符号の説明】
1‥‥定着ローラ、2a‥‥加熱フィルム、2b‥‥セラミックヒータ、2c‥‥ヒータホルダ、3‥‥加圧ローラ、5‥‥温度検知手段
Claims (1)
- 内部に熱源がない回転体と、前記回転体と共にニップ部を形成する加圧部材と、前記回転体を前記ニップ部とは異なる加熱部で前記回転体の外周面から加熱する加熱部材と、を有し、前記ニップ部で被加熱材を挟持搬送しつつ前記回転体の熱により加熱する加熱装置において、
前記加熱部材を制御する制御手段を有し、前記回転体の回転方向において前記ニップ部から前記加熱部までの距離をL、前記回転体の移動速度をVとすると、前記制御手段は、前記回転体から被加熱材に供給する熱量が被加熱材の先端から後端に亘って一定となるように、被加熱材先端が前記ニップ部に進入した時点から時間L/V経過したタイミング、または時間L/Vよりも前記加熱部材の温度上昇に要する時間分早いタイミングで前記加熱部材の温度を上昇させて、被加熱材と一度接触した前記回転体の表面の領域が再び同一の被加熱材と接触する前に、その表面温度を一度目の接触時より高くすることを特徴とする加熱装置。
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