JP4193547B2 - 燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンに備えられる燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置に関し、特に、油圧式電子タイマを用いて燃料噴射時期を制御する燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンに備えられる燃料噴射ポンプの一形態として、燃料噴射時期の制御のために油圧式電子タイマ(以下、油圧タイマという)を用いたものが知られている。油圧タイマの構造は周知(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)であるので、ここでは詳しい説明を省略するが、一般的な油圧タイマはタイマシリンダ内に摺動自在にピストンを備え、このピストンにより区画されるピストン室内にオイルポンプからオイル(圧油)が供給されるようになっている。ピストンはスプリングによってピストン室側に付勢されており、オイルポンプから供給されるオイル量に応じて移動する。ピストンの動きは偏芯カムを介して回転体の回転運動に変換されるようになっており、この回転体の回転角度に応じて燃料噴射時期が進角されるようになっている。
【0003】
燃料噴射ポンプには、油圧タイマのピストンの移動量を制御するために、オイルポンプからピストン室内に供給するオイル量やピストン室内から抜くオイル量を制御するタイミングコントロールバルブ(TCV)が設けられている。TCVを作動させてピストン室にオイルを供給することで、ピストン室は押し広げられてピストンは前進し、燃料噴射時期は進角される。逆に、ピストン室からオイルを抜くことで、スプリングの付勢力によりピストンは後退し、燃料噴射時期は遅角される。TCVは、目標燃料噴射時期と実燃料噴射時期との差に基づいてフィードバック制御されている。
【0004】
ところで、エンジン始動時、特に冷態状態からの始動時には、燃料噴射時期を進角させるのがエンジンの始動性を良くする上で望ましい。油圧タイマのピストンはスプリングによりピストン室側に付勢されているため、エンジン停止時の油圧が低下した状態では、ピストン室内からオイルが抜けてピストンは最遅角位置に位置している。したがって、エンジンスタータの作動後は速やかにオイルを油圧タイマに供給し、油圧タイマのピストンを進角側に移動させたい。
【0005】
ピストンを進角側に移動させるには、目標燃料噴射時期を進角側に設定してTCVをフィードバック制御すればよい。しかしながら、エンジン回転速度が低い場合には、エンジンのクランキングに同期して出力されるパルスの間隔がCPUの演算時間よりも長いため、CPUの演算がオーバーフローしてしまい、フィードバック制御のための演算を行うことができない。このため、エンジン回転速度が上昇するまではTCVを制御することができず、TCVは閉じたままになっていた。
【0006】
このようなエンジン始動時における課題に対し、特許文献2には次のような技術が提案されている。
特許文献2に記載された技術では、タイマピストンの一方の側にオイルポンプから圧油が供給される高圧室(ピストン室)を形成し、タイマピストンの一方の側に大気圧に開放された低圧室を形成するとともに、低圧室に配設したスプリングによりピストンを高圧室側に付勢している。ピストンには高圧室と低圧室とを連通する流路を形成するともにスプール式のサーボ弁を設けており、モータ駆動で一軸方向に移動するプッシュロッドによってスプールを操作することで、高圧室内の油圧を制御するようにしている。さらに、スプールの作動範囲を規制するストッパをピストンに設けており、エンジンの停止時にスプリングの付勢力によりピストンが高圧室側に移動してプッシュロッドとスプールが離れても、ストッパによりサーボ弁を閉弁できるようにしている。
【0007】
そして、特許文献2に記載された技術では、エンジン始動時には、まず、オープンループ制御によってプッシュロッドを突出量最少の位置まで動かしてピストンを最進角位置まで移動させるようにしている。そして、エンジン回転速度が所定回転速度に達したら、フィードバック制御に切り換えてプッシュロッドを移動させることで、エンジン始動時における適正な噴射時期制御を実現しようとしている。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−82339号公報
【特許文献2】
特開平9−264161号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オイルポンプはクランクシャフトの回転により作動するので、エンジンスタータの作動後、オイルポンプが作動して油圧が立ち上がるまでには時間が掛かる。特に低温時はクランキング回転が低いため、油圧が立ち上がるまでの時間が長い。つまり、特許文献2に記載の技術のように、エンジン始動後、オープンループ制御によってピストンを最進角位置まで進角させようとしても、エンジン始動直後は油路内の油圧は低いために、ピストンが最進角位置まで移動するには時間がかかり、速やかなエンジンの始動は難しい。
【0010】
なお、特許文献2に記載された技術は、スプールの作動範囲を規制するストッパをピストンに設けることで、エンジンの停止時における高圧室内の油圧の低下を防止している。しかしながら、このような対策を施していたとしても、長期間エンジンを作動させていないときにはピストン室内の油圧が抜けてしまう可能性は依然として残っている。また、特許文献2に記載された技術はスプール式のサーボ弁を備えた油圧タイマを前提にしており、さらに、スプールの作動範囲を規制するストッパをピストンに設ける必要がある。つまり、特許文献2に記載された技術は、一般的な油圧タイマの全てに広く適用できる技術ではない。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みて創案されたものであり、速やかなエンジン始動が可能であり、且つ、一般的な油圧タイマを備えた燃料噴射ポンプに広く適用可能な噴射時期の制御技術を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明が前提とする燃料噴射ポンプは、一般的な油圧タイマを備えた燃料噴射ポンプであり、具体的には、エンジンに駆動されるオイルポンプから圧油が供給されるピストン室と、ピストン室の一側面を形成してオイルポンプから供給される圧油量に応じて移動するピストンと、ピストンをピストン室側に付勢する付勢手段と、オイルポンプからピストン室内に供給される圧油量を制御する制御弁とを備え、ピストンの移動量に応じて燃料噴射時期を進角させるものである。
【0013】
本発明は、このような燃料噴射ポンプの制御内容を工夫することによって上記課題の解決を図った。詳述すると、上記制御弁を制御する制御手段は、エンジン停止時には、ピストン室内に圧油を供給してピストンを進角側に移動させた上で制御弁を閉じるようにした。また、エンジン始動時には、エンジン回転速度が所定回転速度を超えず、かつ、エンジンスタータの作動開始から所定時間が経過しない場合には、上記制御弁は閉じたままとし、エンジン回転速度が所定回転速度を超えた場合には、上記所定時間に関係なく実燃料噴射時期が目標燃料噴射時期に近づくように上記制御弁のフィードバック制御を開始し、上記エンジン回転速度が上記所定回転速度を超えなくても上記所定時間が経過したらその後にオープンループ制御により制御弁を開くようにした。
【0014】
このようにピストンを進角側に移動させた状態で制御弁を閉じることで、次回の始動時には、ピストンが進角側にある状態でエンジンを始動することが可能になる。また、エンジン始動時、直ぐに制御弁を開くのではなく、エンジンスタータの作動開始から所定時間が経過するまでは制御弁は閉じたままとすることで、オイルポンプにより供給される圧油の油圧の立ち上がり遅れによってピストン室内の圧油が油圧配管内に逆流し、ピストンが遅角側に戻されてしまうことを防止することができる。つまり、本発明によれば、上記のようなエンジン停止時の制御とエンジン始動時の制御とを行うことにより、エンジン始動直後から燃料噴射時期を進角側に設定することができ、エンジンを速やかに始動させることができる。また、本発明は、制御弁の制御内容に特徴を有するものであり、燃料噴射ポンプや油圧タイマ自体は従来のものを用いることができるので、一般的な油圧タイマを備えた燃料噴射ポンプに広く適用することができる。
【0015】
上記の所定時間は、好ましくは、エンジンスタータが作動してから、オイルポンプが回転してピストン室内に供給される圧油の油圧が立ち上がるまでの時間に設定する。具体的には、エンジンの大きさやオイルポンプの能力にもよるが、5秒前後に設定すればよい。
【0016】
ここでいう所定回転速度とは、CPUによる制御弁のフィードバック制御のための演算が開始される回転速度(解除回転速度という)以上であればよく、好ましくは、この解除回転速度に設定する。このように、エンジン回転速度が所定回転速度を超えたら直ぐにフィードバック制御に切り替えることで、エンジンの運転状態に応じた適正な噴射時期制御が早期に可能になり、燃費や排気ガス性能の悪化を防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置が適用されるエンジン制御システムの構成を示すブロック図である。この図に示すように、本制御システムは、油圧タイマ3を有する燃料噴射ポンプ2を備えたディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)1をその制御対象としている。燃料噴射ポンプ2や油圧タイマ3の構成は周知であり、本発明ではこれらの構成には特徴がないので詳細な説明は省略するが、本発明に関係する部位として、油圧タイマ3には、シリンダ4内に配置されたピストン5と、このピストン5によって区画されたピストン室6と、ピストン5をピストン室6側に不勢するスプリング7が備えられている。
【0018】
油圧タイマ3のピストン室6はエンジン1により駆動されるオイルポンプ8と油圧配管10によって接続されている。この油圧配管10の途中には、タイミングコントロールバルブ(制御弁:以下、TCVと略記する)9が設けられている。TCV9はIN側弁9aとOUT側弁9bからなり、IN側弁9aはオイルポンプ8からピストン室6に供給するオイル量を制御し、OUT側弁9bはピストン室6からオイルポンプ8に戻されるオイル量を制御している。ピストン5の動きは偏芯カム(図示略)を介して回転体(図示略)の回転運動に変換され、この回転体の回転角度に応じて燃料噴射ポンプ2の燃料噴射時期が進角されるが、ピストン5はピストン室6に供給されるオイル量に応じて進角側に移動し、ピストン室6から抜かれるオイル量に応じて遅角側に移動する。したがって、燃料噴射ポンプ2の燃料噴射時期は、TCV9を制御することによって進角側にも遅角側にも制御することができる。
【0019】
本制御システムでは、TCV9をコントロールユニット12が制御する。コントロールユニット12には、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサ13からの検出信号と、キースイッチ14からのON/OFF信号と、タイマ15からのクロック信号が入力される。図ではタイマ15をコントロールユニット12外に設けているが、コントロールユニット12の内部タイマを用いることもできる。
【0020】
本制御システムはこのコントロールユニット12によるTCV9の制御内容に特徴がある。コントロールユニット12の制御内容は、図2、図3のフローチャートと、図4〜図6のグラフを用いて説明することができる。なお、図4には、エンジン停止時におけるエンジン回転速度、燃料噴射時期、TCV用電源の電圧、並びにTCVの制御状態の各時間変化を併せて示している。図5、図6には、エンジン始動時におけるエンジン回転速度、オイルポンプの供給油圧、TCV用電源の電圧、並びにTCVの制御状態の各時間変化を併せて示している。
【0021】
まず、図4のグラフを参照しながら、図2のフローチャートによりエンジン停止時のTCV9の制御方法について説明する。エンジン1はキースイッチ14がオフにされて燃料噴射が停止されることにより停止するので、エンジン停止時制御では、まず、ステップS1においてキースイッチ14からのOFF信号の入力の有無を判定する。キースイッチ14からOFF信号が入力されるまでの間は、ステップS5において、目標燃料噴射時期と実燃料噴射時期との差に基づいたTCV9のフィードバック制御(通常制御)を行う。
【0022】
キースイッチ14からOFF信号が入力された場合には(図4の時点t11)、ステップS2に進み、フィードバック制御のマップ内の目標値を油圧タイマ3が進角できる最大値に設定した上で、TCV9の制御を続行する。或いは、オープンループ制御により油圧タイマ3を最進角させるようにしてもよい。なお、一般的なTCVでは、キースイッチのオフと同時にTCV用の供給電源も遮断されるが、本実施形態ではTCV用供給電源の配策を変更し、エンジン回転速度が所定回転速度以下になるまでTCV9に電源を供給できるようにしている。所定回転速度は、コントロールユニット12内のCPUが演算を開始できるエンジン1の回転速度(解除回転速度)以上であればよく、好ましくはアイドル回転速度以下に設定する。通常、解除回転速度は160rpm程度である。図4では所定回転速度を解除回転速度に設定している。
【0023】
ステップS3では、クランク角センサ13からのクランク角信号を用いてエンジン回転速度を算出し、エンジン回転速度が解除回転速度以下になったか判定する。エンジン回転速度が解除回転速度よりも大きい間はTCV9の制御を続行する。そして、エンジン回転速度が解除回転速度以下になった時点(図4の時点t12)でステップS4に進み、TCV9の制御を停止する。TCV9は制御の停止によりIN側弁9aもOUT側弁9bも閉じた状態になる。
【0024】
これにより、油圧タイマ3のピストン室6内にはオイルが略最大限に溜められ、ピストン5は最も前進した状態で停止することになる。つまり、油圧タイマ3は、最も進角した状態で停止することになる。そして、TCV9が閉じられていることから、ピストン室6内からオイルが抜け出ることなく、次回のエンジン始動時には、この油圧タイマ3が最も進角した状態からエンジン1を始動することが可能になる。
【0025】
次に。図5、図6のグラフを参照しながら、図3のフローチャートによりエンジン始動時のTCV9の制御方法について説明する。エンジン1はキースイッチ14がオンにされエンジンスタータ(図示略)が作動することにより始動するので、エンジン始動時制御では、まず、ステップS11においてキースイッチ14からのON信号の入力の有無を判定する。
【0026】
ステップS11でキースイッチ14からON信号が入力されることにより(図5の時点t21,図6の時点t31)、TCV用供給電源が入りTCV9は制御可能状態になるが、ステップS12ではTCV9は閉じたままとする。次に、ステップS13に進み、エンジン回転速度が所定回転速度を超えたか判定する。ここでいう所定回転速度も、エンジン停止時制御における所定回転速度と同様、解除回転速度以上であればよく、好ましくはアイドル回転速度以下に設定する。図5,図6では所定回転速度を解除回転速度に設定している。
【0027】
エンジン回転速度が解除回転速度よりも小さい間はステップS14に進み、タイマ14からのクロック信号をカウントして、エンジンスタータの作動時点(図5の時点t22,図6の時点t32)からの経過時間が所定のディレイ時間を超えたか判定する。キースイッチ14がオンにされエンジンスタータが作動するまでには、若干のタイムラグがある。ディレイ時間は、エンジンスタータが作動してから、オイルポンプ8が回転して油圧タイマ3に供給される油圧が立ち上がるまでの時間に設定する。エンジン1の大きさやオイルポンプ8の能力にもよるが、ディレイ時間は5秒前後に設定すればよい。エンジン回転速度が解除回転速度を超えるまでであって、かつ、経過時間がディレイ時間を超えるまではステップS12に戻り、TCV9は閉じたままとする。
【0028】
エンジン1は初爆の後は瞬時に回転速度が上昇するので、ディレイ時間内に初爆があったときには、図5に示すようにディレイ時間を経過する前にエンジン回転速度が解除回転速度を超える場合がある。ステップS13でエンジン回転速度が解除回転速度を超えた場合(図5の時点t23)には、ステップS16に進む。ステップS16では、TCV9の制御をオープンループ制御(閉制御)から通常の制御に切り替える。すなわち、コントロールユニット12は、実燃料噴射時期がエンジン水温に従い設定された目標燃料噴射時期になるようにTCV9をフィードバック制御する。
【0029】
一方、長期間使用されることなく放置されていたエンジン1では、前述のエンジン停止時制御によってピストン室6内にオイルを溜めた状態でTCV9を閉じていたとしても、スプリング7によりピストン5が押され続けることでピストン室6からオイルが次第に抜け出てしまう可能性がある。このような場合には、ピストン6の後退に応じて燃料噴射時期は遅角されてしまうので、エンジン1は始動しにくく、図6に示すようにエンジン回転速度が解除回転速度を超えることなくディレイ時間を経過する場合がある。ステップS14で経過時間がディレイ時間を超えた場合(図6の時点t33)には、ステップS15に進む。ステップS15では、TCV9の制御をオープンループ制御のまま閉状態への制御から開状態への制御に切り替える。すなわち、TCV9を開いてピストン室6とオイルポンプ8とを連通させる。これにより、仮にピストン室6内のオイルが抜けてしまっていた場合でも、オイルポンプ8からピストン室6にオイルが供給されることでピストン5は前進し、油圧タイマ3による燃料噴射時期は進角される。
【0030】
ステップS15の処理の後はステップS13に戻り、エンジン回転速度が解除回転速度を超えたか判定する。エンジン回転速度が解除回転速度を超えるまでは、TCV9のオープンループ制御(開制御)を続行する。そして、エンジン回転速度が解除回転速度を超えた場合(図6の時点t34)にはステップS16に進み。TCV9の制御をオープンループ制御(開制御)から通常のフィードバック制御に切り替える。
【0031】
このように、キースイッチ14がオン後、直ぐにTCV9を開くのではなく、エンジンスタータの作動開始からディレイ時間が経過するまではTCV9は閉じたままとすることで、オイルポンプ8により供給されるオイルの油圧の立ち上がり遅れによってピストン室6内の圧油が油圧配管10内に逆流し、ピストン5が遅角側に戻されてしまうことを防止することができる。また、エンジン回転速度が解除回転速度を超えたら、ディレイ時間が経過に拘わらず直ぐにTCV9の制御をフィードバック制御に切り替えることで、エンジン1の運転状態に応じた適正な噴射時期制御が早期に可能になり、燃費や排気ガス性能の悪化を防止することができる。
【0032】
つまり、本制御システム(本発明の燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置が適用されるエンジン制御システム)によれば、上述のようなエンジン停止時の制御とエンジン始動時の制御とを行うことにより、エンジン始動直後から燃料噴射時期を進角側に設定することができ、エンジン1を速やかに始動させることができる。この効果は、クランキング回転が遅く油圧の立ち上がりの遅い低温時に特に顕著になる。また、上述のように本制御システムはTCV9の制御内容に特徴を有するものであり、燃料噴射ポンプ2や油圧タイマ3自体は従来のものを用いることができるので、一般的な油圧タイマを備えた燃料噴射ポンプに広く適用することができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施しうるものである。例えば、エンジン始動時の制御において、ディレイ時間が経過するまではTCV9は閉じておき、ディレイ時間が経過した時点で、そのときのエンジン回転速度に応じてTCV9をオープンループ制御(開制御)したりフィードバック制御したりするようにしてもよい。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置によれば、ピストンを進角側に移動させた状態で制御弁を閉じるというエンジン停止時の制御と、エンジン始動時に直ぐに制御弁を開くのではなく、エンジン回転速度が所定回転速度を超えず、かつ、エンジンスタータの作動開始から所定時間が経過しない場合には、制御弁は閉じたままにするというエンジン始動時の制御とを行うことにより、エンジン始動直後から燃料噴射時期を進角側に設定することができ、エンジンを速やかに始動させることができる。また、本発明の燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置によれば、燃料噴射ポンプや油圧タイマ自体は従来のものを用いることができるので、一般的な油圧タイマを備えた燃料噴射ポンプに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置が適用されるエンジン制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】エンジン停止時のTCVの制御内容を示すフローチャートである。
【図3】エンジン始動時のTCVの制御内容を示すフローチャートである。
【図4】エンジン停止時におけるエンジン回転速度、燃料噴射時期、TCV用電源の電圧、並びにTCVの制御状態の各時間変化を併せて示すグラフである。
【図5】エンジン始動時におけるエンジン回転速度、オイルポンプの供給油圧、TCV用電源の電圧、並びにTCVの制御状態の各時間変化を併せて示している。
【図6】エンジン始動時におけるエンジン回転速度、オイルポンプの供給油圧、TCV用電源の電圧、並びにTCVの制御状態の各時間変化を併せて示している。
【符号の説明】
1 ディーゼルエンジン
2 燃料噴射制御装置
3 油圧タイマ
4 シリンダ
5 ピストン
6 ピストン室
7 スプリング
8 オイルポンプ
9 タイミングコントロールバルブ(TCV)
9a IN側弁
9b OUT側弁
10 油圧配管
12 コントロールユニット
13 クランク角センサ
14 キースイッチ
15 タイマ
Claims (3)
- エンジンに駆動されるオイルポンプから圧油が供給されるピストン室と、上記ピストン室の一側面を形成して上記オイルポンプから供給される圧油量に応じて移動するピストンと、上記ピストンを上記ピストン室側に付勢する付勢手段と、上記オイルポンプから上記ピストン室内に供給される圧油量を制御する制御弁とを備え、上記ピストンの移動量に応じて燃料噴射時期を進角させる燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置において、
上記制御弁を制御する制御手段を備え、
上記制御手段は、エンジン停止時には、上記ピストン室内に圧油を供給して上記ピストンを進角側に移動させた上で上記制御弁を閉じ、
エンジン始動時には、エンジン回転速度が所定回転速度を超えず、かつ、エンジンスタータの作動開始から所定時間が経過しない場合には、上記制御弁は閉じたままとし、エンジン回転速度が所定回転速度を超えた場合には、上記所定時間に関係なく実燃料噴射時期が目標燃料噴射時期に近づくように上記制御弁のフィードバック制御を開始し、上記エンジン回転速度が上記所定回転速度を超えなくても上記所定時間が経過したらその後にオープンループ制御により上記制御弁を開くことを特徴とする、燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置。 - 上記所定回転速度は、上記制御手段が演算を開始できるエンジン回転速度であることを特徴とする、請求項1記載の燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置。
- 上記所定時間として、上記エンジンスタータが作動してから、上記オイルポンプが回転して上記ピストン室内に供給される圧油の油圧が立ち上がるまでの時間が設定されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置。
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