JP4174879B2 - 車両の運動制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の運動制御装置に関し、特に、車両の旋回を含む車両運動中に、ブレーキペダルの操作の有無に関係なく各車輪に対して制動力を付与することにより車両の運動状態を安定させる車両の運動制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
近時、車両の運動特性、特に旋回特性を制御する手段として、制動力の左右差制御により旋回モーメントを直接制御する手段が注目され、実用に供されている。例えば、特開平9−301147号公報には、車両旋回時における車両の運動状態量を推定し、この車両運動状態量が制御開始閾値を越えたときに、車両のヨーモーメントを安定側に修正するようにブレーキ液圧制御装置を制御し、車両の各車輪に制動力を付与する運動制御装置が開示されている。同公報では、特に、路面摩擦係数に応じて車両運動状態量における制御開始領域を変えることを目的として、路面摩擦係数が低い程、制御開始閾値を小さく設定するように構成した運動制御装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平9−301147号公報に記載の運動制御装置においては、各車輪の目標スリップ率St** と実スリップ率Sa** の差のスリップ率偏差ΔSt** (=St** −Sa** )が求められ、このスリップ率偏差ΔSt** に基づき液圧制御モードが設定されるように構成されている。
【0004】
このような運動制御装置においては、オーバーステア抑制制御及びアンダーステア抑制制御の実効を図るため目標スリップ率St** が大きい値に設定されるのが一般的である。このため、車両の不安定挙動が治まったと判定し得る状況となった後もブレーキ液圧制御装置による増圧が行なわれ、増圧傾向となるので、所謂ブレーキの引きずり感を生ずるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、車両の運動制御装置において、適切な液圧制御により、ブレーキ引きずり感を惹起することなく円滑に車両の運動状態を安定させることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明は請求項1に記載のように、車両の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシリンダに対し少なくともブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液圧を付与するブレーキ液圧制御装置と、前記車両の旋回を含む車両運動中における安定性を判定する車両運動状態判定手段と、該車両運動状態判定手段の判定結果に応じて少なくとも増圧モード、減圧モード及び保持モードの液圧モードの何れかを設定し、該液圧モードの何れかに基づき前記ブレーキ液圧制御装置を制御して前記各車輪に対する制動力を制御する制動力制御手段とを備えた車両の運動制御装置において、前記車両運動状態判定手段が、前記車両の車体横すべり角を演算する車体横すべり角演算手段と、前記車両の車体横すべり角加速度を演算する車体横すべり角加速度演算手段とを備え、前記制動力制御手段は、前記ブレーキ液圧制御装置による増圧モード中に、前記車体横すべり角加速度演算手段の演算結果の車体横すべり角加速度が基準値を下回ったときには、前記ブレーキ液圧制御装置による増圧勾配を減少させるように制御する液圧制御手段を備えることとしたものである。
【0007】
例えば、前記車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、前記車両の横加速度を検出する横加速度検出手段と、前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段とを具備し、車体横すべり角速度演算手段により、前記車体速度、横加速度及びヨーレイトに基づき前記車両の車体横すべり角速度を演算し、車体横すべり角演算手段により前記車体横すべり角速度演算手段の演算結果を積分して車体横すべり角を演算し、更に、車体横すべり角加速度演算手段により、前記車体横すべり角速度演算手段の演算結果を微分して車体横すべり角加速度を演算するように構成することができる。
【0008】
前記液圧制御手段は、請求項に記載のように、前記車体横すべり角加速度演算手段の演算結果の車体横すべり角加速度が前記基準値を下回り、且つ前記車体横すべり角演算手段の演算結果の車体横すべり角が所定値以下のときには保持モードに設定し、前記車体横すべり角加速度が前記基準値を下回り且つ前記車体横すべり角が所定値を越えたときには、増圧勾配が緩やかな緩増圧モードに設定するように構成するとよい。尚、前記増圧モードには所謂急増圧モードを含み、前記緩増圧モードには、増圧と保持を繰り返す所謂パルス増圧モードを含む。
【0009】
また、前記液圧制御手段は、請求項に記載のように、前記車体横すべり角加速度演算手段の演算結果の車体横すべり角加速度が前記基準値以上の値から前記基準値以下の値に切り換わった後所定時間は前記増圧モードを維持するように構成してもよい。更に、請求項に記載のように、前記車両の車体速度を検出する車体速度検出手段を具備したものとすると共に、前記車両運動状態判定手段を、前記車両の車体横すべり角速度を演算する車体横すべり角速度演算手段を備えたものとし、前記液圧制御手段を、前記車体横すべり角演算手段の演算結果の車体横すべり角、前記車体横すべり角速度演算手段の演算結果の車体横すべり角速度、及び前記車体速度検出手段の検出結果の車体速度に基づき、前記基準値を設定するように構成することができる。尚、前記車体速度検出手段は、前記車両の各車輪の車輪速度を検出し、検出車輪速度に基づき推定車体速度を演算するように構成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の運動制御装置の一実施形態を示すもので、車両の各車輪WLに装着し制動力を付与するホイールシリンダWRと、ホイールシリンダWRに対し少なくともブレーキペダルBPの操作に応じてブレーキ液圧を付与するブレーキ液圧制御装置BCと、車両の旋回を含む車両運動中における安定性を判定する車両運動状態判定手段ESと、その判定結果に応じて少なくとも増圧モード、減圧モード及び保持モードの液圧モードの何れかを設定し、その液圧モードに基づきブレーキ液圧制御装置BCを制御して各車輪に対する制動力を制御する制動力制御手段FCとを備えている。制動力制御手段FCは、ブレーキ液圧制御装置BCによる増圧モード中に、車両運動状態判定手段ESにて車両の運動状態が安定と判定したときには、ブレーキ液圧制御装置BCによる増圧勾配を減少させるように制御する液圧制御手段HCを具備している。
【0011】
本実施形態においては、車両の車体速度を検出する車体速度検出手段D1と、車両の横加速度を検出する横加速度検出手段D2と、車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段D3を備えている。そして、車両運動状態判定手段ESは、車体速度検出手段D1の検出車体速度、横加速度検出手段D2の検出横加速度及びヨーレイト検出手段D3の検出ヨーレイトに基づき車両の車体横すべり角速度を演算する車体横すべり角速度演算手段E1と、車体横すべり角速度演算手段E1の演算結果を積分し車体横すべり角を演算する車体横すべり角演算手段E2と、車体横すべり角速度演算手段E1の演算結果を微分し車体横すべり角加速度を演算する車体横すべり角加速度演算手段E3とを備えている。そして、車体横すべり角加速度演算手段E3の演算結果の車体横すべり角加速度が基準値を下回ったときには、液圧制御手段HCによって、増圧勾配を減少させるようにブレーキ液圧制御装置BCを制御する構成とされている。
【0012】
本実施形態における液圧制御手段HCは、車体横すべり角加速度が基準値を下回り且つ車体横すべり角が所定値以下のときには保持モードに設定し、車体横すべり角加速度が基準値を下回り且つ車体横すべり角が所定値を越えたときには、増圧勾配が緩やかな緩増圧モードに設定するように構成されている。更に、車体横すべり角加速度が基準値以上の値から基準値以下の値に切り換わった後所定時間は増圧モードを維持するように構成されている。尚、前記基準値は、車体横すべり角、車体横すべり角速度及び車体速度に基づいて設定するように構成されている。
【0013】
図2は前記運動制御装置を含む車両の全体構成を示すものであり、エンジンEGはスロットル制御装置TH及び燃料噴射装置FIを備えた内燃機関で、スロットル制御装置THにおいてはアクセルペダルAPの操作に応じてメインスロットルバルブMTのメインスロットル開度が制御される。また、電子制御装置ECUの出力に応じて、スロットル制御装置THのサブスロットルバルブSTが駆動されサブスロットル開度が制御されると共に、燃料噴射装置FIが駆動され燃料噴射量が制御されるように構成されている。本実施形態のエンジンEGは変速制御装置GSを介して車両前方の車輪FL,FRに連結されており、所謂前輪駆動方式が構成されている。制動系については、車輪FL,FR,RL,RRに夫々ホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrが装着されており、これらのホイールシリンダWfl等にブレーキ液圧制御装置BCが接続されている。尚、車輪FLは運転席からみて前方左側の車輪を示し、以下車輪FRは前方右側、車輪RLは後方左側、車輪RRは後方右側の車輪を示しており、本実施形態では所謂X配管が構成されている。
【0014】
車輪FL,FR,RL,RRには車輪速度センサWS1乃至WS4が配設され、これらが電子制御装置ECUに接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成されている。更に、ブレーキペダルBPが踏み込まれたときにオンとなるブレーキスイッチBS、車両前方の車輪FL,FRの舵角θf を検出する前輪舵角センサSSf、車両の横加速度を検出する横加速度センサYG、及び車両重心を通る鉛直軸回りの車両回転角(ヨー角)の変化速度、即ちヨー角速度(ヨーレイト)を検出するヨーレイトセンサYS等が電子制御装置ECUに接続されている。
【0015】
本実施形態の電子制御装置ECUは、図2に示すように、バスを介して相互に接続されたプロセシングユニットCPU、メモリROM,RAM、入力ポートIPT及び出力ポートOPT等から成るマイクロコンピュータCMPを備えている。上記車輪速度センサWS1乃至WS4、ブレーキスイッチBS、前輪舵角センサSSf、ヨーレイトセンサYS、横加速度センサYG等の出力信号は増幅回路AMPを介して夫々入力ポートIPTからプロセシングユニットCPUに入力されるように構成されている。また、出力ポートOPTからは駆動回路ACTを介してスロットル制御装置TH及びブレーキ液圧制御装置BCに夫々制御信号が出力されるように構成されている。
【0016】
マイクロコンピュータCMPにおいては、メモリROMは図3乃至図7に示したフローチャートを含む種々の処理に供するプログラムを記憶し、プロセシングユニットCPUは図示しないイグニッションスイッチが閉成されている間当該プログラムを実行し、メモリRAMは当該プログラムの実行に必要な変数データを一時的に記憶する。尚、スロットル制御等の各制御毎に、もしくは関連する制御を適宜組合せて複数のマイクロコンピュータを構成し、相互間を電気的に接続することとしてもよい。
【0017】
上記のように構成された本実施形態においては、電子制御装置ECUにより制動操舵制御、アンチスキッド制御等の一連の処理が行なわれ、イグニッションスイッチ(図示せず)が閉成されると図3乃至図7等のフローチャートに対応したプログラムの実行が開始する。図3は車両の制御作動全体を示すもので、先ずステップ101にてマイクロコンピュータCMPが初期化され、各種の演算値がクリアされる。次にステップ102において、車輪速度センサWS1乃至WS4の検出信号が読み込まれると共に、前輪舵角センサSSfの検出信号(舵角θf )、ヨーレイトセンサYSの検出ヨーレイトγa及び横加速度センサYGの検出加速度(即ち、実横加速度でありGyaで表す)が読み込まれる。
【0018】
次に、ステップ103に進み、各車輪の車輪速度Vw** (**は各車輪FR等を表す)が演算されると共に、これらが微分され各車輪の車輪加速度DVw** が求められる。続いて、ステップ104において各車輪の車輪速度Vw** の最大値が車両重心位置での推定車体速度Vsoとして演算される(Vso=MAX( Vw**))。また、各車輪の車輪速度Vw** に基づき各車輪毎に推定車体速度Vso**が求められ、必要に応じ、車両旋回時の内外輪差等に基づく誤差を低減するため正規化が行われる。更に、推定車体速度Vsoが微分され、車両重心位置での推定車体加速度(符号が逆の推定車体減速度を含む)DVsoが演算される。
【0019】
次に、ステップ105において、上記ステップ102及び103で求められた各車輪の車輪速度Vw** と推定車体速度Vso**(あるいは、正規化推定車体速度)に基づき各車輪の実スリップ率Sa** がSa** =(Vso**−Vw** )/Vso**として求められる。次に、ステップ106おいて、車両重心位置での推定車体加速度DVsoと横加速度センサYGの検出信号の実横加速度Gyaに基づき、路面摩擦係数μが近似的に(DVso2 +Gya2)1/2 として求められる。更に、路面摩擦係数を検出する手段として、直接路面摩擦係数を検出するセンサ等、種々の手段を用いることができる。
【0020】
続いて、ステップ108にて車体横すべり角速度Dβが演算されると共に、車体横すべり角βが演算される。この車体横すべり角βは、車両の進行方向に対する車体のすべりを角度で表したもので、次のように演算し推定することができる。即ち、車体横すべり角速度Dβは車体横すべり角βの微分値dβ/dtであり、ステップ107にてDβ=Gya/Vso−γa として求めることができ、これをステップ108にて積分しβ=∫(Gya/Vso−γa )dtとして車体横すべり角βを求めることができる。
【0021】
そして、ステップ109に進み制動操舵制御モードとされ、後述するように制動操舵制御に供する目標スリップ率が設定され、後述のステップ118の液圧サーボ制御により、車両の運動状態に応じて各車輪に対する制動力が制御される。この制動操舵制御は、後述する全ての制御モードにおける制御に対し重畳される。この後ステップ110に進み、アンチスキッド制御開始条件を充足しているか否かが判定され、開始条件を充足し制動操舵時にアンチスキッド制御開始と判定されると、初期特定制御は直ちに終了しステップ111にて制動操舵制御及びアンチスキッド制御の両制御を行なうための制御モードに設定される。
【0022】
ステップ110にてアンチスキッド制御開始条件を充足していないと判定されたときには、ステップ112に進み前後制動力配分制御開始条件を充足しているか否かが判定され、制動操舵制御時に前後制動力配分制御開始と判定されるとステップ113に進み、制動操舵制御及び前後制動力配分制御の両制御を行なうための制御モードに設定され、充足していなければステップ114に進みトラクション制御開始条件を充足しているか否かが判定される。制動操舵制御時にトラクション制御開始と判定されるとステップ115にて制動操舵制御及びトラクション制御の両制御を行なうための制御モードに設定され、制動操舵制御時に何れの制御も開始と判定されていないときには、ステップ116にて制動操舵制御開始条件を充足しているか否かが判定される。
【0023】
ステップ116において制動操舵制御開始と判定されるとステップ117に進み制動操舵制御のみを行なう制御モードに設定される。そして、これらの制御モードに基づきステップ118にて液圧サーボ制御が行なわれた後ステップ102に戻る。尚、前後制動力配分制御モードにおいては、車両の制動時に車両の安定性を維持するように、後輪に付与する制動力の前輪に付与する制動力に対する配分が制御される。ステップ116において制動操舵制御開始条件も充足していないと判定されると、ステップ119にて全ての電磁弁のソレノイドがオフとされた後ステップ102に戻る。尚、ステップ111,113,115,117に基づき、必要に応じ、車両の運動状態に応じてスロットル制御装置THのサブスロットル開度が調整されエンジンEGの出力が低減され、駆動力が制限される。
【0024】
図4は図3のステップ109における制動操舵制御の具体的処理内容を示すもので、制動操舵制御にはオーバーステア抑制制御及びアンダーステア抑制制御が含まれ、各車輪に関しオーバーステア抑制制御及び/又はアンダーステア抑制制御に応じた目標スリップ率が設定される。先ず、ステップ201,202においてオーバーステア抑制制御及びアンダーステア抑制制御の開始・終了判定が行なわれる。
【0025】
ステップ201で行なわれるオーバーステア抑制制御の開始・終了判定は、図12に示す制御領域(平行な一対の一点鎖線の外側領域)にあるか否かに基づいて行なわれる。即ち、判定時における車体横すべり角βと車体横すべり角速度Dβの値に応じて制御領域に入ればオーバーステア抑制制御が開始され、制御領域を脱すればオーバーステア抑制制御が終了とされ、図12に矢印の曲線で示したように制御される。また、図12に一点鎖線で示した境界から制御領域の外側に向かうに従って制御量が大となるように各車輪の制動力が制御される。
【0026】
一方、ステップ202で行なわれるアンダーステア抑制制御の開始・終了判定は、図14に斜線で示す制御領域にあるか否かに基づいて行なわれる。即ち、判定時において目標横加速度Gytに対する実横加速度Gyaの変化に応じて、一点鎖線で示す理想状態から外れて制御領域に入ればアンダーステア抑制制御が開始され、制御領域を脱すればアンダーステア抑制制御が終了とされ、図14に矢印の曲線で示したように制御される。
【0027】
続いて、ステップ203にてオーバーステア抑制制御が制御中か否かが判定され、制御中でなければステップ204にてアンダーステア抑制制御が制御中か否かが判定され、これも制御中でなければそのままメインルーチンに戻る。ステップ204にてアンダーステア抑制制御と判定されたときにはステップ205に進み、各車輪の目標スリップ率が後述するアンダーステア抑制制御用に設定される。ステップ203にてオーバーステア抑制制御と判定されると、ステップ206に進みアンダーステア抑制制御か否かが判定され、アンダーステア抑制制御でなければステップ207において各車輪の目標スリップ率は後述するオーバーステア抑制制御用に設定される。また、ステップ206でアンダーステア抑制制御が制御中と判定されると、オーバーステア抑制制御とアンダーステア抑制制御が同時に行なわれることになり、ステップ208にて同時制御用の目標スリップ率が設定される。
【0028】
ステップ205における各車輪の目標スリップ率は、旋回外側の前輪がStufoに設定され、旋回内側の前輪がStufiに設定され、旋回内側の後輪がSturiに設定される。ここで示したスリップ率(S)の符号については "t"は「目標」を表し、後述の「実測」を表す "a"と対比される。 "u"は「アンダーステア抑制制御」を表し、 "r"は「後輪」を表し、 "o"は「外側」を、 "i"は「内側」を夫々表す。
【0029】
ステップ207における各車輪の目標スリップ率は、旋回外側の前輪がStefoに設定され、旋回内側の後輪がSteriに設定される。ここで、 "e"は「オーバーステア抑制制御」を表す。そして、ステップ208における各車輪の目標スリップ率は、旋回外側の前輪がStefoに設定され、旋回内側の前輪がStufiに設定され、旋回内側の後輪がSturiに夫々設定される。即ち、オーバーステア抑制制御とアンダーステア抑制制御が同時に行なわれるときには、旋回外側の前輪はオーバーステア抑制制御の目標スリップ率と同様に設定され、旋回内側の車輪は何れもアンダーステア抑制制御の目標スリップ率と同様に設定される。尚、何れの場合も旋回外側の後輪(即ち、前輪駆動車における従動輪)は推定車体速度設定用のため非制御とされている。
【0030】
ステップ207におけるオーバーステア抑制制御用の目標スリップ率の設定には、車体横すべり角βと車体横すべり角速度Dβが用いられるが、アンダーステア抑制制御における目標スリップ率の設定には、目標横加速度Gytと実横加速度Gyaとの差が用いられる。例えば、オーバーステア抑制制御に供する旋回外側の前輪の目標スリップ率Stefoは、Stefo=K1 ・β+K2 ・Dβとして設定され、旋回内側の後輪の目標スリップ率Steriは”0”とされる。ここで、K1 ,K2は定数で、加圧方向(制動力を増大する方向)の制御を行なう値に設定される。
【0031】
一方、アンダーステア抑制制御に供する目標スリップ率は、目標横加速度Gytと実横加速度Gyaの偏差ΔGy に基づいて以下のように設定される。即ち、旋回外側の前輪に対する目標スリップ率StufoはK3 ・ΔGy と設定され、定数K3 は加圧方向(もしくは減圧方向)の制御を行なう値に設定される。また、旋回内側の後輪に対する目標スリップ率SturiはK4 ・ΔGy に設定され、定数K4 は加圧方向の制御を行なう値に設定される。同様に、旋回内側の前輪に対する目標スリップ率StufiはK5 ・ΔGy に設定され、定数K5 は加圧方向の制御を行なう値に設定される。
【0032】
図5は図3のステップ118で行なわれる液圧サーボ制御の処理内容を示すもので、各車輪についてホイールシリンダ液圧のスリップ率サーボ制御が行なわれる。先ず、前述のステップ205,207又は208にて設定された目標スリップ率St** がステップ301にて読み出され、これらがそのまま各車輪の目標スリップ率St** として読み出される。
【0033】
続いてステップ302において、各車輪毎にスリップ率偏差ΔSt** が演算されると共に、ステップ303にて車体加速度偏差ΔDVso**が演算される。ステップ302においては、各車輪の目標スリップ率St** と実スリップ率Sa** の差が演算されスリップ率偏差ΔSt** が求められる(ΔSt** =St** −Sa** )。また、ステップ303においては車両重心位置での推定車体加速度DVsoと制御対象の車輪における車輪加速度DVw** の差が演算され、車体加速度偏差ΔDVso**が求められる。このときの各車輪の実スリップ率Sa** 及び車体加速度偏差ΔDVso**はアンチスキッド制御、トラクション制御等の制御モードに応じて演算が異なるが、これらについては説明を省略する。
【0034】
続いて、ステップ304に進み、各制御モードにおけるブレーキ液圧制御に供する一つのパラメータY**がGs** ・ΔSt** として演算される。ここでGs** はゲインであり、車体横すべり角βに応じて図15に実線で示すように設定される。また、ステップ305において、ブレーキ液圧制御に供する別のパラメータX**がGd** ・ΔDVso**として演算される。このときのゲインGd** は図15に破線で示すように一定の値である。この後、ステップ306に進み、各車輪毎に、上記パラメータX**,Y**に基づき、図16に示す制御マップに従って液圧モードが設定される。図16においては予め急減圧領域、パルス減圧領域、保持領域、パルス増圧領域及び急増圧領域の各領域が設定されており、ステップ306にてパラメータX**及びY**の値に応じて、何れの領域に該当するかが判定される。尚、非制御状態では液圧モードは設定されない(ソレノイドオフ)。
【0035】
ステップ306にて判定された領域が増圧モードであるときには、更にステップ307にて特定液圧モードが設定されるが、これについては図6及び図7を参照して後述する。また、ステップ306にて(今回)判定された領域が、前回判定された領域に対し、増圧から減圧もしくは減圧から増圧に切換わる場合には、ブレーキ液圧の立下りもしくは立上りを円滑にする必要があるので、ステップ308において増減圧補償処理が行われる。例えば急減圧モードからパルス増圧モードに切換るときには、急増圧制御が行なわれ、その時間は直前の急減圧モードの持続時間に基づいて決定される。上記液圧モード、特定液圧モード及び増減圧補償処理に応じて、ステップ309にて液圧制御ソレノイドの駆動処理が行なわれ、ブレーキ液圧制御装置BCのソレノイドが駆動され、各車輪の制動力が制御される。このブレーキ液圧制御装置BCの構成については、図17を参照して後述する。
【0036】
そして、ステップ310にて、ブレーキ液圧制御装置BCにおける液圧ポンプ駆動用モータの駆動処理が行なわれる。尚、上記の実施形態ではスリップ率によって制御することとしているが、制御目標としてはスリップ率のほか、各車輪のホイールシリンダのブレーキ液圧等、各車輪に付与される制動力に対応する目標値であればどのような値を用いてもよい。
【0037】
図6及び図7は図5のステップ307で行なわれる特定液圧モード設定の処理内容を示すもので、先ずステップ401において制動操舵制御中か否かが判定され、そうであればステップ402にて増圧モード中か否かが判定される。制動操舵制御中でも増圧モード中でもなければ、ステップ403にて基準値Ksが初期値K0とされてメインルーチンに戻る。ステップ402において増圧モード中と判定された場合には、ステップ404に進み車体横すべり角βが0以上か否か、即ち図12のマップの第1象限又は第4象限の値か否かが判定される。車体横すべり角βが0以上であればステップ405以降に進むが、車体横すべり角βが負の値、即ち図12のマップの第2象限又は第3象限の値のときには図7のステップ418以降に進む。
【0038】
ステップ405においては、車体横すべり角βが所定値Kaと比較され、所定値Kaを越えていると判定されたときにはステップ406に進み、そのときの基準値Ksが演算値(A・Kv+B・Kv)を越えているか否かが判定される。ここで、Kvは車体速度に応じて設定される係数で図8に示すように推定車体速度Vsoの増加に応じて減少するように設定されている(尚、所定速度以下及び所定速度以上では一定の値に保持される)。また、係数Aは図9に示すように車体横すべり角βの増加に応じて減少するように設定されており(所定角以下及び所定角以上では一定の値に保持される)、係数Bは図10に示すように車体横すべり角速度Dβの増加に応じて減少するように設定されている(所定角速度以下及び所定角速度以上では一定の値に保持される)。
【0039】
ステップ406において、そのときの基準値Ksが演算値(A・Kv+B・Kv)を越えていると判定されたときには、ステップ407にて基準値Ksが演算値(A・Kv+B・Kv)に更新され、演算値(A・Kv+B・Kv)以下であればそのままの値で、ステップ408以降に進む。尚、車体横すべり角βが所定値Ka以下と判定されたとき、及び基準値Ksが演算値(A・Kv+B・Kv)以下と判定されたときにはそのままステップ408以降に進む。このように、基準値Ksは車体横すべり角β及び車体横すべり角速度Dβに応じて変化する値であり、車体横すべり角β及び車体横すべり角速度Dβが大きい程、基準値Ksが小さい値Ks(例えば、負の値)に設定される。
【0040】
ステップ408においては、車体横すべり角速度Dβの微分値たる車体横すべり角加速度d2 β/dt(以下、D2 βと表す)が、上記基準値Ksと比較され、これより大であれば急増圧モードとされ、ステップ409にて特定液圧モード用のタイマがクリア(0)された後ステップ410にて急増圧信号が出力される。これに対して、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ks以下となり車両挙動が治まり安定した運動状態となったと判定されると、ステップ411以降に進み、増圧勾配を減少させるように液圧制御される。本実施形態では、保持モードへの切り換えを前提とし、他の条件に応じて適宜緩増圧モードに切り換え、あるいは急増圧モードに戻すように構成されている。
【0041】
先ず、ステップ411において、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ksより大の値から基準値Ks以下の値に低下した状態か否かが判定され、そうであればステップ412にて増圧時間が図11に従い車体横すべり角速度Dβに応じた値に設定される。即ち、所定の車体横すべり角速度Dβ以下の値に対しては不感帯が設定されており、増圧時間が0とされ、これ以上の車体横すべり角速度Dβに対しては増圧時間Taが比例的に増加するように設定される。
【0042】
一方、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ksより大の値から基準値Ks以下の値に低下した状態でなければ、特定液圧モード用のタイマのカウント時間が増圧時間Taと比較され、増圧時間Ta以下であればステップ414にてタイマがカウントアップ(+1)された後、ステップ410に進み急増圧信号が出力される。換言すれば、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ks以下となったときに増圧勾配を減少させることを前提としているが、増圧時間Taの間は急増圧モードとした後に保持(又は、緩増圧)モードに切り換えるように設定されている。而して、特定液圧モード用のタイマのカウント時間が増圧時間Taを越えておれば、ステップ415に進み、更に車体横すべり角βの絶対値|β|が所定値Kbと比較される。
【0043】
車体横すべり角βの絶対値|β|が所定値Kbを越えている場合にはステップ416に進み緩増圧モードの信号が出力されるのに対し、車体横すべり角βの絶対値|β|が所定値Kb以下の場合にはステップ417に進み保持モードの信号が出力される。換言すれば、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ks以下となったときに、車体横すべり角βの絶対値|β|が所定値Kbを越えている場合には緩増圧モードとし、所定値Kb以下の場合には保持モードとし、結果的に増圧勾配を減少させるように設定されている。而して、車体横すべり角速度Dβの値に基づいて増圧時間が設定され(ステップ412)、車体横すべり角βの値に基づいて緩増圧モードか保持モードかが判別される(ステップ415)。
【0044】
一方、ステップ404において車体横すべり角βが負の値と判定されたときには、図7のステップ418に進み、車体横すべり角βが所定値−Kaと比較され、所定値−Kaを下回ると判定されたときにはステップ419に進み、そのときの基準値Ksが演算値−(A・Kv+B・Kv)を下回っているか否かが判定される。基準値Ksが演算値−(A・Kv+B・Kv)を下回っていると判定されたときには、ステップ420にて基準値Ksが演算値−(A・Kv+B・Kv)に更新される。ステップ418にて車体横すべり角βが所定値−Ka以上と判定されたとき、及びステップ419にて基準値Ksが演算値−(A・Kv+B・Kv)以上と判定されたときにはそのままステップ421以降に進む。
【0045】
ステップ421においては、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ksと比較され、これより小さければ急増圧モードとされ、ステップ422にて特定液圧モード用のタイマがクリア(0)された後ステップ423にて急増圧信号が出力される。これに対して、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ks以上となったと判定されると、ステップ424に進み、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ksより小の値から基準値Ks以上の値となったか否かが判定され、そうであればステップ425にて増圧時間が図11に従い車体横すべり角速度Dβに応じた値に設定される。
【0046】
一方、車体横すべり角加速度D2 βが基準値Ksより小の値から基準値Ks以上の値となったのでなければ、特定液圧モード用のタイマのカウント時間が増圧時間Taと比較され、増圧時間Ta以下であればステップ427にてタイマがカウントアップ(+1)された後、ステップ423に進み急増圧信号が出力される。而して、特定液圧モード用のタイマのカウント時間が増圧時間Taを越えておれば、ステップ428に進み、更に車体横すべり角βの絶対値|β|が所定値Kbと比較される。而して、車体横すべり角βの絶対値|β|が所定値Kbを越えている場合にはステップ429に進み緩増圧モードの信号が出力され、車体横すべり角βの絶対値|β|が所定値Kb以下の場合にはステップ430に進み保持モードの信号が出力され、増圧勾配が減少する。
【0047】
上記の車体横すべり角β、車体横すべり角速度Dβ及び車体横すべり角加速度D2 βの関係を図示すると、図13に示すようになる。同図において、a乃至gの各点は図12のマップにt=a〜gで示した位置に対応しており、従ってa乃至d及びe乃至gの区間が制御領域である。そして、本実施形態では、例えば車体横すべり角加速度D2 βが図13の下段の基準値Ks以下となるs点で、図6のステップ411乃至417の処理が開始する。
【0048】
尚、上記の特定液圧モードはオーバーステア抑制制御において設定されるものであるが、アンダーステア抑制制御の場合には車体横すべり角β、車体横すべり角速度Dβ及び車体横すべり角加速度D2 βに代えて、目標横加速度Gytと実横加速度Gyaの偏差ΔGy 、その微分値dΔGy /dt、及び更にその微分値d2 ΔGy /dt2 が用いられ、これらの値に基づいて同様に処理され、緩増圧モード又は保持モードが設定される。
【0049】
尚、図17はブレーキ液圧制御装置BCを含む制動系を示すもので、ブレーキペダルBPの操作に応じてバキュームブースタVBを介してマスタシリンダMCが倍力駆動され、低圧リザーバLRS内のブレーキ液が昇圧されて車輪FR,RL側及び車輪FL,RR側の二つのブレーキ液圧系統にマスタシリンダ液圧が出力されるように構成されている。マスタシリンダMCは二つの圧力室を有するタンデム型のマスタシリンダで、一方の圧力室は車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統に連通接続され、他方の圧力室は車輪FL,RR側のブレーキ液圧系統に連通接続されている。尚、マスタシリンダMCの出力側には、その出力液圧(マスタシリンダ液圧)を検出する圧力センサPSが設けられている。
【0050】
本実施形態の車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統においては、一方の圧力室は主液圧路MF及びその分岐液圧路MFr,MFlを介して夫々ホイールシリンダWfr,Wrlに接続されている。主液圧路MFには常開の第1の開閉弁SC1(所謂カットオフ弁として機能するもので、以下、単に開閉弁SC1という)が介装されている。また、一方の圧力室は補助液圧路MFcを介して後述する逆止弁CV5,CV6の間に接続されている。補助液圧路MFcには常閉の第2の開閉弁SI1(以下、単に開閉弁SI1という)が介装されている。これらの開閉弁は何れも2ポート2位置の電磁開閉弁で構成されている。分岐液圧路MFr,MFlには夫々、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁PC1及びPC2(以下、単に開閉弁PC1,PC2という)が介装されている。また、これらと並列に夫々逆止弁CV1,CV2が介装されている。
【0051】
逆止弁CV1,CV2は、マスタシリンダMC方向へのブレーキ液の流れを許容しホイールシリンダWfr,Wrl方向へのブレーキ液の流れを制限するもので、これらの逆止弁CV1,CV2及び第1の位置(図示の状態)の開閉弁SC1を介してホイールシリンダWfr,Wrl内のブレーキ液がマスタシリンダMCひいては低圧リザーバLRSに戻されるように構成されている。而して、ブレーキペダルBPが解放されたときに、ホイールシリンダWfr,Wrl内の液圧はマスタシリンダMC側の液圧低下に迅速に追従し得る。また、ホイールシリンダWfr,Wrlに連通接続される排出側の分岐液圧路RFr,RFlに、夫々常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁PC5,PC6(以下、単に開閉弁PC5,PC6という)が介装されており、分岐液圧路RFr,RFlが合流した排出液圧路RFはリザーバRS1に接続されている。
【0052】
車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統においては、上記開閉弁PC1,PC2,PC5,PC6によって本発明にいうモジュレータが構成されている。また、開閉弁PC1,PC2の上流側で分岐液圧路MFr,MFlに連通接続する液圧路MFpに、液圧ポンプHP1が介装され、その吸込側には逆止弁CV5,CV6を介してリザーバRS1が接続されている。また、液圧ポンプHP1の吐出側は、逆止弁CV7及びダンパDP1を介して夫々開閉弁PC1,PC2に接続されている。液圧ポンプHP1は、液圧ポンプHP2と共に一つの電動モータMによって駆動され、吸込側からブレーキ液を導入し所定の圧力に昇圧して吐出側から出力するように構成されている。リザーバRS1は、マスタシリンダMCの低圧リザーバLRSとは独立して設けられるもので、アキュムレータということもでき、ピストンとスプリングを備え、種々の制御に必要な容量のブレーキ液を貯蔵し得るように構成されている。
【0053】
マスタシリンダMCは液圧路MFcを介して液圧ポンプHP1の吸込側の逆止弁CV5と逆止弁CV6との間に連通接続されている。逆止弁CV5はリザーバRS1へのブレーキ液の流れを阻止し、逆方向の流れを許容するものである。また、逆止弁CV6,CV7は液圧ポンプHP1を介して吐出されるブレーキ液の流れを一定方向に規制するもので、通常は液圧ポンプHP1内に一体的に構成されている。而して、開閉弁SI1は、図17に示す常態の閉位置でマスタシリンダMCと液圧ポンプHP1の吸込側との連通が遮断され、開位置でマスタシリンダMCと液圧ポンプHP1の吸込側が連通するように切り換えられる。
【0054】
更に、開閉弁SC1に並列に、マスタシリンダMCから開閉弁PC1,PC2方向へのブレーキ液の流れを制限し、開閉弁PC1,PC2側のブレーキ液圧がマスタシリンダMC側のブレーキ液圧に対し所定の差圧以上大となったときにマスタシリンダMC方向へのブレーキ液の流れを許容するリリーフ弁RV1と、ホイールシリンダWfr,Wrl方向へのブレーキ液の流れを許容し逆方向の流れを禁止する逆止弁AV1が介装されている。リリーフ弁RV1は、液圧ポンプHP1から吐出される加圧ブレーキ液がマスタシリンダMCの出力液圧より所定の差圧以上大となったときに、マスタシリンダMCを介して低圧リザーバLRSにブレーキ液を還流するもので、これにより液圧ポンプHP1の吐出ブレーキ液が所定の圧力に調圧される。また、液圧ポンプHP1の吐出側にダンパDP1が配設され、後輪側のホイールシリンダWrlに至る液圧路にプロポーショニングバルブPV1が介装されている。
【0055】
車輪FL,RR側のブレーキ液圧系統においても同様に、リザーバRS2、ダンパDP2及びプロポーショニングバルブPV2をはじめ、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁SC2(第1の開閉弁)、常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁SI2(第2の開閉弁),PC7,PC8、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁PC3,PC4、逆止弁CV3,CV4,CV8乃至CV10、リリーフ弁RV2並びに逆止弁AV2が配設されている。液圧ポンプHP2は、電動モータMによって液圧ポンプHP1と共に駆動され、電動モータMの起動後は両液圧ポンプHP1,HP2は連続して駆動される。
【0056】
上記開閉弁SC1,SC2,SI1,SI2並びに開閉弁PC1乃至PC8は電子制御装置ECUによって駆動制御され、上記の制動操舵制御を初めとする各種制御が行なわれる。例えば、例えば過度のオーバーステアを防止する場合には、これに対抗するモーメントを発生させる必要があり、車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統においては、制動操舵制御時に開閉弁SC1が閉位置に切換えられると共に、開閉弁SI1が開位置に切換えられ、電動モータMが駆動され、液圧ポンプHP1からブレーキ液が吐出される。そして、開閉弁PC1,PC2,PC5,PC6が電子制御装置ECUによって適宜開閉制御され、ホイールシリンダWfr,Wrlの液圧がパルス増圧(緩増圧)、減圧又は保持され、車輪FL,RR側のブレーキ液圧系統も含め、前後の車輪間の制動力配分が車両のコーストレース性を維持し得るように制御される。
【0057】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明の車両の運動制御装置においては、ブレーキ液圧制御装置による増圧モード中に、車体横すべり角加速度が基準値を下回ったときには、増圧勾配を減少させるように制御する構成とされており、適切に液圧制御が行なわれるので、ブレーキ引きずり感を惹起することなく、不安定な車両挙動を抑え、円滑に車両の運動状態を安定させることができる。
【0058】
また、前記液圧制御手段を、請求項2又は3に記載のように構成することにより、車両の運動状態に応じて適切に液圧制御が行なわれるので、一層円滑に車両の運動状態を安定させることができる。
【0059】
更に、前記基準値を請求項に記載のように設定することにより、適切な基準値に基づき適切に液圧制御が行なわれるので、一層円滑に車両の運動状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の運動制御装置の一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の運動制御装置の一実施形態の全体構成図である。
【図3】本発明の一実施形態における車両の制動制御の全体を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態における制動操舵制御に供する目標スリップ率設定の処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における液圧サーボ制御の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における特定液圧モード設定の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態における特定液圧モード設定の処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に供する係数Kvと推定車体速度Vsoの関係を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に供する係数Aと車体横すべり角βの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態に供する係数Bと車体横すべり角速度Dβの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施形態に供する増圧時間Taと車体横すべり角速度Dβの関係を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施形態におけるオーバステア抑制制御の開始・終了判定領域を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施形態におけるオーバステア抑制制御時の車体横すべり角β、車体横すべり角速度Dβ及び車体横すべり角加速度D2 βと制御領域の関係を示すグラフである。
【図14】本発明の一実施形態におけるアンダーステア抑制制御の開始・終了判定領域を示すグラフである。
【図15】本発明の一実施形態における液圧制御に供するパラメータ演算用のゲインGs** ,Gd** を示すグラフである。
【図16】本発明の一実施形態に供する制御マップを示すグラフである。
【図17】本発明の車両の運動制御装置の液圧系を示す構成図である。
【符号の説明】
BP ブレーキペダル, MC マスタシリンダ
M 電動モータ, HP1,HP2 液圧ポンプ
RS1,RS2 リザーバ
Wfr,Wfl,Wrr,Wrl ホイールシリンダ
WS1〜WS4 車輪速度センサ
FR,FL,RR,RL 車輪
SC1,SC2 第1の開閉弁, SI1,SI2 第2の開閉弁
PC1〜PC8 開閉弁
EG エンジン, ECU 電子制御装置

Claims (4)

  1. 車両の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシリンダに対し少なくともブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液圧を付与するブレーキ液圧制御装置と、前記車両の旋回を含む車両運動中における安定性を判定する車両運動状態判定手段と、該車両運動状態判定手段の判定結果に応じて少なくとも増圧モード、減圧モード及び保持モードの液圧モードの何れかを設定し、該液圧モードの何れかに基づき前記ブレーキ液圧制御装置を制御して前記各車輪に対する制動力を制御する制動力制御手段とを備えた車両の運動制御装置において、前記車両運動状態判定手段が、前記車両の車体横すべり角を演算する車体横すべり角演算手段と、前記車両の車体横すべり角加速度を演算する車体横すべり角加速度演算手段とを備え、前記制動力制御手段は、前記ブレーキ液圧制御装置による増圧モード中に、前記車体横すべり角加速度演算手段の演算結果の車体横すべり角加速度が基準値を下回ったときには、前記ブレーキ液圧制御装置による増圧勾配を減少させるように制御する液圧制御手段を備えたことを特徴とする車両の運動制御装置。
  2. 前記液圧制御手段は、前記車体横すべり角加速度演算手段の演算結果の車体横すべり角加速度が前記基準値を下回り、且つ前記車体横すべり角演算手段の演算結果の車体横すべり角が所定値以下のときには保持モードに設定し、前記車体横すべり角加速度が前記基準値を下回り且つ前記車体横すべり角が所定値を越えたときには、増圧勾配が緩やかな緩増圧モードに設定するように構成したことを特徴とする請求項記載の車両の運動制御装置。
  3. 前記液圧制御手段は、前記車体横すべり角加速度演算手段の演算結果の車体横すべり角加速度が前記基準値以上の値から前記基準値以下の値に切り換わった後所定時間は前記増圧モードを維持するように構成したことを特徴とする請求項記載の車両の運動制御装置。
  4. 前記車両の車体速度を検出する車体速度検出手段を具備し、前記車両運動状態判定手段が、前記車両の車体横すべり角速度を演算する車体横すべり角速度演算手段を備え、前記液圧制御手段が、前記車体横すべり角演算手段の演算結果の車体横すべり角、前記車体横すべり角速度演算手段の演算結果の車体横すべり角速度、及び前記車体速度検出手段の検出結果の車体速度に基づき、前記基準値を設定するように構成したことを特徴とする請求項記載の車両の運動制御装置。
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