JP4173771B2 - 手術用織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、造影糸を備えた手術用織物に関するものである。尚以下、手術用のガーゼを例に挙げて説明するが、本発明はガーゼの如く平織組織の綿製織物に限るものではなく、各種手術に用いる織物に対して勿論適用できる。
【0002】
【従来の技術】
外科手術の際には、乾燥の防止や出血を拭き取る等の目的で多数のガーゼが使用される。これらガーゼが体内に残ると、例えば痛みや違和感,或いは微熱等、様々な身体の不調をきたす虞があることから、手術終了に際しては全てのガーゼを体内から取り除く必要がある。
【0003】
そこで手術においては、一般にガーゼを構成する1本の経糸の代わりに造影糸を織り込んだガーゼが用いられ、手術終盤の手術部位を閉じる前にX線造影(レントゲン撮影)を行って、映し出された造影糸を手がかりにガーゼの存在の有無を確認し、残っていれば取り除くという方法が採られている。
【0004】
造影糸としては、ポリプロピレン系樹脂に硫酸バリウムを55〜65質量%練り込んだマルチフィラメント、または硫酸バリウムを50〜80質量%練り込んだ塩化ビニル樹脂やシリコーン系樹脂の糸状体が専ら用いられており、これらのものは吸水性に乏しく血液に染まらないことから、ガーゼ本体が血液により染まっていても、該造影糸を肉眼により視認し易いという利点も有する。
【0005】
ところでこの様に視認し易い利点から、体内からガーゼを取り除く際には、造影糸をピンセット等で掴んで取り出すといった操作を行うことが多い。通常の取出操作による力では、ガーゼ本体から造影糸が引き抜けるということは殆どないものの、例えばガーゼが深部に挿入されて臓器に挟まれた為に強く引き抜く必要がある場合等には、造影糸を掴んで引っ張り出すと、該造影糸がガーゼ本体から抜けてしまい、ガーゼ本体を体内に残す懸念がある。この様に造影糸が抜けてしまうと、ガーゼ本体はX線造影を行っても映し出されないから、見つけ出すことが困難となる。
【0006】
そこで造影糸を抜け難くした手術用ガーゼとして、例えば図10[従来例▲1▼の手術用ガーゼを示す正面図]に示す様に、経糸側の切断端部55の近傍において織密度を高くした(この部分を以下、高織密度部分52と称することがある)手術用ガーゼ50が提案されている(従来例▲1▼)(例えば、特許文献1の第2頁,図7参照)。この従来例▲1▼のものはガーゼを構成する経糸のうちの1本に造影糸51を用いたものであり、造影糸51は上記高織密度部分52によって締め付けられるから抜け難くなる。尚図中、53はガーゼ本体、54は緯糸がUターンする織布耳部分である。
【0007】
また短冊形状の内視鏡手術用ガーゼにおいて造影糸の抜け防止を図ったものとして、図11[従来例▲2▼の内視鏡手術用ガーゼ20を示す正面図],図12[(a)は図11に示す内視鏡手術用ガーゼ20における熱融着部11付近を示す拡大図、(b)は(a)に示すB−B線断面図]に示す様に、経糸切断部の近傍部分で、ガーゼ本体を構成する綿糸12に造影糸16を熱融着させた(熱融着部11)ものが提案されている(従来例▲2▼)(例えば、特許文献1(特にその第図2,3)参照)。この従来例▲2▼のものは、熱融着部11において造影糸16がガーゼ本体の綿糸12にしっかりと融着されているから、非常に抜け難い。
【0008】
更に他には、図13[従来例▲3▼の手術用ガーゼの拡大正面図]に示す様に、ガーゼ本体の経糸62のうちの1本(織り糸67)と造影糸66の部分が紗織りとなった手術用ガーゼ60が提案されており(従来例▲3▼)(例えば、特許文献2参照)、このものは織り糸67が造影糸66に絡みつく状態となるから引抜抵抗が上がり、抜け難い。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−52038号公報
【特許文献2】
特開2002−143212号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上の様に造影糸を抜け難くした手術用ガーゼ(手術用織物)が種々提案されているが、本発明は異なる手法によって造影糸を極めて抜け難くした手術用織物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る手術用織物は、造影糸を備えた手術用織物であって、前記造影糸の太さが、手術用織物本体を構成する糸の太さに対して3倍以上であり、該造影糸が隣接して2本以上織り込まれたことを特徴とする。
【0012】
この様に2本以上の造影糸が隣接して織り込まれたものは、後述する実験の様に非常に引抜抵抗が高いことを確認している。引抜抵抗が高くなる理由としては確実なことは言えないが、大凡以下の(1)〜(3)の理由によると考えられる。尚手術用織物として手術用ガーゼを例にとって説明する。
【0013】
(1):一般に造影糸の太さはガーゼ本体を構成するガーゼ糸に比べて太い。従って仮に従来の様に1本の造影糸が織り込まれたものであっても、造影糸と交差するガーゼ糸(以下、交差ガーゼ糸と称することがある)は造影糸との交差部分で比較的大きな角度をつけてうねることになるところ、本発明では上記の如く2本以上の造影糸が隣接して織り込まれているから、この隣接する造影糸部分において交差ガーゼ糸は造影糸1本の場合よりも極めて急な角度で立ち上がりまた立ち下がって挿通されることになる。この為に造影糸に対する交差ガーゼ糸の締め付けが非常に強いものとなり、その結果造影糸が抜け難くなる。
【0014】
(2):更に交差ガーゼ糸の締め付けによって造影糸が変形し、挿通方向に凹凸のある形状となるから、引き抜くには、変形した凸部分を交差ガーゼ糸が乗り越えなければならず、引抜抵抗が高い。
【0015】
(3):例えばガーゼ用製織機を用いてその経糸のうちの2本以上を造影糸に代えて製織した場合には、造影糸が太い為に他のガーゼ本体部分に比べて該造影糸同士の隙間及び隣接するガーゼ糸との隙間が小さくなり、従って締め付け力が上がると共に摩擦抵抗も上がり、抜け難くなる。
【0016】
尚仮に造影糸を隣接させずに、離間させて2本以上入れた場合は、交差ガーゼ糸の締め付け力の向上が期待できないので、上記(1)〜(3)の様な引抜抵抗の向上が望めない。
【0017】
ガーゼ本体等の手術用織物本体を構成する糸(ガーゼ糸)の太さは一般に直径0.1〜0.2mm程度であり、これに対して造影糸の太さは一般に直径0.5〜0.9mm程度である。この様に太さに差がある為に上記(1)〜(3)の如く抜け難くなるものと考えられる。上記(1)〜(3)の作用を有効に発揮させる為に、手術用織物本体(ガーゼ本体)を構成する糸(ガーゼ糸)の太さに対する造影糸の太さは3倍以上が好ましく、より好ましくは5倍以上である。
【0018】
造影糸としては、硫酸バリウムや硫酸銀,酸化チタン,シリコーン等のX線非透過性物質を樹脂に練り込んで糸条としたものや、2枚の樹脂フィルムの間に銀等のX線非透過性物質を挟み、これを細くカットして糸状にしたもの等が挙げられ、具体的には上記の如くポリプロピレン系樹脂に硫酸バリウムを練り込んだマルチフィラメントや、硫酸バリウムを練り込んだ塩化ビニル樹脂やシリコーン系樹脂の糸状体が挙げられる。
【0019】
更に前記造影糸がマルチフィラメントの場合には、モノフィラメントに比べて太さ方向に変形し易く、従って交差糸(上記交差ガーゼ糸の様に、造影糸と交差する手術用織物本体の糸)によって少しの締め付け力が作用するだけで、マルチフィラメントの造影糸が変形し、上記の如く抜け難くなるから、より好ましい。
【0020】
本発明の手術用織物としては、2本以上の造影糸が隣接する部分が、挿入されている造影糸の長さの全てにわたっていることが最も好ましいが、この様に全てが隣接している必要はなく、或る程度の長さだけ隣接していれば、この隣接した箇所において上記(1)〜(3)の様に作用して造影糸が抜け難くなる。
【0021】
造影糸の本数としては2本以上であれば良く、即ち3本、4本であっても良いが、造影糸は吸水性に乏しく、手術用織物(ガーゼ)の風合いを固くする懸念があるから、あまり多く挿入することは推奨できない。この様な観点から、2〜3本が好ましく、最も好ましくは2本である。
【0022】
また本発明は、上述の如く造影糸が抜け難くなるという効果に加えて、X線造影による視認性に優れるという効果もある。つまり、造影糸が2本以上隣接したものの場合、X線造影を行った際に、造影方向に対して造影糸2本(或いは3本以上)が平行に列んだ箇所では造影糸が太く見え、また造影糸2本(或いは3本以上)が重なった箇所では、X線非透過性物質(硫酸バリウム等)の密度(X線透過線上にある量)が見かけ上高くなる為に造影糸がより明るく見え、いずれにせよ視認性が向上する。尚複数の造影糸を離間させて(隣接させずに)配置したガーゼにおいても、ガーゼは不定形に折り畳まれて(クシャクシャになって)体内に存在することが多いから、造影方向に対して造影糸が重なる箇所も存在するものの、本発明の様に隣接させたものにあっては、折り畳まれることによって重なる場合だけでなく、平行に列ぶ2本の造影糸の側方から造影した場合も重なることになり、従って造影糸が重なる確率が非常に高くなるので、視認性に優れる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る手術用織物に関して、例を示す図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0024】
<実施形態1>
図1の(a)は本発明の実施形態1に係る手術用ガーゼ(手術用織物)の部分拡大図であり、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。
【0025】
この手術用ガーゼ30は、綿製ガーゼ糸31,32(15tex(綿糸40番手))が経糸及び緯糸に配されてガーゼ本体33を構成し(図中、31が経方向のガーゼ糸、32が緯方向のガーゼ糸である)、このガーゼ本体33に2本の造影糸34,35(3800dtex)が隣接して経方向に織り込まれたものであって、造影糸34,35,経方向ガーゼ糸31と緯方向ガーゼ糸32により平織組織が形成されている。大きさは30cm×30cmである。
【0026】
造影糸34,35は、ポリプロピレン系樹脂に硫酸バリウムを55〜65質量%練り込んでフィラメントを紡糸し、これを40本束ねて更にポリエステルフィラメントを巻き付けたマルチフィラメントである。尚実施形態1の造影糸34,35及びガーゼ糸31,32の太さとしてその断面直径を測定したところ、造影糸34,35は直径0.53mmで、ガーゼ糸31,32は直径0.15mmであり、造影糸34,35はガーゼ糸31,32の約3.5倍の太さであった。
【0027】
この手術用ガーゼ30の製造にあたっては、通常のガーゼ用織機を使用し、2本のガーゼ用経糸に代えて2本の造影糸34,35を用いて製織することにより得られる。尚織り上がった手術用ガーゼ30は適宜脱脂,漂白,滅菌等を行って、日本薬局方に規定するガーゼに適合するものとする。
【0028】
尚例えば上記従来例▲3▼ではもじり織りのできる特種な織機を必要とするが、上記の様に本実施形態では通常のガーゼ用織機を用いて製織できるから、従来の製造設備をそのまま利用でき、また通常のガーゼの製造工程と同じ様に製造できるから、製造過程が煩雑になることもない。従ってコスト上昇を招くことがない。
【0029】
手術用ガーゼ30の造影糸34,35はガーゼ糸31,32に比べて太く、該造影糸34,35及びこれらに隣接する経方向ガーゼ糸31a,31bの部分では、糸−糸間隔が狭く密に織られた状態であるから、摩擦抵抗が上がり、また造影糸34,35部分では緯方向ガーゼ糸(交差ガーゼ糸)32が急峻に立ち上がりまた立ち下がってうねることになるので、緯方向ガーゼ糸32に強い締め付け力が生じ、造影糸34,35を強力に締め付ける。更にこの締め付けにより、図2[手術用ガーゼ30中の造影糸34(或いは造影糸35)を表す側面図]に示すように造影糸34,35に凹凸状の変形を生じさせる。この様な摩擦抵抗の上昇、強い締め付け、凹凸状の変形といった要素が絡み合って、造影糸34,35が非常に抜け難いものとなる。仮に造影糸が抜けてしまうと、X線造影を行っても手術用ガーゼが映し出されず、その為に手術用ガーゼを見つけ難くなって体内に残すという懸念があるが、上記の如く本実施形態では造影糸34,35に引き抜き力が作用しても容易には抜けないから、上記懸念が殆どなくなり、安全性がより向上する。
【0030】
加えて2本の造影糸34,35が隣り合って列んでいるので、X線造影を行った際に、平面的に列んで見える方向からの造影では造影糸が太く見え、重なって見える方向(側端方向(図1の矢印C方向))からの造影では1本の場合よりも明るく輝いて見えるから、見つけやすい。尚従来の手術用ガーゼのように造影糸が1本織り込まれたものであっても、体内では不定形に折り畳まれて存在するので、造影糸の重なり部分は少なからず生じ、当該部分が明るく輝いて見えることになるものの、本実施形態1のように造影糸34,35が隣接しているものでは、折り畳まれて重なるだけでなく、側端方向(図1の矢印C方向)からの造影の場合でも重なって見え、この様に造影糸が重なる確率が高くなるので、より視認性が向上する。
【0031】
<実施形態2>
図3は本発明の実施形態2に係る手術用ガーゼ(手術用織物)40を示す正面図である。尚図1,10と同じ構成部分については同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0032】
この実施形態2の手術用ガーゼ40は、経糸側の切断端部55の近傍において織密度の高い高織密度部分52を形成したものであり、他の構成は上記実施形態1と同様である。
【0033】
この手術用ガーゼ40においては更に高織密度部分52による締め付け力も加わり、造影糸34,35がより一層抜け難くなる。従って造影糸が抜けた為に手術用ガーゼ40が見つけられなくなるという事態を防止することができる。また手術用ガーゼ40も上記実施形態1と同様に、2本の造影糸34,35が隣接しているから造影糸が重なってX線造影される確率が高くなり、当該重なり部分が明るく輝いて視認性に優れる。
【0034】
尚上記実施形態1,2では造影糸の太さとして直径0.53mmのものを挙げたが、一般にはこの太さのものの他、直径0.57mm,0.65mm,0.85mmのものが汎用されており、これらの造影糸を使用した場合であってもガーゼ糸(一般に直径0.15mm程度)に対して十分に太く、交差ガーゼ糸によって強く締め付けられる等により非常に抜け難いものとなる。
【0035】
また上記実施形態1,2では造影糸を2本織り込んだ手術用ガーゼ30,40を示したが、3本以上織り込んだものであっても良い。但し、造影糸の本数が多すぎると、吸水性や柔軟性が損なわれる虞があるから、これらを勘案してあまり多く織り込まない方が良い。
【0036】
加えて上記実施形態1,2では造影糸を経糸として織り込んだものを示したが、緯糸として織り込んでも良い。
【0037】
また上記実施形態1,2ではガーゼ本体として40番手の綿糸からなるものを示したが、これに限るものではなく、他の太さの綿糸(例えば30番手等)を用いても勿論良く、更にレーヨンやキュプラ等の他の繊維を単独或いは混紡,合糸等した糸を用いて製織したものであっても良い。
【0038】
更に上記実施形態1,2においては、30cm×30cmの手術用ガーゼを示したが、これに限らず、例えば1cm×15cm等の圧迫止血用ガーゼ、3cm×20cm等の内視鏡用ガーゼ、更にガーゼを折り畳んで3cm×3cmとした剥離用ガーゼ等の、手術に用いる各種織物に本発明を適用できる。
【0039】
<実験>
実施形態2と同様の手術用ガーゼ40(試料No.1〜6)、及び上記従来例▲1▼の手術用ガーゼ(試料No.7〜9)について、造影糸の引抜(脱落)強度試験を行った。尚これらの試料No.1〜9はいずれも経30cm×緯30cmであり、試料No.1〜6は造影糸が2本隣接して経方向に織り込まれ、試料No.7〜9は造影糸が1本経方向に織り込まれたものである。また造影糸が織り込まれていないガーゼのみのもの(経30cm×緯30cm)(試料No.10〜12)に関しても、このガーゼを構成するガーゼ糸1本についての引抜(脱落)強度試験を行った。尚いずれもガーゼ糸の太さは直径0.15mm、造影糸の太さは直径0.53mmである。
【0040】
試験方法は、試料No.1〜9については造影糸が長手方向の中心になる様にして5cm幅に試料をカットし(30cm×5cmの短冊状となる)、長手方向の一方端5cmの部分においてガーゼ糸のみを切除して造影糸だけとし、長手方向の他方端5cmの部分においては造影糸のみを切除してガーゼ糸だけとした。試料No.4〜6に関しては、更に長手方向の一方端5cmの部分における造影糸2本のうちの1本を切除した。そしてこれら切除部分を掴み部とした(図4:引抜強度試験の方法を説明する為の図(その1))。試料No.10〜12については経方向の1本のガーゼ糸を上記造影糸と見立てて、上記と同様に長手方向の一方端5cm及び他方端5cmをそれぞれ切除し、掴み部とした。尚いずれも掴み間隔は25cmとなる。
【0041】
定測伸長形引張試験機(JIS L 1906 5.3.1において使用される試験機と同じもの)を用い、この試験機のチャック部71により試料の掴み部をそれぞれ掴んで試料に弛みのない状態とし(初荷重点:0.03N)、20cm/分の引張速度で試料を引っ張り(ロードセル定格:50N)、その際の引抜抵抗の荷重を測定した(図5:引抜強度試験の方法を説明する為の図(その2))。表1にその結果を示すと共に、図6〜9に測定結果のチャートを表す。図6〜9中、縦軸は引抜抵抗の荷重、横軸は伸び(チャック部71の離間幅)を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1及び図6〜9から分かる様に、造影糸が1本織り込まれた試料No.7〜9に比べて、2本の造影糸が隣接して織り込まれた試料No.1〜6は、いずれも最大荷重が大きく、引抜抵抗性に非常に優れる。特に造影糸2本ともに引抜力を作用させたものにあっては(試料No.1〜3)いずれも造影糸の切断に至り、このことから、ピンセット等で造影糸2本を掴んで引き出す場合には、造影糸が引き抜けるより前に造影糸が切断され、残りの造影糸が手術用ガーゼに残ることが分かる。また試料No.1〜6の引抜抵抗最大荷重の値から分かるように(試料No.1〜3の平均は18.434N、試料No.4〜6の平均は7.265N)、ガーゼ自身が破損しそうになる(或いは破損する)程の大きな力を加えないと造影糸が引き抜けないことが分かる。更に試料No.10〜12はガーゼ糸の引抜抵抗を測定したものであるが、この試料No.10〜12の結果と試料No.1〜6の結果を比較しても分かる様に、試料No.1〜6は造影糸の引抜抵抗が格段に優れる。
【0044】
尚試料No.1〜12はいずれも経糸側の切断端部の近傍に高織密度部分を有するが、長手方向の一方端側では上記ガーゼ糸切除によって該高織密度部分が取り除かれ、長手方向の他方端側においてもチャック部71により掴まれている部分であるから、該高織密度部分は本試験において造影糸或いはガーゼ糸の引抜抵抗荷重について何ら関与しない。従って実施形態2の手術用ガーゼ40はこの高織密度部分52によって実際にはより引抜抵抗が高いものとなる。
【0045】
【発明の効果】
以上の様に本発明の手術用織物においては、造影糸が非常に抜け難いから、手術用織物より造影糸が抜け落ちることは殆どなく、従って造影糸が抜けた為にX線造影で織物(ガーゼ)が映し出されないという事態を防ぐことができ、よってより安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る手術用ガーゼ(手術用織物)を示す図。
【図2】実施形態1の手術用ガーゼ中の造影糸を表す側面図。
【図3】本発明の実施形態2に係る手術用ガーゼ(手術用織物)を示す正面図。
【図4】引抜強度試験の方法を説明する為の図(その1)。
【図5】引抜強度試験の方法を説明する為の図(その2)。
【図6】試料No.1〜3の引抜強度試験の測定結果を表すチャート。
【図7】試料No.4〜6の引抜強度試験の測定結果を表すチャート。
【図8】試料No.7〜9の引抜強度試験の測定結果を表すチャート。
【図9】試料No.10〜12の引抜強度試験の測定結果を表すチャート。
【図10】従来例▲1▼の手術用ガーゼを示す正面図。
【図11】従来例▲2▼の内視鏡手術用ガーゼを示す正面図。
【図12】(a)は図11に示す内視鏡手術用ガーゼにおける熱融着部付近を示す拡大図、(b)は(a)に示すB−B線断面図。
【図13】従来例▲3▼の手術用ガーゼの拡大正面図。
【符号の説明】
30,40 手術用ガーゼ
31 経方向のガーゼ糸
32 緯方向のガーゼ糸
33 ガーゼ本体
34,35 造影糸
52 高織密度部分
54 織布耳部分
55 経糸側の切断端部
71 チャック部
Claims (2)
- 造影糸を備えた手術用織物において、
前記造影糸の太さが、手術用織物本体を構成する糸の太さに対して3倍以上であり、
該造影糸が隣接して2本以上織り込まれたことを特徴とする手術用織物。 - 前記造影糸がマルチフィラメントである請求項1に記載の手術用織物。
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