JP4165487B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ロールバック状態で発進操作した際の過大トルク発生を防止すると共に4WD性能を確保することができる車両の駆動力制御装置を提供することを目的としている。
また、本発明に係る車両の駆動力制御装置は、ロールバック検出手段で車両がロールバックしていることを検出し、前記ロールバック検出手段で車両がロールバックしていると判断したときに発進操作をしたとき、トルク指令値制限手段で所定時間だけ前記目標トルク指令値を制限し、当該トルク指令値制限手段は、ロールバック速度が大きいほど前記目標トルク指令値を小さい値に制限する。
さらに、車両がロールバックしている状態で発進操作をしたとき、モータの目標トルク指令値を所定時間だけ制限すると共に、ロールバック速度が大きいほど当該目標トルク指令値を小さい値に制限するので、ロールバック速度に応じた適切な目標モータトルクの制限処理を行うことができるという効果が得られる。
図1は、本実施形態に係る車両のシステム構成を説明する図である。
この図1に示すように、本実施形態の車両は、左右前輪1L、1Rが、内燃機関であるエンジン2によって駆動される主駆動輪であり、左右後輪3L、3Rが、モータ4によって駆動可能な従駆動輪である。上記エンジン2の出力トルクTeは、変速機30及びディファレンスギア31を通じて左右前輪1L、1Rに伝達される。
上記変速機30は、不図示の変速制御部からのシフト命令に基づき変速操作を行う。変速制御部は、例えば車速とアクセル開度に基づく変速シフトスケジュールをテーブルなどの情報として有していて、現在の車速及びアクセル開度に基づき変速点を通過すると判定するとシフト命令を変速機30に出力する。
また、符号34はブレーキペダルであって、そのブレーキペダル34のストローク量がブレーキストロークセンサ35によって検出される。該ブレーキストロークセンサ35は、検出したブレーキストローク量を制動コントローラ36及び4WDコントローラ8に出力する。
また、符号39は、駆動モードスイッチであって、2WDと4WDとの切替指令を出力するものである。
上記発電機7は、図2及び図3に示すように、出力電圧Vを調整するための電圧調整器22(レギュレータ)を備え、4WDコントローラ8の発電機制御部8Eからの発電機制御指令値c1(デューティ比)に応じた界磁電流Ifhに調整することで、エンジン2に対する発電負荷及び発電する電圧Vが制御される。すなわち、電圧調整器22は、発電機制御部8Eから発電機制御指令c1(デューティ比)を入力し、その発電機制御指令c1に応じたデューティ比に発電機7の界磁電流Ifhを調整すると共に、発電機7の出力電圧Vを検出し4WDコントローラ8に出力する。
その発電機7が発電した電力は、電線9を介してモータ4に供給可能となっている。その電線9の途中にはジャンクションボックス10が設けられている。上記モータ4(電動機)の駆動軸は、減速機11及びクラッチ12を介して後輪3L、3Rに接続可能となっている。符号13はデフを表す。
上記モータ4の駆動軸の回転数Nmを検出するモータ用回転数センサ26を備え、該モータ用回転数センサ26は、検出したモータ4の回転数信号を4WDコントローラ8に出力する。
4WDコントローラ8は、図3に示すように、目標モータトルク演算部8A、モータ制御部8B、リレー制御部8C、クラッチ制御部8D、発電機制御部8E、及びロールバック検出手段としてのロールバック判断部8Fを備え、駆動モードスイッチ39が4WD状態の場合に作動する。
クラッチ制御部8Dは、上記クラッチ12の状態を制御し、4輪駆動状態と判定している間はクラッチ12を接続状態に制御する。
上記目標モータトルク演算部8Aは、余剰トルク演算部8Aa、加速アシストトルク演算部8Ab、及びモータトルク決定部8Acを備える。
すなわち、先ず、ステップS10において、車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRからの信号に基づき演算した、前輪1L、1R(主駆動輪)の車輪速から後輪3L、3R(従駆動輪)の車輪速を減算することで、前輪1L、1Rの加速スリップ量であるスリップ速度ΔVFを求め、ステップS20に移行する。
前輪1L、1Rにおける左右輪速の平均値である平均前輪速VWf、及び後輪3L、3Rにおける左右輪速の平均値である平均後輪速VWrをそれぞれ算出する。次に、上記平均前輪速VWfと平均後輪速VWrとの偏差から、主駆動輪である前輪1L、1Rの加速スリップ度合を示すスリップ速度(加速スリップ量)ΔVFを、下記式により算出する。
ΔVF=VWf−VWr
一方、ステップS20において、スリップ速度ΔVFが0より大きいと判定した場合には、前輪1L、1Rが加速スリップしていると推定されるので、ステップS40に移行する。
ステップS40では、前輪1L、1Rの加速スリップを抑えるために必要な吸収トルクTΔVFを、下記式によって演算してステップS50に移行する。この吸収トルクTΔVFは加速スリップ量に比例した量となる。
TΔVF=K1×ΔVF ………(1)
TG=K2・(V×Ia)/(K3×Nh)
ここで、
V :発電機7の電圧
Ia:発電機7の電機子電流
Nh:発電機7の回転数
K3:効率
K2:係数
である。
ステップS60では、下記式に基づき、余剰トルクつまり発電機7で負荷すべき発電負荷トルクThを求め、ステップS70に移行する。
Th=TG+TΔVF
加速アシストトルク演算部8Abは、図5に示すマップに基づき、車両速度とアクセル開度θ(運転者による加速指示量)に応じた第2目標モータトルクTm2を演算する。この第2目標モータトルクTm2は、アクセル開度θが大きい程大きく且つ、車両速度が小さい程小さい値となり、所定車両速度以上ではゼロとなるように設定される。所定車両速度とは、例えば、車両が発進状態から脱したと推定される低速の車両速度とする。
次に、モータトルク決定部8Acは、上記余剰トルク演算部8Aa及び加速アシストトルク演算部8Abが演算した第1及び第2目標モータトルクTm1、Tm2についてセレクトハイを行い、大きい方の値を目標モータトルクTmとして決定し、モータ制御部8Bに出力する。
ステップS215では、クラッチ制御部8Dにクラッチオン指令を出力してステップS220に移行する。
ステップS250では、目標モータトルクTm及び目標モータ界磁電流Ifmを変数として、マップなどに基づき、対応する目標電機子電流Iaを求め、ステップS260に移行する。
なお、発電機制御部8Eでは、現在の発電電圧を入力しつつ、上記目標発電電圧Vとなる発電機制御指令値を演算し、電圧調整器22を介して、その発電機制御指令c1に応じた値に発電機7の界磁電流Ifhを調整することで、発電機の出力電圧を制御する。
先ずステップS231で車両がロールバックしているか否かを判定する。この判定は、後述するロールバック判断部8Fで設定したロールバック判定フラグFrが、車両がロールバックしていることを示す“1”にセットされているか否かによって行い、Fr=0であるときには、車両がロールバックしておらずモータは正転しているので、目標モータトルク指令値Tmを制限する必要はないと判断してステップS232に移行し、目標モータトルクTmの制限値であるモータトルク最大値Tmmaxを、通常値である正転時最大トルクSに設定する。
また、前記ステップS231の判定結果がFr=1であるときには、車両がロールバック中であると判断してステップS234に移行し、目標モータトルクTmの制限タイマカウントが開始されているか、即ちカウント値N>0であるか否かを判定する。そして、N=0でありタイマカウントが開始されていないときには、ステップS235に移行して高トルク指令判定を行う。この判定は、実モータトルクが所定の高トルク判定閾値TmTHを超えているか否かによって行い、高トルク判定閾値TmTH以下であるときにはそのまま所定のメインプログラムに復帰する。
また、前記ステップS234の判定結果が、N>0であるときにはタイマカウントが開始されており、目標モータトルクTmの制限処理中であると判断してステップS238に移行し、カウント値Nが、目標モータトルク制限処理を継続する所定時間Tに相当する設定値Ns以上であるか否かを判定する。
ステップS238の判定結果がN<Nsであるときには、目標モータトルクTmの制限処理が開始されてから所定時間が経過していないものと判断して前記ステップS236に移行し、N≧NsであるときにはステップS239に移行する。
Tmmax=Tmmax+ΔT
次いでステップS240に移行して、この時点でのモータトルク最大値Tmmaxが出し渋り解除時最大トルクH以上であるか否かを判定し、Tmmax≧HであるときにはステップS241に移行してTmmax=Hに設定してから所定のメインプログラムに復帰する。また、前記ステップS240の判定結果がTmmax<Hであるときには、そのまま所定のメインプログラムに復帰する。
この図7において、ステップS231及びステップS234〜S238の処理がトルク指令値制限手段に対応し、ステップS239〜S241の処理がトルク指令値制限解除手段に対応している。
このロールバック判断部8Fでは、車両がロールバックしているか否かを判断して、ロールバック判定フラグFrをモータ制御部8Bに出力する。このロールバック判断は、先ず、変速機30のシフトが前進駆動レンジか否かを判定し、その後、前進駆動レンジと判断した場合には、モータの誘起電圧Erが所定のロールバック判断閾値ErTH(例えば、0.6V)より小さいか否かを判断することによって行う。
Er=Vm−Ia×R
そして、このようにして算出された誘起電圧Erがロールバック判断閾値ErTHより小さいときには、車両がロールバックしていると判断してロールバック判定フラグFrを“1”にセットし、Er≧ErTHであるときには、ロールバックしていないと判断してロールバック判定フラグFrを“0”にリセットする。
エンジンコントローラ18では、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づいて図8に示すような処理が行われる。
すなわち、まずステップS300にて、主駆動輪である前輪1L、1Rの加速スリップ量ΔVを求めてステップS310に移行して、その加速スリップ量ΔVが目標スリップ量Tslipを越えているか否かを判定し、目標スリップ量Tslipを越えている場合にはステップS400に移行する。一方、加速スリップ量ΔVが目標スリップ量Tslip以下の場合には、ステップS320に移行する。なお、目標スリップ量Tslipは、例えばスリップ率で10%程度に設定される。
ステップS330では、スロットル開度やエンジン回転数Neなどに基づき、現在の出力トルクTeを算出してステップS340に移行する。
ステップS340では、現在の出力トルクTeに対する目標出力トルクTeNの偏差分ΔTeを下記式に基づき出力して、ステップS350に移行する。
ΔTe=TeN−Te
また、ステップS350では、その偏差分ΔTeに応じたスロットル開度αの変化分Δαを演算し、その開度の変化分Δαに対応する開度信号を上記ステップモータ19に出力して、復帰する。なお、上述の説明では、説明を分かりやすくするために、偏差分ΔTeに対応する開度信号Δαを出力するとしているが、実際には、トルク等の変化を滑らかにするために、起動のたびに所定のトルク増加分若しくはトルク減少分ずつ変化させている。
発進時において、前輪に加速スリップが発生する前には、アクセル開度に応じた目標モータトルクに基づきモータ及び発電機が制御される。さらに、路面μが小さいためや運転者によるアクセルペダル17の踏み込み量が大きいことで、主駆動輪1L、1Rである前輪1L、1Rが加速スリップすると、加速スリップに応じた目標モータトルクが演算され、この目標モータトルクと上記アクセル開度に応じた目標モータトルクとのセレクトハイが行われ、大きい側の目標モータトルクに基づきモータ及び発電機が制御される。これによって発進時における車両の加速性が向上する。
このとき、時刻t2で実モータトルクが高トルク判定閾値TmTHを超えると、図7に示す目標モータトルク制限処理で、ステップS235からステップS236に移行して、モータトルク最大値Tmmaxが出し渋り時最大トルクLに設定され、目標モータトルクの制限処理を行うタイマカウントが開始される。これにより、目標モータトルクは、二点鎖線に示す制限前の値から出し渋り時最大トルクLに制限され、これにより実モータトルクも制限される。
このように、本実施形態では、車両がロールバックしている状態でアクセルペダルを踏むなどの発進操作を行ったときには、目標モータトルクを制限するので、後輪ドライブシャフト上のトルクがクラッチ容量を越えることを防止することができる。
さらに、ドライブシャフト軸上でのトルクが計画トルク値内に収まるため、クラッチ容量をアップする必要がなく、コストの増加を回避することができる。
さらにまた、目標モータトルクを所定時間制限した後、この制限を緩やかに解除していくので、目標モータトルクの制限状態から非制限状態への移行を比較的スムーズに行うことができる。
さらに、上記実施形態においては、目標モータトルクを所定時間制限した後、この制限を段階的に解除する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、目標モータトルクの変化が滑らかになるように解除してもよい。
2 エンジン
3L、3R 後輪
4 モータ
6 ベルト
7 発電機
8 4WDコントローラ
8A 目標モータトルク演算部
8Aa 余剰トルク演算部
8Ab 加速アシストトルク演算部
8Ac モータトルク決定部
8B モータ制御部
8C リレー制御部
8D クラッチ制御部
8E 発電機制御部
8F ロールバック判断部
9 電線
10 ジャンクションボックス
11 減速機
12 クラッチ
14 吸気管路
15 メインスロットルバルブ
16 サブスロットルバルブ
18 エンジンコントローラ
19 ステップモータ
20 モータコントローラ
21 エンジン回転数センサ
22 電圧調整器
23 電流センサ
26 モータ用回転数センサ
27FL、27FR、27RL、27RR 車輪速センサ
30 変速機
31 ディファレンシャル・ギヤ
32 シフト位置検出手段
34 ブレーキペダル
35 ブレーキストロークセンサ
36 制動コントローラ
37FL、37FR、37RL、37RR 制動装置
39 駆動モードスイッチ
40 アクセルセンサ
Claims (3)
- 主駆動輪を駆動する内燃機関と、その内燃機関で駆動される発電機と、前記発電機の電力で駆動されて従駆動輪を駆動するモータと、該モータの出力トルクを目標トルク指令値に制御する出力トルク制御手段とを備える車両の駆動力制御装置において、
車両がロールバックしていることを検出するロールバック検出手段と、該ロールバック検出手段で車両がロールバックしていると判断しているときに発進操作をしたとき、実モータトルクが所定値を超えてから所定時間だけ前記目標トルク指令値を制限するトルク指令値制限手段とを備え、前記トルク指令値制限手段は、ロールバック速度が大きいほど前記目標トルク指令値を小さい値に制限することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 前記トルク指令値制限手段で前記所定時間だけ目標トルク指令値を制限した後、緩やかにこの制限を解除するトルク指令値制限解除手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
- 主駆動輪を駆動する内燃機関と、その内燃機関で駆動される発電機と、前記発電機の電力で駆動されて従駆動輪を駆動するモータと、該モータの出力トルクを目標トルク指令値に制御する出力トルク制御手段とを備える車両の駆動力制御装置において、
車両がロールバックしていることを検出するロールバック検出手段と、該ロールバック検出手段で車両がロールバックしていると判断しているときに発進操作をしたとき、所定時間だけ前記目標トルク指令値を制限するトルク指令値制限手段とを備え、前記トルク指令値制限手段は、ロールバック速度が大きいほど前記目標トルク指令値を小さい値に制限することを特徴とする車両の駆動力制御装置。
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