JP4165241B2 - バグフィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルター用途、特にバグフィルター用途に好適に用いることのできる耐熱性布帛およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂系繊維は、その優れた耐熱性、耐薬品性、電気特性あるいは低摩擦係数などから、産業資材用途に広く用いられている。中でもその優れた耐薬品性と耐熱性から、廃棄物焼却炉用のバグフィルターに広く用いられている。廃棄物焼却炉用のバグフィルターにおいては、フッ素樹脂系繊維から構成されるフェルト、ガラス繊維の二重織物などが主流であるが、その他の耐熱性繊維、例えば芳香族アラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミドあるいはポリパラフェニレンベンゾオキサゾール等のフェルトを用いたバグフィルターも上市されている。
【0003】
上記の耐熱性繊維を用いたバグフィルターにおいて、現在はダストの捕集効率がさらに高いバグフィルターが求められている。特に、平成14年12月からはダイオキシン類対策特別措置法に基づき、各焼却設備において低濃度のダイオキシン排出値を維持しなければならず、より捕集効率の高いバグフィルターに対する要求が強い。さらにまた、例えばガス化溶融処理炉等においては、粒径の小さなダストをより高効率で捕集可能なバグフィルターが求められている。
【0004】
そこで、耐熱性繊維のフェルト表面にフッ素樹脂の微多孔膜を貼り合わせ、該微多孔膜でダストを高効率に捕集する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では確かに0.5μm以下程度の粒径の小さいダストの捕集効率を高くすることはできるが、フッ素樹脂の微多孔膜と他素材との接着性が悪いため、剥離しやすく、特にフェルトの表面に堆積したダストを圧縮空気で払い落とす際に、物理的な衝撃が加えられるため、この衝撃によるフッ素樹脂の微多孔膜の剥離が問題となる。加えてフッ素樹脂の微多孔膜を貼ったフェルトでは、初期の通気量が必然的に低くなり、従って、ダストの剥離性は良好であるが、使用中の圧力損失が高くなるという欠点がある。
【0005】
また、耐熱性繊維のフェルト表面にフッ素繊維のウェブを積層し、ウォータージェットパンチで絡合し、一体化する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献に記載のひとつの方法、すなわちフッ素繊維のウェブを基布に直接交絡させる方法では、フェルト全体の目付が500g/m2を越えるようなバグフィルター用フェルトの場合、繊維の交絡が厚み方向で充分発生しないことからフェルト強度が大きくできないため、適当ではない。そこでこの特許文献に記載の他の方法では、フェルトを加工する工程と、該フェルト表面にフッ素繊維のウェブを積層する工程と、さらに両者を絡合して一体化する工程、という複数の製造工程を経なければならず、加工コストのアップにつながり好ましくないさらにまた、バグフィルター用に使用した場合、逆洗パルスを打つ時の物理的な衝撃で、フェルトとフッ素繊維のウェブとが剥離する可能性があり、好ましくない。さらにまた、フッ素繊維は耐薬品性や耐熱性には優れるが、強度が低いため、フッ素繊維単体でフェルトに用いても機械的強度が低い問題がある。
【0006】
また、本発明の発明者らが見出した方法として、フッ素樹脂系繊維から構成される布帛にウォータージェットパンチ処理してフッ素樹脂系繊維をフィブリル化し、捕集効率を向上するという方法がある(例えば、特許文献3参照)。この発明の本質は、フッ素樹脂系繊維がフィブリル化して布帛のポアサイズが小さくなり、ふるい効果やさえぎり効果が向上して、捕集効率が高くなるというものであり、フッ素樹脂系繊維の比表面積が増加することによる効果のみしか発生しえないものであった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−140588号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2000−61224号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−146633号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、フッ素樹脂系繊維の特性を損なうことなく機械的特性に優れ、かつ、より微小なダストの捕集性に優れる耐熱性布帛を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、スクリムの両面にウェブが積層して構成されている耐熱性布帛であって、ウェブはポリ4フッ化エチレン繊維と繊維強度が1.9cN/dtexよりも大きく空気中で120℃に80日間保持した際の強度保持率が80%以上である耐熱性の高強度繊維とを含み、濾過面側のウェブのみポリ4フッ化エチレン繊維の少なくとも一部がフィブリル化して耐熱性の高強度繊維と絡合したものであり、濾過風速が1m/minでの0.3〜0.5μm粒径の粒子の捕集効率が70%〜90%である耐熱性布帛からなることを特徴とするバグフィルターである。また、かかるバグフィルターを構成する耐熱性布帛の製造方法は、エマルジョン紡糸法により得られるポリ4フッ化エチレン繊維と繊維強度が1.9cN/dtexよりも大きく空気中で120℃に80日間保持した際の強度保持率が80%以上である耐熱性の高強度繊維とを含むウェブと、空気中で120℃に80日間保持した際の強度保持率が80%以上である耐熱性繊維からなるスクリムとを積層し、ニードルパンチ処理してフェルトとする工程と、このフェルトにウォータージェットパンチ処理してフェルト表層のポリ4フッ化エチレン繊維をフィブリル化する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
フッ素樹脂系繊維としては、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)を用いることが、耐熱性あるいは耐薬品性の点からよい。
【0013】
フッ素樹脂系繊維の製造方法は、マトリックスポリマーとフッ素樹脂ポリマーとを混合してエマルジョンとし、該エマルジョンを成型用口金より凝固浴中に吐出して繊維化するエマルジョン紡糸法(湿式エマルジョン紡糸法またはマトリックス紡糸法ともいう)によって得ることができる。フッ素樹脂系繊維の繊度は、1〜20dtexの範囲内のものであれば用いることができるが、フィルターとしての捕集効率とフェルトの強度を両立させるために、3〜8dtexの範囲内のフッ素樹脂系繊維を用いることがより好ましい。
【0014】
また、耐熱性の高強度繊維としては、一般的な使用可能温度が120℃以上の繊維であり、フッ素樹脂系繊維よりも高強度で、ウォータージェットパンチの物理的衝撃で破損しない繊維であれば問題なく用いることができる。ここでいう使用可能温度とは、空気中で該温度に80日間保持された際、強度保持率が80%以上であるような温度をいう。例えば、芳香族アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維などを選択して用いることができるが、耐熱性、耐薬品性、高強度を兼ね備えたガラス繊維、炭素繊維が最も好ましく用いることができる。
【0015】
本発明の耐熱性布帛は、上述のフッ素樹脂系繊維と、耐熱性の高強度繊維とから構成されるものであり、フッ素樹脂系繊維の少なくとも一部がフィブリル化して耐熱性の高強度繊維と絡合していることを特徴とするものである。フッ素樹脂系繊維がフィブリル化することで、フィルターとしてのふるい効果が向上し、より微細なダストの捕集効率が向上することに加えて、耐熱性の高強度繊維とフッ素樹脂系繊維のフィブリルが絡合し、捕集効率がさらに向上する。これは通常のふるい効果だけでは説明できないような向上であり、その科学的メカニズムは明らかになっていない(本発明ではこれを“捕集効率のプラスα”と呼ぶ)。
【0016】
また、フッ素樹脂系繊維は繊維強度が1.9cN/dtex程度と若干低いため、フィブリル化したフッ素樹脂系繊維のみから構成される布帛では、布帛強度が小さくなってしまう。しかしながら本発明は、フッ素樹脂系繊維と耐熱性の高強度繊維とを混合して用いることで、フッ素樹脂系繊維はフィブリル化して繊維強度が若干低下するものの、耐熱性の高強度繊維がフィブリル化しないので、結果的に布帛強度を高いまま維持することを見出したものである。
【0017】
本発明の耐熱性布帛は、ウェブとスクリムとを積層して構成されることが好ましい。ウェブとは、繊維長が数10〜数100mmの範囲内の短繊維をカードマシンに通してシート状としたものをいう。ウェブは繊維同士の絡合のみで不織布の強度が保持されており、特にフッ素樹脂系繊維100%のウェブを例に取ると、ウェブ単体では取り扱いが出来ないほど強度が小さい。そのような場合、スクリムとウェブとを積層し、一体化することで、布帛の強度を向上することができる。一般的なバグフィルター用フェルトの場合、スクリムの上下にウェブを配置し、ニードルパンチで絡合・一体化したものを用いる。スクリムとは、布帛の骨材のことであり、織物や編み物を適宜選択して用いることができる。スクリムはフェルトの骨材としての役割を担うことから、バグフィルター用に用いる場合、390N/5cm以上の引張強度を有し、かつ破断伸度が50%未満のものが好ましい。なぜなら390N/5cmに満たないスクリムを用いてバグフィルターとした場合、粉塵がフェルトの表面に堆積し、自重により伸びが発生することから好ましくない。また該スクリムの通気量は、70cc/cm2/sec以上のもので、ニードルパンチにより短繊維と交絡する形態のものが好ましい。通気量が70cc/cm2/secに満たないスクリムを用いた場合、フェルトにしたときの通気量が低くなりすぎてフェルトの圧力損失が高くなるため好ましくない。
【0018】
フェルト全体の目付は400〜900g/m2の範囲内のものがバグフィルターとして用いるのに好ましいが、ダストを払い落とす際の圧縮空気の衝撃に耐えるように、500〜800g/m2の範囲内のフェルトが特に好ましい。
【0019】
本発明において、捕集効率を効果的に向上するために、フッ素樹脂系繊維と耐熱性の高強度繊維をウェブに用いることが好ましい。ウェブの中でも、特にろ過面側にフッ素樹脂系繊維と高強度繊維とを含むものが好ましい。なぜなら、布帛の表面(ろ過面)からウォータージェットパンチ処理したとき、布帛の表面のフッ素樹脂系繊維はフィブリル化して高強度繊維と絡合し、本発明の効果を発揮するが、布帛の裏面(非ろ過面)のフッ素樹脂系繊維はほとんどフィブリル化されない。したがって、ろ過面側のウェブにフッ素樹脂系繊維と耐熱性の高強度繊維とを含むものが最も好ましい。
【0020】
本発明の耐熱性布帛を構成するウェブ全体の中で、フッ素樹脂系繊維は40〜95wt%の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは50〜80wt%の範囲内にあることが、優れた耐薬品性と高い剛性を併せ持つフェルトであることから適している。フッ素樹脂系繊維が50wt%未満の場合、ウォータージェットパンチ処理することでフッ素樹脂系繊維がフィブリル化してフィルターのふるい効果は向上するが、高強度繊維との絡合で発生する“捕集効率のプラスα”が生じにくいため好ましくない。また、フッ素樹脂系繊維が95wt%よりも多く含まれる場合は、フッ素樹脂系繊維がフィブリル化して布帛強度が低下してしまい好ましくない。
【0021】
本発明の耐熱性の高強度繊維は、上述のとおり、ガラス繊維、または炭素繊維を用いることが最も好ましいが、これらの繊維はフッ素樹脂系繊維との複合効果である“捕集効率のプラスα”が特に大きく生じる繊維であることからも好ましいのである。
【0022】
ガラス繊維としては、市販のガラス繊維であれば問題なく用いることができるが、本発明の効果をより発揮するためには、繊維長が38mm〜150mmの“一般的なE型(無アルカリガラス、不燃性、耐熱性および強度に優れる)”、“耐アルカリガラス”、“C型(耐薬品性特に耐酸性ガラス)”、”S型(無アルカリアルミノけい酸塩ガラス、高弾性率)あるいは“二成分型”のガラス繊維を用いることができ、繊維径としてはDE級(繊維直径の平均が5〜7μm)のガラス繊維であれば好適に用いることができる。
【0023】
炭素繊維としては、繊維長が30mm〜150mmの範囲であれば、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系いずれも用いることができる。繊維径としては5〜7μmのものが高強度であり好ましい。
【0024】
本発明の耐熱性布帛は、JIS L 1096に規定されるフラジール形法に基づいて測定される通気量が、2〜16cc/cm2/secの範囲にあることが好ましい。フッ素樹脂系繊維をフィブリル化するためのウォータージェットパンチ処理条件を、高圧にすることで、フッ素樹脂系繊維のフィブリル化は進行するが、通気量は低下する傾向にある。仮に通気量が2cc/cm2/sec未満の布帛をバグフィルターとして用いた場合、ブロワーの負荷が大きくなり、使用上好ましくない。反対に、ウォータージェットパンチの処理条件を低圧にすることで、通気量を16cc/cm2/secより高くすることはできるが、その布帛を構成するフッ素樹脂系繊維のフィブリル化は充分なされておらず、本発明の効果を発揮しないため好ましくない。
【0025】
本発明の耐熱性布帛は、濾過風速が1m/minにおいて、0.3〜0.5μm粒径の粒子の捕集効率が70%〜90%であることが好ましい。フィブリル化していないフッ素樹脂系繊維を使用し、他の構成は本発明と同一の布帛の場合、上述の条件での捕集効率は70%未満であるが、該布帛にウォータージェットパンチ処理して表面のフッ素樹脂系繊維をフィブリル化し、高強度繊維と絡合することで、捕集効率が70%〜90%に向上する。
【0026】
本発明の耐熱性布帛の製造方法は、エマルジョン紡糸法で得られるフッ素樹脂系繊維と耐熱性の高強度繊維とを含むウェブと、耐熱性繊維からなるスクリムを積層し、ニードルパンチ処理してフェルトとする工程(工程1)と、このフェルトにウォータージェットパンチ処理して表層のフッ素樹脂系繊維をフィブリル化する工程(工程2)とを含むことを特徴とするものである。工程1は通常のフェルト加工工程であり、短繊維をカードマシンに通してウェブとし、スクリムを適宜選択して積層し、しかる後にニードルパンチ加工して、絡合・一体化するものである。本発明の耐熱性布帛として、ニードルパンチ処理した後に、カレンダー加工やヒートセット加工をして、布帛を緻密化、平滑化したものも問題なく用いることができる。
【0027】
工程2は布帛表面のフッ素樹脂系繊維をフィブリル化する工程であり、ウォータージェットパンチの最大処理水圧は、120〜250kgf/cm2であることが好ましい。ここでいう最大処理水圧とは、ウォータージェットパンチ装置に設置された複数本のノズル中、最も高い水圧を意味するものである。最大処理水圧が120kgf/cm2未満の場合、布帛表面のフッ素樹脂系繊維が充分フィブリル化しないのに加え、耐熱性の高強度繊維との絡合も充分でないため、好ましくない。一方、最大処理水圧が250kgf/cm2を越える場合は、フッ素樹脂系繊維のフィブリル化に加えて、繊維同士の絡合が進み、布帛の密度が大きくなって通気量が2cc/cm2/sec未満となるため、好ましくない。
【0028】
上述した本発明の耐熱性布帛は、円筒状に縫製してバグフィルターとして好適に用いることができる。縫製したバグフィルターは、濾過面側、すなわち円筒の外側にフィブリル化したフッ素樹脂系繊維を含んだウェブを配置するように縫製するのが好ましい。
【0029】
また本発明の耐熱性布帛は、スクリムの両面にウェブがあるものが好ましく、濾過面側のウェブはフィブリル化したフッ素樹脂系繊維を含み、非濾過面側は、フィブリル化していないフッ素樹脂系繊維を含んだウェブであるのが好ましい。なぜなら濾過面のウェブは粉塵の濾過に寄与する必要があるのに対して、非濾過面側のウェブには、バグフィルターを円筒状に保持する金属製のリテーナーとの磨耗を防ぐという役割があるためである。バグフィルターとして用いた場合、ろ過面側のフッ素樹脂系繊維がフィブリル化して、なおかつ耐熱性の高強度繊維と極めて絡合していることから、捕集効率が高く、布帛強度も高く、さらに、布帛表面からの繊維の離脱も小さいバグフィルターを得ることができる。布帛表面からの繊維の離脱が少ない布帛は、ダストを繰り返し負荷した時の払い落とし性能が良く、バグフィルターとして用いるのに極めて適している。
【0030】
円筒状に縫製する際には、耐熱性繊維を用いて縫製することが好ましい。耐熱性繊維としては特に限定されないが、耐熱性と耐薬品性の観点から、フッ素樹脂系繊維、中でもPTFE繊維のマルチフィラメント糸を用いるのが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
なお、布帛の各物性の測定方法は以下の通りである。
[通気量]JIS L 1096に規定されるフラジール形法に基づいて測定した。測定試料は無作為に5点を選んだ。
[布帛強度]JIS L 1096に規定されるストリップ法に基づいて測定した。試料サイズは、200mm×50mmであり、引張速度は100mm/min、チャック間隔は100mmで測定した。測定値は、試料のタテ方向(繊維の配向と垂直な方向で、スクリムを含む試料の場合にはスクリムのタテ方向と同一方向)における1次強度の値である。
[捕集効率]大気塵計数法を用いて測定した。具体的にはパーティクルカウンターを用いて、ろ過前後の大気中に含まれる塵の数を計測し、捕集効率を算出した。ろ過風速は1m/minとし、計測した大気塵のサイズは0.3〜0.5μmである。
実施例1
エマルジョン紡糸法で得られたフッ素樹脂系繊維(東レ製TOYOFLON(R)、7.4dtex×70mm)とガラス繊維(E型ガラス繊維、0.3dtexを57mm長さにカット)を、重量比で80:20の割合で混合し、オープナーとカードマシンを通してシート状のウェブとした。スクリムとしてラステックススクリム(ゴアテックス製、PTFEスリットヤーン糸使い、400D使い、20本/インチの織密度を有する平織り織物、目付70g/m2)を用い、ウェブ/スクリム/ウェブの順に積層し、針本数350本/cm2でニードルパンチ処理をしてフェルトを得た。このフェルトに、200℃×1分の条件でヒートセットを実施した後、フェルトの片面に、処理速度1m/min、最大処理水圧150kgf/cm2で2回ウォータージェットパンチ処理を施す操作を加え、耐熱性布帛を得た。得られた耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維がフィブリル化してガラス繊維と微細に交絡したものであった。
実施例2
実施例1で得られた耐熱性布帛に、処理速度1m/min、最大処理水圧200kgf/cm2で1回ウォータージェットパンチ処理を施す操作をさらに加えた。得られた耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維のフィブリル化が実施例1の耐熱性布帛よりも進行し、ガラス繊維とさらに微細に交絡したものであった。
実施例3
エマルジョン紡糸法で得られたフッ素樹脂系繊維(東レ製TOYOFLON(R)、7.4dtex×70mm)と炭素繊維(東レ製トレカ(R)繊維、T700S−12000FY(総繊度800dtex)を51mm長さにカット)を、85:15の割合で混合し、オープナーとカードマシンを通してウェブとする。スクリムとしてフッ素樹脂系繊維のマルチフィラメント織物(東レ製TOYOFLON(R)、T200−440dtex−60FY使いの織物、品番#4378、目付250g/m2)を用い、ウェブ/スクリム/ウェブの順に積層し、針本数300本/cm2でニードルパンチ処理をしてフェルトを得た。このフェルトに、210℃×1分の条件でヒートセットを実施した後、フェルトの片面に、処理速度1m/min、最大処理水圧120kgf/cm2で2回ウォータージェットパンチ処理を施す操作を加え、耐熱性布帛を得た。得られた耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維がフィブリル化して炭素繊維と微細に交絡したものであった。
比較例1
実施例1において、ヒートセットを施したフェルトを比較例1の耐熱性布帛とした。比較例1の耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維が約20〜27μmの直径を有する繊維から構成されており、フィブリル化は見られず、ガラス繊維と微細に交絡している部分も見られなかった。
比較例2
スプリット剥離法により得られたフッ素樹脂系繊維(Lennzing社製PROFILEN(R)、タイプ803/60、2.7dtex×60mm)をオープナーとカードマシンに通してウェブとした。スクリムとしてラステックススクリム(ゴアテックス製、PTFEスリットヤーン糸使い、400D使い、20本/インチの織密度を有する平織り織物、目付70g/m2)を用い、ウェブ/スクリム/ウェブの順に積層し、針本数350本/cm2でニードルパンチ処理をした後、ニードルパンチ処理をしてフェルトを得た。このフェルトに、200℃×1分の条件でヒートセットを実施したものを、比較例2の耐熱性布帛とした。比較例2の耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維が異形断面をしており、細い部分は約10μm、太い部分は約40μmの繊維太さを有する繊維から構成されており、1本のフッ素樹脂系繊維が長さ方向で複数本に分割したような部分は見られず、フィブリル化は見られなかった。
比較例3
比較例2の耐熱性布帛の片面に、処理速度1m/min、最大処理水圧100kgf/cm2で2回ウォータージェットパンチ処理を実施し、比較例3の耐熱性布帛を得た。比較例3の耐熱性布帛は、約10〜40μmの繊維太さを有する繊維のみから構成されるものであり、フッ素樹脂系繊維のフィブリル化した部分は見られないものであった。
比較例4
実施例3において、ヒートセットを施したフェルトを比較例4の耐熱性布帛とした。比較例4の耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維が約20〜27μmの直径を有する繊維から構成されており、フィブリル化は見られず、ガラス繊維と微細に交絡している部分も見られなかった。
比較例5
エマルジョン紡糸法で得られたフッ素樹脂系繊維(東レ製TOYOFLON(R)、7.4dtex×70mm)と炭素繊維(東レ製トレカ(R)繊維、T700S−12000FY(総繊度800dtex)を51mm長さにカット)を、30:70の割合で混合し、オープナーとカードマシンを通してウェブとする。スクリムとしてフッ素樹脂系繊維のマルチフィラメント織物(東レ製TOYOFLON(R)、T200−440dtex−60FY使いの織物、品番#4378、目付250g/m2)を用い、ウェブ/スクリム/ウェブの順に積層し、針本数300本/cm2でニードルパンチ処理をしてフェルトを得た。このフェルトに、210℃×1分の条件でヒートセットを実施し、比較例5の耐熱性布帛を得た。比較例5の耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維が約20〜27μmの直径を有する繊維から構成されており、フィブリル化は見られず、炭素繊維と微細に交絡している部分も見られなかった。
比較例6
比較例5の耐熱性布帛の片面に、処理速度1m/min、最大処理水圧50kgf/cm2で2回ウォータージェットパンチ処理を実施したものを、比較例6の耐熱性布帛とした。比較例6の耐熱性布帛は、フッ素樹脂系繊維が約20〜27μmの直径を有する繊維から構成されており、フィブリル化は見られず、炭素繊維と微細に交絡している部分も見られなかった。
【0033】
【表1】
【0034】
上記のように得られた耐熱性布帛の物性を表1に示す。表1の結果から明らかなように、比較例1〜6の布帛はいずれも捕集効率が低いことがわかる。また、フッ素樹脂系繊維の割合が100%である比較例2の布帛は、布帛強度が低い上に、ウォータージェットパンチ処理することでさらに布帛強度が低下し、バグフィルターとしての使用は好ましくないことが分かる。
【0035】
さらにまた、フッ素樹脂系繊維の混率が少ない比較例5の布帛では、ウォータージェットパンチ処理を実施しても捕集効率が向上せず、好ましくないことがわかる。
【0036】
これらに対して実施例1〜3の布帛は、捕集効率がいずれも高く、高い布帛強度と通気量とを維持していることから、バグフィルター用に好適に用いることが可能である。
【0037】
【発明の効果】
布帛表面のフッ素樹脂系繊維がフィブリル化して耐熱性の高強度繊維と絡合することで、フィルターとして用いたときの捕集効率が高い耐熱性布帛を得ることができる。また、フッ素樹脂系繊維がフィブリル化する反面、耐熱性の高強度繊維はフィブリル化しないので、布帛強度の低下が小さく、機械強度の高い耐熱性布帛を得ることができる。
Claims (8)
- スクリムの両面にウェブが積層して構成されている耐熱性布帛であって、ウェブはポリ4フッ化エチレン繊維と繊維強度が1.9cN/dtexよりも大きく空気中で120℃に80日間保持した際の強度保持率が80%以上である耐熱性の高強度繊維とを含み、濾過面側のウェブのみポリ4フッ化エチレン繊維の少なくとも一部がフィブリル化して耐熱性の高強度繊維と絡合したものであり、濾過風速が1m/minでの0.3〜0.5μm粒径の粒子の捕集効率が70%〜90%である耐熱性布帛からなることを特徴とするバグフィルター。
- ウェブが、ポリ4フッ化エチレン繊維を40〜95wt%の範囲内で含んでいる、請求項1に記載のバグフィルター。
- 耐熱性の高強度繊維がガラス繊維である、請求項1に記載のバグフィルター。
- 耐熱性の高強度繊維が炭素繊維である、請求項1に記載のバグフィルター。
- 前記耐熱性布帛のJIS L 1096に規定されるフラジール形法に基づいて測定される通気量が、2〜16cc/cm2/secの範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のバグフィルター。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のバグフィルターを構成する耐熱性布帛を製造する方法であって、エマルジョン紡糸法により得られるポリ4フッ化エチレン繊維と繊維強度が1.9cN/dtexよりも大きく空気中で120℃に80日間保持した際の強度保持率が80%以上である耐熱性の高強度繊維とを含むウェブと、空気中で120℃に80日間保持した際の強度保持率が80%以上である耐熱性繊維からなるスクリムとを積層し、ニードルパンチ処理してフェルトとする工程と、このフェルトにウォータージェットパンチ処理してフェルト表層のポリ4フッ化エチレン繊維をフィブリル化する工程とを含む耐熱性布帛の製造方法。
- ウォータージェットパンチ最大処理水圧が120〜250kgf/cm2であることを特徴とする、請求項6に記載の耐熱性布帛の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のバグフィルターであって、円筒状に縫製してなるバグフィルター。
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