JP4164652B2 - 熱電変換材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な熱電変換材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題や化石燃料の代替エネルギーの問題が社会的に大きく注目されている。そのような状況下において、例えば、イ)二酸化炭素、窒素酸化物等の有害ガスを排出せず、排熱等の未利用熱エネルギーを有効に電気エネルギーに変換する熱電変換エネルギー技術、ロ)有害なフロン系ガスを使用しない熱電冷却技術等への期待が高まっている。これらの期待に応えるためには、高性能な熱電変換材料の開発が不可欠である。
【0003】
熱電変換材料は、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換できる材料であり、その性能指数(Z)は、次式で与えられる;
Z = S2/(ρκ)
式中、Sは熱起電力(ゼーベック係数)を示し、ρは電気抵抗率を示し、κは熱伝導率を示す。熱電変換効率を高めるためには、Sの絶対値が大きく、ρ及びκがともに小さいことが必要となる。
【0004】
熱電変換材料としては、これまでに種々のものが提案されている。例えば、Bi2Te3系熱電変換材料は、室温から200℃の温度範囲において高い性能指数を示し、ペルチェ素子として熱電冷却等に用いられている。PbTe系熱電変換材料は、200℃〜500℃の温度範囲において高い性能指数を示し、発電装置として主に用いられている。
【0005】
ところが、これらは非酸化物系材料であるため、合成プロセスが複雑という問題がある。また、これらの熱電変換材料を構成するTeは、資源として乏しく、しかも毒性があるため、環境への影響及び一般家庭での使用を考慮した場合に問題がある。これらの理由より、合成プロセスが比較的簡単な酸化物系材料において、有害な元素を含まない新しい熱電変換材料の探索が進められている。
【0006】
このような状況下において、とりわけα−NaFeO2型結晶構造を有する酸化物であるNa0.5CoO2が熱電変換材料として脚光を浴びている。
【0007】
非特許文献1には、Na0.5CoO2が室温下で100μV/Kという大きな熱起電力を示し、かつ200μΩmという低い電気抵抗率を示すことが報告されている。Na0.5CoO2の出力因子(S2/ρ)は前記Bi2Te3の出力因子を上回っており、新しい熱電変換材料として期待されている。
【0008】
非特許文献2には、Na0.5CoO2が上記特性を発揮する理由として、次のように報告されている。
【0009】
Na0.5CoO2は、図1に示すようにCoO2層とNa層とが交互に積層した層状化合物であり、P6322の対称性をもつ結晶構造を有する。かかる結晶の対称性は、例えば、X線回折等により容易に確認できる。P6322の対称性を表すX線回折パターンの一例を図4に点線で示す。
【0010】
CoO2層では、CoO6八面体が稜を共有している。Na層では、Naサイトの1/2をNaがランダムに占有しており、残りの1/2のサイトには原子空孔型格子欠陥が存在する。これらの層のうち、電気伝導はCoO2層が担っていると考えられ、Na層は熱伝導を阻害していると考えられる。これにより、Na0.5CoO2は液体窒素温度から400℃以上の広い温度範囲において優れた熱電変換特性を発揮する。
【0011】
しかしながら、P6322の対称性をもつNa0.5CoO2では、CoO2層の層間距離が0.54nmと比較的大きく、単位体積あたりに含まれるCoO2層及びNa層の数が少ないため、CoO2層による電気伝導効率及びNa層による熱伝導阻害効率が十分ではない。
【0012】
そのため、Na0.5CoO2のゼーベック係数はなお不十分であり、より実用的な熱電変換材料を目指すには更なる改善が必要である。これに関して、特許文献1には、Na0.5CoO2の熱電変換性能を向上させる手段として、Naサイト又はCoサイトを部分的に他元素で置換する方法が開示されている。しかし、このような不純物を含む系のNa0.5CoO2でも熱電変換性能は未だ十分ではない。しかも、これら従来技術では、その製造方法にも改善すべき点がある。
【0013】
Na0.5CoO2で示される結晶並びに当該結晶のNa又はCoを部分的に他元素で置換した結晶では、熱電変換性能に異方性がある。例えば、Na0.5CoO2では、CoO2層の面内(即ち、c軸に垂直な方向)は良好な電気伝導を示し、CoO2層の面間(即ち、c軸方向)は導電性に乏しいため、CoO2層の面内(即ち、c軸に垂直な方向)にのみ大きな熱電変換性能が発揮される。
【0014】
このような異方性を有する結晶を集めて多結晶体を製造する場合、Na0.5CoO2で示される結晶の方位がランダムに集合した多結晶体では、熱電変換性能が大きく低下して単結晶よりも不利になるという問題がある。
【0015】
特許文献2には、このような異方性を有する結晶を集めて結晶の方位を揃えた多結晶体を製造する方法として、複数の結晶が該結晶のc軸方向が揃うように成形した積層体を形成し、この積層体に該結晶のc軸方向に加圧しながら熱処理して焼結体を製造する方法が開示されている。
【0016】
しかしながら、かかる多結晶体の製造方法では、熱処理時に結晶が熱分解して絶縁体である酸化コバルトが不純物として生成するため、熱電変換性能が低下するという問題がある。
【0017】
更に、上記Na0.5CoO2の製造方法では、アルカリ金属元素の供給源として炭酸塩及び酸化物が用いられるが、高温での熱処理が必要であるためにアルカリ金属が蒸散し易く、アルカリ金属量を制御することが困難である。またLi及びNa以外のアルカリ金属(例えば、K、Rb、Cs等)を含む大気中で安定なコバルト含有層状酸化物の製造は困難である。
【0018】
【非特許文献1】
寺崎 一郎、笹子 佳孝、内野倉 國光、「フィジカルレビューB(Physical Review B)」、米国、第56号、1997年、p.R12685
【0019】
【非特許文献2】
エム.フォン ヤンセン(M.Von Jansen)、アール.ホープ(R.Hope)、「ツァイストクラフト フューア アンオルガーニッシュ ウント アレゴーリッシュヒェミー(Zeitschrift fur Anorganisch und Allegorisch Chemie)」、ドイツ、第408号、1974年、p.104
【0020】
【特許文献1】
特開平11−266038号公報
【0021】
【特許文献2】
特開2000−269560号公報
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来品よりも熱電変換性能に優れた材料を効率的に提供することを主な目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の方法により製造される材料が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
即ち、本発明は、下記の熱電変換材料及びその製造方法に係る。
1.一般式Na CoO (但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなる熱電変換材料。
2.層間距離Lが0.3nm<L<0.54nmの範囲内の層間構造を有する上記項1に記載の熱電変換材料。
3.単結晶又は配向性の高い単結晶集合体から構成される上記項1又は2に記載の熱電変換材料。
4.結晶中に平均孔径5〜100nmの微細孔を有する上記項1〜3のいずれかに記載の熱電変換材料。
5.1)アルカリ金属元素を含む水酸化物の少なくとも1種と、2)コバルトを含む化合物及び金属コバルトの少なくとも1種とを含有する混合物を熱処理することを特徴とする、一般式Na CoO (但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなる熱電変換材料の製造方法。
6.アルカリ金属元素を含む水酸化物の少なくとも1種が、水酸化ナトリウムである上記項5に記載の熱電変換材料の製造方法。
7.更に、アルカリ金属元素を含むハロゲン化物を配合する上記項5又は6に記載の熱電変換材料の製造方法。
【0025】
【発明の実施の形態】
熱電変換材料
本発明の熱電変換材料は、一般式AxCoO2(但し、0<x<0.5、Aはアルカリ金属元素)で示される酸化物からなることを特徴とする。
【0026】
アルカリ金属元素としては、Li、Na、K、Rb及びCsの少なくとも1種が好ましい。この中でも、本発明ではNaを用いることがより好ましい。
【0027】
上記xはアルカリ金属元素の含有量を示し、その値は0<x<0.5、好ましくは0.01≦x≦0.45、より好ましくは0.02≦x≦0.4、最も好ましくは0.02≦x≦0.3である。かかる含有量に限定することにより、従来品(Na0.5CoO2)と比較して優れた熱電変換性能を発揮できる。
【0028】
特に、アルカリ金属元素としてNaを用いる場合には、xの値は0<x≦0.25が好ましく、0.01≦x≦0.2がより好ましく、0.02≦x≦0.15が最も好ましい。アルカリ金属元素としてNaを用いて、かつxの値を0<x≦0.25の範囲内に限定した酸化物は、塩化カドミウム型結晶構造を有するため、特に優れた熱電変換性能を発揮できる。
【0029】
即ち、一般式AxCoO2(但し、0<x<0.5、Aはアルカリ金属元素)で示される酸化物からなる本発明の熱電変換材料の中でも、一般式NaxCoO2(但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなる熱電変換材料が特に好ましい。
【0030】
本発明の熱電変換材料において、一般式NaxCoO2(但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物以外では、酸化物の結晶構造は一定ではないが、一般にアルカリ金属元素の含有量が多くなるほど、塩化カドミウム型結晶構造とα−NaFeO2型結晶構造との混晶となる傾向がある。
【0031】
塩化カドミウム型結晶構造は、例えば、図2の模式図のように、R−3mで表される結晶の対称性を有する。図3は、塩化カドミウム型結晶構造(R−3m)を有するNaxCoO2(但し、0<x≦0.25)の積層構造を具体的に図示したものである。図3に示されるように、塩化カドミウム型結晶構造は、α−NaFeO2型結晶構造(P6322)を有するNa0.5CoO2と同様に、c軸方向に[A−O−Co−O(Aはアルカリ金属)]を最小単位とする積層構造を形成する。
【0032】
一方、塩化カドミウム型結晶構造(R−3m)は、c軸方向に対する酸素層の積層構造が、α−NaFeO2型結晶構造(P6322)と異なる。
【0033】
例えば、イ)ある酸素層の積層方法をα、ロ)αとは異なる酸素層の積層方法をβ、ハ)α及びβのどちらとも異なる酸素層の積層方法をγと定義し、これらの記号を用いて酸素層の積層構造を表すと図1及び図2のようになる。
【0034】
図1はα−NaFeO2型結晶構造の積層構造を示したものであり、酸素層の積層構造は(αββα)を最小単位とする。これに対し、図2は塩化カドミウム型結晶構造の積層構造を示したものであり、酸素層の積層態様は(αβγ)を最小単位とする。
【0035】
なお、当該2種の結晶構造は、X線回折(XRD)パターン、電子線回折(ED)パターン等により明確に区別することができる。
【0036】
このように、塩化カドミウム型結晶構造では(αβγ)を最小単位として酸素層が積層するため、(αββα)を最小単位とする従来のα−NaFeO2型結晶構造に比べて、酸素層がより密に積層できる。即ち、単位体積あたりに含まれるCoO2層とNa層の数が多くなるため、CoO2層による電気伝導効率及びNa層による熱伝導阻害効率が高まり、結果として熱伝変換性能を相乗的に高めることができる。
【0037】
層間距離Lは、図3に示すように、CoO2層とアルカリ金属層とが交互に積層した結晶構造において、一つのCoO2層(1)内に含まれるCo面(2)と当該CoO2層(1)に最も近接するCoO2層(3)内に含まれるCo面(4)との面間隔をいう。層間距離Lは、X線回折(XRD)分析及び高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)により算出できる。
【0038】
本発明の熱電変換材料では、CoO2層の層間距離Lとしては、0.3nm<L<0.54nm程度が好ましく、0.45nm≦L≦0.47nmがより好ましい。層間距離をかかる範囲に限定することにより、熱電変換性能をより高めることができる。
【0039】
本発明の熱電変換材料は、単結晶又は多結晶(単結晶集合体を含む)のどちらで構成されてもよい。本発明では、優れた熱電変換性能がより確実に得られる点から、特に実質的に単結晶又は配向性の高い単結晶集合体から構成されることが好ましい。
【0040】
配向性の程度としては、XRDパターンにおいて、結晶構造を六方晶表示した場合のc軸(層状構造の積層方向)に垂直な結晶面、即ち(00L)(Lは整数)面以外の結晶面に由来するXRDピークが実質的に観察されないものは、本発明の熱電変換材料に全て含まれる。なお、配向性の高い多結晶体では、所定の熱電変換性能が得られる限り、他の組成からなる結晶(例えば、CoO2)等が含まれてもよい。
【0041】
本発明の熱電変換材料は多孔質であることが望ましい。具体的には、結晶中に平均孔径100nm以下、好ましくは50nm以下、特に5〜10nmの範囲の微細孔を有することが好ましい。多孔質な材料であれば、熱伝導率の低減を図ることができるため、より効果的に熱電変換性能が高められる。
【0042】
このような本発明の熱電変換材料は、300Kにおけるゼーベック係数が通常80μV/K以上、特に100μV/K以上という優れた値も達成できる。本発明の熱電変換材料の中でも、特に一般式NaxCoO2(但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなるものは、300Kにおけるゼーベック係数が通常100μV以上、特に150μV/K以上という非常に優れた値も達成できる。
【0043】
本発明の熱電変換材料は、液体窒素温度から300℃という広い温度範囲において優れた熱電変換性能を発揮でき、しかも有毒なTeも含まないため、家庭での用途も含めて幅広く使用できる。例えば、熱電変換素子、排熱等の熱エネルギー等を電気エネルギーに変換する発電装置、熱電冷却装置、温度センサー等として有用である。
【0044】
また、本発明の熱電変換材料を構成する酸化物は、熱電変換材料以外にも、例えば、電極材料、特にリチウム電池の負極材料として有用である。
【0045】
熱電変換材料の製造方法
本発明の熱電変換材料の製造方法は、1)アルカリ金属元素を含む水酸化物の少なくとも1種(以下、「アルカリ金属水酸化物」とも言う)と、2)コバルトを含む化合物及び金属コバルトの少なくとも1種(以下、「コバルト成分」とも言う)とを含有する混合物を熱処理することを特徴とする。
【0046】
アルカリ金属水酸化物としては特に限定されず、陽イオンとしてリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等を含むものが挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。これらのアルカリ金属水酸化物は単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0047】
本発明の製造方法では、アルカリ金属水酸化物としては、特にナトリウムイオンを含むものが好ましく、上記で列挙した中でも、特に水酸化ナトリウムが好ましい。水酸化ナトリウムとしては市販品が使用でき、特に純度90%以上のものが好ましい。
【0048】
コバルト成分としては特に限定されず、金属コバルト、酸化コバルト、塩基性炭酸コバルト、水酸化コバルト、塩化コバルト(6水和物)等が挙げられる。この中でも、未反応の残余物を磁力により容易に除去でき、しかも配向性の高い多結晶体を製造し易い点から金属コバルトが好ましい。
【0049】
本発明の製造方法では、上記1)アルカリ金属水酸化物、2)コバルト成分の原料に、必要に応じて、他の成分を配合することができる。例えば、アルカリ金属元素を含むハロゲン化物(以下、「アルカリ金属ハロゲン化物」とも言う)を好適に配合できる。アルカリ金属ハロゲン化物の量を調整しながら配合することにより、得られる熱電変換材料のアルカリ金属の含有量を制御できる。アルカリ金属ハロゲン化物の配合量は限定的ではないが、アルカリ金属水酸化物100重量部に対して10〜50重量部の範囲内で調整することが好ましい。
【0050】
アルカリ金属ハロゲン化物としては特に限定されない。例えば、陰イオンとしてフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等を含むものが挙げられる。また陽イオンとしてリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等を含むものが挙げられる。
【0051】
具体的には、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、シュウ化リチウム、シュウ化ナトリウム、シュウ化カリウム、シュウ化ルビジウム、シュウ化セシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0052】
本発明の製造方法では、アルカリ金属ハロゲン化物としては、陰イオンとして塩化物イオンを含むものが化学的に安定なため好ましい。具体的には、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム及び塩化セシウムが好ましい。
【0053】
本発明の製造方法では、上記した原料の配合割合は、原料の組み合わせに応じて適宜設定できる。通常は反応生成物がAxCoO2(但し、0<x<0.5、好ましくは0.01≦x≦0.45、より好ましくは0.02≦x≦0.4、最も好ましくは0.02≦x≦0.3)となるように設定すればよい。
【0054】
但し、アルカリ金属元素としてNaを用いる場合には、反応生成物がNaxCoO2(但し、好ましくは0<x≦0.25、より好ましくは0.01≦x≦0.2、最も好ましくは0.02≦x≦0.15)となるように設定すればよい。
【0055】
通常、アルカリ金属水酸化物:アルカリ金属ハロゲン化物:金属コバルト量に換算したコバルト成分=20:(0〜20):0.1〜10(重量比)の範囲内で適宜調整することができる。但し、必ずしもこの範囲に限定されない。
【0056】
次いで、原料を混合する。混合方法は限定的ではなく、例えば、ミキサー、ボールミル、乳鉢等が使用できる。混合物は、熱処理前に、例えば、プレス成形、造粒法等の公知の方法により成形してもよい。
【0057】
次いで、上記混合物又は成形体の熱処理を行う。熱処理温度は特に限定されないが、通常400℃以上、好ましくは500℃〜900℃、より好ましくは550〜800℃、最も好ましくは550℃〜700℃である。熱処理時間は、熱処理温度等に応じて適宜調整すればよい。熱処理雰囲気は、酸化雰囲気又は大気中とすればよい。
【0058】
なお、熱処理する際に容器を用いる場合には、反応生成物を汚染しない容器を用いるのが好ましい。例えば、純度95%以上のアルミナ製容器を好適に使用できる。
【0059】
本発明の製造方法では、従来法と比べて低温域で熱処理するため、アルカリ金属の蒸散を抑制できて得られる材料のアルカリ金属量の制御が容易であり、熱電変換材料としてより高品質な酸化物が得られる。
【0060】
本発明の製造方法では、結晶の粒成長を促進するために、熱処理後の反応生成物を徐冷(30℃/hr以下)することが好ましい。徐冷することにより、大きく粒成長した結晶を含む多結晶体が得られ易くなる。例えば、5mm以上、特に10mm以上の粒径を有する薄片状の多結晶体が得られる。
【0061】
得られた反応生成物は、必要に応じて水洗・乾燥してもよい。水洗によって、反応生成物に残存する未反応原料(アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物等)を除去できる。乾燥は自然乾燥又は加熱乾燥のいずれでもよい。加熱乾燥の場合の乾燥温度は特に限定されないが、通常300℃以下、好ましくは110〜250℃である。かかる温度範囲であれば効率的に乾燥できる。
【0062】
このような本発明の製造方法は、一般式AxCoO2(但し、0<x<0.5、Aはアルカリ金属元素)で示される酸化物からなる熱電変換材料、特に、一般式NaxCoO2(但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなる熱電変換材料の製造に有用である。
【0063】
【発明の効果】
(1)本発明の熱電変換材料は、一般式AxCoO2(但し、0<x<0.5、Aはアルカリ金属元素)で示される酸化物からなり、従来品(Na0.5CoO2)よりも高いゼーベック係数、熱電変換性能等を有しており、熱電変換材料として優れた性能を発揮する。具体的には、300Kにおけるゼーベック係数が通常80μV/K以上、特に100μV/K以上という優れた値も達成できる。本発明の熱電変換材料は、液体窒素温度から300℃という広い温度範囲で優れた熱電変換特性を発揮できる点、毒性のあるTeを含まない点等において好ましく、家庭での使用を含めて幅広い用途に適用できる。
(2)本発明の熱電変換材料の中でも、一般式NaxCoO2(但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなる熱電変換材料は、特に優れたゼーベック係数、熱電変換性能等を有しており、熱電変換材料として特に優れた性能を発揮できる。具体的には、300Kにおけるゼーベック係数が通常100μV以上、特に150μV/K以上という非常に優れた値も達成できる。
(3)かかる特徴を有する本発明の熱電変換材料は、例えば、熱電変換素子、排熱等の熱エネルギー等を電気エネルギーに変換する発電装置、熱電冷却装置、温度センサー等として有用である。本発明の熱電変換素子を構成する酸化物は、熱電変換材料以外にも、例えば、電極材料、特にリチウム電池の負極材料として有用である。
(4)本発明の製造方法は、上記(1)、特に(2)に記載の熱電変換材料を効率的に製造できる点で有用である。本発明の製造方法においてアルカリ金属水酸化物を用いる利点としては、ナトリウムの供給源として炭酸ナトリウムを用いる従来法と比較して、次の▲1▼〜▲5▼が挙げられる。なお、水酸化ナトリウムを用いる場合には、これらの利点が特に効果的に得られる。
【0064】
▲1▼ 比較的低い温度域で熱処理できるため、製造コストの低減化できる。低温域での熱処理が可能なため、製造過程におけるアルカリ金属の蒸散を抑制又は防止でき、これにより熱設備損耗が低減できるともに反応生成物中のコバルト:アルカリ金属元素比の精度を高めることができる。
【0065】
▲2▼ 低温域での熱処理によって、従来の1050℃に至る高温で熱処理する方法と比べて、同程度又はそれ以上の大きさの六角板状結晶が得られる。
【0066】
▲3▼ 熱処理時に、アルカリ金属元素を含む水酸化物に対して10〜50重量%のアルカリ金属を含むハロゲン化物を混合することによって、結晶体中におけるアルカリ金属元素の含有量を制御することができる。
【0067】
▲4▼ 作製される結晶中に平均孔径100nm以下程度の微細孔を形成させることにより、熱伝導率を低減できるため、従来法により作製されたNa0.5CoO2よりも優れた熱電変換性能が得られる。
【0068】
▲5▼ 特定のフラックスを用いることなく、比較的低温域での熱処理により、大きく粒成長した多結晶体を作製できる。
【0069】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
(1)製造方法
NaOH:20g、NaCl:5g及び金属Co:1gを秤量して混合し、アルミナルツボ中に入れた。熱処理中のNaOH、NaCl等の蒸散を防ぐため、ルツボにはアルミナ製の蓋をした。次いで、空気中650℃で12時間熱処理した後、電気炉内において冷却速度27℃/hrで徐冷した。反応生成物を蒸留水で洗浄することにより、残留物であるNaOH、NaCl等を除去し、5mm程度の大きさをもつ配向性の高い多結晶体(配向性の高い六角板状の単結晶集合体)が多数得られた。得られた多結晶体を150℃で2時間乾燥した。
(2)反応生成物(多結晶体)の評価方法
上記(1)で得られた反応生成物の物性等を調べた。
【0071】
評価方法としては、先ずX線回折(XRD)パターン及び電子線回折(ED)パターンを測定して所望の物質が得られているかを確認した。また、超高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)に付属する元素分析(EDS)装置を用いた観察により、反応生成物の化学組成分析を行った。更に、XRDパターン及びEDパターンにより層間距離を求めた。次いで、TEM像観察により、結晶中の微細な空孔構造を観察した。最後に300Kの温度においてゼーベック係数を測定した。
(3)反応生成物の評価結果
〔XRDパターン〕
反応生成物は、塩化カドミウム型(R−3m)の結晶構造を有していることが確認された。実質的に00L(Lは整数)面に由来する回折ピークのみが観察され、高い配向性を有していることが確認された。当該XRDパターンを従来品のNa0.5CoO2(P6322)のXRDパターンとの比較において図4に示す。
〔化学組成分析〕
反応生成物の化学組成は、Na0.063CoO2であった。
〔層間距離〕
反応生成物の層間距離は0.44nmであった。
〔TEM観察像〕
TEM観察の結果、結晶中に5〜10nmの孔径を有する微細孔(白い部分)が多数存在することが確認できた。
【0072】
本発明の熱電変換材料が従来法で得られたものよりも優れた熱電変換性能を有する理由の一つとして、微細孔が結晶内の熱伝導を減少させていることが考えられる。
【0073】
反応生成物:Na0.063CoO2のTEM像観察結果を図5及び図6に示す。図5は六角板状結晶の平面部を観察(上から観察)した結果を示す。図6は六角板状結晶の側面を観察(側面から観察)した結果を示す。六角板状結晶と観察方向との関係を図7に示す。
〔ゼーベック係数〕
300Kでのゼーベック係数は230μV/Kであった。従来法で得られた材料(約100μV/K)と比べて、2倍以上のゼーベック係数であった。
【0074】
実施例2
原料としてNaClを加えなかった他は、実施例1と同様にして多結晶体を作製した。生成物の組成はNa0.33CoO2で表され、300Kでのゼーベック係数は105μV/Kであった。層間距離は0.466nmであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】Na0.5CoO2の層状構造(P6322)を示す図である。
【図2】塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物の層状構造(R−3m)を示す図である。
【図3】本発明の熱電変換材料の結晶構造(層状構造)及びその層間距離Lを示す図である。
【図4】実施例1で得られたNa0.063CoO2のX線回折パターンを示す図である。
【図5】実施例1で得られたNa0.063CoO2のTEM像(上から観察:×49万倍)である。
【図6】実施例1で得られたNa0.063CoO2のTEM像(側面から観察:×49万倍)である。
【図7】実施例1で得られたNa0.063CoO2のTEM観察における、六角板状結晶と観察方向との関係を示す図である。

Claims (7)

  1. 一般式NaCoO(但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなる熱電変換材料。
  2. 層間距離Lが0.3nm<L<0.54nmの範囲内の層間構造を有する請求項1に記載の熱電変換材料。
  3. 単結晶又は配向性の高い単結晶集合体から構成される請求項1又は2に記載の熱電変換材料。
  4. 結晶中に平均孔径5〜100nmの微細孔を有する請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換材料。
  5. 1)アルカリ金属元素を含む水酸化物の少なくとも1種と、2)コバルトを含む化合物及び金属コバルトの少なくとも1種とを含有する混合物を熱処理することを特徴とする、一般式Na CoO (但し、0<x≦0.25)で示され、かつ塩化カドミウム型結晶構造を有する酸化物からなる熱電変換材料の製造方法。
  6. アルカリ金属元素を含む水酸化物の少なくとも1種が、水酸化ナトリウムである請求項に記載の熱電変換材料の製造方法。
  7. 更に、アルカリ金属元素を含むハロゲン化物を配合する請求項又はに記載の熱電変換材料の製造方法。
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