JP4155124B2 - 金属クラッド板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動部を有する機械部品に用いる金属材料に最適な金属クラッド板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
減速装置のローター板、クラッチ板などの摺動部を有する機械部品に用いる金属板には、第1に、摺動部での発熱と凝着を防止する観点から耐摩耗特性に優れること、および押し付け圧力によって変形しないことが要求される。このためには、金属板は高硬度(具体的には、ビッカース硬さで350以上)であることが必要である。第2に、摺動によって発生する熱を効率的に放散できることが要求されるので、金属板は高い熱伝導性を有することも必要である。
【0003】
高硬度の金属板としては、焼入れ硬化させた炭素鋼板、マルテンサイト系ステンレス鋼板、冷間圧延によって加工硬化させたオーステナイト系ステンレス鋼板、時効熱処理により析出硬化させたβ型チタン合金板などがある。しかし、これらの金属板は、単体では熱伝導性が乏しいために、連続摺動時に発生する熱を放散できず熱変形が生じたり、焼き付きを生じて凝着するという問題がある。
【0004】
このため、上記の機械部品としては、高硬度金属板と熱伝導性に優れる金属板とを積層した金属クラッド板を用いるのが有効である。
【0005】
金属クラッド板の製造方法には、爆着法、溶接肉盛り法、圧延法などがある。これらの製造方法のうち圧延法は、比較的薄肉の金属クラッド板を効率よく生産するのに適している。圧延法においては、まず、圧延圧力により接合素材が展伸してそれぞれの素材に新生表面が生成する。そして、この状態で素材同士が接触し、接合界面での相互拡散が進行して各素材が接合される。
【0006】
従来、圧延法による種々の金属クラッド板の製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献1には、170〜250℃に加熱した炭素鋼板と300〜500℃に加熱したアルミニウム板とを圧延圧着してクラッド板を製造する方法が記載されている。特許文献2には、鋼板とアルミニウム板とをアルミニウム部材用ろう材を介して圧延してクラッド板を製造する方法が記載されている。また、特許文献3には、ステンレス鋼板とアルミニウム板との熱間圧延接合に際し、素材の加熱から圧延までの時間を2分以下に抑えるとともに、圧延接合後の捲き取り温度を200℃以上とするクラッド板の製造方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、所定の表面粗さに調整したステンレス鋼板とアルミニウム板またはアルミニウム合金板とを重ね合わせた後、200〜500℃で、総圧下率が15〜40%の条件で圧延するクラッド板の製造方法が記載されている。また、特許文献5には、150〜240℃に加熱したチタン板、370〜430℃に加熱したアルミニウム板、および150〜240℃に加熱したステンレス鋼板または鉄板を重ね合わせて、ワンパスで20〜40%にて圧延した後、350〜430℃で拡散焼鈍するクラッド板の製造方法が記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特許第2663811号公報
【特許文献2】
特開平6−63773号公報
【特許文献3】
特開平5−146880号公報
【特許文献4】
特許第3090038号公報
【特許文献5】
特許第3394746号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、いずれの文献に記載される製造方法においても、アルミニウム板またはアルミニウム合金板と接合する金属板として、軟化焼鈍した材料が使用されており、以下に示すように、アルミニウム板などの軟質金属板とビッカース硬さで350以上の高硬度金属板とのクラッド接合にこれらの製造方法を適用することはできない。
【0011】
図1は、高硬度の金属板と熱伝導性に優れた金属板とから2層クラッド板を作製したときの、総圧下率と各素材個別の圧下率との関係を示す図である。なお、高硬度の金属板としては、0.5mm厚さのSUS410Sマルテンサイト系ステンレス鋼板を焼入れしたもの(この鋼板のビッカース硬さは400。以下、単に「SUS410S板」と呼ぶ)を用い、熱伝導性に優れた金属板としては、A1100純アルミニウムを焼鈍したもの(以下、単に「A1100板」と呼ぶ)を用いた。また、各金属板を個別に400℃に加熱した後、圧延に供した。
【0012】
図2は、上記の方法により得た金属クラッド板の総圧下率と接合強度との関係を示す図である。なお、図2中の「接合圧延+熱処理」は、接合界面での相互拡散を進行させるために、上記の方法により得た金属クラッド板に350℃×30分の熱処理を施したものを意味する。また、図2中の接合強度は、金属クラッド板から切り出した10mm幅×120mm長さの短冊試験片の先端部を強制的に剥離した後、図3に示すように、SUS410S板1の端部とA1100板2の端部とを別々の治具3により保持し、長さ方向と垂直方向(図3中の矢印の方向)に引き剥がしたときの引張荷重(N)を測定し、これを試験片の幅(10mm)で除して得た値(N/mm)である。接合強度(以下、「剥離強度」ともいう。)の目標値は、実使用を考慮して10N/mmとした。
【0013】
図1に示すように、総圧下率を増加させていくとA1100板の個別圧下率は上昇していくが、SUS410S板の個別圧下率はほとんど変化せず、総圧下率40%においても高々2%程度である。このため、SUS410S板の表面ではほとんど新生表面が生成していないものと考えられる。このことは、図2に示すように、接合ままの金属クラッド板では剥離強度が1N/mm程度であり、上記の熱処理を施したものでも目標値の10N/mmに達しなかったことからも推測できる。
【0014】
以上のように、アルミニウム板などの軟質金属板とビッカース硬さで350以上の高硬度金属板とを接合してなる金属クラッド板を従来の方法で製造した場合には、十分な接合強度が得られないため、摺動部を有する機械部品に用いることができない。
【0015】
そこで、本発明者らが研究した結果、金属クラッド板の接合過程において、それぞれの金属板を接合圧延するだけの場合と、一旦接合圧延した金属クラッド板を再圧延する場合とで接合面における新生表面の生成挙動が異なることが分かった。そして、本発明者らは、更に研究を重ね、このような再圧延を前提として、接合強度を増大させるのに必要な製造条件を知見して本発明を完成させた。
【0016】
本発明は、少なくとも片面を構成する金属板として高硬度金属板を用い、他の面または中間層の金属板としてアルミニウム板またはアルミニウム合金板を用いた、接合強度に優れる2層または3層のクラッド板、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
なお、熱伝導性に優れた金属板としては銅板、アルミニウム板またはこれらの合金板が挙げられるが、銅を含む金属クラッド板は接合性が悪いため、本発明のクラッド板ではアルミニウム板またはアルミニウム合金板を用いることとした。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであり、下記の(A)〜(D)を要旨とする。
【0019】
(A)少なくとも一方の表面の硬さがビッカース硬度で350以上の金属からなる第1層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第2層とで構成され、層間の剥離強度が10N/mm以上である金属クラッド板。
【0020】
(B) 下記の(1)から(5)の工程により製造することを特徴とする上記(A)に記載の金属クラッド板の製造方法。
【0021】
(1)硬さがビッカース硬度で350以上の金属板と、アルミニウム板またはアルミニウム合金板とを個別に250〜430℃に加熱し、積層する工程、
(2)圧下率10%以上で接合圧延する工程、
(3)300〜500℃で3分以上保持する工程、
(4)得られたクラッド板を2.0%以上、破断伸び値以下の圧下率で圧延する工程、および
(5)300〜500℃で3分以上保持する工程。
【0022】
(C)少なくとも一方の表面の硬さがビッカース硬度で350以上の金属からなる第1層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第2層と、任意の金属からなる第3層とで構成された金属クラッド板であって、中間層がアルミニウムまたはアルミニウム合金であり、第1層および第2層の層間における剥離強度が10N/mm以上である金属クラッド板。
【0023】
(D) 下記の(1)から(5)の工程により製造することを特徴とする上記(C)に記載の金属クラッド板の製造方法。
【0024】
(1)硬さがビッカース硬度で350以上の金属板と、アルミニウム板またはアルミニウム合金板と、任意の金属板とを個別に250〜430℃に加熱し、この順序で積層する工程、
(2)圧下率10%以上で接合圧延する工程、
(3)300〜500℃で3分以上保持する工程、
(4)得られたクラッド板を2.0%以上、破断伸び値以下の圧下率で圧延する工程、および
(5)300〜500℃で3分以上保持する工程。
【0025】
【発明の実施の形態】
1.金属クラッド板について
本発明の金属クラッド板は、少なくとも一方の表面の硬さがビッカース硬度で350以上の金属(以下、「高硬度金属」とも呼ぶ。)からなる第1層およびアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第2層、または更に、任意の金属からなる第3層とで構成された金属クラッド板であって、一方の層または中間層がアルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする。また、第1層および第2層の層間における剥離強度は10N/mm以上である。
【0026】
例えば、ローター板のように板の両面が摺動面となる機械部品には、中間層に熱伝導性に富むアルミニウムまたはアルミニウム合金を有し、その両端面を高硬度金属で挟んだ3層クラッド板を用いることができる。また、クラッチ板のように板の片側表面のみが摺動面となる機械部品には、高硬度金属と、アルミニウムまたはアルミニウム合金とを一枚ずつ積層した2層クラッド板、または高硬度金属板と任意の金属板の中間に熱伝導性に優れた金属板を積層した3層クラッド板を用いることができる。
【0027】
前述のように、高硬度金属板とアルミニウム等の軟質の金属板とからなる金属クラッド板を従来の方法で製造しても、金属板間の接合強度が不十分なものとなり、摺動部を有する金属部品の素材として用いることができない。しかし、後述する方法によれば、高硬度金属とアルミニウム等の軟質の金属からなる金属クラッド板に十分な接合強度(具体的には、剥離強度で10N/mm以上)が得られる。
【0028】
なお、本発明の金属クラッド板に用いる高硬度金属板としては、焼入れ硬化させた炭素鋼板、マルテンサイト系ステンレス鋼板、冷間圧延によって加工硬化させたオーステナイト系ステンレス鋼板、時効熱処理により析出硬化させたβ型チタン合金板などである。また、任意の金属板としては上記の高硬度金属板を用いてもよいし、片面だけに高硬度が求められる場合には硬化処理を施さずに製造した炭素鋼や各種ステンレス鋼のほか、チタン、ニッケルまたはアルミニウムもしくはこれらの合金を含む一般に用いられる金属材料を用いてもよい。
【0029】
2.金属クラッド板の製造方法について
A.工程(1)〜(3)について
本発明の製造方法においては、まず、接合に供する金属板を個別に250〜430℃に加熱、積層し、圧下率10%以上で接合圧延(以下、「第1圧延」と呼ぶ。)した後、300〜500℃で3分以上保持する熱処理(以下、「第1熱処理」と呼ぶ。)に供する必要がある。
【0030】
加熱温度が250℃未満の場合には、接合面の化学的な活性が十分に得られず、430℃を超えると、接合素材の表面に厚い酸化被膜が形成されて金属同士の接合が阻害される。このため、いずれの場合も十分な接合強度が得られなくなる。従って、事前の加熱温度を250〜430℃とした。
【0031】
第1圧延は、第1熱処理で相互拡散を進行させるべく、各金属板を仮接合状態とすることを目的として行う。しかし、その圧下率が10%未満の場合には圧力が不十分であり、その後に、第1熱処理を実施しても接合界面に十分な相互拡散を進行させることができない。従って、第1圧延の圧下率を10%以上とした。圧下率の上限については、特に制限はないが、圧延機への負荷の増大、製品形状の確保の困難性の観点から60%以下とするのが望ましい。
【0032】
第1熱処理は、接合界面での相互拡散を進行させることを目的として行う処理である。この熱処理を施した後に、後述の第2圧延および第2熱処理を施すことにより強固な接合強度が得られる。しかし、第1熱処理の温度が300℃未満の場合には接合界面での相互拡散が進行せず、500℃を超えると接合界面に脆い金属間化合物が生成する。このため、いずれの場合にも最終的に十分な接合強度が得られない。また、接合界面の相互拡散は短時間の熱処理でも進行するが、接合界面全体に均質な相互拡散を得るためには3分以上の熱処理時間が必要である。従って、第1熱処理を300〜500℃で3分以上保持して行うこととした。なお、製造コストの観点からは2時間以下とするのが望ましい。
【0033】
ここで、前述した図2に示すように、第1圧延の後に第1熱処理を施しても、剥離強度の最終目標値(10N/mm以上)は得られない。しかし、本発明の製造方法では、上記の条件で一旦仮接合をした後、後述の第2圧延を施すこととしているので、上記の第1熱処理後の段階で最終目標値に達している必要はなく、第1熱処理後の接合強度としては、引き続き第2圧延を行うことができる程度の接合強度、即ち、剥離強度で3N/mm以上を目標とする。
【0034】
B.工程(4)について
本発明の製造方法においては、上記の第1熱処理後に、2.0%以上、破断伸び値以下の圧下率で圧延(以下、「第2圧延」と呼ぶ。)する必要がある。
【0035】
上述のように、この第2圧延の前では第1熱処理により接合界面での相互拡散が進行した状態となっているため、高硬度金属板とアルミニウム等の金属板とはある程度の強度(具体的には、3N/mm以上)で接合されている。この相互拡散が進行した状態の金属クラッド板を第2圧延に供すると、以下に示すように、各構成材料が同じ圧下率で展伸するので、高硬度金属表面における新生表面の生成が効率的に進行する。
【0036】
図4は、第2圧延時の総圧下率と各素材個別の圧下率との関係を示す図である。なお、この実験では、前掲のSUS410S板およびA1100板を用い、各金属板を個別に400℃に加熱、積層し、総圧下率で30%の第1圧延に供し、350℃×30分の第1熱処理を施した後に、種々の圧下率で第2圧延に供し、その総圧下率と各素材個別の圧下率を測定した。
【0037】
図4に示すように、高硬度金属板(SUS410S板)および軟質金属板(A1100板)それぞれの個別圧下率はいずれも総圧下率とほぼ同一となる。このため、高硬度金属板の表面には総圧下率と同じ比率で新生表面が生成しており、接合過程が進行していると考えられる。従って、本発明の製造方法においては、第1圧延、第1熱処理の後、更に第2圧延を実施することとした。
【0038】
しかし、第2圧延の圧下率が2.0%未満の場合には、その後に後述する第2熱処理を施しても、金属クラッド板の剥離強度を10N/mm以上とすることができない。このため、第2圧延を2.0%以上の圧下率で行うこととした。好ましい範囲は3.0%以上である。一方、第1熱処理後の金属クラッド板の破断伸び値を超える圧下率で第2圧延を行うと、下記の問題が生じる。
【0039】
上記の実験において第2圧延を圧下率12.5%で実施した金属クラッド板の高硬度金属層に断続的な割れが発生し、これより更に大きな圧下率で第2圧延を行うと接合界面に剥離が生じた。一方、上記の第1熱処理後の金属クラッド板について引張試験を実施し、破断伸び値を求めたところ12%であった。同様の実験を金属クラッド板の構成部材を変えて行ったところ、第1熱処理後の金属クラッド板の破断伸び値を超える圧下率で第2圧延を行うと上記と同様の結果が得られた。このため、第2圧延は、第1熱処理後の金属クラッド板の破断伸び値以下の圧下率で行うこととした。
【0040】
上述のように、第2圧延は、高硬度金属板の表面における新生表面の生成を効率的に進行させ、接合強度を増大するのに有用である。そればかりか、通常の金属クラッド板の接合圧延は1パスで完了するため高精度な板厚管理が困難であるが、第2圧延を実施することにより板厚分布を調整することができる。
【0041】
C.工程(5)について
本発明の製造方法では、上記の第2圧延の後、300〜500℃で3分以上保持する熱処理(以下、「第2熱処理」と呼ぶ。)を実施する必要がある。
【0042】
図5は、上記図4に示す実験で得た金属クラッド板の総圧下率と接合強度との関係を示す図である。なお、図5中の「第2圧延+熱処理」は、金属クラッド板に350℃×30分の熱処理を施したものを意味する。図5に示すように、第2圧延を実施したままの金属クラッド板では、その接合強度が剥離強度で2N/mm程度で推移し、目標値の10N/mmに達していないが、金属クラッド板に第2熱処理を施すことによって急激に接合強度が増大する。これは、第2圧延を実施したままの状態の接合界面には高硬度金属側に新生表面が生成しているものの相互拡散が進行していないために接合強度が小さいが、第2熱処理により相互拡散が進行して接合強度が増大したと考えられる。
【0043】
しかし、第2熱処理の温度が300℃未満の場合には接合界面での相互拡散が進行しない。また、500℃を超えると接合界面に脆い金属間化合物が生成する。従って、いずれの場合にも十分な接合強度が得られない。ここで、接合界面全体に均質な相互拡散を得るためには3分以上の熱処理時間が必要である。従って、第2熱処理を300〜500℃で3分以上保持して行うこととした。なお、製造コストの観点からは2時間以下とするのが望ましい。
【0044】
以上の説明では、主として2層の金属クラッド板について説明したが、3層の金属クラッド板の製造に際しても、第1圧延と第2圧延における接合強度の変化挙動は同様である。
【0045】
【実施例】
構成部材と製造条件を変えて金属クラッド板を作製した。各構成部材および製造条件を表1および2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
なお、表1および2には、第1熱処理後の接合強度、ならびに第2熱処理後の接合強度および第1層の表面硬さを併記した。接合強度は、前述と同様の手法により、第1層の端部と、第2層(または、第2層および第3層)の端部とを別々の治具により保持し、長さ方向と垂直方向に引き剥がしたときの引張荷重(N)を測定し、これを試験片の幅(10mm)で除して得た剥離強度(N/mm)を意味する。第1熱処理後の接合強度(剥離強度)の目標値は3N/mmであり、第2熱処理後の接合強度(剥離強度)の目標値は10N/mmである。また、ビッカース硬さは、JIS Z 2244に規定される方法に従って第1層表面について測定した。
【0049】
第1層の「SUS410S」は焼入れ硬化させたマルテンサイト系ステンレス鋼、「SUS301」は冷間圧延によって加工硬化させたオーステナイト系ステンレス鋼、「SPFC」は焼入れ硬化した炭素鋼、「Ti-20V-3.3Al-1Sn」は冷間圧延後に時効熱処理を行うことによって析出硬化したβ型チタン合金である。また、第2層の「A1100」は純アルミニウムを焼鈍したもの、「A3003」はMnを含むアルミニウム合金、「A6061」および「A7075」は時効熱処理によって高強度化が可能なアルミニウム合金である。
【0050】
表1に示すように、本発明例1〜9はいずれも第2熱処理後の接合強度(剥離強度)が10N/mmを超え、且つ第1層のビッカース硬さが350を超えており、良好な結果が得られた。一方、比較例10および14は、それぞれ第1、第2層の加熱温度が本発明で規定される範囲を下回っており、第1熱処理後の接合強度(剥離強度)が3N/mm未満となった。この結果、第2圧延において構成部材間の剥離が発生した。
【0051】
比較例11は第1圧延における圧下率が本発明で規定される範囲を下回っていた。比較例16は第1層の加熱温度が本発明で規定される範囲を上回っており、第1層であるSPFC材の表面に厚い酸化被膜が生じた。このため、いずれの場合も第1圧延で接合が完了せず、その後の処理を中止した。
【0052】
比較例12は第2熱処理の温度が本発明で規定される範囲を下回っており、比較例17は第2熱処理の温度が本発明で規定される範囲を上回っていた。このため、いずれの場合も一応接合するものの接合強度が目標値に達しなかった。比較例13および20は本発明で規定される条件で製造したものであるが、第1層として用いた金属板のビッカース硬さが350未満であり、最終的に得られた金属クラッド板の第1層のビッカース硬さも350未満であった。
【0053】
比較例15および18は第2圧延の圧下率が本発明で規定される範囲を上回っており、第1層の金属に割れが生じるとともに、構成部材間の剥離が発生した。比較例19は第1熱処理の温度が本発明で規定される範囲を下回っており、第1熱処理後に十分な接合強度が得られず、第2圧延時に構成部材間の剥離が発生した。
【0054】
【発明の効果】
本発明の金属クラッド板の製造方法によれば、ビッカース硬さで350以上の高硬度金属板と軟質のアルミニウム板またはアルミニウム合金板とを強固に接合させることができる。この方法で得られる金属クラッド板は耐摩耗特性および熱伝導性に優れるため、例えば、減速装置のローター板やクラッチ板などの摺動部を有する機械部品の素材として最適な金属クラッド板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高硬度金属板と熱伝導性に優れた金属板とから2層クラッド板を作製したときの、総圧下率と各素材個別の圧下率との関係を示す図である。
【図2】金属クラッド板の総圧下率と接合強度との関係を示す図である。
【図3】接合強度の測定方法を示す図である。
【図4】第2圧延時の総圧下率と各素材個別の圧下率との関係を示す図である。
【図5】図4に示す実験で得た金属クラッド板の総圧下率と接合強度との関係を示す図である。
【符号の説明】
1.SUS410S板、2.A1100板、3.治具
Claims (4)
- 少なくとも一方の表面の硬さがビッカース硬度で350以上の金属からなる第1層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第2層とで構成され、層間の剥離強度が10N/mm以上である金属クラッド板。
- 下記の(1)から(5)の工程により製造することを特徴とする請求項1に記載の金属クラッド板の製造方法。
(1)硬さがビッカース硬度で350以上の金属板と、アルミニウム板またはアルミニウム合金板とを個別に250〜430℃に加熱し、積層する工程、
(2)圧下率10%以上で接合圧延する工程、
(3)300〜500℃で3分以上保持する工程、
(4)得られたクラッド板を2.0%以上、破断伸び値以下の圧下率で圧延する工程、および
(5)300〜500℃で3分以上保持する工程。 - 少なくとも一方の表面の硬さがビッカース硬度で350以上の金属からなる第1層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第2層と、任意の金属からなる第3層とで構成された金属クラッド板であって、中間層がアルミニウムまたはアルミニウム合金であり、第1層および第2層の層間における剥離強度が10N/mm以上である金属クラッド板。
- 下記の(1)から(5)の工程により製造することを特徴とする請求項3に記載の金属クラッド板の製造方法。
(1)硬さがビッカース硬度で350以上の金属板と、アルミニウム板またはアルミニウム合金板と、任意の金属板とを個別に250〜430℃に加熱し、この順序で積層する工程、
(2)圧下率10%以上で接合圧延する工程、
(3)300〜500℃で3分以上保持する工程、
(4)得られたクラッド板を2.0%以上、破断伸び値以下の圧下率で圧延する工程、および
(5)300〜500℃で3分以上保持する工程。
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