本発明のトナーの製造方法は、離型剤及び重合禁止剤を単量体に混合し離型剤混合液を得る工程、縦置きの円筒状容器及び該円筒状容器内に設けられたアジテーターシャフトとからなり、アジテーターシャフトには複数のローターピンが備わり、その内の最下部ローターピンは、最下部ローターピンと円筒状容器底面との間隔(L1)及びローターピン径(d)を、L1/d=0.15〜0.25の関係になるように備えられており、該容器内には球状のメディアが充填され、アジテーターシャフトを回転させることにより、メディアが運動する粉砕装置を用いて、前記離型剤混合液を湿式粉砕する工程、及び単量体を重合する工程を含むものである。
本発明に用いる離型剤は、その軟化点が、通常、50〜180℃のもの、好ましくは70〜160℃のものである。
離型剤としては、パラフィン、ワックス、低分子量ポリオレフィン、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11又は(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸及びそのエステル等の低軟化点化合物を例示し得る。これら離型剤は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
このような離型剤の具体例としては、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660−P、ビスコールTS−200(以上三洋化成製);三井ハイワックス110P、三井ハイワックス220P、三井ハイワックス660P、三井ハイワックス210P、三井ハイワックス320P、三井ハイワックス410P、三井ハイワックス420P、変性ワックスJC−1141、変性ワックスJC−2130、変性ワックスJC−4020、変性ワックスJC−5020(以上三井石油化学製);パラフィンワックス(日本精蝋製)、マイクロワックス(日本石油製)、PE−130(ヘキスト製)、ユニスターH−476(日本油脂製)、ユニスターM−9676(日本油脂製)、FT−100(シェル・WDS社製)、蜜蝋、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
離型剤の量は、単量体100重量部に対して、通常、1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部である。離型剤が少ないとオフセット防止効果が不十分となる傾向になり、多くなるとトナーの粒径分布が広くなる。又、流動性が低下傾向になる。なお、湿式粉砕の工程においては、湿式粉砕の効率を考慮して離型剤混合液の離型剤濃度を、通常、2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%に調製し、湿式粉砕後に、離型剤の量が単量体に対して前記、重量部数になるように、単量体を追加添加して調製することが好ましい。
本発明に用いる単量体として、モノビニル系単量体を挙げることができる。具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体;
エチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物;等が挙げられる。これらのモノビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル系単量体のうち、スチレン系単量体またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体が、好適に用いられる。
本発明に用いる単量体として、モノビニル系単量体とともに架橋性単量体を保存性、耐久性改善のために用いることが好ましい。架橋性単量体は、2以上の重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明では、架橋性単量体を、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
また、本発明では、保存性と低温定着性とのバランスを良くするためにマクロモノマーを単量体として用いることが好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が小さいものを用いると、重合体粒子の表面部分が柔らかくなり、保存性が低下するようになる。逆に数平均分子量が大きいものを用いると、マクロモノマーの溶融性が悪くなり、定着性及び保存性が低下するようになる。
マクロモノマー分子鎖の末端に有するビニル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、共重合のしやすさの観点からメタクリロイル基が好適である。マクロモノマーは、前記モノビニル系単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有するものが好適である。
モノビニル系単量体を重合して得られる重合体とマクロモノマーとの間のTgの高低は、相対的なものである。例えば、モノビニル系単量体がTg=70℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、Tgが70℃を越えるものであればよい。モノビニル系単量体がTg=20℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、例えば、Tg=60℃のものであってもよい。なお、マクロモノマーのTgは、通常のDSC等の測定機器で測定される値である。
本発明に用いるマクロモノマーの具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体、ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマー、特開平3−203746号公報の第4頁〜第7頁に開示されているものなどを挙げることができる。これらマクロモノマーのうち、親水性のもの、特にメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独でまたはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が、本発明に好適である。
マクロモノマーの量は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。マクロモノマーの量が少ないと、保存性と定着性とのバランスが向上しない。マクロモノマーの量が極端に多くなると定着性が低下するようになる。
前記離型剤と単量体とを混合して得られる離型剤混合液に重合禁止剤を含有させる。すなわち、重合禁止剤の存在下に離型剤混合液を湿式粉砕するのである。
本発明に用いる重合禁止剤は、単量体の重合を禁止または抑制できるものである。具体的には、安定ラジカルによるラジカルの捕捉により重合禁止または抑制するものとして、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、1,3,5−トリフェニルフェルダジル、2,6−ジt−ブチル−α−(3,5−ジt−ブチル−4−オキソ−2,5−シクロヘキサンジエン−1−イリデン−p−トリルオキシ、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン−1−オキシル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)−アニリンオキシド、2−(2−シアノプロピル)−フェルダジル;
連鎖移動反応により重合禁止または抑制するものとしては、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、ジエチルヒドロキシルアミンのごとき活性なNH結合を有するもの;ヒドロキノン、t−ブチルカテコールのごときフェノール性OH結合をもつもの;ジチオベンゾイルジスルフィド、p,p’−ジトリルトリスルフィド、p,p’−ジトリルテトラスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド;
付加反応により重合禁止または抑制するものとしては、酸素、硫黄、アントラセン、1,2−ベンズアンタラセン、テトラセン、クロラニル;p−ベンゾキノン、2,6−ジクロルベンゾキノン、2,5−ジクロルベンゾキノンのごときベンゾキノン誘導体、フリフルデンマロノニトリル、トリニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼンのごときニトロ化合物;ニトロソベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパンのごときニトロソ化合物;さらに、塩化第二鉄、臭化第二鉄のごとき金属塩などが挙げられる。
これら重合禁止剤のうち、連鎖移動反応により重合禁止または抑制するもの、特にt−ブチルカテコールが好適である。
重合禁止剤の量は、単量体に対して、通常、10〜5000ppm、好ましくは100〜2000ppmである。少ないと、単量体が一部重合して凝固物ができたりして、トナーの粒径が粗大化し、粒径分布が広くなる傾向になる。多すぎると、重合体粒子を得るための重合反応において開始剤を多量に使用しなければならなくなる傾向になる。
本発明の製造方法においては、単量体に離型剤及び重合禁止剤を添加し、混合、分散させた後、圧縮、せん断およびヘラなで作用等の機械的な力を作用させて、離型剤を粉砕し、離型剤が均一に単量体中に分散した分散液を得る。
湿式粉砕をより具体的に説明すると、縦置きの円筒状容器に球状のメディアを充填し、アジテーターシャフトを用いて高速回転させ、メディアを運動させた中に、単量体と離型剤と(必要に応じて重合禁止剤と)の混合液をポンプ等を用いて供給することにより、回分式または連続式に粉砕する(メディア式粉砕法)ことができる。
一般に、固形物の粉砕には、ターボミル、ジェットミル、等を用いる乾式粉砕も使用可能であるが、湿式粉砕法は乾式粉砕法に比べ、粉砕による到達粒径が小さいこと、粉砕時の発熱が少ないことから、上記メディア式などの湿式粉砕法が好ましい。
メディア式湿式粉砕法では、ボールミル、高速ビーズミル等を用いることが可能である。これらのうち高速ビーズミルによる粉砕が好ましい。メデイアとして、通常、直径0.5mm以上、好ましくは直径0.5〜10mm、さらに好ましくは1〜3mmの小粒径ビーズが用いられる。
ビーズの密度は、通常、3g/cm3以上、好ましくは5g/cm3以上である。ビーズの材質は、ジルコニアなどの高硬度のセラミックス;スチールなどの高硬度金属が好適に用いられている。
上記ビーズの充填量は、粉砕効率を考慮すると、通常、60〜95%であり、好ましくは70〜85%である。
前記高速ビーズミルの具体的なものとしては、アトライタ(三井三池製)、マイティミル(井上製作所製)、ダイヤモンドファインミル(三菱重工製)、ダイノミル(シンマルエンタープライゼス製)、アペックスミル(コトブキ技研製)等を挙げることができる。これらのうち、縦置き型のアペックスミルは粉砕性能が良好で、本発明の製法に好適である。
図1は本発明で使用するメディア式湿式粉砕機の一例を示す図であり、図2は図1のA−B断面を示す図であり、図3はコーンセパレータの一例を示す図である。
メディア式湿式粉砕機のアジテーターシャフト3には複数のローターピン7が設けられている。ローターピンとしては、通常のメディア式湿式粉砕機に設けられているものを用いることができる。
本発明の製造方法においては、最下部のローターピンを、最下部ローターピンと容器底面との距離(L1)及びローターピン径(d)を、L1/dで0.15〜0.25となるように設ける。この比率にすることにより、重合法トナーの粒径分布が狭くなり、離型剤等が均一に含有されるようになる。図1においては、スペーサー4aを容器底面のフランジに介在させて最下部ローターピンと容器底面との距離を調整している。
本発明の製造方法においては、最上部のローターピンが、最上部ローターピンと容器天井面との距離(L2)及びローターピン径(d)を、L2/dで0.24以上となるようにして設けることが好ましい。図1においては、スペーサー4bを容器天井面のフランジに介在させて最上部ローターピンと容器天井面との距離を調整している。容器内のメディアは遠心力によって、容器側面に移動しようとするので、容器内に充填したメディアの上面が、すり鉢状になる。容器天井面と最上部ローターピンとの間隔を比率L2/dで0.24以上にすることによって、粒径分布が狭い重合トナーが得やすくなる。なお、本発明において、ローターピン径とは、アジテーターシャフト3を回転させることによってローターピン先端が描く円軌跡の直径のことをいう。
本発明の製造方法においては、縦型円筒状容器底面にコーンセパレータ5を設けることが好ましい。コーンセパレータ(図3)は、弁体8を上端にもつピストン10と、容器底面に密着して設けられる弁座9と、弁体を弁座の下方から押し上げ弁体と弁座とを密着させるためのスプリング11とを基本的構成要素とするものである。コーンセパレータを設けることにより、容器に充填されたメディアが弁体にぶつかると弁体が押し下がり、弁体と弁座との間に隙間が生じ、その隙間から粉砕された離型剤混合液が排出口6から排出できる。このコーンセパレータの弁体及び弁座の材質として、通常、ステンレス鋼、鉄、ジルコニア、超硬合金など、好適には超硬合金(タングステンカーバイトやチタニウムカーバイトやタンタルカーバイトなどの遷移元素系列の金属炭化物粉末と、コバルトや鉄やニッケルなどの鉄族金属粉末とを配合して焼結したもの)が挙げられる。
本発明の製造方法においては、離型剤を所望のトナー粒径よりも十分小さい粒径にまで粉砕する。具体的には、離型剤の粒径のD50が5μm以下、好ましくは4μm以下、D90が15μm以下、好ましくは10μm以下にすることが好ましい。
ここでD50とは、粒径測定機SALD−2000A(島津製作所製)にて測定した体積粒径分布の累積値50%の値であり、D90は同90%の値である。
湿式粉砕の後、必要に応じて、着色剤、帯電制御剤、着色剤用分散剤及び追加の単量体を添加し、混合、分散して、単量体組成物を得る。
着色剤としては、カーボンブラック、チタンホワイト、ニグロシンベース、アニリンブルー、カルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、オリエントオイルレッド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオクサレート等の染顔料類;コバルト、ニッケル、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;などを挙げることができる。
さらに、磁性カラートナー用着色剤としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等が、顔料として黄鉛、カドミウムイエロ、ミネラルファーストイエロ、ネーブルイエロ、ネフトールイエロS、ハンザイエロG、パーマネントイエロNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエログリーンG等が挙げられ、
フルカラートナー用マゼンタ着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207及び209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29及び35等が、マゼンタ染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109及び121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21及び27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39及び40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27及び28などの塩基性染料等が挙げられ、
フルカラートナー用シアン着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16及び17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45及びフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
また、フルカラートナー用イエロ着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロ1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83、138及び180、C.I.バットイエロ1、3及び20等が挙げられる。
これら着色剤のうち染顔料類は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。磁性粒子は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部の割合で用いられる。
帯電制御剤はトナーの帯電性を向上させるために使用される。帯電制御剤としては、各種の正帯電または負帯電の帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤の具体例としては、ニグロシンN01(オリエント化学社製)、ニグロシンEX(オリエント化学社製)、スピロブラックTRH(保土ヶ谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)、ボントロンE−84(オリエント化学社製)等を挙げることができる。帯電制御剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
単量体組成物は、通常、離型剤及び重合禁止剤が分散された単量体と、着色剤、帯電制御剤、その他添加剤と、追加の単量体とを混合し、ボールミル等により均一に分散させて調製する。
さらに、単量体組成物には、単量体を重合するためのラジカル重合開始剤、分子量調整剤などの重合副資材等の各種添加剤を配合することができる。
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス−2−メチル−N−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。これらのうち、油溶性ラジカル開始剤、特に、10時間半減期の温度が60〜80℃、好ましくは65〜80℃で且つ分子量が250以下の有機過酸化物から選択される油溶性ラジカル開始剤、特にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが印字時の臭気が少ないこと、臭気などの揮発成分による環境破壊が少ないことから好適である。
重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部である。0.1重量部未満では、重合速度が遅く、10重量部超過では、分子量が低くなるので好ましくない。
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;α−メチルスチレンダイマー;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前又は重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
さらに、着色剤等の中には、単量体に不溶のものがあるので、その場合には単量体に均一に分散するようにする。着色剤の分散性を向上させるために着色剤用分散剤を添加することができる。また、着色剤の粒子中への均一分散等を目的として、オレイン酸、ステアリン酸等の滑剤;シラン系またはチタン系カップリング剤等の分散助剤;などを使用してもよい。このような滑剤や分散剤は、着色剤の重量を基準として、通常、1/1000〜1/1程度の割合で使用される。
本発明の製造方法において、重合を行う前に、水媒体に前記単量体組成物を添加し撹拌して単量体組成物分散液を得る。水媒体には、通常、分散安定剤が含有している。
本発明に用いられる分散安定剤は、懸濁重合において、通常、使用されている、難水溶性金属化合物のコロイドを含有するものや;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチンなどの水溶性高分子や;界面活性剤などが挙げられる。これらのうち難水溶性金属化合物のコロイドを含有するものが好適である。
難水溶性金属化合物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等を挙げることができる。これらのうち、難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、重合体粒子表面に付着している難水溶性の金属水酸化物のコロイドを酸洗浄、アルカリ洗浄、又は水洗浄で容易に除去できることから環境安定性が良好であり、また、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、その製造方法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸物のコロイドを用いることが好ましい。
本発明に用いる難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、粒径分布が広くなる。
分散安定剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用する。この割合が0.1重量部より少ないと、充分な重合安定性を得ることが困難であり、重合凝集物が生成し易くなる。逆に、20重量部を超えると、水系分散媒体中の粘度が上昇し、重合トナーの粒径分布が広くなるので好ましくない。
撹拌は、単量体組成物が水媒体中に均一に分散する方法であれば特に限定されないが、高速回転する回転子と、それを取り囲み且つ小孔または櫛歯を有する固定子との間隙に流通させて造粒する方法が好適である。
具体的には、TK−ホモミキサー、TK−パイプラインホモミキサー、TK−ホモミックラインミル(以上特殊機化工業製);エバラマイルダー(荏原製作所製)、クレアミックス(エム・テクニック製)など、好ましくはエバラマイルダーあるいはクレアミックスが挙げられる。
単量体組成物分散液の分散状態は、単量体組成物の液滴の体積平均粒径が、0.1〜20μm、好ましくは、0.5〜10μmの状態である。液滴が大きすぎると、トナー粒子が大きくなり、画像の解像度が低下するようになる。
該液滴の粒径分布は、体積平均粒径/数平均粒径の表記で、通常、1〜3、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1〜1.5である。該液滴の粒径分布が広いと、トナー粒子の粒径分布が広くなり、解像度の低下、定着温度のばらつき、かぶり等の不具合が生じるようになる。該液滴は、好適には、その体積平均粒径±1μmの範囲に50体積%以上、好ましくは60体積%以上存在する粒径分布のものである。
本発明の製造方法において、懸濁重合法は、従来の公知の方法で行うことができる。例えば、前記単量体組成物分散液を重合反応器で得、そのまま重合反応をさせる方法;前記単量体組成物分散液を分散液調製タンクで得た後、重合反応器に移し替えて、重合する方法が挙げられる。反応器内に生起するスケールを少なくし、また粗大粒子の生成を抑えるためには、後者の分散液調製と重合とを別の容器(調製タンクと重合反応器)で行う方法が好ましい。後者の方法を具体的に説明すれば、分散液調製用の容器(調製タンク)で単量体組成物を水媒体に添加して単量体組成物分散液を調製し、該単量体組成物を別の容器(重合反応器)に移送し、該容器に仕込み、重合する。
本発明のトナーの製造方法によって、体積平均粒径(dv)が、通常、0.5〜20μm、好ましくは1〜10μm、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)が、通常、1.7以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下の重合体粒子が得られる。
得られた重合体粒子は、そのままで、もしくは、重合体粒子にシェル用重合体(以下、単にシェルということがある。)を被覆しコアシェル型重合体粒子にして、又は、それらに後記の外添剤を付着させて、トナーとして使用される。
重合体粒子にシェル用重合体を被覆する方法は、特に限定されないが、前述の工程によって得られた重合体粒子(以下、コア粒子ということがある。)の存在下に、シェル用単量体を重合することが、低温定着性と保存性とのバランスを良好にするために好ましい。
シェル用単量体は、トナーの保存性を改善するために、コア粒子を得るために用いたモノビニル系単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を得るものであることが好ましい。
シェル用単量体により得られる重合体とコア粒子用のモノビニル系単量体を重合して得られる重合体とのガラス転移温度は相対的なものである。シェル用単量体として、スチレン、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が70℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができ、またコア粒子用のモノビニル系単量体により得られる重合体のガラス転移温度が70℃よりもはるかに低い場合にはシェル用単量体は70℃以下の重合体を形成するものであってもよい。シェル用単量体により得られる重合体のガラス転移温度は、トナーの保存安定性を向上させるために、通常、50℃以上120℃以下、好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは80℃以上105℃以下である。シェル用単量体からなる重合体のガラス転移温度が極端に低すぎると、そのガラス転移温度がコア粒子用モノビニル系単量体からなる重合体のガラス転移温度より高いものであっても保存性が低下傾向になることがある。
コア粒子用モノビニル系単量体からなる重合体とシェル用単量体からなる重合体との間のガラス転移温度の差は、通常、10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上である。
シェル用単量体は、コア粒子の存在下に重合する際に、コア粒子の数平均粒子径よりも小さい液滴の水分散液とすることが好ましい。シェル用単量体水分散液の液滴の粒径が大きくなると、保存性が低下傾向になる。
シェル用単量体を小さな液滴とするには、シェル用単量体と水媒体との混合物を、例えば、超音波乳化機などを用いて、微分散処理を行う。得られた水分散液をコア粒子の存在する反応系へ添加することが好ましい。
シェル用単量体は、20℃の水に対する溶解度により特に限定されないが、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の単量体を用いた場合には、水に対する溶解度の高い単量体はコア粒子に速やかに移行しやすくなるので、保存性が良好になりやすい。
一方、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満のシェル用単量体を用いた場合では、コア粒子への移行が遅くなるので、前述のごとく、シェル用単量体を微小な液粒にして重合することが好ましい。また、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満のシェル用単量体を用いた場合でも、20℃の水に対する溶解度が5重量%以上の有機溶媒を反応系に加えることによりシェル用単量体がコア粒子にすばやく移行するようになり、保存性が良好になる。
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満のシェル用単量体としては、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上のシェル用単量体としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;4−ビニルピリジン等の含窒素ビニル化合物;酢酸ビニル、アクロレインなどが挙げられる。
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満のシェル用単量体を用いた場合に好適に使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル;ジメチルホルムアルデヒド等のアルデヒドなどを挙げることができる。有機溶媒は、分散媒体(水と有機溶媒との合計量)に対するシェル用単量体の溶解度が0.1重量%以上となる量を添加する。具体的な有機溶媒の量は有機溶媒、シェル用単量体の種類及び量により異なるが、水媒体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.1〜30重量部である。有機溶媒とシェル用単量体とを反応系に添加する順序は特に限定されないが、コア粒子へのシェル用単量体の移行を促進し保存性のよい重合体粒子を得やすくするために、有機溶媒を先に添加し、その後シェル用単量体を添加するのが好ましい。
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体と0.1重量%以上の単量体とを併用する場合には、先ず20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の単量体を添加し重合し、次いで有機溶媒を添加し、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を添加し重合することが好ましい。この添加方法によれば、トナーの定着温度を調整するためにコア粒子の存在下に重合する単量体から得られる重合体のガラス転移温度や、単量体の添加量を適宜制御することができる。
帯電制御剤は、前述のごとく、コア粒子を得る際に単量体組成物中に配合することができるが、シェルを被覆する場合には、シェル用単量体に帯電制御剤を混合して重合することが、トナーの帯電特性を向上させる観点から好ましい。
シェル用単量体をコア粒子の存在下に重合する具体的な方法としては、前記コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用単量体を添加して継続的に重合する方法、又は別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用単量体を添加して断続的に重合する方法などを挙げることができる。シェル用単量体は反応系中に一括して添加するか、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加することができる。
本発明の製造方法において、シェル用単量体を添加する際に水溶性のラジカル開始剤を添加することがコアシェル型の重合体粒子を得やすくするために好ましい。シェル用単量体の添加の際に水溶性ラジカル開始剤を添加すると、シェル用単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性ラジカル開始剤が浸入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなるからであると考えられる。
水溶性ラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス−2−メチル−N−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド等のアゾ系開始剤;クメンパーオキシド等の油溶性開始剤とレドックス触媒の組合せ;などを挙げることができる。水溶性ラジカル開始剤の量は、水系媒体基準で、通常、0.001〜1重量%である。
本発明の製造方法において、コア用単量体とシェル用単量体との重量比率は、通常、40/60〜99.5/0.5である。シェル用単量体の割合が過小であると、保存性改善効果が小さくなる傾向になり、逆に、過大であると、定着温度の低減やOHP透過性の改善効果が小さくなる傾向になる。
本発明のトナーの製造方法によって得られる、コアシェル型重合体粒子の体積平均粒子径は、通常、2〜20μm、好ましくは3〜15μmで、粒径分布(体積平均粒子径/個数平均粒子径)は、通常、1.6以下、好ましくは1.5以下の粒径分布がシャープな球形の微粒子である。
本発明によって得られるコアシェル型重合体粒子は、そのシェルの平均厚みが、通常、0.001〜1.0μm、好ましくは0.005〜0.5μmであると考えられるものである。シェルの平均厚みが大きくなると定着性が低下傾向に、小さくなると保存性が低下傾向になる。なお、重合体粒子のコア粒子径、及びシェルの厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさ及びシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子を形成した段階で電子顕微鏡で前記と同様に測定するかあるいはコールターカウンターで測定し、次にシェルをコア粒子に被覆した後、もう一度粒子の大きさを電子顕微鏡またはコールターカウンターで測定し、シェルを被覆する前後の粒径変化から平均厚みを求めることができ、更に上記方法が困難である場合はコア粒子の粒径及びシェルを形成する単量体の量から推定することができる。
本発明の製造方法によって得られる重合体粒子(以下、トナー用粒子ということがある。)は、そのトルエン不溶解分が、通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下のものである。トルエン不溶解分が多くなると定着性が低下する傾向になる。なお、トルエン不溶解分とは、重合体粒子を形成する重合体を80メッシュの金網篭に入れ、24時間室温下でトルエンに浸漬した後、篭に残存する固形物の乾燥重量を測定し、重合体に対する重量%で表したものである。
本発明の製造方法によって得られる重合体粒子は、その長径rlと短径rsとの比(rl/rs)が、通常、1〜1.2、好ましくは1〜1.1の、真球のものである。この比が大きくなると、画像の解像度が低下し、また、画像形成装置のトナー収納部に該トナーを納めたときにトナー同志の摩擦が大きくなるので外添剤が剥離したりして、耐久性が低下する傾向になる。
本発明のトナーの製造方法においては、前記の単量体の重合の後(シェル単量体を重合する場合はシェル単量体の重合の後)、得られた重合体粒子の表面に外添剤を付着する工程を含めることができる。外添剤としては、無機粒子、有機樹脂粒子、好ましくはシリカ粒子、酸化チタン粒子、ポリメチルメタクリレート粒子、特に好ましくは疎水化処理されたシリカ粒子が挙げられる。外添剤を前記重合体粒子に付着させるには、通常、外添剤と前記重合体粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合器に仕込み、撹拌して行う。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例における物性の測定方法は、以下のとおりである。
(1)湿式粉砕した離型剤の粒径分布湿式粉砕した離型剤の粒径分布はSALD−2000A(島津製作所製)により測定した。このSALD−2000Aによる測定は、媒体:スチレンモノマー、屈折率:1.60−0.10iの条件で行った。
(2)湿式粉砕した離型剤分散液の固形分濃度離型剤分散液を予め精秤したアルミ皿に採取した後、再度精秤して採取した離型剤分散液の重量(A)を求めた。続いて、ヒドロキノンを0.1%溶解したエチルアルコールを1cm3添加した後、150℃の乾燥機で30分間乾燥して、固形分とアルミ皿の重量を精秤し、固形分の重量(B)を求めた。固形分濃度は下記式により求めた。
固形分濃度=B/A×100
(3)トナーの粒径分布トナーの粒径分布はマルチサイザー(コールター社製)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度:10%、測定粒子個数:50000個の条件で行った。
(4)トナーの体積固有抵抗トナーの体積固有抵抗は、誘電体損測定器(商品名:TRS−10型、安藤電気社製)を用い、温度30℃、周波数1kHzの条件下で測定した。
(5)トナー帯電量100cm3のボールミルポットにキャリアTEFV−150/250、57gとトナー3gを投入して、30分間攪拌、混合した後、ブローオフ帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル製)を使用して、単位重量当たりの帯電量を測定した。
(6)トナーの定着温度、ホットオフセット温度市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターで、それぞれの温度での定着率を測定し、温度−定着率の関係を求め、定着率80%の温度を定着温度と定義した。定着率は、改造プリンターで印刷した試験用紙における黒ベタ領域のテープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID前、テープ剥離後の画像濃度をID後とすると、定着率(%)=(ID後/ID前)×100である。テープ剥離操作は、試験紙用の測定部分に粘着テープ(住友スリーエム社製スコッチメンディングテープ810−3−18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、McBeth社製反射式画像濃度測定機を用いて測定した。ホットオフセット温度は、それぞれの温度で印字した、印字物を目視にてオフセット発生の有無を確認した。
(7)画質の評価前述のプリンターで初期から連続印字を行い、印字濃度が反射濃度計(マクベス製)で1.3以上、非画像部のカブリが白色度計(日本電色製)で10%以下で1万枚以上継続できるトナーを(○)、5千枚以上継続できるトナーを(△)、5千枚以上継続できないトナーを(×)と評価した。
(8)流動性篩3種(目開き:150、75、45μm)をこの順に上から重ね、一番上の篩上に測定するトナーを4g精秤して乗せる。この3種の篩を粉体測定機(細川ミクロン社製)のREOSTATを用いて、振動強度4の条件で、15秒間振動した後、篩いに残ったトナーの重量を測定し、以下の式にいれて算出した。1サンプルにつき3回測定し、その平均値を流動性の指標とした。
算出式:A=(150μm篩に残ったトナー重量(g))/4g×100B=(75μm篩に残ったトナー重量(g))/4g×100×0.6C=(45μm篩に残ったトナー重量(g))/4g×100×0.2流動性(%)=100−(A+B+C)
(9)保存性トナーを容器に入れて、密閉した後、55℃の温度にした恒温水槽の中に沈め、一定時間経過した後、容器から静かにトナーを取り出し、42メッシュの篩いの上にできるだけ構造を破壊しないように移し、粉体測定機(細川ミクロン社製)のREOSTATを用いて、振動強度4.5の条件で、30秒間振動した後、篩い上に残ったトナーの重量を測定し、凝集トナーの重量とした。全トナーに対する凝集トナーの重量の割合(重量%)を算出した。1サンプルにつき3回測定し、その平均値を保存性の指標とした。
参考例不飽和ポリエステル(軟化点120℃、酸価8)100部をベンゼン500部に溶解し、撹拌機、内部加熱装置、蒸気コンデンサー及び液体−固体供給口を備えた容器に仕込み撹拌しながら60℃まで加温した。次に供給口から、ベンジリデンステアリルアミン、ベンゾイルクロライド及び四塩化スズを各0.1モルを添加し、約1時間反応させた。反応終了後、1000cm3のメタノール中に反応物を注ぎ込み凝固させた。得られた凝固物を真空乾燥機中で乾燥し、着色剤用分散剤を得た。
(実施例1)
スチレン90部、離型剤(ビスコール550P、低分子量ポリプロピレン、三洋化成製)10部及び重合禁止剤(t−ブチルカテコール)0.09部からなる離型剤混合液を、アペックスミルAM−60(コトブキ技研製:最下部ローターピンと容器底面と距離(L1)とローターピン径(d)との比率L1/dが0.16となる位置(L1=40mm)に最下部ローターピンを設け、且つ最上部ローターピンと容器天井面との距離(L2)と羽根径(d)との比率L2/dが0.25となる位置(L2=63mm)に最上部ローターピンを設け、さらに、容器底面にはタングステンカーバイトを主成分とする超硬合金製の弁体シート及び超硬合金製弁座シートを備えたコーンセパレータを設けた。密度6.0g/cm3、メディア径2.0mmのジルコニアビーズを0.048m3充填した。容器容量は0.060m3。回転数570rpmで回転させた。)に2700kg/hrの流量で供給して、離型剤の湿式粉砕を行い、離型剤が均一に分散されたスチレン単量体離型剤分散液を調製した。この分散液中の離型剤の粒径は、D50が3.2μm、D90が7.2μmであった。また、この分散液の固形分濃度は10.3%であった。
上記の離型剤分散液30部、スチレン56部、ブチルアクリレート17部、カーボンブラック(モナーク120、キャボット製)7部、参考例で得られた着色剤用分散剤1.5部、帯電制御剤(スピロンブラックTRH、保土ヶ谷化学製)1部、ジビニルベンゼン0.3部、及び重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,日本油脂製)4部を、攪拌、混合した後、メディア型分散機であるダイノーミルKD−60C型(シンマルエンタープライゼス社製)により、均一分散して、重合性単量体組成物を調製した。
別に、イオン交換水250部に塩化マグネシウム10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム6.2部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して水酸化マグネシウムコロイド分散液を調製した。
上記により得た、水酸化マグネシウムコロイド分散液に上記重合性単量体組成物を投入し、連続乳化分散機であるエバラマイルダーMDN310−OZF型(荏原製作所社製)を用いて3520rpmで2時間循環処理して、重合性単量体組成物の液滴(単量体組成物粒子)を造粒した。
上記により造粒した重合性単量体組成物水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、85℃で10時間攪拌して重合反応を行い、重合体粒子(トナー粒子)の水分散液を得た。
次に、上記により得た重合体粒子の水分散液を攪拌しながら、硫酸により系のpHを6以下として酸洗浄(25℃、3時間)を行い、ろ過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えリスラリー化して、水洗浄を行った。その後、再度ろ過、脱水、水洗浄を数回繰り返し行なって固形分をろ過分離した後、乾燥器(50℃)にて二昼夜乾燥を行い重合体粒子を得た。
次いで、乾燥を終えた重合体粒子100部に疎水化処理したシリカ微粒子0.5部と有機微粒子(コアがポリスチレン、シェルがポリメタクリレートのコアシェル構造の粒子)0.3部とをヘンシェルミキサーに入れ、攪拌して、重合体粒子にシリカ粒子及び有機微粒子を付着させて、トナーを得た。
トナーの粒径分布は、dvが7.5μm、dpが6.1μm、dv/dpが1.23であった。このトナーの体積固有抵抗値ρは11.6logΩcm、帯電量は−81μc/gであった。また、定着温度は160℃、ホットオフセットは220℃まで発生しなかった。流動性は65%、保存性は0.4%、画質は○であった。また、湿式粉砕機の総運転時間約2000時間の間、ほぼ同じ特性のトナーが得られた。
(実施例2)
最下部ローターピンと容器底面との間隔と比率をL1=60mm、L1/d=0.24にし、最上部ローターピンと容器天井面との間隔と比率をL2=159mm、L2/d=0.62にした他は実施例1と同様にしてトナーを得た。離型剤の粒径はD50が2.8μm、D90が6.4μmであり、離型剤の分散液の固形分濃度は10.1%であった。得られたトナーの粒径分布はdvが7.6μm、dpが6.3μm、dv/dpが1.21であった。トナーの体積固有抵抗値ρは11.6logΩcm、帯電量は−86μc/gであった。定着温度は160℃、ホットオフセットは220℃まで発生せず、流動性は67%、保存性は0.4%、画質も○であった。また、湿式粉砕機の総運転時間約2500時間の間、ほぼ同じ特性のトナーが得られた。
(実施例3)
実施例1で用いた離型剤ビスコール550pを、FT−100(シェル・MDS社製)に変えた他は実施例1と同様にしてトナーを得た。離型剤の粒径はD50が3.0μm、D90が6.6μmであり、離型剤の分散液の固形分濃度は10.0%であった。得られたトナーの粒径分布はdvが7.4μm、dpが5.9μm、dv/dpが1.25であった。トナーの体積固有抵抗値ρは11.5logΩcm、帯電量は−78μc/gであった。定着温度は150℃、ホットオフセットは210℃まで発生せず、流動性57%、保存性0.8%、画質も○であった。また、湿式粉砕機の総運転時間約2000時間の間、ほぼ同じ特性のトナーが得られた。
(実施例4)
スチレン90部、離型剤(ビスコール550P、低分子量ポリプロピレン、三洋化成製)10部、及び重合禁止剤(t−ブチルカテコール)0.09部を、アペックスミルAM−60(コトブキ技研製:最下部ローターピンは容器底面からの間隔と比率をL1=50mm、L1/d=0.20に、且つ最上部ローターピンは容器天井面からの間隔と比率をL2=159mm、L2/d=0.62に設定し、さらに、容器底面には超硬合金製の弁体シート及び超硬合金製弁座シートを備えたコーンセパレータを設けた。密度6.0g/cm3、メディア径2.0mmのジルコニアビーズを0.048m3充填し、容量0.060m3。回転数570rpmに設定した。)に2700kg/hrの流量で供給して、離型剤の湿式粉砕を行い、離型剤が均一に分散されたスチレン単量体離型剤分散液を調製した。この分散液中の離型剤の粒径は、D50が3.3μm、D90が7.0μmであった。また、この分散液の固形分濃度は10.1%であった。
上記の離型剤分散液30部、スチレン51部、ブチルアクリレート22部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、AA6、Tg=94℃)0.5部、カーボンブラック(モナーク120、キャボット製)7部、着色剤用分散剤1.5部、帯電制御剤(スピロンブラックTRH、保土ヶ谷化学製)1部、ジビニルベンゼン0.3部、及び重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,日本油脂製)4部を、撹拌、混合した後、メディア型分散機であるダイノーミルKD−60C型(シンマルエンタープライゼス社製)により、均一分散して、コア用重合性単量体組成物を調製した。
一方、メチルメタクリレート1部と水10部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用単量体の水分散液を調製した。
別に、イオン交換水250部に塩化マグネシウム10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム6.2部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して水酸化マグネシウムコロイド分散液を調製した。
上記により得た、水酸化マグネシウムコロイド分散液に上記コア用重合性単量体組成物を投入し、連続乳化分散機であるエバラマイルダーMDN310−OZF型(荏原製作所社製)を用いて3520rpmで2時間循環処理して、重合性単量体組成物の液滴(単量体組成物粒子)を造粒した。
この造粒したコア用単量体組成物の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、85℃で重合反応を開始させ、重合転化率98%に達したときに、前記シェル用単量体及び1%過硫酸カリウム水溶液1部を添加し、3時間反応を継続した後、反応を停止し、コアシェル型重合体粒子の水分散液を得た。
次に、上記により得た重合体の水分散液を攪拌しながら、硫酸により系のpHを6以下として酸洗浄(25℃、3時間)を行い、ろ過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えリスラリー化して、水洗浄を行った。その後、再度ろ過、脱水、水洗浄を数回繰り返し行なって固形分をろ過分離した後、乾燥器(50℃)にて一昼夜乾燥を行い重合体粒子を得た。
次いで、乾燥を終えた重合体粒子100部に疎水化処理したシリカ微粒子0.5部と有機微粒子(コアがポリスチレン、シェルがポリメタクリレートのコアシェル構造の粒子)0.3部とをヘンシェルミキサーに入れ、攪拌して、重合体粒子にシリカ粒子及び有機微粒子を付着させて、トナーを得た。
トナーの粒径分布は、dvが7.5μm、dpが6.0μm、dv/dpが1.25であった。このトナーの体積固有抵抗値ρは11.3logΩcm、帯電量は−75μc/gであった。また、定着温度は140℃、ホットオフセットは200℃まで発生しなかった。流動性は65%、保存性は0.6%、画質は○であった。また、湿式粉砕機の総運転時間2000時間の間、ほぼ同じ特性のトナーが得られた。
(比較例1)
最下部ローターピンと容器底面との間隔と比率をL1=30mm、L1/d=0.12に、最上部ローターピンと容器天井面との間隔と比率をL2=50mm、L2/d=0.20にした他は実施例1と同様にしてトナーを得た。離型剤の粒径はD50が3.4μm、D90が7.1μmであり、離型剤の分散液の固形分濃度は10.2%であった。得られたトナーの粒径分布はdvが7.8μm、dpが5.2μm、dv/dpが1.50であった。トナーの体積固有抵抗値ρは11.2logΩcm、帯電量は−62μc/gであった。定着温度は170℃、ホットオフセットは200℃まで発生しなかったが、流動性は48%で、保存性2.3で、画質が△であった。さらに、湿式粉砕機の総運転時間1000時間後は、トナー特性にばらつきが見られるようになった。