JP3702987B2 - 重合法トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合法トナー及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電潜像を現像するための重合法トナー及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置において形成される静電潜像は、先ず、トナーにより現像され、次いで、形成されたトナー像は、必要に応じて紙等の転写材上に転写された後、加熱、加圧、溶剤蒸気など種々の方式により定着される。
画像形成装置によって形成される画像は、年々、その精細さが向上してきている。該装置に用いるトナーは、従来、着色剤などを含有する樹脂を溶融し、粉砕し、分級して得る粉砕法トナーが主流であったが、粒径コントロールが容易で、分級などの煩雑な製造工程を経ない重合法トナーが注目されるようになってきている。
【0003】
ところで、電子写真装置においては、消費電力の低減化とともに高速複写あるいは高速印刷が要求されている。電子写真方式の中で、特にエネルギーを消費する工程は、感光体から紙などの転写材上にトナーを転写した後、定着する工程、いわゆる定着工程である。一般に、定着のために150℃以上の熱ロールが使用され、そのエネルギー源として電力が使用される。この熱ロール温度を下げることが、省エネルギーの観点より求められている。また、低温度で定着が可能であれば、高速印刷等に対応できる。そのためには、トナーの定着温度を下げることが必要である。
トナーの設計において、複写機よりの要求に応えるには、トナーのガラス転移温度を低下させればよいが、ガラス転移温度を低下させると、トナーの保存中、あるいはトナーボックス中でブロッキングを起こして、凝集体となり、いわゆる保存性の悪いトナーとなってしまう。
【0004】
一方、電子写真方式によるカラー複写やカラー印刷が鮮明にできることが要求されている。特に、各種会議でのプレゼンテーション用OHPシート等にカラー画像を使用する場合が多くなっているので、OHP透過性に優れていることが要求されるようになっている。OHP透過性を満足するには、OHPシート上で、均一にトナーが溶融していることが必須の条件であり、そのためには、トナーの定着温度付近での溶融粘度を従来のものに比べて低く設計することが必要である。トナーの溶融粘度を低くする手法としては、従来のトナー用結着樹脂に比べて、分子量を低くしたり、ガラス転移温度を下げる等の手法があるが、いずれの手法を採る場合でも、ブロッキングを起こし易く、保存性の悪いトナーとなってしまう。
【0005】
例えば、界面活性剤及び燐酸カルシウムの存在下にマクロモノマー及び重合性単量体を懸濁重合してなる均質な重合法トナーが提案されている(特開平3−136065号公報)。このトナーでは、マクロモノマーが重合体分子鎖の単量体単位として組み込まれ、マクロモノマーの分子鎖によって多数の分枝を生じ、その分枝の絡み合い、いわゆる物理的架橋により、見かけ上、高分子量の重合体になったものと同じように耐オフセット性の改善がされ、また、マクロモノマーによる架橋はジビニルベンゼンなどの架橋性モノマーを用いた化学的架橋とは異なり緩い架橋構造であるから架橋構造は崩れやすく定着性が改善されるというものである。しかし、この重合法トナーにおいては、トナー同士の凝集が生じ、保存性が十分に満足できるものでなかった。また、高温高湿環境においてトナー帯電量が著しく低下する。
【0006】
このように、トナーの定着温度の低下やOHP透過性を向上させるための従来の手法(均質な重合体からなるトナー)では保存性を低下させるという、逆相関関係が生じてしまう。この逆相関関係を解決する手法として、トナー粒子をガラス転移温度の高いポリマーで被覆し、保存性を解決するいわゆるカプセル型トナーが提案されている。
【0007】
カプセル型トナーの製造法として、例えば、特開昭57−45558号公報には、重合によって形成された核体粒子を、1〜40重量%のラテックス水溶液中に混合分散し、次いで、水溶性無機塩を加え、核体粒子表面に乳化重合により得られた微小粒子による被覆層を形成する静電荷像現像用トナーの製造方法が提案されている。しかし、この方法は、微小粒子上に残存する界面活性剤や無機塩の影響により、帯電特性の環境依存性が大きく、特に高温高湿環境においてトナー帯電量が低下する。
【0008】
特開昭61−118758号公報、特開昭59−61843号公報などには、ビニル系単量体とアゾビス系重合開始剤と着色剤とを含有する組成物を懸濁重合して芯粒子を得、この芯粒子の存在下に芯粒子を形成したビニル系単量体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有し、親水性のビニル系単量体を過酸化ベンゾイルなどの油溶性重合開始剤を用いて重合して殻を形成し、芯粒子を成長させる方法が開示されている。この方法では芯粒子に殻を形成するためのビニル系単量体が吸収されて、芯粒子の内部で殻を形成するためのビニル系単量体が重合して、明確なコアシェル構造を生じ難いことが多く、トナーの保存性を十分に改善するものでなかった。また、コアシェル構造を明確にして保存性を改善するためにはシェルの厚みを大きくしなければならなかった。
【0009】
また、米国特許4077804には、ビニル系単量体と重合開始剤と着色剤とを含有する組成物を懸濁重合して芯粒子を得、この芯粒子の存在下に芯粒子を形成したビニル系単量体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有し、親水性のビニル系単量体を過硫酸カリウムなどの水溶性重合開始剤を用いて重合して殻を形成し、芯粒子を成長させる方法が開示されている。この方法で得られるトナーも、高湿度の環境下での帯電量が高くならないために、かぶりの発生または印字濃度の低下を招いた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低い定着温度と良好なOHP透過性を有し、保存性に優れ、且つ高湿度下での帯電量の低下の少ない重合法トナーを提供することにある。
本発明者らは、前記カプセルトナーの問題点を克服するために鋭意研究した結果、着色剤を含有するコア粒子の存在下に、コア粒子を形成する重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を形成し得るシェル用単量体を特定の重合開始剤を用いて懸濁重合してなる重合体粒子を含有する重合法トナーを用いることによって、上記目的を達成できることを見いだし、この知見によって、本発明を完成するに到った。
【0011】
【課題を解決しようとする課題】
かくして、本発明によれば、(1)着色剤を含有するコア粒子の存在下に、前記コア粒子を形成する重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を形成し得るシェル用単量体の懸濁重合を、下式(1)で示される重合開始剤で、開始してシェル層を形成して成る重合体粒子を含有することを特徴とする重合法トナーが提供される。
【0012】
【化2】
【0013】
但し、式(1)において、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、NR基(Rは水素原子、アルキル基またはアリール基);R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は少なくとも1個のOR基、OH基、NHR基もしくはNR2基(Rはアルキル基又はアリール基)が置換したアルキル基もしくはアリール基、n及びmは1〜10の整数である。
【0014】
本発明の好適な態様として以下の重合法トナーが提供される。
(2) コア粒子が、ガラス転移温度70℃以下の重合体を得ることができるコア用単量体及びマクロモノマーを懸濁重合してなるものである前記(1)の重合法トナー。
(3) コア粒子がコア用単量体、マクロモノマー及び架橋性モノマーを懸濁重合してなるものである前記(1)又は(2)の重合法トナー。
(4) 懸濁重合を難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤の存在下に行う前記(1)〜(3)のいずれかの重合法トナーが提供される。
(5) 分散剤が難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有するものであり、その個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下である前記(4)の重合法トナー。
【0015】
(6) 分散剤が水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上にして得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有するものである前記(4)または(5)の重合法トナー。
(7) 分散剤が水溶性多価金属化合物とアルカリ金属水酸化物とを水相中で反応して得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有するものである前記(4)〜(6)のいずれかの重合法トナー。
【0016】
(8) コア用単量体がスチレン系単量体、およびアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体からなる群より選択されるものである前記(2)〜(7)のいずれかの重合法トナー。
(9) コア用単量体がスチレン、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択されるものである前記(2)〜(7)のいずれかの重合法トナー。
【0017】
(10) マクロモノマーがアクリロイル基またはメタクリロイル基を分子鎖末端に有するものである前記(2)〜(9)のいずれかの重合法トナー。
(11) マクロモノマーがメタクリル酸エステルもしくはアクリル酸エステルの単独重合体または共重合体から選択されるものである前記(2)〜(9)のいずれかの重合法トナー。
【0018】
(12) シェル用単量体をコア粒子よりも小さい数平均粒子径を有する液滴の水懸濁液にした後、懸濁重合する前記(1)〜(11)のいずれかの重合法トナー。
(13) シェル用単量体が20℃の水に対する溶解度0.1重量%以上の単量体である前記(1)〜(12)のいずれかの重合法トナー。
【0019】
(14) 20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満のシェル用単量体と有機溶媒とを反応系に添加して懸濁重合する前記(1)〜(12)のいずれかの重合法トナー。
(15) 帯電制御剤の存在下にシェル用単量体を懸濁重合してなる前記(1)〜(14)のいずれかの重合法トナー。
【0020】
(16) コア粒子が、コア用単量体、マクロモノマー、及び必要に応じて共重合させる架橋性モノマーを油溶性ラジカル開始剤で懸濁重合してなるものである前記(1)〜(15)の重合法トナー。
【0021】
(17) 油溶性ラジカル開始剤が10時間半減期の温度が60〜80℃で、且つ分子量が250以下の有機過酸化物である前記(16)の重合法トナー。
(18) コア粒子が、コア用単量体、マクロモノマー、及び必要に応じて共重合させる架橋性モノマーを、着色剤の存在下に懸濁重合してなるものである前記(1)〜(17)のいずれかの重合法トナー。
【0022】
(19) 式(1)で表される重合開始剤が、X1及びX3が酸素原子で、X2及びX4が>NR基(Rは水素原子、アルキル基またはアリル基)であり;R1、R2、R4及びR5はメチル基であり;R3及びR6はそれぞれ独立に少なくとも1個のOH基が置換したアルキル基、n及びmが1〜3である前記(1)〜(18)のいずれかの重合法トナー。
(20) 式(1)で表される重合開始剤が、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}又は2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]から選択される少なくとも1種の化合物である前記(1)〜(18)のいずれかの重合法トナー。
【0023】
また、本発明によれば、(21)静電潜像が記録された感光体表面に前記(1)〜(20)のトナーを付着させて可視像にし、該可視像を転写材に転写することを特徴とする画像形成方法が提供され、
また(22)感光体、感光体の表面を帯電する手段、感光体の表面に静電潜像を記録する手段、前記(1)〜(20)のいずれかのトナーを収容する手段、該トナーを供給し感光体表面の静電潜像を現像してトナー像を形成する手段及び該トナー像を感光体表面から転写材に転写する手段とを有する画像形成装置が提供される。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の重合法トナーは、着色剤を含有するコア粒子の存在下に、前記コア粒子を形成する重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を形成し得るシェル用単量体を式(1)で表される重合開始剤を用いて懸濁重合して成る重合体粒子を含有するものである。
【0025】
本発明のトナーに用いる、コア粒子は着色剤を含有する重合体の粒子である。
本発明に用いるコア粒子は、通常、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体などの重合体、好適には(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体からなる粒子で構成されている。
コア粒子を形成する重合体の粒子は、その製法によって特に限定されないが、通常、コア用単量体を重合して得る。
【0026】
コア用単量体は、通常、ガラス転移温度80℃以下、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃の重合体を形成し得るものである。ここで単量体は1種または2種以上を組み合わせてたものを意味する。コア用単量体からなる重合体のTgが80℃を超える場合には、定着温度が高くなり、OHP透過性が低下し、高速印刷に適しない傾向になる。
【0027】
重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用する単量体の種類と使用割合に応じて算出される計算値(計算Tgという)である。使用する単量体が1種類の場合には、該単量体から形成されるホモポリマーのTgを本発明における重合体のTgと定義する。例えば、ポリスチレンのTgは100℃であるから、単量体としてスチレンを単独で使用する場合には、該単量体は、Tgが100℃の重合体を形成するという。使用する単量体が2種類以上であって、生成する重合体がコポリマーの場合には、使用する単量体の種類と使用割合に応じて、コポリマーのTgを算出する。例えば、単量体として、スチレン78重量%とn−ブチルアクリレート22重量%を用いる場合には、この単量体比で生成するスチレン−n−ブチルアクリレート共重合体のTgは50℃であるから、この単量体はTgが50℃の重合体を形成するという。
【0028】
また、「ガラス転移温度80℃以下の重合体を形成し得る単量体」との規定は、単量体を組成する全ての単量体のそれぞれがTg80℃以下の重合体を形成するものでなければならないことを意味するものではない。単量体として1種類の単量体を使用する場合には、該単量体から形成されるホモポリマーのTgは80℃以下でなければならない。しかし、単量体として2種類以上の単量体の混合物を用いる場合には、該単量体の混合物から形成されるコポリマーのTgが80℃以下であればよく、該単量体の混合物の中に、それ単独の重合体のTgが80℃を越えるものが含まれていてもよい。例えば、スチレンのホモポリマーのTgは100℃であるが、低Tgの重合体を形成する単量体(例えば、n−ブチルアクリレート)と混合して用いることにより、Tgが80℃以下のコポリマーを形成することができる場合には、スチレンを単量体の一種として使用することができる。
【0029】
本発明では、コア用単量体として、通常、ビニル系単量体を使用する。そして、これらのビニル系単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することにより、重合体のTgを所望の範囲に調整する。
【0030】
本発明で用いられるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物;等が挙げられる。これらのビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数のビニル系単量体を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、コア用単量体としては、スチレン系単量体またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体が、好適に用いられる。
【0031】
これらのビニル系単量体からなるコア用単量体とともに、任意の架橋性モノマーを保存性改善のために用いることが好ましい。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明では、架橋性モノマーを、コア用単量体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
【0032】
本発明で用いるコア粒子を得るために、前記コア用単量体にさらにマクロモノマーを共重合すると保存性と定着性とのバランスが良好となるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が小さいものを用いると、重合体粒子の表面部分が柔らかくなり、保存性が低下するようになる。逆に数平均分子量が大きいものを用いると、マクロモノマーの溶融性が悪くなり、定着性及び保存性が低下するようになる。
マクロモノマー分子鎖の末端に有するビニル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、共重合のしやすさの観点からメタクリロイル基が好適である。
【0033】
本発明に用いるマクロモノマーは、前記コア用単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有するものが好適である。
【0034】
コア用単量体を重合して得られる重合体とマクロモノマーとの間のTgの高低は、相対的なものである。例えば、コア用単量体がTg=70℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、Tgが70℃を越えるものであればよい。コア用単量体がTg=20℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、例えば、Tg=60℃のものであってもよい。なお、マクロモノマーのTgは、通常のDSC等の測定機器で測定される値である。
【0035】
本発明に用いるマクロモノマーの具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体、ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマー、特開平3−203746号公報の第4頁〜第7頁に開示されているものなどを挙げることができる。
これらマクロモノマーのうち、親水性のもの、特にメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独でまたはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が、本発明に好適である。
【0036】
マクロモノマーの量は、コア用単量体に対して、通常、0.01〜10重量%、好適には0.03〜5重量%、さらに好適には0.05〜1重量%である。マクロモノマーの量が少ないと、保存性と定着性とのバランスが向上しない。マクロモノマーの量が多くなると定着性が低下するようになる。
【0037】
前記コア用単量体及び必要に応じて用いるマクロモノマー又は/及び架橋性モノマーを重合する方法としては、乳化重合、懸濁重合、析出重合などが挙げられ、好適には懸濁重合法が挙げられる。
【0038】
懸濁重合は、通常、分散剤を含有する水系分散媒体中にて行う。具体的にはビニル系単量体及び、必要に応じて選択されるマクロモノマー及び架橋性モノマー、着色剤、ラジカル重合開始剤、その他の添加剤を混合し、ボールミル等により均一に分散させて混合液(以下、原料液ということがある。)を調製し、次いで、この原料液を分散剤を含有する水系分散媒体中に投入し、高剪断力を有する混合装置を用いて分散して微小な液滴に造粒した後、通常、30〜200℃の温度で懸濁重合する。
【0039】
本発明で好適に用いられる分散剤は、難水溶性金属化合物のコロイドを含有するものである。難水溶性金属化合物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等を挙げることができる。これらのうち、難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。
【0040】
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物とアルカリ金属水酸化物との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸物のコロイドを用いることが好ましい。
【0041】
本発明に用いる難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると懸濁重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する
【0042】
分散剤は、コア用単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用する。この割合が0.1重量部より少ないと、充分な重合安定性を得ることが困難であり、重合凝集物が生成し易くなり、逆に、20重量部を超えると、水系分散媒体中の粘度が大きくなって、トナーの粒径分布が広くなるため、いずれにおいても好ましくない。
【0043】
本発明においては、必要に応じて、水溶性高分子を含有する分散剤を用いることができる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等を例示することができる。本発明においては、界面活性剤を使用する必要はないが、帯電特性の環境依存性が大きくならない範囲で懸濁重合を安定に行うために使用することができる。
【0044】
コア粒子を得るために用いるラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス−2−メチル−N−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。これらのうち、油溶性ラジカル開始剤、特に、10時間半減期の温度が60〜80℃、好ましくは65〜80℃で、且つ 分子量が250以下の有機過酸化物から選択される油溶性ラジカル開始剤、特にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが印字時の臭気が少ないこと、臭気などの揮発成分による環境破壊が少ないことから好適である。
コア粒子を得るために用いる重合開始剤の量は、水系媒体基準で通常、0.001〜3重量%である。0.001重量%未満では、重合速度が遅く、3重量%以上では、分子量が低くなるので好ましくない。
【0045】
コア粒子に含有させる着色剤としてはカーボンブラック、チタンホワイト、ニグロシンベース、アニリンブルー、カルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、オリエントオイルレッド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオクサレート等の染顔料類;コバルト、ニッケル、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;などを挙げることができる。
【0046】
磁性カラートナー用着色剤としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等が、顔料として黄鉛、カドミウムイエロ、ミネラルファーストイエロ、ネーブルイエロ、ネフトールイエロS、ハンザイエロG、パーマネントイエロNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエログリーンG等が挙げられる。
【0047】
フルカラートナー用マゼンタ着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207及び209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29及び35等が、マゼンタ染料としては、C.I.スルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109及び121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21及び27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39及び40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27及び28などの塩基性染料等が挙げられる。
【0048】
フルカラートナー用シアン着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16及び17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45及びフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0049】
フルカラートナー用イエロ着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロ1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83及び138、C.I.バットイエロ1、3喫び20等が挙げられる。
これら染顔料類は、コア粒子を構成する重合体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。磁性粒子は、コア粒子を構成する重合体100重量部に対して、通常、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部の割合で用いられる。
【0050】
本発明においては、更に必要に応じて、分子量調整剤、離型剤等の各種添加剤を単量体と混合して分散媒体中に添加することができる。
【0051】
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0052】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィン類;パラフィンワックス類;などを挙げることができる。離型剤は、単量体100重量部に対して、通常、0.1〜40重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で使用される。
【0053】
さらに、着色剤のコア粒子中への均一分散等を目的として、オレイン酸、ステアリン酸等の滑剤;シラン系またはチタン系カップリング剤等の分散助剤;などを使用してもよい。このような滑剤や分散剤は、着色剤の重量を基準として、通常、1/1000〜1/1程度の割合で使用される。
本発明において用いるコア粒子を得るための懸濁重合は、重合転化率を、通常、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上とする。80%未満の場合には、コア用単量体が多量に残存しているので、シェル用単量体を添加して重合しても、シェル用単量体とコア用単量体との共重合体がコア粒子の表面を被覆することになるので、コアとシェルとのTg差が小さくなり重合法トナーの保存性が低下しやすくなる。
【0054】
コア粒子の製造に際しては、トナーに均一に樹脂特性を反映させるため、以下の方法を採用することが特に好ましい。
コア用単量体に、着色剤、必要に応じて油溶性重合開始剤以外の添加剤(例えば、帯電制御剤)を添加して撹拌混合し、各成分が均一に分散ないしは溶解した油溶性重合開始剤を含まない重合性単量体組成物(以下、開始剤不含単量体組成物という)を調製し、当該組成物を分散剤を含有している水系分散媒対中に投入後、撹拌しながら油溶性重合開始剤を添加する。この工程で、開始剤不含単量体組成物の液滴と油溶性重合開始剤の液滴が接触し、両者が合一して、油溶性重合開始剤を含有する重合性単量体組成物の液滴が形成される。
油溶性重合開始剤を水系分散媒体中に添加する時期は、開始剤不含単量体組成物の投入後であって、かつ、重合性単量体組成物の造粒工程の途中でなければならない。開始剤不含単量体組成物を水系分散媒体中で所望の粒径の微細な液滴粒子にまで造粒した後に、油溶性重合開始剤を添加すると、当該油溶性重合開始剤の液滴粒子への均一な混合が困難となる。
油溶性重合開始剤を添加する時期は、目的とするトナー粒子により異なるが、開始剤不含単量体組成物の投入後、撹拌により形成される開始剤不含単量体組成物の一次液滴の粒径(体積平均粒径)が、通常50〜1000μm、好ましくは100〜500μmとなった時点である。また、開始剤不含単量体組成物の投入から油溶性重合開始剤の添加までの時間が長いと、造粒が完了してしまい、開始剤不含単量体組成物と油溶性重合開始剤とが均一に混合せず、重合トナー粒子ごとの重合度や架橋度等の樹脂特性を均一にすることが困難となる。このため油溶性重合開始剤の添加時期は、反応スケールや粒径により多少差異はあるものの、一般的には開始剤不含単量体組成物の投入後、プラント等の大スケールでは、通常24時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは3時間以内であり、実験室レベルの小スケールでは、通常5時間以内、好ましくは3時間以内、より好ましくは1時間以内である。
【0055】
油溶性重合開始剤の添加時からその後の造粒工程(即ち重合開始前)での水系分散媒体の温度は、通常10〜40℃、好ましくは20〜30℃の範囲内に調整する。この温度が高すぎると系内で部分的に重合反応が開始してしまう。逆にこの温度が低すぎると撹拌により造粒する場合、系の流動性が低下して、造粒に支障を来すおそれが生じる。
開始剤不含単量体組成物の液滴と油溶性重合開始剤の液滴を接触させて、油溶性重合開始剤を含有する重合性単量体組成物の液滴を形成させた後、さらに撹拌を継続して、所望の粒径の二次液滴粒子を造粒し、しかる後、懸濁重合する。造粒工程での二次液滴粒子の粒径は、その後の懸濁重合によって、通常1〜50μm、好ましくは5〜30μm程度の体積平均粒径の重合トナーが精製する程度にまで微細化する。造粒時間は、重合性単量体、添加剤、重合開始剤等の種類と添加量、造粒温度、造粒機の種類、所望の粒径などにあわせて、任意に設定することができる。前記重合性単量体の重合転化率が90%を超えた後、シェル用単量体等を添加して後述するシェル層を形成するための重合を行う。
【0056】
本発明において重合体粒子は、前記コア粒子の存在下にシェル用単量体を懸濁重合して得る。
本発明においてシェル用単量体を懸濁重合するために用いる重合開始剤は式(1)で表されるものである。
式(1)で表される重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン) ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン] ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン] ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)−プロピオンアミジン] ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン] ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン] ジヒドロクロライドのごときアゾアミジン化合物(その塩を含む);2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]のごとき環状アゾアミジン化合物;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドレイトのごときアゾアミン化合物などを挙げることができる。これら重合開始剤のうち、アゾアミン化合物(式(1)中、X1及びX3が酸素原子で、X2及びX4がNR2基もしくはNHR基(Rはアルキル基)であり;R1、R2、R4及びR5はメチル基であり;R3及びR6はそれぞれ独立に少なくとも1個のOH基が置換したアルキル基、n及びmが1〜3であるもの)が高湿度下でのトナーの帯電量を大きくするために好ましく、特に2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}又は2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]が好適である。
これら式(1)で表される重合開始剤の量は、水系媒体基準で、通常、0.001〜2重量%である。
【0057】
本発明において用いるシェル用単量体は、前記コア用単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を得るものである。シェル用単量体とコア用単量体により得られる重合体のTgは相対的なものである。
シェル用単量体を組成する単量体として、スチレン、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が70℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができ、またコア用単量体により得られる重合体のガラス転移温度が70℃よりもはるかに低い場合にはシェル用単量体は70℃以下の重合体を形成するものであってもよい。シェル用単量体からなる重合体のガラス転移温度が少なくともコア用単量体からなる重合体のガラス転移温度よりも高くなるように設定する必要がある。シェル用単量体により得られる重合体のガラス転移温度は、重合法トナーの保存安定性を向上させるために、通常、50℃以上120℃以下、好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは80℃以上105℃以下である。シェル用単量体からなる重合体のガラス転移温度が極端に低すぎると、そのガラス転移温度がコア用単量体からなる重合体のガラス転移温度より高いものであっても保存性が低下することがある。
コア用単量体からなる重合体とシェル用単量体からなる重合体との間のガラス転移温度の差は、通常、10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上である。
【0058】
シェル用単量体は、コア粒子の存在下に懸濁重合する際に、コア粒子の数平均粒子径よりも小さい液滴とすることが好ましい。シェル用単量体の液滴の粒径が大きくなると、保存性が低下傾向になる。
シェル用単量体を小さな液滴とするには、シェル用単量体と水系分散媒体との混合物を、例えば、超音波乳化機などを用いて、微分散処理を行う。得られた水分散液をコア粒子の存在する反応系へ添加することが好ましい。
【0059】
シェル用単量体を組成する単量体は、20℃の水に対する溶解度により特に限定されないが、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の単量体を用いた場合には、水に対する溶解度の高い単量体はコア粒子に速やかに移行しやすくなるので、保存性のよい重合体粒子を得やすい。
一方、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を用いた場合では、コア粒子への移行が遅くなるので、前述のごとく、単量体を微小な液滴にして重合することが好ましい。また、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を用いた場合でも、20℃の水に対する溶解度が5重量%以上の有機溶媒を反応系に加えることによりシェル用単量体がコア粒子にすばやく移行するようになり、保存性のよい重合体粒子が得やすくなる。
【0060】
シェル用単量体を組成する単量体のうち、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体としては、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の単量体としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;4−ビニルピリジン等の含窒素ビニル化合物;酢酸ビニル、アクロレインなどが挙げられる。
【0061】
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を用いた場合に好適に使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル;ジメチルホルムアルデヒド等のアミドなどを挙げることができる。有機溶媒は、分散媒体(水と有機溶媒との合計量)に対するシェル用単量体の溶解度が0.1重量%以上となる量を添加する。具体的な有機溶媒の量は有機溶媒、シェル用単量体の種類及び量により異なるが、水系分散媒体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.1〜30重量部である。有機溶媒とシェル用単量体とを反応系に添加する順序は特に限定されないが、コア粒子へのシェル用単量体の移行を促進し保存性のよい重合体粒子を得やすくするために、有機溶媒を先に添加し、その後シェル用単量体を添加するのが好ましい。
【0062】
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体と0.1重量%以上の単量体とを併用する場合には、先ず20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の単量体を添加し重合し、次いで有機溶媒を添加し、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を添加し重合することが好ましい。この添加方法によれば、重合法トナーの定着温度を調整するためにコア粒子の存在下に重合する単量体から得られる重合体のTgや、単量体の添加量を適宜制御することができる。
【0063】
シェル用単量体には、帯電制御剤を含有させることが好ましい。
帯電制御剤は、トナーの帯電性を向上させるために、使用される。帯電制御剤としては、各種の正帯電または負帯電の帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤の具体例としては、ニグロシンN01(オリエント化学社製)、ニグロシンEX(オリエント化学社製)、スピロブラックTRH(保土ヶ谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)、ボントロンE−84(オリエント化学社製)等を挙げることができる。帯電制御剤は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0064】
シェル用単量体をコア粒子の存在下に懸濁重合する具体的な方法としては、前記コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用単量体を添加して継続的に重合する方法、又は別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用単量体を添加して断続的に重合する方法などを挙げることができる。
シェル用単量体は反応系中に一括して添加するか、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加することができる。
【0065】
本発明の重合法トナーにおいて、シェル用単量体を添加する際に、式(1)で表される重合開始剤を添加することがコアシェル型の重合体粒子を得やすくするために好ましい。シェル用単量体の添加の際に式(1)で表される重合開始剤を添加すると、シェル用単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に式(1)で表される重合開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなるからであると考えられる。
【0066】
本発明の重合法トナーにおいて、コア用単量体とシェル用単量体との重量比率は、通常、40/60〜99.9/0.1である。
シェル用単量体の割合が過小であると、保存性改善効果が小さく、逆に、過大であると、定着温度の低減やOHP透過性の改善効果が小さくなる。
【0067】
本発明の重合法トナーは、前記の重合体粒子の表面に外添剤が付着されていてもよい。外添剤としては、無機粒子、有機粒子、好ましくはシリカ粒子、酸化チタン粒子、特に好ましくは疎水化処理されたシリカ粒子が挙げられる。外添剤を前記重合体粒子に付着させるには、通常、外添剤と前記重合体粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合器に仕込み、撹拌して行う。
【0068】
本発明の重合法トナーとして好適なものは、コア粒子、及びシェル用単量体を重合して得られるシェル重合体とからなり、通常、シェル重合体がコア粒子を被覆している構造の重合体粒子を含有するものである。
【0069】
本発明の重合法トナーにおいて、コア粒子の体積平均粒径は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。コア粒子が大きすぎると、画像の解像度が低下するようになる。また、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は、通常、1.7以下、好ましくは1.5以下である。
【0070】
本発明の重合法トナーにおいて、シェルは、その平均厚みが、0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μmである。
厚みが厚くなると定着性が低下し、薄くなると保存性が低下する。
なお、重合法トナーのコア粒子径、及びシェルの厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさ及びシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子を形成した段階で電子顕微鏡で前記と同様に測定するかあるいはコールターカウンターで測定し、次にシェルをコア粒子に被覆した後、もう一度粒子の大きさを電子顕微鏡またはコールターカウンターで測定し、シェルを被覆する前後の粒径変化から平均厚みを求めることができ、更に上記方法が困難である場合はコア粒子の粒径及びシェルを形成する単量体の量から推定することができる。
【0071】
本発明の重合法トナーは、そのトルエン不溶解分が、通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
トルエン不溶解分が多くなると定着性が低下する傾向になる。なお、トルエン不溶解分とは、重合法トナーを形成する重合体を加圧成型し、80メッシュの金網篭に入れ、24時間室温下でトルエンに浸漬した後、篭に残存する固形物を乾燥させ、重量を測定し、重合体に対する重量%で表したものである。
【0072】
本発明の重合法トナーは、その長径rlと短径rsとの比(rl/rs)が、通常、1〜1.2、好ましくは1〜1.1のものである。この比が大きくなると、画像の解像度が低下し、また、画像形成装置のトナー収納部に該トナーを納めたときにトナー同志の摩擦が大きくなるので外添剤が剥離したりして、耐久性が低下する傾向になる。
【0073】
本発明の重合法トナーを用いると、定着温度を80〜180℃、好ましくは100〜150℃の低い温度に低減することができ、しかも保存中に凝集せず、保存性に優れている。また、高温高湿度下におけるトナーの帯電量が低下せず、かぶりの発生、印字濃度の低下が防止される。
【0074】
本発明の画像形成装置は、感光体、感光体の表面を帯電する手段、感光体の表面に静電潜像を形成する手段、前記重合法トナーを収容する手段、該重合法トナーを供給し感光体表面の静電潜像を現像してトナー像を形成する手段及び該トナー像を感光体表面から転写材に転写する手段とを有するものである。
【0075】
本発明の画像形成装置を図面に示す実施態様に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置には、感光体としての感光ドラム1が矢印A方向に回転自在に装着してある。感光ドラム1は導電性支持ドラム体の外周面に光導電層を設けたものである。光導電層は、たとえば、有機系感光体、セレン感光体、酸化亜鉛感光体、アモルファスシリコン感光体などで構成される。
【0076】
感光ドラム1の周囲には、その周方向に沿って、帯電手段としての帯電ロール3、潜像形成手段としてのレーザー光照射装置4、現像手段としての現像ロール8、転写手段としての転写ロール6及びクリーニング装置2が配置されている。
【0077】
帯電ロールは感光ドラムの表面をプラスまたはマイナスに一様に帯電するためのものであり、帯電ロールに電圧を印加し且つ帯電ロールを感光ドラムに接触させることにより、感光ドラムの表面を帯電させている。帯電ロール3はコロナ放電による帯電手段に置き換えることも可能である。
【0078】
レーザー光照射装置4は、画像信号に対応した光を感光ドラムの表面に照射し、一様に帯電された感光ドラムの表面に所定のパターンで、光を照射して、光が照射された部分に静電潜像を形成する(反転現像の場合)、または光が照射されない部分に静電潜像を形成する(正規現像の場合)ためのものである。その他の潜像形成手段としては、LEDアレイと光学系とから構成されるものが挙げられる。
【0079】
現像ロールは感光ドラム1の静電潜像にトナーを付着させるためのものであり、反転現像においては光照射部にのみトナーを付着させ、正規現像においては、光非照射部にのみトナーを付着させるように、現像ロールと感光ドラムとの間にバイアス電圧が印加される。
【0080】
現像ロールの隣には、トナー10が収容されるケーシング11内に、現像ロール8と供給ロール12とが設けられている。
現像ロールは感光ドラムに一部接触するように近接して配置され、感光ドラムと反対方向Bに回転するようになっている。供給ロール12は現像ロールに接触して現像ロールと同じ方向Cに回転し、現像ロールの外周にトナーを供給するようになっている。トナーの供給が円滑に行えるように供給ロールにも、通常、電圧が印加されている。
【0081】
現像ロールの周囲において、供給ロールとの接触点から感光ドラムとの接触点までの間の位置に、層厚規制手段としての現像ロール用ブレード9が配置してある。
このブレード9は、導電性ゴムやステンレス鋼で構成されており、トナーへの電荷注入を行うため、|200V|〜|600V|の電圧が印加されている。そのために、ブレード9の電気抵抗率は10の6乗Ωcm以下であることが好ましい。
【0082】
本発明の画像形成装置のケーシング11には、前述の重合法トナー10が収容されている。重合法トナー10は前記重合体粒子を含有するものである。この重合体粒子は、コアシェル型構造をなし、シェル部がガラス転移温度の比較的高いシェル用単量体からなる重合体で形成されているものであるから、トナーの表面の粘着性が低く、ケーシング11内に保存中にトナーが凝集するようなことが少なくなっている。
また、本発明のトナーは、粒径分布が比較的シャープであるので、現像ロールの層を形成したときに、層厚規制手段によって実質的に一層にすることができるので、画像の再現性に優れている。
【0083】
転写ロール6は、現像ロールにより形成された感光ドラム表面のトナー像を転写材7に転写するためのものである。転写材としては、紙、OHPシート等が挙げられる。転写手段としては、転写ロール以外にコロナ放電装置や、転写ベルトなどを挙げることができる。
【0084】
転写材に転写されたトナー像は、定着手段によって、転写材に固定される。定着手段は、通常、加熱手段と圧着手段とからなる。転写材に転写されたトナーを加熱手段により加熱しトナーを溶融させ、溶融したトナーを圧着手段により転写材の表面に押し付け固定する。
本発明の画像形成装置においては前述の重合法トナーを用いるので、加熱手段による加熱温度が低くても、トナーが容易に溶融し、圧着手段で軽く押し付けると、トナーが平滑な状態になって転写材表面に固定されるので、高速での印刷または複写が可能である。また、OHP透過性に優れている。
【0085】
クリーニング装置は、感光ドラムの表面に残留した転写残りトナーを清掃するためのものであり、例えば、清掃用ブレードなどで構成される。なお、このクリーニング装置は、現像ロールによる現像と同時にクリーニングを行う方式を採用する場合には、必ずしも設置することを要しない。
【0086】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0087】
実施例及び比較例における物性の測定方法は、以下のとおりである。
(1)トナーの粒径
重合体粒子の体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)はマルチサイザー(コールター社製)によりを測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:50μm、媒体:イソトンII、濃度:10%、測定粒子個数:50000個の条件で行った。
【0088】
(2)シェル厚み
シェルの厚みが厚ければマルチサイザーや電子顕微鏡で測定が可能であるがシェルの厚みが薄い今回の場合には以下の式を用いて算定した。
π(r+x)3 /πr3=1+s/100ρ (1)
但しr:シェル用単量体を添加前のコア粒径(マルチサイザーの体積粒径:μm)の半径
x:シェル厚み(μm)
s:シェル用単量体の添加部数(コア単量体100重量部に対して)
ρ:シェル樹脂の密度(g/cm3)
(1)式を変換すると
(x+r)/r=(1+s/100ρ)1/3 (2)
(2)式にρ=1を代入し
(x+r)/r=(1+s/100)1/3 (3)
x=r(1+s/100)1/3 −r (4)
(4)式を用いて算定した。
【0089】
(3)トナーの体積固有抵抗
トナーの体積固有抵抗は、誘電体損測定器(商品名:TRS−10型、安藤電気社製)を用い、温度30℃、周波数1kHzの条件下で測定した。
【0090】
(4)トナーの定着温度
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変化できあるように改造したプリンターで、トナーの画像評価を行った。定着率80%の温度を定着温度と評価した。定着試験は、プリンターの定着ロールの温度を変化させて、それぞれの温度での定着率を測定し、温度−定着率の関係を求めることにより行った。定着率は、改造プリンターで印刷した試験用紙における黒ベタ領域のテープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID前、テープ剥離後の画像濃度をID後とすると、
定着率(%)=(ID後/ID前)×100
である。テープ剥離操作とは、試験紙用の測定部分に粘着テープ(住友スリーエム社製スコッチメンディングテープ810−3−18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、McBeth社製反射式画像濃度測定機を用いて測定した。
【0091】
(5)トナーの保存性
保存性の評価は、トナー試料を密閉した容器に入れて、密閉した後、55℃に温度を制御した恒温水槽の中に沈め、一定時間経過した後に取り出して、凝集したトナーの重量を測定することによって行った。容器から取り出した試料を42メッシュの篩いの上にできるだけ構造を破壊しないように移し、粉体測定機(細川ミクロン社製)のREOSTATで振動の強度を4.5に設定して、30秒間振動した後、篩い上に残ったトナーの重量を測定し、凝集したトナーの重量とした。この凝集したトナーの重量と試料の重量とから、トナーの凝集率(重量%)を算出した。トナーの保存性は、以下の4段階で評価した。
◎:凝集率が5重量%未満、
○:凝集率が5重量%以上10重量%未満、
△:凝集率が10重量%以上50重量%未満、
×:凝集率が50重量%以上。
【0092】
(6)OHP透過性
前述の改造したプリンターの定着ロールの温度を170℃に設定し、市販のOHP(内田洋行社製トランスペアレンシー)シートを用いて、印字し、トナーのOHP透過性を評価した。印字したOHPシートをOHP装置に乗せ、その色が出るか目視にて観察し、透過(○)〜(△)〜不透過(×)の指標で評価した。
【0093】
(7)トナー帯電量
L/L(温度10℃、湿度20%RH)、H/H(温度35℃、湿度80%RH)環境下における帯電量を測定し、その環境変動の状況を評価した。
トナーの帯電量は、上記環境下で、市販プリンター(4枚機)にトナーを入れ、1昼夜放置後、ハーフトーンの印字パターンを5枚印字し、その後、現像ローラ上のトナーを吸引式帯電量測定装置に吸引し、帯電量と吸引量から単位重量当たりの帯電量を測定した。
【0094】
(8)画質の評価
前述のプリンターで初期から連続印字を行い、印字濃度が反射濃度計(マクベス製)で1.3以上、非画像部のカブリが白色度計(日本電色製)で10%以下で1万枚以上継続できるトナーを(○)、5千枚以上継続できるトナーを(△)、5千枚以上継続できないトナーを(×)と評価した。
【0095】
[実施例1]
スチレン78部及びn−ブチルアクリレート22部からなる単量体(得られる共重合体の計算Tg=50℃)と、カーボンブラック(デグサ社製、商品名プリンテックス150T)7部、帯電制御剤(保土ケ谷化学社製、商品名スピロンブラックTRH)1部、ジビニルベンゼン0.3部、及びポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、AA6、Tg=94℃)0.5部を室温のボールミルで分散を行い、均一混合液を得た。
【0096】
一方、メチルメタクリレート(計算Tg=105℃)3部と水100部と帯電制御剤(オリエント化学社製ボントロンE−84)0.01部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用単量体の水分散液を得た。シェル用単量体の液滴の粒径は、得られた液滴を1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に濃度3%で加え、マイクロトラック粒径分布測定器で測定したところ、体積粒径D90が1.6μmであった。
【0097】
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.8部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(アルカリ金属水酸化物)6.9部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。生成した上記コロイドの粒径分布をマイクロトラック粒径分布測定器(日機装社製)で測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.38μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.82μmであった。このマイクロトラック粒径分布測定器による測定においては、測定レンジ=0.12〜704μm、測定時間=30秒、媒体=イオン交換水の条件で行った。
【0098】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記コア用単量体混合物を投入、撹拌後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4部をさらに投入し、TK式ホモミキサーを用いて12000rpmの回転数で高剪断攪拌して、コア用単量体混合物の液滴を造粒した。この造粒した単量体混合物の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、90℃で重合反応を開始させ、重合転化率95%に達したときに重合温度はそのままにし、前記シェル用単量体及び2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}1部を添加し、3時間反応を継続した後、反応を停止し、コアシェル型重合体粒子の水分散液を得た。
【0099】
シェル用単量体を添加する直前にコア粒子を取り出して測定した体積平均粒径(dv)は6.3μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.22であった。また重合体粒子の体積平均粒径は6.5μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.26、rl/rsは1.1、トルエン不溶解分3%であった。
【0100】
上記により得たコアシェル型重合体粒子の水分散液を攪拌しながら、硫酸により系のpHを4以下にして酸洗浄(25℃、10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化し水洗浄を行った。その後、再度、脱水と水洗浄を数回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥機にて45℃で2昼夜乾燥を行い、重合体粒子を得た。
【0101】
上記により得られたコアシェル型重合体粒子100部に、疎水化処理したコロイダルシリカ(商品名:R−202、日本アエロジル社製)0.3部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して重合法トナーを調製した。このようにして得られた重合法トナーの体積固有抵抗を測定したところ、11.3(logΩ・cm)であった。
上記により得られた重合法トナーを用いて定着温度を測定したところ130℃であった。また、このトナーの保存性は、非常に良好であった(評価=◎)。また、温度10℃、湿度20%R.H.におけるトナーの帯電量は−26μc/gであった。また温度35℃、湿度80%R.H.におけるトナーの帯電量は−24μc/gであった。その他の画像評価では、画像濃度が高く、カブリ、ムラの無い、解像度の極めて良好な画像が得られた。
【0102】
[実施例2]
実施例1において、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}を2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]に代えた他は、実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。その結果を表1に示した。また、画像評価では、画像濃度が高く、カブリ、ムラの無い、解像度の極めて良好な画像が得られた。
【0103】
[実施例3]
実施例1において、使用したマクロモノマーを別のマクロモノマー(AA2、東亜合成化学工業社製、Tg=約90℃)に代えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表1に示した。
【0104】
[実施例4]
実施例1においてシェル用単量体に用いたメチルメタクリレート3部をメチルメタクリレート2.7部及びブチルアクリレート0.3部に代えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表1に示した。
【0105】
[実施例5]
実施例1において、シェル用単量体を組成するメチルメタクリレート3部の代わりにスチレン3部を用い、且つ、シェル用単量体を添加する直前にメタノール20部を添加した他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表1に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
[比較例1]
実施例1において、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}を過酸化ベンゾイルに代えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。
【0108】
[比較例2]
実施例1において、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}を過硫酸アンモニウムに代えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。
【0109】
[比較例3]
実施例1において、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}を2,2’−アゾビスイソブチロニトリルに代えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。
【0110】
[実施例6]
実施例1において、コア用単量体混合物で使用したt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりに2,2−アゾビスイソブチロニトリルを使用し、反応温度を80℃とした他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。このトナーを用いて定着を行うと若干の臭気が発生した。
【0111】
[実施例7]
実施例1において、コア用単量体に用いたブチルアクリレートを2−エチルヘキシルアクリレートに代えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。
【0112】
【表2】
【0113】
[実施例8]
実施例1において、カーボンブラック7部の代わりに、マゼンタ顔料(ピグメントレッド122)5部を用いた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表3に示した。
【0114】
[比較例4]
比較例1において、カーボンブラック7部の代わりに、マゼンタ顔料(ピグメントレッド122)5部を用いた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表3に示した。
【0115】
[比較例5]
比較例3において、カーボンブラック7部の代わりに、マゼンタ顔料(ピグメントレッド122)5部を用いた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表3に示した。
【0116】
[実施例9]
実施例1において、カーボンブラック5部の代わりに、黄色キノフタロン顔料(ピグメントイエロ138)5部を用いた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表3に示した。
【0117】
[実施例10]
実施例2において、カーボンブラック5部の代わりに、シアン顔料(ピグメントブルー15:3)5部を用いた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表3に示した。
【0118】
[実施例11]
実施例9において、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}を2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]に変えた他は、実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。その結果を表3に示した。また、画像評価では、画像濃度が高く、カブリ、ムラの無い、解像度の極めて良好な画像が得られた。
【0119】
【表3】
【0120】
【発明の効果】
本発明の重合法トナーは、低い定着温度と良好なOHP透過性を有し、保存性に優れており、しかも、高湿度環境下においても帯電量が低下しない、高速高画質印刷用画像形成装置に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像形成装置の一態様を示す図
【符号の説明】
1・・感光ドラム
3・・帯電ロール
4・・レーザー光照射装置
6・・転写ロール
8・・現像ロール
9・・現像ロール用ブレード
10・・トナー
11・・ケーシング
12・・供給ロール
Claims (3)
- 静電潜像が記録された感光体表面に請求項1記載のトナーを付着させて可視像にし、該可視像を転写材に転写することを特徴とする画像形成方法。
- 感光体、感光体の表面を帯電する手段、感光体の表面に静電潜像を記録する手段、請求項1記載のトナーを収容する手段、該トナーを供給し感光体表面の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段及び該トナー像を感光体表面から転写材に転写する手段とを有する画像形成装置。
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