JP4144224B2 - 窒化用ベイナイト型非調質鋼、その製造方法および窒化製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化用のベイナイト型非調質鋼と、その製造方法に関し、この鋼を材料とする窒化製品を包含する。
【0002】
【従来の技術】
軟窒化鋼を含めて、窒化鋼とよばれる鋼は、従来、比較的多量のAlを含有する合金組成を有し、この鋼を機械部品の形状に成形し、焼入れ焼戻しの調質を行ったのち、窒化処理をして製品にしている。従来の窒化鋼の問題点は、次のように多数ある。
1)調質は、部品の機械的強度を確保する上で一般に不可欠な処理とされているが、コストが嵩む要因である。できれば非調質ですませたい。
2)窒化後の表層硬さとしてHv750以上を確保するためには、Alだけでなく、Crも多量に含有させる必要があり(各々1%以上)、そうすると素材が硬くなって、加工性(たとえばドリル穴あけ性)が悪いことが難点である。
3)ドリル穴あけ性などをよくするため、Pbを添加することが行われるが、ガス窒化特性を安定させる上で、Pbの存在は好ましくない。
4)多量のAlを含有する鋼には、それに固有の製造性とくに鋳造性や、鋼塊品質とくに表面欠陥などの問題が伴う。
【0003】
出願人は、各種の鋼において被削性を向上させるための研究を長年にわたって続け、これまでに多数の提案をしてきた。とくに機械構造用鋼に関して最近の開発例を挙げれば、特開平10−287953号「機械的性質とドリル穴あけ加工性に優れた機械構造用鋼」が、ひとつの代表である。この快削鋼は、CaOを8〜62%含むカルシウムアルミネート酸化物介在物を内部に包み込んだ、長径/短径比が5以下であるような紡錘型の、Caを1%以上含むカルシウム・マンガン硫化物介在物を含有することを特徴とするものである。この発明は、すぐれた被削性を実現したが、実施に当たって、ときにより被削性にバラツキが見られることが経験された。これは、カルシウム・マンガン硫化物介在物の存在形態が種々あり得るためと解される。
【0004】
続いて出願人は、特開2000−34538号「旋削加工性に優れた機械構造用鋼」において、Ca含有硫化物をCa含有量に従って3区分し、観察視野の面積に対する面積率を、Ca含有量が40%を超えるものをA、0.3〜40%のものをB、0.3%未満のものをCとするとき、A/(A+B+C)≦0.3、かつB/(A+B+C)≧0.1の条件を満たすとき、旋削工具寿命が著しく延びることを開示した。
【0005】
さらに研究を進めた出願人は、特開2000−219936号「快削鋼」に至って、介在物の存在すべき個数を明らかにして、被削性のバラツキを少なくすることに成功した。この発明の鋼は、0.1〜1%のCaを含有する円相当直径5μm以上の硫化物を3.3mm2当たり5個以上含有することを特徴とする。
【0006】
最近に至って出願人は、機械構造用の合金組成を有する鋼において、CaO含有量が8〜62重量%の酸化物系介在物と接して存在する、1.0重量%以上のCaを含有する硫化物系介在物の占有面積が、視野面積3.5mm2当たり2.0×10-4mm2以上であるものが、安定した被削性を示すことを見出し、その製造方法を確立して、すでに提案した(特願2001−174606)。
【0007】
上記のような、酸化物系介在物と硫化物系介在物とが、前者が核となり、その周囲を硫化物主体の介在物が取囲んで複合している形態の介在物(これを出願人は、「二重構造介在物」と呼んでいる)は、その後の研究で、広い範囲の鋼種に適用可能であることが判明しつつあるが、多量のAlを含有する鋼には適用できない。介在物の形態をうまく制御するためには、Alの含有量を0.02%以下に止めなければならないところ、常用の窒化鋼は、上記のように、少なくとも1%のAlを含有するから、二重構造介在物を生成させ、利用することができないわけである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、良好な被削性をもたらす二重構造介在物を窒化鋼においても利用可能にし、Pb快削鋼と同等以上の被削性を有し、機械的性質および窒化特性を維持したまま、非調質のまま窒化して機械部品を製造することができる窒化用の快削鋼と、その製造方法を提供することにある。この窒化鋼を使用した機械部品を提供することもまた、本発明の目的に含まれる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の窒化用の快削鋼は、基本的な合金組成として、重量%で、C:0.05〜0.8%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜3.5%、P:0.001〜0.2%、S:0.01〜0.2%、Cr:1.0〜3.5%、V:0.1〜0.5%、Al:0.001〜0.020%、Ca:0.0005〜0.02%およびO:0.0005〜0.01%を含有し、ただし、
([Mn]−55[S]/32)+Cr>2.0
であって、残部が不可避の不純物およびFeからなる合金組成を有し、CaO含有量が8〜62重量%の酸化物系介在物と接して存在する、1.0重量%以上のCaを含有する硫化物系介在物の占有面積が、視野面積3.5mm2当たり2.0×10-4mm2以上であることを特徴とする、窒化用のベイナイト型非調質鋼である。
【0010】
上記した窒化用のベイナイト型の非調質鋼快削鋼を製造する本発明の方法は、上記の合金組成を有する合金を溶製し、その際、下記の条件1)〜3)
1)[HS]/[HO]:8〜80
ここで、HS=[S]×10log Fs HO=[O]×10log Fo であって、
logFs=0.113[C]+0.065[Si]-0.025[Mn]+0.043[P]-0.028[S]-0.013[Cu]
-0.011[Cr]+0.0027[Mo]-0.27[O]+0.024[N]+0.054[Al]
logFo=-0.44[C]-0.131[Si]-0.02[Mn]-0.147[P]+0.133[S]-0.0095[Cu]+0.006
[Ni]-0.041[Cr]+0.0035[Mo]-1.00[O]-0.1834[N]-0.20[Al]+0.11[V]
2)[sol-Al]:0.02〜0.20% かつ
3)[Ca]×[S]:1×10-5〜1×10-3
を満たす操業を行なうことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施形態】
本発明において、基本的な合金組成の鋼の組成を上記のように限定した理由は、つぎのとおりである。
【0012】
C:0.05〜0.8%
Cは強度を確保するために必要な成分であり、0.05%未満の含有量では強度が不足である。一方、多量になると靱性や被削性が低くなるので、0.8%を上限とした。
【0013】
Si:0.01〜2.5%
Siは溶製時の脱酸剤として鋼の成分となり、焼入性を高める働きもあるから、非調質鋼には必要である。この効果は、0.01%に達しない少量では期待できない。2.5%を超える多量の添加は、延性を損ない、塑性加工時に割れが発生しやすくなる。
【0014】
Mn:0.1〜3.5%
Mnは、硫化物を生成する重要な元素である。0.1%未満の量では、介在物の量が足りないが、3.5%を超える過大な含有量になると、鋼を硬くして被削性を低下させる。
【0015】
P:0.001〜0.2%
Pは、被削性とくに仕上面性状を改善する成分として、0.001%以上を、積極的に存在させる。ただし靱性にとっては有害であり、0.2%を超えて存在させることはできない。
【0016】
S:0.01〜0.2%
Sは被削性の向上にとって、有用というより、不可欠な成分であって、0.01%以上を存在させる。S量が0.2%を超えると、靱性と延性を悪くするばかりか、CaとCaSを生成する。CaSは融点が高いため、鋳造工程の障害になる。
【0017】
Cr:1.0〜3.5%
Crは焼入性を確保し、窒化層の硬さを確保するために、1.0%以上を添加する。しかし、多量に添加すると、熱間加工性を損ねて鍛造時に割れが生じるから、上限を3.5%と定めた。
【0018】
V:0.1〜0.5%
Vは、窒化時の焼戻し軟化抵抗性を確保し、製品が表層の硬さを維持するように、少なくとも0.1%を添加する。多量に過ぎると鋼の硬さを上昇させるとともに、耐力比、耐久比を低下させるから、0.5%までの添加に止める。
【0019】
Al:0.001〜0.020%
酸化物系介在物の組成を適切に調整する上で必要であり、少なくとも0.001%を添加する。常用の窒化鋼にくらべて、はるかに低い上限値0.20%は、これを超えると硬質のアルミナクラスターを生成し、鋼の被削性が損なわれるため設けた。
【0020】
Ca:0.0005〜0.02%
Caは、本発明の鋼にとってきわめて重要な成分である。硫化物中にCaを含有させるために、0.0005%以上の添加を必須とする。一方、0.02%を上回る過剰のCaの添加は、前記した高融点のCaSの生成を招き、鋳造の障害になる。
【0021】
O:0.0005〜0.01%
Oは酸化物の生成に必要な元素である。過度に脱酸した鋼においては高融点のCaSが多量に生成し、鋳造の支障になるから、少なくとも0.0005%、好ましくは0.0015%を超えるOが必要である。一方で、0.01%を超えるOは、多量の硬質な酸化物をもたらし、被削性を損なうとともに、所望のカルシウム硫化物の生成が困難になる。
【0022】
([Mn]−55[S]/32)+Cr>2.0
この条件は、窒化用の非調質鋼の組織を、パーライトでなく、ベイナイトを主体としてそれに若干のフェライトが加わったものにするために、満たさなければならない条件である。ベイナイト主体の組織は、熱間鍛造ままで、焼入れ焼戻し材とほぼ同等の強度を有するうえに、窒素の拡散速度がパーライト主体の組織より高く、従って窒化の速度が速いという利点がある。
【0023】
本発明の窒化用の非超質鋼快削鋼は、上記した基本的な合金組成に加えて、製品に要求されるところに従い、つぎのグループに属する元素の1種または2種以上を、規定する組成範囲内で、追加的に含有することができる。それらの変更態様において、任意に添加することができる各合金成分の働きと、組成範囲の限定理由を、つぎに述べる。
【0024】
Mo:2.0%以下
Moは焼入性を高めるので、適量を添加するとよい。しかし、多量に添加すると熱間加工性を損ねて、鍛造時に割れが生じる。コスト面も配慮して、上限を2.0%と定めた。Moを添加する場合、上記のベイナイト組織を得るための条件式は、次のように変わる。
([Mn]−55[S]/32)+Cr+Mo>2.0
【0025】
Cu:2.0%以下
Cuは、組織を緻密にし、強度を高める。多量の添加は、熱間加工性にとっても、被削性にとっても好ましくないから、2.0%以下の添加に止める。
【0026】
Ni:4.0%以下
Niも、CrおよびMoと同様に焼入性を高めるが、被削性にはマイナスの存在である。それと、コストを考えて、4.0%を上限とした。
【0027】
B:0.0005〜0.01%
Bは微量の添加で焼入性を高める。この効果を得るには、0.0005%以上の添加を必要とする。0.01%を超える添加は、熱間加工性を損ねて有害である。
【0028】
Nb:0.2%以下およびTi:0.2%以下の1種または2種
NbおよびTiは、高温における結晶粒の粗大化を防ぐ上で有用である。その効果は量の増大につれて飽和するので、それぞれ0.2%以下の範囲で添加するのが得策である。
【0029】
Ta:0.5%以下、Zr:0.5%以下、Mg:0.02%以下
これらの元素は、いずれも結晶粒を微細化し、靱性を向上させる働きがあるので、1種または2種以上を添加するとよい。添加量は、効果が飽和する上記の上限値0.5%までに止めるのが得策である。
【0030】
Pb:0.4%以下、Bi:0.4%以下、Se:0.4%以下およびTe:0.2%以下、
いずれも、被削性改善元素である。Pbは、単独で、または硫化物の外周に付着する形で存在し、それ自身が被削性を高める。0.4%という上限は、これ以上のPbを添加しても鋼に溶解せず、凝集・沈殿して鋼の欠陥になることを理由に設けた。Biも同様である。SeおよびTeの上限は、熱間加工性への悪影響を考慮して定めた。
【0031】
本発明にしたがう窒化用の非調質快削鋼の内部に存在する介在物は、前記したように二重構造であって、EPMA分析によれば、芯部はCa,Mg,SiおよびAlの酸化物であり、その周囲を、CaSを含有するMnSが取囲んでいる。その存在形態は、CaO含有量が8〜62重量%の酸化物系介在物と接して存在する、1.0重量%以上のCaを含有する硫化物系介在物の面積が、視野面積3.5mm2当たり2.0×10-4mm2以上を占めるものである。このような介在物の形態は、後に論じる機構を通じて、本発明で目標とした高い被削性を達成するために必要なものであり、このような介在物の形態を実現するための条件が、これも前記した製造のための操業条件である。以下に、それらの条件がもつ意義を説明する。
【0032】
1)[HS]/[HO]:8〜80
ここで、[HS]および[HO]は、それぞれ下式で定義されるSおよびOの活量を表し、
HS=[S]×10log Fs HO=[O]×10log Fo
logFsおよびlogFoは、それぞれ下式で定義される。
logFs=0.113[C]+0.065[Si]-0.025[Mn]+0.043[P]-0.028[S]-0.013[Cu]
-0.011[Cr]+0.0027[Mo]-0.27[O]+0.024[N]+0.054[Al]
logFo=-0.44[C]-0.131[Si]-0.02[Mn]-0.147[P]+0.133[S]-0.0095[Cu]+0.006
[Ni]-0.041[Cr]+0.0035[Mo]-1.00[O]-0.1834[N]-0.20[Al]+0.11[V]
2)[sol-Al]:0.02〜0.20% かつ
3)[Ca]×[S]:1×10-5〜1×10-3
【0033】
上記の条件1)に関する実施データは、図1に見るとおりである。このグラフは、窒化前の材料に対するドリル加工能率比が1以上の窒化鋼(●)および1未満(×)の窒化鋼における、HSとHOとの関係をプロットしたものである。ここで、「ドリル加工能率比」の語は、ハイスドリルを使用した場合の加工性を、常用のAl−Cr窒化鋼に0.07%のPbを添加して被削性を向上させた鋼の加工性と比較して得た値として定義される。図1は、SおよびOの活量が適切な比率で組合されたときに、良好な被削性が得られることを示している。
【0034】
本発明の窒化用のベイナイト型非調質鋼がすぐれた被削性を示す理由として発明者らが考えているのは、以下に説明するような、二重構造介在物による工具表面のよりよい保護および潤滑の機構である。
【0035】
前記のように、二重構造介在物は、核の部分がCaO・Al2O3系の複合酸化物であり、その周りを、(Ca,Mn)S系の複合硫化物が取り巻いている。この酸化物は、CaO−Al2O3系の中では低融点のものであり、一方、複合硫化物は、単純な硫化物MnSよりも高融点である。この二重構造介在物は、酸化物をCaO−Al2O3系の低融点のものにすることにより、確実に硫化物が酸化物を取り巻く形で析出する。切削にあたって硫化物系介在物が溶融して工具表面を被覆し、保護するという作用はよく知られているが、硫化物だけしか存在しないと、この被膜の生成および維持は安定しない。発明者らの見出したところでは、硫化物系介在物にCaO−Al2O3系の低融点酸化物が共存すると、被膜が安定に生成する上、(Ca,Mn)S系の複合硫化物は、単純なMnSよりも、潤滑性能が高い。
【0036】
(Ca,Mn)S系の複合硫化物が工具表面に被膜を形成することの意義は、超硬工具による切削において、もっとも明らかに認められる。すなわち、「熱拡散摩耗」とよばれる超硬工具の摩耗を抑制する効果である。熱拡散摩耗は、工具が切削対象から生じる切り屑に高温で接すると、工具材料を構成するタングステン・カーバイドWCに代表される炭化物が熱分解して、Cが切り屑金属中に拡散して失われる結果、工具が脆くなって進む摩耗である。潤滑性の高い被膜が工具表面に生成すると、工具の温度上昇が防がれて、Cの拡散が抑制される。
【0037】
本発明の快削鋼の二重構造介在物CaO−Al2O3/(Ca,Mn)Sは、観点を変えてみれば、従来のイオウ快削鋼の介在物であるMnSと、従来のカルシウム快削鋼の介在物であるアノルサイトCaO・Al2O3・2SiO2との、それぞれの利点を併せもつものということができる。工具表面のMnSは、潤滑性を示すが、被膜の安定性がいまひとつであり、熱拡散摩耗に対しては無力である。一方、CaO・Al2O3・2SiO2は、安定な被膜を形成して熱拡散摩耗を防ぐが、潤滑性に乏しい。これに対して本発明の二重構造介在物は、安定な被膜を形成して熱拡散摩耗を効果的に防止するとともに、よりよい潤滑性を示す。
【0038】
このような二重構造介在物の生成は、前述のように低融点の複合酸化物を用意することから始まるので、まず[Al]量が重要であって、少なくとも0.001%の存在が必要である。[Al]が多量に過ぎると、複合酸化物の融点が高くなってしまうから、0.020%以内にする。つぎに、CaSの生成量を調節するために、[Ca]×[S]および[Ca]/[S]を、前記した値にコントロールするわけである。
【0039】
【実施例】
以下の実施例および比較例においては、表1および表2に示す合金組成の鋼を、5tonアーク炉で溶製してインゴットに鋳造した。溶製に当り、硫化物被膜で被覆された硬質酸化物を形成させるため、S源としてはFSショット、Ca源としてはCaSi、Al源としてはAlショットをそれぞれ使用し、鋼中のS、Al、CaおよびOの含有量が、表1および表2に示す組成値となるように成分調整した。各インゴットを径15mmまたは22mmの丸棒に、熱間で鍛造した。合金組成に加えて、HS/HO、[Ca]×[S]および[Ca]/[S]の値を、表1および表2に掲げる。
【0040】
【0041】
【0042】
鍛造品を、鍛造ままで空冷し、580℃×3時間のガス窒化を行なった。窒化製品について、表層硬さ(Hv)、硬化層の深さ(硬さがHv450以上の層の深さ)、心部の硬さ(HRC)および靭性を測定した。それらの結果を、被削性(前記した「ドリル加工能率比」で表した)とともに、表3および表4に示す。
【0043】
窒化後の表層硬さと、その製品がどの程度のドリル加工能率比を示したかの関係をプロットして、図2に示す結果を得た。本発明に従う鋼の窒化成品は、表層硬さ750Hv以上の目標を達成した上で、ドリル加工能率比1を確保し、すぐれたものは3を超える、高い被削性に到達している。
【0044】
【0045】
【0046】
【発明の効果】
本発明の窒化用ベイナイト型非調質鋼には、高い被削性をもたらす介在物とくに二重構造介在物が最適の形態で存在するから、すぐれた被削性を実現することができた。
【0047】
これまで、各種の快削鋼において、良好な被削性を与える介在物の形態に関しては、ある程度の考察が行なわれていたが、そのような介在物を高い再現性をもって作り出す手段に関しては、いまひとつ満足できないのが実状であった。本発明はこの点において従来技術の隘路を突破したものであり、前記の操業条件を満たす製造を行なうことにより、常にすぐれた被削性をもつ窒化用のベイナイト型非調質鋼の快削鋼が製造できる。
【0048】
この窒化用のベイナイト型非調質鋼において特筆すべき利点は、従来この種の窒化鋼の被削性を高めようとするとPbを添加せざるを得なかったのに対して、Pbの添加をすることなく、同等以上の被削性を実現した点にある。Pbの使用は、鋼を製造したり、加工したりする環境からすでに問題を引き起こしやすい上に、使用および廃棄に関しても好ましくないものであり、今日では極力避ける努力がなされていることは、周知のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の快削鋼と比較鋼とについて、被削性とHSおよびHOとの関係を示したグラフ。窒化前の材料に対してハイスドリルで穴あけしたときの加工能率(VL5000)が、0.07%Pb含有快削鋼のそれと同等以上の鋼を●、それより劣るものを×で表した。
【図2】 本発明の快削鋼と比較鋼とについて、窒化後の表層硬さと、ドリル加工能率比との関係を示したグラフ。本発明の鋼のデータを●、比較鋼のそれを○で表した。
Claims (7)
- 重量%で、C:0.05〜0.8%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜3.5%、P:0.001〜0.2%、S:0.01〜0.2%、Cr:1.0〜3.5%、V:0.1〜0.5%、Al:0.001〜0.020%、Ca:0.0005〜0.02%およびO:0.0005〜0.01%を含有し、ただし、
([Mn]−55[S]/32)+Cr >2.0
であって、残部が不可避の不純物およびFeからなる合金組成を有し、CaO含有量が8〜62重量%の酸化物系介在物と接して存在する、1.0重量%以上のCaを含有する硫化物系介在物の占有面積が、視野面積3.5mm2当たり2.0×10−4mm2以上であることを特徴とする窒化用のベイナイト型非調質鋼。 - 請求項1に規定した合金成分に加えて、さらに、Mo:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Ni:4.0%以下およびB:0.0005〜0.01%の1種または2種以上を含有し、Moを含有する場合はさらに、
([Mn]−55[S]/32)+Cr+Mo>2.0
である請求項1に記載の窒化用のベイナイト型非調質鋼。 - 請求項1に規定した合金成分に加えて、さらに、Nb:0.2%以下およびTi:0.2%以下の1種または2種を含有する請求項1に記載の窒化用のベイナイト型非調質鋼。
- 請求項1に規定した合金成分に加えて、さらに、Ta:0.5%以下、Zr:0.5%以下およびMg:0.02%以下の1種または2種以上を含有する請求項1に記載の窒化用のベイナイト型非調質鋼。
- 請求項1に規定した合金成分に加えて、さらに、Pb:0.4%以下、Bi:0.4%以下、Se:0.4%以下およびTe:0.2%以下の1種または2種以上を含有する請求項1に記載の窒化用のベイナイト型非調質鋼。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載した非調質鋼を製造する方法であって、請求項1ないし5のいずれかに規定した合金成分を含有し、ただし、
([Mn]−55[S]/32)+Cr>2.0
であって、残部が不可避の不純物およびFeからなる合金組成を有する合金を溶製し、その際、下記の条件1)〜3)
1)[HS]/[HO]:8〜80
ここで、HS=[S]×10log Fs HO=[O]×10log Fo であって、
logFs=0.113[C]+0.065[Si]-0.025[Mn]+0.043[P]-0.028[S]-0.013[Cu]
-0.011[Cr]+0.0027[Mo]-0.27[O]+0.024[N]+0.054[Al]
logFo=-0.44[C]-0.131[Si]-0.02[Mn]-0.147[P]+0.133[S]-0.0095[Cu]+0.006
[Ni]-0.041[Cr]+0.0035[Mo]-1.00[O]-0.1834[N]-0.20[Al]+0.11[V]
2)[sol-Al]:0.02〜0.20% かつ
3)[Ca]×[S]:1×10-5〜1×10-3
を満たす操業を行なうことを特徴とする、窒化用のベイナイト型非調質鋼の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載したベイナイト型非調質鋼を機械部品の形状に成形し、窒化してなる窒化製品。
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