JP4140159B2 - 監視カメラの監視エリア設定装置及びその方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、監視カメラの監視エリア設定装置及びその方法に関する。詳しくは、監視カメラの映像をもとに遠隔地にてカメラ設置場所の状況監視を行う映像監視システムに関するもので、特にカメラの映像を画像処理することにより映像中の特定のエリアの状況を連続的に自動監視する画像処理装置において、映像中の監視エリアを自動的に設定する監視カメラの監視エリア設定装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
監視対象場所に監視カメラを設置し、遠隔地の監視室において監視対象場所の状況監視を行う映像監視システムが多く運用されている。
例えば、鉄道駅構内の通路や広場での人の流れの監視、プラットホームでの乗降客と進入する電車との接触等の監視、デパートやコンビニの店内での客の挙動の監視、美術館や博物館の展示室の展示品の監視、建物や施設の出入り口の人の出入り状況の監視、あるいは生産現場における産業用ロボットの動作範囲内への作業員の立ち入り監視など、室内はもとより、浄水場や変電所における運転状況や侵入者監視、ダムサイトや農業用水路の取水口近辺へのボートや倒木などの接近の監視、工事現場における作業状況や危険区域内への侵入者の監視、高速道路を中心とした道路における車両走行状況の監視など、屋外にも監視カメラが多く設置されている。
【0003】
これらの監視カメラの利用方法は主として2つの方法がある。
一つは、監視員による目視での監視で、監視室のモニタに映る監視カメラの映像を監視員が目視にて観察するものである。
もう一つの利用方法は、監視カメラの映像を常時又は間欠的にVTRに保存しておき何らかの異常が発生したときに再生し異常の原因を調査分析するのに使用する方法である。
またこれらの2つの方法を同時に実施する例もある。
つまり、監視カメラの映像をVTRに保存しながらモニタでの監視も行うものである。
【0004】
ところで、目視による監視が行われている施設において、監視カメラが多数設置されており、監視室に設置されたモニタが多い場合に、監視員の疲労軽減と見落としの予防のために、画像処理による自動監視が行われている。
これは、監視カメラの映像を画像処理装置に入力し、背景差分法、時間差分法、領域差分法などの画像処理手法を用いて映像中の異常状況を検出し監視員に警告するものである。
【0005】
背景差分法は、正常なときの監視場所の映像を保存しておき、監視カメラの映像がこれと異なる場合に異常と判断する方法で、ドアや門の前に障害物や侵入者がいることの検出に使用される。
時間差分法は、時間的に連続する2枚の画像の異なる部分を検出し、この部分に移動する物体があると判断する方法で、夜間のビル内の通路の侵入者や爆発などの異常検出に使用される。
領域差分法は、入力画像のエッジ検出を行い、本来検出されるべきでない場所にエッジ成分が抽出された場合にこれを異常と判断するもので、道路上の障害物の検出などに使用される。
【0006】
これらの方法は独立に使用されることもあるが、これ以外の方法を含む複数の手法を組み合わせて使用することもある。
また、一般に上述の画像処理は入力画像の全範囲に対して行うことは少なく、図9、図10に示すように、異常が発生する可能性のあるエリア01,02を設定して、そのエリア01,02のみに対して画像処理を行い異常状況を監視することが行われている。
【0007】
理由は、監視カメラの映像中の監視対象は一般に限定されており、異常が発生する場所が決まっているので特定の監視エリア以外の異常状況をノイズとして排除できることと、画像処理の対象範囲を小さくすることで画像処理装置による画像処理の時間が短縮できることである。
この監視エリアの設定は、カメラが固定で監視場所が決まっている場合は手動で設定が実施される。
【0008】
即ち、オペレータが監視カメラの映像を見て監視エリアをマウス操作やキー操作により設定する。
画像処理装置はオペレータにより設定された監視エリアのみを対象に画像処理を行い、異常検出を行うものである。
これら、従来の映像 監視システムにおける監視エリアの設定には以下に示す問題点が存在する。
第一に、監視カメラを移動させる監視を行う場合、監視カメラに映る場所が時々刻々変化するので、監視エリアが設定できない。
監視カメラが固定、即ち監視カメラの設置位置が固定でカメラの向きも固定でレンズも焦点距離が固定のレンズを使用する場合は、監視カメラの映像に映る場所と範囲は同一であり、従って映像中の監視エリアも一旦設定すればこれを利用できる。
しかしながら、近年の監視カメラは設置位置こそ固定だが、電動雲台のパンチルト機構によりカメラ本体の旋回と上下振り動作が可能で、さらに電動ズームレンズを使用して望遠から広角まで映像の範囲を変化させることができるものが使用されている。
【0009】
この場合、カメラの移動によって監視カメラの映像が大きく変化するため手動により設定した監視エリアが保持できない。
電動雲台の旋回角度や仰角の動作と電動ズームレンズの焦点距離をセンシングして画像処理装置にフィードバックすれば、監視カメラの向きの変化に対応した監視エリアの再計算は可能だが(カメラパラメータに関しては参考文献:除、辻著、「三次元ビジヨン」,共立出版,1998(以下「文献1」と呼ぶ)によれば、カメラ座標系と三次元空間座標系の変換行列に11のパラメータがあり、カメラに映る4点のカメラ座標(u,v)と三次元空間座標(x,y,z)、又はカメラパラメータ(カメラ設置位置、カメラ旋回角度、カメラ仰角、レンズ焦点距離など)が既知であれば計算(キャリブレーション)することが可能である。)、センサの設置もセンサ信号の伝送もコストがかかるもので一般には行われていない。
【0010】
第二に、オペレータが監視カメラの映像中にマウス操作などで監視エリアを設定するので、現場の位置や距離との対応が不明である。
例えば、ダムサイトの取水口から10m以内を危険区域として設定したいときでも監視カメラの映像ではどこが10mなのかがオペレータにはわからないため、正確に10m以内の監視エリアを設定できない。
第三に、複数の監視カメラを使用した遠隔自動監視を行う場合、個々の監視カメラ毎に監視場所と監視エリアが異なるので、個々の監視カメラに対してそれぞれ個別に監視エリアを設定する必要がある。
【0011】
また、カメラやレンズを交換した後には、厳密には監視カメラに映る場所が変わるので、監視カメラの映像の確認と監視エリアの再設定が必要である。
大きな施設の多数の出入り口の監視を行う場合や長大トンネルの多数の監視カメラの設定を行う作業は煩雑である。
これらの問題点を解決する手段として我々は、「監視カメラの監視エリア設定装置及び方法」(特願平11−327704号)を提案した(以下、「前回提案」と呼ぶ)。
【0012】
この提案は、映像入力部と、画像処理部と、カメラパラメータ計算部と、監視エリア設定部とで構成し、映像入力部で監視カメラの映像を入力し、画像処理部で画像処理により監視対象水平面上の3点のマーカを検出し、カメラパラメータ計算部において3点が水平面上で等間隔に設置されていることを利用したカメラパラメータ計算を行い、計算されたカメラパラメータを使用して監視エリア設定部で3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリアを設定することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置及びその方法である。
【0013】
この提案による利点は、▲1▼従来は出来なかったパンチルトズーム動作を行う監視カメラを使用した画像処理による自動監視が可能である、▲2▼従来は監視カメラが複数設置されているときは個々の監視カメラ毎に個別に監視エリアを設定する必要があったが、複数のカメラで同一の間隔の監視エリアを設定する場合はパラメータの設定を一括して行うことが可能であり監視エリア設定の煩雑さが解消される、▲3▼従来は監視エリアの設定はオペレータが映像中の位置を指定して行っており、現場における監視エリアの絶対値を設定できなかったが、カメラの仰角を何らかの方法で設定する実施例によれば、平行線で構成する監視エリアの幅を現場における絶対値で設定可能である、の3点に集約される。
また、前回提案では14の実施例を示し、様々な監視対象におけるその有用性を説明した。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前回提案の映像監視システムにおける監視エリアの設定には以下に示す問題点が存在する。
第一に、カメラ仰角の情報を使用しない場合は、オペレータが監視カメラの映像中にマウス操作などで監視エリアを設定するので、現場の位置や距離との対応が不明である。
例えば、ダムサイトの取水口から10m以内を危険区域として設定したいときでも監視カメラの映像ではどこが10mなのかがオペレータにはわからないため、正確に10m以内の監視エリアを設定できない。
【0015】
第二に、カメラ仰角の情報を電動雲台の仰角の動作をセンシングして画像処理装置にフィードバックする場合は、センサの設置もセンサ信号の伝送もコストがかかるので適用しにくい。
第三に、カメラ仰角の情報をオペレータが手動で設定する場合は、複数の監視カメラを使用した遠隔自動監視を行う場合、個々の監視カメラ毎に監視場所と監視エリアが異なるので、個々の監視カメラに対してそれぞれ個別にカメラ仰角を設定する必要がある。
【0016】
また、カメラやレンズを交換した後には、厳密には監視カメラに映る場所が変わるので、監視カメラの映像の確認とカメラ仰角の再設定が必要である。
大きな施設の多数の出入り口の監視を行う場合や長大トンネルの多数の監視カメラの設定を行う作業は煩雑である。
本発明は、監視カメラの映像中に監視エリアを設定し、画像処理により監視エリアの画像の変化を検出して異常の検出を行う映像自動監視システムに関するもので、特に監視カメラの映像中の監視エリアの設定を行う装置及び方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成する本発明の請求項1に係る監視カメラの監視エリア設定装置及びその方法は、映像入力部と、画像処理部と、カメラパラメータ計算部と、監視エリア設定部とで構成し、映像入力部で監視カメラの映像を入力し、画像処理部で画像処理により監視対象水平面上の3点のマーカを検出し、カメラパラメータ計算部において3点が水平面上で等間隔に設置されていること及びカメラ高さ情報を利用したカメラパラメータ計算を行い、計算されたカメラパラメータを使用して監視エリア設定部で3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリアを設定することを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成する本発明の請求項2に係る監視カメラの監視エリア設定装置は、請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、本装置が計算して設定した監視エリアを入力した監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示することを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成する本発明の請求項3に係る監視カメラの監視エリア設定装置は、請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、監視エリア設定部では3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線を監視エリアとして設定し、監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示することを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成する本発明の請求項4に係る監視カメラの監視エリア設定装置は、請求項2又は3記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、表示する監視エリア又は平行な直線をオペレータの操作指示に基づき保持する機能を有することを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成する本発明の請求項5に係る監視カメラの監視エリア設定装置は、請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、監視カメラの映像を表示したモニタ上でオペレータにより指定された3点を使用してカメラパラメータ計算を行い、3点を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリア、又は3点を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線を設定又はモニタ表示することを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成する本発明の請求項6に係る監視カメラの監視エリア設定装置は、請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、監視エリア設定部では何らかの方法で監視カメラ高さを計測するセンサを設置し、監視エリア設定部はこれを入力し、これをもとに3点のマーカを結ぶ直線と、これに水平面上で平行で指定された間隔の一本又は複数の直線を計算し監視エリアとして設定することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
1)基本的な考え方(第一の実施例)
本発明の装置が設定する監視カメラと監視エリアは以下の条件を満たすものとする。
ただし、これらの条件は特別なものではなく一般的な電動雲台ズームレンズ付監視カメラがこれにあたる。
【0024】
▲1▼監視カメラは水平面に対して水平に設置される。
▲2▼監視カメラの雲台が旋回動作する。ただし旋回動作は水平面内で行われる。
▲3▼監視カメラの雲台が上下振り動作する。ただしの上下振り動作は鉛直面内で行われる。
▲4▼監視カメラは電動ズームレンズの動作によりレンズ焦点距離が変化する。
▲5▼ただし監視カメラの旋回角度、仰角、レンズ焦点距離は検出できない。
▲6▼監視カメラで自動監視する監視エリアは実世界では水平面上に存在する。
▲7▼監視カメラの監視対象の水平面上からの高さが既知で変わらないものとする。
【0025】
さらに、本発明による監視エリアの自動設定のために、監視カメラの映像に映る範囲内で監視エリアと同一の水平面上に等間隔に直線的に3点以上のマーカを設定するものとし、監視エリアはこのマーカがのる直線と平行な範囲とする。
ここで使用するマーカは、本発明の目的のために特別に着色したペイントでも良いし、特別に設置した円盤やパイロンでも良いし、他の目的のために設置されている工事現場や道路脇の杭やポストマークでも良いし、道路の車線マークや建造物の柱や土台石でも良い。
【0026】
本発明の監視エリア設定装置10は、図1に示すように、映像入力部11と画像処理部12と、カメラパラメータ計算部13と、監視エリア設定部14とで構成し、映像入力部11で監視カメラ20の映像を入力し、画像処理部12で画像処理により3点のマーカを検出し、カメラパラメータ計算部13において3点が水平面上で等間隔に設置されていること及び、オペレータにより予め設定されたマーカ間隔とカメラ高さ情報を利用したカメラパラメータ計算を行い、監視エリア設定部14でこのパラメータを使用して3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリアを設定する。
【0027】
遠隔監視システムは、設定された監視エリアに対して画像処理を行い異常の検出などを行うものである。
カメラパラメータの計算手順の例を説明する。
図2に示すような監視の映像中の位置(u,v)と実世界の空間位置(x,y,z)との関係を決定するカメラパラメータは、カメラの設置位置(X,Y,Z)とカメラ姿勢(θ,φ,ψ)に関する6つの外部パラメータとカメラ自体レンズ焦点距離fと画像中心(u0,v0)とCCD素子単位長比と軸の交差角度の5つの内部パラメータの合計11のパラメータが存在する(文献1)。
【0028】
これらのうち、通常の工業用監視カメラではCCD素子単位長比が1:1、軸の交差角度が90度に調整されている。
また、監視カメラが水平に設置されているのでψ=0とすることができ、マーカと監視エリアが同一の水平面上にあり、雲台の動作が水平面に水平又は鉛直であれば水平面上の平行線の計算に関してφは無関係であるので、φ=0と置くことが出来る。
【0029】
さらに、カメラ座標系の原点をカメラのレンズ中心においてu0=v0=0とし、空間座標系の原点も同じくカメラのレンズ中心において、X=Y=Z=0とすれば、図3に示すように、残るパラメータはレンズ焦点距離とCCDサイズの比を表すαとカメラの仰角θの2つになる。
ある計測点をM(X,Y,Z)、MのCCD上の画像点をm(u,v)とするとMとmの関係は、
【0030】
【数1】
【0031】
で表される変換行列である。ここで、Aはカメラ内部パラメータで、
【0032】
【数2】
【0033】
Rはθのみのカメラの回転行列で、
【0034】
【数3】
【0035】
であるから(1)式は、
【0036】
【数4】
【0037】
となり、これを展開すると、
【0038】
【数5】
【0039】
となる。Xは監視対象の水平面からのカメラ高さで一定であるから、mとMは一対一に対応し、
【0040】
【数6】
【0041】
で表される。いま、カメラ映像中にある3点m1(u1,v1)、m2(u2,v2)、m3(u3,v3)が水平面上のM1(X1,Y1,Z1)、M2(X2,Y2,Z2)、M3(X3,Y3,Z3)に対応し、これらが等間隔で直線上にあるとすれば、
【0042】
【数7】
【0043】
であるから、(9)式を利用して、
【0044】
【数8】
【0045】
であり、これを解くと、
【0046】
【数9】
【0047】
のカメラパラメータが求められる。次に、図4に示すように、等間隔に設置されたマーカの間隔をdとすれば、
【0048】
【数10】
【0049】
なので、(9)(10)式を使い、カメラ高さをhとして整理すると、
【0050】
【数11】
【0051】
となる。ここで、
【0052】
【数12】
【0053】
とした。この場合のkは(13)式により計算される。さらに、
【0054】
【数13】
【0055】
を(15)式に代入して整理したあとにtについて展開すると、
【0056】
【数14】
【0057】
となる。ここで、
【0058】
【数15】
【0059】
とした。(17)式をt2について解くと、
【0060】
【数16】
【0061】
となり、カメラ仰角θを求めることができる。
同様に(16)式からズーム倍率に相当するカメラパラメータαを求めることができる。
これにより、(9)(10)式によりカメラ画像中の点(ui,vi)と水平面上の点(Yi,Zi)の相互の座標変換を行うことが可能で、即ち、水平面上のマーカM1−M2に平行な直線に対応する画像中の直線をカメラ画像中に描画することが可能である。
【0062】
本発明は、監視対象の水平面上に等間隔で設置されたマーカを画像中に検出しこれらの画像中の座標及びカメラ高さとマーカ間隔の情報から水平面上でマーカが構成する直線と平行な直線を画像中に描画するものであり、本発明の特徴は、3点のマーカが画像中にあれば、これと水平面上で平行で一定間隔の直線を決定することが可能でこれらに囲まれた監視エリアを計算により決定できることである。
【0063】
特に、本発明の方法によれば前回提案の方法では実施していなかった、カメラ仰角θとズーム倍率に関係するカメラパラメータαを計算するので、監視対象水平面上の仮想的な平行線に対応する直線のカメラ画像中の位置をオペレータが指定する間隔で正確に計算することが可能である。
例えば、正確に10m以内の監視エリアをカメラ画像中に設定可能である。
本発明による監視エリア設定を逐次行うことにより、監視カメラの雲台とズームレンズをを操作し時々刻々と映像が変化しても、3点のマーカが映像に映っていれば、これをもとに監視エリアの更新がなされ、連続的な自動監視が可能となる。
【0064】
2)検知すべきマーカとその検出方法の実施例
本発明の装置は、水平面上に等間隔で直線上に設置された3点のマーカを画像処理により検出し、カメラパラメータ計算を行い、3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリアを設定するもので、遠隔監視システムがこの監視エリアに対して画像処理を行い異常の検出などを行うものである。
本発明で使用するマーカの例とその検出方法の実施例については前回提案のマーカとその検出方法がそのまま使用できる。
【0065】
3)監視エリア設定の第二の実施例
図5に示すように、水平面上に等間隔で直線上に設置された3点のマーカ1を画像処理により検出し、カメラパラメータ計算を行い、3点のマーカ1を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線(平行線)2に囲まれた監視エリア3を設定する監視カメラの監視エリア設定装置において、設定した監視エリア3を入力した監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置である。
本実施例の特徴は、本装置が計算して設定した監視エリア3をオペレータが確認できる点である。
これにより、画像処理装置による自動監視と同時にオペレータによる目視による監視が可能になる利点がある。
【0066】
4)監視エリア設定の第三の実施例
図6に示すように、水平面上に等間隔で直線上に設置された3点のマーカ1を画像処理により検出し、カメラパラメータ計算を行い、3点のマーカ1を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線(平行線)2を監視エリアとして設定し、監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置である。
本実施例の特徴は、監視エリアを領域でなく直線2で表現することである。
これにより、道路の特定車線の走行状況の監視、ダムサイトの上面の縁部分の監視、工事現場の側溝の境界部分の監視などに適用可能である。
また、この直線2をオペレータが確認できるので、画像処理装置による自動監視と同時にオペレータによる目視による監視が可能になる利点がある。
【0067】
5)監視エリア設定の第四の実施例
水平面上に等間隔で直線上に設置された3点のマーカを画像処理により検出し、カメラパラメータ計算を行い、3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線又はこれらにより囲まれるエリアを監視エリアとして設定し、監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示する監視カメラの監視エリア設定装置において、表示する監視エリア又は平行な直線をオペレータの操作指示に基づき保持する機能を有することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置である。
【0068】
本実施例の特徴は、監視カメラの雲台を操作して3点のマーカが映る雲台位置を決定したあとに、カメラを移動させないことを前提条件として、一度計算した監視エリアを保持するものである。
これにより、監視エリアの設定後に何らかの理由でマーカが隠れたり移動しても同一の監視エリアを使用することが可能になる。
現場の状況の変化や人の移動などによりマーカが隠れたり移動したりする可能性のある、建物の出入り口や工事現場の監視のときに効果がある。
【0069】
6)監視エリア設定の第五の実施例
図7に示すように、監視カメラの映像を表示したモニタ上にオペレータがマウス操作で3点をマーカ4として指定し、この3点のマーカ4を使用してカメラパラメータ計算を行い、3点のマーカ4を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線(平行線)2に囲まれた監視エリア、又は3点のマーカ4を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線2を設定又はモニタ表示することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置である。
本実施例の特徴は、3点のマーカ4を画像処理により検出する替わりに、監視カメラの映像中の3点をオペレータがマウスで指定することである。
マウスで指定するマーカの位置はタイルの目地や橋の欄干など、一定間隔であることが保証されているものであることが条件である。
これにより、画像処理により検出すべきマーカがない場合、マーカが検出しにくい場合、専用のマーカを設置できない場合にも監視エリアを設定することが可能となる。
【0070】
7)カメラ高さが変化する場合の実施例
ところで、本発明の実現の条件としてカメラ高さが一定で既知であることとしたが、監視カメラの使用方法によってはこの条件が確保できない場合がある。
例えば、図8に示すように、前回提案でマーカの例として説明したダムサイト5における取水口6の付近の危険区域の監視の場合は、ダムの水位の変動に対応してダム湖水面とカメラの相対的な高さが変動する。
また、監視カメラをクレーンなど高さが変化する個所に設置する場合もある。
これらの場合も、何らかの方法でカメラ高さhをオペレータが知ることができれば、そのデータを入力することにより、本発明によるカメラパラメータの計算が可能で、監視エリアの設定が可能である。
しかしながら、時々刻々にカメラ高さが変化するようなときは、カメラ高さを計測すること自体もこれを入力することも煩雑な作業であり、場合によっては困難である。
【0071】
そこで、この場合の本発明の実施例として、第一の実施例の構成要素に加えて、カメラ高さを何らかの方法で計測する手段を設置し、カメラ高さを逐次計測し、これを監視エリア設定装置に入力し、このデータを使用してカメラパラメータ計算を行い、監視エリア設定部でこのパラメータを使用して3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリアを設定する方法及び装置を提案する。
カメラ高さの計測方法の例を説明する。
監視対象の水平面の高さが変化する場合、図8に示すように、例えば、前述したダムサイト5における取水口6の付近の危険区域の監視などの場合は、地上におけるカメラの設置場所が変わらないとすれば、水平面の高さを計測する測定器、ダム湖の場合は水位計を設置し(一般的なダムでは設置されていることが多い)、水位計の計測値を元に水面とカメラ高さを計算してカメラパラメータを計算することができる。
【0072】
クレーンで吊り上げる場合などカメラの高さ自体が変化する場合は、監視対象の水平面からカメラまでの高さを、レーザー距離計、超音波距離計、ディジタル巻尺、ステレオカメラ、などを使用して直接又は間接的に計測して入力することで、カメラパラメータを計算することができる。
本実施例の特徴は、監視対象水平面からのカメラ高さを何らかの手段で知ることにより監視エリアを設定することである。
【0073】
これにより、監視対象水平面からのカメラ高さが一定でなく変化する場合にも、監視エリアの設定が行われる利点がある。
従って、例えば、複数のカメラに対して同一の間隔で監視エリアを設定する場合はパラメータの設定を一括して行うことが可能であり、カメラ毎に個別に設定する必要がないため作業が簡便である。
また、カメラやレンズを交換したあとの調整が不要である。
【0074】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明は、監視カメラの映像中に監視エリアを設定し、画像処理により監視エリアの画像の変化を検出して異常の検出を行う映像自動監視システムに関するもので、特に監視カメラの映像中の監視エリアの設定を行うことができる。
更に、本発明の装置は、水平面上に等間隔で直線上に設置された3点のマーカを画像処理により検出し、カメラ高さの情報を使用してカメラパラメータ計算を行い、3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリアを設定するもので、この監視エリアに対して遠隔監視システムが画像処理を行い異常の検出などを行うことができる。
▲1▼従来は監視エリアの設定はオペレータが映像中の位置を指定して行っており、現場における監視エリアの絶対値を設定できなかったが、本発明によれば、マーカの間隔をもとにカメラパラメータを計算するので、平行線で構成する監視エリアの幅を現場における絶対値で設定可能である。例えばホームの縁から50cm以内の範囲を監視エリアとして設定可能である。
▲2▼従来は監視エリアの設定はオペレータが映像中の位置を指定して行っており、監視カメラが複数設置されているときは個々の監視カメラ毎に個別に監視エリアを設定する必要があったが、本発明によれば、複数のカメラで同一の間隔の監視エリアを設定する場合はパラメータの設定を一括して行うことが可能である。これにより監視エリア設定の煩雑さが解消される。例えば、ホームに沿って設置された複数の監視カメラの監視エリアをホームの縁から50cm以内の範囲とする場合は、監視エリアをー括して設定可能である。
▲3▼従来はパンチルトズーム操作を行う監視カメラについては画像処理による自動監視が出来なかった。その理由は監視カメラの映像範囲が変化することにより監視エリアが変わるのでこれを設定することが出来なかったからであるが、本発明によれば水平面上に直線的に等間隔で設置されたマーカを検出してこれを基準とした平行直線を計算することにより監視エリアの計算が可能であるので、パンチルトズーム動作を行う監視カメラを使用した画像処理による自動監視が可能である。
▲4▼本装置が計算して設定した画像監視エリアを入力した監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示することにより監視エリアをオペレータが確認できる利点がある。これにより、画像処理装置による自動監視と同時にオペレータによる目視による監視が可能になる。
▲5▼3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線を監視エリアとして設定し、監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示し、監視エリアを領域でなく直線で表現するので、道路の特定車線の走行状況の監視、ダムサイトの上面の縁部分の監視、工事現場の側溝の境界部分の監視などに適用可能である。また、この直線をオペレータが確認できるので、画像処理装置による自動監視と同時にオペレータによる目視による監視が可能である。
▲6▼監視カメラの雲台を操作して3点のマーカが映る雲台位置を決定したあとに、一度計算した監視エリアを保持することにより、監視エリアの設定後に何らかの理由でマーカが隠れたり移動しても同一の監視エリアを使用することが可能になる。現場の状況の変化や人の移動などによりマーカが隠れたり移動したりする可能性のある、建物の出入り口や工事現場の監視のときに効果がある。
▲7▼3点のマーカを画像処理により検出する替わりに、監視カメラの映像中の3点をオペレータがマウスで指定することにより、画像処理により検出すべきマーカがない場合、マーカが検出しにくい場合、専用のマーカを設置できない場合にも監視エリアを設定することが可能となる。
▲8▼カメラ仰角を何らかの手段で計測して入力することにより、カメラの高さが変化する場合にも監視エリアの設定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の監視エリア設定装置の構成図である。
【図2】空間座標系とカメラ座標系の関係を示す説明図である。
【図3】監視カメラのカメラパラメータを示す説明図である。
【図4】3点マーカ映像とカメラとの関係を示す説明図である。
【図5】設定された領域の監視エリアを示す表示図である。
【図6】設定された平行線の監視エリアを示す表示図である。
【図7】マーカの位置をモニタ上でマウスで設定する様子を示す説明図である。
【図8】ダムサイトにおける取水口の監視を示す説明図である。
【図9】通用門の映像と監視エリアの例を示す説明図である。
【図10】道路の映像と追い越し車線の監視エリアを示す説明図である。
【符号の説明】
10 監視エリア設定装置
11 映像入力部
12 画像処理部
13 カメラパラメータ計算部
14 監視エリア設定部
20 監視カメラ
Claims (6)
- 映像入力部と、画像処理部と、カメラパラメータ計算部と、監視エリア設定部とで構成し、映像入力部で監視カメラの映像を入力し、画像処理部で画像処理により監視対象水平面上の3点のマーカを検出し、カメラパラメータ計算部において3点が水平面上で等間隔に設置されていること及びカメラ高さ情報を利用したカメラパラメータ計算を行い、計算されたカメラパラメータを使用して監視エリア設定部で3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリアを設定することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置及びその方法。
- 請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、本装置が計算して設定した監視エリアを入力した監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置。
- 請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、監視エリア設定部では3点のマーカを結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線を監視エリアとして設定し、監視カメラの映像と共にモニタにオーバレイ表示することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置。
- 請求項2又は3記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、表示する監視エリア又は平行な直線をオペレータの操作指示に基づき保持する機能を有することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置。
- 請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、監視カメラの映像を表示したモニタ上でオペレータにより指定された3点を使用してカメラパラメータ計算を行い、3点を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な直線に囲まれた監視エリア、又は3点を結ぶ直線とこれと一定間隔で平行な一本又は複数の直線を設定又はモニタ表示することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置。
- 請求項1記載の監視カメラの監視エリア設定装置において、監視エリア設定部では何らかの方法で監視カメラ高さを計測するセンサを設置し、監視エリア設定部はこれを入力し、これをもとに3点のマーカを結ぶ直線と、これに水平面上で平行で指定された間隔の一本又は複数の直線を計算し監視エリアとして設定することを特徴とする監視カメラの監視エリア設定装置。
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