JP4139659B2 - 電子レンジ用包装袋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、また、電子レンジで加熱するときに内容物を包装したまま破裂を起こさず、自動的に内圧を低下させることができる電子レンジ用包装袋に関するものである。
さらに詳しくは、内容物として、カレー等の流動性食品、飲料水等の各種の飲食品を密封包装し、袋を横置に載置したまま内容物がこぼれることなく、安全に加熱することができ、更に、開封時の破裂音の防止、及び、包装袋の膨らみを防止できる電子レンジ用包装袋に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子レンジの普及発展に伴い、また、調理の簡便化の要請から、調理済み加工食品を、プラスチック製の包装袋等に包装し、密封して、保存性を持たせた形態で流通されている。
こうした食品を電子レンジで加熱する場合において、包装袋が、密封したままであると、加熱により内容物から発生する水蒸気により袋内の内圧が上昇し、ついには破裂し、内容物が電子レンジ庫内に飛散してしまうことが知られている。
このような包装袋の破裂を防止するために、従来の包装容器としては、例えば、電子レンジで加熱する前に、包装袋の一部をはさみで切り、通気口を形成しておく包装容器がある(例えば、特許文献1参照。)。
また、消費者が、加熱する前に、前記の通気口を形成する作業を忘れてしまい、加熱して袋を破裂させる事態を回避するため、自動的に水蒸気を通気することができる種々の包装容器が提案されている。
電子レンジで加熱した際の容器内圧の上昇により、ガス抜き用の貫通細孔が、プラスチック容器のシール面上に塗布された剥離剤に沿って生じる包装容器がある(例えば、特許文献2参照。)。
また、同様の貫通細孔が、耐熱性のある熱可塑性樹脂層とシーラントフィルムとの中間に設けられた剥離剤層に沿ってシール面上に生じる包装容器もある(例えば、特許文献3参照。)。
また、通気性不織布が、非通気性表裏面フィルムに設けられた包装容器もある(例えば、特許文献4参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−72070号公報(第2−3頁、第3図)
【特許文献2】
特開平9−40030号公報(第4頁、第6図)
【特許文献3】
特開平9−272180号公報(第3−4頁、第4図)
【特許文献4】
特開平9−240754号公報(第2−3頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電子レンジで加熱する前に、包装袋の一部をはさみで切り、通気口を形成しておく包装容器は、手間がかかって面倒であり、また、消費者が加熱する前に、前記の通気口を形成する作業を忘れてしまい、加熱して袋を破裂させる恐れがあり、非常に危険である。
また、シール面上に剥離剤を塗布した包装容器の場合において、上記の剥離剤は、もともと剥離しやすくするために形成されているものであるため、通常の輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によってシール面から剥離するおそれがあった。
また、上記の剥離剤の塗布面がシール部分からはみ出すように形成されたものは、剥離剤が内容物と接触するため、好ましくなかった。
そのため、従来は、輸送時の衝撃等に耐えるように、剥離剤層のパターン形状を工夫したり、剥離剤層がシール部分からはみ出さないように精度よく形成しなければならないといった工程上の複雑な問題があった。
また、通気性不織布を非通気性表裏面フィルムに設けた包装容器は、完全な密封状態にならないため、液体状の内容物を充填できず、また、冷凍食品の場合、冷凍流通および保存過程において、内容物の乾燥を生じるという欠点があった。
【0005】
さらに、本出願人は、本件出願に先立ち、少なくとも片面がシーラント層から構成される複合フィルムを用いて、シーラント面を上面とした下部材と、シーラント面同士を向かい合わせて側部と先端辺部とをシールしたウィング部を形成し、シーラント面を下面とした上部材とを重ね合わせ、その周縁部をシールして主シール部として密封した電子レンジ用包装袋の作製を試みた。
この電子レンジ用包装袋は、前記ウィング部内の領域に、蒸気を排出するための易蒸通手段が施されているので、電子レンジで加熱されて起こる内圧の上昇によって開封し、包装袋内の圧力を自動的に逃がすことが可能であった。
【0006】
しかしながら、電子レンジで加熱されて発生する蒸気を袋外に排出する際に、前記の易蒸通手段を施している部分から蒸気の抜けにくい場合があり、かかる場合において、蒸気が抜けるのに時間を要し、包装袋が著しく膨らみ、また、開封時の破裂音の発生により、消費者に恐怖感を与える場合があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究の結果、本発明は、電子レンジにより加熱するための袋であって、少なくとも片面がシーラント層から構成される複合フィルムを用いて、シーラント面を上面とした下部材と、シーラント面同士を向かい合わせて側部と先端辺部とをシールしたウィング部を形成し、シーラント面を下面とした上部材とを重ね合わせ、その周縁部をシールして主シール部として密封した包装袋であって、かつ、前記ウィング部内の領域に、蒸気を排出するための易蒸通手段が施されており、かつ、前記のウィング部を構成する一方の上部材のシーラント層が、低密度ポリエチレンフィルムからなり、他方の上部材のシーラント層、および、下部材のシーラント層が、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなることを特徴とする電子レンジ用包装袋を製造したところ、輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、袋を横置に載置したまま、自動的に内圧を低下させることができ、内容物として、固形食品に加えて流動性食品等の各種の飲食品を密封包装でき、速やかに蒸気が抜け、包装袋の膨らみを抑え、開封時の破裂音の発生を防止でき、消費者が安心して加熱することができる電子レンジ用包装袋を製造し得ることを見いだすに至った。
上記において、本発明によれば、前記の包装袋の端部からウィング部までとウィング部から他端部までの長さの比が2/3以下であることを特徴とする電子レンジ用包装袋を提供することができる。
また、前記の易蒸通手段が、ウィング部の長手方向の中心部に形成され、かつ、包装袋の中心部から易蒸通手段までの距離を、包装袋の中心部からサイドシール部内縁までの距離より短い位置に形成されていることを特徴とする電子レンジ用包装袋を提供することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の電子レンジ用包装袋の実施例を示す図で、(a)斜視図、(b)包装袋の構成の図、(c)X1−X1部断面図、(d)包装袋の一方の上部材を形成する積層体の層構成例を示す断面図、(e)包装袋の他方の上部材、および、下部材を形成する積層体の層構成例を示す断面図である。
図2は、本発明の電子レンジ用包装袋における各種の易蒸通手段を説明する図であり、図3は、易蒸通手段の位置を説明する図である。
図4は、本発明のコントロールシール部を設けた電子レンジ用包装袋の実施例を示す図であり、図5は、コントロールシール部のシール形状を示す図である。
【0009】
まず、本発明にかかる電子レンジ用包装袋1を形成する各部材について説明する。
本発明にかかる電子レンジ用包装袋は、図1(a)〜図1(c)に示すように、袋を平面上に載置した際に上部に位置する部分にウィング部4を設け、該ウィング部4の領域内に、後述する突出シール部54、未シール部64、および、切り込み63等からなる易蒸通手段を施すものである。
【0010】
次に本発明の電子レンジ用包装袋を構成する積層体について説明する。
図1(d)に示すように、包装袋の一方の上部材を形成する積層体10aは、耐熱性基材層12、印刷層13、接着層14、低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層15aの順に積層されている。
なお、印刷層13と接着層14は、後述するように、必須の層ではなく、適宜必要に応じて設けられる層である。
また、図示しないが、必要に応じて、耐熱性基材層12とシーラント層15の層間に中間層を設けてもよい。
従って、本発明で用いられる包装袋の一方の上部材を形成する積層体は、少なくとも耐熱性樹脂層12と低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層15a、15bを備えた積層体である。
【0011】
図1(e)に示すように、包装袋の他方の上部材および下部材を形成する積層体10bは、耐熱性基材層12、印刷層13、接着層14、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層15bの順に積層されている。
なお、印刷層13と接着層14は、後述するように、必須の層ではなく、適宜必要に応じて設けられる層である。
また、図示しないが、必要に応じて、耐熱性基材層12とシーラント層15の層間に中間層を設けてもよい。
従って、本発明で用いられる包装袋の他方の上部材および下部材を形成する積層体10bは、少なくとも耐熱性樹脂層12と直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなるシーラント層15bを備えた積層体である。
【0012】
本発明における包装袋の各部材を構成するシーラント層15aおよびシーラント層15bは、必須の層として、包装袋が作製される際には内容物に接触する最内層となる。
本発明にかかる上部材を構成するシーラント層15aとしては、低密度ポリエチレンフィルムを使用し、他方の上部材および下部材を構成するシーラント層15bとしては、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用することが必要である。
一方の上部材のシーラント層15aとして、低密度ポリエチレンフィルムと、他方の上部材のシーラント層15bとして、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを組み合わせてウィング部を構成することにより、従来のように、シール強度の弱い剥離剤層によって一部のシール面が形成されることがないため、冷凍時、輸送時、保管時等において、外部からの衝撃により貼り合わされたシール面が破れて内容物の露出が起こることなく、必要なシール強度を保持することができるため、好ましい。
また、上記の2種類のシーラント層15aおよび15bとを組み合わせてウィング部を構成することにより、電子レンジで高温に加熱する際、加熱で発生する蒸気の熱と圧力で、ウィング部4内の易蒸通手段を施した部分のシーラント層境界面で速やかに剥離後退する適度なシール強度となる性質を有するため、切り込み部から蒸気を放散して自動開封しやすく、また、開封時の破裂音も静かで好ましいものである。
一方、ウィング部4を構成するシーラント層15aおよびシーラント層15bの材質が、どちらも直鎖状低密度ポリエチレンフィルムとすると、電子レンジで加熱する際、加熱によって発生する蒸気の熱と圧力によって開口するものの、シール部境界面付近のシール強度が大きくため、開口するまでに時間を要する場合があり、かかる場合において、包装袋が膨らみ、開封時の破裂音が大きくなり、消費者に恐怖感を与えるため、好ましくない。
また、ウィング部を構成するシーラント層15aおよびシーラント層15bの材質が、どちらも低密度ポリエチレンフィルムとすると、電子レンジで加熱する際、加熱によって発生する蒸気の熱と圧力によって開口するものの、シール部境界面付近のシール強度が大きくため、開口するまでに時間を要する場合があり、かかる場合において、包装袋が膨らみ、開封時の破裂音が大きくなり、消費者に恐怖感を与えるため、好ましくない。
更に、ウィング部を構成するシーラント層15aおよびシーラント層15bの材質が、どちらも低密度ポリエチレンフィルムの場合、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムと比べ、シール強度に劣るため、冷凍時、輸送時、保管時等において、貼り合わされたシール面が破れて内容物の露出が起こる場合があるため、好ましくない。
また、上記のシーラント層15bとして、中でも、コモノマ−の炭素数6や、炭素数8の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(以下、「C6LLDPE」「C8LLDPE」という。)等が、シール強度に優れる性質を有するため、より好ましいものである。
また、シーラント層は、これらの樹脂を押出しラミネート法で形成してもよく、予め、Tダイ法またはインフレーション法等により製膜したフィルムとして形成してもよい。
これらのシーラント層15aおよびシーラント層15bの厚さは、通常20〜100μmが好ましく、30〜60μmがより好ましい。
【0013】
上記において、本発明にかかる包装袋のシール強度として説明すると、まず、ウィング部上端部および他のシール強度が、室温23℃において、30(N/15mm)〜100(N/15mm)位が、室温時又は冷凍時の取扱、輸送、保管等によってはシール部が剥がれて開くことがなく、好ましい。
また、80℃以上の高温の温度領域において、後述するウィング部領域内の易蒸通手段を施した部分のシール強度が、2(N/15mm)〜15(N/15mm)の範囲にあることが好ましく、、2(N/15mm)〜10(N/15mm)の範囲にあることがより好ましく、かつ易蒸通手段を施した部分以外のシール強度が、20(N/15mm)〜50(N/15mm)の範囲にあることが好ましい。
このような特性を有する包装材料によって作製された包装袋は、電子レンジで加熱する際、加熱で発生する蒸気の熱と圧力によって、ウィング部内の易蒸通手段を施した部分で選択的、かつ、速やかに剥離後退して、切り込み部等から蒸気を放散して自動開封しやすく、また、開封時の破裂音も静かであり、好ましい。
【0014】
耐熱性基材層12としては、一般に電子レンジで加熱または加熱調理される冷凍食品やチルド食品用の包装材料として使用されているものであれば特に限定されず、この包装材料を用いて包装袋が作製された際には外側に配置されるように設けられる。
例えば、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、シリカ蒸着延伸ナイロンフィルム、アルミナ蒸着延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールコート延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロン6/メタキシレンジアミンナイロン6共押共延伸フィルム、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム等のうち、何れかのフィルムを使用することができる。
これらの耐熱性樹脂層12は、融点が通常150℃以上であり、厚さは10〜50μmである。
【0015】
印刷層13は、従来公知の印刷方法等によって、内容表示または美感付与等の目的で設けられるものであり、必須の層ではなく、適宜必要に応じて設けられる。
通常、この印刷層13は、図1(d)および図1(e)に示すように、耐熱性基材層12の上面側、すなわち包装袋が作製された際に耐熱性基材層12の内側(内容物側)になるように形成されてもよく、耐熱性基材層12の下面側、すなわち包装袋が作製された際に耐熱性基材層12の外側(内容物の反対側)になるように形成されてもよい。
【0016】
なお、中間層としては、図示しないが、必要に応じて、耐熱性基材層12とシーラント層15の層間に設けてもよい。
中間層としては、例えば、酸素バリア層および衝撃吸収樹脂層の何れか一方または両方を設けることもできる。また、これらの層を数層設けることもできる。
例えば、酸素バリア層としては、塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、無機物蒸着フィルムを用いることもできる。
衝撃吸収樹脂層としては、ナイロンフィルムが好適に用いられる。
ナイロンフィルムは、1軸延伸、2軸延伸または無延伸の何れのものであっても好適に用いることができる。
衝撃吸収樹脂層の厚さは特に限定されないが、通常5〜40μm、好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0017】
包装材料の各層を形成する樹脂には、本発明の目的の達成を阻害しない範囲で、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤のような公知の添加剤を随時添加することができる。
その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0018】
次に、上記の本発明において、上記のような材料を使用して積層体を製造する方法について説明すると、かかる方法としては、耐熱性基材層12、(必要に応じて中間層)、接着層14およびシーラント層15の層間は、例えば、ラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤を介して積層するドライラミネーション法、あるいは、溶融押出し接着性樹脂による溶融押出し樹脂層を介して積層する押出しラミネーション法等で行うことができる。
【0019】
上記において、ラミネート用接着剤としては、例えば、1液、あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のラミネート用接着剤を使用することができる。
上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
その塗布量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位が好ましく、1〜5g/m2(乾燥状態)位がより好ましい。
【0020】
上記において、溶融押出性樹脂層としては、熱可塑性樹脂層からなる樹脂層が使用され、各層間を接着するために使用することができる。
具体的には、接着性の溶融押出性樹脂層の材料としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン・マレイン酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂等を使用することができる。これらの材料は、一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。
その樹脂層の厚みとしては、10〜30μm位が好ましい。
【0021】
なお、上記の積層を行う場合、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理、フレ−ム処理、その他等の前処理を施し、積層することができる。
上記の表面前処理は、各種の樹脂のフィルムないしシートと各層を積層する際、密着性等を改良するための方法として実施するものであるが、上記の密着性を改良する方法として、例えば、各種の樹脂のフィルムないしシートの表面に、予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
【0022】
上記の前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0023】
以上に説明した電子レンジ用積層体10aおよび10bを、シーラント層が向かい合うように重ね合わせ、所望の被シール部をヒートシールすることによって、本発明にかかる種々の形態の電子レンジ用包装袋を製造することができる。
上記において、ヒ−トシ−ルの方法としては、例えば、バ−シ−ル、回転ロ−ルシ−ル、ベルトシ−ル、インパルスシ−ル、高周波シ−ル、超音波シ−ル等の公知の方法で行うことができる。
【0024】
図1(a)に示すように、上記のような積層材を使用して製袋された本発明の電子レンジ用包装袋1は、前記のウィング部4に設けた面を上面とし、ウィング部4内に、突出シール部54、未シール部64、および、切り込み63等の易蒸通手段が施されているものである。
上記の易蒸通手段により、本発明の包装袋1は、ウィング部4を上にして横置きにして電子レンジで加熱する際、予め蒸気の逃げ口を作成しなくても、電子レンジの加熱で発生する蒸気の熱と圧力により、前記の突出シール部54のシール部が未シール部64まで速やかに剥離後退し、切り込み63から袋外へ放散し、開封時の破裂音も小さく、安全に自動開封されるものである。
また、ウィング部4には前記の突出シール部54以外に、図示しないが、開封しやすくするためのガイドシール部を設けてもよい。
【0025】
本発明の電子レンジ用包装袋における前記ウィング部の位置は、図1(a)に示すように、上記の包装袋の端部からウィング部までの長さaとウィング部から他端部までの長さbの比が2/3以下であることが好ましい。
前記の長さが2/3を超えると、電子レンジによる加熱の際、ウィング部内の易蒸通手段を施した部分に効率的に圧力が集中せず、包装袋が著しく膨らんだり、開封時に破裂音が発生して、消費者に恐怖感を与え、また、場合によっては開封しにくくなるため、サイドシール部5dで破れるため、内容物の漏れ発生の原因となり、好ましくないからである。
上記において、ウィング部4の上端辺部から下端辺部までの長さcが、包装袋の端部からウィング部4までの長さaより短いことが好ましい。
前記のウィング部4の上端辺部から下端辺部までの長さcが、包装袋の端部からウィング部までの長さaより長いと、電子レンジによる加熱の際、加熱により発生する圧力が易蒸通手段を施した部分に効率的に集中せず、サイドシール部5dで破れるため、内容物の漏れ発生の原因となり、好ましくないからである。
【0026】
次に、本発明において、上記のような本発明にかかる易蒸通手段について説明すると、易蒸通手段とは、電子レンジによる加熱によって発生する蒸気を密封包装にすみやかに自動開口し、袋外へ放散する開口部の形成を容易とするために蒸気の通過を容易にする手段をいう。
易蒸通手段を施す位置としては、図2(a)〜図2(h)に示すように、前記のウィング部内に形成されるものである。
具体的な手段としては、まず、図2(a)に示すように、ウィング部4先端辺部のシール部中央部付近に、切り欠き62を入れたり、図2(b)に示すように、切り込みを63入れたりしてもよい。
【0027】
また、本発明にかかる他の態様の易蒸通手段としては、図2(c)〜(e)に示すように、包装袋内方に向かって形成された突出シール部51、52、53に、穴61または切り欠き62を設けるものである。
また、本発明にかかる他の態様の易蒸通手段としては、図2(f)に示すように、突出シール部54の内部に未シール部64を形成し、更にその未シール部内に切り込み63を入れてもよい。
【0028】
上記において、突出シール部を形成する位置としては、例えば、図2(f)の易蒸通手段の態様で説明すると、図3に示すように、包装袋の中心部から突出シール部54までの距離r2を、包装袋の中心部からサイドシール部内縁までの距離r1より短い位置に形成されていることが好ましい。
例えば、包装袋の中心部を中心とした円を描いた場合、突出シール部54を形成する位置としては、包装袋の中心から突出シール部54の最下端に接する円の半径r2を、半径r1よりも短くなるような位置に設けることにより、電子レンジで加熱する際、上昇した内圧の応力が集中することになり、選択的に突出シール部54の位置で剥離して蒸気を放散でき、内容物がこぼれることもなく、好ましい。
前記の半径r2が、半径r1よりも長いと、加熱により発生する蒸気の熱と内圧の上昇によるシール部の剥離後退が、主シールのサイドシール部5dで剥離するため、包装袋の破袋、内容物の漏れ等の恐れがある。
【0029】
本発明にかかる他の態様の易蒸通手段としては、図2(g)に示すように、ウィング部4の長手方向の中心部にポイントシール部55を設け、更に、切り込み63を入れたものである。
また、図示しないが、切り込み63の替わりに穴を形成してもよい。
また、この切り込み63または穴は、ポイントシール部65の内側にあるので、流通段階では完全に密封した包装袋である。
【0030】
また、本発明にかかる他の態様の易蒸通手段としては、図2(h)に示すように、ウィング部4先端辺部のシール部5aのシール幅としては、その他のシール部5bおよび5cより狭くすることができる。
ウィング部4先端辺部のシール部5aのシール幅を狭くすることによって、電子レンジで加熱する際、加熱で発生する蒸気の熱と圧力により、ウィング部内の先端辺部のシーラント層境界面で速やかに剥離後退することができる。
そのウィング部4先端辺部のシール幅L1としては、4〜6mm位が好ましく、その他のシール部5bおよび5dのシール幅L2としては、10〜12mm位が好ましい。
【0031】
本発明において、前記の突出シール部54とともに、図4(a)に示すように、ウィング部4の左右のサイドシール部5bから突出シール部54に向かって、ウィング部4の上端辺部シール部5aとほぼ平行にコントロールシール部5cを設けることによって、電子レンジ加熱によって発生する蒸気の熱と圧力が、突出シール部54に急激に圧力の応力が集中することなく、一気にシールが剥離後退するのを防ぎ、内容物が切り込み63からこぼれたりすることなく、破裂音も小さく、突出シール部54に適度にかかるように調節することができるため、好ましいものである。
コントロールシール部5cの先端は、図4(b)に示すように、包装袋の中心から同心円を書いたときに、切り込み63の下端から突出シール部54とウィング上端辺部シール部5aの接点との間に含まれ、かつ、図4(c)に示すように、主シール部のサイドシール部5dと突出シール部54の距離d2と、主シール部のサイドシール部5dとコントロールシール部5cの先端との距離d3との比、d2/d3が、8/7以上とすることが好ましい。
また、図示しないが、突出シール部54の替わりにポイントシール部65であってもよい。
主シール部のサイドシール部5dと突出シール部54の距離d2と、主シール部のサイドシール部5dとコントロールシール部5cの先端との距離d3との比、d2/d3が、8/7未満とすると、突出シール部54に十分な圧力の応力が集中せず、他シール部から破袋する恐れがあり、好ましくない。
【0032】
前記のコントロールシール部5cは、上記の範囲を満たす範囲において、種々の形状を設けることができる。
例えば、コントロールシール部5cをベタシール部としてもよく、図5(a)〜図5(d)に示すように、コントロールシール部5cの上部を直線、曲線からなるシール線の組み合わせによって独立密封部Rを設けてもよく、前記の独立密封部Rの内側は未シールであってもよいし、パターンシールであってもよい。
更に、図5(a)に示すように、前記のベタシール部や独立密封部R内に、切り込み63を設けてもよい。
ベタシール部や独立密封部R内に切り込み63を設けることによって、流動性食品等の内容物を電子レンジで加熱したり、出力の高い電子レンジで加熱する際に、蒸気が急激に発生し、切り込み63からの蒸気の放散を緩和させることができ、好ましいものである。
また、図5(a)に示すように、切り込み63が内容物等で詰まった場合の安全装置としても機能することができ、好ましいものである。
また、前記のコントロールシール部5cのシール幅としては、主シール部のサイドシール部と同じシール幅にすることにより、輸送や保管をする際に、外部から加わる圧力や衝撃に耐える点で利点を有するため、好ましいものである。
【0033】
また、前記のコントロールシール部5cは、ほぼ左右対称となるようにすることが好ましい。
前記のコントロールシール部5cを左右非対称とすると、突出シール部54への圧力のかかり方に偏りを生じ、うまく自動開封できないため、好ましくない。
【0034】
本発明において、上記のようにして製造した電子レンジ用包装袋は、例えば、冷凍しゅうまい等の固形食品、カレー、スープ、醤油、ソ−ス、出し汁、香辛料、料理用酒類、果汁類、水等の各種の流動性食品、飲食品を充填包装し得るものである。
【0035】
以上説明したごとく、本発明の電子レンジ用包装袋は、上部材の一方のシーラント層が、低密度ポリエチレンフィルムからなり、他方の上部材のシーラント層と下部材のシーラント層が、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなることによって、ウィング部を上にして横置きにして電子レンジで加熱する際、予め蒸気の逃げ口を作成しなくても、電子レンジの加熱で発生する蒸気を速やかに易蒸通手段を介して袋外へ放散し、流動性のある食品が漏れることなく、安定して十分に加熱でき、包装袋の著しい膨らみもなく、開封時の破裂音も小さく、安全に自動開封されるものである。
【0036】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。
(実施例1)
(1)下部材2および上部材の片側部材3bの作製
耐熱性基材層12として厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを用い、その上に、シーラント層15bとして50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用い、二液硬化型ポリウレタン接着剤を接着層14として用いて貼り合わせてドライラミネートし、下部材2および上部材の片側部材3bを作製した。
(2)上部材の片側部材3aの作製
次に、耐熱性基材層12として厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを用い、その上にシーラント層15aとして50μmの低密度ポリエチレンフィルムを用い、二液硬化型ポリウレタン接着剤を接着層14として用いて貼り合わせてドライラミネートし、上部材の他側部材3aを作製した。
(3)包装袋の作製
上記で得られた上部材3a、上部材3bおよび下部材2を用いて、シール温度160℃、圧力1kg/秒、シール幅10mmで、図6に示すような包装袋(145mm×180mm)を作製した。
図4に示す各部位の寸法を次の通りとした。
a=50mm、b=130mm、c=30mm、d=145mm、
r1=65mm、r2=55mm、
w1=10mm、w2=5mm、w3=15mm
(4)包装体の作製
この包装袋に冷凍スープ(150g)を入れ、得られた包装体のウィング部を上向きにして横置の状態で、500W電子レンジにて加熱した結果、ウィング部の長手方向の中心部に設けた突出シール部54で速やかに剥離後退し、約5分後に未シール部64内の切り込み部63から静かに蒸気が抜けた。
なお、蒸気は包装袋上部から抜けたので、内容物のふきこぼれもなかった。
【0037】
(比較例1)
包装袋を構成する各部材(上部材3a、上部材3bおよび下部材2)に使用するシーラント層として、厚み50μmの低密度ポリエチレンフィルムを使用すること以外は、上記の実施例1と同様の材質、方法を用いて、図6に示すような包装袋を製造した。
その後、実施例1と同様に冷凍スープ(150g)を入れ、比較例1の包装体を得た。
【0038】
(比較例2)
耐熱性基材層12として、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを用い、その上にシーラント層15aおよび15bとして、50μmのポリエチレン樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなるイージーピールフィルム(商品名「アロマーTP11」、 昭和電工(株)製)を用い、二液硬化型ポリウレタン接着剤を接着層14として用いて貼り合わせてドライラミネートし、上部材の他側部材3aを作製した。
上記の上部材3a以外は、上記の実施例1と同様の材質、方法を用いて、図6に示すような包装袋を製造した。
その後、実施例1と同様に冷凍スープ(150g)を入れ、比較例2の包装体を得た。
【0039】
(実験1:シール強度測定)
実施例1、比較例1および比較例2で製造した包装袋について、図4に示す2個所の位置にて、サンプルを15mm巾の短冊切りし、23℃および90℃で、引張試験機(オリエンテック社製)でT字剥離して測定した。
なお、引張速度は、300mm/min、つまみ間隔50mm、ロ−ドセル5kgfで行った。
上記の測定結果について、下記の表1に示す。
なお、表1中には、15mm当たりのシール強度(単位:N/15mm)を記載した。
【0040】
(実験結果)
【表1】
【0041】
上記の測定結果より明らかなように、実施例1にかかる包装袋は、常温23℃、すなわち食品等の包装工程時や流通過程での環境温度領域において必要なシール強度を保持し、90℃、すなわち電子レンジで加熱するときの環境温度領域において、ウィング部のシール強度が低下し、ウィング部4内の突出シール部54で速やかに剥離後退し、包装袋の著しい膨張もなく、約5分後に未シール部64内の切り込み部63から静かに蒸気が抜け、内容物がこぼれることなく、安定して加熱することができるものであった。
これに対し、比較例1において、実施例1と同様に500W電子レンジにて加熱した結果、サイドシール部5dが破れ、大きな音を立てて爆発し、内容物が飛散した。
また、比較例2において、実施例1と同様に500W電子レンジにて加熱した結果、5分後に切り込み部63から静かに蒸気が抜けたものの、ウィング部4内の測定位置Aのシール強度が劣るため、冷凍時、輸送時、保管時等において、外部からの衝撃に対して弱く、場合によって、シール面から剥離して内容物の漏れを生じることもあった。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明は、電子レンジにより加熱するための袋であって、少なくとも片面がシーラント層から構成される複合フィルムを用いて、シーラント面を上面とした下部材と、シーラント面同士を向かい合わせて側部と先端辺部とをシールしたウィング部4を形成し、シーラント面を下面とした上部材とを重ね合わせ、その周縁部をシールして主シール部として密封した包装袋であって、かつ、前記ウィング部4内の領域に、蒸気を排出するための易蒸通手段が施されており、かつ、前記のウィング部4を構成する一方の上部材のシーラント層15aが、低密度ポリエチレンフィルムからなり、他方の上部材のシーラント層15b、および、下部材のシーラント層15bが、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなることを特徴とする電子レンジ用包装袋を製造したところ、輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、電子レンジで加熱するときに内容物を包装し、袋を横置に載置したままで破裂を起こさず、包装袋の著しい膨張もなく、開封音も静かで、自動的に安定して内圧を低下させることができ、流動性食品等の内容物でもこぼれることなく、消費者が安心して加熱することができる優れた電子レンジ用包装袋1を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子レンジ用包装袋の実施例を示す図で、(a)斜視図、(b)包装袋の構成の図、(c)X1−X1部断面図、(d)包装袋の一方の上部材を形成する積層体の層構成例を示す断面図、(e)包装袋の他方の上部材、および、下部材を形成する積層体の層構成例を示す断面図である。
【図2】 本発明の電子レンジ用包装袋における各種の易蒸通手段を説明する図である。
【図3】 本発明の電子レンジ用包装袋における易蒸通手段の位置を説明する図である。
【図4】 本発明のコントロールシール部を設けた電子レンジ用包装袋の実施例を示す図で、(a)斜視図、(b)コントロールシール部の長さの説明図、(c)突出シール部、コントロールシール部の形成位置の説明図である。
【図5】 本発明の電子レンジ用包装袋におけるコントロールシール部のシール形状を示す図である。
【図6】 本発明の電子レンジ用包装袋の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
1 本発明の電子レンジ用包装袋
2 下部材
3a 上部材
3b 上部材
4 ウィング部
5a ウィング部の上端辺部のシール部
5b ウィング部のサイドシール部
5c コントロールシール部
5d 主シール部のサイドシール部
10a 積層体
10b 積層体
12 耐熱性基材層
13 印刷層
14 接着層
15a 低密度ポリエチレンフィルム層(シーラント層)
15b 直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層(シーラント層)
51、52、53、54 突出シール部
55 ポイントシール部
61 穴
62 切り欠き
63 切り込み
64 未シール部
r1、r2 半径
R 独立密封部
Claims (3)
- 電子レンジにより加熱するための袋であって、少なくとも片面がシーラント層から構成される複合フィルムを用いて、シーラント面を上面とした下部材と、シーラント面同士を向かい合わせて側部と先端辺部とをシールしたウィング部を形成し、シーラント面を下面とした上部材とを重ね合わせ、その周縁部をシールして主シール部として密封した包装袋であって、かつ、前記ウィング部内の領域に、蒸気を排出するための易蒸通手段が施されており、かつ、前記のウィング部を構成する一方の上部材のシーラント層が、低密度ポリエチレンフィルムからなり、他方の上部材のシーラント層、および、下部材のシーラント層が、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなることを特徴とする電子レンジ用包装袋。
- 前記の包装袋の端部からウィング部までとウィング部から他端部までの長さの比が2/3以下であることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ用包装袋。
- 前記の易蒸通手段が、ウィング部の長手方向の中心部に形成され、かつ、包装袋の中心部から易蒸通手段までの距離を、包装袋の中心部からサイドシール部内縁までの距離より短い位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の電子レンジ用包装袋。
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