JP4138709B2 - 液化ガスエンジンの燃料供給装置 - Google Patents
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Description
上記エンジンにおいては、燃料の気化潜熱により気化器が過度に冷却された場合、燃料の気化が十分に行われなくなるため、運転状態に応じた適正量の燃料を燃焼室へ供給することが困難となる。
即ち、エンジンの冷間始動時等のように冷却水の温度が低い場合、冷却水による気化器の加熱が十分に行われないため、気化器において燃料を適切に気化させることができない。
<請求項1>
請求項1に記載の発明は、液化ガス燃料を気化する気化器と、前記気化器とエンジンとの間で熱媒体を循環させる循環回路と、前記熱媒体を貯留する断熱容器とを備えた液化ガスエンジンの燃料供給装置であって、前記エンジンの始動に先立ち、前記断熱容器内に貯留されている高温の熱媒体を前記気化器内に封じ込め、前記エンジンの始動後、前記気化器により気化された燃料の累積量に基づいて前記熱媒体の封じ込めを解除する制御手段を備えたことを要旨としている。
<請求項2>
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、前記制御手段は、前記気化器内に前記断熱容器内の熱媒体を封じ込めてからの燃料噴射量の累積量を前記気化された燃料の累積量の指標値として採用し、前記燃料噴射量の累積量が対噴射量判定値以上となったことに基づいて前記熱媒体の封じ込めを解除することを要旨としている。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、前記制御手段は、前記気化器内に封じ込めた直後の前記熱媒体の温度に基づいて前記対噴射量判定値を設定することを要旨としている。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、前記制御手段は、さらに外気の温度を加味して前記対噴射量判定値を設定することを要旨としている。
従って、上記態様をもって対噴射量判定値を設定することで、熱媒体の封じ込めの解除をより的確に行うことができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、前記制御手段は、前記気化器内に前記断熱容器内の熱媒体を封じ込めてからの吸入空気量の累積量を前記気化された燃料の累積量の指標値として採用し、前記吸入空気量の累積量が対吸気量判定値以上となったことに基づいて前記熱媒体の封じ込めを解除することを要旨としている。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、前記制御手段は、前記気化器内に封じ込めた直後の前記熱媒体の温度に基づいて前記対吸気量判定値を設定することを要旨としている。
<請求項7>
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、前記制御手段は、さらに外気の温度を加味して前記対吸気量判定値を設定することを要旨としている。
<請求項8>
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、前記循環回路は、前記エンジンを介することなく前記気化器と前記断熱容器との間で前記熱媒体を循環させる第1循環回路と、前記エンジンを介して且つ前記気化器を介することなく前記熱媒体を循環させる第2循環回路と、前記エンジンと前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第3循環回路とを含めて構成されるものであり、前記制御手段は、前記第1循環回路を通じて前記熱媒体を循環させた後に前記循環回路を前記第1循環回路から前記第2循環回路へ切り替えることで前記気化器内へ前記熱媒体を封じ込め、前記循環回路を前記第2循環回路から前記第3循環回路へ切り替えることで前記熱媒体の封じ込めを解除するものであることを要旨としている。
請求項9に記載の発明は、インジェクタを通じて燃料の供給を行う液化ガスエンジンの燃料供給装置であって、液化ガス燃料を気化して前記インジェクタへ供給する気化器と、エンジンにより加熱された熱媒体を貯留する断熱容器と、前記エンジンを介することなく前記断熱容器と前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第1循環回路と、前記エンジンを介して且つ前記気化器を介することなく前記熱媒体を循環させる第2循環回路と、前記エンジンと前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第3循環回路とを備え、前記エンジンの始動準備動作が検出されたことに基づいて、前記第1循環回路を通じての前記熱媒体の循環を開始し、前記断熱容器内に貯留されている高温の熱媒体が前記気化器内へ供給されたことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を第1循環回路から前記第2循環回路へ切り替えるとともに前記エンジンの始動を許可し、前記エンジンの始動後、前記エンジンが始動してから現在までに前記インジェクタを通じて噴射された燃料の累積量を算出し、前記燃料の累積量が対噴射量判定値以上となったことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を前記第2循環回路から前記第3循環回路へ切り替えることを要旨としている。
請求項10に記載の発明は、キャブレターを通じて燃料の供給を行う液化ガスエンジンの燃料供給装置であって、液化ガス燃料を気化して前記キャブレターへ供給する気化器と、エンジンにより加熱された熱媒体を貯留する断熱容器と、前記エンジンを介することなく前記断熱容器と前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第1循環回路と、前記エンジンを介して且つ前記気化器を介することなく前記熱媒体を循環させる第2循環回路と、前記エンジンと前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第3循環回路とを備え、前記エンジンの始動準備動作が検出されたことに基づいて、前記第1循環回路を通じての前記熱媒体の循環を開始し、前記断熱容器内に貯留されている高温の熱媒体が前記気化器内へ供給されたことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を第1循環回路から前記第2循環回路へ切り替えるとともに前記エンジンの始動を許可し、前記エンジンの始動後、前記エンジンが始動してから現在までに前記エンジン内へ吸入された空気の累積量を算出し、前記空気の累積量が対吸気量判定値以上となったことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を前記第2循環回路から前記第3循環回路へ切り替えることを要旨としている。
本発明の第1実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
本実施形態では、液化石油ガス(LPG)を使用する液化ガスエンジンの燃料供給装置として本発明を具体化している。
図1に、液化ガスエンジンの燃料供給装置の構成を示す。
液化ガス燃料供給装置1は、燃料をエンジン9へ供給するための燃料噴射機構3とエンジン9の冷却水(熱媒体)を循環させるための冷却水循環機構5とを備えて構成されている。エンジン9及び液化ガス燃料供給装置1は、電子制御装置Eを通じて制御される。なお、制御手段は、電子制御装置Eを備えて構成される。
燃料噴射機構3は、以下の各要素を備えて構成されている。
燃料タンク31は、密閉状態で燃料を貯留する。なお、燃料タンク31内には、液相状態の燃料と気相状態の燃料とが存在している。
第1燃料通路P1は、燃料ポンプ32とレギュレータ33とをつなげている。
レギュレータ33は、燃料ポンプ32を通じて供給された液相状態の燃料を調圧して気化する。レギュレータ33には、燃料を気化させるための燃料室33Aと冷却水を貯留するための冷却水室33Bとが設けられている。
デリバリパイプ35は、各インジェクタ36へ燃料を分配する。
インジェクタ36は、気相状態の燃料をエンジン9の燃焼室へ供給する。
冷却水循環機構5は、内部に貯留した冷却水を保温する断熱容器51、冷却水を循環させる電動ポンプ52、冷却水の流通経路を切り替える三方弁53、及び冷却水の流通経路の一部を開閉する冷却水通路開閉弁54を備えて構成されている。
第1冷却水通路R1は、電動ポンプ52の吐出ポートと断熱容器51とをつなげている。
第3冷却水通路R3は、三方弁53の第2ポート53Bとレギュレータ33の冷却水室33Bの入口とをつなげている。
第5冷却水通路R5は、第4冷却水通路R4及び第6冷却水通路R6と電動ポンプ52の吸入ポートとをつなげている。
第7冷却水通路R7は、三方弁53の第3ポート53Cとエンジン9内部に形成された冷却水通路とをつなげている。なお、エンジン9内部に形成された冷却水通路には、ラジエータに連通されるウォータジャケット等が含まれている。
電動ポンプ52は、駆動中にエンジン9側の冷却水を断熱容器51へ向けて吐出する。一方で、停止中は冷却水の吐出を行わないものの、第1冷却水通路R1と第5冷却水通路R5との間における冷却水の流通を許容する。
[A]第1開閉状態では、第2冷却水通路R2と第3冷却水通路R3との間で冷却水を流通させる一方で、これら各冷却水通路R2,R3と第7冷却水通路R7との間で冷却水を流通させない。
[B]第2開閉状態では、第2冷却水通路R2と第7冷却水通路R7との間で冷却水を流通させる一方で、これら各冷却水通路R2,R7と第3冷却水通路R3との間で冷却水を流通させない。
[C]第3開閉状態では、第7冷却水通路R7と第3冷却水通路R3との間で冷却水を流通させる一方で、これら各冷却水通路R7,R3と第2冷却水通路R2との間で冷却水を流通させない。
[D]第4開閉状態では、第2冷却水通路R2と第3冷却水通路R3と第7冷却水通路R7との間で冷却水を流通させる。
エンジン9のウォーターポンプ91は、エンジン9とラジエータとの間で冷却水を循環させる。また、冷却水循環機構5内においても冷却水を循環させる。なお、ウォーターポンプ91は、エンジン9の運転中のみ冷却水の循環を行うことができる。
電子制御装置Eは、エンジン制御にかかる演算処理を実行するCPU、エンジン制御に必要なプログラムや情報の記憶するためのメモリ、外部との信号の入出力を行うための入力ポート及び出力ポートを備えて構成される。
エンジン水温センサE1は、エンジン9内部の冷却水通路に設けられて、同冷却水通路を流通する冷却水の温度(エンジン冷却水温度TWE)を検出する。
電子制御装置Eの出力ポートには、電動ポンプ52、三方弁53、冷却水通路開閉弁54及びインジェクタ36等が接続されている。電子制御装置Eは、エンジン9の運転状態に基づいてインジェクタ36の開弁時間を制御することにより、インジェクタ36からの燃料噴射量を調整する。
冷却水循環機構5は、三方弁53の開閉状態に応じて冷却水の循環形態が図2〜図5に示すように切り替えられる。各図においては、冷却水の流れが生じている経路を実線にて、冷却水の流れが生じていない経路を破線にてそれぞれ示している。また、各経路上の矢印は、冷却水の循環方向を示している。
・図2の循環形態を第1循環形態とする。
・図3の循環形態を第2循環形態とする。
・図4の循環形態を第3循環形態とする。
・図5の循環形態を第4循環形態とする。
図2に示すように、第1循環形態では、エンジン9内部を介することなくレギュレータ33と断熱容器51との間で冷却水が循環する。この循環形態では、電動ポンプ52、第1冷却水通路R1、断熱容器51、第2冷却水通路R2、三方弁53、第3冷却水通路R3、レギュレータ33、第4冷却水通路R4、及び第5冷却水通路R5により冷却水の循環回路が構成されている。以降では、この循環回路を第1循環回路とする。
・三方弁53は、第1開閉状態に維持される。
・冷却水通路開閉弁54は開弁した状態に維持される。
・電動ポンプ52は、駆動した状態に維持される。
・ウォーターポンプ91は、停止した状態に維持される。
〔2〕「第2循環形態」
図3に示すように、第2循環形態では、レギュレータ33を介することなく断熱容器51とエンジン9内部との間で冷却水が循環する。この循環形態では、ウォーターポンプ91、エンジン9内部の冷却水通路、第7冷却水通路R7、三方弁53、第2冷却水通路R2、断熱容器51、第1冷却水通路R1、電動ポンプ52、第5冷却水通路R5、及び第6冷却水通路R6により冷却水の循環回路が形成されている。以降では、この循環回路を第2循環回路とする。
・三方弁53は、第2開閉状態に維持される。
・冷却水通路開閉弁54は、閉弁した状態に維持される。
・電動ポンプ52は、停止した状態に維持される。
・ウォーターポンプ91は、駆動した状態に維持される。
〔3〕「第3循環形態」
図4に示すように、第3循環形態では、断熱容器51を介することなくエンジン9内部とレギュレータ33との間で冷却水が循環する。この循環形態では、ウォーターポンプ91、エンジン9内部の冷却水通路、第7冷却水通路R7、三方弁53、第3冷却水通路R3、レギュレータ33、第4冷却水通路R4、及び第6冷却水通路R6により冷却水の循環回路が形成されている。以降では、この循環回路を第3循環回路とする。
・三方弁53は、第3開閉状態に維持される。
・冷却水通路開閉弁54は、開弁した状態に維持される。
・電動ポンプ52は、停止した状態に維持される。
・ウォーターポンプ91は、駆動した状態に維持される。
〔4〕「第4循環形態」
図5に示すように、第4循環形態では、エンジン9内部とレギュレータ33と断熱容器51との間で冷却水が循環する。即ち、第2循環形態での冷却水の循環と第3循環形態での冷却水の循環とが同時に形成された状態に相当する。
・三方弁53は、第4開閉状態に維持される。
・冷却水通路開閉弁54は、第4開閉状態に維持される。
・電動ポンプ52は、停止した状態に維持される。
・ウォーターポンプ91は、駆動した状態に維持される。
<冷却水循環形態の切替態様>
電子制御装置Eは、以下に示す各条件に基づいて冷却水循環機構5の循環形態の切り替えを行う。
電子制御装置Eは、エンジン9の始動準備動作が検出されたことに基づいて、冷却水循環機構5の循環形態を第1循環形態へ切り替える。即ち、エンジン9の始動準備動作が検出されたことに基づいて、冷却水の循環回路が予め選択されていた循環回路から第1循環回路に切り替えられる。なお、エンジン9の始動準備動作は、エンジン9の始動までに運転者を通じて車両に対して行われる操作を示す。
電子制御装置Eは、第1循環形態において、断熱容器51内に貯留されていた高温の冷却水がレギュレータ33の冷却水室33B内へ十分に供給された後、エンジン9の始動にともなって(または始動直後に)冷却水循環機構5の循環形態を第1循環形態から第2循環形態へ切り替える。なお、冷却水の循環回路は、断熱容器51内に貯留されていた高温の冷却水がレギュレータ33の冷却水室33B内へ十分に供給されたことに基づいて、第1循環回路から第2循環回路へ切り替えられる。
電子制御装置Eは、第2循環形態において、レギュレータ33内に封じ込めた冷却水では燃料を十分に気化することができない状態となったことに基づいて、冷却水循環機構5の循環形態を第3循環形態へ切り替える。即ち、レギュレータ33内に封じ込めた冷却水では燃料を十分に気化することができない状態となったことに基づいて、冷却水の循環回路が第2循環回路から第3循環回路へ切り替えられる。
電子制御装置Eは、第3循環形態(または第2循環形態)において、冷却水が次回のエンジン9始動に際して燃料の気化促進を図ることのできる状態となったことに基づいて、冷却水循環機構5の循環形態を第4循環形態へ切り替える。即ち、冷却水が次回のエンジン9始動に際して燃料の気化促進を図ることのできる状態となったことに基づいて、冷却水の循環回路が第3循環回路から第4循環回路へ切り替えられる。
液化ガス燃料供給装置1においては、循環形態を第2循環形態から第3循環形態へ切り替えることによる冷却水の封じ込めの解除が適切に行われなかった場合、レギュレータ33の気化性能の低下により燃料の気化が十分に行われなくなる。
本実施形態では、「循環機構制御処理」を通じて冷却水循環機構5の駆動態様が制御される。なお、本処理は、電子制御装置Eを通じて実行される。
・「始動前切替処理」 (図6)
・「判定値設定処理」 (図7)
・「運転時切替処理[1]」(図9)
・「運転時切替処理[2]」(図10)
以下、これら各処理について説明する。なお、本実施形態では、「始動前切替処理」→「判定値設定処理」→「運転時切替処理[1]」→「運転時切替処理[2]」の順に上記各処理が実行される。
図6に、「始動前切替処理」の処理手順を示す。なお、電子制御装置Eは、エンジン9の始動前に本処理を開始する。
本実施形態では、運転者の操作を通じてイグニッションスイッチが「OFF」から「ON」へ切り替えられたことをもって、エンジン9の始動準備動作を検出するようにしている。
・エンジン9の始動準備動作を検出したとき(イグニッションスイッチが「OFF」から「ON」へ切り替えられたとき)、ステップS120の処理へ移行する。
・エンジン9の始動準備動作を検出していないとき、再度ステップS110の処理を実行する。
[ステップS130]断熱容器51内に貯留されている高温の冷却水がレギュレータ33の冷却水室33B内へ十分に供給されたか否かを判定する。
・レギュレータ33内に高温の冷却水が十分に供給されたとき(第1形態駆動期間TDが判定期間TDX以上のとき)、ステップS140の処理へ移行する。
・レギュレータ33内に高温の冷却水が十分に供給されていないとき、再度ステップS130の処理を実行する。
[ステップS150]「判定値設定処理」(図7)を開始して本処理を終了する。
図7に、「判定値設定処理」の処理手順を示す。
[ステップS210]レギュレータ33内への冷却水の封じ込めが完了した直後(第1循環形態から第2循環形態へ切り替えられた直後)において、レギュレータ水温センサE2を通じて検出されたレギュレータ冷却水温度TWRの温度を読み込む。なお、以降では、このときのレギュレータ冷却水温度TWRを初期冷却水温度TWRINとする。
このように、「判定値設定処理」では、初期冷却水温度TWRINに基づいて判定噴射量積算値FsumXを設定する。
図9に、「運転時切替処理[1]」の処理手順を示す。
[ステップS310]エンジン9が始動してから現在までにインジェクタ36を通じて噴射された燃料の累積量(燃料噴射量積算値Fsum)を算出する。なお、燃料噴射量積算値Fsumは、前回までに算出された燃料噴射量積算値Fsumに今回の燃料噴射量が加算されることにより算出される。また、本実施形態では、インジェクタ36を通じて燃料噴射が行われる毎に燃料噴射量積算値Fsumが更新される。
・燃料噴射量積算値Fsumが判定噴射量積算値FsumX未満のとき、再度ステップS310の処理を実行する。
・燃料噴射量積算値Fsumが判定噴射量積算値FsumX以上のとき、ステップS330の処理へ移行する。
[ステップS340]「運転時切替処理[2]」(図10)を開始して本処理を終了する。
図10に、「運転時切替処理[2]」の処理手順を示す。
[ステップS410]エンジン9内部の冷却水が次回のエンジン9始動時において燃料の気化促進を図ることのできる状態(対始動高温状態)にあるか否かを判定する。
・エンジン9内部の冷却水が対始動高温状態にあるとき(エンジン冷却水温度TWEが判定冷却水温度TWEX以上のとき)、ステップS420の処理へ移行する。
・エンジン9内部の冷却水が対始動高温状態にないとき、再度ステップS410の処理を実行する。
このように、「運転時切替処理[2]」では、エンジン9内部の冷却水が対始動高温状態状態にあることに基づいて、冷却水循環機構5の循環形態を第3循環形態から第4循環形態へ切り替えることで、高温の冷却水を断熱容器51へ供給する。
図11を参照して、冷却水循環機構5の制御態様について説明する。なお、図11は、冷却水循環機構5の制御態様の一例を示す。
・時刻t111は、運転者の操作によりイグニッションスイッチが「OFF」から「ON」へ切り替えられた時刻を示す。
・時刻t112は、レギュレータ33内への冷却水の封じ込めが完了した時刻を示す。
・時刻t113は、燃料噴射量積算値Fsumが判定噴射量積算値FsumX以上となった時刻を示す。
・時刻t114は、エンジン冷却水温度TWEが判定冷却水温度TWEX以上となった時刻を示す。
電子制御装置Eは、燃料噴射量積算値Fsumが判定噴射量積算値FsumX以上となったとき(時刻t113)、冷却水循環機構5の循環形態を第2循環形態から第3循環形態へ切り替える。また、燃料噴射量積算値Fsumの算出を終了する。
以上詳述したように、この第1実施形態にかかる液化ガスエンジンの燃料供給装置によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(4)また、レギュレータ33内に封じ込められた冷却水の熱エネルギーを限界まで利用して燃料の気化促進を図ることが可能となるため、少量の冷却水を通じてレギュレータ33の気化性能の低下を回避することができるようになる。さらには、より容量の小さい断熱容器51を採用することで、装置の小型化に貢献することができるようになる。
即ち、実際にはレギュレータ33内の冷却水が燃料の気化を十分に行うための熱エネルギーを有していないにもかかわらず、レギュレータ冷却水温度TWRが判定値以上であることに基づいて、第2循環形態から第3循環形態への切り替えが行われないこともある。この場合、十分な熱エネルギーを有していない冷却水がレギュレータ33内に封じ込められた状態が継続されることにより、レギュレータ33の気化能力の低下をまねくようになる。
即ち、上記一定時間がエンジン9の高負荷運転に対応するように設定されている場合において、エンジン9始動時に低負荷運転が行われたとすると、レギュレータ33内の冷却水が十分な熱エネルギーを有しているにもかかわらず、第2循環形態へ切り替えてからの経過時間が上記一定時間以上となったことに基づいて冷却水の封じ込めが解除されることもある。
なお、上記第1実施形態は、これを適宜変更した、例えば次のような形態として実施することもできる。
本発明の第2実施形態について、図12〜図14を参照して説明する。
本実施形態では、キャブレターを通じてエンジン9の燃焼室へ燃料を供給する燃料供給装置(ミキサー方式の燃料供給装置)に対して本発明を適用した場合を想定している。即ち、本実施形態の燃料供給装置は、前記第1実施形態の燃料供給装置において、インジェクタに代えてキャブレターを備えた構成となっている。
本実施形態では、レギュレータ33を通じて気化された燃料の累積量の指標値として吸入空気量の累積量を用いるとともに、この累積量と対吸気量判定値との比較結果に基づいて第2循環形態から第3循環形態への切り替えを行う。即ち、エンジン9の始動後にエンジン9内へ吸入された空気の累積量(吸入空気量積算値Qsum)を算出し、この吸入空気量積算値Qsumが判定吸気量積算値QsumX(対吸気量判定値)以上となったことに基づいて、冷却水の封じ込めを解除する。
図12に、「判定値設定処理[2]」の処理手順を示す。
[ステップT210]レギュレータ33内への冷却水の封じ込めが完了した直後のレギュレータ冷却水温度TWR(初期冷却水温度TWRIN)を読み込む。
このように、「判定値設定処理」では、初期冷却水温度TWRINに基づいて判定吸気量積算値QsumXを設定する。
図14に、「運転時切替処理[3]」の処理手順を示す。
[ステップT310]エンジン9が始動してから現在までにエンジン9内へ吸入された空気の累積量(吸入空気量積算値Qsum)を算出する。なお、本実施形態では、エアフローメータを通じて検出された吸入空気量に基づいて吸入空気量積算値Qsumが算出される。
・吸入空気量積算値Qsumが判定吸気量積算値QsumX未満のとき、再度ステップT310の処理を実行する。
・吸入空気量積算値Qsumが判定吸気量積算値QsumX以上のとき、ステップT330の処理へ移行する。
[ステップT340]「運転時切替処理[2]」(図10)を開始して本処理を終了する。
以上詳述したように、この第2実施形態にかかる液化ガスエンジンの燃料供給装置によれば、先の第1実施形態による前記(1)〜(6)の効果に準じた効果が得られるようになる。
なお、上記第2実施形態は、これを適宜変更した、例えば次のような形態として実施することもできる。
その他、上記各実施形態に共通して変更することができる要素を以下に列挙する。
・上記各実施形態では、運転者の操作を通じてイグニッションスイッチが「OFF」から「ON」へ切り替えられたことをもってエンジン9の始動準備動作を検出する構成としたが、そうした状態を検出するための条件は、各実施形態にて例示した条件に限られるものではない。例えば、車両のドアが開放されたことをもってエンジン9の始動準備動作を検出することもできる。
[a]レギュレータ33内の冷却水の温度が予め設定した判定値以上となったことに基づいて、高温の冷却水がレギュレータ33内へ十分に供給されたことを検出する。
[b]レギュレータ33内の冷却水の温度上昇度合いが予め設定した判定値以上であることに基づいて、高温の冷却水がレギュレータ33内へ十分に供給されたことを検出する。
3…燃料噴射機構、31…燃料タンク、32…燃料ポンプ、33…レギュレータ、33A…燃料室、33B…冷却水室、34…燃料通路開閉弁、35…デリバリパイプ、36…インジェクタ、P1…第1燃料通路、P2…第2燃料通路。
E…電子制御装置、E1…エンジン水温センサ、E2…レギュレータ水温センサ。
TWE…エンジン冷却水温度、TWR…レギュレータ冷却水温度、TWRIN…初期冷却水温度、Fsum…燃料噴射量積算値、FsumX…判定噴射量積算値、Qsum…吸入空気量積算値、QsumX…判定吸気量積算値。
Claims (10)
- 液化ガス燃料を気化する気化器と、前記気化器とエンジンとの間で熱媒体を循環させる循環回路と、前記熱媒体を貯留する断熱容器とを備えた液化ガスエンジンの燃料供給装置であって、
前記エンジンの始動に先立ち、前記断熱容器内に貯留されている高温の熱媒体を前記気化器内に封じ込め、前記エンジンの始動後、前記気化器により気化された燃料の累積量に基づいて前記熱媒体の封じ込めを解除する制御手段を備えた
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - 請求項1に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、
前記制御手段は、前記気化器内に前記断熱容器内の熱媒体を封じ込めてからの燃料噴射量の累積量を前記気化された燃料の累積量の指標値として採用し、前記燃料噴射量の累積量が対噴射量判定値以上となったことに基づいて前記熱媒体の封じ込めを解除する
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - 請求項2に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、
前記制御手段は、前記気化器内に封じ込めた直後の前記熱媒体の温度に基づいて前記対噴射量判定値を設定する
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - 請求項3に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、
前記制御手段は、さらに外気の温度を加味して前記対噴射量判定値を設定する
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - 請求項1に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、
前記制御手段は、前記気化器内に前記断熱容器内の熱媒体を封じ込めてからの吸入空気量の累積量を前記気化された燃料の累積量の指標値として採用し、前記吸入空気量の累積量が対吸気量判定値以上となったことに基づいて前記熱媒体の封じ込めを解除する
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - 請求項5に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、
前記制御手段は、前記気化器内に封じ込めた直後の前記熱媒体の温度に基づいて前記対吸気量判定値を設定する
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - 請求項6に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、
前記制御手段は、さらに外気の温度を加味して前記対吸気量判定値を設定する
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液化ガスエンジンの燃料供給装置において、
前記循環回路は、前記エンジンを介することなく前記気化器と前記断熱容器との間で前記熱媒体を循環させる第1循環回路と、前記エンジンを介して且つ前記気化器を介することなく前記熱媒体を循環させる第2循環回路と、前記エンジンと前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第3循環回路とを含めて構成されるものであり、
前記制御手段は、前記第1循環回路を通じて前記熱媒体を循環させた後に前記循環回路を前記第1循環回路から前記第2循環回路へ切り替えることで前記気化器内へ前記熱媒体を封じ込め、前記循環回路を前記第2循環回路から前記第3循環回路へ切り替えることで前記熱媒体の封じ込めを解除するものである
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - インジェクタを通じて燃料の供給を行う液化ガスエンジンの燃料供給装置であって、
液化ガス燃料を気化して前記インジェクタへ供給する気化器と、
エンジンにより加熱された熱媒体を貯留する断熱容器と、
前記エンジンを介することなく前記断熱容器と前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第1循環回路と、
前記エンジンを介して且つ前記気化器を介することなく前記熱媒体を循環させる第2循環回路と、
前記エンジンと前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第3循環回路とを備え、
前記エンジンの始動準備動作が検出されたことに基づいて、前記第1循環回路を通じての前記熱媒体の循環を開始し、
前記断熱容器内に貯留されている高温の熱媒体が前記気化器内へ供給されたことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を第1循環回路から前記第2循環回路へ切り替えるとともに前記エンジンの始動を許可し、
前記エンジンの始動後、前記エンジンが始動してから現在までに前記インジェクタを通じて噴射された燃料の累積量を算出し、
前記燃料の累積量が対噴射量判定値以上となったことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を前記第2循環回路から前記第3循環回路へ切り替える
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。 - キャブレターを通じて燃料の供給を行う液化ガスエンジンの燃料供給装置であって、
液化ガス燃料を気化して前記キャブレターへ供給する気化器と、
エンジンにより加熱された熱媒体を貯留する断熱容器と、
前記エンジンを介することなく前記断熱容器と前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第1循環回路と、
前記エンジンを介して且つ前記気化器を介することなく前記熱媒体を循環させる第2循環回路と、
前記エンジンと前記気化器との間で前記熱媒体を循環させる第3循環回路とを備え、
前記エンジンの始動準備動作が検出されたことに基づいて、前記第1循環回路を通じての前記熱媒体の循環を開始し、
前記断熱容器内に貯留されている高温の熱媒体が前記気化器内へ供給されたことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を第1循環回路から前記第2循環回路へ切り替えるとともに前記エンジンの始動を許可し、
前記エンジンの始動後、前記エンジンが始動してから現在までに前記エンジン内へ吸入された空気の累積量を算出し、
前記空気の累積量が対吸気量判定値以上となったことに基づいて、前記熱媒体の循環回路を前記第2循環回路から前記第3循環回路へ切り替える
ことを特徴とする液化ガスエンジンの燃料供給装置。
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