JP4136693B2 - 発光装置及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は発光装置及びその製造方法に係わり、特に発光性のダイオード及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、LEDやレーザーダイオードの発光性ダイオードが実用化され、様々な分野に利用され始めている。この発光性ダイオードは電気エネルギーを直接光に変換するため、従来の蛍光灯や電熱球に比べて、発光強度及び耐久性に優れている。これらのダイオードは表面実装型や砲弾型などの発光装置として使用されており、具体的には支持体となる基板上にダイオードチップをダイボンディングし、また、ダイオードチップの各電極とをワイヤーなどを用いて電気的に接続させると共に所望に応じてダイオードチップを透明な封止樹脂で被覆する構造をとっている。
【0003】
透明な封止樹脂には、一般に絶縁性且つ透明性を有し室温で液状の樹脂が使用される。具体例として、エポキシ樹脂やアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、又はアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリノルボルネン樹脂等の熱可塑性樹脂が使用される。熱硬化性樹脂を用いた場合、樹脂硬化のため加熱により透光性樹脂を形成させることができる。また、熱可塑性樹脂を用いた場合、溶剤を揮発させることにより透明樹脂を形成させることができる。
【0004】
熱硬化性樹脂の特徴としては、成形時に熱硬化反応を伴い圧縮成形のような簡単な方法で成形可能であり堅くて頑丈な樹脂が得られる。耐熱性については、全般的に熱可塑性樹脂よりも優れている。熱可塑性樹脂の特徴としては、化学構造的には線状高分子を成している。また、押出成形、射出成形によって効率よく加工することができ、成形不良品については再製利用も可能である。更に、熱硬化性樹脂よりも透明樹脂を成形しやすく、透明性に優れている。
【0005】
しかしながら、この透明封止樹脂はダイオードチップに比べて線膨張係数が大きく、ダイオード上に直接透明封止樹脂を被覆する場合に、高輝度のダイオードにさらされることでダイオードチップと封止樹脂界面における熱応力が発生し、樹脂が剥がれてしまったり、ダイオードの動作に悪影響を与えたりする等の問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1にはダイオードと樹脂封止層の間に緩衝層を設けることを提案されている。これは傾斜構造をもった緩衝層を導入することによって線膨張率を徐々に変え、発熱によって生じる局所的な応力を緩和しようとしている。しかし、この熱応力による不具合を防ぐには緩衝層にある程度の厚みが必要である。
【0007】
また、弾性率が低い材料を緩衝層に使用することも熱応力の問題を解決する候補である。低弾性率材料としてはシリコーンゴムのようなゴム状の組成物等があるが(特許文献2参照)、今まで使用に耐えうるような耐熱性、透明性、ダイオードチップ及び封止樹脂に対する密着性を満足するものは無かった。
【0008】
さらに、LSIのような半導体装置を樹脂封止する場合、封止樹脂の体積収縮や熱応力による動作の不具合を防ぐために緩衝層としてポリイミド樹脂を使用することが知られている。しかし、従来からあるポリイミド樹脂及びポリイミドシリコーン樹脂を使用した場合、樹脂自体の着色の問題があり発光性のダイオードの緩衝層としては適さない。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−168398号公報
【特許文献2】
特開2002−314139号公報
【特許文献3】
特開平10−228249号公報
【特許文献4】
特開2002−314141号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は高輝度、高耐久性の特徴を持つ発光装置において、ダイオードチップ、リード電極、導電性ワイヤーと透明封止樹脂の熱膨張係数の差に由来する剥離およびダイオードの動作不具合を防止し、ダイオードを長時間使用可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発光装置はダイオードチップとリード電極とダイオードチップの電極とを電気的に接続するための導電性ワイヤーと、前記ダイオードチップを被覆する緩衝層と、緩衝層上に前記ダイオードチップ及び前記導電性ワイヤーを被覆する透明樹脂層とからなる。
【0011】
ダイオードチップはLEDまたはレーザーダイオードの発光性のダイオードチップである。該ダイオードチップは、GaAs、GaP、GaAlAs、GaN、InGaN、InGaAlNなどの半導体発光層からなる。
【0012】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、上記発光装置においてダイオードチップと透明封止樹脂の間に特定の透明ポリイミドシリコーン樹脂からなる緩衝層を形成することによって、耐熱性が急激に良くなることを見出し本発明を成すに至った。
【0013】
即ち、本発明は、リード電極と、該リード電極と導電性ワイヤーにより接続された発光ダイオード(LED)チップまたはレーザーダイオードチップと、該ダイオードチップを被覆する緩衝層と、該緩衝層を被覆する透明樹脂層を備える発光装置であって、該緩衝層が、一般式(1)で表される構造単位、
【0014】
【化6】
[式中、Xは炭素数4個以上の4価の有機基であって、複数個の−CO−基がXの1つの炭素原子に結合していることはなく、Yは一般式(2)または一般式(3)で表されるジアミン残基である
【0015】
【化7】
(式中、R1からR6は水素原子または炭素数1から6のアルキル基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。)
【0016】
【化8】
(式中、R7、R8は水素原子または炭素数1から6のアルキル基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。)]及び、下記一般式(4)で表される構造単位
【0017】
【化9】
[式中、Xは炭素数4個以上の4価の有機基であって、複数個の−CO−基がXの1つの炭素原子に結合していることはなく、Zは一般式(5)で表されるジアミン残基である
【0018】
【化10】
(式中のR9からR12は炭素数1から8の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。また、aは1以上100以下の整数である。)]
を含有するポリイミドシリコーン樹脂から構成されていることを特徴とする発光装置である。
【0019】
緩衝層に使用される透明ポリイミドシリコーン樹脂において、全ジアミン残基に対して一般式(2)または(3)で表されるジアミン残基が5mol%以上95mol%以下であり、一般式(5)で表されるジアミン残基が5mol%以上95mol%以下であることを特徴とし、緩衝層に使用される透明ポリイミドシリコーン樹脂を厚さ10μmのフィルムにして測定した波長350nmから700nmの光線透過率が80%以上であることを特徴とする上記に記載の発光装置である。
【0020】
さらには、リード電極とダイオードチップの電極とを導電性ワイヤーによって電気的に接続する第1の工程と、前記ダイオードチップを透明ポリイミドシリコーン樹脂によって被覆して緩衝層を形成する第2の工程と、緩衝層上に透明な樹脂によって前記ダイオードチップ及び前記導電性ワイヤーを被覆する第3の工程とを含む発光装置の製造方法も本発明は含む。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0022】
一実施の形態における発光ダイオードでは、透明封止樹脂の熱膨張率がダイオードチップ・基板・リード電極に比べ大きいため熱衝撃による膨張・収縮挙動が発生し所望の信頼性が得られないことから、ダイオードチップ・基板・リード電極と透明封止樹脂との界面に発生する熱応力を可とう性に優れた緩衝部を設けることにより抑制し、耐熱性及び耐久性を向上させたものである。
【0023】
以下、緩衝層を形成する透明ポリイミドシリコーン樹脂について詳しく説明する。本発明に使用される透明ポリイミドシリコーン樹脂は低弾性率であることを特徴としており、弾性率が0.1MPa以上1000MPa未満、好ましくは1MPa以上600MPa未満、さらに好ましくは1MPa以上100MPa未満である。弾性率が0.1MPaより小さいと外力によってチップと封止樹脂との固着が弱くチップに余計な負荷がかかってしまい、また、1000MPaより大きいとダイオードチップ・基板・リード電極と透明封止樹脂との界面に発生する熱応力を緩和するという緩衝層の役割を果たさなくなる。
【0024】
本発明に使用される緩衝層を形成する透明ポリイミドシリコーン樹脂はテトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応生成物であり、反応生成物の構造中に熱硬化性基が含まれることを特徴とする。
【0025】
熱硬化性基としてはカルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等が一般的に知られているが、ポリイミドの製造工程を考慮するとカルボキシル基及びアミノ基と容易に反応しない点でフェノール基が選択される。さらに、このフェノール基と反応性のある官能基を有する樹脂、例えばエポキシ樹脂を封止樹脂に選ぶことによってさらなる密着性が得られ、耐久性がよくなる。
【0026】
硬化条件は特に限定されるものではないが、80℃以上300℃以下、好ましくは100℃以上250℃以下の範囲で硬化させる。80℃以下で硬化した場合には熱硬化に時間がかかりすぎて実用的でなく、また、300℃以上で硬化した場合には基板や封止樹脂が熱劣化を起こしてしまう。
【0027】
本発明で合成されるポリイミドシリコーン樹脂の原料であるジアミンについて説明する。本発明の好ましい態様としてジアミン残基中にフェノール基を含有するものを使用することを特徴としている。たとえば一般式(A)または一般式(B)でジアミン残基が表されるもの等が本発明で使用される。
【化11】
式中、R1からR6は水素原子または炭素数1から6のアルキル基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。上記R1〜R6としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられるが、中でもメチル基が好ましい。
【0028】
【化12】
式中、R7、R8は水素原子または炭素数1から6のアルキル基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。上記R7〜R8としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられるが、中でもメチル基が好ましい。
【0029】
フェノール基を含有するジアミン残基は全ジアミン残基中5mol%以上95mol%以下含まれていればよく、好ましくは20mol%以上80mol%以下である。含有量が5mol%以下と少ないと架橋密度が低くなるため、硬化が不十分となり耐溶剤性が低下してしまう。また、含有量が95mol%以上と多いと、ジアミノシロキサンの含有量が少なくなり、有機溶剤への溶解性や基材に対する接着性が低下してしまう。
【0030】
本発明は好ましい態様としてジアミン残基としてジアミノシロキサン残基をさらに含有するものを使用することを特徴としている。たとえば一般式(C)で表されるものが本発明で使用される。
【0031】
【化13】
式中のR9からR12は非置換または置換の炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていても良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、2−(トリメトキシシリル)エチル基等のトリアルコキシシリル化アルキル基等の他、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリーロキシ基、シアノ基等を挙げることができる。中でもメチル基、エチル基またはフェニル基が好ましい。また、aは1以上100以下の整数である。
【0032】
ジアミノシロキサン残基は全ジアミン残基中5mol%以上95mol%以下含まれていればよく、好ましくは10mol%以上90mol%以下である。ジアミノシロキサンを使用することで有機溶剤に対する溶解性を向上させることができ、また、弾性率を低くすることができ、さらに、ダイオード基板に対する接着力を向上させることができる。ジアミノシロキサン残基の含有量が5mol%以下だと所望の溶剤可溶性、低弾性率、基板との接着力が発現せず、含有量が95mol%以上だと熱硬化性基が少なく、硬化が不十分となり封止樹脂との密着性が悪くなってしまう。
【0033】
これらのジアミンにおいて、本発明のポリイミドシリコーン樹脂が近紫外域から可視光域において透明であることからその原料であるジアミンは着色してないことが好ましい。
【0034】
本発明のポリイミドシリコーン樹脂の合成原料として上記以外にも透明性を損なわない程度に公知の一般的なジアミンも同時に使用することができる。例えば、テトラメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサンや4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミンやフェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等の芳香族ジアミンが挙げられ単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明で合成されるポリイミドシリコーン樹脂の原料であるテトラカルボン酸二無水物について説明する。本発明のポリイミドシリコーン樹脂は可視光領域において透明であることを特徴としており、その原料であるテトラカルボン酸二無水物は着色してないこと、また、着色の原因として知られている電荷移動錯体を形成しにくいものが好ましい。透明性に優れるという点で脂肪族テトラカルボン酸二無水物または脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましいが、着色をしない範囲で耐熱性により優れる芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。
【0036】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては例えばブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物又はペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、脂環式テトラカルボン酸二無水物としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3´,4´−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4´−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。また、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
ポリイミドシリコーン樹脂の製造方法は溶媒存在下でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とをほぼ等モル数で使用し、高温のみで重合させる一段重合法によっても、あるいは、まず低温でアミック酸を合成し、その後に高温でイミド化する二段重合法のいずれによってもよい。
【0038】
テトラカルボン酸二無水物成分に対するジアミン成分の割合は、ポリイミドシリコーン樹脂の分子量の調整等に応じて適宜決められ、通常モル比で0.95〜1.05、好ましくは0.98〜1.02の範囲である。なお、ポリイミドシリコーン樹脂の分子量を調整するために、無水フタル酸、アニリン等の一官能の原料を添加することも可能である。この場合の添加量はポリイミド樹脂の量に対して2モル%以下が好ましい。
【0039】
一段重合法による場合、反応温度は150〜300℃であり、反応時間は1〜15時間で達成される。又、二段重合法による場合は、ポリアミック酸合成を0〜120℃の温度で、1〜100時間行い、その後イミド化を0〜300℃の温度で、1〜15時間行う。
【0040】
合成時に使用可能な溶媒は原料であるジアミンとテトラカルボン酸二無水物及び生成物であるポリイミドシリコーンと相溶性のあるものであればよい。フェノール、4−メトキシフェノー4−メトキシフェノール、2,6−ジメチルフェノール、m−クレゾール等のフェノール類、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル類、シクロヘキサノン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、アセトフェノン等のケトン類、酢酸ブチル、安息香酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類等が例示される。
【0041】
また、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を併用することでイミド化の際に生成する水を共沸により除去しやすくすることも可能である。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方を複数種使用する場合も、反応方法は特に限定されるものではなく、例えば原料を予め全て混合した後に共重縮合させる方法や、用いる2種以上のジアミン又はテトラカルボン酸二無水物を個別に反応させながら順次添加する方法等がある。
【0043】
また、イミド化過程において脱水剤およびイミド化触媒を添加し必要に応じて加熱することにより、イミド化させる方法を用いてもよい。この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ジアミン1モルに対して1〜10モルとするのが好ましい。
【0044】
また、イミド化触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの第3級アミンを用いることができる。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。
【0045】
また、本発明のポリイミドシリコーン樹脂は透明であることも特徴の一つである。緩衝層として使用する材料はダイオードの発光色を色調の変化なく、また発光強度を減じることなく透過することが必要とされる。本ポリイミドシリコーン樹脂は厚さ10μmのフィルムにして測定した紫外線・可視光吸収スペクトルにおいて、350nmから700nmの波長領域すなわち近紫外域から可視光域における透過率は80%以上である。
【0046】
さらに、本発明のポリイミドシリコーン樹脂の屈折率が1.45〜1.60であることも特徴の一つである。緩衝層として使用する材料は封止樹脂に使用される有機樹脂との界面における光線透過量の損失を少なくするためにも封止樹脂の屈折率と近いことが望まれる。
【0047】
本発明のポリイミドシリコーン樹脂組成物をそのままフィルム等に成形することも可能であるが、本発明のポリイミドシリコーン樹脂は溶解性に優れているため、各種基材上にコーティングしやすいように有機溶剤で溶解して適当な粘度に調整することが可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、一般に知られるポリイミドシリコーン樹脂の合成時に使用可能な前記の有機溶剤でもよいし、合成時とは別の芳香族炭化水素系溶剤や、ケトン系溶剤等、溶解性のあるものであれば特に制限はない。
【0048】
特に低沸点の芳香族炭化水素系溶剤や、ケトン系溶剤等に溶解したい場合は合成されたポリイミドシリコーン樹脂溶液に貧溶媒を加えて再沈澱させる等の方法により精製されたポリイミド樹脂を再び溶解させる際にその溶剤を用いて溶解させればよい。
【0049】
具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、メチルイソブチルケトンやメチルエチルケトンの揮発性の高い溶剤が好ましい。
【0050】
使用する溶媒量は、用いるポリイミドシリコーン樹脂組成物1gに対し、0.1〜1000mLの範囲で用いるのが好ましく、0.5〜500mLの範囲で用いるのがさらに好ましく、1〜200mLの範囲で用いるのが特に好ましい。使用量が少ないと、塗工時の粘度が高くなり、作業性に問題があったり、均一に塗りにくくなったりする。また、使用量が多いと、環境に負荷がかかったり、必要な膜厚が得られなかったり等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
【0051】
本発明のポリイミドシリコーン樹脂組成物には、その他、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0052】
本発明に使用される透明な封止樹脂としては特に限定なく、例えば従来発光ダイオードの封止、モールドに使用される樹脂を使用することができる。具体的には、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の有機樹脂から選ばれる少なくとも一種であること等が例示されるがこれに限定されるものではない。これらのうち、透明性が高く耐久性、接着性等の実用特性に優れるという観点から、透明エポキシ樹脂が好ましい。
【0053】
透明エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、等のエポキシ樹脂を、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の脂肪族酸無水物で硬化させるものが挙げられる。
【0054】
これらの内、透明性など、発光ダイオードの封止材としての特性がより良好であるという観点から、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、トリグリシジルイソシアヌレート等をメチルヘキサヒドロ無水フタル酸で硬化させるものが好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレートをメチルヘキサヒドロ無水フタル酸で硬化させるものがより好ましい。
【0055】
本発明のポリイミドシリコーン樹脂は熱硬化することによって優れた耐熱性、機械強度、耐溶剤性、各種基材への密着性を有する。
【0056】
硬化条件は特に限定されるものではないが、80℃以上300℃以下、好ましくは100℃以上250℃以下の範囲で硬化させる。80℃以下で硬化した場合には熱硬化に時間がかかりすぎて実用的でなかったり、低温で硬化する機構を選んだ時には保存安定性の問題があったりする。また、従来のポリアミック酸溶液と異なり、塗布後に300℃以上という高温でかつ長時間の加熱を必要としなく基材の熱劣化を抑制できる。
【0057】
さらに、ポリイミドシリコーン樹脂中のフェノール基と反応する物質を加えることで熱硬化性をより向上させることも可能である。ここで、フェノール基と反応する物質としては、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等のフェノール基と反応可能な官能基を二以上含む樹脂、オリゴマー等の多官能性の有機化合物が挙げられる。
【0058】
本発明の発光装置は、上記したような緩衝層としてポリイミドシリコーン樹脂及び樹脂封止層として透明エポキシ樹脂によって、発光素子を被覆することによって製造することができる。
【0059】
本発明で使用されるダイオードチップとは、特に限定なく従来公知の発光ダイオードに用いられるダイオードチップを用いることができる。このようなダイオードチップとしては、例えば、MOCVD法、HDVPE法、液相成長法といった各種方法によって、必要に応じてGaN、AlN等のバッファー層を設けた基板上に半導体材料を積層して作成したものが挙げられる。この場合の基板としては、各種材料を用いることができるが、例えばサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。
【0060】
積層される半導体材料としては、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。
【0061】
ダイオードチップの発光波長は紫外域から赤外域まで種々のものを用いることができるが、主発光ピーク波長が350〜800nmのものを用いた場合に特に本発明の効果が顕著である。用いるダイオードチップは一種類で単色発光させても良いし、複数用いて単色或いは多色発光させても良い。
【0062】
ダイオードチップ上の電極は種々の方法でリード端子等と電気接続できる。電気接続部材としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウムやそれらの合金等を用いたボンディングワイヤーが挙げられる。また、銀、カーボン等の導電性フィラーを樹脂で充填した導電性接着剤等を用いることもできる。これらのうち、作業性やコストの面からは、アルミニウム等からなる導線を用いることが好ましい。
【0063】
本発明の発光装置は、上記したような緩衝層(第一の樹脂)及び透明樹脂層(第二の樹脂)により発光ダイオードを被覆することによって製造することができるが、この場合被覆とは、上記発光素子を直接封止するものに限らず、間接的に被覆する場合も含む。
【0064】
被覆の方法としては、たとえばダイオードチップを本発明の第一の樹脂でコーティングした後、本発明の第二の樹脂を用いて通常の方法等でモールドする方法や、ダイオードチップを本発明の第一の樹脂を用いて通常の方法等でモールドした後、さらに本発明の第二の樹脂を用いて通常の方法等でモールドする方法や、ダイオードチップの周囲、例えばダイオードチップを低部に配置したカップ、キャビティ、パッケージ凹部等を本発明の第一の樹脂で封止した後、さらに本発明の第二の樹脂を用いて通常の方法等でモールドする方法や、ダイオードチップを本発明の第一の樹脂を用いて通常の方法等でモールドした後、さらに本発明の第二の樹脂を用いてその周囲をコーティングする方法等を挙げることができる。この場合、本発明の第二の樹脂の耐光耐久性が良いという特性をより活かすことができるという観点からは、ダイオードチップから発せられる光の、第二の樹脂中の平均光路長より、第一の樹脂中の平均光路長の方が短くなるように被覆することが好ましい。
【0065】
本発明の発光装置は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、例えばバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【0066】
以下に緩衝層として使用できる透明ポリイミドシリコーン樹脂の合成例を示し、これを利用した発光装置の態様を実施例に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
【実施例】
合成例1(イミドシリコーン樹脂の合成)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン30.0g(0.1モル)およびN,N−ジメチルアセトアミド250gを仕込み攪拌して溶解した。ついで、上記フラスコ内に2,2‘−{2−ヒドロキシ−3−(3,5−メチル−4−アミノ)−ベンジル−5−メチル}−ジフェニルメタン17.3g(0.035モル)を添加し反応系の温度を50℃で3時間保持した。さらにジアミノシロキサン(ただし、一般式(C)のaの平均が9.5のもの)56.2g(0.065モル)を室温で滴下し、滴下終了後室温で12時間撹拌した。
【0068】
つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、トルエン50gを加え、170℃まで昇温してその温度を6時間保持したところ、ほぼ透明の溶液が得られた。
【0069】
得られた溶液を貧溶媒であるメタノール中に投じ樹脂を再沈殿させた。この樹脂の赤外吸光スペクトルを測定した結果を図1の載せた。未反応の官能基があることを示すポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1770cm−1および1710cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。得られた樹脂は式1の表される繰り返し単位を持つ。
【0070】
式1
【化14】
【0071】
ここでXは
【化15】
【0072】
Yは、
【化16】
【0073】
Zは、
【化17】
【0074】
また、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、該樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、11000であった。この樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解して、ガラス基板上に塗布し乾燥し膜厚70μmのフィルムを作成した。このフィルムの光線透過率を測定しその結果を図2に載せた。波長350nmから700nmまでの光線透過率が80%以上であった。弾性率は600MPa、屈折率は1.505であった。
【0075】
合成例2(イミドシリコーン樹脂の合成)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン30.0g(0.1モル)およびN,N−ジメチルアセトアミド250gを仕込んだ。続いて、上記フラスコ内に2,2‘−{2−ヒドロキシ−3−(3,5−メチル−4−アミノ)−ベンジル−5−メチル}−ジフェニルメタン34.6g(0.07モル)を添加し反応系の温度を50℃で3時間保持した。さらにジアミノシロキサン(ただし、一般式(C)のaの平均が9.5のもの)26.0g(0.03モル)を室温で滴下し、滴下終了後室温で12時間撹拌した。
【0076】
つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、トルエン50gを加え、170℃まで昇温してその温度を6時間保持したところ、ほぼ透明の溶液が得られた。
【0077】
得られた溶液を貧溶媒であるメタノール中に投じ樹脂を再沈殿させた。この樹脂の赤外吸光スペクトルを測定したところ、未反応の官能基があることを示すポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1770cm−1および1710cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。得られた樹脂は式2の表される繰り返し単位を持つ。
【0078】
式2
【化18】
【0079】
ここでXは、
【化19】
【0080】
Yは、
【化20】
【0081】
Zは、
【化21】
【0082】
また、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、該樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、7000であった。この樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解して、ガラス基板上に塗布し乾燥し膜厚30μmのフィルムを作成した。このフィルムの光線透過率を測定したところ、波長350nmから700nmまでの光線透過率が80%以上であった。弾性率は200MPa、屈折率は1.510であった。
【0083】
合成例3(イミドシリコーン樹脂の合成)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン30.0g(0.1モル)およびN,N−ジメチルアセトアミド250g、トルエン100gを仕込んだ。続いて、上記フラスコ内に2,2‘−{2−ヒドロキシ−3−(3,5−メチル−4−アミノ)−ベンジル−5−メチル}−ジフェニルメタン12.35g(0.025モル)を添加し反応系の温度を50℃で3時間保持した。さらにジアミノシロキサン(ただし、一般式(C)のaの平均が9.5のもの)64.88g(0.075モル)を室温で滴下し、滴下終了後室温で12時間撹拌した。
【0084】
つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、無水酢酸20.4gとピリジン26.4gを添加して50℃まで昇温してその温度を3時間保持した。
【0085】
得られた溶液を貧溶媒であるメタノール中に投じ樹脂を再沈殿させた。この樹脂の赤外吸光スペクトルを測定したところ、未反応の官能基があることを示すポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1770cm−1および1710cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。得られた樹脂は式3の表される繰り返し単位を持つ。
【0086】
式3
【化22】
【0087】
ここでXは、
【化23】
【0088】
Yは、
【化24】
【0089】
Zは、
【化25】
【0090】
また、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、該樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、24000であった。この樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解して、ガラス基板上に塗布し乾燥し膜厚50μmのフィルムを作成した。このフィルムの光線透過率を測定したところ、波長350nmから700nmまでの光線透過率が80%以上であった。弾性率は50MPa、屈折率は1.522であった。
【0091】
合成例4(イミドシリコーン樹脂の合成)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、4,4′−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物44.4g(0.1モル)およびシクロヘキサノン184gを仕込み攪拌して溶解した。ついで、上記フラスコ内に2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.2g(0.02モル)を添加し反応系の温度を50℃で3時間保持した。さらにジアミノシロキサン(ただし、一般式(C)のaの平均が9.5のもの)70.3g(0.08モル)を室温で滴下し、滴下終了後室温で12時間撹拌した。
【0092】
つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、トルエン50gを加え、145℃まで昇温してその温度を6時間保持したところ、ほぼ透明の溶液が得られた。
【0093】
得られた溶液を貧溶媒であるメタノール中に投じ樹脂を再沈殿させた。この樹脂の赤外吸光スペクトルを測定したところ、未反応の官能基があることを示すポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1770cm−1および1710cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。得られた樹脂は式1の表される繰り返し単位を持つ。
【0094】
式1
【化26】
【0095】
ここでXは
【化27】
【0096】
であり、Yは
【化28】
【0097】
であり、Zは
【化29】
【0098】
また、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、該樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、100000であった。この樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解して、ガラス基板上に塗布し乾燥し膜厚60μmのフィルムを作成した。波長350nmから700nmまでの光線透過率のうち350nmから430nmにおいては80%以下であった。また、弾性率は10MPa、屈折率は1.441であった。
【0099】
実施例1(発光装置の製造法)
上記合成例1〜3で合成した透明ポリイミドシリコーン樹脂を緩衝層に使用した発光装置の実施例を図面に示して説明するが、本発明の発光装置の態様はこれに制限されるものではない。
【0100】
図3は本発明の透明ポリイミドシリコーン樹脂を適用した発光装置の一例の断面図を示した。インサート成形可能な耐熱性樹脂を基板1に用い、ダイオードチップ2を被覆した発光装置7を構成する。支持体である基板にはダイオードチップ2と外部とを電気的に接続させるための導通部としてリード内部電極3bを設ける。該リード電極には、外部電極3aと内部電極3bがある。該リード電極3a及び3bは光取り出し効率を損なわないためにAgメッキされた銅電極を使用してある。該ダイオードチップ2はダイボンディングにより固着係止されている。その後、ダイオードチップ2上に設けられた電極と基板の電極とを導線4によりワイヤーボンディングさせる。さらに、基板凹部内に本発明のポリイミドシリコーン樹脂からなる緩衝層5を形成させ、透明なエポキシ樹脂6を注入し熱硬化して表面実装型の発光装置7を形成させる。
【0101】
実施例2
アルミ板上に合成例1で合成した透明ポリイミドシリコーン樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解したワニスを塗布し、風乾によって溶剤を揮発させて膜厚100μmの皮膜を形成し、さらに、その上に脂環式エポキシ樹脂ERL4221(UCC社製商品名) 100部、脂環式酸無水物リカジッドMH−700(新日本理化社製商品名) 100部、及びナトリウム塩DY065(チバガイギー社製商品名) 10部からなる樹脂組成物を厚み1mmで塗工し、150℃5時間で硬化させた。この封止エポキシ樹脂の屈折率は1.494であった。テストピースを121℃、2.1気圧の飽和水蒸気圧下で169時間の環境試験をしたが、界面剥離等の外観異常はみられなかった。
【0102】
実施例3
アルミ板上に合成例2で合成した透明ポリイミドシリコーン樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解したワニスを塗布し、風乾によって溶剤を揮発させて膜厚100μmの皮膜を形成し、さらに、その上にERL4221 100部、リカジッドMH−700 100部、及びDY065 10部からなる樹脂組成物を厚み1mmで塗工し、150℃5時間で硬化させた。このテストピースを121℃、2.1気圧の飽和水蒸気圧下で169時間の環境試験をしたが、界面剥離等の外観異常はみられなかった。
【0103】
実施例4
アルミ板上に合成例3で合成した透明ポリイミドシリコーン樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解したワニスを塗布し、風乾によって溶剤を揮発させて膜厚100μmの皮膜を形成し、さらに、その上にERL4221 100部、リカジッドMH−700 100部、及びDY065 10部からなる樹脂組成物を厚み1mmで塗工し、150℃5時間で硬化させた。このテストピースを121℃、2.1気圧の飽和水蒸気圧下で169時間の環境試験をしたが、界面剥離等の外観異常はみられなかった。
【0104】
比較例1
アルミ板上に合成例4で合成した透明ポリイミドシリコーン樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解したワニスを塗布し、風乾によって溶剤を揮発させて膜厚100μmの皮膜を形成し、さらに、その上にERL4221 100部、リカジッドMH−700 100部、及びDY065 10部からなる樹脂組成物を厚み1mmで塗工し、150℃5時間で硬化させた。このテストピースを121℃、2.1気圧の飽和水蒸気圧下で169時間の環境試験をした結果、界面において白化がみられた。
【0105】
以下に環境試験の結果をまとめた。
【表1】
【0106】
【発明の効果】
本発明の透明ポリイミドシリコーン樹脂は従来のポリイミド樹脂がもつ耐熱性や電気絶縁性に加えて透明性、溶剤可溶性、無機基材及び有機樹脂との接着性に優れ、かつ弾性率が低いという特徴を持つ。そのため本発明の透明ポリイミドシリコーン樹脂をLEDまたはレーザーダイオードのチップと封止樹脂間の緩衝層に使用することによってチップと封止樹脂間に生じる熱応力を緩和し、信頼性、耐久性に優れるダイオードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1で合成したポリイミドシリコーン樹脂の赤外線吸収スペクトル図である。
【図2】合成例1で合成したポリイミドシリコーン樹脂の透過率スペクトル図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる発光装置の要部構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 ダイオードチップ
3a リード電極(外部電極)
3b リード電極(内部電極)
4 導線性ワイヤー
5 緩衝層
6 透明樹脂層
7 発光装置
Claims (8)
- リード電極と、該リード電極と導電性ワイヤーにより接続された発光ダイオード(LED)チップまたはレーザーダイオードチップと、該ダイオードチップを被覆する緩衝層と、該緩衝層を被覆する透明樹脂層を備える発光装置であって、該緩衝層が、一般式(1)で表される構造単位、
を含有するポリイミドシリコーン樹脂から構成されていることを特徴とする発光装置。 - 前記ポリイミドシリコーン樹脂の弾性率が0.1MPa以上1000MPa未満であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
- 前記ポリイミドシリコーン樹脂が熱硬化性基を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
- 前記ポリイミドシリコーン樹脂において、全ジアミン残基に対して一般式(2)または(3)で表されるジアミン残基が5mol%以上95mol%以下であり、一般式(5)で表されるジアミン残基が5mol%以上95mol%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光装置。
- 前記ポリイミドシリコーン樹脂を、厚さ10μmのフィルムにして測定した波長350nmから700nmの光線透過率が、80%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光装置。
- 前記ポリイミドシリコーン樹脂の屈折率が1.45〜1.60であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置。
- 透明樹脂層がエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光装置。
- 発光性ダイオードチップの電極を導電性ワイヤーによってリード電極と電気的に接続する第1の工程と、前記ダイオードチップを請求項1〜6のいずれか1項記載のポリイミドシリコーン樹脂によって被覆して緩衝層を形成する第2の工程と、緩衝層を透明樹脂によって被覆する第3の工程とを含む発光装置の製造方法。
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