JP4136672B2 - 振動型圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力変換器により駆動されてピストンを往復運動させることにより流体を圧縮する振動型圧縮機に係り、特にピストンとストッパとの衝突を検出・防止する振動型圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来技術の振動型圧縮機(リニアコンプレッサ)を含む駆動システムを示す図である。この駆動システムは、直流電源1、単相インバータ2、振動型圧縮機3を備えている。この種の振動型圧縮機は、例えば冷蔵庫等の冷却装置において、膨張した冷媒ガスをシリンダ内のピストンの往復運動により圧縮する場合に使用されている。
【0003】
この従来技術では、電力変換器として半導体スイッチング素子Q1〜Q4を有する単相インバータ2を用い、振動型圧縮機3の圧縮機モータとして単相ボイスコイルリニアモータ(以下、単にリニアモータという。)4A,4Bを用いている。5A,5Bは、気体を圧縮するため、それぞれ各リニアモータ4A,4Bにより駆動される可動部に含まれるピストン、6はシリンダ、7はピストン5A,5Bの位置情報を得るための磁気センサ等の位置センサである。
【0004】
この従来技術の動作を簡単に説明する。
直流電源1に接続された単相インバータ2により、所望の周波数及び振幅の単相交流電圧指令値をリニアモータ4A,4Bに供給する。各リニアモータ4A,4Bの可動部にそれぞれ連結されたピストン5A,5Bは、単相インバータ2が出力する単相交流電圧指令値の周波数に応じて図6の左右方向(x方向)に往復運動を行い、シリンダ6内の気体を圧縮する。
【0005】
このような振動型圧縮機3では、温度などの影響により、気体の圧縮時と膨張時とでピストン5A,5Bに対する平均圧力が異なると、ピストン5A,5Bのx方向に沿った中心位置が変動することになる。その結果として、最悪の場合にはピストン5A,5B同士が衝突してリニアモータ4A,4Bを破損するおそれがある。
【0006】
上記不都合を回避するため、従来技術では、位置センサ7により検出したピストン5Aの位置情報を制御に用いている。そして、得られたピストン位置情報に基づいてピストンの平均位置が中央になるようにリニアモータ4A,4Bへオフセット電圧を印加している。振動型圧縮機のピストンの衝突防止の従来技術はこのようなものである。
なお、ピストンの位置を制御するために位置センサを備えた振動型圧縮機の他の従来技術として、例えば、特許文献1〜3などに開示された発明も存在している。
【0007】
また位置センサを使用しないような従来技術も特許文献4に開示されている。図6で示す従来技術では位置センサ7はシリンダ6内に配置しているが、シリンダ6の内部は圧力が高いため、位置センサ7の信号線を引き出すことは構造上困難であると共に、コストが上昇する原因であった。そこで、このような点に鑑み、位置センサ7を使用せずに、リニアモータの電圧、電流を測定してピストン位置を推定することでピストン位置を制御する、というものである。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−291889号公報(段落[0024]等、[図1])
【特許文献2】
特開2001−90661号公報(段落[0032],[0033]等、[図1],[図2],[図10])
【特許文献3】
特開2002−155869号公報(段落[0028]〜[0034],[0050],[0058]等、[図1],[図3],[図7])
【特許文献4】
特表平8−508558号公報(第7頁〜第8頁「発明の簡単な開示」、第9頁第11行〜第16行等)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図6で示した従来技術、または、特許文献1〜3で開示された従来技術では、トランスなどの原理を応用したピストン位置センサの検出精度を向上させるためにはシリンダ内に配置しなければならないが、その場合構造上邪魔になることが多く、磁気回路の効率を低下させ、ひいてはモータ効率を低下させることになる。また、シリンダ内は圧力が高いため位置センサは耐圧の高いセンサが必要となり、コスト上昇につながる。さらにまた、シリンダ内部の圧力が高いため、ピストン位置センサの電源および信号線を高価なハーメチック(ハーメチックシールは圧力の掛かる場所等の気密を保つ必要がある用途に適しており、シェルとピンとの間をガラスで焼き固めた構造を有している)などで外部に取り出すことになり、コスト上昇につながる。
これらの如く、ピストンの衝突を防止するために位置センサを使用する場合には構造上の問題やコスト上の問題がある。
【0010】
また、特許文献4のごとく位置センサを用いずにピストン位置を制御する従来技術によれば、シリンダ内にピストンを配置する場合の不都合は回避できるが、モータ定数のばらつきやシリンダ内に充填されたガスの劣化、バネの劣化などにより、万が一、ピストンが衝突状態に陥った際にすばやく脱出できないことがあり、この衝突状態が長時間継続するとモータを破損するおそれがある。
【0011】
そこで本発明は、上記した問題点を解決しようとするものであり、その目的は、シリンダ内部での配置が必要となる位置センサを用いることなく、簡易な構成でピストンの状態・衝突の検出、または、ピストンの衝突の防止を実現するようにした振動型圧縮機を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、
ピストンおよびこのピストンを往復動させる駆動部を含むリニアモータと、
前記リニアモータが内部に収容されるシリンダと、
前記シリンダの内部に配置され、前記ピストンの上死点および下死点近傍に配置されるストッパと、
を備え、前記シリンダの内部で前記ピストンを往復動させて圧縮空間を区画形成し、この圧縮空間内の流体を周期的に圧縮する振動型圧縮機であって、
上死点および下死点での前記ピストンと前記ストッパとの衝突である内部衝突または前記シリンダ外部での衝突である外部衝突を加速度の変化により検出して検出信号を生成し、この検出信号に基づき内部衝突判定および外部衝突判定を行って内部衝突か外部衝突かを判定する衝突検出手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明では、
請求項1に記載の振動型圧縮機において、
前記衝突検出手段は、
内部衝突または外部衝突により前記シリンダに加わる加速度に応じて出力される加速度信号に対して全波整流又は半波整流を行って整流信号とし、この整流信号の平滑化を行って生成した検出信号を用いて判定を行う判定手段を有し、
前記判定手段は、この検出信号に基づき内部衝突判定および外部衝突判定を行って内部衝突か外部衝突かを判定する、
ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明では、
請求項1に記載の振動型圧縮機において、
前記衝突検出手段は、
内部衝突または外部衝突により前記シリンダに加わる加速度に応じて加速度信号を出力する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段から出力された加速度信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段から出力された加速度信号から低周波数成分を除去するハイパスフィルタ手段と、
前記ハイパスフィルタ手段から出力された加速度信号の全波整流又は半波整流を行って整流信号を出力する整流手段と、
前記整流手段から出力された整流信号の平滑化を行って検出信号を出力するローパスフィルタ手段と、
前記ローパスフィルタ手段から出力される検出信号に基づき内部衝突判定および外部衝突判定を行って内部衝突か外部衝突かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、
請求項2または請求項3に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
前記リニアモータの停止状態の前記検出信号を平滑化して平均値を算出して、この平均値を検出信号の基準とすることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、
請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
前記リニアモータへ印加される電圧指令値の位相の中の特定の位相期間に対応するような衝突検知タイミング期間に前記検出信号における内部衝突検出レベルをN回(Nは自然数)連続して超える事象が、内部衝突検出期間内にM回(Mは自然数)以上発生するという内部衝突条件を満たす場合に、ピストンとストッパとの衝突であると判定する内部衝突判定を行うことを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明では、
請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
外部衝突検出期間内に、前記検出信号における外部衝突検出レベルを超える回数がK回以上あり、その後外部衝突検出レベルを待機期間超えないという外部衝突条件を満たす場合に、外部での衝突であると判定する外部衝突判定を行うことを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明では、
請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
請求項5に記載の内部衝突判定および請求項6に記載の外部衝突判定を、内部衝突検出期間<外部衝突検出期間として共に行い、前記検出信号における内部衝突検出レベルをN回(Nは自然数)連続して超える事象がM回(Mは自然数)以上発生する事象および前記検出信号における外部衝突検出レベルをK回以上超える事象がともに起こる場合には、内部衝突条件を先に満たした時点で優先的に内部衝突であると判定することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明では、
請求項5または請求項7に記載の振動型圧縮機において、
検出信号と、前記リニアモータへ印加される電圧指令値との位相関係から前記ピストンと前記ストッパとの衝突が上死点で発生したか下死点で発生したかを求め、前記リニアモータへの印加される電圧指令値に逆方向へのDCバイアス電圧指令値を重畳させて前記ピストンと前記ストッパとの衝突を止めることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
続いて本発明の実施形態について図を参照して説明する。図1は本実施形態の振動型圧縮機(リニアコンプレッサ)を含む駆動システムを示す図、図2は本実施形態の振動型圧縮機の構成図、図3は衝突検出手段の構成図である。
図1で示すように、振動型圧縮機100は、直流電源1、単層インバータ2により駆動される点は従来技術と同様であるが、従来技術の位置センサ7に代えて図1,図2で示すような加速度検出手段20により加速度を検出し、図3に示すような衝突検出手段200により衝突を検出するようにした点が新規な点となっている。
【0022】
本実施形態の振動型圧縮機100は、詳しくは、図2で示すように、シリンダ11、リニアモータ12,13、ストッパ14,15,16を少なくとも備えている。さらにシリンダ11の外側面には加速度検出手段20が取り付けられている。この加速度検出手段20は、シリンダ11の内部に取り付ける必要がないため、従来技術のピストンの位置センサと比較して、取り付け位置の選択範囲を拡大できることとなる。
この加速度検出手段20は、衝突検出手段200の一部であり、この衝突検出手段200は、図3で示すように加速度検出手段20、増幅手段21、ハイパスフィルタ手段22、整流手段23、ローパスフィルタ手段24、判定手段25を少なくとも備えている。
【0023】
続いて振動型圧縮機100の各部について説明する。
シリンダ11の内部にはリニアモータ12,13が並べられて配置されている。リニアモータ12,13は、それぞれ駆動部12A,13Aと、ピストン12B,13Bとを備えている。リニアモータ12,13は同じ構造であるため、リニアモータ12についてのみ説明するが、駆動部12Aには、ピストン12Bを含む可動部が弾性部材により往復動自在に支持されており、駆動部12Aに含まれる駆動コイルに電流を流したとき、可動部に含まれる駆動用磁石の磁力と、駆動部12Aに含まれる駆動コイルとの電磁力と、の作用によりピストン12Bを往復動させている。
【0024】
ストッパ14は、ピストン12Bの下死点近傍に配置され、下死点を超えるピストン12Bの移動を防止する。
ストッパ15は、ピストン12Bの上死点近傍およびピストン13Bの上死点近傍に配置され、上死点を超えるピストン12Bの移動および上死点を超えるピストン13Bの移動を防止する。
ストッパ16は、ピストン13Bの下死点近傍に配置され、下死点を超えるピストン13Bの移動を防止する。
【0025】
このような振動型圧縮機100において、圧縮時と膨張時で、ピストン12B,13Bに対する平均圧力が異なる場合、ピストン12B,13Bの中心位置が変位することになる。その結果、ピストン12Bが下死点のストッパ14または上死点のストッパ15に衝突し、また、ピストン13Bが下死点のストッパ16または上死点のストッパ15に衝突し、この衝突状態が続くとモータを破損するおそれがある。
【0026】
そこで、後述する衝突検出手段200により、ピストン12Bの下死点でのストッパ14および上死点でのストッパ15との衝突である内部衝突、ピストン13Bの下死点でのストッパ16および上死点でのストッパ15との衝突である内部衝突、または外部での衝突である外部衝突を加速度の変化により検出し、以後の衝突を防止するというものである。
【0027】
続いて図3に示す衝突検出手段200について説明する。
加速度検出手段20は、例えば半導体プロセスを用いた加速度センサを用いており、この加速度検出手段20は、ピストン12B,13Bとストッパ14,15,16との衝突である内部衝突による衝撃もしくは外部での衝突である外部衝突による衝撃に対応して変化する加速度を検出し、それに応じて加速度信号を出力する。加速度検出手段20にも様々なタイプ(例えば、一軸方向のみの加速度の検出を行うタイプ、三次元多軸方向の加速度の検出を行うタイプ、半導体プロセスによらないタイプ)があるが、少なくともピストン12B,13Bの移動方向と、加速度検出手段20の感度方向である加速度検出軸方向と、が略平行となるようになされていれば良い。これはピストン12B,13Bとストッパ14,15,16との衝突時にはピストン12B,13Bの移動方向に加速度が生じるためであり、このような配慮により衝突検出時の感度を高めることが可能となっている。
【0028】
この加速度信号は微弱な信号であるためオペアンプ等の増幅手段21にて加速度信号を増幅し、増幅した加速度信号を出力する。
その後段にあるハイパスフィルタ手段22は、増幅した加速度信号に含まれるオフセット成分(なおオフセット成分は、加速度検出手段20からの出力に既に含まれている)を除去する。カットオフ周波数は例えば1.6Hzであり、直流成分を除去する。このハイパスフィルタ手段22は急峻な特性が不要であり、ローコストな1次のRCフィルタで実現することができる。このようにハイパスフィルタ手段22によるオフセット成分の除去により、後段の回路の動作電位を確立することができる。
【0029】
整流手段23は、オフセット成分が除去された脈流状の加速度信号に対し、全波整流または半波整流を行って、整流信号を出力する。具体的にはオペアンプ、ダイオードを2個ずつ用いた全波整流回路とする。なお、加速度検出手段20からの出力が飽和する可能性があるため、オペアンプはRail-to-Railのものを採用し、電源に対して信号を大きく取れるようにするためにダイオードはショットキーバリアダイオードを採用している。
ローパスフィルタ手段24は、この整流信号からリップル成分(高周波数成分)を除去し、加速度検出信号の主振動を平滑化して検出信号を出力する。一例としてはカットオフ周波数を1.6kHz、通過周波数帯域500Hz〜2kHzとしている。
【0030】
判定手段25は、詳しくはA/D変換手段25A、CPU(Central Processing Unit)25Bを備えている。判定手段25は、A/D変換手段25AとCPU25Bとが一体になったマイコン・MPUを採用したり、また、個別のICを組み合わせディスクリートに構成しても良い。
A/D変換手段25Aは、アナログ信号である検出信号を、デジタルデータである検出データに変換する。
CPU25Bは、この検出データを入力し、後述するようなアルゴリズムに従い、ピストン12B,13Bとストッパ14,15,16とによる内部衝突であるか、または、外部での衝突である外部衝突であるかを判別し、特に内部衝突の場合にはモータへの印加電圧にオフセットを与えるなどの制御を行い、以後の衝突を回避する制御を行う。
【0031】
なお、整流手段23とローパスフィルタ手段24とを設ける理由であるが、加速度検出手段20から出力される加速度信号の周波数帯域が数kHzにまで及ぶことがあるため、オフセット成分を除去してDC電位が確立された信号を整流手段23により整流し、さらにローパスフィルタ手段24により平滑化することで、加速度信号を低周波数の検出信号に変換して、コストの安い低周波数用のA/D変換手段25Aを利用できるようにするためである。
【0032】
さらに、このような検出信号に変換したあとでも含まれるオフセット(バラツキ)をキャンセルするために、振動型圧縮機100が停止した状態、または、電源投入間際の様に振動型圧縮機のピストン12B,13Bが小振幅動作状態であり、かつ外部からの振動が発生しない状態における検出振動を平滑化して平均値を求め、この平均値を検出信号の基準である基準信号としている。さらに、この検出信号から基準信号を引いた差である校正済みの検出信号をもって衝突や外部振動の検出を行う。
【0033】
具体的には、振動型圧縮機100が停止した状態、または、電源投入間際の様に振動型圧縮機のピストン12B,13Bが小振幅動作状態であり、かつ外部からの振動が発生しない状態における検出データをCPU25Bで平滑化して平均値を求め、この平均値を検出データの基準である基準データとし、CPU25Bがこの検出データから基準データを引いた差である校正済みの検出データをもって衝突や外部振動の検出を行うようにすれば良い。このように加速度が0の状態の加速度信号が入力したにも拘わらず加速度検出手段20および後段の回路に起因して検出信号に現れるオフセット成分を除去することで、加速度が0のときは校正済みの検出データが0になるように校正する。上記整流手段23とローパスフィルタ手段24とに加えてこのようにな校正を行うため、校正ずみの検出データの基準電位を完全に確立できる。
【0034】
続いてピストンの内部衝突判定および外部衝突判定について図を用いて説明する。ピストン12B,13Bがストッパ14,15,16に衝突した内部衝突および外部での外部衝突を、加速度の変化として加速度検出手段20が検出する。この場合ピストン12B,13Bがストッパ14,15,16に衝突した場合のタイミングと衝突の大きさ・長さによって内部衝突と外部衝突との区別を行っている。
【0035】
まず、ピストンの内部衝突判定について図を用いて説明する。
図4は内部衝突判定を説明する説明図である。なお、判定処理はデジタルの校正済みの検出データを用いて行うが、説明の都合上アナログ信号として表示している。
【0036】
ピストン12B,13Bの衝突は、上死点もしくは下死点のどちらかで発生するため、ピストン12B,13Bの位置情報を推定するために単相インバータ2への電圧指令値を利用している。ピストン12B,13Bの上死点、下死点への到達時点はインバータのゼロクロス時点から若干遅れている時点であり、これを調整するため、ゼロクロス時点から遅れ期間Ta1,Ta2待つ。さらに、この遅れ期間Ta1,Ta2から所定期間を衝突検知タイミング期間Tb(図4の斜線で表した期間)としている。
【0037】
このような衝突検知タイミング期間Tbの期間内において一定間隔(一例:約200μs)ごとのサンプリングデータを検出データから抽出し、このサンプリングデータが所定の内部衝突検出レベル(一例:基準レベルから146mv)を超えるような事象が、一定回数(N回、一例:3回)連続して発生するような場合に衝突カウンタをインクリメントする。
【0038】
これは、衝突検出手段200の回路出力はインバータなどから発生するインパルス的なノイズに影響を受けることも考慮して、例えば上死点でN回連続して衝突したような場合を検出することで内部衝突によるパルスであると判定し、単発のインパルス的なノイズでは衝突と検出しないように配慮したものである。
【0039】
さらに、ピストン12B,13Bの衝突が必ずしも連続しない場合もあるため、一定時間である内部衝突検出期間(T1、一例:200ms)の間に衝突カウンタが一定回数(M回、一例:3回)となった場合には衝突が繰り返し発生していると認識してピストン12B,13Bとストッパ14,15,16とによる内部衝突が起きていると判断するようにしている。また、遅れ期間Ta1,Ta2を考慮することによって上死点での衝突か下死点の衝突であるかを判定できる。
【0040】
以上のようにしてピストン12B,13Bの衝突が検知でき、インバータの電圧指令値の位相から上死点で衝突したか下死点で衝突したかを判定できる。そして、この情報を用いてピストン位置の偏りの逆方向へ印加電圧となるDCバイアス電圧指令値を加えることによりピストン12B,13Bの衝突を防ぐことが可能となる。
【0041】
なお、図4で示した基準レベルは、振動型圧縮機100が停止した状態、または、電源投入間際の様に振動型圧縮機のピストン12B,13Bが小振幅動作状態であり、かつ外部からの振動が発生しない状態における検出振動を平滑化して平均値を求め、この平均値を検出信号の基準である基準信号を基準レベルとしている。この場合圧縮ピストン12B,13Bを稼働させて媒体を圧縮する大振幅動作状態であっても、検出信号は殆ど変化がなく基準レベルは変動しないことが知見されており、上記のような基準レベルを採用している。
【0042】
続いて、外部衝突判定について説明する。図5は、外部衝突判定を説明する説明図である。外部衝突判定とは、ピストン12B,13Bとストッパ14,15,16との衝突ではなく、外部から衝撃が与えられた場合の衝突を想定している。一般的に外部からの衝撃はピストン12B,13Bとストッパ14,15,16との内部衝突に比べ平滑化した検出信号が長いという傾向があり、外部衝突による検出信号は、例えば、20ms程度の幅を有する検出信号がピストン12B,13Bの位置と関係なく単発で発生する信号である。
【0043】
そこで、外部衝突期間(T2、一例:800ms)にわたり、検出信号の一定間隔ごと(一例:200us)のサンプリングデータが基準レベル(MID:一例2.5V)からさらに外部衝突検出レベル(一例:340mv)を、連続しているか否かを問わずにK回(20回)超え、その後外部衝突検出レベルを待機期間(T3)超えない場合にはピストン12B,13Bの衝突でなく単発的な外部衝突であったものと判定する。
【0044】
なお連続してK回外部衝突検出レベルを超えることを条件としない理由は、検出信号にインバータなどから発生するインパルス的なノイズが入り、連続とすると検出が困難となるからである。
また、待機期間(T3)待つのは、K回の検出だけでは外部振動による出力と、ピストンとストッパとの1回分の衝突の出力と区別ができないおそれがあるためであり、待機期間(T3)に衝突が検出されないような場合にピストンとストッパとの定周期的な衝突ではなく、外部での突発的な衝突であると判定するためである。
【0045】
なお、図5で示した基準レベルは、振動型圧縮機100が停止した状態、または、電源投入間際の様に振動型圧縮機のピストン12B,13Bが小振幅動作状態であり、かつ外部からの振動が発生しない状態における検出振動を平滑化して平均値を求め、この平均値を検出信号の基準である基準信号を基準レベルとしている。この場合圧縮ピストン12B,13Bを稼働させて媒体を圧縮する大振幅動作状態であっても、検出信号は殆ど変化がなく基準レベルは変動しないことが知見されており、上記のような基準レベルを採用している。
【0046】
このように内部衝突条件と外部衝突条件とを相違させることにより、ピストン12B,13Bとストッパ14,15,16との衝突である内部衝突による周期的な振動、または、ピストン12B,13Bの運動とは非同期で単発的に発生する外部衝突による長い振動(20ms程度)との違いを区別することが可能となっている。
【0047】
なお、CPU25は上記した内部衝突判定および外部衝突判定を、内部衝突検出期間<外部衝突検出期間として共に行い、内部衝突検出レベルをN回(Nは自然数)連続して超える事象がM回(Mは自然数)以上発生する事象および検出信号が外部衝突検出レベルをK回以上超える事象がともに起こる場合には、内部衝突条件を先に満たした時点で優先的に内部衝突であると判定する。
【0048】
詳しく説明すると、検出信号が内部衝突レベルと外部衝突レベルと両方とも超える条件1と、内部衝突のN回連続の衝突が検出され、かつ外部衝突のK回以上の衝突が検出される条件2が共に成立するような場合には、この時点では内部衝突であるか外部衝突であるか判別できない。そこで、内部衝突検出期間<外部衝突検出時間として内部衝突検出と外部衝突検出とを共に行い、内部衝突検出レベルをN回(Nは自然数)連続して超える事象と検出信号が外部衝突検出レベルをK回以上超える事象が起こった場合であっても、内部衝突検出レベルをN回(Nは自然数)連続して超える事象が内部衝突検出期間内にM回(Mは自然数)以上発生したときには振動が周期的であることを理由に内部衝突であると判定する。
これにより、内部衝突か外部衝突かを区別することができる。
【0049】
このようにして振動型圧縮機100に内部衝突が発生していると判断された場合、CPU25Bは、さらに平滑化した検出信号と前記リニアモータへの印加電圧の位相関係、つまり、遅れ期間がTa1で振動が発生しているか、またはTa2で振動が発生しているかを判断して、ピストン12B,13Bとストッパ14,15,16との衝突が上死点で発生したか下死点で発生したかを求め、リニアモータ12,13に印加される電圧指令値に逆方向へのDCバイアス電圧指令値を重畳させるように単相インバータ2を制御してピストン12B,13Bとストッパ14,15,16との衝突を防止する。
これにより、振動型圧縮機100は内部振動・外部振動を区別して検出し、さらに内部衝突が起こっていると判断したときには、さらに振動を防止するように制御することとなる。
【0050】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、振動型圧縮機の効率低下やサイズの増大やコストアップを招くことなく、ピストンの可動部限界情報と外部からの振動を区別して検知することが可能である。
【0051】
また、リニアモータへの印加電圧の位相情報と、ピストンとストッパとの衝突のタイミングから振動型圧縮機のピストン位置情報が得られ、その情報からピストンがストッパへ衝突することを避けるDCバイアス電圧指令値をモータへ印可し、衝突を回避することが可能となる。
【0052】
総じて、シリンダ内部での配置が必要となる位置センサを用いることなく、簡易な構成でピストンの状態・衝突の検出、または、ピストンの衝突の防止を実現するようにした振動型圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の振動型圧縮機(リニアコンプレッサ)を含む駆動システムを示す図である。
【図2】本発明の実施形態の振動型圧縮機の構成図である。
【図3】衝突検出手段の構成図である。
【図4】内部衝突判定を説明する説明図である。
【図5】外部衝突判定を説明する説明図である。
【図6】従来技術の振動型圧縮機(リニアコンプレッサ)を含む駆動システムを示す図である。
【符号の説明】
1:直流電源
2:単相インバータ
3:振動型圧縮機
4A,4B:リニアモータ
5A,5B:ピストン
6:シリンダ
7:位置センサ
11:シリンダ
12,13:リニアモータ
12A,13A:駆動部
12B,13B:ピストン
14,15,16:ストッパ
20:加速度検出手段
21:増幅手段
22:ハイパスフィルタ手段
23:整流手段
24:ローパスフィルタ手段
25:判定手段
25A:A/D変換手段
25B:CPU
Q1〜Q4:半導体スイッチング素子
100:振動型圧縮機
200:衝突検出手段
Claims (8)
- ピストンおよびこのピストンを往復動させる駆動部を含むリニアモータと、
前記リニアモータが内部に収容されるシリンダと、
前記シリンダの内部に配置され、前記ピストンの上死点および下死点近傍に配置されるストッパと、
を備え、前記シリンダの内部で前記ピストンを往復動させて圧縮空間を区画形成し、この圧縮空間内の流体を周期的に圧縮する振動型圧縮機であって、
上死点および下死点での前記ピストンと前記ストッパとの衝突である内部衝突または前記シリンダ外部での衝突である外部衝突を加速度の変化により検出して検出信号を生成し、この検出信号に基づき内部衝突判定および外部衝突判定を行って内部衝突か外部衝突かを判定する衝突検出手段を備えることを特徴とする振動型圧縮機。 - 請求項1に記載の振動型圧縮機において、
前記衝突検出手段は、
内部衝突または外部衝突により前記シリンダに加わる加速度に応じて出力される加速度信号に対して全波整流又は半波整流を行って整流信号とし、この整流信号の平滑化を行って生成した検出信号を用いて判定を行う判定手段を有し、
前記判定手段は、この検出信号に基づき内部衝突判定および外部衝突判定を行って内部衝突か外部衝突かを判定することを特徴とする振動型圧縮機。 - 請求項1に記載の振動型圧縮機において、
前記衝突検出手段は、
内部衝突または外部衝突により前記シリンダに加わる加速度に応じて加速度信号を出力する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段から出力された加速度信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段から出力された加速度信号から低周波数成分を除去するハイパスフィルタ手段と、
前記ハイパスフィルタ手段から出力された加速度信号の全波整流又は半波整流を行って整流信号を出力する整流手段と、
前記整流手段から出力された整流信号の平滑化を行って検出信号を出力するローパスフィルタ手段と、
前記ローパスフィルタ手段から出力される検出信号に基づき内部衝突判定および外部衝突判定を行って内部衝突か外部衝突かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする振動型圧縮機。 - 請求項2または請求項3に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
前記リニアモータの停止状態の前記検出信号を平滑化して平均値を算出して、この平均値を検出信号の基準とすることを特徴とする振動型圧縮機。 - 請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
前記リニアモータへ印加される電圧指令値の位相の中の特定の位相期間に対応するような衝突検知タイミング期間に前記検出信号における内部衝突検出レベルをN回(Nは自然数)連続して超える事象が、内部衝突検出期間内にM回(Mは自然数)以上発生するという内部衝突条件を満たす場合に、ピストンとストッパとの衝突であると判定する内部衝突判定を行うことを特徴とする振動型圧縮機。 - 請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
外部衝突検出期間内に、前記検出信号における外部衝突検出レベルを超える回数がK回以上あり、その後外部衝突検出レベルを待機期間超えないという外部衝突条件を満たす場合に、外部での衝突であると判定する外部衝突判定を行うことを特徴とする振動型圧縮機。 - 請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の振動型圧縮機において、
前記判定手段は、
請求項5に記載の内部衝突判定および請求項6に記載の外部衝突判定を、内部衝突検出期間<外部衝突検出期間として共に行い、前記検出信号における内部衝突検出レベルをN回(Nは自然数)連続して超える事象がM回(Mは自然数)以上発生する事象および前記検出信号における外部衝突検出レベルをK回以上超える事象がともに起こる場合には、内部衝突条件を先に満たした時点で優先的に内部衝突であると判定することを特徴とする振動型圧縮機。 - 請求項5または請求項7に記載の振動型圧縮機において、
検出信号と、前記リニアモータへ印加される電圧指令値との位相関係から前記ピストンと前記ストッパとの衝突が上死点で発生したか下死点で発生したかを求め、前記リニアモータへの印加される電圧指令値に逆方向へのDCバイアス電圧指令値を重畳させて前記ピストンと前記ストッパとの衝突を止めることを特徴とする振動型圧縮機。
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