JP4134683B2 - 自動操舵装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基準走行ラインに対する車両の横方向の相対位置に応じて目標操舵角を演算する自動操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動操舵装置として、基準走行ラインに対する車両の横方向の相対位置に応じて目標操舵角を演算するものがある。この自動操舵装置では、車両の状態をオブザーバにより推定し、その推定した状態量に基づいて目標操舵角を算出している。
【0003】
しかし、このような自動操舵装置では、オブザーバとして直線走行モデルに基づくカルマンフィルタを用いている。直線走行モデルに基づくオブザーバを用いて曲線路を走行した場合、オブザーバの平衡点ずれが原因となり、走行位置ずれ等が発生する。特許文献1に開示されている自動操舵装置では、このようなオブザーバの平衡点ずれが原因となる走行位置ずれ等を解消するため、積分特性を有する平衡点操舵角(オフセット操舵角)推定器を設けている。具体的には次のようにオブザーバの平衡点ずれに起因する走行位置ずれ等を解消している。
【0004】
目標軌道と実際の走行軌跡とが一致するまで目標操舵角を積算した値として平衡点操舵角を算出し、あるいは目標軌道と実際の走行軌道と差分の積算値に所定の係数を乗じた値として平衡点操舵角を算出し、この平衡点操舵角を前記直線走行モデルに基づくオブザーバの入力する。ここで、オブザーバは、ヨーレート、ヨー角或いは横変位等から推定した車両状態量を算出するように構成されている。
【0005】
このように仮想的に算出した平衡点操舵角をオブザーバに入力することで、たとえオブザーバが直線走行モデルとして設計されている場合でも平衡点ずれを補正し、正しい車両状態量を推定できるようにしている。そして、正しく推定された車両状態量の状態フィードバック制御を行うことで、曲線路である基準走行ラインに沿って車両を走行させることを実現している。
【0006】
以上のように、オブザーバが直線走行モデルにより構築されていることを前提に、曲線路を走行中である場合に生じるモデル化誤差に起因する走行位置のずれを修正し、曲線路である基準走行ラインに沿って車両を走行させることを実現している。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−297521号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述の構成では、目標軌道と実際の走行軌道とが一致するまで平衡点操舵角を積算しているので、車両への実装を考え、運転者の介入によるハンドル操作の影響を考慮して設計する必要がある。すなわち、運転者の介入によるハンドル操作があるような場合には長時間目標軌道に一致しないことが想定され、このような事態に対応して、積算処理部に所定のリミッタ手段を設けて平衡点操舵角の絶対値が発散しない構成にしなければならない。
【0009】
しかし、リミッタ処理が実行されるのは、何もドライバの操舵介入時だけには限らない。例えば、目標軌道が大きく変更された場合もリミッタ処理がなされてしまう。しかしながら、このように目標軌道が大きく変更された場合にも積分演算部でリミッタ処理がなされると、安定化制御部とのゲインのバランスが崩れることとなり、目標軌道への追従速度が著しく低下してしまうといった問題が発生する。
【0010】
また、前述の構成では、状態フィードバック要素と積分フィードバックゲインとは独立して設定されるようになっているので、系全体としての動作を適正にすることが非常に難しく試行錯誤を繰り返す必要がある。さらに、そもそもモデル自身が直線走行モデルであるため、曲率半径が小さい場合や目標軌道が頻繁に切り替わる場合には大きな誤差が生じ、走行安定性を乱す恐れもある。
【0011】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みてなされたものであり、基準走行ラインに沿って車両を走行させる積算処理部でリミッタ処理を行った場合でも、その基準走行ラインに安定して車両を追従させることができる自動操舵装置の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前述の問題を解決するために、本発明に係る自動操舵装置は、基準走行ラインに対する車両の横方向の相対位置を検出する相対位置検出手段と、前記相対位置検出手段の検出結果に応じて目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算手段と、前記目標操舵トルクに基づいて車両の転舵輪に舵角を発生させる舵角発生手段と、を備えた自動操舵装置において、前記目標操舵トルク演算手段は、車両が走行中の道路の曲率を道路曲率推定手段により推定し、前記相対位置検出手段の検出結果に基づいて車両の走行状態を走行状態推定手段により推定し、前記走行状態推定手段が得た車両の走行状態に基づいて、前記道路曲率推定手段が得た道路曲率の基準走行ラインを基準にして車両を安定にする安定化制御トルクを安定化制御トルク演算手段により算出し、前記相対位置検出手段が検出した前記相対位置に基づいて前記基準走行ラインに対する実際の走行ラインのずれ量を算出し、前記ずれ量に基づいて車両を基準走行ラインに追従走行させるための基準走行ライン追従トルクを基準走行ライン追従トルク演算手段により算出し、前記安定化制御トルクと前記基準走行ライン追従トルクとを加算して前記目標操舵トルクを加算手段により算出する。
【0013】
すなわち、所定の道路曲率として得た基準走行ラインに追従走行させるための基準走行ライン追従トルクと、基準走行ラインを基準にして車両を安定にする安定化制御トルクとを個別に設定可能にしている。具体的には、基準走行ライン追従トルクの変化に基づいて安定化制御トルクの値を設定する。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、基準走行ライン追従トルクと安定化制御トルクとを個別に設定することで、急激なトルク変化や走行位置の変化を抑止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図6は本発明の実施の形態を示す図である。
図1は自動操舵装置が搭載された車両1の概略構成を示す平面図である。先ず、図1に示す構成について説明すると、この車両1にあっても、基本的には通常の車両と同様に運転者がステアリングホイール2を操舵することにより転舵輪としての前輪3L,3Rに舵角が発生するようになっている。つまり、図2に拡大図示するように、ステアリングホイール2には、回転方向に一体にステアリングシャフト4の上端部が連結され、そのステアリングシャフト4の下端には図示しないユニバーサルジョイント等の中継手段を用いてパワーステアリング装置5への入力軸に連結されている。この入力軸には、パワーステアリング装置5にてピニオン軸が一体に形成され、そのピニオン軸がパワーステアリング装置5で車両横方向に進退するラック6に噛み合っている。さらに、パワーステアリング装置5への入力軸とピニオン軸との中間には、例えば操舵系に発生するトルクを検出する図示しないトルクセンサが設けられており、パワーステアリング装置5はトルクセンサにより検出された操舵トルクを軽減するように油圧アクチュエータ等を制御してラック6に操舵補助トルクを付与する。
【0016】
そして、ラック6の両端部には左右タイロッド7L,7Rが連結され、それらタイロッド7L,7Rの外端側は、前輪3L,3Rを回転自在に支持するナックルに結合されている。従って、ステアリングホイール2を運転者が操舵すると、その操舵力がステアリングシャフト4及びパワーステアリング装置5を介してラック6の進退力に変換されて両タイロッド7L,7Rに入力され、前輪3L,3Rに舵角が発生する。このとき、操舵系に発生した操舵トルクを軽減するようにパワーステアリング装置5によって操舵補助トルクが発生するようになっており、これにより、運転者の負担が軽減される。
【0017】
さらに、ステアリングシャフト4には、自動的に前輪3L,3Rに舵角を発生させる自動操舵機構10が設けられている。この自動操舵機構10は、電動モータ10aと、この電動モータ10aの回転力を拡大してステアリングシャフト4に伝達するためにウォームギヤ等の減速機構及び電動モータ10aの動力を断続可能にする電磁クラッチ等の伝達機構10bと、を備えている。
【0018】
自動操舵機構10の動作としては、運転者が手動操舵を選択した場合、電磁クラッチを非接続状態にして、電動モータ10aが操舵系の負荷にならないようにしている。つまり、自動操舵が選択された場合には、電磁クラッチが接続状態となり、電動モータ10aの回転力が伝達機構を介してステアリングシャフト4に伝達される。そして、自動操舵機構10の電動モータ10aには、車両1に搭載されたコントローラ20から駆動電流が供給されるようになっており、その駆動電流に応じた方向及び大きさの回転トルクが電動モータ10aに発生するため、手動操舵時と同様に前輪3L,3Rに舵角を発生させる。
【0019】
なお、この実施の形態では、ステアリングシャフト4の伝達機構の連結位置よりもラック6に近い側に、パワーステアリング装置5のトルクセンサを配設しているため、電動モータ10aの回転力が小さくても、前輪3L,3Rに舵角を発生させることができるようになっている。
また、ステアリングシャフト4には、その回転変位を計測して前輪3L,3Rの実際の操舵角を検出する舵角センサ14が取り付けられている。舵角センサ14は、実際の操舵角を精度良く検出することが可能な構成として、ステアリングシャフトの回転を増速するギヤ機構及びロータリーエンコーダ又はポテンショメータ等の角度検出機構を組み合わせて構成されている。そして、この舵角センサ14の出力は、舵角検出信号としてコントローラ20に供給される。
【0020】
さらに、この車両1には、車両1前方の走行路を撮影するCCDカメラ17が搭載されている。このCCDカメラ17は、車両1前方の数m〜数10m先の路面を撮影できるように構成されている。そして、CCDカメラ17が撮影した画像はコントローラ20に供給される。コントローラ20は、CCDカメラ17が撮影した画像に基づいて、走行路に沿った基準走行ラインに対する車両1の横方向の相対位置を検出するようになっている。
【0021】
具体的には、コントローラ20は、CCDカメラ17が撮影した画像から、基準走行ラインとして用いることができる情報(例えば、路面に描かれたセンターラインやサイドライン、或いはガイドレール等)を抽出する。コントローラ20は、この抽出した情報に基づいて基準走行ラインを想定(例えば、走行車線の中央部等)して、その基準走行ラインと、車両1の重心を通って車両前後方向に延びる基準線の所定位置(例えば、車両前方10mの位置)との間隔(差分)を、前方注視点における基準走行ラインに対する車両1の横方向の相対位置(以下、前方注視点横変位ysrという。 )として検出する。
【0022】
また、車両1には、例えば変速機の出力側の回転数や車輪の回転数を検出することにより車速を検出する車速センサ19が配設されている。車速センサ19が検出した車速検出信号はコントローラ20に供給される。
コントローラ20は、供給される各検出信号やCCDカメラ17が撮影した画像に基づいて操舵トルクをステアリングシャフト4へ入力するようになっている。すなわち、コントローラ20は、供給される各検出信号等に基づいて、所定の演算を実行して車両1が走行路面の基準走行ラインに沿って走行するために必要な目標操舵トルクを求め、自動操舵機構10の電動モータ10aへ供給される電流を制御してその目標操舵トルクをステアリングシャフト4に入力している。これにより、その目標操舵トルクに応じて車両の転舵輪である前輪3L,3Rに舵角を発生させる。
【0023】
ここで、コントローラ20は、図示はしないがA/D変換器、D/A変換器等のインタフェース回路、ROM或いはRAM等のメモリ装置、又はマイクロコンピュータ等を含んで構成されている。
次に自動操舵系についてさらに詳しく説明する。ここでは、オブザーバを用いた自動操舵系について説明する。図3は自動操舵系の制御系の構成(コントローラ20内の構成)を示し、この図3を用いて基本的な処理等を説明する。
【0024】
図3中、110はオブザーバであり、121はレギュレータゲインである。
オブザーバ110は、カルマンフィルタとして構築されている。このオブザーバ110は、行列A,B,C及びゲインLを有するとともに、加算器111,112を含んで構成されている。なお、オブザーバ110中に示す、sはラプラス演算子であり、zは状態量xの推定値である。
【0025】
このような構成により、コントローラ20は、車両1の操舵トルクuを制御している。すなわち、オブザーバ110には、操舵トルクu及び前記前方注視点横変位ysrが供給されていて、このオブザーバ110は、それら操舵トルクu及び前方注視点横変位ysrに基づいて状態量ベクトル(状態量)xを推定する。ここで、状態量ベクトルxは、ヨーレートγ、走行車線に対する相対ヨー角φr、走行車線に対する相対横変位ycr、走行車線に対する相対横速度y'cr、操舵角度δf及び操舵角速度δ'fである。
【0026】
前記行列A,B,Cは、車両1のモデルから決まる行列であり、先ず、車両モデルを図4に示すように一般的な2輪モデルで表す。なお、図4中の各記号の意味は下記の通りである。
β:車体横滑り角,Cf:前輪コーナリングパワー(二輪分)、Cr:後輪コーナリングパワー(二輪分)、m:車両重量、I:ヨー慣性モーメント、δf:前輪実舵角、V:車速、lf:重心と前輪との間の距離、lr :重心と後輪との間の距離、Ff:前輪のコーナリングフォース、Fr:後輪のコーナリングフォース
このモデルの運動方程式は下記(1)式のようになる。
【0027】
【数1】
Figure 0004134683
【0028】
また、目標軌道の接線の傾きの変化量が道路曲率ρで定義したとき、単位時間当たりの目標軌道からの相対的な車両のヨー角変化、すなわち目標軌道に対する相対ヨーレートφ'rは、
【0029】
【数2】
Figure 0004134683
【0030】
であり、また、相対横速度y'crは、
【0031】
【数3】
Figure 0004134683
【0032】
であるから、前記(1)式より横滑り角及び横滑り角速度を消去し、整理するとそれぞれ下記(4)式及び(5)式が得られる。
【0033】
【数4】
Figure 0004134683
【0034】
【数5】
Figure 0004134683
【0035】
また、基準走行ラインに対する車両1の横方向の前方注視点横変位ysrは、前方注視点位置の車両前方の距離をLs[m]とおいて、目標軌道(走行車線)からの相対横変位ycr 、相対ヨー角φr及び道路曲率ρを用いると、下記(6)式として記述できる。
【0036】
【数6】
Figure 0004134683
【0037】
一方、前記図2に示す自動操舵装置における操舵系の運動方程式は次のように記述できる。
【0038】
【数7】
Figure 0004134683
【0039】
ここで、ζ:車両のトレール長さ、KT:操舵アクチュエータのトルク係数、Ns:操舵アクチュエータから操舵系へのトルク伝達比、Cs:操舵系の減衰係数そして、前記(4)式及び(5)式と同様に、横滑り角β及び横滑り角速度β'を消去し、整理すると下記(8)式のようになる。
【0040】
【数8】
Figure 0004134683
【0041】
これら(4)式〜(6)式及び(8)式を新たに目標として道路曲率を状態変数に加えて行列表現することにより、曲線走行状態における車両モデルは下記(9)式のように記述できる。
【0042】
【数9】
Figure 0004134683
【0043】
前記動的システムに対して、ある行列Lを用いて
【0044】
【数10】
Figure 0004134683
【0045】
なる演算を行って、状態変数ベクトルzを算出する。ここで算出する状態変数ベクトルzと、真の車両状態量ベクトルxとの偏差をeとすると、前記(9)式及び(10)式から下記(11)式が得られる。
【0046】
【数11】
Figure 0004134683
【0047】
前記遷移行列A−LCのすべての固有値の実部が負になるように行列Lを決定すると下記(12)式のようになる。
【0048】
【数12】
Figure 0004134683
【0049】
これにより、任意の初期値e(t0)の値によらず、十分に時間の経過後には先に算出された状態変数ベクトルzと真の車両状態量ベクトルxとの偏差ベクトルeは0となり、状態変数ベクトルzと真の車両状態量ベクトルxと一致するので、車両の状態量を正しく検出することができる。
ここで、前記(10)式はオブザーバを示すもので、このようなオブザーバを用いた解法は動的システムの状態推定に良く利用される手法である。
【0050】
一方、システムへのプロセスノイズw及び観測ノイズ(センサーノイズ)nを考慮するとシステムの行列表現は下記(13)式として記述できる。
【0051】
【数13】
Figure 0004134683
【0052】
そして、前述したオブザーバと同様に偏差ベクトルeを下記(14)式として得ることができる。
【0053】
【数14】
Figure 0004134683
【0054】
ここで、プロセスノイズwとセンサーノイズnとが正規性白色ノイズであると仮定した場合、推定誤差eを最小にするように行列Lを求めたものがカルマンフィルタとなり、動的システムの状態推定にしばしば利用される。
ところで、プロセスノイズwには、横風や路面カント(片勾配)を原因とするヨー方向へのモーメント成分や横方向への横力成分のように、厳密には正規性白色ノイズではない持続的な外乱が作用したり、車両パラメータ誤差等のモデル化誤差が存在するため、状態推定値が真の値に収束しない場合がある。このような結果、前記図3に示すレギュレータ121だけの単純な状態フィードバック制御では定常的な位置ずれを生じる可能性がある。このような場合、車両が基準走行ラインからそれる方向へに舵制御されることになり、運転者は強い違和感を感じる可能性が高い。
【0055】
これに対し、本実施の形態におけるコントローラ20は、次のような構成を備えている。図5は、コントローラ20を、基本的な機能構成(図3に示した構成)を含む本発明を適用した系全体をブロック図である。
すなわち、図5に示すコントローラ20は、図3に示したコントローラ20と同様に、曲線走行状態をモデルとして構成されたオブザーバ110と、レギュレータゲインKs(図3では、K0)とを含んだ構成になっている。そして、オブザーバ110についても、前述したような手法で決定される行列A,B,C及びゲインLを有するとともに、加算器111,112を含んで構成されている。ここで、オブザーバ110中に示す、sはラプラス演算子であり、zは状態量xの推定値、 Czは観測値ベクトルyの推定値である。
【0056】
ここで、本実施の形態におけるコントローラ20の詳細をさらに図6を用いて説明すると、コントローラ20は、車両1の前方注視点横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyを得る加算器123と、加算器123により得た偏差Δyに基づいて車両1に発生すべき基準走行ライン追従トルクu2を算出する基準走行ライン追従トルク発生部130と、安定化制御トルクusを算出する安定化制御トルク発生部(Ks)124と、基準走行ライン追従トルク発生部130が算出した前記基準走行ライン追従トルクu2と安定化制御トルク発生部(Ks)124が算出した安定化制御トルクusとを加算して目標操舵トルクuを得る加算器122とを含んで構成されている。
【0057】
基準走行ライン追従トルク発生部130は、積算部140と、積算部140からの出力値にゲインK2を掛ける乗算部131とを備えている。
積算部140は図7に示すように構成されている。積算部140は、前記加算部123からの出力値である、前方注視点横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyにサンプリング時間Tを乗じ、その値に当該積算部140で1サンプリング時間前に得た積算値を加算し、リミット処理部141で所定のリミット処理を行って最新の積算値を算出する。
【0058】
なお、積算部140中のq-1はシフト演算子であり、入力された信号を、q-1で1サンプリング時刻だけ遅れて出力する。また、リミット処理部141で用いる積算値の上限値及び下限値については、基準走行ライン追従トルクu2が所定の上限値及び下限値の範囲内にとどまるように決定している。
基準走行ライン追従トルク発生部130は、このような積算部140により算出した積算値に、乗算部131でゲインK2を乗じ、基準走行ライン追従トルクu2を得る。なお、乗算部のゲインK2の値の選定については後で詳述する。
【0059】
安定化制御トルク発生部(Ks)124は、道路曲率ρによって与えられる基準走行ライン周りの車両の走行状態を安定化させるための安定化制御トルクusを算出するように構成されている。図8は、その具体的構成を示す。
安定化制御トルク発生部124にはオブザーバ110が推定する状態量zが入力されており、安定化制御トルク発生部124は、2種類のレギュレータゲインK0,K1それぞれをその状態量zに乗じ、それに対応して第1及び第2の安定化制御トルクu0,u1を算出する。なお、レギュレータゲインK0,K1の値の選定については、レギュレータゲインKsの値の選定として後で詳述する。
【0060】
安定化制御トルク発生部124は、基準走行ライン追従トルクu2がリミット処理されている場合とそうでない場合に応じて第1の安定化制御トルクu0と第2の安定化制御トルクu1とを切り換えて、第1の安定化制御トルクu0と第2の安定化制御トルクu1とのいずれか一方を安定化制御トルクusとして出力する。ここで、第1の安定化制御トルクu0の方が第2の安定化制御トルクu1よりも小さな値になっており、基準走行ライン追従トルクu2のリミット処理作動時には、第1の安定化制御トルクu0を安定化制御トルクusとして出力する。
【0061】
このように安定化制御トルク発生部(Ks)124により安定化制御トルクusが得られ、この安定化制御トルクusは、道路曲率をρとする基準走行ライン周りの微小なずれを補正する値となる。そして、この安定化制御トルクusは前記加算器122に入力される。加算器122では、この安定化制御トルクusと前記基準走行ライン追従トルク発生部130からの基準走行ライン追従トルクu2とを加算して目標操舵トルクuを得る。
【0062】
ここで、積算部130のゲインK2やレギュレータゲインKs(レギュレータゲインK0,K1)の値の決定について説明する。
ゲインK2は、その値を大きくすると基準走行ラインへの追従速度が速くなるといった特性をもつゲインである。このようなことから、ゲインK2は、前方注視点横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyの積分値がわずかに変化した場合であっても、基準走行ライン追従トルクu2に大きな変化を与えてしまう。この結果、例えば前方注視点横変位ysrの検出結果に含まれるノイズ成分に過敏に反応した基準走行ライン追従トルクu2が算出されて、操舵系の動きがぎこちなくなる可能性がある。
【0063】
また、レギュレータゲインKsに比べてゲインK2があまりに大きすぎると、基準走行ラインを基準に車両の安定化を図る安定化制御トルクusが相対的に低下してしまう。この結果、前方注視点横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyがそれほど大きくない場合であっても、基準走行ライン追従トルクu2が支配的になり、基準走行ラインに対する行き過ぎ量が大きくなる。これにより、車両が基準走行ライン上を通過する瞬間には基準走行ラインから逸脱する方向への制御トルクが残ってしまい、車両の走行安定性といった面或いは運転者の操舵感といった面から好ましくない状態が発生する可能性がある。
【0064】
逆に、ゲインK2を小さくしすぎると、走行安定性は相対的に向上するが、追従速度は低下する。この結果、車両がまだ目標軌道に達していないにも拘わらず目標軌道へ向かっていくことに抵抗するような操舵トルクが演算されてしまい、運転者の操舵感といった面から好ましくない状態が発生する可能性がある。
以上のようなことから、ゲインK2及びレギュレータゲインKs(レギュレータK0,K1)をそれぞれ任意の値として単独で設定するのではなく、ゲインK2とレギュレータゲインKsとがうまく協調するような組み合わせで決定する。例えば、車両1に対して自動操舵制御を実行した状態での動特性を実験やシミュレーションで充分に確認し、その動特性を考慮しつつ適宜選定するようにする。例えば、ゲインK2の値とレギュレータゲインKsの値との最適な組み合わせは次のような手法により求める。
【0065】
例えば、図3のような構成においてレギュレータゲインK0を求める手法として、前記(9)式に対応した次の評価関数Jを最小にするレギュレータを最適レギュレータにする、といった手法が知られている。
【0066】
【式15】
Figure 0004134683
【0067】
ここで、行列Q,Rを調整することにより系の応答を調整することができ、また、下記(16)式により安定化制御トルクu0を算出できる。
【0068】
【式16】
Figure 0004134683
【0069】
このような手法を適用して、図6に示した装置では、前方注視点横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyの積分値をhとしたとき、下記(17)式を得ることができる。
【0070】
【式17】
Figure 0004134683
【0071】
このような拡張系で下記(18)式に示す評価関数Jを最小にする最適レギュレータを演算すればよい。
【0072】
【式18】
Figure 0004134683
【0073】
ここで、行列qh,Q',R'を調整することで系の応答を調整することができ、また、下記(19)により目標操舵トルクuを算出することができる。
【0074】
【式19】
Figure 0004134683
【0075】
なお、この場合でも、車両1に対して自動操舵制御を実行した状態での動特性を実験やシミュレーションで充分に確認し、その動特性を考慮しつつ適宜選定する必要がある。しかし、実際には基準走行ラインへの追従速度を行列qhで調整し、そのときの車両の安定度が不足気味なら行列Q'の要素を徐々に大きい値へ修正していく程度で望ましい応答が得られる場合が多い。
【0076】
図9は、コントローラ20の処理手順を示す。コントローラ20はこの処理を所定のサンプリング・クロックに同期して実行する。
自動操舵制御が実行されると、先ずステップS1において、コントローラ20は、舵角センサ14からの舵角検出信号δf、車速センサ19からの車速検出信号V、及びCCDカメラ17から画像をそれぞれ読み込む。
【0077】
なお、車速検出信号Vは、オブザーバ110の行列A,B,Cの要素を決定するのに必要な情報であるため、車速Vとして行列A,B,Cに取り込まれることになる。
続いてステップS2において、コントローラ20は、前記ステップS1で読み込んだ画像に基づいて、前記前方注視点横変位ysrを検出する。
【0078】
続いてステップS3において、コントローラ20は、オブザーバ110に基づいた演算(前記(10)式)を実行することで、実際の車両状態量xを推定する演算を行い、車両状態推定ベクトルzを出力する。
続いてステップS4において、コントローラ20は、前記ステップS3で得た車両状態量推定ベクトルzと、2種類の減衰特性の異なるK0,K1とに基づいて、2種類の減衰特性の異なる安定化制御トルクu0,u1を得る(前記(19式)により得る)。すなわち、
0=−K0z,u1=−K1
を得る。
【0079】
続いてステップS5において、コントローラ20は、前記ステップS2で検出した前記前方注視点横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δfを積算し、その積算値にゲインK2を乗算し、基準走行ライン追従トルクu2を算出する。
また、このステップS5において、コントローラ20は、その基準走行ライン追従トルクu2に対して所定の上限値又は下限値によるリミット処理を行うとともに、前記横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyの積算値についてもリミット処理を行う。そして、リミット時にリミットフラグをセットする。このようにそれぞれリミット処理することで、偏差積分値の絶対値がそれ以上増加しないようにする。すなわち、基準走行ライン追従トルクu2がリミット処理された時点での前記横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyの積算値が上限値又は下限値になる。
【0080】
続いてステップS6において、コントローラ20は、前記ステップS5で得た基準走行ライン追従トルクu2がリミット処理されているか否かの判定を行う。すなわち、前記リミットフラグがセットされているか否かを判定し、基準走行ライン追従トルクu2がリミット処理されているか否かの判定を行う。ここで、コントローラ20は、基準走行ライン追従トルクu2がリミット処理されている場合、ステップS7に進み、基準走行ライン追従トルクu2がリミット処理されていない場合、ステップS8に進む。
【0081】
ステップS7では、コントローラ20は、第1の安定化制御トルクu0を安定化制御トルクusとして決定する。一方、コントローラ8では、コントローラ20は、第2の安定化制御トルクu1を安定化制御トルクusとして決定する。このようにステップS7及びステップS8により、コントローラ20は、基準走行ライン追従トルクu2がリミット処理されている場合とそうでない場合に応じて2種類の安定化制御トルクu0,u1を切り換えて安定化制御トルクusを決定している。
【0082】
続いてステップS9において、コントローラ20は、この安定化制御トルクusと基準走行ライン追従トルクu2とを加算して、目標操舵トルクuを得る。ここでは、例えば、制御される操舵トルクが滑らかに推移するような処理を行う。
続いてステップS10において、コントローラ20は、ステップS9で得た目標操舵トルクuの出力処理としてアクチュエータ駆動処理行う。すなわち、コントローラ20は、自動操舵機構10の電動モータ10aへの電流を制御してステアリングシャフト4に目標駆動トルクを入力することで、その目標操舵トルクとなるように車両の前輪3L,3Rに舵角を発生させる。ここでの制御として、例えば、自動操舵機構を構成している電動モータ10aに印加する電流をHブリッジ回路を用いたPWM機構等によって制御し、目標操舵トルクuを操舵系に入力する。
【0083】
このステップS10の処理が終了したら、今回の処理を終了する。その後は、所定のサンプリング時刻が経過するまで待機した後に、前記ステップS1から処理を再び実行する。
以上のような手順でコントローラ20は処理を行う。このような処理により、車両は、基準走行ライン追従トルクの作用により曲率のある道路を追従して走行するとともに、安定化制御トルクの作用によりその曲率を有する道路に沿って安定して走行するようになる。
【0084】
次に効果を説明する。
前述したように、基準走行ライン追従トルクu2に対して所定の上限値又は下限値によるリミット処理を行うとともに、横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyの積算値についてもリミット処理を行うことで(前記ステップS5)、基準走行ライン追従トルクu2の過剰な発生を抑え、これにより過剰な目標操舵トルクuの発生を抑えることができる。
【0085】
これにより、例えば、運転者の操舵介入が原因でなかなか基準走行ラインに到達しない状態から、運転者が急に操舵介入を中止した場合であっても、基準走行ライン追従トルクu2の残留成分の影響で基準走行ラインを通り過ぎても未だ操舵トルクが入力され続けるような状態を防止できる。また同様に、強めの外乱が急に減少した場合や外乱の向きが急に変化した場合、さらには基準走行ラインの位置を大きく変更した場合等の状況において、余分な車両挙動を発生することなく車両1を走行させることができる。
【0086】
リミット処理を行うことで以上のような効果がある一方で、リミット処理が作動している場合には、目標軌道が基準走行ライン追従トルクを増加させる方向へどんなに変化しても算出される基準走行ライン追従トルクが一定値になるので、等価的にオフセットトルクのフィードバックゲインが小さくなる。これは、本来は積分値が増大していく過程であるにも拘わらず基準走行ライン追従トルクが一定値で維持されるので、リミット処理が作動している間は、ゲインが小さくなっていくのと等価となるからである。そして、このような場合、制御系全体として減衰が過度に強い状態になってしまう。すなわち、状態フィードバックにより車両の姿勢を現状にとどめようとする作用が過剰に作用し、基準走行ラインへの移動を阻害する制御が行われてしまう。
【0087】
このような事態に対応して、安定化制御トルクusを基準走行ライン追従系とは独立して設定可能とし、基準走行ライン追従トルクu2の変化に応じて安定化制御トルクusを変化させることにより、基準走行ライン追従トルクu2に関する制限が定常的に系に作用した場合に発生してしまう急激なトルク変化や走行位置の変化を抑止することができる。具体的には、基準走行ライン追従トルクu2のリミット処理作動時には、安定化制御トルクusも小さくすることで、すなわちレギュレータゲインKs(車両状態量のフィードバックゲイン)を小さい値に変更(前記ステップS7においてレギュレータゲインKsとしてレギュレータゲインK1を選択)することで、系の減衰力を相対的に低下させて、基準走行ライン追従系の過減衰状態を解消する。このようにすることで、車両1の移動速度を適切にすることができる。
【0088】
以上のように、リミッタ処理の作動時に、車両状態を安定させるための状態フィードバック制御を変化させることで、目標軌道への追従速度を劣化させてしまうことを解消でき、目標軌道への追従性と走行安定性とを両立することができる。
また、安定化制御トルクusの調整或いは補正を、複数のレギュレータゲインK0,K1を用意するだけでよく、すなわち基準走行ライン追従トルクu2のリミット処理の作動により発生する基準走行ライン追従系の過減衰状態が起きないようにレギュレータゲインKsを設計しておくだけでよく、目標軌道への追従性と走行安定性とを両立することができるシステムを簡単な構成として構築することができる。
【0089】
また、前述したようにオブザーバ110としてカルマンフィルタを用いているので、より好適な演算を実効することができる。すなわち、オブザーバゲインの要素数は出力数(センサの個数)と状態変数との組み合わせ(出力数(センサの個数)×状態変数)になるので、安定で(オブザーバの極の実部が全て負の値であって)、推定精度が良く、かつセンサのノイズ成分を有効に除去することが可能なオブザーバの設計は一般に易しくない。一方、カルマンフィルタの設計にあたっては、センサのノイズや車両に作用するプロセスノイズの分散値が設計のパラメータとして必要ではあるが、これらは予め調べることが可能であるため、ほとんど試行錯誤することなくオブザーバゲインを設計することが可能である。このようなことから、前述したようにオブザーバ110としてカルマンフィルタを用いることで、より好適な演算を実効することが可能になる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施の形態として実現されることに限定されるものではない。
すなわち、前述の実施の形態では、CCDカメラ17が撮影した画像に基づいて、車両1の基準走行ラインに対する相対位置(横変位)を検出しているが、これに限定されるものではい。例えば、公知の誘導ケーブル方式や公知の磁気マーカ方式によって横変位を検出するようにしてもよい。或いは、特開平3−293411号公報に開示される技術のように、走行路に沿って設置されたガードレールと車両との間の距離を超音波を利用して測定し、その測定した距離から基準走行ラインに対する車両の横方向位置を検出してもよい。さらには、複数の方式を組み合わせてもよい。
【0091】
また、前述の実施の形態では、前輪3L,3Rを操舵するようにしているが、後輪を操舵するようにしてもよいし、或いは、前輪及び後輪の両方を操舵するようにしてもよい。
また、前述の実施の形態では、操舵角のみが自動制御できるようになっているが、これに限定されるものではない。例えば、4輪のブレーキや駆動を独立に制御することができるアクチュエータを設け、そのアクチュエータの状態をコントローラ20から供給する制御信号によって制御可能とすることで、車両のヨーモーメントを任意に制御できるようにしてもよい。
【0092】
また、前述の実施の形態では、リミッタ処理作動時に選択される第1の安定化制御トルクu0は1種類に限るものではなく、複数種類であってもよい。具体的には、車両1の横方向の移動速度が大きくなるときに徐々に小さくなるような複数のレギュレータゲインを用意し、この複数のレギュレータゲインを用いて複数の第1の安定化制御トルクu0を得るようにする。この場合、横方向の移動速度に合わせてレギュレータゲインを変更して、第1の安定化制御トルクu0(安定化制御トルクus)を得ることで、多少移動速度は低下するが、より滑らかな車両挙動を得ることができる。すなわち、目標走行ライン追従トルクがリミット処理されている状態におけるレギュレータゲイン切り換え時には、ゲインの切り換えに伴う目標操舵トルクの変動や車両の横方向への移動速度を考慮した設定をきめ細く行うことが可能になり、これにより、なめらかな車両の走行を保つことが可能になる。
【0093】
なお、ここでは、車両状態を車両1の横方向の移動速度とし、その移動速度に応じてレギュレータゲインを決定し、そして第1の安定化制御トルクu0を変更しているが、他の車両状態に応じてレギュレータゲインし、第1の安定化制御トルクu0を変更してもよい。
また、ゲイン切り換え後に車両が基準走行ライン上を交差する瞬間か、又は基準走行ライン上を交差することが予想されたとき、基準走行ライン追従トルクusを0にすると同時に基準走行ラインを修正する。具体的には、制御目標としている基準走行ラインを現在走行している走行ラインに修正する。これにより、車両の目標軌道に対する行き過ぎ量(オーバーシュート量)を極力減らし、より望ましい走行状態を保つことができる。
【0094】
また、前述の実施の形態では、図7に積算部140の具体的な構成を示したが、これに限定されるものではない。例えば、積算部140を図10に示すように構成してもよい。
この場合、積算部140は、前記加算部123からの前方注視点横変位ysrと基準走行ラインyrefとの偏差Δyと、1サンプリング時刻前の偏差Δyとの移動平均を演算し、演算した値にサンプリング時間T/2を乗じる。そしてその値に、1サンプリング時間前の積算値を加算し、リミット処理部141で所定のリミット処理を行って最新の積算値を算出する。
【0095】
なお、積算部140中のq-1はシフト演算子であり、入力された信号をq-1で1サンプリング時刻だけ遅れて出力する。また、リミット処理部141で用いる積算値の上限値及び下限値は、基準走行ライン追従トルクu2が所定の上限値及び下限値の範囲内にとどまるように決定している。
そして、基準走行ライン追従トルク発生部130は、このような積算部140により算出した積算値に乗算部131でゲインK2を乗じ、基準走行ライン追従トルクu2を得る。
【0096】
この図10に示す積算部140と前記図7に示す積算部140とでは演算精度が違っている。すなわち、前記図7に示す積算部140は、サンプリング時点での値だけを考慮する零次ホールド回路による近似演算を用いた構成をなし、図10に示す積算部140は、サンプリング区間の前後の値を考慮した台形公式による近似演算を用いた構成をなしている。図7に示す積算部140による演算と図10に示す積算部140による演算とは実質的には同じ演算であるが、得られる精度に差がある。例えば、サンプリング時間Tをあまり小さくできない等の制約がある場合、台形公式を用いた方が演算精度が高く、また滑らかに変化する結果を得られるので、この場合には、図10に示す積算部140を用いる方がよい。このように使用状況等に応じて使い分けるようにしてもよい。
【0097】
なお、前述の実施の形態において、CCDカメラ17及びステップS1の処理は、基準走行ラインに対する車両の横方向の相対位置を検出する相対位置検出手段を構成し、オブザーバ110、基準走行ライン追従トルク発生部130、安定化制御トルク発生部(Ks)124、及び加算器122,123は、相対位置検出手段の検出結果に応じて目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算手段を構成し、自動操舵機構10は、目標操舵トルクに基づいて車両の転舵輪に舵角を発生させる舵角発生手段を構成している。
【0098】
また、目標操舵トルク演算手段を構成するオブザーバ110、基準走行ライン追従トルク発生部130、安定化制御トルク発生部(Ks)124、及び加算器122,123のうち、オブザーバ110は、車両が走行中の道路の曲率を推定する道路曲率推定手段と、相対位置検出手段の検出結果に基づいて車両の走行状態を推定する走行状態推定手段とを構成し、安定化制御トルク発生部(Ks)124は、走行状態推定手段が得た車両の走行状態に基づいて、道路曲率推定手段が得た道路曲率の基準走行ラインを基準にして車両を安定にする安定化制御トルクを算出する安定化制御トルク演算手段を構成し、基準走行ライン追従トルク発生部130及び加算器123は、相対位置検出手段が検出した相対位置に基づいて基準走行ラインに対する実際の走行ラインのずれ量を算出し、ずれ量に基づいて車両を基準走行ラインに追従走行させるための基準走行ライン追従トルクを算出する基準走行ライン追従トルク演算手段を構成し、加算器122は、安定化制御トルクと基準走行ライン追従トルクとを加算して目標操舵トルクを算出する加算手段を構成している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における車両の平面図である。
【図2】層だけいの一部を拡大した斜視図である。
【図3】車両の2輪モデル図である。
【図4】曲線走行状態をモデルとするオブザーバを用いた自動操舵系の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるコントローラの基本的な機能構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態における基準走行ライン追従トルク発生部の構成を示すブロック図である。
【図7】前記基準走行ライン追従トルク発生部の積算部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態における安定化制御トルク発生部の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】前記基準走行ライン追従トルク発生部の積算部の他の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 車両
2 ステアリングホイール
3L,3R 前輪(操舵輪)
10 自動操舵機構
14 舵角センサ
17 CCDカメラ
19 車速センサ
20 コントローラ
110 オブザーバ(カルマンフィルタ)
122,123 加算器
124 安定化制御トルク発生部
130 基準走行ライン追従トルク発生部
140 積算部

Claims (6)

  1. 基準走行ラインに対する車両の横方向の相対位置を検出する相対位置検出手段と、前記相対位置検出手段の検出結果に応じて目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算手段と、前記目標操舵トルクに基づいて車両の転舵輪に舵角を発生させる舵角発生手段と、を備えた自動操舵装置において、
    前記目標操舵トルク演算手段は、車両が走行中の道路の曲率を推定する道路曲率推定手段と、前記相対位置検出手段の検出結果に基づいて車両の走行状態を推定する走行状態推定手段と、前記走行状態推定手段が得た車両の走行状態に基づいて、前記道路曲率推定手段が得た道路曲率の基準走行ラインを基準にして車両を安定にする安定化制御トルクを算出する安定化制御トルク演算手段と、前記相対位置検出手段が検出した前記相対位置に基づいて前記基準走行ラインに対する実際の走行ラインのずれ量を算出し、前記ずれ量に基づいて車両を基準走行ラインに追従走行させるための基準走行ライン追従トルクを算出する基準走行ライン追従トルク演算手段と、前記安定化制御トルクと前記基準走行ライン追従トルクとを加算して前記目標操舵トルクを算出する加算手段とを備えたことを特徴とする自動操舵装置。
  2. 前記基準走行ライン追従トルク演算手段が基準走行ライン追従トルクを制限している場合、前記安定化制御トルク演算手段は、安定化制御トルクを減少方向に補正することを特徴とする請求項1記載の自動操舵装置。
  3. 前記基準走行ライン追従トルク演算手段は、前記基準走行ラインに対する実際の走行ラインのずれ量の積算値に基づいて前記基準走行ライン追従トルクを算出しており、
    前記ずれ量の積算値が所定値を超えた場合、前記基準走行ライン追従トルク演算手段が、前記ずれ量の積算値を増加させないリミット処理、又は前記基準走行ライン追従トルクを増加させないリミット処理の少なくとも一方を行うとともに、前記安定化制御トルク演算手段が、安定化制御トルクを減少方向に補正することを特徴とする請求項2記載の自動操舵装置。
  4. 前記道路曲率推定手段及び走行状態推定手段は、曲線路である基準走行ラインを基準に定義された車両の状態量を推定するオブザーバとして構成され、
    前記安定化制御トルク演算手段は、前記オブザーバが推定した車両の状態量にレギュレータゲインを乗じて前記安定化制御トルクを算出し、
    前記安定化制御トルク演算手段は、前記レギュレータゲインを変更することで前記安定化制御トルクを減少方向に補正することを特徴とする請求項2又は3に記載の自動操舵装置。
  5. 前記前記基準走行ライン追従トルク演算手段が基準走行ライン追従トルクの制限をかけるまで、前記安定化制御トルク演算手段は、前記オブザーバが推定した車両の状態量に乗じるレギュレータゲインを、車両の状態に応じて変化させることを特徴とする請求項4記載の自動操舵装置。
  6. 前記オブザーバはカルマンフィルタであることを特徴とする請求項4又は5に記載の自動操舵装置。
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