JP4123609B2 - 6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺虫剤,殺ダニ剤,殺菌剤,殺センチュウ剤として有用なアミノピリミジン誘導体(特開平5−230036号公報、特開平6−25187号公報、特開平6−116247号公報、特開平6−247939号公報、特開平7−258223号公報に記載)の合成中間体として重要な6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンの製造方法としては、開示された先行技術は認められない。
そこで、本発明者ら特願平10−055174号に記載した方法、即ち、対応する4−フルオロ−3−オキソカルボン酸エステルとホルムアミジンとを反応させることによって、6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンを製造する方法を見出した。
しかし、この製造方法は、6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンの優れた製造方法であるが、使用原料のホルムアミジンが高価なため、コスト面でさらに安価な原料を使用して製造できるように改善する余地がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、殺虫剤の合成中間体として重要な6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンを安価に、かつ収率良く工業的に製造するための新規な製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するために検討した結果、6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンを安価に、かつ収率良く工業的に製造できる方法を見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明は、次式(1):
【0005】
【化3】
(式中、R1は、アルキル基を表す。R2は、水素原子又はアルキル基を表す。R3は、アルキル基を表す。)
で示される3−アミノ−4−フルオロ−2−不飽和カルボン酸エステルとホルムアミドとを塩基存在下に反応させることを特徴とする
次式(2):
【0006】
【化4】
(式中、R1及びR2は、前記と同義である。)
で示される6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンの製造方法に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
目的化合物である前記の式(2)で示される6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドン[化合物(2)]及び、その製造原料である式(1)で示される3−アミノ−4−フルオロ−2−不飽和カルボン酸エステル[化合物(1)]における、R1〜R3は次の通りである。
R1としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基を挙げることができる。
R1におけるアルキル基は、炭素原子数が1〜10個のものであり、好ましくは1〜4個のものである。
【0008】
R2としては、水素原子,直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を挙げることができる。
R2におけるアルキル基は、炭素原子数が1〜10個のものであり、好ましくは1〜4個のものであり、さらに好ましくはメチル基である。
R3としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基を挙げることができる。
R3におけるアルキル基は、炭素原子数が1〜10個のものであり、好ましくは1〜4個のものである。
本発明に使用する原料の化合物(1)は、次に示すように、対応する2−フルオロカルボン酸エステルとカルボン酸エステルとから、4−フルオロ−3−オキソカルボン酸エステルを得た後、アンモニアと反応させて得ることができる。
【0009】
【化5】
【0010】
(式中、R1,R2及びR3は、前記と同義である。R4は、アルキル基を聞。)
2−フルオロカルボン酸エステルを得る方法としては、例えば、Tetrahedron Lett.,1993,293、TetrahedronやAsymmetry,1994,981に記載の方法を挙げることができる。
2−フルオロカルボン酸エステルとカルボン酸エステルとから、4−フルオロ−3−オキソカルボン酸エステルを得る方法としては、例えば、特願平9−342342号公報に記載の方法を挙げることができる。
4−フルオロ−3−オキソカルボン酸エステルとアンモニアを反応させる方法としては、例えば、特願平10−289036号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0011】
本発明に使用するホルムアミドの使用量は化合物(1)に対して1倍モル以上であるが、好ましくは2〜10倍モルである。
本発明に使用される塩基としては、ナトリウムメトキシド,ナトリウムエトキシド,ナトリウム−n−ブトキシド,カリウム−t−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類が好ましい。
塩基の使用量は化合物(1)に対して1倍モル以上であるが、好ましくは2〜10倍モルである。
本発明の化合物(2)の合成において、溶媒は使用しても使用しなくても良いが、溶媒を使用する場合は、本反応に関与しないものであれば特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化炭化水素類を挙げることができる。また、これらの溶媒は単独又は混合して使用することができる。
【0012】
溶媒の使用量は、化合物(1)に対して0〜20倍容量であるのが良く、更に好ましくは0〜10倍容量である。
本発明の化合物(2)の合成において、使用される反応温度は20〜120℃、好ましくは40〜100℃が良い。
本発明の化合物(2)の合成における反応時間は濃度、温度、使用量によって変化するが、通常0.5〜20時間で終了する。
以上のようにして製造された目的化合物(2)は、反応終了後、洗浄,抽出,濃縮などの通常の後処理を行い、必要に応じて再結晶や各種クロマトグラフィーなどの公知の手段で精製することができる。
【0013】
このようにして得られた化合物(2)から、殺虫剤,殺ダニ剤,殺菌剤,殺センチュウ剤として有用なアミノピリミジン誘導体を得ることができる。
例えば、特願平10−335790号公報に記載の方法により、化合物(2)の一つである6−(α−フルオロエチル)−4−ピリミドンの4位,5位をジクロル化することによって、有用なアミノピリミジン誘導体の重要な合成中間体である4,5−ジクロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジンを得ることができる。
【0014】
【化6】
【0015】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものでない。
実施例1 [6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンの合成]
28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液28.9gに3−アミノ−4−フルオロ−2−ペンテン酸メチルエステル7.36gとホルムアミド15.8gを加えて加熱し、内温が70℃になるまで溶媒を留去した後、68〜70℃で10時間撹拌した。
反応液を10℃以下に冷却し、メタノール80mlを加え、濃硫酸7.5gと水5.4gの混合物を添加し、50℃で30分撹拌後、不溶物を濾別し、濾液を液体クロマトグラフィー内部標準法で定量すると6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンが6.78g生成していた(収率95.4%)。濾液を減圧下に濃縮後、濃縮液を30mlの2−プロパノールで再結晶し、6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンを5.75g得た。
【0016】
・融点
170〜171.5℃
・質量分析値
CI−MS m/e=143(m+1)
・1H−NMR(CDCl3) δ(ppm)
1.60〜1.67(3H,dd)、5.34〜5.47(1H,dq)、
6.62〜6.63(1H,t)、8.13(1H,s)、13.3(1H,bs)
【0017】
実施例2 [6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンの合成]
28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液67.5gを減圧下に濃縮し、メタノールを35ml留去後、濃縮液に3−アミノ−4−フルオロ−2−ペンテン酸エチルエステル16.1gとホルムアミド15.8gを加えて68℃で5時間撹拌した。
反応液を10℃以下に冷却し、メタノール140mlを加え、濃硫酸18.1gと水6.0gの混合物を添加し、60℃で10分撹拌後、不溶物を濾別し、濾液を液体クロマトグラフィー内部標準法で定量すると6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンが13.8g生成していた(収率97.0%)。
【0018】
実施例3 [6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンの合成]
メタノール7mlにホルムアミド3.15g、粉末ナトリウムメトキシド3.41g、3−アミノ−4−フルオロ−2−ペンテン酸エチルエステル3.22gを加えて67〜69℃で9時間加熱撹拌した。
反応液を10℃以下に冷却し、メタノール50mlと水50mlを加えて溶解し、この容液を液体クロマトグラフィー内部標準法で定量すると6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンが2.58g生成していた(収率90.8%)。
【0019】
実施例4 [6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンの合成]
28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液13.5gに3−アミノ−4−フルオロ−2−ペンテン酸ブチルエステル3.79gとホルムアミド3.60gを加えて加熱し、内温が70℃になるまで溶媒を留去した後、68〜70℃で7時間撹拌した。
反応液を10℃以下に冷却し、メタノール10mlと水10mlを加えて溶解し、この容液を液体クロマトグラフィー内部標準法で定量すると6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドンが2.65g生成していた(収率93.2%)。
【0020】
実施例5 [6−(2−フルオロ−2−プロピル)−4−ピリミドンの合成]
28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液30.9gに3−アミノ−4−フルオロ−4−メチル−2−ペンテン酸エチルエステル7.01gとホルムアミド6.30gを加えて加熱し、内温が70℃になるまで溶媒を留去した後、68〜70℃で8時間撹拌した。
反応液を10℃以下に冷却し、メタノール20ml、水20mlを加えて溶解し、この容液を液体クロマトグラフィー内部標準法で定量すると6−(2−フルオロ−2−プロピル)−4−ピリミドンが5.88g生成していた(収率94.1%)。
この溶液に濃塩酸18gを加えて減圧下に濃縮し、濃縮液にアセトン100mlを加えて60℃で30分撹拌した後、不溶物を濾別した。
濾液を減圧下に濃縮し、濃縮液を30mlのアセトンで再結晶して6−(2−フルオロ−2−プロピル)−4−ピリミドンを5.03g得た。
【0021】
・融点
177〜179℃
・質量分析値
CI−MS m/e=157(m+1)
・1H−NMR(CDCl3) δ(ppm)
1.55(6H,d)、6.30(1H,t)、8.20(1H,s)、
12.1(1H,bs)
【0022】
実施例6 [6−(1−フルオロ−1−ペンチル)−4−ピリミドンの合成]
28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液20.3gに3−アミノ−4−フルオロ−2−オクテン酸エチルエステル6.10gとホルムアミド4.76gを加えて加熱し、内温が70℃になるまで溶媒を留去した後、68〜70℃で10時間撹拌した。
反応液を10℃以下に冷却し、メタノール50mlを加えて溶解し、この容液を液体クロマトグラフィー内部標準法で定量すると6−(1−フルオロ−1−ペンチル)−4−ピリミドンが5.07g生成していた(収率91.7%)。
この溶液を減圧下に濃縮後、水50mlと濃塩酸11gを加えて10℃に冷却し析出した結晶を濾別した。この結晶をを40mlの2−プロパノールで再結晶して6−(1−フルオロ−1−ペンチル)−4−ピリミドンを3.98g得た。
【0023】
・融点
147.5〜148.5℃
・質量分析値
CI−MS m/e=185(m+1)
・1H−NMR(CDCl3) δ(ppm)
0.87(3H,t)、1.25〜1.40(4H,m)、
1.70〜2.00(2H,m)、5.18〜5.40(1H,m)、
6.29(1H,t)、8.19(1H,s)、12.6(1H,bs)
【0024】
参考例1 [4−フルオロ−3−オキソペンタン酸メチルエステルの合成]
62.8%水素化ナトリウム1.31gをテトラヒドロフラン10mlに懸濁させた溶液に2−フルオロプロピオン酸メチル2.00gと酢酸メチル2.10gの混合溶液を10分で滴下した後、30〜35℃で4時間加熱した。反応終了後室温に冷却し、1N−塩酸で中和して、分液し、有機層をガスクロマトグラフィー内部標準法で定量すると4−フルオロ−3−オキソペンタン酸メチルエステルが2.57g生成していた(収率92%)。この有機層を減圧下に濃縮後、減圧下に蒸留すると4−フルオロ−3−オキソペンタン酸メチルエステルが2.03g得られた。
【0025】
・沸点
80〜81℃/24〜25mmHg
・質量分析値
CI−MS m/e=149(m+1)
・1H−NMR(CDCl3) δ(ppm)
1.47〜1.60(3H,m)、3.66〜3.67(1.7H,d)、
3.76〜3.77(3H,d)、4.87〜5.12(1H,m)、
5.33(0.15H,s)、11.80〜12.00(0.15H,bs)
1H−NMR分析ではケト−エノールフォームが存在する。
【0026】
参考例2 [3−アミノ−4−フルオロ−2−ペンテン酸メチルエステルの合成]
6.7重量%アンモニア−メタノール溶液35.0gに4−フルオロ−3−オキソペンタン酸メチルエステル10.2gとリンモリブデン酸0.01gを加え、25〜27℃で1時間撹拌後、反応液を減圧下に濃縮した。
濃縮液をトルエン30mlに溶解し、水10mlで2回洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し濾過した。濾液をガスクロマトグラフィー内部標準法で定量すると3−アミノ−4−フルオロ−2−ペンテン酸メチルエステルが9.93g生成していた(収率98.1%)。
濾液を減圧下に濃縮し、さらに減圧下に蒸留すると3−アミノ−4−フルオロ−2−ペンテン酸メチルエステルが9.03g得られた。
【0027】
・沸点
56〜57℃/4mmHg
・質量分析値
CI−MS m/e=148(m+1)
・1H−NMR(CDCl3) δ(ppm)
1.50〜1.61(3H,dd)、3.66(3H,s)、4.54(1H,s)、
4.95〜5.19(1H,dq)、5.7〜6.7(2H,bs)
【0028】
参考例3 [4,5−ジクロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジンの合成]
6−(1−フルオロエチル)−4−ピリミドン1.42gをジクロロメタン14mlに懸濁した溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2.92gを加え、冷却しながら塩化スルフリル3.37gを2〜4℃で滴下した後、0〜4℃で2時間反応させ、さらに2時間加熱還流(44℃)した。
反応液を室温まで冷却し、液体クロマトグラフィー内部標準法で定量すると、4,5−ジクロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジンが1.80g生成していた(収率92.3%)。
有機層を減圧下に濃縮後、減圧下に蒸留すると、4,5−ジクロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジンが0.76g得られた。
【0029】
・沸点
84〜88℃/5mmHg
・質量分析値
CI−MS m/e=195(m+1)
・1H−NMR(CDCl3) δ(ppm)
1.66〜1.78(3H,dd)、5.89〜6.14(1H,dq)、
8.92(1H,s)
【0030】
【発明の効果】
本発明により、殺虫剤,殺ダニ剤,殺菌剤,殺センチュウ剤として有用なアミノピリミジン誘導体の合成中間体として重要な6−(α−フルオロアルキル)−4−ピリミドンを収率良く工業的に製造することができる。
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