JP4119622B2 - 冷却液組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車などの内燃機関の冷却水中に混合され、冷却水の凍結を防止する冷却液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車エンジンの冷却水には、アルコール類やグリコール類などの融点降下剤を主成分とする冷却液が添加され、冬季の凍結が防止されている。ところがアルコール類やグリコール類には防錆作用が全くないばかりか、高温で循環中に酸素と接触することにより酸化され、生成した酸化物が冷却水流路を構成する金属の腐食を促進するという不具合がある。
【0003】
そこで冷却液には一般に、リン酸塩,ホウ酸塩,炭酸塩,硫酸塩,硝酸塩,モリブデン酸塩,安息香酸塩,ケイ酸塩,ベンゾトリアゾール,メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩,トリルトリアゾール,トリエタノールアミン塩などから選ばれる防錆剤が添加され、冷却水に所定量混合された使用時における金属の腐食が防止されている。
【0004】
自動車エンジンのような内燃機関の冷却系には、鋳鉄、鋼、銅合金など種々の金属が用いられているので、冷却液には金属の種類を問わず腐食を防止することが求められている。ところが省資源・省エネルギーの目的でアルミニウム部品が多用されるに伴い、従来の冷却液ではアルミニウム系金属に対する防食性が不十分であることが明らかとなった。
【0005】
例えばホウ酸塩は鋳鉄材質に対しては優れた防食性を有するが、アルミニウム系金属材質に対しては腐食性を有する。またトリエタノールアミンのリン酸塩は、鉄系金属とアルミニウム系金属の両方に対して防食性を有している。しかし亜硝酸塩との共存により反応して毒性のあるニトロソアミンを生成する可能性がある。またアミン塩は、劣化によって鉄に対する防食性が急激に低下するという問題がある。そしてケイ酸塩もアルミニウム系金属に対する防食性を有しているが、長時間の貯蔵又は使用中にゲル化し分離して防食性が低下するという問題がある。
【0006】
そこで特開平1-306492号公報には、アミン類やケイ酸塩の代わりにマグネシウム化合物やメルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩などを防錆剤として用い、さらにpHを6.5 〜9.0 の範囲とした不凍液が開示されている。この不凍液によれば、アルミニウム系金属に対する十分な防食性を有している。
【0007】
しかし上記公報に記載された不凍液では、マグネシウム化合物の添加量が0.001 〜0.08重量%程度と多く、その分他の防錆剤の添加量が制約されたりコストも高いという問題がある。また、エンジンの高出力化に伴い、エンジンによっては金属の表面温度が非常に高くなるものがある。このようなエンジンの冷却水の場合は、マグネシウム化合物などの添加量が多くなると、エンジンヘッド上へのスケール状堆積物量の増大をまねき、エンジン放熱性の低下を引き起こす可能性がある。
【0008】
そこで特開平7-070558号公報には、リン酸塩,ホウ酸塩,硝酸塩,モリブデン酸塩,安息香酸塩,ケイ酸塩,トリアゾール類,チアゾール類,セバシン酸及びオクチル酸から選ばれる少なくとも1種の防錆剤とを含み、さらにカルシウム化合物とマグネシウム化合物をそれぞれ金属元素濃度として0.00005 〜0.02重量%含む冷却液組成物が開示されている。また、さらにポリリン酸及びオリゴマーあるいはポリマー状態のカルボン酸の少なくとも一方を含むことも開示されている。
【0009】
この冷却液組成物によれば、カルシウム化合物とマグネシウム化合物の両方を所定範囲で含むため、理由は不明であるが防錆性が向上する。そして従来のマグネシウム化合物を含むものと比較すると、カルシウム化合物又はマグネシウム化合物の添加量は従来より少量で同等の防錆性能が得られるので、スケール状堆積物の生成が抑制されエンジン放熱性の低下などの問題が生じない。
【0010】
そしてさらにポリリン酸及びオリゴマーあるいはポリマー状態のカルボン酸の少なくとも一方を含むことによって、カルシウム化合物やマグネシウム化合物の添加量をさらに低減することが可能となる。
【0011】
また特開2000−219981号公報には、アミン塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩及びケイ酸塩を含まない不凍液組成物が開示されている。このような物質を含まないことで、アルミニウム及びアルミニウム合金の黒変を防止することができる。
【0012】
さらに特開平7-173651号公報には、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸又はその水溶性塩とともに、リン酸塩、硝酸塩、安息香酸塩及びトリアゾール類を含む冷却液組成物が開示されている。この冷却液組成物によれば、特にアルミニウム合金の異種金属との接触腐食及び伝熱面腐食を効果的に防止することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
アミン塩はアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食を防止する作用がきわめて大きいが、上記したような問題があるために上記従来技術ではアミン塩を除くこととしている。ところがアミン塩を含まない冷却液組成物では、高温時におけるアルミニウム及びアルミニウム合金の防食性に不足し、アルミニウム及びアルミニウム合金に対してアミン塩ほどの防食性が発現されないという不具合があった。
【0014】
また特開平7-173651号公報に開示された冷却液組成物では、一般的な試験においては問題がないものの、 160℃程度の高温域におけるアルミニウム鋳物伝熱面腐食試験では腐食量が多いという不具合がある。
【0015】
さらに特開平7-070558号公報に開示の冷却液組成物では、キャビテーション下におけるアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食抑制能力がアミン塩を含む冷却液組成物に比べて低いという不具合があった。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、アミン塩を含むことなく高い防食性が発現され、特に高温時におけるアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食を抑制できるようにすることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の冷却液組成物の特徴は、アルコール類及びグリコール類から選ばれる融点降下剤を主成分とする冷却液組成物であって、組成物 100 重量%あたり、炭素数9〜 12 の脂肪族2塩基酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種を3〜8重量%と、リン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種を金属リン換算で 0.01 〜 0.1 重量%と、カルシウム化合物を金属カルシウム換算で 0.0003 〜 0.0024 重量%と、マグネシウム化合物を金属マグネシウム換算で 0.0006 〜 0.0048 重量%と、 2- ホスホノブタン -1,2,4 トリカルボン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種を 0.01 〜 0.05 重量%と、を含むことにある。
【0020】
また上記組成に加えて、さらにアルカリ金属の硝酸塩を0.01〜 0.1重量%、トリアゾール類を0.05〜 1.0重量%、チアゾール類を0.01〜 1.0重量%含むことも好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の冷却液組成物は、アルコール類及びグリコール類から選ばれる融点降下剤を主成分とし、炭素数9〜 12 の脂肪族2塩基酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種と、リン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種と、カルシウム化合物及びマグネシウム化合物と、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種とを含んでいる。
【0022】
融点降下剤であるアルコール類及びグリコール類としては、メタノール,エタノール,2−プロパノール,モノエチレングリコール,プロピレングリコールなどを単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0023】
リン酸又はそのアルカリ金属塩はアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食抑制に大きく寄与し、キャビテーション下におけるアルミニウム防食性が大きく向上する。またカルシウム化合物又はマグネシウム化合物は、高温時におけるアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食を大きく抑制する作用をもつ。したがってウォータポンプのアルミハウジングに対するキャビテーション、エロージョン、コロージョンを防止し、高温のアルミニウム鋳物伝熱面防食性が向上する。そして2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸又はそのアルカリ金属塩は、他の成分の溶解性を向上させて貯蔵安定性を向上させ、かつアルミニウム鋳物伝熱面の腐食を抑制する。
【0024】
そしてリン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種と、カルシウム化合物及びマグネシウム化合物と、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種の4成分を少なくとも配合することによって互いの相乗効果が発現され、特に高温時におけるアルミニウム及びアルミニウム合金の防食性が大きく向上する。
【0025】
リン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種は、組成物 100重量%あたり金属リン換算で0.01〜 0.1重量%含まれる。この量が0.01重量%未満では効果の発現が困難となってキャビテーション下におけるアルミニウム防食性が低下し、 0.1重量%を超えて配合すると黄銅の防食性が低下する。
【0028】
カルシウム化合物は金属カルシウム換算で0.0003〜0.0024重量%の範囲で配合し、マグネシウム化合物は金属マグネシウム換算で0.0006〜0.0048重量%の範囲で配合する。この範囲より少ないと効果が発現せず、この範囲より多く配合しても効果が飽和し他の成分の添加量が制限されるため好ましくない。カルシウム化合物とマグネシウム化合物の混合割合は、金属元素重量比でカルシウム/マグネシウム=1/2が望ましい。
【0029】
このカルシウム化合物及びマグネシウム化合物としては、それぞれ酸化物,水酸化物,過マンガン酸塩,クロム酸塩,フッ化物,ヨウ化物,炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩,チタン酸塩,タングステン酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩,リン酸二水素塩,蟻酸塩,酢酸塩,プロピオン酸塩,酪酸塩,吉草酸塩,ラウリン酸塩,ステアリン酸塩,オレイン酸塩,グルタミン酸塩,乳酸塩,コハク酸塩,リンゴ酸塩,酒石酸塩,マレイン酸塩,クエン酸塩,シュウ酸塩,マロン酸塩,セバシン酸塩,安息香酸塩,フタル酸塩,サリチル酸塩,マンデル酸塩などを用いることができる。
【0030】
ところで、カルシウム化合物やマグネシウム化合物は、過度の添加により製品コストの上昇を招くとともに、冷却水流路にスケール状の堆積物を形成する恐れがある。そこで本発明の冷却液組成物では、さらに2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸又はそのアルカリ金属塩を含んでいる。これによりカルシウム化合物やマグネシウム化合物の添加量を低減しても、カルシウム化合物やマグネシウム化合物の添加量が多い場合と同等以上の防食性能が得られ、かつ堆積物の形成を防止することができる。
【0031】
2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種は、組成物 100重量%あたり0.01〜0.05 重量%含まれている。この量が0.01重量%未満では効果の発現が困難となり、沈殿が生成して貯蔵安定性が低下したり、アルミニウム鋳物伝熱面の腐食の抑制が困難となる。また0.05 重量%を超えて配合すると、はんだの防食性が不十分となる。
【0032】
本発明の冷却液組成物には、炭素数9〜12の脂肪族2塩基酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種を、組成物 100重量%あたり3〜8重量%含む。これにより防食性がさらに向上する。この量が3重量%未満では、アルミニウム鋳物、鋳鉄あるいは鋼に対する防食性が不十分となり、8重量%を超えて配合しても効果が飽和して他の成分の添加量が制限されるため好ましくない。またコストも上昇してしまう。
【0033】
炭素数9〜12の脂肪族2塩基酸としては、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などを用いることができるが、溶解性及び防食性に優れたセバシン酸が特に好ましい。炭素数が9未満の脂肪族2塩基酸では鉄に対する防食性が低下し、炭素数が13以上では溶解性が低く貯蔵安定性が低下する。
【0034】
また本発明の冷却液組成物には、さらにアルカリ金属の硝酸塩を0.01〜 1.0重量%、トリアゾール類を0.05〜 1.0重量%、チアゾール類を0.01〜 1.0重量%含むことが望ましい。これにより防食性が一層向上する。硝酸塩はアルミニウムの孔食を抑制し、トリアゾール類及びチアゾール類は銅の防食に効果がある。これらはそれぞれ単独で添加してもよいが、この3種を全て含むことがより好ましい。
【0035】
なおアルカリ金属の硝酸塩としては硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどが例示され、トリアゾール類としてはベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールなどが例示される。またチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾールナトリウムなどが例示される。
【0036】
さらに本発明の冷却液組成物には、従来の技術の欄に示した問題点から、アミン塩、ホウ酸塩、亜硝酸塩、ケイ酸塩を含まないことが望ましい。
【0037】
本発明の冷却液組成物は、冷却水中に通常20〜60体積%混合されて使用される。したがって上記薬剤は、少なくとも使用時には冷却水に完全に溶解する必要があり、溶解しにくい薬剤は溶解しやすいアルカリ金属塩として配合することが望ましい。アルカリ金属塩としてはNa塩、K塩などが例示される。また貯蔵安定性及び取り扱い性の観点から、冷却液組成物の原液状態で各薬剤は完全に溶解していることが望ましい。したがって本発明の冷却水組成物には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどをさらに添加して溶解性を向上させるとともに、pHを最適に調整することが好ましい。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。なお、以下にいう%は特にことわらない限り重量%を意味する。
(実施例1)
表1にも示すように、セバシン酸 3.0%、リン酸0.19%、硝酸カルシウム四水和物0.0071%、硝酸マグネシウム六水和物0.0253%、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸0.02%、硝酸ナトリウム 0.5%、ベンゾトリアゾール 0.2%、メルカプトベンゾチアゾールナトリウム 0.2%、水酸化カリウム 1.8%、水 4.0%、エチレングリコール残部( 90.0576%)を混合し、実施例1の冷却液組成物とした。
【0039】
(実施例2)
セバシン酸を 5.0%、水酸化カリウムを 2.9%、及びベンゾトリアゾールに代えてトリルトリアゾールを 0.2%用いたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0040】
(実施例3)
セバシン酸を 4.0%、リン酸を0.03%、水酸化カリウムを 2.2%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0041】
(実施例4)
セバシン酸を 4.0%、リン酸を0.32%、水酸化カリウムを 2.5%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0042】
(実施例5)
セバシン酸を 4.0%、硝酸カルシウム四水和物を0.0018%、硝酸マグネシウム六水和物を0.0063%、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸を0.01%、水酸化カリウムを 2.3%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0043】
(実施例6)
セバシン酸を 4.0%、硝酸カルシウム四水和物を0.0142%、硝酸マグネシウム六水和物を0.0506%、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸を0.05%、水酸化カリウムを 2.4%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0044】
(参考例1)
セバシン酸を 2.0%、水酸化カリウムを 1.3%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0045】
(参考例2)
セバシン酸を 4.0%、リン酸を0.63%、水酸化カリウムを 2.8%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0046】
(参考例3)
セバシン酸を 4.0%、硝酸カルシウム四水和物を0.0213%、硝酸マグネシウム六水和物を0.0759%、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸を 0.1%、水酸化カリウムを 2.4%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0047】
(参考例4)
2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸を 0.1%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0048】
(比較例1)
リン酸を用いず、セバシン酸を 4.0%、水酸化カリウムを 2.2%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0049】
(比較例2)
硝酸カルシウム四水和物及び硝酸マグネシウム六水和物を用いず、セバシン酸を 4.0%、水酸化カリウムを 2.4%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0050】
(比較例3)
2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸を用いず、セバシン酸を 4.0%、硝酸カルシウム四水和物を0.0018%、硝酸マグネシウム六水和物を0.0063%、水酸化カリウムを 2.3%としたこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0051】
<試験・評価>
実施例、参考例及び比較例の冷却液組成物について、原液のpHを測定するとともに、以下の各種試験を行った。結果を組成とともに表1に示す。
(1)高温金属腐食試験
JIS K2234 に規定された金属腐食性試験に準拠して行った。ただし液温を 120℃とし、空気を通気せず加圧密閉容器中にて行った。
(2)ウォータポンプ試験(キャビテーション下におけるアルミニウム防食性評価)
JIS K2234 に規定された循環腐食性試験に準拠して行った。ただしウォータポンプ回転数を 7800rpmとし、液温98℃、開放系で 500時間行った。
(3)高温アルミニウム鋳物伝熱面腐食試験
JIS K2234 に規定されたアルミニウム鋳物伝熱面腐食試験に準拠して行った。ただし伝熱面温度を 160℃とした。
(4)原液の貯蔵安定性試験
冷却液組成物原液をガラス容器に入れ、50℃で 168時間加熱後に液の外観を目視で観察した。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1の冷却液組成物では、高温金属腐食試験では良好な結果を示しているが、ウォータポンプ試験においてアルミハウジングに損傷が生じ、高温アルミニウム鋳物伝熱面腐食試験における腐食量も実施例に比べて多い。そして実施例との比較より、この不具合はリン酸を含んでいないことに起因していることが明らかである。
【0054】
また比較例2の冷却液組成物では、高温アルミニウム鋳物伝熱面腐食試験における腐食量がきわめて多く、実用にならない。したがって高温金属腐食試験とウォータポンプ試験は行わなかった。そして実施例との比較より、この不具合はカルシウム化合物とマグネシウム化合物を含んでいないことに起因していることが明らかである。
【0055】
さらに比較例3の冷却液組成物では、貯蔵安定性試験において沈殿が発生し、全く実用にならない。したがって高温金属腐食試験、ウォータポンプ試験及び高温アルミニウム鋳物伝熱面腐食試験は行わなかった。そして実施例との比較により、この不具合は2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸を含んでいないことに起因していることが明らかである。
【0056】
一方、本発明の各実施例の冷却液組成物によれば、各試験において良好な結果を示している。しかし参考例2の冷却液組成物では、黄銅の防食性に不足している。そして他の実施例との比較より、この原因はリン酸の量が多すぎることにあり、リン酸の量が金属リン換算で 0.1重量%以下であればこのような不具合は生じないことがわかる。高温金属腐食性試験は、冷却液の酸化劣化を促進した状態での金属の腐食性を評価する試験であり、したがって、リン酸の量が金属リン換算で 0.1重量%以下含有した場合には、冷却液を長期間使用できることがわかる。
【0057】
また参考例3の冷却液組成物では、はんだの防食性に不足している。そして他の実施例との比較より、この原因はカルシウム化合物とマグネシウム化合物の合計量が多すぎること、あるいは2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸の量が多すぎることにあることが明らかである。
【0058】
そして実施例1,参考例3及び参考例4の比較より、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸の量が多いとはんだの防食性に不足するとともに高温アルミニウム鋳物伝熱面腐食量が多くなり、カルシウム化合物とマグネシウム化合物の合計量を適正範囲とすることで高温アルミニウム鋳物伝熱面腐食性が改善されていることが明らかである。すなわちカルシウム化合物とマグネシウム化合物は金属元素換算の合計で0.0072重量%以下とすることが望ましく、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸は0.05 重量%以下とすることが望ましいことがわかる。
【0059】
【発明の効果】
すなわち本発明の冷却液組成物によれば、高温時及びキャビテーション下(ウォータポンプ近傍)におけるアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食を抑制でき、かつ冷却系に用いられている各種金属の腐食を抑制できる。また沈殿が生じず、貯蔵安定性にも優れている。
Claims (2)
- アルコール類及びグリコール類から選ばれる融点降下剤を主成分とする冷却液組成物であって、
組成物 100 重量%あたり、炭素数9〜 12 の脂肪族2塩基酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種を3〜8重量%と、リン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種を金属リン換算で 0.01 〜 0.1 重量%と、カルシウム化合物を金属カルシウム換算で 0.0003 〜 0.0024 重量%と、マグネシウム化合物を金属マグネシウム換算で 0.0006 〜 0.0048 重量%と、 2- ホスホノブタン -1,2,4 トリカルボン酸及びそのアルカリ金属塩の少なくとも一種を 0.01 〜 0.05 重量%と、を含むことを特徴とする冷却液組成物。 - さらにアルカリ金属の硝酸塩を0.01〜 1.0重量%、トリアゾール類を0.05〜 1.0重量%、チアゾール類を0.01〜 1.0重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の冷却液組成物。
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