JP4115056B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは、表面層に特定の化合物を含有し、かつ感光層に分子量350以上の電荷輸送材料を含有する電子写真感光体、その電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体に、セレン、硫化カドミウム及び酸化亜鉛等の無機光導電性材料が広く用いられていた。一方、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体としては、ポリ−N−ビニルカリバゾールに代表される光導電性ポリマーや2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのような低分子の有機光導電性材料を用いたもの、更には、かかる有機光導電性材料と各種染料や顔料を組み合わせたもの等が知られている。
【0003】
有機光導電性材料を用いた電子写真感光体は成膜性が良く、塗工によって生産できるため、極めて生産性が高く安価な電子写真感光体を提供できる利点を有している。また、使用する染料や顔料等の選択により、感光波長域を自在にコントロールできる等の利点を有し、これまで幅広い検討がなされてきた。特に最近では、有機光導電性染料や顔料を含有した電荷発生層と光導電性ポリマーや低分子の有機光導電性材料を含有した電荷輸送層を積層した機能分離型の電子写真感光体の開発により、従来の有機電子写真感光体の欠点とされていた感度や耐久性に著しい改善がなされてきており、これが有機電子写真感光体の主流となってきている。
【0004】
一方、当然のことながら電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。特に、繰り返し使用される電子写真感光体にあっては、その電子写真感光体表面には帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理といった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。具体的には、摺擦による表面の磨耗や傷の発生に対する耐久性、帯電による表面劣化が挙げられ、より詳しくは転写効率や滑り性の低下、更には感度低下、電位低下等の電気特性の劣化に対する耐久性も要求される。
【0005】
一般に電子写真感光体の表面は薄い樹脂層であり、樹脂の特性が非常に重要である。上述の諸条件をある程度満足する樹脂として、近年、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等が実用化されているが、前述したような特性の全てがこれらの樹脂で満足されるわけではなく、特に電子写真感光体の高耐久化を図る上では該樹脂の被膜硬度は十分高いとは言い難い。これらの樹脂を表面層形成用の樹脂として用いた場合でも繰り返し使用時において表面層の磨耗が起こり、更に傷が発生するという問題点があった。
【0006】
更に、近年の有機電子写真感光体の高感度化に対する要求から電荷輸送材料等の低分子量化合物が比較的大量に添加される場合が多いが、この場合それら低分子量材料の可塑剤的な作用により膜強度が著しく低下し、一層繰り返し使用時の表面層の磨耗や傷発生が問題となっている。また、電子写真感光体を長期にわたって保存する際に前述の低分子量成分が析出してしまい、層分離するといった問題も発生している。
【0007】
これらの問題点を解決する手段として、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いる試みが、例えば特開平2−127652号公報等に開示されている。このように、電荷輸送層用の樹脂に硬化性の樹脂を用い電荷輸送層を硬化、架橋することによって機械的強度が増し、繰り返し使用時の耐削れ性及び耐傷性は大きく向上する。しかしながら硬化性樹脂を用いても、低分子量成分はあくまでも結着樹脂中において可塑剤として作用するので、先に述べたような析出や層分離の問題は根本的な解決にはなっていない。
【0008】
また、有機電荷輸送材料と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては、電荷輸送能の樹脂に対する依存度が大きく、例えば硬度が十分に高い硬化性樹脂では電荷輸送能が十分ではなく繰り返し使用時に残留電位の上昇が見られる等、両者を満足させるまでには至っていない。
【0009】
また、特開平5−216249号公報、特開平7−72640号公報等においては、電荷移動層に炭素−炭素二重結合を有するモノマーを含有させ、電荷移動材の炭素−炭素二重結合と熱あるいは光のエネルギーによって反応させて電荷移動層硬化膜を形成した電子写真感光体が開示されているが、電荷輸送材はポリマー主骨格にペンダント状に固定化されているだけであり、先の可塑的な作用を十分に排除できないため機械的強度が十分ではない。また、電荷輸送能の向上のために電荷輸送材の濃度を高くすると、架橋密度が低くなり十分な機械的強度を確保することができない。更には、重合時に必要とされる開始剤類の電子写真特性への影響も懸念される。
【0010】
また、別の解決手段として例えば特開平8−248649号公報等においては、熱可塑性高分子主鎖中に電荷輸送能を有する基を導入し電荷輸送層を形成させた電子写真感光体が開示されているが、従来の分子分散型の電荷輸送層と比較して析出や層分離に対しては効果があり、機械的強度も向上するが、あくまでも熱可塑性樹脂であり、その機械的強度には限界があり、樹脂の溶解性等を含めたハンドリングや生産性の面で十分であるとは言い難い。
【0011】
以上述べたことを背景にして、本発明者らは、高い機械的強度と電荷輸送能の両立を達成するための検討を重ねた。その結果、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合させた化合物を含有した電子写真感光体によって機械的強度と電荷輸送能の両立がほぼ達成されることが確認された。
【0012】
しかしながら、これを保護層として用いた場合においては、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を使用することで機械的強度は向上するが、感光層が有機系感光層である場合において感度が十分に得られなかったり、残留電位の上昇がみられることもあった。また、環境の変化に伴い電位が変動してしまい、安定した電位特性を得られないこともあった。
【0013】
近年の高画質化、高耐久化に伴い、より優れた電子写真感光体を提供するためにはこれらの問題をぜひ解決する必要があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、保護層を形成しても感度が良好であり、残留電位の上昇が少なく、環境変化による電位変動が小さく、安定した電子写真特性が得られる電子写真感光体を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体、感光層及び保護層を有する電子写真感光体において、該保護層が同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物を含有し、かつ該感光層が分子量350以上の電荷輸送材料を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0017】
また本発明に従って、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の電子写真感光体の構成を詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明における保護層について説明する。はじめに、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物について説明する。
【0020】
本発明における連鎖重合とは、高分子物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた場合の前者の重合反応形態を示し、詳しくは例えば技報堂出版 三羽忠広著の「基礎 合成樹脂の化学(新版)」1995年7月25日(1版8刷)P.24に説明されているように、その形態が主にラジカルあるいはイオン等の中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合そして異性化重合等のことをいう。前記一般式(1)における連鎖重合性官能基P1及びP2とは、前述の反応形態が可能な官能基を意味するが、ここではその大半を占め応用範囲の広い不飽和重合あるいは開環重合性官能基の具体例を示す。
【0021】
不飽和重合とは、ラジカル、イオン等によって不飽和基、例えばC=C、C≡C、C=O、C=N、C≡N等が重合する反応であるが、主にはC=Cである。不飽和重合性官能基の具体例を表1に示すがこれらに限定されるものではない。
【0022】
【表1】
【0023】
表中、Rは置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等のアリール基又は水素原子を示す。
【0024】
開環重合とは、炭素環、オクソ環及び窒素ヘテロ環等のひずみを有した不安定な環状構造が触媒の作用で活性化され、開環すると同時に重合を繰り返し鎖状高分子物を生成する反応であるが、この場合、基本的にはイオンが活性種として作用するものが大部分である。開環重合性官能基の具体例を表2に示すがこれらに限定されるものではない。
【0025】
【表2】
【0026】
表中、Rは置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等のアリール基又は水素原子を示す。
【0027】
上記で説明したような本発明に係わる連鎖重合性官能基の中でも、下記の一般式(6)、(14)及び(15)で示されるものが好ましい。
【0028】
【化8】
【0029】
式中、Eは水素原子、フッ素、塩素及び臭素等のハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基及びフリル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、CN基、ニトロ基、−COOR13又は−CONR14R15を示す。
【0030】
Wは置換基を有しても良いフェニレン基、ナフチレン基及びアントラセニレン基等のアリーレン基、置換基を有しても良いメチレン基、エチレン基及びブチレン等のアルキレン基、−COO−、−CH2−、−O−、−OO−、−S−又は−CONR16−で示される。
【0031】
R13、R14、R15及びR16は水素原子、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等のアリール基を示し、R14とR15は互いに同一であっても異なっても良い。また、fは0又は1を示す。
【0032】
E及びW中で有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基、シアノ基、水酸基;メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びナフトキシ基等のアリールオキシ基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基;又はフェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0033】
【化9】
【0034】
式中、R17及びR18は水素原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基及びナフチル基等のアリール基を示し、nは1〜10の整数を示す。
【0035】
【化10】
式中、R19及びR20は水素原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基及びナフチル基等のアリール基を示し、nは0〜10の整数を示す。
【0036】
なお、上記一般式の(14)及び(15)のR17、R18、R19及びR20が有してもよい置換基としてはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びナフトキシ基等のアリールオキシ基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基;又はフェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0037】
また、上記一般式(6)、(14)及び(15)の中でも、更に好ましい連鎖重合性官能基としては、下記一般式(7)〜一般式(13)で示されるものが挙げられる。
【0038】
【化11】
【0039】
更に、上記一般式(7)〜一般式(13)の中でも、一般式(7)のアクリロイルオキシ基及び一般式(8)のメタクリロイルオキシ基が、重合特性等の点から特に一番好ましい。
【0040】
次に、本発明における正孔輸送性材料について説明する。
【0041】
本発明で『連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物』とは、上記で説明した連鎖重合性官能基が下記で説明する正孔輸送性化合物に官能基として好ましくは2つ以上の化学結合している化合物を示す。この場合、それらの連鎖重合性官能基は、全て同一でも異なったものであってもよい。
【0042】
それらの連鎖重合性官能基を2つ以上有する正孔輸送性化合物としては、下記一般式(1)である場合が好ましい。
【0043】
【化12】
【0044】
式中、Aは正孔輸送性基を示す。P1及びP2は連鎖重合性官能基を示す。P1とP2は同一でも異なっても良い。Zは置換基を有しても良い有機基を示す。a、b及びdは0以上の整数を示し、a+b×dは2以上の整数を示す。また、aが2以上の場合P1は同一でも異なってもよく、d が2以上の場合、Z及びP2は同一でも異なってもよい。
【0045】
なおここで、『aが2以上の場合P1は同一でも異なっても良く』とは、それぞれ異なるn種類の連鎖重合性官能基をP11、P12、P13、P14、P15・・・・P1nと示した場合、例えばa=3のとき正孔輸送性化合物Aに直接結合する重合性官能基P1は3つとも同じものでも、2つ同じで1つは違うもの(例えば、P11とP11とP12とか)でも、それぞれ3つとも異なるもの(例えば、P12とP15とP17とか)でも良いということを意味するものである(『dが2以上の場合P2は同一でも異なっても良く』というのも、『bが2以上の場合、Z及びP2は同一でも異なっても良い』というのもこれと同様なことを意味するものである)。
【0046】
上記一般式(1)のAとP1やZとの結合部位を水素原子に置き換えた正孔輸送化合物は、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体及びN−フェニルカルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0047】
更に、上記正孔輸送化合物の中でも、下記一般式(4)、(5)、(16)、(17)及び(19)から選ばれる式で示される化合物、あるいは下記一般式(18)で示される基を有する縮合環炭化水素又は下記一般式(18)で示される基を有する縮合複素環であるものが好ましい。更に、その中でも、一般式(4)及び(5)で示される化合物である場合が特に好ましい。
【0048】
【化13】
【0049】
上記一般式(4)中、R6、R7及びR8は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数10以下のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示す。
【0050】
但し、R6、R7及びR8のうち少なくとも2つはアリール基を示し、R6、R7及びR8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。更に、その中でもR6、R7及びR8の全てがアリール基であるものが特に好ましい。また、上記一般式(4)のR6又はR7又はR8のうち任意の2つはそれぞれ直接もしくは結合基を介して結合しても良く、その結合基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子又はCH=CH基等が挙げられる。
【0051】
【化14】
【0052】
上記一般式(5)中、m4は0又は1を示し、m4=1である場合が好ましい。R9〜R12は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数10以下のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示し、R9〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0053】
Ar4は置換基を有しても良いアリーレン基(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、チオフェン、フラン、ピリジン、キノリン、ベンゾキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン等より2個の水素原子を取り除いた基)を示し、Ar5はm4=0の場合、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示し、m4=1の場合は上記Ar1と同様なアリーレン基を示す。なお、m4=1の場合は、Ar4とAr5は同一であっても異なっても良い。
【0054】
更にその中でも、上記一般式(5)中のR9〜R12が4つとも全てアリール基である場合が特に好ましい。また、上記一般式(5)のR9とR10又はR11とR12又はAr4とAr5は、それぞれ直接もしくは結合基を介して結合しても良く、その結合基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基、カルボニル基、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子又はCH=CH基等が挙げられるが、これらの中ではアルキレン基が好ましい。
【0055】
【化15】
【0056】
上記一般式(16)中、R21、R22、R23及びR24は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数10以下のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示し、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R25及びR26は置換基を有しても良いメチレン基、エチレン基及びプロピレン基等の炭素数10以下のアルキレン基、又は置換基を有しても良いアリーレン基(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、チオフェン、フラン、ピリジン、キノリン、ベンゾキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン等より2個の水素原子を取り除いた基)を示し、R25及びR26は同一であっても異なっていても良い。Qは置換基を有しても良い有機基を示す。
【0057】
更にその中でも、上記一般式(16)中のR21、R22、R23及びR24のうち少なくとも2つが置換基を有しても良いアリール基であり、かつR25及びR26が置換基を有しても良いアリーレン基である場合が好ましく、更にR21、R22、R23及びR24が4つとも全て置換基を有しても良いアリール基である場合が特に好ましい。また、上記一般式(16)のR21、R22及びR25のうち任意の2つあるいはR23、R24及びR26のうち任意の2つはそれぞれ直接もしくは結合基を介して結合しても良く、その結合基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子又はCH=CH基等が挙げられる。
【0058】
【化16】
【0059】
但し上記一般式(17)中、R27、R28及びAr6のうち少なくとも一つは、下記一般式(18)で示される基を少なくとも一つ有する。
【0060】
【化17】
【0061】
上記一般式(17)及び(18)中、Ar6及びAr7は置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示し、R27、R28、R29及びR30は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数10以下のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示し、R29及びR30はこれらのアルキル基、アラルキル基及びアリール基に加え水素原子を示す。更に、R27とR28及びR29とR30はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
また、R27又はR28又はAr6のうち任意の2つ、又はAr7及びR30はそれぞれ直接もしくは結合基を介して結合しても良く、その結合基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子又はCH=CH基等が挙げられる。n1は0〜2の整数を示す。なお、その中でもR30がアリール基である場合が好ましく、更にR27とR28がアリール基である場合が特に好ましい。
【0063】
更に、上記一般式(18)で示される基を有する化合物としては、置換基を有してもよい、ナフタレン基、アントラセン基、フェナンスレン基、ペレン基、フルオレン基、フルオランセン基、アズレン基、インデン基、ペリレン基、クリセン基及びコロネン基等の縮合環炭化水素又は置換基を有しても良いベンゾフラン基、インドール基、カルバゾール基、ベンズカルバゾール基、アクリジン基、フェノチアジン基及びキノリン基等の縮合複素環が挙げられる。
【0064】
【化18】
【0065】
但し、上記一般式(19)は、下記一般式(20)で示される基を少なくとも一つ有する。
【0066】
【化19】
【0067】
上記一般式(19)及び(20)中、Ar8、Ar9及びAr10は置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示し、R31、R32及びR33は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数10以下のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示し、R32及びR33はこれらのアルキル基、アラルキル基及びアリール基に加え水素原子を示す。なお、Ar8及びAr9とR32とR33はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
その中でも、R31及びR32がアリール基である場合が好ましい。また、R31、Ar8又はAr9のうち任意の2つ、又はAr10及びR33はそれぞれ直接もしくは結合基を介して結合しても良く、その結合基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子又はCH=CH基等が挙げられる。n2は0〜2の整数を示す。
【0069】
また、上記一般式(1)中のZ及び上記一般式(16)中のQは置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、CR1=CR2(R1及びR2はアルキル基、アリール基又は水素原子を示し、R1及びR2は同一でも異なっても良い)、C=O、S=O、SO2、酸素原子又は硫黄原子より一つあるいは任意に組み合わされた有機基を示す。その中でも下記一般式(2)で示されるものが好ましく、下記一般式(3)で示されるものが特に好ましい。
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
上記一般式(2)中、X1〜X3は置換基を有してもよいメチレン基、エチレン基及びプロピレン基等の炭素数20以下のアルキレン基、(CR3=CR4)m1、C=O、S=O、SO2、酸素原子又は硫黄原子を示し、Ar1及びAr2は置換基を有してもよいアリーレン基(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、チオフェン、フラン、ピリジン、キノリン、ベンゾキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン等より2個の水素原子を取り除いた基)を示す。R3及びR4は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基及びチオフェニル基等のアリール基又は水素原子を示し、R3及びR4は同一でも異なっても良い。m1は1〜5の整数、p〜tは0〜10の整数を示す(但し、p〜tは同時に0であることはない)。
【0073】
上記一般式(3)中、X4及びX5は(CH2)m2、(CH=CR5)m3、C=O、又は酸素原子を示し、Ar3は置換基を有してもよいアリーレン基(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、チオフェン、フラン、ピリジン、キノリン、ベンゾキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン等より2個の水素原子を取り除いた基)を示す。R5は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基及びチオフェニル基等のアリール基又は水素原子を示す。m2は1〜10の整数、m3は1〜5の整数、u〜wは0〜10の整数を示す(特に、0〜5の整数の時が特に好ましい。但し、u〜wは同時に0であることはない)。
【0074】
なお、上述の一般式(1)〜(3)、(5)、(6)及び(14)〜(20)のR1〜R5、R9〜R33、Ar1〜Ar10、X1〜X5、Z及びQがそれぞれ有してもよい置換基としてはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基、シアノ基、水酸基;メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基;フェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基等のアリール基が挙げられる。また、一般式(4)のR6〜R8が有しても良い置換基としてはアリール基を除いた上記置換基及びジフェニルアミノ基及びジ(p−トリル)アミノ基等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0075】
また、本発明における同一分子内に1つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、酸化電位が1.2(V)以下であることが好ましく、特には0.4〜1.2(V)であることが好ましい。それは、酸化電位が1.2(V)超えると電荷発生材料からの電荷(正孔)の注入が起こり難く残留電位の上昇、感度悪化及び繰り返し使用時の電位変動が大きくなる等の問題が生じ易く、また0.4(V)未満では帯電能の低下等の問題の他に、化合物自体が容易に酸化されるために劣化し易く、それに起因した感度悪化、画像ボケ及び繰り返し使用時の電位変動が大きくなる等の問題が生じ易くなるためである。
【0076】
なお、ここで述べている酸化電位は、以下の方法によって測定される。
【0077】
(酸化電位の測定法)
飽和カロメル電極を参照電極とし、電解液に0.1N(n−Bu)4N+ClO4 -アセトニトリル溶液を用い、ポテンシャルスイーパによって作用電極(白金)に印加する電位をスイープし、得られた電流−電位曲線がピークを示したときの電位を酸化電位とした。詳しくは、サンプルを0.1N(n−Bu)4N+ClO4 -アセトニトリル溶液に5〜10mmol%程度の濃度になるように溶解する。そしてこのサンプル溶液に作用電極によって電圧を加え、電圧を低電位(0V)から高電位(+1.5V)に直線的に変化させた時の電流変化を測定し、電流−電位曲線を得る。この電流−電位曲線において、電流値がピーク(ピークが複数ある場合には最初のピーク)を示したときのピークトップの位置の電位を酸化電位とした。
【0078】
また更に、上記連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、正孔輸送能として1×10-7(cm2/V.sec)以上のドリフト移動度を有しているものが好ましい(但し、印加電界:5×104V/cm)。1×10-7(cm2/V.sec)未満では電子写真感光体として露光後現像までに正孔が十分に移動できないため見かけ上感度が低減し、残留電位も高くなってしまう問題が発生する場合がある。
【0079】
以下に本発明に係わる、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の代表例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化22】
【0081】
【化23】
【0082】
【化24】
【0083】
【化25】
【0084】
【化26】
【0085】
【化27】
【0086】
【化28】
【0087】
【化29】
【0088】
【化30】
【0089】
【化31】
【0090】
【化32】
【0091】
【化33】
【0092】
【化34】
【0093】
【化35】
【0094】
【化36】
【0095】
【化37】
【0096】
【化38】
【0097】
【化39】
【0098】
【化40】
【0099】
【化41】
【0100】
【化42】
【0101】
【化43】
【0102】
【化44】
【0103】
【化45】
【0104】
【化46】
【0105】
【化47】
【0106】
【化48】
【0107】
【化49】
【0108】
【化50】
【0109】
【化51】
【0110】
【化52】
【0111】
【化53】
【0112】
【化54】
【0113】
【化55】
【0114】
【化56】
【0115】
【化57】
【0116】
【化58】
【0117】
【化59】
【0118】
【化60】
【0119】
【化61】
【0120】
【化62】
【0121】
【化63】
【0122】
【化64】
【0123】
【化65】
【0124】
【化66】
【0125】
【化67】
【0126】
【化68】
【0127】
【化69】
【0128】
【化70】
【0129】
【化71】
【0130】
【化72】
【0131】
【化73】
【0132】
【化74】
【0133】
【化75】
【0134】
【化76】
【0135】
【化77】
【0136】
【化78】
【0137】
【化79】
【0138】
【化80】
【0139】
【化81】
【0140】
【化82】
【0141】
【化83】
【0142】
【化84】
【0143】
【化85】
【0144】
【化86】
【0145】
【化87】
【0146】
【化88】
【0147】
【化89】
【0148】
【化90】
【0149】
【化91】
【0150】
【化92】
【0151】
【化93】
【0152】
【化94】
【0153】
【化95】
【0154】
【化96】
【0155】
【化97】
【0156】
【化98】
【0157】
【化99】
【0158】
【化100】
【0159】
【化101】
【0160】
【化102】
【0161】
【化103】
【0162】
【化104】
【0163】
【化105】
【0164】
【化106】
【0165】
【化107】
【0166】
【化108】
【0167】
【化109】
【0168】
【化110】
【0169】
本発明においては、前記同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合することで、保護層中において、正孔輸送能を有する化合物は二つ以上の架橋点をもって3次元架橋構造を形成する。前記正孔輸送性化合物はそれのみを重合させる、あるいは他の連鎖重合性官能基を有する化合物と混合させることのいずれもが可能であり、その種類/比率は全て任意である。ここでいう他の連鎖重合性官能基を有する化合物とは、連鎖重合性官能基を有する単量体あるいはオリゴマー/ポリマーのいずれもが含まれる。
【0170】
正孔輸送性化合物の官能基とその他の連鎖重合性化合物の官能基が同一の基あるいは互いに重合可能な基である場合には、両者は共有結合を介した共重合3次元架橋構造をとることが可能である。両者の官能基が互いに重合しない官能基である場合には、保護層は二つ以上の3次元硬化物の混合物あるいは主成分の3次元硬化物中に他の連鎖重合性化合物単量体あるいはその硬化物を含んだものとして構成されるが、その配合比率/製膜方法をうまくコントロールすることで、IPN(Inter Penetrating Network)すなわち相互進入網目構造を形成することも可能である。
【0171】
また、前記正孔輸送性化合物と連鎖重合性官能基以外の重合性基を有する単量体あるいはオリゴマー/ポリマー等から保護層を形成してもよい。また、その他の各種添加剤、フッ素原子含有樹脂微粒子等の潤剤その他を含有してもよい。
【0172】
本発明において、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は熱、可視光や紫外線等の光、更に放射線により重合することができる。従って、本発明における保護層の形成は、保護層用の塗工液に前記連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と必要によっては重合開始剤を含有させ、該塗工液を用いて形成した塗工膜に光又は放射線を照射することによって該連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合させる。なお、本発明においては、その中でも放射線によって該連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合することが好ましい。放射線による重合の最大の利点は、重合開始剤を必要としない点であり、これにより非常に高純度な3次元保護層の作製が可能となり、良好な耐久性が確保される点である。また、短時間でかつ効率的な重合反応であるがゆえに生産性も高く、更には放射線の透過性の良さから、厚膜時や添加剤等の遮蔽物質が膜中に存在する際の硬化阻害の影響が非常に小さいこと等が挙げられる。但し、連鎖重合性官能基の種類や中心骨格の種類によっては重合反応が進行しにくい場合があり、その際には影響のない範囲内での重合開始剤の添加は可能である。この際、使用する放射線とは電子線及びγ線であるが、特には電子線が好ましい。
【0173】
電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型等いずれの形式も使用することができる。電子線を照射する場合に、本発明の電子写真感光体においては電気特性を発現させる上で照射条件が非常に重要である。本発明において、加速電圧は250KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また、線量は好ましくは1Mrad〜100Mradの範囲、より好ましくは3Mrad〜50Mradの範囲である。加速電圧が250KVを超えると感光体特性に対する電子線照射のダメージが増加する傾向にある。また、照射線量が1Mradよりも少ない場合には硬化が不十分となり易く、線量100Mradより多い場合には感光体特性の劣化が起こり易いので注意が必要である。
【0174】
前記正孔輸送性化合物の量は、重合硬化後の保護層膜の全質量に対して、前記一般式(1)で示される連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性基Aの水素付加物が20質量%以上が好ましく、特には40質量%以上含有されていることが好ましい。20質量%未満であると電荷輸送能が低下し、感度低下及び残留電位の上昇等の問題点が生じ易い。この場合の保護層としての膜厚は0.1〜10μmが好ましく、特には0.5〜7μmが好ましい。
【0175】
次に、感光層について説明する。
【0176】
前述の如く、保護層として同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を使用することで機械的強度は飛躍的に向上するが、感光層が有機系感光層である場合に感度が十分に得られなかったり、残留電位の上昇がみられることもあった。また、環境の変化に伴い電位が変動してしまい、十分に安定した電位特性を得られないこともあった。
【0177】
本発明者らは鋭意検討した結果、保護層と接する感光層中の電荷輸送材料の分子量と感度、残電、及び環境電位変動との間に関係があることを見いだし本発明に至った。すなわち、保護層と接する感光層の電荷輸送材料の分子量を350以上にすることで感度の低下、及び残留電位の上昇を抑えることができ、また環境電位変動も抑えることができた。
【0178】
本発明のメカニズムは定かではないが以下のように考えられる。保護層として同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を、光及び放射線を照射することによって重合するに際し、保護層下にある感光層にも光及び放射線は到達している。この光及び放射線が、感光層中の電荷発生材料及び電荷輸送材料を劣化させ、感光体特性が低下すると考えられる。分子量の小さい電荷輸送材料は、吸収した光及び放射線エネルギーを分散できずに分子の切断による劣化が生じるが、分子量の大きい電荷輸送材料は吸収した光及び放射線エネルギーを非局在下させることができ、熱エネルギーに変換することで安定化が可能になり劣化が抑えられると思われる。また、電荷輸送材料が光及び放射線エネルギーを熱エネルギーに変換させることで、電荷発生材料の劣化も抑えられると思われる。よって、分子量の大きい電荷輸送材料を用いた場合、光及び放射線による電荷発生材料及び電荷輸送材料の劣化を抑制できると考えられる。
【0179】
本発明においては、電荷輸送材料の分子量が350以上700以下であることが好ましい。700を超えると溶解性が低下するためか、電位特性及び環境変動が悪化する傾向がみられるからである。
【0180】
本発明における感光層が含有する電荷輸送材料は、分子量350以上であればいずれのものでもよい。例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びポリスチリルアントラセン等の複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール及びカルバゾール等の複素環化合物、トリフェニルメタン等のトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体及びブタジエン誘導体等が挙げられる。
【0181】
以下に電荷輸送材料の化合物例とその分子量を示す。化合物例No.1〜No.11は、分子量350未満なので本発明外の化合物である。もちろん本発明に用いられる電荷輸送材料はこれらに限られるものではない。
【0182】
【化111】
【0183】
【化112】
【0184】
【化113】
【0185】
【化114】
【0186】
【化115】
【0187】
【化116】
【0188】
【化117】
【0189】
【化118】
【0190】
【化119】
【0191】
【化120】
【0192】
本発明において、分子量が350以上である電荷輸送材料以外の電荷輸送材料を更に添加することができる。但し、本発明の効果を十分に得るためには分子量が350以上である電荷輸送材料が感光層中の全電荷輸送材料の50質量%以上であることが好ましく、更に70質量%以上であることがより好ましい。
【0193】
本発明の電子写真感光体の構成は、保護層下に感光層として電荷発生材料を含有する電荷発生層及び電荷輸送材料と結着樹脂を含有する電荷輸送層をこの順に積層した積層型、また電荷発生材料と電荷輸送材料と結着樹脂を同一層中に有する単層からなる単層型のいずれの構成をとることも可能である。
【0194】
以下、積層型の感光層について説明する。
【0195】
本発明における電荷輸送層は、電荷輸送材料を結着樹脂と共に溶剤に分散/溶解した溶液を塗布し、乾燥して形成することができる。
【0196】
上記電荷輸送材料と共に用いる結着樹脂としては、従来用いられる電荷輸送層用の樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメタクリル酸エステル及びポリスチレン等が挙げられる。電荷輸送層の厚さは1〜50μmであることが好ましく、特には5〜30μmであることが好ましい。
【0197】
この場合の電荷輸送材料と上記結着樹脂の比率は、両者の全質量を100とした場合に電荷輸送材料の質量が10〜100が好ましく、好ましくは20〜100の範囲で適宜選択される。
【0198】
本発明における電荷発生層は、電荷発生材料を結着樹脂に分散した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することが好ましいが、電荷発生材料のみを蒸着することによって形成してもよい。
【0199】
電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、また各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε及びX型等の結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン及び特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコン等が挙げられる。
【0200】
電荷発生層は、前記電荷発生材料を0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター及びロールミル等の方法で良く分散し、分散液を塗布し、乾燥されて形成されるか、又は前記電荷発生材料の蒸着膜等、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0201】
結着樹脂を用いる場合の例は、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0202】
感光層が単層である場合は、上記電荷発生材料及び分子量350以上の電荷輸送材料を上記結着樹脂に分散及び溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0203】
本発明における感光層には、各種添加剤を添加することができる。該添加剤とは、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等の劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂微粒子等の潤剤その他である。
【0204】
電子写真感光体の支持体としては導電性を有するものであればよく、例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレス等の金属や合金をドラム又はシート状に成形したもの、アルミニウム及び銅等の金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫等をプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又は結着樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、またプラスチックフィルム及び紙等が挙げられる。
【0205】
本発明においては、導電性支持体表面を化成処理すなわち酸又はアルカリ水溶液との反応によって化学的に処理して不溶性の皮膜を形成してもよい。
【0206】
導電性支持体の上には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、また感光層の電気的破壊に対する保護等のために形成される。
【0207】
下引き層の材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の樹脂、又はシランカップリング剤やジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン等を含有する有機金属化合物等の金属有機化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることができる。これらは、それぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては、0.1〜5μmが好ましい。
【0208】
これら各層の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティング法等が知られているが、効率性/生産性の点からは浸漬コーティング法が好ましい。また、蒸着、プラズマその他の公知の製膜方法が適宜選択できる。
【0209】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを用いた電子写真装置の概略構成を示す。
【0210】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強調変調された露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0211】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給紙された転写材7に、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー画像が転写手段6により順次転写されていく。
【0212】
トナー画像の転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0213】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0214】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものを容器11に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも一つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール等の案内手段12を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジとすることができる。
【0215】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0216】
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0217】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部を表す。
【0218】
(実施例1)
まず導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10質量%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料をφ30mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、140℃で30分間乾燥することによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0219】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調製した。この塗料を前記の導電層上に浸漬コーティング法によって塗布し、100℃で20分間乾燥することによって、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。
【0220】
次に、CuKαの特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2度)が9.0度、14.2度、23.9度及び27.1度に強いピ−クを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学(株)製)3部及びシクロヘキサノン35部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を前記の中間層の上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で10分間乾燥することによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0221】
次いで、電荷輸送材料として化合物例No.54を10部及び下記構造式(21)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂10部を
【0222】
【化121】
モノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン30部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を前記の電荷発生層上に浸漬コーティングし、110℃で1時間乾燥することによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0223】
次いで、化合物例No.6の正孔輸送性化合物60部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン50部の混合溶媒中に溶解し保護層用塗料を調製した。この塗料をスプレーコーティング法により、先の電荷輸送層上に塗布し、加速電圧150KV、線量30Mradの条件で電子線を照射し樹脂を硬化することによって、膜厚が5μmの保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0224】
作製した電子写真感光体をキヤノン(株)製LBP−SXに装着して初期電子写真特性を評価した。初期の感光体特性[光減衰感度(暗部電位−700V設定で−200Vに光減衰させるために必要な光量)及び残留電位Vsl(光減衰感度の光量の3倍の光量を照射したときの電位)]を常温常湿環境下(23℃/50%RH)の環境で測定して求めた。その後、環境を高温高湿下(32℃/85%RH)(H/H)に変え、Vlの常温常湿環境下からの変動量(ΔVl)を測定した。結果を表3に示す。
【0225】
(実施例2〜22及び比較例1〜4)
実施例1の保護層中の正孔輸送性化合物、あるいは感光層中の電荷輸送材料を表3の様に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。その結果を表3に示す。
【0226】
(実施例23)
実施例1の電荷輸送材料の化合物例No.54 10部を化合物例No.198部及び化合物例No.54 2部に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0227】
(実施例24)
実施例1の電荷輸送材料の化合物例No.54 10部を化合物例No.5 3部及び化合物例No.54 7部に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0228】
(実施例25)
実施例1の電荷輸送材料の化合物例No.54 10部を化合物例No.5 7部及び化合物例No.54 3部に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0229】
(実施例26)
まず、電子写真用感光体支持体を以下の手順で得た。φ30mmアルミニウムシリンダーを用意し、有機りん酸としてフィチン酸及び金属としてチタニウムを含有するノンクロメート化成処理剤液(商品名:パルコ−ト3753、日本パーカライジング株式会社製 )を40℃の温度に保ち、この液中に上記のアルミニウムシリンダーを浸漬し、1分間化成処理を行った後、純水で洗浄し、自然乾燥させて支持体とした。
【0230】
上記支持体上に実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層、保護層を形成し、評価した。結果を表4に示す。
【0231】
(実施例27及び28)
実施例26の電荷輸送材料の化合物例No.54を化合物例No.29及び化合物例No.68に代えた以外は、実施例26と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0232】
(実施例29)
φ30mmアルミニウムシリンダーをホーニング処理し、超音波水洗浄したものを導電性支持体とした。
【0233】
次に、メトキシエタノール160部にジルコニウムテトラ−n−ブトキサイドの85%ブタノール溶液(関東化学社製)64部(0.06mol)及びチタニウムテトラ−n−ブトキサイド(キシダ化学社製)22部(0.14mol)を滴下し、メトキシエタノール/純水=160部/11部の混合溶液を更に加える。更に、アセチルアセトン20部をメタノール200部に加えた溶液を滴下した後、ヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業社製)の10質量%メタノール液55部を混合して得た中間層塗布液をアルミニウムシリンダー支持体上に浸漬塗布し、120℃で15分間加熱乾燥させることによって、膜厚が0.3μmの中間層を形成した。
【0234】
上記中間層上に実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層、保護層を形成し、評価した。結果を表4に示す。
【0235】
(実施例30及び31)
実施例29の電荷輸送材料の化合物例No.54を化合物例No.32及び化合物例No.40に代えた以外は、実施例29と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0236】
(実施例32)
電荷輸送層用塗布液を以下のように調製した以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0237】
電荷輸送材料の化合物例No.54 16部、前記構造式(21)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂4部及び酸化防止剤(商品名:イルガノックス1330、チバガイギー社製)1部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン30部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0238】
(実施例33)
電荷輸送層用塗布液を以下のように調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0239】
電荷輸送材料の化合物例No.98 3部と化合物例No.89 1部、前記構造式(21)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂16部、酸化防止剤(商品名:SumilizerGS、住友化学(株)製)0.5部及び酸化防止剤(商品名:IRGAFOS−168、日本チバガイギー社製)0.5部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン30部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0240】
表3及び表4の実施例に示すように、分子量350以上の電荷輸送材料を用いると電位特性及び環境特性が良好であるのに対し、比較例に示すように分子量350未満の電荷輸送材料を用いると感度低下、残留電位の上昇を生じたものもあったり、また環境変動の大きなものもあった。
【0241】
【表3】
【0242】
【表4】
【0243】
【発明の効果】
本発明によれば、感度が良好であり、残留電位の上昇が少なく、環境による電位変動が小さい等の電子写真特性が非常に良好であり常に安定した性能を発揮することができる電子写真感光体を提供することができた。
【0244】
また、上記電子写真感光体の効果は、その電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置においても当然に発揮され、長期間高画質が維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを用いる電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ容器
12 案内手段
Claims (20)
- 導電性支持体、感光層及び保護層を有する電子写真感光体において、該保護層が同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物を含有し、かつ該感光層が分子量350以上の電荷輸送材料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記感光層が分子量350以上700以下の電荷輸送材料を含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記電荷輸送材料の割合が、前記感光層が含有する全電荷輸送材料に対し50質量%以上である請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 上記一般式(1)のZが置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、CR1=CR2(R1及びR2は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は水素原子を示し、R1及びR2は同一でも異なっても良い)、C=O、S=O、SO2、酸素原子又は硫黄原子より一つあるいは任意に組み合わされた有機基を示す請求項4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の化合物の酸化電位が0.4〜1.2(V)である請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 上記一般式(4)のR6、R7及びR8が置換基を有しても良いアリール基である請求項9に記載の電子写真感光体。
- 上記一般式(5)のm4が1であり、かつR9〜R12が置換基を有しても良いアリール基である請求項11に記載の電子写真感光体。
- 連鎖重合性官能基P1、P2の一方又は両方が下記一般式(6)で示される不飽和重合性官能基である請求項4〜12のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 連鎖重合性官能基P1、P2の一方又は両方が上記一般式(7)あるいは一般式(8)である請求項14に記載の電子写真感光体。
- 重合が電子線により行われる請求項1〜15のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 電子線の加速電圧が250KV以下である請求項16に記載の電子写真感光体。
- 電子線の線量が1〜100Mradである請求項16又は17に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜18のいずれかに記載の電子写真感光体を、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、静電潜像の形成された電子写真感光体をトナーで現像する現像手段、及び転写工程後の電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも一つの手段と共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜18のいずれかに記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い静電潜像を形成する露光手段、静電潜像の形成された電子写真感光体にトナーで現像する現像手段、及び電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。
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