JP3743590B2 - 電荷輸送材料及び光導電性材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録材料、表示材料として有用な光導電性材料、及び電界発光素子、二次電池、燃料電池等に利用可能な電荷輸送材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体においては、環境に対する安全性、コストの優位性等の観点から有機光導電性材料が例えばポリ−N−ビニルカルバゾール等が広く用いられるようになってきた。
【0003】
しかし、現在用いられている有機光導電性材料には、電荷移動度が小さく高速性を要求される、レーザープリンティング等の用途には十分に対応できないという、欠点があり、電荷移動度の大きい有機光導電性材料の開発が望まれている。
【0004】
また、電荷輸送材料を用いた電界発光素子(EL素子)においても最近はフルカラー化、高輝度化等の観点から有機材料を用いた電界発光素子(有機EL素子)の研究がさかんに行われている。しかし、主に有機電荷輸送材料の電荷移動速度が十分でないことにより、有機EL素子の発光効率は未だ十分ではなく、電荷移動速度の大きい有機電荷輸送材料の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
電荷輸送材料は光導電性材料、電界発光素子等に利用されている。
また、現在二酸化炭素による地球温暖化などの環境、エネルギー問題が危惧される中で、リチウムイオン二次電池に代表される二次電池または新しい発電機関となりうる燃料電池などがその有力な解決策のひとつとして期待され、さかんに研究されている。これらの電池は電解質として液体を用いることが多いが、その場合は電解液の液もれ、蒸発等の損失や、有機溶媒を用いた場合の引火性などが問題とされている。そこで主に燃料電池用として金属酸化物等を用いた固体イオン伝導体等の研究がされているが、これらは高温でないと効率よくイオン伝導が行えず、低温で使用できうる固体電解質の開発が望まれている。
【0006】
ところで円盤状化合物とは、ディスコティック液晶化合物のコア部を有する化合物を指し、とりわけトリフェニレン誘導体が注目されている。特開平7−306317号、特開平8−27284号及び特開平8−231470号の各公報は反応性基を有する円盤状化合物を液晶相のまま重合させて薄膜を形成することが記載されている。
従って、本発明の目的は、液晶相をとることができ、さらに液晶相における分子配列を固定した薄膜を製造可能にする重合性基を有した化合物を提供することである。
そしてこれらの化合物、または重合物、または薄膜を用いて電荷輸送材料あるいは光導電性材料を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、下記により本発明の目的が達成できることを見いだした。
(1)光または熱エネルギーにより反応して化学結合を生成し得る置換基を有する円盤状化合物またはその反応物からなることを特徴とする電荷輸送材料。
(2)円盤状化合物が下記一般式(I)で表されることを特徴とする(1)記載の電荷輸送材料。
【0008】
【化4】
【0009】
式中、Pは反応性置換基を表し、Dは分子の中心にあり、合計n個の置換基A及び置換基(P−L)を放射状に配するn官能の基を表す。(n−k)個のAは各々独立に反応組成物の生成に寄与しない置換基を表し、Lは各々独立に、PとDを連結する基もしくは化学結合を表し、nは3〜8の整数を表し、kは1からnの整数を表す。
k個のPは各々独立に、イソシアナート基、チオシアナート基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、メルカプト基、ホルミル基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホリル基、ハロカルボニル基、ハロスルホニル基、ハロホスホリル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、クロトニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、アセチレン基、プロパギル基、アレニル基、ジアセチレン基を表す。
(3)該一般式(I)において反応性置換基Pが各々独立に以下の重合性置換基M1 〜M4 のいずれかで表されることを特徴とする(1)記載の電荷輸送材料。
【0010】
【化5】
【0011】
置換基M1 、M2 、M3 のR11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。置換基M4 においてR41は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。置換基M1 にてmは0または1を表す。
(4)光を吸収して電荷分離を行い電荷を発生する電荷発生層と(1)〜(3)の一般式(I)にて表される化合物またはその反応物、重合物からなる電荷輸送層からなることを特徴とする光導電性材料。
(5)下記一般式(II)〜(V)にて表される化合物またはその重合物からなることを特徴とする(1)記載の電荷輸送材料。
【0012】
【化6】
【0013】
一般式(II)〜(V)中、M1 〜M4 は一般式(I)と同義である。一般式(II)中、トリフェニレン環に結合する6つのR1 は同じでも異なってもよい置換してもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくともひとつは置換基M1 を有する。
一般式(III)中、トリフェニレン環に結合する6つのR2 は同じでも異なってもよい置換してもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくともひとつは置換基M2 を有する。
一般式(IV) 中、トリフェニレン環に結合する6つのR3 は同じでも異なってもよい置換してもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくともひとつは置換基M3 を有する。
一般式(V) 中、トリフェニレン環に結合する6つのR4 は同じでも異なってもよい置換してもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくともひとつは置換基M4 を有する。
(6)光を吸収して電荷分離を行い電荷を発生する電荷発生層と(5)の一般式(II)〜(V)で表される化合物またはその重合物からなる電荷輸送層からなることを特徴とする光導電性材料。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる円盤状コア部を有する化合物についてまず説明する。円盤状の分子の母核部分(コア部)を成す円盤状部分の形態的特徴は例えば、その原形化合物である水素置換体について、以下のように表現され得る。
まず、分子の大きさを以下のようにして求める。
1)該分子につき、できる限り平面に近い、好ましくは平面分子構造を構築する。この場合、結合距離、結合角としては、軌道の混成に応じた標準値を用いる事が好ましく、例えば日本化学会編、化学便覧改訂4版基礎編、第II分冊15章(1993年刊 丸善)を参照することができる。
2)前記1)で得られた構造を初期値として、分子軌道法や分子力場法にて構造最適化する。方法としては例えばGaussian92、MOPAC93 、CHARMm/QUANTA 、MM3 が挙げられ、好ましくはGaussian92である。
3)構造最適化によって得られた構造の重心を原点に移動させ、座標軸を慣性主軸(慣性テンソル楕円体の主軸)にとる。
4)各原子にファンデルワールス半径で定義される球を付与し、これによって分子の形状を記述する。
5)ファンデルワールス表面上で各座標軸方向の長さを計測し、それらそれぞれをa、b、cとする。
以上の手順により求められたa、b、cをもちいて円盤状の形態を定義すると、a≧b>cかつa≧b≧a/2、好ましくはa≧b>cかつa≧b≧0.7aと表すことができる。また、b/2>cであることが好ましい。
【0015】
以下に本発明の一般式(I)〜(V)で表される化合物について詳しく説明する。
ここで一般式(I)〜(V)で表される化合物がアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキレン基等を有するとき、特に断りのない限りこれらは直鎖状でも分岐鎖状でもよく、置換されていてもよい。
また一般式(I)〜(V)で表される化合物がアリール基、ヘテロ環基、アリーレン基(2価の基)等を有するとき、特に断りのない限り、これらは縮環していても置換されていてもよい。
【0016】
円盤状化合物は、例えば、日本化学会編、季刊化学総説No.22 「液晶の化学」第5章、第10章2節(1994年刊、学会出版センター)、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.Liq.Cryst.71巻、117 頁(1981年)、B.Kohne らの研究報告、Angew.Chem. 96巻、70頁(1984年)、J.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Soc.Chem.Commun., 1794 頁(1985年)、J.Zhang, J.S.Mooreらの研究報告、J.Am.Chem.Soc., 116 巻、2655頁(1994年)に記載の母核化合物の誘導体が挙げられる。
例えば、母核化合物Dとしてはベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、ヘキサエチニルベンゼン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、コロネン誘導体およびフェニルアセチレンマクロサイクルの誘導体が挙げられる。さらに、日本化学会編、「化学総説No.15 新しい芳香族の化学」(1977年東京大学出版会刊)に記載の環状化合物およびそれらの複素原子置換等電子構造体を挙げることができる。また、上記金属錯体の場合と同様に、水素結合、配位結合等により複数の分子の集合体を形成して円盤状の分子となるものでもよい。
母核化合物Dとして好ましくは、トリフェニレンおよびトルキセンが挙げられ、トリフェニレンがより好ましい。
請求項1の化合物にて光または熱エネルギーを加えることにより反応して化学結合を生成し得る置換基としては、例えば、S.R.サンドラーおよびW.カロー(S.R.Sandler, W.Karo) 著、オーガニック・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ(Organic Functional Group Preparations) 第1巻および第2巻(アカデミックプレス社、ニューヨーク、ロンドン 1968年刊)に記載の置換基を挙げることができる。それらのうち好ましくは、多重結合、オキシラン、アジリジンであり、さらに好ましくはR.A.M.Hikmetらの研究報告〔Macromolecules, 25巻、4194頁(1992年)〕及び〔Polymer, 34 巻、8号、1736頁(1993年)〕、D.J.Broer らの研究報告〔Macromolecules, 26巻、1244頁(1993年)〕に記載されているように、二重結合すなわちアクリル基、ビニルエーテル基およびエポキシ基である。
【0017】
本発明の請求項1の化合物としては、請求項2の一般式(I)にて表されることがより好ましい。
一般式(I)にてDは分子の中心にあり、合計n個の置換基A及び置換基(P−L)を放射状に配するn官能の基を表す。Dとして好ましくは先述した円盤状化合物の母核部分である。
【0018】
一般式(I)にてAは各々独立に反応組成物の形成に寄与しない置換基を表し、好ましくはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基などが置換あるいは無置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0019】
一般式(I)にてnは3〜8の整数を表し、kは1からnの整数を表す。
【0020】
一般式(I)にてLは反応性置換基Pと円盤状母核Dを連結する基を表し、一般に化学結合やオキシ基よりも、重合により生じる体積ひずみを緩和しやすい連結基が好ましい。
具体的に好ましくは、炭素原子数(以下C数と呼ぶ)1〜18のアルキレン基、C数1〜18のアルキレンオキシ基、C数1〜18のアルキレンチオ基、C数1〜18のアルキレンアミノ基、C数2〜20のオリゴエチレンオキシ基、C数1〜18のアルキレンオキシカルボニル基、C数6〜26のフェニレン基、C数6〜26のフェニレンオキシ基、C数6〜26のフェニレンチオ基、C数6〜26のフェニレンアミノ基、C数7〜26のフェニレンオキシカルボニル基等が挙げられる。
以下に連結基Lについての好ましい例を具体的に挙げる。
【0021】
【化7】
【0022】
連結基Lとしてより好ましくはアルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンチオ基、アルキレンオキシカルボニル基、フェニレン基、フェニレンオキシ基、フェニレンオキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(I)において、k個の反応性置換基Pは各々独立に、イソシアナート、チオシアナート基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、メルカプト基、ホルミル基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホリル基、ハロカルボニル基、ハロスルホニル基、ハロホスホリル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、クロトニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、アセチレン基、プロパギル基、アレニル基、ジアセチレン基を表す。
【0023】
一般式(I)における反応性置換基Pは各々独立に重合性置換基M1 〜M4 のいずれかで表されることが好ましい。
【0024】
【化8】
【0025】
重合性置換基M1 、M2 、M3 におけるR11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素原子数(以後C数という)1〜12、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチル)を表し、好ましくは水素原子またはC数1〜4の無置換直鎖アルキル基を表す。
R11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33はともに水素原子であることが好ましい。
【0026】
M1 にてmは0または1を表すが、1である方がより好ましい。
【0027】
M4 にてR41は置換してもよいアルキル基(好ましくはC数1〜12、例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、2−ヒドロキシエチル、メトキシエトキシエチル、ベンジル、アリル)または置換してもよい、アリール基(例えばC数6〜18のフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−プロピルフェニル、4−エトキシフェニル、4−ペンチルオキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ビフェニル、3−アセチルオキシフェニル、2−クロロフェニル)であり、好ましくはC数1〜6の無置換直鎖アルキル基またはフェニル基である。
一般式(I)の化合物にて好ましくは円盤状母核Dがトリフェニレン環であることが好ましく、さらに、一般式(II)〜(V)で表される 2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレンまたはヘキサアリールオキシトリフェニレンであることが、本発明の目的を達成するためにはより好ましい。
【0028】
ここで一般式(II)〜(V)で表される本発明の化合物について詳しく説明する。
一般式(II)のM1 、一般式(III) のM2 、一般式(IV)のM3 、一般式(V)のM4 はそれぞれ一般式(I)のM1 〜M4 と同義である。
【0029】
一般式(II)にて6つのR1 は同じでも異なってもよい、置換されてもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくとも一つは置換基M1 を有する。ここでR1 はアルキル基であることが好ましく、6つのR1 がすべてM1 を置換基として有し、かつすべて同じであることが好ましい。
【0030】
一般式(III)にて6つのR2 は同じでも異なってもよい、置換されてもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくとも一つは置換基M2 を有する。ここでR2 はアルキル基であることが好ましく、6つのR2 がすべてM2 を置換基として有し、かつすべて同じであることが好ましい。
【0031】
一般式(IV) にて6つのR3 は同じでも異なってもよい、置換されてもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくとも一つは置換基M3 を有する。ここでR3 はアルキル基であることが好ましく、6つのR3 がすべてM3 を置換基として有し、かつすべて同じであることが好ましい。
【0032】
一般式(V) にて6つのR4 は同じでも異なってもよい、置換されてもよいアルキル基またはアリール基を表すが、そのうち少なくとも一つは置換基M4 を有する。ここでR4 はアルキル基であることが好ましく、6つのR4 がすべてM4 を置換基として有し、かつすべて同じであることが好ましい。
【0033】
一般式(II)〜(V)のR1 〜R4 にて末端置換基M1 〜M4 が置換してなる残基は好ましくはC数1〜12の置換してもよいアルキレン基、またはC数6〜18の置換してもよいフェニレン基である。なお、本発明では-(CH2)2OCH2-や-CH2Ph- 、-PhCH2- 等も置換アルキレン基、置換フェニレン基等にみなす。
以下にその残基の好ましい例を具体的に挙げる。
【0034】
【化9】
【0035】
一般式(II)のR1 、一般式(III) のR2 、一般式(V)のR4 にて末端置換基M1 、M2 、M4 がそれぞれ置換してなる残基は好ましくはC数1〜8の無置換直鎖状アルキレン基であり、より好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレンである。
【0036】
一般式(IV)のR3 にて末端置換基M3 が置換してなる残基は好ましくはC数1〜8の無置換直鎖状アルキレン基または置換アルキレン基であり、より好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレン、-(CH2)2OCH2-、-(CH2)3OCH2-、-(CH2)4OCH2-である。
本発明の化合物としては、一般式(II)〜(V)のうち、一般式(II)、(III) 、(V)がより好ましく、一般式(III) 、(V)がさらに好ましく、一般式 (III) が特に好ましい。
【0037】
以下に本発明の一般式(I)または一般式(II)〜(V)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
【化19】
【0048】
【化20】
【0049】
【化21】
【0050】
【化22】
【0051】
【化23】
【0052】
【化24】
【0053】
本発明の一般式(I)〜(V)で表される化合物は液晶相、特にカラムナー液晶相またはディスコティックネマチック液晶相をとるものが多い。
本発明の一般式(I)〜(V)で表される化合物は単独で用いられてもよいが、任意の比で混合して用いられてもよく、本発明以外の種々の化合物と混合して用いられてもよい。
例えば、界面活性剤等の低分子、ポリカーボナート等の合成高分子、セルロース誘導体等の天然高分子由来の化合物、液晶性、非液晶性のいずれでも良く、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂として用いられるモノマーなどの分子間あるいは分子内に新たに結合を形成し得るもの、キシレン等の容易には新たな結合を形成し得ないもののいずれでも良い。混合組成物としては、特願平6−97443号および特願平7−41276号明細書に記載の円盤状化合物、更には特願平7−110511号、特願平7−221186号、特願平7−222785号明細書に記載の化合物を含んでもよい。
本発明の材料は、例えば鋳型を用いて種々の形状に成形して用いる、あるいは膜状にして用いることが可能である。
本発明の材料を膜状にして用いる場合、蒸着法やスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により支持体上に薄膜として形成できる。膜厚としては0.1μm 以上30μm 以下が好ましく、20μm 以下が好ましい。
【0054】
塗布の際には、該化合物を溶液とすることが好ましいが、用いられる溶媒としては、沸点が大気圧下30℃ないし200℃、好ましくは30℃ないし150℃、更に好ましくは30℃ないし130℃のものである。例えば、2−ブタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、酢酸エチル、1−ブタノール、フルオロベンゼン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、塩化メチレン等が挙げられる。
膜状にして用いる場合、積層することも可能である。積層する場合、本発明の材料を含む層のみで構成されていても良いが、支持体上に本発明の材料から成る層が少なくとも一層設けられたもので、用途に応じて該材料層の上下もしくは該材料層間に、異なる機能を発現する層(例えば、電荷発生層、光吸収層、電極層)、保護膜等の他の材料からなる層もしくは支持体が存在してよい。
【0055】
支持体素材としては例えば、ガラス、ゼオネックス(日本ゼオン)、ARTON(日本合成ゴム)、フジタック(富士フイルム)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンが挙げられる。支持体は必ずしも透明であることはなく、支持体上には必要に応じてアルミニウム、金、白金などの金属が蒸着されていてもインジウム−スズ−酸化物(ITO)のような導電性化合物が塗られていてもよい。
【0056】
保護膜用素材としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイミド無重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質及びシランカップリング剤などの有機物質を挙げることができる。また、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド及びステアリン酸メチルなどのラングミュア・ブロジェット法(LB法)により形成される累積膜も用いることができる。
【0057】
本発明で用いられる化合物が重合等により新たな結合の形成が可能な置換基を有している場合、熱あるいは光による結合形成が可能である。
すなわち本発明においては少なくとも片方の界面が気相と接した状態即ち一般的な塗布法により適当な支持体上に該液晶薄膜を形成し、乾燥後、液晶相形成温度範囲内の温度で、ディスコティックネマティック相またはディスコティック相を形成させつつ一定時間熱処理し、そのまま続いて熱重合させるかまたは光架橋重合させて後冷却することによって所望の薄膜を得ることができる。
紫外線による光重合開始剤を用いるラジカル重合やカチオン重合は一般に極めて重合速度が大きく、製造工程では生産性の点で好ましい。
【0058】
本発明における光重合開始剤としては、α−カルボニル化合物、アシロインエーテル、α−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組み合わせ、アクリジン及びフェナジン化合物、オキサジアゾール化合物等が挙げられる。本発明における光開始剤系の量は、溶媒を除いた塗布組成物の0.01%から20%の範囲で十分であり、更に好ましくは0.5%から5%で良好な結果を得る。
【0059】
更に本発明では、必要により、種々の有機アミン化合物を併用することができ、それによってその効果を増大せしめることができる。これらの有機アミン化合物としては、例えばトリエタノールアミン、ジエタノールアニリン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ミヒラーケトンが挙げられる。有機アミン化合物の添加量は全光重合開始剤の50〜200%が好ましい。
更に本発明で用いる光重合開始剤に必要に応じてN−フェニルグリシン、2−メルカプトベンゾチアゾール、N,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル等の水素供与性化合物を加えることによって更に光重合開始能力を高めることができる。
また、酸素による重合阻害を抑制するために、界面活性剤を少量添加することも効果的である場合が多い。
【0060】
エポキシ基の重合には、紫外線活性化カチオン触媒として、アリルジアゾニウム塩(ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボラート)、ジアリルヨードニウム塩、VIa族アリロニウム塩(PF−6、AsF6、SbF6のようなアニオンをもつアリルスルホニウム塩)が好ましく用いられる。
また重合用の光線としては、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)を必要に応じて用いることができるが、一般的には、紫外線が用いられる。その光線としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラットライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が挙げられる。
本発明の化合物の場合は、254nmなどの短波の紫外線は有効には用いられない場合もある。従って、光重合開始剤も下記の近紫外に吸収帯を持つ化合物が好ましく用いられ、光源も高圧水銀ランプやメタルハライドランプなど近紫外光を強く放射できるものが好ましく用いられる。
【0061】
【化25】
【0062】
熱により結合を形成せしめる場合、反応を促進するための物質を添加することも可能である。
例えば塩基、例えば水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムが挙げられる)、アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドが挙げられる)、水素化金属(例えば、水素化ナトリウム、水素化カルシウムが挙げられる)、アミン(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、1,4−ジアザ〔2,2,2〕ビシクロオクタン(DABCO)が挙げられる)、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる)、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが挙げられる)が挙げられる。
【0063】
また、例えば金属化合物(例えば、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ、オクタン酸スズ、亜鉛アセチルアセトナートが挙げられる)が挙げられる。
酸、例えば鉱酸(例えば、硫酸、塩酸が挙げられる)、カルボン酸(例えば、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、サリチル酸およびその誘導体が挙げられる)、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸が挙げられる)が挙げられる。
なお、重合は不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素)下で行われることが重合速度の点で好ましい。
【0064】
本発明の一般式(I)〜(V)で表される化合物またはその重合物を用いて作製した膜上には、目的によって金、白金、銀、マグネシウム、アルミニウムのような金属による電極層が作製されてもよい。その場合、蒸着法が一般によく用いられるが、化学的方法、電気的方法により作製してもよい。
【0065】
また、本発明の一般式(I)〜(V)で表される化合物を用いて光導電性材料を作製する場合、本発明の化合物を塗布、重合した薄膜のみを用いても良いが、その場合本発明の化合物からなる膜は紫外光にしか吸収を有さないものが多いため、光電荷発生するためには、レーザーでいえば例えばエキシマーレーザー、YAG第3高調波、N2 レーザー等の紫外光レーザーしか使用できないものが多い。それに対し、本発明の化合物からなる膜の上層または下層に可視光または赤外光を吸収して電荷を発生しうる電荷発生層を積層すれば、本発明の化合物からなる膜を電荷輸送層として用いて、可視光(例えばYAG第2高調波)または赤外光(例えばYAGレーザー、半導体レーザー)を用いた光電荷発生・輸送材料、すなわち光導電性材料の作製が可能である。
なお、本発明の化合物からなる膜は正孔輸送剤として用いられる方がより好ましい。
ここで、電荷発生層の作製法としては、一般に色素を適当な溶媒に溶解してスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの方法で塗布する方法、蒸着による方法、あるいは色素、顔料を適当なポリマー(ポリエステル、ポリエチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート等)とペイントシェーカー、サンドグラインダーミル等を用いて固体分散したものを同様に塗布する方法などが挙げられる。
【0066】
なお一般に、可視光を吸収する色素、顔料としてはフタロシアニン系、ペリレン系、多環キノン系、アゾ系が、赤外光を吸収する色素、顔料としてはフタロシアニン系、アズレニウム系などが用いられる。これらの電荷発生材料としては電子写真の分野で知られた化合物(例えば電子写真学会編、電子写真技術の基礎と応用、440〜442頁(コロナ社、1988年刊)に記載された化合物が挙げられる)を含む層が設けられてもよい。
【0067】
【実施例】
実施例1(化合物D−111、D−113、D−115の合成)
【0068】
【化26】
【0069】
特開平7−306317号に記載の方法により合成した 2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン1 9.0g(27.8mmol) 、クロライド2C 50g(0.332mol)、炭酸カリウム70.0g(0.5mol)、ヨウ化ナトリウム7.5g(50mmol)をジメチルアセトアミド200mlに溶解し、120℃にて6時間攪拌した。冷却後、水、酢酸エチルを加えて分液し、有機相を水で2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、シリカゲル−酢酸エチル:ヘキサン=1:1→2:1カラムで精製し、ヘキサアセチルオキシ体3C結晶25.1g(収率89.7%)を得た。
【0070】
3C 17.2g(17mmol)をエタノール100mlに溶解し、そこに水酸化ナトリウム12.2g(0.306mol)の水30ml溶液を加え2時間還流した。冷却後、塩酸を加えてpHを10とした後、食塩を加え、酢酸エチルで3回抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、ヘキサヒドロキシ体4C結晶11.5g(89.4%)を得た。
【0071】
4C 3.78g(5mmol)、トリエチルアミン10.2g(10.1mmol) 、ニトロベンゼン0.3gをジメチルアセトアミド50mlに溶解し、氷冷下攪拌した。ここにメタクリル酸クロライド6.27g(60mmol)をゆっくり滴下し、さらに60℃にて1時間攪拌した。
水、酢酸エチルを加えて分液し、有機相を水で2回洗浄したのち、開放系にて濃縮した。シリカゲル−酢酸エチル:ヘキサン=1:2→1:1カラムで精製し、メタノールから結晶化して、目的のD−115の白色結晶3.95g(収率67.8%)を得た。
NMRスペクトル(CDCl3,δ,ppm) 1.97(18H,S,-CH3)、2.0-2.2(24H,m,-CH2CH2CH2CH2-) 、4.31(24H,-OCH2-)、5.56(6H,S,=CH2) 、6.13(6H,S,=CH2) 、7.82(6H,S,aromatic)
DSC及び偏光顕微鏡による相転移温度測定
ディスコティック液晶相→71℃→等方相
【0072】
以下、クロライド2Cのかわりにそれぞれ2a、2bを用いる以外は全く同様にして目的のD−111、D−113を合成することができる。
【0073】
D−111、NMRスペクトル(CDCl3,δ,ppm) 1.97(18H,S,-CH3)、4.56(12H,t,-CH2O-)、4.67(12H,t,-CH2O-)、5.60(6H,S,=CH2) 、6.18(6H,S,=CH2) 、8.02(6H,S,aromatic)
DSC及び偏光顕微鏡による相転移温度測定
結晶相→84℃→ディスコティック液晶相→107℃→等方相
【0074】
D−113、NMRスペクトル(CDCl3,δ,ppm) 1.97(18H,S,-CH3)、2.34(12H,m,-CH2CH2CH2-) 、4.37(12H,t,-CH2O-)、4.50(12H,t,-CH2O-)、5.60(6H,S,=CH2) 、6.16(6H,S,=CH2) 、7.90(6H,S,aromatic)
DSC及び偏光顕微鏡による相転移温度測定
結晶相→70℃→ディスコティック液晶相→82℃→等方相
【0075】
実施例2(化合物D−112 、D−114 の合成)
【0076】
【化27】
【0077】
メタクリル酸クロライドのかわりに等モルのアクリル酸クロライドを用いる以外は同様にして、実施例1における4b、4cと反応させることにより目的のD−112、D−114を得ることができた。
【0078】
D−112、NMRスペクトル(CDCl3,δ,ppm) 2.32(12H,m,-CH2CH2CH2-) 、4.35(12H,m,-CH2O-)、4.50(12H,m,-CH2O-)、5.85(6H,d,-CH=CH2)、6.18(6H,t of t,-CH=CH2) 、6.47(6H,d,-CH=CH2)、7.88(6H,S,aromatic)
DSC及び偏光顕微鏡による相転移温度測定
結晶相→76℃→ディスコティック液晶相→83℃→等方相
【0079】
D−114、NMRスペクトル(CDCl3,δ,ppm) 1.95-2.15(24H,m,-CH2CH2CH2CH2-) 、4.30(24H,m,-OCH2-)、5.82(6H,d,-CH=CH2)、6.15(6H,d of d,-CH=CH2) 、6.44(6H,d,-CH=CH2)、7.86(6H,S,aromatic)
DSC及び偏光顕微鏡による相転移温度測定
ディスコティック液晶相→56℃→等方相
【0080】
実施例3(化合物D−92の合成)
【0081】
【化28】
【0082】
水酸化カルシウム53.4g(0.64mol)を600mlの水に溶解して攪拌し、ドライアイス−メタノール浴にて20℃を保ちながら臭素69.5g(0.435mol)を30分かけて滴下した。さらに250mlのエーテルを加え、−8℃を保ちながら、アルコール5 36.8g(0.375mol)を滴下し、さらに−8℃にて30分攪拌した。その後30℃にて1時間攪拌したあと再び氷水浴で10℃に冷却し、亜硫酸ナトリウム15g(14.4mmol) を加えて20分間攪拌した。塩酸72g、酢酸エチルを加えて分液し、硫酸鉄(II)6.3g、濃硫酸6.9gの130ml水溶液で洗浄し、10%炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄した。硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、蒸留(5mmHg 92℃)精製してブロマイド6の液体38.6g(収率58.3%)を得た。
【0083】
塩化銅(I)0.068g(0.68mmol) 、塩酸ヒドロキシルアミン0.23g(3.3mmol) をエチルアミン33%、水溶液13.5mlに溶解し、氷水冷下攪拌し、エチニルベンゼン7 4.7g(45mmol) /メタノール11ml溶液を滴下した。30℃に昇温した後ブロマイド6 7.97g(45mmol) /メタノール7ml溶液を滴下し、40℃にて1時間攪拌した。水、塩化メチレンを加えて分液し、有機相を水で2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮し、シリカゲル−酢酸エチル:ヘキサン=1:5→1:2カラムで精製し、ジアセチレンアルコール8の液体7.30g(収率81.8%)を得た。
【0084】
ジアセチレンアルコール8 6.94g(35mmol) 、ピリジン3.04g(38.5mmol) 、DMF0.1g溶液を攪拌し、塩化チオニル6.25g(52.5mmol)を加え60℃にて1時間加熱した。水、エーテルを加え分液し、有機相を水洗した。硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、ジアセチレンクロライド9の液体7.40g(収率97.4%)を得た。
【0085】
ジアセチレンクロライド9 3.80(17.6mmol) 、ヒドロキシ安息香酸エチル2.66g(16mmol) 、炭酸カリウム3.4g(24mmol) 、ヨウ化ナトリウム2.4g(16mmol) をジメチルアセトアミド50mlに溶解し、70℃にて2時間攪拌した。冷却後、水、酢酸エチルを加えて分液し、有機相を水で2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、シリカゲル−酢酸エチル:ヘキサン=1:10カラムで精製し、エステル10の液体3.60g(収率65.0%)を得た。
【0086】
エステル10 3.46g(10mmol)をエタノール20mlに溶解し、さらに水酸化カリウム1.4g(25mmol)/水10mlを加え60℃にて1時間攪拌した。冷却後塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチルを加えて分液し、有機相を水で2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥濃縮しカルボン酸11の固体3.18g(収率100%)を得た。
【0087】
メタンスルホニルクロライド1.15g(10mmol)をテトラヒドロフラン10mlに溶解、攪拌し、氷−メタノール浴下、カルボン酸11 3.18g(10mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.42g(11mmol)のテトラヒドロフラン10ml溶液を加え、5℃にて20分攪拌した。さらに、4−ジメチルアミノピリジン0.12g(1mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.29g(10mmol)、ヘキサヒドロキシトリフェニレン1 0.32g(1mmol)のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、室温に戻し5時間攪拌した。水、塩化メチレンを加えて分液し、有機相を水で2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、シリカゲル−酢酸エチル:ヘキサン=1:3→塩化メチレン:ヘキサン=1:1カラムで精製した。
【0088】
メタノールから再結晶し、目的のD−92の結晶1.68g(収率78.9%)を得た。
NMRスペクトル(CDCl3,δ,ppm) 1.7-1.9(12H,m,-CH2CH2CH2-)、1.9-2.1(12H,m,-CH2CH2CH2-)、2.50(12H,t,-CH2C≡C-) 、3.96(12H,t,-OCH2-)、6.65(12H,d,aromatic)、7.2-7.4(18H,m,aromatic) 、7.48(12H,m,aromatic)、7.88(12H,d,aromatic)、8.34(6H,S,aromatic)
DSC及び偏光顕微鏡による相転移温度測定
液晶相→135℃→ディスコティック液晶相→147℃→等方相
【0089】
実施例4(薄膜作成−1)
2cm×2cmのITOコートガラス(一部電極とするためテープでマスクした)上に本発明の化合物D−112の酢酸エチル20wt%溶液100μリットルを500→1000rpm にてスピンコートで塗布してD−112の薄膜を作成した。メトラー社製FP-82 ホットステージ上で加熱し、偏光顕微鏡で相変化挙動を観測したところ、結晶相、ディスコティック液晶相を経て83℃にて暗視野となり等方相へ転移した。この薄膜を70℃にて放置したところ、過冷却状態にてディスコティック液晶状態へと相転移した。
【0090】
ここで紫外線照射装置(ULTRA-VIOLET PRODUCTS 社製 UVSL-588(16W)) を使用し、光源を膜から14cm離した状態にてアルゴン雰囲気下にて254nmの光を20分光照射した。この状態では顕微鏡視野内のディスコティック液晶相の形態に変化は見られなかった。さらに120℃まで昇温しても等方相に転移することはなく、また25℃に冷却しても結晶相に転移することはなく、これはディスコティック液晶相を保ったまま重合させることが出来たことを示している。なお、この膜は素子を作成するのに十分な強固を有する。膜厚は8.5μm であった。この薄膜サンプルをD−112−70と名付ける。
【0091】
実施例5(薄膜作成−2)
D−112の塩化メチレン20wt%溶液に重合開始剤イルガキュア907(IRG-907,チバガイギー社製)をD−112の0.03wt%を加え、光重合を空気下で行った他は、実施例4と同様実験を行い、25〜120℃の範囲でディスコティック液晶相を保つ十分な強固さの薄膜を作成することができた。膜厚は5.0μm であった。
【0092】
実施例6(薄膜作成−3)
実施例4にて、過冷却時の光重合温度を60℃とした以外は全く同様にして薄膜D−112−60を作製した。ここでも25〜120℃の範囲でディスコティック液晶相を保つ十分な強固さの薄膜を作成することができた。膜厚は4.4μm であった。
【0093】
実施例7(薄膜作成−4)
実施例4にて、D−112のかわりにD−114を用い60℃に加熱した後過冷却での重合温度を30℃とした以外は全く同様にして薄膜D−114−30を作製した。この薄膜も25〜120℃の範囲にてディスコティック液晶相を保ち、十分な強固さを有する。膜厚は5.0μm であった。
【0094】
実施例8(正孔ドリフト移動度測定用サンプルの作製)
トリスアゾ顔料21 70mg及びポリエステルのバイロン200(東洋紡社製)70mgをテトラヒドロフラン8ml、ガラスビーズ1mmφと共にマヨネーズびんに入れてペイントシェーカーにて固体分散した。
【0095】
【化29】
【0096】
実施例4および6で作製した、ITOガラス上の薄膜D−112−70、D−112−60、D−114−30上に前記トリスアゾ顔料21の固体分散テトラヒドロフラン溶液50μリットルを500rpm でスピンコートとし、電荷発生層を作成した。乾燥後、さらに電極として金を約1000Å真空蒸着して、正孔ドリフト移動度測定用サンプルD−112−70−G、D−112−60−G、D−114−30−Gを作製した。
【0097】
実施例9(正孔ドリフト移動度の測定)
Time of Flight法により、正孔ドリフト移動度の測定を行った。Time of Flight法による測定については多くの文献、成書等に記載されているが、たとえば電子写真学会誌第22巻第1号69頁(1983年)に詳しく記載されている。
【0098】
ITOガラスを負極に、金を正極につないで200V の電圧(約2〜4×105V/cmの電場)を印加し、Q−スイッチNd:YAGレーザーの第二高調波(532nm) を光源(160mW/cm2)として25℃にてITO側から照射した。回路に2000Ωの抵抗とオシロスコープを接続し、得られた光電流の減哀曲線より正孔ドリフト移動度μ=L2/vxtT cm2/vs(L:膜厚、V:電圧、tT :電荷移動時間)を求めた。結果を比較例とともに表1にまとめて記す。
【0099】
【表1】
【0100】
現在電子写真に主に用いられている公知のポリビニルカルバゾール22やポリマー分散されたTPD23等の値が10-5〜10-6cm2/v.s であることに比べると、本発明の化合物D−112及びD−114から成る薄膜は1×10-3以上の非常に大きい正孔ドリフト移動速度を与えることがわかる。
特にD−122では、本来は結晶相である測定温度の25℃においても、本発明の光重合薄膜D−112−70−G、D−112−60−Gは過冷却状態でのディスコティック液晶相を保ったまま固まっていることを示唆している。なお、電圧を逆にかけると、正孔よりは遅いものの電子の移動も観測され、電子輸送材料としても機能できる。
【0101】
それに対しD.AdamらのBer.Bunsenges.Phys.Chem.,97 1366(1993)、Phys.Rev.Lett.,70 457(1993) に記載された、ヘキサペンチルオキシトリフェニレン24は液晶セル中、77℃のディスコティック液晶相にて10-3cm2/v.s という本発明並の正孔ドリフト移動速度を示すが、24は重合性基を有さないため液晶相のまま固めることができない。さらに26℃では深いトラップを有する結晶相に転移してしまい、10-5cm2/v.s 以下と本発明よりはるかに低い正孔ドリフト移動速度しか示さなくなる。また24のみを用いて強固な薄膜を作成することも不可能である。
【0102】
【発明の効果】
以上のことから明らかなように、本発明の一般式(I)〜(V)で表される化合物を塗布した膜を、液晶相をとりうる温度にて重合させることにより、広い温度範囲にて液晶相の構造を保ち、高い電荷輸送性を有する強固な薄膜を作成することができる。
高い電荷輸送性と、強固さを有する本発明の薄膜は電子写真のみならず電界発光素子、二次電池、燃料電池等様々な分野への応用が可能である。
Claims (2)
- 光又は熱エネルギーにより反応して化学結合を生成し得る置換基を有する円盤状化合物又はその重合物からなる電荷輸送材料において、前記円盤状化合物が下記一般式( IV )又は( V ):
(一般式( IV )中、トリフェニレン環に酸素原子を介して結合する6つのR 3 は置換してもよいアルキル基又はアリール基を表し、全ての R 3 は同じであっても異なっていてもよく、 R 3 の少なくとも1つは置換基 M 3 を有し、置換基 M 3 の R 31 、 R 32 、 R 33 はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。また一般式( V )中、トリフェニレン環に酸素原子を介して結合する6つの R 4 は置換してもよいアルキル基又はアリール基を表し、全ての R 4 は同じであっても異なっていてもよく、 R 4 の少なくとも1つは置換基 M 4 を有し、置換基 M 4 の R 41 は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)により表される化合物であることを特徴とする電荷輸送材料。 - 光を吸収して電荷分離を行い電荷を発生する電荷発生層と、請求項1に記載の一般式( IV )又は(V)で表される化合物またはその重合物からなる電荷輸送層とからなることを特徴とする光導電性材料。
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