JP4104108B2 - 有機色素増感型金属酸化物半導体電極及びこの半導体電極を有する太陽電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機色素増感型太陽電池及びこの太陽電池に有利に使用することができる有機色素増感型金属酸化物半導体電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギー、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池が注目され、開発が進められている。
【0003】
太陽電池は、光電変換材料として、結晶性シリコン、アモルファスシリコンを用いたものが主流である。しかしながら、このような結晶性シリコン等を形成するには多大なエネルギーを要し、従ってシリコンの利用は、太陽光を利用する省エネルギー電池である太陽電池の本来の目的とは相反するものとなっている。また多大なエネルギーを使用する結果として、光電変換材料としてシリコンを用いる太陽電池は高価なものと成らざるを得ない。
【0004】
上記光電変換材料は、電極間の電気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である。例えば、光電変換材料に光を照射すると、一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動する。対電極に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一方の電極にもどる。すなわち、光電変換材料は光エネルギーを電気エネルギーとして連続して取り出せる材料であり、このため太陽電池に利用される。
【0005】
光電変換材料として、シリコンを用いず、有機色素で増感された酸化物半導体を用いた太陽電池が知られている。Nature, 268 (1976), 402頁に、酸化亜鉛粉末を圧縮成形し、1300℃で1時間焼結して形成した焼結体ディスク表面に有機色素としてローズベンガルを吸着させた金属酸化物半導体電極を用いた太陽電池が提案されている。この太陽電池の電流/電圧曲線は、0.2Vの起電圧時の電流値は約25μA程度と非常に低く、その実用化は殆ど不可能と考えられるものであった。しかしながら、前記シリコンを用いる太陽電池とは異なり、使用される酸化物半導体及び有機色素はいずれも大量生産されており、且つ比較的安価なものであることから、材料の点からみると、この太陽電池は非常に有利であることは明らかである。
【0006】
光電変換材料として、前記のように有機色素で増感された酸化物半導体を用いた太陽電池としては、前記のもの以外に、たとえば、特開平1−220380号公報に記載の金属酸化物半導体の表面に、遷移金属錯体などの分光増感色素層を有するもの、また、特表平5−504023号に記載の、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に、遷移金属錯体などの分光増感色素層を有するものが知られている。
【0007】
上記太陽電池は実用性のある電流/電圧曲線が得られない。電流/電圧曲線が実用性レベルに達した分光増感色素層を有する太陽電池として、特開平10−92477号公報に、酸化物半導体微粒子集合体の焼成物からなる酸化物半導体膜を用いた太陽電池が開示されている。このような半導体膜は、酸化物半導体微粉末のスラリーを透明電極上に塗布し、乾燥させ、その後500℃、1時間程度で焼成させることにより形成している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平10−92477号公報の太陽電池は、いわゆるゾルゲル法により形成された酸化物半導体微粒子集合体の焼成物の酸化物半導体膜を有し、この酸化物半導体膜は透明電極上に設けられている。そして、この透明電極も太陽電池の実用性に大きく影響を与えるため、通常、透明電極は低抵抗のITO等が使用されている。
【0009】
しかしながら、このようなITOの透明電極であっても、太陽電池のような大面積を必要とする用途には、まだ十分に低抵抗とは言えず、満足するものではない。従って、このような透明電極としては、さらなる低抵抗化(望ましくは10Ω/□程度以下)が望まれている。
【0010】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、低抵抗で、且つ低温で簡易に形成することができる透明電極を含む有機色素増感型金属酸化物半導体電極、及びこの半導体電極を有する有機色素増感太陽電池を提供することにある。
【0011】
また本発明の目的は、大面積の有機色素増感太陽電池を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表面に透明電極を有する基板、その透明電極上に形成された金属酸化物半導体膜、及びその半導体膜表面に吸着した有機色素を含む有機色素増感型金属酸化物半導体電極において、前記透明電極が、金属化合物膜と金属膜が交互に積層されてなる積層膜で、且つこの交互積層膜が、(n+1)層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された(n+1)層構造である[但し、nが2〜12の整数を表す。]か、或いはn層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された2n層構造である[但し、nが2〜12の整数を表す。]ことを特徴とする有機色素増感型金属酸化物半導体電極;及び上記の有機色素増感型金属酸化物半導体電極と、この電極に対向して設けられた対電極とからなり、さらに両電極間にレッドクス電解質が注入されてなる有機色素増感型太陽電池にある。
【0013】
上記有機色素増感型金属酸化物半導体電極及び太陽電池において、金属化合物膜が、気相成膜法、特に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法またはプラズマCVD法により形成されていることが好ましい。また金属化合物膜は、一般に金属酸化物、窒化物及び炭化物から選択される少なくとも1種からなるもので、例えば酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化鉛及び酸化銀から選択される少なくとも1種の誘電体金属酸化物;或いは酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。金属膜が、気相成膜法、特に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法またはプラズマCVD法により形成されていることがこのましい。金属膜が、金、銀、プラチナ、ニッケルからなる膜、或いは銀/プラチナ合金膜、金/銀合金膜、銀/プラチナ積層膜又は金/銀積層膜であることが好ましい。
【0014】
金属化合物膜と金属膜の交互積層膜が、(n+1)層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された(n+1)層構造で、nが3〜9を表すことが好ましい。金属化合物膜と金属膜の交互積層膜が、n層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された2n層構造で、nが3〜9を表すことが好ましい。透明電極の400〜700nmの波長範囲における透過率が60〜80%であることが好ましい。
【0015】
金属酸化物半導体膜が、気相成膜法又はゾルゲル法により形成されていることが好ましい。気相成膜法が、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法またはプラズマCVD法であることが一般的である。金属酸化物半導体膜が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ又は酸化アンチモン、或いはこれらの金属酸化物に他の金属若しくは他の金属酸化物をドーピングしたものであることが望ましい。特に金属酸化物半導体膜が酸化チタンであり、とりわけアナタース型酸化チタンが好ましい。金属酸化物半導体の膜厚が、10nm以上であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の有機色素増感型金属酸化物半導体電極及び太陽電池の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の有機色素増感太陽電池の実施形態の一例を示す断面図である。
【0018】
図1において、基板1、その上に透明電極2が設けられ、透明電極上に分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜3が形成され、その上方に透明電極と対向して対電極4が設置されており、側部が封止剤5により封止され、さらに金属酸化物半導体膜3と対電極4との間に電解質(溶液)6が封入されている。なお、本発明の金属酸化物半導体電極は、上記基板1、その上に透明電極2及び、透明電極上に分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜3から基本的に構成される。
【0019】
本発明の透明電極は、前記のように、金属化合物の薄層と金属の薄層とが交互に積層された積層膜であり、両者の屈折率(屈折率、必要により減衰係数)の差を用いることにより、光学的にある波長領域の光を選択的に透過反射させることができるものである。この波長領域を設定することにより、透明性を保持しながら、低抵抗を有する透明電極を得ることができる。さらにこの透明電極は低温で簡易に作製できるので、耐熱性の低い基板等に損傷を与えることがない。
【0020】
本発明では、抵抗を下げるために金属の薄層を利用するが、この金属層の熱劣化を防止するために、金属化合物薄層で保護する形にしている。これにより、金属層がもたらす不透明性を抑制しながら、極めて低い抵抗の透明電極を獲得することが可能となったものである。
【0021】
図2に、本発明の透明電極の構造の一例の断面図を示す。基板S上に、金属化合物膜MO1、金属層M1、金属化合物膜MO2、金属層M2、金属化合物膜MO3、金属層M3及び金属化合物膜MO4が、この順で積層されている。一般に、積層数は、多いほど低抵抗化が可能であるが、実際の使用に際し、透明性、経済性等を考慮して、積層数は適宜決定される。
【0022】
金属化合物膜と金属膜の交互積層膜は、図2に示されるように、(n+1)層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された(n+1)層構造[但し、nが2〜12の整数を表す。]である。nが4以上を表すことが好ましい。特にnが3〜9であることが好ましい。
【0023】
あるいは、金属化合物膜と金属膜の交互積層膜は、n層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された2n層構造[但し、nが2〜12の整数を表す。]である。nが4以上を表すことが好ましい。特にnが3〜9であることが好ましい。
【0024】
前記金属化合物膜の膜厚は、一般に5〜500nm、特に10〜200nmが好ましく、金属膜は、一般に0.1〜100nm、特に1〜50nmが好ましい。これらの膜厚は、通常積層数により相違する。
【0025】
透明電極の400〜700nmの波長範囲における透過率が60〜80%であることが好ましい。透明電極の表面抵抗は、10Ω/□以下、さらに3Ω/□以下であることが好ましい。
【0026】
前記金属化合物の材料としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)等の金属酸化物、窒化チタン及び窒化アルミニウム等の金属窒化物、炭化ケイ素及び炭化チタン等の金属炭化物を挙げることができる。酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)が好ましく、特にITOが好ましい。
【0027】
金属膜の材料としては、金、銀、プラチナ等の貴金属、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛等の一般金属、さらに銀/プラチナ合金、金/銀合金を挙げることができる。また、銀/プラチナ積層膜又は金/銀積層膜であっても良い。好ましくは銀、金、プラチナである。
【0028】
金属化合物膜及び金属膜は、気相成膜法、特に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法またはプラズマCVD法により形成することがこのましい。特に、スパッタリング法、電子ビーム加熱型真空蒸着が好適で、とりわけスパッタリング法が好ましい。
【0029】
また、酸化物半導体形成時に熱を必要とする場合、上記の構造では熱的に不安定となることも考えられるので、金属化合物膜と金属膜との間に、異なる金属化合物の層、又は金属層を設けることが好ましい。例えば、窒化ケイ素、窒化アルミ、ニッケル−クロムメタルの層を挙げることができる。これらは通常1〜2層設けられる。
【0030】
上記基板1としては、通常ガラス板であり、通常珪酸塩ガラスである。しかしながら、可視光線の透過性を確保できる限り、種々のプラスチック基板等を使用することができる。基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス板は、化学的に、或いは熱的に強化させたものが好ましい。プラスチック基板としては、ポリエステル(例、PET)の板、フィルムの使用が好ましい。本発明の透明電極は低温で形成可能であり、プラスチックの使用に有利である。
【0031】
上記透明電極2は前述の本発明のものが使用される。
【0032】
上記透明電極上には、光電変換材料用半導体である、分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜が形成される。本発明の金属酸化物半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの公知の半導体の一種または二種以上を用いることができる。特に、安定性、安全性の点から酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしてはアナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの各種の酸化チタンあるいは水酸化チタン、含水酸化チタンが含まれる。本発明ではアナタース型酸化チタンが好ましい。また金属酸化物半導体膜は微細な結晶構造を有することが好ましい。また多孔質膜であることも好ましい。金属酸化物半導体の膜厚が、10nm以上であることが一般的であり、100〜1000nm好ましい。
【0033】
本発明では、金属酸化物半導体膜は、気相成膜法(真空成膜法)、例えば物理蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、DCマグネトロンスパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法またはプラズマCVD法、或いは2極スパッタリング、高周波スパッタリングにより形成されている。特に、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、対向ターゲット方式スパッタリング、電子ビーム加熱型真空蒸着が好適である。気相成膜の際、ターゲットに金属、金属酸化物が使用されるが、高純度の金属酸化物の使用が好ましい。
【0034】
前記のようにして得られた基板上の酸化物半導体膜表面に、有機色素(分光増感色素)を単分子膜として吸着させる。
【0035】
分光増感色素は、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つものであり、本発明では、種々の金属錯体や有機色素の一種または二種以上を用いることができる。分光増感色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基の官能基を有するものが半導体への吸着が早いため、本発明では好ましい。また、分光増感の効果や耐久性に優れているため、金属錯体が好ましい。金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、特開平1−220380号公報、特許出願公表平5−504023号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体を用いることができる。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。シアニン系色素としては、具体的には、NK1194、NK3422(いずれも日本感光色素研究所(株)製)が挙げられる。メロシアニン系色素としては、具体的には、NK2426、NK2501(いずれも日本感光色素研究所(株)製)が挙げられる。キサンテン系色素としては、具体的には、ウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセインが挙げられる。トリフェニルメタン色素としては、具体的には、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレットが挙げられる。
【0036】
有機色素(分光増感色素)を導電体膜に吸着させるこのためには、有機色素を有機溶媒に溶解させて形成した有機色素溶液中に、常温又は加熱下に酸化物半導体膜を基板ととも浸漬すればよい。前記の溶液の溶媒としては、使用する分光増感色素を溶解するものであればよく、具体的には、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドを用いることができる。
【0037】
このようにして、本発明の有機色素増感型金属酸化物半導体電極(光電変換材料用半導体)を得る。
【0038】
このようにして得られた基板上に、透明電極及び有機色素吸着金属酸化物半導体が形成された有機色素増感型金属酸化物半導体電極を用いて、太陽電池を作製する。すなわち、透明電極(透明性導電膜)をコートしたガラス板などの基板上に光電変換材料用半導体膜を形成して電極とし、次に、対電極として別の透明性導電膜をコートしたガラス板などの基板を封止剤により接合させ、これらの電極間に電解質を封入して太陽電池とすることができる。
【0039】
本発明の半導体膜に吸着した分光増感色素に太陽光を照射すると、分光増感色素は可視領域の光を吸収して励起する。この励起によって発生する電子は半導体に移動し、次いで、透明導電性ガラス電極を通って対電極に移動する。対電極に移動した電子は、電解質中の酸化還元系を還元する。一方、半導体に電子を移動させた分光増感色素は、酸化体の状態になっているが、この酸化体は電解質中の酸化還元系によって還元され、元の状態に戻る。このようにして、電子が流れ、本発明の光電変換材料用半導体を用いた太陽電池を構成することができる。
【0040】
上記電解質(レドックス電解質)としては、I−/I3 −系や、Br−/Br3 −系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は、従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I−/I3 −系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。電解質は、液体電解質又はこれを高分子物質中に含有させた固体高分子電解質であることができる。液体電解質において、その溶媒としては、電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。対極としては、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、I3 −イオン等の酸化型のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
【0041】
本発明の太陽電池は、前記酸化物半導体電極、電解質及び対極をケース内に収納して封止するが、それら全体を樹脂封止しても良い。この場合、その酸化物半導体電極には光があたる構造とする。このような構造の電池は、その酸化物半導体電極に太陽光又は太陽光と同等な可視光をあてると、酸化物半導体電極とその対極との間に電位差が生じ、両極間に電流が流れるようになる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
【0043】
[実施例1]
(1)透明電極の作製
マグネトロンスパッタリング装置を用いて、透明電極膜を作製した。
【0044】
5×5cmのガラス基板(厚さ:2mm)上に、100mm×400mmのITO(インジウム−スズ酸化物)セラミックターゲットを用い、アルゴンガスを50cc/分、酸素ガスを3cc/分で供給した後、装置内の圧力を5ミリトール(mTorr)に設定し、供給電力2000Wの条件で、下表の成膜時間の間スパッタリングを行い、下表の膜厚のITO膜を形成した。
【0045】
上記ITO膜とITO膜の間にAg膜を設けるため、ITO膜上に、直径100mmの銀ターゲットを用い、アルゴンガスを50cc/分で供給した後、装置内の圧力を5ミリトール(mTorr)に設定し、供給電力500Wの条件で、下表の成膜時間の間スパッタリングを行い、下表の膜厚のAg膜を形成した。
【0046】
上記条件でITO膜とAg膜を交互に形成した。
【0047】
【表1】
【0048】
これによりITO膜とAg膜との7層の交互積層膜(図2参照)を基板上に形成し、透明電極を得た。表面抵抗は2Ω/□であった。
【0049】
(2)金属酸化物半導体膜の作製
対向ターゲット方式真空蒸着装置を用いて、上記の積層型透明電極ガラス上に、100mm×400mmの金属チタンターゲットを2枚配置し、酸素ガスを5cc/分、アルゴンガスを5cc/分で供給した後、装置内の圧力を5ミリトール(mTorr)に設定し、供給電力10kW、60分間の条件でスパッタリングを行い、厚さ3000Åの酸化チタン膜を形成した。
【0050】
(3)分光増感色素の吸着
シス−ジ(チオシアナト)−N,N−ビス(2,2’−ビピリジル−4−カルボキシレート−4’−テトラブチルアンモニウムカルボキシレート)ルテニウム(II)で表される分光増感色素をエタノールに溶解した。この分光増感色素の濃度は3×10−4モル/lであった。次に、このエタノールの液体に、膜状の酸化チタンを形成した前記の基板を入れ、室温で18時間浸漬して、本発明の金属酸化物半導体電極を得た。この試料の分光増感色素の吸着量は、酸化チタン膜の比表面積1cm2あたり10μgであった。
【0051】
(4)太陽電池の作製
前記の金属酸化物半導体電極を一方の電極として備え、対電極として、フッ素をドープした酸化スズをコートし、さらにその上に白金を担持した透明導電性ガラス板を用いた。2つの電極の間に電解質を入れ、この側面を樹脂で封入した後、リード線を取付けて、本発明の太陽電池を作製した。なお、前記の電解質は、アセトニトリルの溶媒に、ヨウ化リチウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、ヨウ素及びt−ブチルピリジンを、それぞれの濃度が0.1モル/l、0.3モル/l、0.05モル/l、0.5モル/lとなるように溶解したものを用いた。
【0052】
得られた太陽電池に、ソーラーシュミレーターで100W/m2 の強度の光を照射したところ、Voc(開回路状態の電圧)は0.61Vであり、Joc(回路を短絡したとき流れる電流の密度)は1.42mA/cm2 であり、FF(曲線因子)は0.59であり、η(変換効率)は5.10%であった。これは太陽電池として有用であることがわかった。
【0053】
[実施例2]
透明電極作製の際、ガラス板として30mm×30mmのものを使用した以外、実施例1と同様にして太陽電池を作製した。
【0054】
得られた太陽電池に、ソーラーシュミレーターで100W/m2 の強度の光を照射したところ、Voc(開回路状態の電圧)は0.63であり、Joc(回路を短絡したとき流れる電流の密度)は1.45mA/cm2 であり、FF(曲線因子)は0.56であり、η(変換効率)は5.12%であった。これは太陽電池として有用であることがわかった。
【0055】
[比較例1]
透明電極の作製を下記のように行った(従来の透明電極の作製)以外、実施例1と同様にして太陽電池を作製した。
(2)透明電極の作製
マグネトロンスパッタリング装置を用いて、透明電極膜を作製した。
【0056】
5×5cmのガラス基板(厚さ:2mm)上に、100mm×400mmのITO(インジウム−スズ酸化物)セラミックターゲットを用い、アルゴンガスを50cc/分、酸素ガスを3cc/分で供給した後、装置内の圧力を5ミリトール(mTorr)に設定し、供給電力2000Wの条件で、3000Åの膜厚のITO膜を形成した。表面抵抗は10Ω/□であった。
【0057】
得られた太陽電池に、ソーラーシュミレーターで100W/m2 の強度の光を照射したところ、Voc(開回路状態の電圧)は0.60Vであり、Joc(回路を短絡したとき流れる電流の密度)は1.20mA/cm2 であり、FF(曲線因子)は0.67であり、η(変換効率)は4.80%であった。これは前記実施例の太陽電池に比較して変換効率が低く、太陽電池として有用であるとは言えない。
【0058】
[比較例2]
透明電極作製の際、ガラス板として30mm×30mmのものを使用した以外、実施例1と同様にして太陽電池を作製した。
【0059】
得られた太陽電池に、ソーラーシュミレーターで100W/m2 の強度の光を照射したところ、Voc(開回路状態の電圧)は0.76Vであり、Joc(回路を短絡したとき流れる電流の密度)は0.95mA/cm2 であり、FF(曲線因子)は0.60であり、η(変換効率)は4.30%であった。これは前記実施例の太陽電池に比較して変換効率が相当低く、太陽電池として有用であるとは言えない。
【0060】
前記の実施例及び比較例から明らかなように、実施例1では、透明電極が本発明の多層膜を使用しているため、抵抗値が低く、実施例2に示すように面積が大きくなっても光電変換効率がほとんど低下しなかった。一方、透明電極としてITO膜を使用した場合、比較例2のように面積を大きくした場合、極端な光電変換効率の低下が見られた。
【0061】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明の有機色素増感型金属酸化物半導体電極型太陽電池は、低温で簡易に得られる、低抵抗の特定の透明電極を有する有機色素増感太陽電池であり、大面積用太陽電池としての十分な性能を備えている。即ち、本発明の太陽電池は、特に大面積でも光電変換効率に優れた有機色素増感太陽電池である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池の実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の透明電極の構造の一例の断面図を示す。
【符号の説明】
1 基板
2 透明電極
3 分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜
4 対電極
5 封止剤
6 電解質
S 基板
MO1、MO2、MO3、MO4 金属化合物膜
M1、M2、M3 金属膜
Claims (17)
- 表面に透明電極を有する基板、その透明電極上に形成された金属酸化物半導体膜、及びその半導体膜表面に吸着した有機色素を含む有機色素増感型金属酸化物半導体電極において、前記透明電極が、金属化合物膜と金属膜が交互に積層されてなる積層膜で、且つこの交互積層膜が、(n+1)層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された(n+1)層構造である[但し、nが2〜12の整数を表す。]か、或いはn層の金属化合物膜と、n層の金属膜が、交互に積層された2n層構造である[但し、nが2〜12の整数を表す。]ことを特徴とする有機色素増感型金属酸化物半導体電極。
- 金属化合物膜が、気相成膜法により形成されている請求項1に記載の半導体電極。
- 気相成膜法が、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法またはプラズマCVD法である請求項2に記載の半導体電極。
- 金属化合物膜が、金属酸化物、窒化物及び炭化物から選択される少なくとも1種からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の半導体電極。
- 金属化合物膜が、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化鉛及び酸化銀から選択される少なくとも1種の誘電体金属酸化物からなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の半導体電極。
- 金属化合物膜が、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)から選択される少なくとも1種からなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の半導体電極。
- 金属膜が、気相成膜法により形成されている請求項1に記載の半導体電極。
- 気相成膜法が、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法またはプラズマCVD法である請求項7に記載の半導体電極。
- 金属膜が、金、銀、プラチナ、ニッケルからなる膜、或いは銀/プラチナ合金膜、金/銀合金膜、銀/プラチナ積層膜又は金/銀積層膜である1〜8のいずれかに記載の半導体電極。
- 金属酸化物半導体膜が、気相成膜法又はゾルゲル法により形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の半導体電極。
- 気相成膜法が、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法またはプラズマCVD法である請求項10に記載の半導体電極。
- 金属酸化物半導体膜が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ又は酸化アンチモン、或いはこれらの金属酸化物に他の金属若しくは他の金属酸化物をドーピングしたものである請求項1〜11のいずれかに記載の半導体電極。
- 金属酸化物半導体膜が、酸化チタンである請求項1〜12のいずれかに記載の半導体電極。
- 金属酸化物半導体膜が、アナタース型酸化チタンである請求項1〜13のいずれかに記載の半導体電極。
- 金属酸化物半導体の膜厚が、10nm以上である請求項1〜14のいずれかに記載の半導体電極。
- 基板がプラスチック板である請求項1〜15のいずれかに記載の半導体電極。
- 請求項1〜16に記載の有機色素増感型金属酸化物半導体電極と、この電極に対向して設けられた対電極とからなり、さらに両電極間にレッドクス電解質が注入されてなる有機色素増感型太陽電池。
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