JP4777592B2 - 対極及びこれを備えた色素増感型太陽電池 - Google Patents
対極及びこれを備えた色素増感型太陽電池 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は対極及びこれを備えた色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化やエネルギー問題に対する関心の高まりとともに太陽電池の様々な開発が進められている。その太陽電池の中でも、色素増感型太陽電池はグレッツェルらにより提案されて以来、使用する材料が安価であること、比較的シンプルなプロセスで製造できること等の利点からその実用化が期待されている。
【0003】
このような色素増感型太陽電池においては、電解質中に存在する酸化還元対(例えば、I3 -/I-等)の酸化体を還元体に還元する還元反応(例えば、I3 -をI-に還元する還元反応)を速やかに進行させることが可能な電極特性を有する対極が求められている。このような対極としては、例えば、導電性を有する基板上に、白金触媒前駆体インキを印刷したのち、加熱することによって触媒(白金膜)に変化させた白金触媒電極が知られている(例えば、特開2001−250595号公報)。なお、上記導電性を有する基板としては、ガラスなどの基板上にITO、SnO2、ZnO等の薄膜が形成された透明電極や、ステンレス等の金属からなる基板が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−250595号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上述した従来の対極のように、白金触媒前駆体インキを導電性を有する基板上に塗布後、加熱処理し、白金の凝集物を形成させることにより還元触媒膜(白金膜)を設けた場合であっても、電解質中に存在する酸化還元対(例えば、I3 -/I-等)の酸化体を還元体に還元する還元反応(例えば、I3 -をI-に還元する還元反応)を速やかに進行させることが充分にできず、優れた電極特性を得ることができていないことを見出した。また、本発明者らは、このような対極を備えた色素増感型太陽電池は、充分なエネルギー変換効率を得ることが未だできていないという問題があることも見出した。
【0006】
また、従来の対極の場合には、例えば、透明導電性ガラスの透明導電膜がSnO2膜である場合には、塩化白金酸と透明導電膜であるSnO2膜とが反応し、透明導電性ガラス基板の抵抗が増大して、電極特性を低下させる問題があった。
【0007】
また、従来の対極においては、加熱処理の条件によって白金(Pt)粒子の凝集が容易に起こり、還元能が低下することにより、電極特性を低下させるという問題があった。
【0008】
さらに、従来の対極においては、対極の作製時における加熱条件、雰囲気管理などを精密に調節しない場合には、多孔質膜中における白金粒子の分散状態にばらつきが発生し、各ロットにおける電池性能のばらつきを引き起こす要因となるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電解質中に存在する酸化還元対の酸化体を還元体に還元する還元反応を速やかに進行させることのできる、優れた電極特性を有する対極、及び、その対極を備えており優れたエネルギー変換効率を得ることができる色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、対極の平板状の基板の一方の面に、電解質層に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有している導電性材料からなる多孔質膜を形成することにより、対極における還元反応速度を増大させることができることを見出した。また、本発明者らは、導電性を有する金属酸化物材料からなる多孔質膜を形成し、更に、該多孔質膜中に電解質層中に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有する材料からなる触媒粒子を分散させることにより、対極における還元反応速度を増大させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解液からなる電解質層と、を少なくとも有する色素増感型太陽電池に備えられており、電解質層を介して半導体電極に対向配置される対極であって、
平板状の基板と、
基板の一方の面に形成された導電性材料からなる多孔質膜と、
を少なくとも有しており、
導電性材料は、酸化還元対を構成する酸化体から該酸化還元対を構成する還元体への還元反応を促進する触媒活性を有していること、を特徴とする対極を提供する。
【0012】
本発明によれば、電解質層中に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有している導電性材料からなる多孔質膜を形成することにより、対極における還元反応速度を増大させ、優れた電極特性を有する対極を得ることができる。その結果、この対極を用いることにより、優れたエネルギー変換効率を得ることができる色素増感型太陽電池が得られる。
【0013】
上述の構成を有する多孔質膜を形成することにより、対極における還元反応速度を増大させることができる理由について、明確には解明されてないが、多孔質膜とすることにより、先に述べた従来の多孔質膜でない導電膜(例えば、白金膜など)に比較して還元触媒として機能する反応面積が増大し、還元反応速度が増大しているからであると本発明者らは推察する。
【0014】
また、本発明者らは、上記本発明の対極においては、先に述べた塩化白金酸と透明導電膜であるSnO2膜とが反応することにより、透明導電性ガラス基板の抵抗が増大する問題が生じないことも確認した。
【0015】
また、本発明者らは、上記本発明の対極では、多孔質膜自体が触媒として機能するため先に述べた電極特性を低下させる問題が生じないことも確認した。
【0016】
さらに、本発明者らは、上記本発明の対極においては、白金粒子の分散状態が良好であるため、先に述べた多孔質膜中における白金粒子の分散状態にばらつきに起因する問題が生じないことも確認した。
【0017】
ここで、本発明において、「光増感作用を有する色素」とは、金属錯体色素及び有機色素を示す。また、「光透過性の半導体電極」とは、200nm〜10μmの波長の光を透過する半導体電極を示す。さらに、「電解液」とは、電解質溶液、又は電解質溶液にゲル化剤を添加してゲル化したものを示す。
【0018】
また、本発明は、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解液からなる電解質層と、を少なくとも有する色素増感型太陽電池に備えられており、電解質層を介して半導体電極に対向配置される対極であって、
平板状の基板と、
基板の一方の面に形成された導電性を有する金属酸化物材料からなる多孔質膜と、
を少なくとも有しており、
多孔質膜の表面及び/又は内部には、酸化還元対を構成する酸化体から該酸化還元対を構成する還元体への還元反応を促進する触媒活性を有する材料からなる触媒粒子が分散されていること、
を特徴とする対極を提供する。
【0019】
上述のように、導電性を有する金属酸化物材料からなる多孔質膜を形成し、さらに、この多孔質膜中に電解質層中に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有する材料からなる触媒粒子を分散させることにより、対極における還元反応速度を増大させることができ、優れた電極特性を有する対極を得ることができる。その結果、この対極を用いることにより、優れたエネルギー変換効率を得ることができる色素増感型太陽電池が得られる。
【0020】
上記の効果を得られることについての理由について明確には解明されてないが、上記の構成を有する多孔質膜とすることにより、上記触媒粒子を導電膜に分散させる際に従来の多孔質膜でない導電膜(例えば、白金膜など)よりも多量の触媒粒子を分散させることが可能となっているからであると本発明者らは推察する。
【0021】
また、この構成の対極の場合、金属酸化物材料からなる多孔質膜は光反射能を有する。そのため、この観点からも、この構成の対極を使用することにより色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率を増大させることができる。
【0022】
また、本発明者らは、この構成を有する対極においても、先に述べた塩化白金酸と透明導電膜であるSnO2膜とが反応することにより、透明導電性ガラス基板の抵抗が増大する問題が生じないことも確認した。
【0023】
また、本発明者らは、この構成を有する対極においては、多孔質膜の表面及び/又は内部に触媒粒子を分散させるため、先に述べた電極特性を低下させる問題が生じないことも確認した。
【0024】
さらに、本発明者らは、この構成を有する対極は、白金粒子の分散状態が良好であるため、先に述べた多孔質膜中における白金粒子の分散状態にばらつきに起因する問題が生じないことも確認した。
【0025】
更に、本発明は、受光面を有しかつ光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、当該受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極と、
半導体電極に対向配置される対極と、
半導体電極と対極との間に配置されており、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解液からなる電解質層と、
を少なくとも有する色素増感型太陽電池であって、
対極が、上述の本発明の対極であること、を特徴とする色素増感型太陽電池を提供する。
【0026】
このように、先に述べた本発明の対極を用いることにより、対極における還元反応速度が増大し、優れたエネルギー変換効率を有する色素増感型太陽電池を容易に構成することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の対極及び色素増感型太陽電池の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、本発明の対極の第1実施形態を示す模式断面図である。また、図2は、図1に示す対極CE1を備えた色素増感型太陽電池の基本構成の一例を示す模式断面図である。なお、図2に示す色素増感型太陽電池20は、本発明の色素増感型太陽電池の好適な一実施形態を示している。
【0029】
図1及び図2に示す対極CE1は、電解液中に含有される酸化還元対(例えば、I3 -/I-等)の酸化体に電子を反応させて還元体を得る還元反応(例えば、I3 -をI-へ還元する還元反応)を速やかに進行させることを意図して、以下に説明する構成を有している。
【0030】
すなわち、対極CE1は、平板状の基板6と、基板の一方の面に形成された多孔質膜5と、を少なくとも有している。そして、多孔質膜5は、(1)電解質層に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有している導電性材料からなる多孔質膜と、(2)導電性を有する金属酸化物材料からなる多孔質膜を形成し、更に、該多孔質膜中に電解質層中に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有する材料からなる触媒粒子が分散されている多孔質膜、のうちのいずれかの多孔質膜として形成されている。
【0031】
多孔質膜5は、上記(1)又は(2)のいずれかの構成とすることにより、対極CE1における電極反応、すなわち電解質中に存在する酸化還元対(例えば、I3 -/I-等)の酸化体を還元体に還元する還元反応(例えば、I3 -をI-に還元する還元反応)を速やかに進行させることができる。
【0032】
先ず、(1)の構成の多孔質膜5について説明する。この多孔質膜5を構成する上述の触媒活性を有する導電性材料としては、金属材料又は導電性炭素材料であることが好ましい。上記金属材料としては、特に制限はないが、遷移金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましく、貴金属元素(Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,Os,Au,Ag)であることが好ましく、白金であることがより好ましい。このように導電性材料が金属である場合は、多孔質膜5の電解質層E側の表面において、光電極10側から入ってきた光を反射し、光電極10の光利用をより向上させることができる。また、導電性炭素材料としては特に制限はないが、活性炭、黒鉛、活性チャー、コークス、ハードカーボン、カーボンファイバー及びソフトカーボンなどが挙げられる。
【0033】
また、(1)の構成の多孔質膜5の表面及び/又は内部には、前記酸化還元対を構成する酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有する材料からなる触媒粒子が更に分散されていることが好ましい。また、この場合、上記の触媒粒子が、金属粒子、及び/又は導電性炭素材料からなる粒子、であることが好ましい。このような金属粒子は多孔質膜5における金属材料と同様のものから構成されるものである。また、このような金属粒子は、白金からなるものであることがより好ましい。更に、導電性炭素材料からなる粒子は多孔質膜5における導電性炭素材料と同様のものから構成されるものである。
【0034】
金属粒子及び導電性炭素材料からなる粒子は、ナノサイズの粒子であることが好ましく、平均粒径1〜50nmの粒子であることがより好ましい。
【0035】
このような触媒活性を有する金属粒子及び/又は導電性炭素材料からなる粒子が分散されていることにより、対極における還元反応速度をより確実に増大させることができる。
【0036】
次に、(2)の構成の多孔質膜5について説明する。(2)の構成の多孔質膜5は、金属酸化物材料からなるものであり、このような金属酸化物材料としては、例えば、TiO2、ZnO、SnO2、Nb2O5、In2O3、WO3、SrTiO3、BaTiO3、In2O3とSnO2との混合体、ITO(酸化インジウムスズ)等を用いることができる。これらの金属酸化物材料においては、酸化スズ(SnO2)、酸化スズ(SnO2)と酸化インジウム(In2O3)との混合物、又は酸化インジウムスズ(ITO)が好ましい。
【0037】
また、(2)の構成の多孔質膜5中に含まれる触媒粒子としては、金属粒子、及び/又は導電性炭素材料からなる粒子、であることが好ましい。このような金属粒子、及び導電性炭素材料からなる粒子は、先に述べた(1)の構成の多孔質膜5中に含まれる金属粒子、及び導電性炭素材料からなる粒子と同様のものを用いることが可能である。
【0038】
このような触媒活性を有する金属粒子及び/又は導電性炭素材料からなる粒子が分散されていることにより、対極における還元反応速度をより確実に増大させることができる。
【0039】
基板6は、多孔質膜5の支持体となるものである。基板6の構成は特に限定されるものではなく、例えば、後述する透明電極1における透明基板4と同様のものを使用してもよい。
【0040】
ここで、図1及び図2に示す対極CE1は、基板6と多孔質膜5との間に導電膜(図示せず)が更に配置されていることが好ましい。このような導電膜が更に配置されることにより、対極CE1においてより充分な導電性を得ることが可能となる。このような透明導電膜の構成は特に限定されるものではなく、例えば、後述する透明導電膜3と同様のものを使用してもよく、金属及び金属酸化物の導電性材料からなる導電膜を用いてもよい。
【0041】
次に、図2に示す色素増感型太陽電池20について説明する。色素増感型太陽電池20は、主として、光電極10と、先に述べた本発明の対極CE1と、スペーサSにより光電極10と対極CE1との間に形成される間隙に充填された電解質層Eとから構成されている。また、図2に示す光電極10は、主として、受光面F2を有しかつ光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極2と、当該半導体電極2の受光面F2上に隣接して配置された透明電極1とから構成されている。そして、半導体電極2は、受光面F2と反対側の裏面F22において酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解液からなる電解質層Eと接触している。
【0042】
この色素増感型太陽電池20は、透明電極1を透過して半導体電極2に照射される光によって半導体電極2内に吸着されている光増感作用を有する色素(以下「増感色素」という)が励起され、この増感色素から半導体電極2へ電子が注入される。そして、半導体電極2において注入された電子は、透明電極1に集められて外部に取り出される。
【0043】
透明電極1の構成は特に限定されるものではなく、通常の色素増感型太陽電池に搭載される透明電極を使用できる。例えば、図2に示す透明電極1は、ガラス基板等の透明基板4の半導体電極2の側にいわゆる透明導電膜3をコートした構成を有する。この透明導電膜3としては、液晶パネル等に用いられる透明電極を用いればよい。
【0044】
例えば、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)、等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものでもよい。
【0045】
透明基板4としては、液晶パネル等に用いられる透明基板を用いてよい。具体的には透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものが透明基板材料として挙げられる。なお、光を透過するものであれば材質はガラスでなくてもよく、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などでもよい。このように基板として、透明プラスチック板及び透明プラスチック膜を用いる場合は、フレキシブルに曲げられる形状のものでもよい。
【0046】
図2に示す光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極2は、酸化物半導体粒子を構成材料とする酸化物半導体層からなる。半導体電極2に含有される酸化物半導体粒子は特に限定されるものではなく、公知の酸化物半導体等を使用することができる。酸化物半導体としては、例えば、TiO2,ZnO,SnO2,Nb2O5,In2O3,WO3,SrTiO3,BaTiO3等を用いることができる。これらの酸化物半導体の中でもアナターゼ型TiO2が好ましい。
【0047】
また、半導体電極2に含有される増感色素は、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ色素であれば特に限定されるものではない。より好ましくは、少なくとも200nm〜10μmの波長の光により励起されて電子を放出するものであればよい。このような増感色素としては、金属錯体や有機色素等を用いることができる。金属錯体としては銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィルまたはその誘導体、ヘミン、ルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えば、シス−ジシアネート−N,N’−ビス(2、2’−ビピリジル−4、4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))等が挙げられる。有機色素としては,メタルフリーフタロシアニン,シアニン系色素,メロシアニン系色素,キサンテン系色素,トリフェニルメタン系色素等を用いることができる。
【0048】
更に、電解質層Eは、光励起され半導体への電子注入を果した後の色素を還元するための酸化還元対になる化学種を含んでいる電解液であれば、特に限定されず、例えば、液状の電解質溶液であってもよく、これに公知のゲル化剤(高分子或いは低分子のゲル化剤)を添加して得られるゲル状のものであってもよい。
【0049】
また、電解質層Eに使用される液状の電解質溶液の溶媒としては、溶質成分を溶解できる化合物であれば特に制限はないが、電気化学的に不活性で、比誘電率が高くかつ粘度が低い溶媒(およびこれらの混合溶媒)に溶かしたものが好ましく、例えば、メトキシプロピオニトリルやアセトニトリルのようなニトリル化合物,γ−ブチロラクトンやバレロラクトンのようなラクトン化合物,エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのようなカーボネート化合物、炭酸プロピレン等が挙げられる。
【0050】
電解質層Eに使用される液状の電解質溶液の溶質としては,酸化還元対や、この電子の受け渡しを助長する作用を有する化合物等が挙げられ、これらがそれぞれ単独あるいは複数組み合せて含まれていてもよい。
【0051】
また、このような酸化還元対としては、I3 -/I-系の電解質、Br3 -/Br-系の電解質、ハイドロキノン/キノン系の電解質などのレドックス電解質等が挙げられるが、酸化還元対を構成する酸化体がI3 -であり、かつ、前記酸化還元対を構成する還元体がI-であるI3 -/I-系の電解質が好ましく、電解液においてこのようなヨウ素系レドックス溶液からなる電解質が用いられる場合には、多孔質膜5が白金又は導電性炭素材料からなること、及び、触媒粒子が白金又は導電性炭素材料からなることが好ましい。
【0052】
酸化還元対を構成する物質としては、より具体的には、ヨウ素,臭素,塩素などのハロゲン,ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム,ヨウ化テトラプロピルアンモニウム,ヨウ化リチウムのようなハロゲン化物などが挙げられる。電子の受け渡しを効率よく行うための添加剤としては、4−t−ブチルピリジンのようなヘテロ環状化合物などが挙げられる。
【0053】
また、スペーサSの構成材料は特に限定されるものではなく、例えば、シリカビーズ等を用いることができる。
【0054】
また、電解質層Eを密封する目的で光電極10、対極CE及びスペーサSを一体化するために使用する封止材としては、電解質層Eの成分ができる限り外部に漏洩しないように封止できるものであればよく、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エチレン/メタクリル酸共重合体,表面処理ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0055】
次に、図2に示した色素増感型太陽電池20の製造方法の一例について説明する。
【0056】
透明電極1を製造する場合は、ガラス基板等の基板4上に先に述べたフッ素ドープSnO2等の透明導電膜3をスプレーコートする等の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。例えば、この他にも、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法及びゾルゲル法の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。
【0057】
透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する方法としては、例えば、以下の方法がある。すなわち、先ず、所定の大きさ(例えば粒子径が10〜30nm程度)を有する酸化物半導体粒子を分散させた分散液を調製する。この分散液の溶媒は水、有機溶媒、または両者の混合溶媒など酸化物半導体粒子を分散できるものなら特に限定されない。また、分散液中には必要に応じて界面活性剤、粘度調節剤を加えてもよい。
【0058】
次に、分散液を透明電極1の透明導電膜3上に塗布し、次いで乾燥する。このときの塗布方法としてはバーコーター法、印刷法などを用いることができる。そして、乾燥した後、空気中、不活性ガス或いは窒素中で加熱、焼成して半導体電極2(多孔質半導体膜)を形成する。
【0059】
次に、半導体電極2中に浸着法等の公知の技術により増感色素を含有させる。増感色素は半導体電極2に付着(化学吸着、物理吸着または堆積など)させることにより含有させる。この付着方法は、例えば色素を含む溶液中に半導体電極2を浸漬するなどの方法を用いることができる。この際、溶液を加熱し還流させるなどして増感色素の吸着、堆積を促進することができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に含有させてもよい。
【0060】
なお、半導体電極2内に含まれるエネルギー変換反応を阻害する不純物を除去する表面酸化処理を、各層それぞれの形成時毎、或いは、各層全てを形成した時などに公知の方法により適宜施してもよい。
【0061】
また、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する他の方法としては、以下の方法がある。すなわち、透明電極1の透明導電膜3上にTiO2等の半導体を膜状に蒸着させる方法を用いてもよい。透明導電膜3上に半導体を膜状に蒸着させる方法としては公知の薄膜製造技術を用いることができる。例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法を用いてもよく、酸素等の反応性ガス中で金属等を蒸発させ、反応生成物を透明導電膜3上に堆積させる反応蒸着法を用いてもよい。更に、反応ガスの流れを制御する等してCVD等の化学蒸着法を用いることもできる。
【0062】
次に、対極CE1の製造方法の一例について説明する。対極CE1を製造する場合、例えば、特開2000−231943号公報に記載の方法を用いることが可能であり、より具体的には、平板状の基板6上に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザアブレージョン法などの物理的蒸着法及びプラズマCVD法、熱CVD法などの化学的蒸着法等の公知の薄膜製造技術を用いることにより、導電性材料又は導電性を有する金属酸化物材料からなる多孔質膜5を形成することができる。
【0063】
このような薄膜を蒸着により製造する際は、構成材料からなる蒸着粒子の分圧及びキャリヤガスの分圧、基板6の温度などの条件を調節することにより、先に述べた構成を有する多孔質膜5を形成することが可能である。
【0064】
また、基板6と、多孔質膜5と、の間に透明導電性材料からなる透明導電膜を更に配置する場合には、ガラス基板等の基板6上に先に述べた透明導電性材料をスプレーコートする等の公知の薄膜製造技術を用いて形成し、その後前述の方法を用いて、多孔質膜5を形成することができる。また、透明導電膜を形成する場合にも、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法及びゾルゲル法の公知の薄膜製造技術を用いることが可能である。
【0065】
さらに、多孔質膜5の表面及び/又は内部に、触媒活性を有する金属粒子、及び/又は導電性炭素材料からなる粒子、を分散する方法としては、前述した材料及び前駆体原料を水、有機溶媒又はそれらの混合物などに溶かし、その溶液を多孔質膜に滴下するなどして付着させ、乾燥後、300〜700℃において、10分〜1時間焼成することにより粒子を形成させると共に、多孔質膜に分散させることができる。このような触媒粒子の形成及び分散は、大気中で行うことが可能であり、熱処理における時間と温度は、適宜調節することが可能である。
【0066】
このようにして光電極10及び対極CE1を作製した後は、図2に示すように、光電極10と、対極CEとをスペーサSを介して対抗させるように組み上げる。このとき、スペーサSにより光電極10と対極CEとの間に画成される空間に電解液を充填し、色素増感型太陽電池20を完成させる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、本発明の対極の第2実施形態について説明する。
【0068】
図3は、本発明の対極の第2実施形態の基本構成を示す模式断面図である。また、図4は、図3に示した対極CE2を、図3におけるy軸方向に沿う方向からみた場合の本構成を示す模式断面図である。なお、図3及び図4には、以下の説明の便宜のために、多孔質膜5aの基板の面の法線方向9と平行なz軸を有するxyz直交座標系を示した。すなわち、図3はz軸とy軸とからなる面で切断したときの対極CE2の模式断面図を示しており、図4はz軸とx軸とからなる面で切断したときの対極CE2の模式断面図を示している。
【0069】
図3及び図4に示す対極CE2は、後述する多孔質膜5aの構成以外は、先に述べた対極CE1と同様の構成を有する。また、この対極CE2を備える色素増感型太陽電池(図示せず)の構成も、上記対極CE1の代わりに対極CE2を備えること以外は、図2に示した色素増感型太陽電池20と同様である。そのため、以下の説明では対極CE2について説明する。なお、上述の図1及び図2に示した対極CE1に関して説明した要素と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0070】
多孔質膜5aは、(1)電解質層に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有している導電性材料からなる多孔質膜と、(2)導電性を有する金属酸化物材料からなる多孔質膜を形成し、更に、該多孔質膜中に電解質層中に含まれる酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有する材料からなる触媒粒子が分散されている多孔質膜と、のうちのいずれかの多孔質膜として形成されているものである。そして対極CE2は、多孔質膜5aの形状が先に述べた第1実施形態の対極CE1の多孔質膜5と以下に説明するごとく異なること以外は対極CE1と同様の構成を有する。
【0071】
すなわち、図3及び図4に示すように、多孔質膜5aは、平板状の基板6と、基板の一方の面F5aに形成された導電性材料からなる多孔質膜5aとから構成され、多孔質膜5aは、互いに電気的接触を保つように一体化された複数の柱状組織52から構成されて、複数の柱状組織52が基板の面F5a上に形成されている。また、このような複数の柱状組織52は、図3に示すように各々の中心軸8が基板の面F5aの法線方向9に対して平行又は斜めとなるように基板の面F5a上に形成されていることが好ましく、基板の面F5aの法線方向9に対する複数の柱状組織52の傾斜角θがそれぞれ80°以下であることが好ましい。さらに、このような複数の柱状組織52の各々の中心軸8が互いに略平行となるように、基板の面F5a上に形成されていることがより好ましい。ここで、「中心軸8が基板の面F5aの法線方向9に対して平行又は斜めとなる」状態とは、中心軸8の方向と法線方向9とが平行(即ち、傾斜角θが0°である状態)、及び斜め(即ち、傾斜角θが0°<θ≦80°の範囲で傾斜し法線方向9に対して平行となっていない状態)である状態を示す。なお、以下の説明においては、上記の構造を有する多孔質膜5aを便宜的に「斜め蒸着膜」というが、「斜め蒸着膜」とは必ずしもこのような構造を有する蒸着膜に限定されるものではなく、後述する斜め蒸着法で得られた膜を「斜め蒸着膜」というものである。
【0072】
図3に示すように、多孔質膜5aが柱状組織52を形成する場合には、その製造過程において、多孔性に富みかつ導電性に富む膜を形成し易いため、大きな反応表面積を有する多孔質構造をより確実にかつ容易に構築することができる。そのため、対極CE2における電極反応、すなわち電解質中に存在する酸化還元対の酸化体を還元体に還元する還元反応を速やかに進行させることがより確実に可能となる。
【0073】
基板の面F5aの法線方向9に対する複数の柱状組織52の傾斜角θは、それぞれ0〜80°であることが好ましい。このような傾斜角が、上記上限値を超える場合は多孔質膜の機械的強度が低下し、基板との密着性が低下し膜が剥離する傾向がある。
【0074】
また、多孔質膜5aが金属材料又は金属酸化物材料からなる場合、上記斜め蒸着膜の電解質層Eと接触する側の面(以下、「上面」という)の構造は、以下の機能を有する回折格子の縞(模様)を有する構造とすることが好ましい。すなわち、その機能とは、光増感時の増感色素の励起準位を半導体電極2のフェルミ準位よりも高いレベル(より負側の電位)とすることが可能な特定の波長領域の光のみを選択的に反射することのできる機能である。このような特定の波長領域の光とは、増感色素を上記のように励起させる波長の光であれば特に制限はなく、可視光領域および/または赤外光領域の光であればよく、少なくとも200nm〜10μmの波長の光であることが好ましい。
【0075】
また、このような機能を有する表面構造としては、図3に示すような前述の増感色素を励起できる光のみを反射できるように格子溝に角度を持たせた格子である、いわゆる「ブレーズド格子」の構造となるように形成されたものが好ましい。
【0076】
また、多孔質層5a(斜め蒸着膜)の導電性は、蒸着の条件を調節することにより調節することができる。
【0077】
次に、図3及び図4に示す対極CE2の製造方法の一例について説明する。図3に示す多孔質膜(斜め蒸着膜)5aを有する対極CE2を製造する場合、特公平7−3486号公報、特公平7−7130号公報、特許第2751140号公報、特開平4−218662号公報、特開平10−147858号公報、特開平10−81955号公報及び特開2000−231943号公報等に記載の方法を用いることが可能である。より具体的には、多孔質膜5aは、平板状の基板6の面の法線方向9に対して所定の傾斜を有する方向から多孔質膜の構成材料の蒸着粒子を入射させる斜め蒸着法により形成させることが可能である。
【0078】
上記斜め蒸着法は、多孔質膜の構成材料の蒸着粒子を基板6の面の法線方向9に平行ではなく、基板6の面に入射させる際の入射角θ1(図示せず)が、基板の面の法線方向9に対して好ましくは30〜80°であることを特徴とする方法である。なお、入射角θ1は、先に述べた傾斜角θと同様に基板6の面の法線方向9を基準として定義されるものである。ただし、多孔質膜の構成材料の蒸着粒子の入射角θ1と、形成される柱状組織52の中心軸8の傾斜角θとは、相互に束縛されるものではなく、両者は必ずしも一致せずともよい。
【0079】
これにより、基板6上に形成する多孔質膜5aにおける複数の柱状組織52は、基板6の面F5a上に形成される。この柱状組織を有する対極CE2は、基板6の面F5aの法線方向9から蒸着粒子を蒸着させて形成した多孔質膜5に比べて表面積が大きく、対極における還元反応速度をより増大させることが可能となる。
【0080】
このような蒸着粒子の入射角θ1が前記下限値未満であると、蒸着における自己遮蔽効果が顕著でなくなるため明確な柱状組織52が形成されにくい傾向となる。一方、蒸着粒子の入射角θ1が前記上限値を超えると、多孔質膜5aが非常に疎な構造になり、機械強度が低下して使えなくなるおそれがある。更に、蒸着源からみた基板の投影面積が小さくなるために成膜速度が遅くなる欠点が生じる傾向にある。
【0081】
上記斜め蒸着方法における基板6の面F5aの法線方向9に対して、蒸着粒子を所定の傾斜を有する方向から入射させる方法としては、蒸着粒子の入射方向に対して、所定の角度に基板6を傾けてもよい。また、蒸着粒子供給源に対して基板6を高速で相対移動させて、基板6に対して蒸着粒子の相対運動を作り出し、蒸着粒子を基板6の面F5aの法線方向9に対して斜めに入射させて斜め蒸着膜を形成させてもよく、さらには、2つの蒸着粒子の供給源を設けて、基板6の面F5aに対する蒸着粒子の入射方向を2方向として同時に蒸着させてもよい。
【0082】
このような斜め蒸着を行う際の蒸着方法としては、公知の種種の蒸着方法を用いることが可能である。例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法を用いてもよく、プラズマCVD法、熱CVD法などの化学的蒸着方法を用いてもよい。
【0083】
さらに、蒸着時に、蒸着粒子の入射方向に垂直な面方向に基板或いは蒸着粒子の供給源を徐々に移動して蒸着粒子を螺旋状に蒸着させ、その比表面積をより大きくしてもよい。
【0084】
また、基板6と、前記多孔質膜5aと、の間に透明導電性材料からなる透明導電膜を更に配置する場合には、ガラス基板等の基板6上に先に述べた透明導電性材料をスプレーコートする等の公知の薄膜製造技術を用いて形成し、その後先に述べた方法を用いて、多孔質膜5を形成することができる。
【0085】
さらに、多孔質膜5の表面及び/又は内部に、触媒活性を有する金属粒子及び/又は導電性炭素材料からなる粒子を分散する方法としては、前述した第1実施形態における方法と同様の方法により行うことが可能である。
【0086】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の対極及び色素増感型太陽電池について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
以下に示す手順により、図3に示した対極CE2と同様の構成を有する対極を作製し、更に、この対極を用いた以外は図1に示す色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する色素増感型太陽電池(受光面の面積:4cm2)を作製した。
【0088】
アセチルアセトン、イオン交換水、界面活性剤(Aldrich社製、商品名;「tritonX」)からなる液にTiO2粒子(Degussa社製、商品名;「P25」)を分散した半導体電極形成用のスラリー(TiO2粒子の含有量;11質量%、TiO2粒子の平均粒子径:約10nm以下、スラリー1とする)を調製した。
【0089】
次に、スラリー1中に増粘剤としてポリエチレングリコール(和光純薬社製、数平均分子量;2000)を添加し混合することにより、半導体電極形成用のペースト(以下、ペースト1という)を調製した。なお、ペースト1中のTiO2粒子とポリエチレングリコールとの質量比はTiO2粒子:ポリエチレングリコール=10:3となるように調節した。
【0090】
一方、ガラス基板4(透明導電性ガラス)上にフッ素ドープされたSnO2導電膜3(膜厚;600nm)を形成した透明電極1(日本板ガラス社製、表面抵抗;約10Ω/cm2、厚さ;1mm)を準備した。そして、このSnO2導電膜3上に、上述のペースト1をドクターブレードを用いて100μmの厚さとなるまで塗布し、次いで温度を25℃に保持して30分間乾燥させた。
【0091】
その後、ペースト1を塗布した透明電極1を電気炉内に移して、大気中、450℃の条件のもとで30分間焼成した。次に、電気炉から透明電極1を取り出し、冷却した。このようにして、SnO2導電膜3上に半導体電極2(受光面の面積;4cm2、半導体膜からなる層の厚さ;8μm、TiO2の塗布量:15g/cm2)を形成し、色素(金属錯体色素及び有機色素)を含有していない状態の光電極10を作製した。
【0092】
その後、光電極10の半導体電極2の裏面に色素を以下のようにして吸着させた。先ず、増感色素としてルテニウム錯体[cis-Di(thiocyanato)-N,N'-bis(2,2'-bipyridyl-4,4'dicarboxylic acid)-ruthenium(II)]を用い、これをエタノールに溶解させた溶液(増感色素の濃度;3×10-4mol/L)を調製した。次に、この溶液に半導体電極2を浸漬し、暗所、25℃の温度条件のもとで12時間放置した。次に、この溶液から半導体電極2を取り出してエタノールで洗浄し、暗所にて自然乾燥させた。これにより、半導体電極2の内部に増感色素を約1.2×10-7mol/cm2吸着させた光電極10を完成させた。
【0093】
次に、上記の光電極10と同様の形状と大きさを有する対極を作製した。先ず、スパッタ装置(装置名:特型スパッタ装置)の真空チャンバー内に、透明導電ガラス基板(Fドープ酸化錫コートガラス基板)を白金ターゲットの法線に対して斜め方向に設置した(ガラス基板面とターゲットの法線とのの角度は20度であった。)。高周波スパッタ法を用い、アルゴンガス雰囲気下で、白金(Pt)を斜め蒸着した(製膜条件:Arガス圧力 3×10-3torr(3.99×10-1Pa)、投入電力:30〜100W)。膜厚(100nm)であり、基板表面の法線方向に対して30°の角度で傾いた白金(Pt)斜め蒸着膜を得た。
【0094】
さらに、得られた白金斜め蒸着膜に塩化白金酸を含むイソプロパノール溶液(濃度0.005mol/L)を白金斜め蒸着膜上に滴下して、乾燥後、大気中で400℃、1h熱処理を行うことにより、白金斜め蒸着対極を得た。得られた膜の形態は、図3に示すように斜め柱状組織であり、白金ナノ粒子(平均粒子径、5nm以下)が分散した構造であることが確認された。
【0095】
また、電解液Eとして、ヨウ素系レドックス溶液(ヨウ化テトラブチルアンモニウムの濃度;0.65mol/L、ヨウ素の濃度;0.1mol/L、溶媒;メトキシプロピオニトリル)を調製した。
【0096】
更に、半導体電極2の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」)を準備した。そして、図1に示すように、光電極10と対極CEとスペーサSを介して対向させ、内部に上記の電解液Eを毛細管現象を利用することにより充填し、色素増感型太陽電池を完成させた。
【0097】
(比較例1)
次に、上記の光電極10と同様の形状と大きさを有する対極CEを作製した。先ず、透明導電性ガラス上に、塩化白金酸を含むイソプロパノール溶液(濃度0.005mol/L)を滴下し、大気中で乾燥した後に450℃で30分焼成処理することにより、白金焼結対極CEを得た。
【0098】
対極として、白金斜め蒸着対極の代わりに上記白金焼結対極を用いたこと以外は,実施例1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0099】
[電池特性評価試験]
以下の手順により電池特性評価試験を行ない、実施例1及び比較例1の色素増感型太陽電池の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(F.F.)、及び起動初期のエネルギー変換効率(η(%))を測定した。なお、色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率(η(%))は、下記式(A)で表される。ここで、下記式(A)中、P0は入射光強度[mWcm-2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm-2]、F.F.は曲線因子(Filling Factor)を示す。
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P0…(A)
【0100】
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの疑似太陽光の照射条件を、100mW/cm2とする(いわゆる「1Sun」の照射条件)測定条件の下で行った。
【0101】
各色素増感型太陽電池について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、開放電圧(Voc/V)、短絡電流密度(Jsc/mA・cm-2)、曲線因子(F.F.)を求め、これらからエネルギー変換効率η[%]を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示した結果から明らかなように、多孔質膜を形成させた実施例1の対向電極を有する色素増感型太陽電池は、優れたエネルギー変換効率を有するものであることが確認された。
【0104】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の対極及び色素増感型太陽電池によれば、電解質中に存在する酸化還元対の酸化体を還元体に還元する還元反応を速やかに進行させることのできる、優れた電極特性を有する対極、及び、その対極を備えており優れたエネルギー変換効率を得ることができる色素増感型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対極の第1実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図1に示した対極CE1を備えた色素増感型太陽電池の基本構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の対極の第2実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【図4】図3に示した対極CE2を、図3におけるy軸方向に沿う方向からみた場合の本構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…透明電極、2…半導体電極、3…透明導電膜、4…透明基板、5…多孔質膜、52・・・柱状組織、6・・・基板、8・・・中心軸、9・・・法線方向、10…光電極、20…色素増感型太陽電池、CE1、CE2…対極、E…電解質層、F1,F2,F3…受光面、F22…半導体電極2の裏面、F5a・・・多孔質膜が形成している面、S…スペーサ、θ・・・基板の法線方向に対する傾き。
Claims (8)
- 光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解液からなる電解質層と、を少なくとも有する色素増感型太陽電池に備えられており、前記電解質層を介して前記半導体電極に対向配置される対極であって、
平板状の基板と、
前記基板の一方の面に形成された白金からなる多孔質膜と、
を少なくとも有しており、
前記多孔質膜は、互いに電気的接触を保つように一体化された複数の柱状組織から構成されており、前記複数の柱状組織は、各々の中心軸が前記基板の前記面の法線方向に対して平行又は斜めとなるように前記基板の前記面上に形成されており、
前記多孔質膜の表面及び/又は内部には、前記酸化還元対を構成する酸化体の還元反応を促進する触媒活性を有する材料からなる触媒粒子が更に分散され、前記触媒粒子が白金である金属粒子であること、
を特徴とする対極。 - 前記基板と前記多孔質膜との間に導電膜が更に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の対極。
- 前記酸化還元対を構成する酸化体がI3 −であり、前記酸化還元対を構成する還元体がI−であることを特徴とする請求項1又は2に記載の対極。
- 前記基板の前記面の法線方向に対する前記複数の柱状組織の傾斜角がそれぞれ80°以下であること、を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の対極。
- 前記複数の柱状組織の各々の中心軸が互いに略平行となるように、前記基板の前記面上に形成されていること、を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の対極。
- 前記多孔質膜は、前記基板の前記面の法線方向に対して所定の傾斜を有する方向から前記多孔質膜の構成材料の蒸着粒子を入射させる斜め蒸着法により形成されていること、を特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の対極。
- 前記多孔質膜の構成材料の蒸着粒子を前記基板の前記面に入射させる際の入射角が前記基板の前記面の法線方向に対して30〜80°であること、を特徴とする請求項6に記載の対極。
- 受光面を有しかつ光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、当該受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極と、
前記半導体電極に対向配置される対極と、
前記半導体電極と前記対極との間に配置されており、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解液からなる電解質層と、
を少なくとも有する色素増感型太陽電池であって、
前記対極が、請求項1〜7の何れかに記載の対極であること、
を特徴とする色素増感型太陽電池。
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