JP4103984B2 - ハニカム成形体の製造方法及び乾燥装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,ハニカム成形体の製造方法,特にその乾燥工程および乾燥装置に関する。
【0002】
【従来技術】
セラミック製のハニカム成形体を製造するに当たっては,粘土質のハニカム成形体を押出成形し,これを乾燥した後,焼成する。ハニカム成形体の乾燥方法としては,例えば特開昭63−166745号公報に示されているように,ハニカム成形体の上方及び下方に配置した電極間に電流を流して発生させた高周波を用いる方法が知られている。この方法は,ハニカム成形体の内外を均一に加熱し,乾燥速度差により生じる収縮量差が原因となる外周スキン部の割れ,しわ等の欠陥の発生を防止しようとするものである。
【0003】
【解決しようとする課題】
上記乾燥方法は,従来自動車の排ガス浄化装置の触媒担体として一般的に用いられてきたセル壁厚さ0.30〜0.15mm,外周スキン部の厚さ0.3〜1.0mmのハニカム成形体に対しては有効である。しかしながら,近年の排気ガス浄化性能向上等のニーズにより開発されてきたセル壁厚さが0.125mm以下で,外周スキン部の厚さが0.5mm以下の薄壁品においては,セル壁自身の強度および外周スキン部自身の強度が従来よりも低い。そのため,この薄壁品においては,従来の高周波を用いた方法では,外周スキン部の欠陥発生に対する十分な対策が困難となってきた。
【0004】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,セル壁厚さが0.125mm以下のハニカム成形体を,外周スキン部に割れ,しわ等の欠陥を生じさせることなく乾燥することができるハニカム成形体の製造方法及び乾燥装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,厚さ0.125mm以下のセル壁をハニカム状に配して多数のセルを設けたセラミック製のハニカム成形体を製造する方法において,
押出成形された粘土質のハニカム成形体を乾燥するに当たり,気孔率が10%以上の搬送トレイ上に上記ハニカム成形体を載置し,該ハニカム成形体を湿度が70%以上の高湿度雰囲気に晒すと共に,周波数1000〜10000MHz領域のマイクロ波を照射することを特徴とするハニカム成形体の製造方法にある。
【0006】
本発明の製造方法においては,上記のごとく,湿度が70%以上という高湿度雰囲気において上記ハニカム成形体を加熱する。これにより,ハニカム成形体の外周表面が変形するような急激な乾燥を防止して外周表面を適度な湿度に保つことができる。これにより,外周表面と内部との乾燥速度差を低減することができる。そのため,セル壁厚さが0.125mm以下と薄く,外周スキン部の厚みも比較的薄い場合においても,ハニカム成形体の内外の乾燥速度差による収縮量差を小さくすることができる。それ故,外周スキン部の割れ,しわ等の欠陥を防止することができる。上記高湿度雰囲気の湿度としては高いほどより好ましく,80%以上,あるいは過飽和状態でもよい。
【0007】
また,本発明においては,上記加熱の手段として,上記マイクロ波を用いる。これにより,上記高湿度雰囲気での加熱を実現することができる。すなわち,従来の高周波による加熱の場合,ハニカム成形体の近傍に電極を配置する必要がある。この電極を高湿度雰囲気内に配置すれば,電極間で放電や絶縁破壊を起こし,電極破損による設備故障が生じるおそれがある。
【0008】
これに対し,上記マイクロ波は,導波管を通じて導くことが可能であり,被加熱物の近傍に電極を設ける必要がない。そのため,マイクロ波は,上記高湿度雰囲気においても容易にハニカム成形体に到達し,これを加熱することができる。このように,本発明では,マイクロ波加熱と高湿度雰囲気との組合せによって,セル壁厚さが0.125mmと非常に薄く,外周スキン部も比較的薄い場合においても,乾燥時の外周スキン部の割れやしわの発生を十分に防止することができる。そして,この乾燥時の品質向上によって,その後の焼成工程を経て得られる焼成品としてのハニカム成形体を優れた品質とすることができる。
【0009】
また,請求項2の発明のように,上記高湿度雰囲気での温度は80℃以上とすることが好ましい。上記高湿度雰囲気の温度は上記作用効果を得るために制限されるものではなく,任意の温度を採用することができる。しかし,上記80℃以上とすることにより,マイクロ波により加熱されるハニカム成形体から雰囲気への熱放出を低減させることができ,マイクロ波加熱の効率を高めることができる。
【0010】
また,請求項3の発明のように,上記高湿度雰囲気は,高温蒸気を供給することにより形成することが好ましい。上記高湿度雰囲気の形成のための湿度向上方法としては,蒸気を積極的に導入する方法をとることができる。そして,この場合の蒸気としては,例えばボイラー等により発生させた高温のものや,例えば超音波や遠心力を利用した低温のもののいずれをも利用できる。中でも,高温蒸気を利用する場合には,高湿度雰囲気の温度も容易に上昇させることができ,より好ましい。
また,上記特定の多孔質のセラミックスよりなる搬送トレイを用いる場合には,搬送トレイの気孔を介して蒸気を供給することも可能である。
【0011】
また,請求項4の発明のように,上記乾燥は,上記ハニカム成形体の温度を計測し,計測した温度に応じて上記マイクロ波の出力を変更して行うことが好ましい。この場合には,上記ハニカム成形体が過度に加熱されるのを防止することができる。マイクロ波乾燥において懸念される,過乾燥に起因した過剰加熱を未然に防止することができる。
【0012】
また,上記乾燥中に上記ハニカム成形体の温度を管理することで,常に適切にマイクロ波を照射することができる。したがって,セル壁厚さが0.125mmと非常に薄く,外周スキン部も比較的薄い場合においても,乾燥時の外周スキン部の割れやしわの発生を,さらに十分に防止することができる。
【0013】
また,請求項5の発明のように,上記ハニカム成形体の温度計測は,赤外線放射温度計もしくはレーザ温度計を用いて実施することが好ましい。赤外線放射温度計もしくはレーザ温度計によれば,非接触で上記ハニカム成形体の温度を計測することができる。また,赤外線あるいはレーザは,上記マイクロ波の影響を受けない。そのため,上記高湿度雰囲気に晒されてマイクロ波を照射される上記ハニカム成形体であっても,実時間の温度を精度良く計測することができる。
【0014】
次に,請求項8の発明は,厚さ0.125mm以下のセル壁をハニカム状に配して多数のセルを設けたセラミック製のハニカム成形体を製造するに当たり,押出成形された粘土質のハニカム成形体を乾燥する乾燥装置であって,上記ハニカム成形体を収納する乾燥槽と,上記ハニカム成形体を載置するための気孔率が10%以上の搬送トレイと,上記乾燥槽内を湿度が70%以上の高湿度雰囲気とする加湿装置と,周波数1000〜10000MHz領域のマイクロ波を上記乾燥槽内に供給するマイクロ波発生装置とを有することを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置である。
【0015】
本発明の乾燥装置を用いれば,上記製造方法における乾燥を容易に実現することができ,品質に優れたハニカム成形体を製造することができる。すなわち,上記乾燥槽内に乾燥すべきハニカム成形体を配置し,上記加湿装置によって乾燥槽内の湿度を70%以上に高めることにより高湿度雰囲気を形成する。そして,上記マイクロ波発生装置からマイクロ波を導入することにより,上記高湿度雰囲気内で,ハニカム成形体をマイクロ波加熱することができる。これにより,外周スキン部に割れやしわを発生させずにハニカム成形体を乾燥させることができる。なお,上記乾燥装置は,ハニカム成形体を乾燥槽に対して順次連続的に搬入・搬出する連続装置としてもよいし,バッチ型の装置としてもよい。
【0016】
また,請求項9の発明のように,上記加湿装置は,高温の蒸気を発生する高温蒸気発生源を有していることが好ましい。この高温蒸気発生源としては,例えばボイラー等がある。この場合には,上記高湿度雰囲気の湿度上昇と温度上昇を容易に行うことができる。
【0017】
また,請求項10の発明のように,上記乾燥装置は,乾燥中の上記ハニカム成形体の温度を計測する温度計測手段と,計測した温度に応じて上記マイクロ波の出力を変更する制御手段を有することが好ましい。上記ハニカム成形体の過乾燥による過剰加熱を防止し,セル壁厚さが0.125mmと非常に薄く,外周スキン部も比較的薄い場合においても,乾燥時の外周スキン部の割れやしわの発生を回避することができる。
【0018】
また,請求項11の発明のように,上記乾燥装置は,一部に透明隔壁を有してなる乾燥槽と,上記乾燥槽の外部に設置されて上記透明隔壁を介してハニカム成形体の温度を計測する非接触式の上記温度計測手段を有することが好ましい。上記非接触式の上記温度計測手段を上記乾燥槽の外部に設置することにより,小規模かつ簡便な設備構成によって,上記ハニカム成形体の温度を安定して計測することができる。
【0019】
また,請求項12の発明のように,上記温度計測手段は,赤外線温度計又はレーザ温度計であることが好ましい。赤外線放射温度計もしくはレーザ温度計によれば,比較的小規模な装置構成によって,マイクロ波中の上記ハニカム成形体の温度を高い精度で計測することができる。
【0020】
また,請求項13の発明のように,上記乾燥槽の一部をなす透明隔壁は,ガラス又は硬質プラスティックからなることが好ましい。上記透明隔壁は,上記非接触式の温度計による温度計測を阻害しないこと,マイクロ波によって加熱されないこと,上記保管槽の高湿度雰囲気によって化学変化等を生じず変質しないことが必要ある。上記要件を満たす限り,上記透明隔壁の材質は何でも良く,何ら制限されるものではない。しかるに,ガラス又は硬質プラスティックによれば,入手が容易であるとともに,長年にわたって所望の性能を発揮しうる。
【0021】
また,請求項14の発明のように,上記乾燥装置は,上記乾燥槽の一部をなす透明隔壁の一面であって乾燥槽側の面に水滴が付着するのを防止する水滴付着防止手段を有することが好ましい。上記非接触式の温度計測手段を用いて,上記ハニカム成形体の温度を計測する際,上記透明隔壁の面に付着した水滴による誤差の発生を抑制することができる。
【0022】
また,請求項15の発明のように,上記乾燥装置は,上記水滴付着防止手段として,上記透明隔壁の一面であって乾燥槽側の面にエアーを吹き付ける送風装置を有することが好ましい。エアーを吹き付ける方法によれば,比較的小規模かつ簡便な装置によって,上記透明隔壁の面に水滴が付着するのを防止することができる。
【0023】
また,請求項17の発明のように,上記送風装置は,0.5m3/min以上の送風能力を有するよう構成されていることが好ましい。上記送風装置の送風能力が0.5m3/min未満である場合には,上記透明隔壁の面に水分が付着するのを十分に防止できないおそれがある。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるハニカム成形体の製造方法及び乾燥装置につき,図1,図2を用いて説明する。
本例は,図2に示すごとく,厚さt1が0.125mm以下のセル壁11をハニカム状に配して多数のセル10を設けたセラミック製のハニカム成形体1を製造する方法である。本例のハニカム成形体1は,同図に示すごとく,四角形のセル10を有し,厚さt2が0.5mm以下の円筒状の外周スキン部12を有する形状を呈している。なお,上記セル形状,全体形状は用途に合わせて変更可能である。
【0025】
本例の方法では,押出成形された粘土質のハニカム成形体1を乾燥するに当たり,ハニカム成形体1を湿度が70%以上の高湿度雰囲気に晒すと共に,周波数1000〜10000MHz領域のマイクロ波を照射する。
以下,これを詳説する。
【0026】
本例のハニカム成形体1を製造するに当たっては,まず,主にコーディエライトとなるセラミック原料粉100重量部に対して,有機バインダー5重量部と,水15重量部とを添加して混練し,粘土状のセラミック原料を作製した。
次に,このセラミック原料を押出成形機(図示略)を用いてハニカム成形型より押し出すと共に順次所定長さに切断し,粘土状のハニカム成形体1を成形した。上記押出成形機としては,プランジャー式,オーガ式等がある。
また,本例ではハニカム成形型のセル壁部のスリット幅を0.115mm,外周スキン部のスリット幅を0.3mmとした。
【0027】
次に,上記押出成形により得られた薄壁のハニカム成形体1を図1に示す乾燥装置3を用いて乾燥した。
乾燥装置3は,同図に示すごとく,上記ハニカム成形体1を収納する乾燥槽30と,該乾燥槽30内を湿度が70%以上の高湿度雰囲気とする加湿装置32と,周波数1000〜10000MHz領域のマイクロ波を上記乾燥槽30内に供給するマイクロ波発生装置34とを有する。
【0028】
上記乾燥槽30は,後述する搬送装置4により運搬されるハニカム成形体1複数個分を収納できる大きさを有している。
そして,一方の側壁303の前後上下の4角部分に,4つのマイクロ波発生装置34からそれぞれ延設された導波管340が接続されて開口している。この開口部がマイクロ波導入口341である。
【0029】
また,側壁303の前後2カ所には,加湿装置32としてのボイラーから延設され分岐した2本の蒸気配管320が接続され開口している。この開口部が蒸気導入口321である。この蒸気導入口321から導入される蒸気は,上記のごとくボイラーより送られる高温蒸気であり,その温度は80℃以上である。
【0030】
また本例の乾燥装置3は,上記乾燥装置は,上記ハニカム成形体を搬送する搬送装置4を有しており,複数のハニカム成形体1を連続的に乾燥槽30に搬入・搬出できるよう構成された連続装置となっている。
具体的には,乾燥槽30内には,その入口部301と出口部302とを結ぶようにベルトコンベア41が配設されている。また,乾燥槽30の出口側外部には,ローラコンベア42が配設されている。
【0031】
そして,これらベルトコンベア41及びローラコンベア42よりなる搬送装置4は,ハニカム成形体1を載置した搬送トレイ5を搬送するよう構成されている。本例では,搬送トレイ5として,誘電損失が0.1以下,気孔率が10%以上,断面開口面積比が50%以上の多孔質のセラミックス,本例ではコーディエライト製のものを使用した。なお,この材質は,尿素樹脂,その他のものに変更することもできる。また,搬送トレイ5上においては,ハニカム成形体1のセル10の開口端面の一方(101)を上記搬送トレイ5の上面51に当接させて載置した。これにより,各ハニカム成形体1は,そのセル10が鉛直方向に向くと共に,搬送トレイ5の気孔と連通状態となる。
【0032】
また,上記乾燥槽30の外部で上記ローラコンベア42の下方には,熱風発生装置36を配設した。この熱風発生装置36は,上記ローラコンベア42上を移動してくる搬送トレイ5の下方から上方に向けて120℃の熱風を吹き上げるよう構成されている。この温度は上記ハニカム成形体1が含有するバインダが燃焼しない温度である。
【0033】
このような構成の乾燥装置3を用いて,上記のごとく押出成形されたハニカム成形体1を乾燥するに当たっては,まず,図1に示すごとく,所定長さに切断された各ハニカム成形体1を搬送トレイ5上に載置して順次ベルトコンベア41上に載せる。これにより,各ハニカム成形体1は,順次乾燥槽30内に搬入されていく。
【0034】
乾燥槽30内に送入された各ハニカム成形体1は,ベルトコンベア41の動きに伴って,入口部301側から出口部302側に移動しながら乾燥されていく。ここで,乾燥槽30内は,上記加湿装置32から導入される高温蒸気によって湿度が70%以上(本例では80%以上),温度が80℃以上の高湿度雰囲気となっていると共に,上記マイクロ波発生装置34から発せられるマイクロ波が導入されている。そのため,乾燥槽30内のハニカム成形体1は,外周スキン部12の割れやしわの発生を防止しつつ急速に乾燥される。
【0035】
すなわち,上記乾燥槽30が上記のごとく高温の高湿度雰囲気となっているので,ハニカム成形体1が加熱される際に,外周表面が変形するような急激な乾燥が防止され,適度な湿度に保たれる。そのため,外周表面と内部との乾燥速度差を低減することができる。そのため,セル壁厚さが0.125mm以下と薄い本例のハニカム成形体1であっても,その内外の乾燥速度差による収縮量差を小さくすることができる。それ故,外周スキン部12の割れ,しわ等の欠陥を防止することができる。
【0036】
また,本例においては,上記加熱の手段として,上記マイクロ波を用いる。マイクロ波は,上記乾燥槽30内が上記のような高湿度雰囲気となっていても,導波管70を介して容易に導入できる。そのため,複雑な設備構成をとることなく,ハニカム成形体1を容易に誘電加熱することができる。
このように,本例では,マイクロ波加熱と高湿度雰囲気との組合せによって,セル壁厚さが0.125mm以下,外周スキン部の厚さが0.3mm以下の薄肉品である場合においても,乾燥時の外周スキン部12の割れやしわの発生を十分に防止することができる。
【0037】
更に,本例では,上記乾燥槽30内での高湿度雰囲気でのマイクロ波による乾燥後,ハニカム成形体1に対して,上記熱風発生装置36から発する熱風をセル10を通過するように当てる。すなわち,本例では,ハニカム成形体1の乾燥を高湿度雰囲気でのマイクロ波加熱と熱風による加熱との組合せにより行う。具体的には,乾燥前のハニカム成形体中の水分の10〜20%がまだ残存する程度までの乾燥を上記高湿度雰囲気でのマイクロ波加熱により行い,その後,水分含有量が5%以下となるように熱風により完全乾燥を行う。
【0038】
これにより,上記高湿度雰囲気でのマイクロ波加熱の制御を容易にすることができ,マイクロ波加熱の過剰加熱によってハニカム成形体のバインダー成分が焼失するなどの不具合を防止することができる。そして,過剰加熱のおそれのない温度の熱風によって精度のよい完全乾燥を実現することができる。
【0039】
また,本例の乾燥装置3は,上記のごとく搬送装置4を有し,連続操業可能な構成を有している。そのため,非常に効率よく乾燥工程を行うことができる。
また,本例の搬送トレイ5は,上記のごとく誘電損失が0.1以下,気孔率が10%以上,断面開口面積比が50%以上の多孔質のコーディエライトという特定のセラミックスを用いている。そのため,上記マイクロ波による乾燥時には,水分の滞留防止,および搬送トレイ5の高温化防止を図ることができる。更に,熱風加熱時には,上記気孔を通した熱風の供給によって,セル10内への熱風の通過を容易に行うことができる。
【0040】
実施形態例2
本例では,実施形態例1における乾燥装置3を用い,その乾燥槽30に導入する高温蒸気量の変化により湿度を変化させ,湿度と外周スキン部の品質との相関を見る実験を行った。湿度以外の条件は実施形態例1と同様とした。
【0041】
実験結果を図3に示す。同図は,横軸を乾燥槽30の槽内湿度,縦軸を外周スキン部の割れ・しわ不良率をとった。各実験は,それぞれ20個のハニカム成形体を処理し,少しでも割れ・しわのあったものを不良品としてその個数の割合を算出して不良率とした。
同図より知られるごとく,湿度を50%より高めることにより割れ・しわ防止効果が現れ,70%以上ではほぼ確実に割れ・しわの防止ができることがわかった。
【0042】
実施形態例3
本例では,実施形態例1における搬送トレイ5の気孔率を変化させると共に,上記と同様に乾燥槽30内の湿度を変化させ,乾燥時の水分の滞留による不具合の有無をみる実験を行った。搬送トレイ5の気孔率および乾燥槽30内の湿度以外の条件は実施形態例1と同様とした。
【0043】
実験結果を図4に示す。同図は,横軸に搬送トレイの気孔率を,縦軸に乾燥槽30の湿度をとったものである。各条件での処理は一回ずつ行い,少しでもセル壁あるいは外壁スキン部の溶出があった場合をXとし,なかったものを○として図にプロットした。
同図より知られるごとく,湿度が高いほど溶出しやすくなるが,少なくとも湿度が70%の場合には,搬送トレイの気孔率を10%以上とすることにより溶出を防止することができることがわかる。そして,湿度100%であっても,少なくとも搬送トレイの気孔率を25%以上とすることにより溶出防止を図ることができることもわかる。
【0044】
実施形態例4
本例は,バッチ式の乾燥装置6を用いる例である。
本例の乾燥装置6は,図5に示すごとく,ハニカム成形体1を収納する乾燥槽60と,該乾燥槽60内を湿度が70%以上の高湿度雰囲気とする加湿装置62と,周波数1000〜10000MHz領域のマイクロ波を上記乾燥槽60内に供給するマイクロ波発生装置64とを有する。
【0045】
上記乾燥槽60内には,搬送トレイ5に載置されたハニカム成形体1を複数個支持できる受け台68を設けてある。この受け台68は上下方向に貫通する貫通穴を複数有し通気性を有している。
また,乾燥槽60の一方の側壁603の左右上下の4角部分に,4つのマイクロ波発生装置64からそれぞれ延設された導波管640が接続されて開口している。この開口部がマイクロ波導入口641である。また,乾燥槽60には図示しない入口部を有し,上記ハニカム成形体1を出し入れできるようになっている。
【0046】
また,側壁603の左右2カ所には,加湿装置62としてのボイラーから延設され分岐した2本の蒸気配管620が接続され開口している。この開口部が蒸気導入口621である。この蒸気導入口621から導入される蒸気は,上記のごとくボイラーより送られる高温蒸気であり,その温度は80℃以上である。
【0047】
そして,本例では,熱風発生装置66を乾燥槽60内に配置した。この熱風発生装置66は,上記受け台68の下方から上方に向けて120℃の熱風を吹き上げるよう構成されている。この熱風は,上記受け台68および搬送トレイ5を貫通してハニカム成形体1のセル10を通過するように流れる。上記搬送トレイ5としては実施形態例1と同様のものを用いる。
【0048】
上記乾燥装置6を用いて成形体1を乾燥するに当たっては,まず,図5に示すごとく,所定長さに切断された複数のハニカム成形体1をそれぞれ搬送トレイ5上に載置し,さらにこれらを上記受け台68上に配置する。そして,この状態で,乾燥槽60内に加湿装置62から高温蒸気を導入して湿度70%以上の高湿度雰囲気を形成すると共に,マイクロ波発生装置64からマイクロ波を導入してマイクロ波加熱を行う。
【0049】
本例では,ハニカム成形体1の水分が10〜20%残存する程度まで上記高湿度雰囲気でのマイクロ波加熱を行う。その後,高温蒸気の導入を停止すると共にマイクロ波の導入を停止する。そして,乾燥槽60内を換気した後,熱風発生装置66から熱風を吹き上げる。これにより,受け台68および搬送トレイ5を通過した熱風が各ハニカム成形体1のセル10を通過する。これにより,ハニカム成形体1の水分含有量が5%以下となる完全乾燥を行う。
【0050】
その後,乾燥槽60からすべてのハニカム成形体1を搬出し,その後,再び乾燥すべきハニカム成形体1を乾燥槽60内に配置することにより,上記一連の乾燥作業を繰り返し行うことができる。
このように,本例では,バッチ式の乾燥装置6を用いても,実施形態例1の連続式の乾燥装置3の場合と同様の優れた乾燥方法を実施することができる。
その他は実施形態例1と同様の作用効果が得られる。
【0051】
実施形態例5
本例では,上記乾燥工程において,上記乾燥槽内の上記ハニカム成形体の温度を管理しながら,上記乾燥工程を実施した例である。
図6に示すごとく,乾燥装置3を用いて上記乾燥装置を実施した。上記乾燥装置3には,実施形態例1の乾燥装置3を基にして,乾燥槽30内のハニカム成形体1の温度を計測する温度計測手段と,上記計測された温度に応じて上記マイクロ波出力を変更しうる構成が追加されている。
【0052】
本例では,上記温度計測手段は,赤外線放射温度計351によって構成した。具体的には,上記乾燥槽30の側壁304の一部に透明隔壁350を設けると共に,該透明隔壁350を介して上記乾燥槽30内のハニカム成形体1を見込める位置に上記赤外線放射温度計351を設置した。
【0053】
また,上記透明隔壁350の内側の面への水滴の付着を防止するために,エアー配管352によって導入した空気を常時吹き付けるように構成されている。
さらに,上記赤外線放射温度計351と,上記マイクロ波発生装置34とは,図示しない信号線によって連結した。
なお,本例では,上記透明隔壁350の材質をガラスとしたが,その他,硬質プラスティックを適用することもできる。
また,上記温度計測手段としては,本例の赤外線放射温度計351のほか,レーザ温度計を適用することもできる。
【0054】
上記のごとく,構成された上記乾燥装置3を用いて,上記ハニカム成形体1の乾燥を実施した。
本例では,上記乾燥槽30内の上記ハニカム成形体1が放射する赤外線の波長を,上記透明隔壁350を介して上記赤外線放射温度計351で計測することによって,上記ハニカム成形体1の温度を測定した。
【0055】
このとき,上記温度計測に当たっては,上記透明隔壁の内側の面に,0.5m3/minの空気を常時,吹き付けながら温度を計測した。そのため,上記乾燥槽30内に高温高湿度雰囲気が形成されている場合であっても,上記透明隔壁の内側の面への水滴の付着が防止され,上記温度計測を精度良く行うことができる。
【0056】
そして,上記測定された温度に応じて,上記マイクロ波発生装置34をON−OFF制御した。具体的には,上記ハニカム成形体1の温度が110℃以上であるときには,上記マイクロ波発生装置34での上記マイクロ波の供給を停止し,80℃以下であるときには,上記マイクロ波発生装置34から上記マイクロ波の供給を再起動した。
その他の構成及び作用効果については,実施形態例1と同様である。
【0057】
本例の上記乾燥装置3によれば,上記ハニカム成形体1の温度を100℃付近に維持しながら,マイクロ波乾燥を行うことができる。したがって,マイクロ波乾燥時の過剰加熱を防止することができる。それ故,本例によれば,上記乾燥工程において,上記ハニカム成形体1の良好な品質を維持しながら,上記ハニカム成形体1を乾燥することができる。
なお,上記実施例では,マイクロ波発生装置34をON−OFF制御しているが,本発明は,この制御に限定されるものではない。例えば,ON−OFF制御の時よりも高い温度である130℃にハニカム成形体1の温度が達したとき,マイクロ波の供給を停止するのみの制御でも良い。このような制御により,上記ハニカム成形体1の過剰な乾燥を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,乾燥装置の構成を示す説明図。
【図2】実施形態例1における,(a)ハニカム成形体の斜視図,(b)セル壁厚さを示す説明図。
【図3】実施形態例2における,槽内湿度と割れ・しわ不良率との関係を示す説明図。
【図4】実施形態例3における,搬送トレイ及び槽内湿度とハニカム成形体の溶出との関係を示す説明図。
【図5】実施形態例4における,乾燥装置の構成を示す説明図。
【図6】実施形態例5の乾燥装置における,温度計測方法を説明するイメージ図。
【符号の説明】
1...ハニカム成形体,
10...セル,
11...セル壁,
12...外周スキン部,
3,6...乾燥装置,
30,60...乾燥槽,
32,62...加湿装置,
320,620...蒸気配管,
321,621...蒸気導入口,
34,64...マイクロ波発生装置,
340,640...導波管,
341,641...マイクロ波導入口,
36,66...熱風発生装置,
4...搬送装置,
41...ベルトコンベア,
42...ローラコンベア,
5...搬送トレイ,
Claims (18)
- 厚さ0.125mm以下のセル壁をハニカム状に配して多数のセルを設けたセラミック製のハニカム成形体を製造する方法において,
押出成形された粘土質のハニカム成形体を乾燥するに当たり,気孔率が10%以上の搬送トレイ上に上記ハニカム成形体を載置し,該ハニカム成形体を湿度が70%以上の高湿度雰囲気に晒すと共に,周波数1000〜10000MHz領域のマイクロ波を照射することを特徴とするハニカム成形体の製造方法。 - 請求項1において,上記高湿度雰囲気での温度は80℃以上とすることを特徴とするハニカム成形体の製造方法。
- 請求項1又は2において,上記高湿度雰囲気は,高温蒸気を供給することにより形成することを特徴とするハニカム成形体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項において,上記乾燥は,上記ハニカム成形体の温度を計測し,計測した温度に応じて上記マイクロ波の出力を変更して行うことを特徴とするハニカム成形体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項において,上記ハニカム成形体の温度計測は,赤外線放射温度計もしくはレーザ温度計を用いて実施することを特徴とするハニカム成形体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項において,上記搬送トレイは,誘電損失が0.1以下であることを特徴とするハニカム成形体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項において,上記搬送トレイは,断面開口面積比が50%以上であることを特徴とするハニカム成形体の製造方法。
- 厚さ0.125mm以下のセル壁をハニカム状に配して多数のセルを設けたセラミック製のハニカム成形体を製造するに当たり,押出成形された粘土質のハニカム成形体を乾燥する乾燥装置であって,
上記ハニカム成形体を収納する乾燥槽と,上記ハニカム成形体を載置するための気孔率が10%以上の搬送トレイと,上記乾燥槽内を湿度が70%以上の高湿度雰囲気とする加湿装置と,周波数1000〜10000MHz領域のマイクロ波を上記乾燥槽内に供給するマイクロ波発生装置とを有することを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。 - 請求項8において,上記加湿装置は,高温の蒸気を発生する高温蒸気発生源を有していることを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項8又は9において,上記乾燥装置は,乾燥中の上記ハニカム成形体の温度を計測する温度計測手段と,計測した温度に応じて上記マイクロ波の出力を変更する制御手段を有することを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項10において,上記乾燥装置は,一部に透明隔壁を有してなる乾燥槽と,上記乾燥槽の外部に設置されて上記透明隔壁を介してハニカム成形体の温度を計測する非接触式の上記温度計測手段を有することを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項11において,上記温度計測手段は,赤外線温度計又はレーザ温度計であることを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項12において,上記乾燥槽の一部をなす透明隔壁は,ガラス又は硬質プラスティックからなることを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項8〜12のいずれか1項において,上記乾燥装置は,上記乾燥槽の一部をなす透明隔壁の一面であって乾燥槽側の面に水滴が付着するのを防止する水滴付着防止手段を有することを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項14において,上記乾燥装置は,上記水滴付着防止手段として,上記透明隔壁の一面であって乾燥槽側の面にエアーを吹き付ける送風装置を有することを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項15において,上記送風装置は,0.5m3/min以上の送風能力を有するよう構成されていることを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項8〜16のいずれか1項において,上記搬送トレイは,誘電損失が0.1以下であることを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
- 請求項8〜16のいずれか1項において,上記搬送トレイは,断面開口面積比が50%以上であることを特徴とするハニカム成形体の乾燥装置。
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