JP4101367B2 - 基板型温度ヒュ−ズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は基板型温度ヒュ−ズ(抵抗体付きの基板型温度ヒュ−ズを含む)の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
温度ヒュ−ズにおいては、ヒュ−ズエレメントに低融点可溶合金片を使用し、保護すべき機器の過電流に基づく発熱で低融点可溶合金片を溶断させて機器への通電を遮断し、機器の異常発熱ひいては火災の発生を未然に防止している。
温度ヒュ−ズとして、絶縁基板上に一対の膜電極を設け、これらの膜電極間に低融点可溶合金片を溶接し、この低融点可溶合金片上にフラックスを塗布し、膜電極やフラックス塗布低融点可溶合金片を覆って絶縁層を設けた基板型温度ヒュ−ズが公知であり、膜電極は導電ペ−スト、例えば銀ペ−ストをスクリ−ン印刷し、これを焼付けることにより形成している。
【0003】
温度ヒュ−ズにおいては、温度ヒュ−ズの溶断作動以前に保護すべき機器の負荷に応じて作動温度以下の温度範囲内でヒ−トサイクルに曝され、上記基板型温度ヒュ−ズでは電極−低融点可溶合金片の溶接界面に両者の熱膨張収縮率の差異やヤング率の差異のためにこのヒ−トサイクルに基づき剪断熱応力が作用するから、この剪断熱応力に耐え得るように溶接強度を充分に強固にする必要があり、溶接界面に充分な溶接熱を供給する必要がある。
しかしながら、余り大きな溶接熱量を加えると低融点可溶合金片の溶接箇所近傍にくびれが発生し、温度ヒュ−ズの作動特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
そこで、本出願人においては溶接熱量を特に大きくすることなく溶接界面に充分な溶接強度を付与するために、低融点可溶合金片を溶接する膜電極箇所に有底孔を設け、該有底孔に低融点可溶合金片を食い込ませアンカ−効果により溶接界面の剪断強度を高めることを既に提案した(実公平5−14431号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者のその後の検討結果によると、この解決手段では有底孔への空気の抱込みにより溶接時の溶融金属のこの孔への食い込みが妨げられることが往々にしてあり、まだ改良の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、基板型温度ヒュ−ズにおいて膜電極と低融点可溶合金片との溶接強度を増強し、作動特性の向上を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの製造方法は、導電ペーストをスクリーン印刷しこの印刷ペーストを焼き付けることにより絶縁基板上に膜電極を形成し、而るのち、膜電極の先端部間に低融点可溶合金片を溶接して基板型温度ヒュ−ズを製造する方法において、前記膜電極の印刷時に膜電極の先端部にスリットを形成し、前記の各先端部と低融点可溶合金片との溶接を、前記スリットの一部を露出させて行うことを特徴とし、スクリーン印刷・焼き付けに代えフォトエッチング法を使用することもできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1の(イ)は本発明に係る基板型温度ヒュ−ズを示す図面、図1の(ロ)は図1の(イ)におけるロ−ロ断面図である。
図1において、11は絶縁基板、12は膜電極であり、金属粒体とバインダ−を含む導電性ペ−ストをスクリ−ン印刷し、これを焼き付けることにより形成してある。121は膜電極の先端部に設けたスリットであり、前記の印刷時に形成する。13は膜電極の先端部間に溶接した低融点可溶合金片であり、この低融点可溶合金片13の溶接部からスリット121の先端部f及び始端部eを露出させてある。14は低融点可溶合金片13上に塗布したロジン系フラックス、16は膜電極12やフラックス塗布低融点可溶合金片12を覆って被覆した絶縁層である。
上記膜電極12のスリット121は図2に示すように、低融点可溶合金片13と同一の方向に設けることも可能である。
【0009】
上記絶縁基板11には厚さ100μm〜1000μmの耐熱性絶縁基板、例えばアルミナセラミックス基板や窒化アルミニウム基板等のセラミックス基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、紙フェノ−ル基板等を使用できる。
上記導電ペ−ストの金属粒体にはAg、Ag−Pd、Ag−Pt、Au、Ni、Cu等の粒体(粒径は通常0.4〜6μm)を用いることができ、バインダ−にはガラス粉末や金属酸化物粉末等の無機系バインダ−、エポキシ樹脂等の樹脂系バインダ−を使用できる。
上記膜電極12の厚みは5μm〜100μm、好ましくは15μm〜35μmとされる。
上記絶縁基板11の平面寸法は、通常縦横とも20mm以下である。
上記低融点可溶合金片13と膜電極12との溶接には、溶接箇所とこの箇所から隔たった膜電極部分とにピン電極を当接してパルス電流を流す抵抗溶接法を使用することができる。また、熱圧着法や超音波加熱法の使用も可能である。
【0010】
本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの製造方法においては、低融点可溶合金片13の膜電極12への溶接時、溶接箇所の低融点可溶合金片部分が溶融しこの溶融金属がスリット121に食い込んでいくが、スリット121の一部が溶融低融点可溶合金片の溶接部分から開放されており、溶融金属のスリットへの食い込むに伴いスリット内の空気がスリットの開放部分から追い出されていくから、スリットに溶融低融点可溶合金片の溶接部分を空気の抱込みをよく防止して食い込ませ得、この食い込んだ溶融低融点可溶合金片部分の凝固により低融点可溶合金片と膜電極とが優れた耐剪断強度で溶接される。
【0011】
本発明に係る基板型温度ヒュ−ズにおいてスリットの深さ(膜電極の厚み)は、前記食い込むを鋭く行わせるために深くすることが好ましいが、スクリ−ン印刷上限界があり、好ましい範囲は5〜35μmである。
【0012】
図3の(イ)は本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの別例を示し、アクシャルタイプであり、導電ペ−ストの印刷・焼付けにより形成した各膜電極12の先端部に両端ともにクロ−ズされたスリット121を設け、これらの膜電極12,12の先端部間に低融点可溶合金片13をスリット121の両端部を開放させて溶接してある。
【0013】
図3の(ロ)は本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの他の別例を示し、アクシャルタイプであり、導電ペ−ストの印刷・焼付けにより形成した各膜電極12の中央に沿いスリット121を設け、これらの膜電極12,12の先端部間に低融点可溶合金片13を溶接し、各膜電極12にリ−ド線15をリ−ド線端と低融点可溶合金片端間に前記スリット121を部分的に開放させて接合してある。
図3の(イ)及び(ロ)において、図1と同一の符号は同一の構成要素を示している。
【0014】
図4の(イ)は本発明に係る抵抗体付き基板型温度ヒュ−ズの一例を示す図面、図4の(ロ)は図4の(イ)におけるロ−ロ断面図である。
図4において、11は絶縁基板である。12aは低融点可溶合金片接続用膜電極、121はこの電極12aの先端部に設けたスリットである。12bは抵抗体接続用膜電極であり、前記と同様に金属粒体とバインダ−を含む導電性ペ−ストの印刷・焼き付けにより形成してある。15,…は各膜電極に接続したリ−ド線、13aは低融点可溶合金片接続用膜電極12a,12aの先端部間に溶接した低融点可溶合金片であり、スリット開始端とスリット先端を溶接部から開放してある。14は低融点可溶合金片13a上に塗布したフラックスである。11bは抵抗体接続用膜電極12b,12b間に設けた膜抵抗体であり、抵抗体接続用膜電極12b,12b間に抵抗ぺ−スト(抵抗体粉末、例えば酸化ルテニウム粉末とガラスバインダ−との混合物を溶媒でペ−スト状にしたもの)を印刷し、焼付けることにより形成してある(膜抵抗体上に必要に応じ保護膜、例えばガラス焼付け膜を設けることもできる)。16は絶縁層である。
【0015】
図5は本発明に係る抵抗体付き基板型温度ヒュ−ズの別例を示し、膜電極120を低融点可溶合金片接続用と抵抗体接続用に共通としてあり、低融点可溶合金片接続用電極12aの先端部と共通膜電極120の先端部とにそれぞれスリット121を設け、これらの先端部間に低融点可溶合金片13aを各スリット121の開始端と先端を各溶接部から開放して溶接してある。図5において、図4と同一の符号は同一の構成要素を示している。
【0016】
上記何れの実施例においても、絶縁層16には、常温硬化樹脂液例えば常温硬化エポキシ樹脂液への浸漬、滴下塗装等による樹脂封止の外、図7の(ロ)に示すように絶縁カバ−160(例えばナイロン、フェノ−ル等の樹脂カバ−、セラミックス等の無機質カバ−)によるパッケ−ジングを使用することもできる。また、図6に示すように、封止樹脂層161上に機械的強度の優れた封止板162(例えば、セラミックス板、ガラスエポキシ板、フェノ−ル板、窒化アルミニウム板等の絶縁板、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム)を積層して封止構造の薄厚化を図ることも可能である。
【0017】
上記のリ−ド線13には、銅線、銅被覆鉄線、ニッケル線、鉄線等の裸導線、またはこれらの絶縁被覆線を使用でき、裸導線を扁平加工して使用することもできる。さらに、裸導線に錫等のメツキを施すこともできる。
上記基板型温度ヒュ−ズにおいては、リ−ド線を省略し、図7の(イ)及び図7の(ロ)〔図7の(イ)におけるロ−ロ断面図〕に示すように膜電極123を絶縁基板11の裏側に周り込ませ、この裏側の膜電極部分を回路基板の導体にはんだ付けする、いわゆるチップタイプとすることもできる。図7において、121はスリットを、13は低融点可溶合金片を、14はフラックスを、160は絶縁カバ−をそれぞれ示している。
【0018】
上記何れの抵抗体付き基板型温度ヒュ−ズにおいても、リ−ド線を省略し、全ての膜電極を絶縁基板の裏側に周り込ませ、この裏側の膜電極部分を回路基板の導体にはんだ付けする、チップタイプとすることもできる。
【0019】
なお、本発明において膜電極をフォトエッチング法(銅箔積層絶縁基板にフォトレジスト膜を被覆し、マスクを介して露光し、膜電極形状に対しネガ像のフォトレジスト膜部分を可溶化して除去し、その除去により露出した銅箔部分を化学腐食液でエッチング除去し、次いで、残部の膜電極形状のフォトレジスト膜部分を除去液で溶解除去し、その直下の銅箔膜電極を露出させる)や金属蒸着法(例えば、アルミニウム蒸着)により形成することも可能である。
【0020】
【発明の効果】
本発明に係る基板型温度ヒュ−ズや抵抗体付き基板型温度ヒュ−ズの製造方法では、スリットを設けた膜電極先端部への低融点可溶合金片の溶接においてスリットの一部を開放しているから、スリット内から空気を逃がしつつ低融点可溶合金片の溶接部の溶融金属をスリットに食い込ませ得、低融点可溶合金片の溶接部を膜電極のスリットに空気の抱き込みをよく排除して食い込ませ得る。
従って、低融点可溶合金片の溶接部を膜電電極のスリットにシャ−プに食い込ませてその溶接界面の剪断強度を効果的に増強でき、両者の接合状態を前記ヒ−トサイクルのもとでも安定に維持でき、良好な作動性を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの一例を示す図面である。
【図2】 本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図3】 本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの上記とは別の異なる例を示す図面である。
【図4】 本発明に係る抵抗体付き基板型温度ヒュ−ズの一例を示す図面である。
【図5】 本発明に係る抵抗体付き基板型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図6】 本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図7】 本発明に係る基板型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【符号の説明】
11 絶縁基板
12 膜電極
12a 膜電極
12b 膜電極
120 膜電極
121 スリット
13 低融点可溶合金片
13a 低融点可溶合金片
13b 抵抗体
Claims (2)
- 導電ペーストをスクリーン印刷しこの印刷ペーストを焼き付けることにより絶縁基板上に膜電極を形成し、而るのち、膜電極の先端部間に低融点可溶合金片を溶接して基板型温度ヒュ−ズを製造する方法において、前記膜電極の印刷時に膜電極の先端部にスリットを形成し、前記の各先端部と低融点可溶合金片との溶接を、前記スリットの一部を露出させて行うことを特徴とする基板型温度ヒュ−ズの製造方法。
- フォトエッチング法ににより膜電極を絶縁基板上に形成し、而るのち、膜電極の先端部間に低融点可溶合金片を溶接して基板型温度ヒュ−ズを製造する方法において、前記フォトエッチング時に膜電極の先端部にスリットを形成し、前記の各先端部と低融点可溶合金片との溶接を、前記スリットの一部を露出させて行うことを特徴とする基板型温度ヒュ−ズの製造方法。
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