JP4085587B2 - 金属粉末の製造方法、金属粉末、導電性ペーストならびに積層セラミック電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主金属とタングステンまたは/およびモリブデンを含有する金属粉末の製造方法、このような金属粉末、このような金属粉末を含有する導電性ペースト、ならびにこのような導電性ペーストを用いて内部電極を形成した積層セラミック電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品の内部電極を形成するため、導電性ペーストが用いられている。このような用途の導電性ペーストは、例えば、金属粉末からなる導電成分と、有機ビヒクルとを含有してなる。金属粉末は、例えばAg,Pd,Ag−Pd等の貴金属粉末ならびにNi,Cu等の卑金属粉末などが用いられている。
【0003】
近年、積層セラミック電子部品の小型化ならびに薄層化に伴い、導電性ペーストに含まれる金属粉末の粒径を小さくする必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属粉末の粒径が小さくなると、その比表面積は2乗で大きくなり、金属粉末の焼結温度は低くなる。つまり、粒径の小さい金属粉末を導電成分とする導電性ペーストを用いて内部電極を形成した積層セラミック電子部品を作製すると、金属粉末の焼結が低温で開始するため、セラミックが焼結する前に金属粉末の焼結が急峻に進行してしまい、層間剥離(デラミネーション)やクラック等の構造的な不良が発生する問題がある。
【0005】
特開平4−345670号公報において、ペースト中にニッケル粉末とタングステン粉末を混在させて、セラミックコンデンサの電極形成用の導電性ペーストを製造する方法が記載されている。しかしながら、この方法の場合では、該公報において記載があるように、タングステンが酸化する問題が発生するので、粒径下限は500nmであり、600nm前後の極めて薄い塗布膜を形成する場合、塗布膜の表面粗さが粗くなり、これを焼成して内部電極を形成すると、同時に焼成したセラミック層を突き破り、前後の内部電極同士が短絡を引き起こし、ショート不良が発生する問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上述の問題点を解消すべくなされたもので、焼結開始温度を高温側にシフトさせて急峻な焼結収縮を抑制させるとともに、ショート不良の発生を抑制し得る金属粉末の製造方法、このような金属粉末、このような金属粉末を含有する導電性ペースト、ならびにこのような導電性ペーストを用いて内部電極を形成し、ショート不良,層間剥離(デラミネーション)ならびにクラックの発生を抑制した積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の金属粉末の製造方法は、少なくとも主金属を含む主金属塩と、タングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩と、を溶媒中に分散させた金属塩溶液と、還元剤を含有する還元剤溶液と、を準備し、これを混合し、主金属塩に含まれる主金属と、タングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩に含まれるタングステンまたは/およびモリブデンと、を析出させて金属粉末を得ることを特徴とする。
【0008】
本発明の金属粉末の製造方法における還元剤は、ヒドラジン,ヒドラジン水和物,水素化ホウ素化合物およびアミノボラザン系還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
本発明の金属粉末の製造方法における主金属は、Ag,Pd,CuおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
本発明の金属粉末の製造方法における主金属塩は、塩化物,硫酸塩および硝酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
本発明の金属粉末の製造方法におけるタングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩は、リチウム塩,ナトリウム塩,カリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の金属粉末の製造方法における溶媒は、水または水・アルコール混合溶液であることが好ましい。
【0013】
本発明の金属粉末の製造方法において析出するタングステンまたは/およびモリブデンの合計重量は、主金属とタングステンまたは/およびモリブデンの合計100重量%のうち0.1〜50重量%の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明の金属粉末は、上述の金属粉末の製造方法によって得られたことを特徴とする。
【0015】
本発明の導電性ペーストは、上述した本発明の金属粉末を含有することを特徴とする。
【0016】
本発明の積層セラミック電子部品は、複数のセラミック層が積層されてなるセラミック積層体と、セラミック層間に形成された複数の内部電極と、セラミック積層体に接して形成された端子電極と、を備え、端子電極は、上述した本発明の導電性ペーストを用いて形成されていることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の金属粉末の製造方法は、主金属と、タングステンまたは/およびモリブデンを析出させることに特徴があるため、タングステンやモリブデンの酸化が生じにくく、主金属とタングステンまたは/およびモリブデンからなる粒径の小さい金属粉末が得られる。
【0018】
還元剤は、金属塩溶液中の主金属を含む主金属塩、タングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩を還元し、これらを析出し得る還元剤を適宜選択することができる。還元剤としては、特に限定はしないが、ヒドラジン,ヒドラジン水和物,水素化ホウ素化合物およびアミノボラザン系還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アミノボラザン系還元剤であるジメチルアミンボランであることがより好ましい。
【0019】
また、還元剤の含有量は、特に限定はしないが、金属塩溶液中の金属塩を還元するために化学量論的に必要な量以上であることが好ましい。必要量の10倍を上回る量の還元剤を含有させても、余剰の還元剤は金属塩の還元に寄与しないことから、還元剤の含有量は、必要量の10倍以内であることが好ましい。
【0020】
また、主金属は、積層セラミック電子部品の内部電極形成に好適な導電性ペーストの導電成分として従来から用いられている貴金属粉末ならびに卑金属粉末を適宜選択することができ、特に限定はしないが、Ag,Pd,CuおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
また、主金属塩は、金属塩溶液の溶媒に良好に溶解し得るものを適宜選択することができ、塩化物,硫酸塩および硝酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
また、タングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩は、金属塩溶液の溶媒に良好に溶解し得るものを適宜選択することができ、リチウム塩,ナトリウム塩,カリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
また、析出するタングステンまたは/およびモリブデンの合計重量は、主金属とタングステンまたは/およびモリブデンの合計100重量%のうち0.1〜50重量%の範囲内であることが好ましい。析出量が0.1重量%以上であれば、タングステンまたは/およびモリブデンを析出させる本発明の効果が得られ易くなる。他方、析出量が50重量%以下であれば、積層セラミック電子部品の内部電極形成用の導電成分として機能する十分な程度の導電性を備える。
【0024】
また、金属塩溶液の溶媒は、水または水・アルコール混合溶液であることが好ましい。また、アルコールは、メタノール,エタノール,プロパノール等の1価のアルコールを少なくとも1種含有することがより好ましく、水1に対してエタノール1を混合したものを用いることがより好ましい。
【0025】
また、還元剤溶液ならびに金属塩溶液を混合して得られる反応溶液の温度は、特に限定はしないが、50〜70℃であることが好ましい。反応溶液の温度が50℃以上であれば、好ましい反応速度で反応が進行する。他方、反応溶液の温度が70℃以下であれば、突沸することなく反応が進行する。
【0026】
本発明の金属粉末は、上述した本発明の金属粉末の製造方法によって得られることを要する。なお、金属粉末の平均粒径は、特に限定はしないが、600nm前後の極めて薄い塗布膜を形成するためには、200nm以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の導電性ペーストは、本発明の金属粉末を含有することを要する。なお、有機ビヒクルやその他の添加剤を含有することを妨げない。また、有機ビヒクルとしては、特に限定はしないが、例えばエチルセルロースとアルキド樹脂からなる有機バインダ25重量%と、エチルカルビトール,1−オクタノールおよびケロシン系溶媒とからなる有機溶媒75重量%とを混合したもの等が挙げられる。
【0028】
本発明の積層セラミック電子部品の一つの実施形態について、図1に基づいて詳細に説明する。すなわち、積層セラミック電子部品1は、セラミック積層体2と、内部電極3,3と、端子電極4,4と、めっき膜5,5とから構成される。
【0029】
セラミック積層体2は、BaTiO3を主成分とする誘電体材料からなるセラミック層2aが複数積層された生のセラミック積層体が焼成されてなる。
【0030】
内部電極3,3は、セラミック積層体2内のセラミック層2a間にあって、複数の生のセラミック層2a上に本発明の導電性ペーストが印刷され、生のセラミック層とともに積層されてなる生のセラミック積層体と同時焼成されてなり、内部電極3,3のそれぞれの端縁は、セラミック積層体2の何れかの端面に露出するように形成されている。なお、内部電極3,3の形成に用いられる本発明の導電性ペーストは、析出するタングステンまたは/およびモリブデンの合計重量が、主金属とタングステンまたは/およびモリブデンの合計100重量%のうち0.1〜50重量%の範囲内である上述した本発明の金属粉末を含有する導電性ペーストであることを要する。
【0031】
端子電極4,4は、セラミック積層体2の端面に露出した内部電極3,3の一端と電気的かつ機械的に接合されるように、導電性ペーストがセラミック積層体2の端面に塗布され焼付けられてなる。
【0032】
めっき膜5,5は、例えば、SnやNi等の無電解めっきや、はんだめっき等からなり、端子電極4,4上に少なくとも1層形成されてなる。
【0033】
なお、本発明の積層セラミック電子部品のセラミック積層体2の材料は、上述の実施形態に限定されることなく、例えばPbZrO3等,その他の誘電体材料,絶縁体,磁性体,圧電体ならびに半導体材料からなっても構わない。また、本発明の積層セラミック電子部品の内部電極3の枚数は、上述の実施形態に限定されることなく、また何層形成されていても構わない。また、めっき膜5,5は、必ずしも備えている必要はなく、また何層形成されていても構わない。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
まず、金属粉末を生成し、これを用いた導電性ペーストを作製する。すなわち、表1に示すように、主金属を含む主金属塩として塩化ニッケル50gと、タングステン酸塩としてタングステン酸ナトリウム0.1g,0.2g,1.0g,5.0,10.0g,20.0g,40.0g,50.0g,70.0g,85.0g,90.0gと、還元剤としてジメチルアミンボラン50gと、溶媒として水とエタノールの体積比率が1:1の混合溶媒を準備した。
【0035】
次いで、主金属を含む主金属塩とタングステン酸塩を溶媒2Lに溶解して金属塩溶液を得、また還元剤を溶媒1Lに溶解し還元剤溶液を得、金属塩溶液と還元剤溶液を混合した混合溶液を60℃に保ち、主金属であるニッケルとタングステンが析出したニッケル−タングステン系共析物を生成させた後、分離・回収し純水で洗浄し、さらにアセトンで洗浄した後にオーブンで乾燥させて、試料2〜12の金属粉末を得た。なお、こうして得られた金属粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、80〜100nmの球形状粉末であった。また、X線光電子分光法(XPS)で測定したところ、タングステンならびにニッケルの酸化は生じていないことが確認された。また、試料1の金属粉末は、上述した主金属であるニッケル粉末50gをそのまま用いた。また、試料13の金属粉末は、上述した第1金属であるニッケル粉末40gと、平均粒径が500nmであるタングステン粉末10gを混合したものを用いた。
【0036】
次いで、試料2〜13の金属粉末について、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)を用いて、金属粉末全体100重量%における主金属の重量%ならびにタングステンの重量%、主金属とタングステンの合計100重量%におけるタングステンの重量%を測定し、また試料1〜13の金属粉末について、熱機械分析(TMA)を用いて焼結挙動(焼結開始温度,焼結終了温度)を測定し、これらを表1にまとめた。
【0037】
次いで、試料1〜13の金属粉末50重量%と、エチルセルロース10重量部をテルピネオール90重量部に溶解させた有機ビヒクル40重量%と、テルピネオール40重量%と、を混合し3本ロールミルを用いて混練を行ない、試料1〜13の導電性ペーストを得た。
【0038】
そこで、試料1〜13の導電性ペーストをガラス板にスクリーン印刷して、表面粗さを測定し、上述した焼結挙動(焼結開始温度,焼結終了温度)と表面粗さに基づいて評価を付し、これを表1にまとめた。なお、評価は、本発明の範囲内となった金属粉末ならびに導電性ペーストについては○、特に優れたものについては◎、範囲外となったものについては×を付した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から明らかであるように、主金属と共にタングステンを析出させていない試料1の金属粉末は、焼結開始温度が211℃、焼結終了温度が431℃で低く劣った。なお、試料1の導電性ペーストの表面粗さは61nmで全試料(1〜13)中で最も低く優れる結果となった。他方、ニッケル粉末とタングステン粉末を混合した試料13の金属粉末は、焼結開始温度が710℃、焼結終了温度が889℃であり、試料1の金属粉末と比較して何れも高く優れる結果となったが、試料13の導電性ペーストの表面粗さは438nmであり、極めて高く劣った。
【0041】
これに対して、主金属塩である塩化ニッケルと、タングステン酸ナトリウムと、を含有する金属塩溶液を用いて、ニッケルとタングステンを析出させた試料2〜12の金属粉末は、焼結開始温度が225〜877℃、焼結終了温度が448〜986℃であり、何れも試料1のニッケル粉末と比較して高く優れ、また試料2〜13の導電性ペーストの表面粗さも61〜67であり許容できる範囲内であったため、本発明の範囲内とした。特に、タングステンの析出量が、主金属とタングステンの合計100重量%のうち0.1重量%以上である試料3〜12は、焼結開始温度ならびに焼結終了温度が高温側にシフトする効果が顕著であったため、本発明の特に優れる範囲内となった。
【0042】
次いで、積層セラミック電子部品を作製する。まず、平均粒径(D50)が500nmのBaTiO3粉末を加水分解法で作製し、これに添加物(0.02Dy+0.02Mg+0.02Mnおよび3Si焼結助材)を、酸化物粉末あるいは炭酸化物粉末の状態で添加・混合し、セラミック材料を得た。次いで、上述のセラミック材料に、有機バインダとしてポリビニルブチラール、および溶媒としてエタノールを加え、ボールミルを用いて湿式混合して、セラミックスラリーを得、これをドクターブレード法を用いてシート成形し、1.4μmのセラミックグリーンシートを複数得た。
【0043】
次いで、所定枚数のセラミックグリーンシート上に、試料1〜13の導電性ペーストをスクリーン印刷し、これを乾燥させ、内部電極となるべき厚み600nmの塗布膜を形成し、所定枚数セラミックグリーンシートを積層した後、熱プレスして一体化させ、これを所定寸法にカットして、試料1〜13の生のセラミック積層体を得た。
【0044】
次いで、試料1〜13の生のセラミック積層体を、N2雰囲気にて400℃で加熱し、有機バインダを燃焼させた後、酸素分圧9×10-12MPampH2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気中にて1200℃を最高焼成温度として3時間保持するプロファイルで焼成し、試料1〜13のセラミック積層体を得た。なお、有効誘電体セラミック層の総数は250であり、1層あたりの対向電極の面積は19.1×10-6m2であった。
【0045】
次いで、試料1〜13のセラミック積層体の両端面に、端子電極用の導電性ペーストを塗布し、これを乾燥させた後に焼付けをして、試料1〜13の積層セラミック電子部品をそれぞれ100個ずつ得た。
【0046】
そこで、試料1〜13の積層セラミック電子部品のショート不良発生率,層間剥離(デラミネーション)発生率,カバレッジ(電極被覆面積率),クラック発生率,ESR(等価直列抵抗)を測定し、評価を付して、これらを表2にまとめた。
【0047】
なお、ショート不良発生率は、全数100個のうちショート不良が発生している試料の比率とした。また、層間剥離(デラミネーション)発生率は、試料の長さ方向に直行する平面で切断した断面を研磨し、顕微鏡観察することによって層間剥離発生の有無を目視判定し、全数100個のうち層間剥離が発生している試料の比率とした。また、カバレッジ(電極被覆面積率)は、試料の内部電極を剥離し、内部電極に穴が空いている状態の顕微鏡写真を撮影し、これを画像解析処理することによって定量化した。また、クラック発生率は、試料を樹脂に埋めて研磨を行ない、顕微鏡観察を行なって、全数100個のうち内部電極にヒビが発生している試料の比率とした。また、ESR(等価直列抵抗)は、試料の等価直列抵抗を測定し、全数100個の平均値とした。また、評価は、本発明の範囲内である積層セラミック電子部品については○、特に優れたものについては◎、範囲外となったものについては×を付した。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から明らかであるように、タングステンを析出させていないニッケル粉末を用いた、比較例である試料1の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率は0%であったが、層間剥離発生率が83%で高く劣り、カバレッジが62%で低く劣り、クラック発生率が100%で高く劣った。なお、ESRは103Ωで全試料(1〜13)中で最も低く優れる結果となった。
【0050】
また、タングステンの析出量が、主金属とタングステンの合計100重量%のうち0.1重量%を下回る0.09%である試料2の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率は0%,ESRは105Ωで低く優れたが、層間剥離発生率が76%で高く劣り、カバレッジが67%で低く劣り、クラック発生率が100%で高く劣ったため、本発明の範囲外となった。
【0051】
また、タングステンの析出量が、主金属とタングステンの合計100重量%のうち50重量%を上回る51.6%である試料12の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率,層間剥離発生率ならびにクラック発生率は0%であったが、ESRが568Ωで極めて高く劣ったため、本発明の範囲外となった。
【0052】
また、ニッケル粉末とタングステン粉末を混合した、比較例である試料13の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率が100%となったため、ESRの測定はできなかった。また、クラック発生率が100%で極めて高く劣った。
【0053】
これに対して、タングステンの析出量が、主金属とタングステンの合計100重量%のうち0.1〜50重量%の範囲内である試料3〜11の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率,層間剥離発生率ならびにクラック発生率が何れも0%であり、またカバレッジも90〜93%で高く優れた。さらに、ESRも111〜149Ωで、何れも許容できる範囲内であったため、本発明の範囲内となった。なお、試料3〜8は、カバレッジが高くESRが小さく優れたため、本発明の特に優れる範囲内となった。
【0054】
(実施例2)
まず、塩化ニッケルに代えて塩化銅を用い、タングステン酸塩に代えてモリブデン酸塩を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法によって金属粉末を生成し、これを用いた導電性ペーストを作製する。すなわち、表3に示すように、主金属を含む主金属塩として塩化銅50gと、モリブデン酸塩としてモリブデン酸カリウム0.1g,0.2g,1.0g,5.0g,10g,20g,40g,50g,70g,85g,90gと、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム50gと、溶媒として水1Lとエタノール1Lの混合溶媒を準備した。
【0055】
次いで、実施例1と同様の方法によって、主金属である銅とモリブデンが析出した銅−モリブデン系共析物からなる試料15〜25の金属粉末を得た。なお、こうして得られた金属粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、45〜55nmの球形状粉末であった。また、X線光電子分光法(XPS)で測定したところ、モリブデンならびに銅の酸化は生じていないことが確認された。また、試料14の金属粉末は、上述した主金属である銅粉末50gをそのまま用いた。また、試料26の金属粉末は、上述した主金属である銅粉末40gと、平均粒径が500nmであるモリブデン粉末10gを混合したものを用いた。
【0056】
そこで、試料15〜26の金属粉末について、実施例1と同様の方法で、金属粉末全体100重量%における主金属の重量%ならびにモリブデンの重量%、主金属とモリブデンの合計100重量%におけるモリブデンの重量%を測定し、また試料14〜26の金属粉末について、実施例1と同様の方法で、焼結挙動(焼結開始温度,焼結終了温度)を測定し、これらを表3にまとめた。
【0057】
次いで、試料14〜26の金属粉末50重量%と、エチルセルロース10重量部をテルピネオール90重量部に溶解させた有機ビヒクル40重量%と、テルピネオール40重量%と、を混合し3本ロールミルを用いて混練を行ない、試料14〜26の導電性ペーストを得た。
【0058】
そこで、実施例1と同様の方法で、試料14〜26の導電性ペーストの表面粗さを測定し、上述した焼結挙動(焼結開始温度,焼結終了温度)と表面粗さに基づいて評価を付し、これを表3にまとめた。なお、評価は、実施例1と同様とした。
【0059】
【表3】
【0060】
表3から明らかであるように、モリブデンを析出させていない銅粉末を用いた試料14の金属粉末は、焼結開始温度が165℃、焼結終了温度が324℃で低く劣った。なお、試料14の導電性ペーストの表面粗さは23nmで全試料(14〜26)中で最も低く優れる結果となった。他方、銅粉末とモリブデン粉末を混合した試料26の金属粉末は、焼結開始温度が475℃、焼結終了温度が614℃であり、試料14の金属粉末と比較して何れも高く優れる結果となったが、試料26の導電性ペーストの表面粗さは463nmであり、極めて高く劣った。
【0061】
これに対して、主金属塩である塩化銅と、モリブデン酸カリウムと、を含有する金属塩溶液を用いて、銅とモリブデンを析出させた試料15〜25の金属粉末は、焼結開始温度が173〜696℃、焼結終了温度が337〜848℃であり、何れも試料14の銅粉末と比較して高く優れ、表面粗さも23〜29nmで許容できる範囲内であったため、本発明の範囲内とした。特に、モリブデンの析出量が、主金属とモリブデンの合計100重量%のうち0.1重量%以上である試料16〜25は、焼結開始温度ならびに焼結終了温度が高温側にシフトする効果が顕著であったため、本発明の特に優れる範囲内となった。
【0062】
次いで、積層セラミック電子部品を作製する。試料1〜13の導電性ペーストに代えて、試料14〜26の導電性ペーストを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で、試料14〜26の積層セラミック電子部品をそれぞれ100個ずつ得た。
【0063】
そこで、試料14〜26の積層セラミック電子部品のショート不良発生率,層間剥離(デラミネーション)発生率,カバレッジ(電極被覆面積率),クラック発生率,ESR(等価直列抵抗)を測定し、評価を付して、これらを表4にまとめた。なお、各々の測定方法ならびに評価は、実施例1と同様とした。
【0064】
【表4】
【0065】
表4から明らかであるように、モリブデンを析出させていない銅粉末を用いた、比較例である試料14の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率は0%であったが、層間剥離発生率が82%で高く劣り、カバレッジが62%で低く劣り、クラック発生率が100%で高く劣った。なお、ESRは92Ωで全試料(14〜26)中で最も低く優れる結果となった。
【0066】
また、モリブデンの析出量が、主金属とモリブデンの合計100重量%のうち0.1重量%を下回る0.078%である試料15の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率は0%,ESRは96Ωで低く優れたが、層間剥離発生率が75%で高く劣り、カバレッジが63%で低く劣り、クラック発生率が100%で高く劣ったため、本発明の範囲外となった。
【0067】
また、モリブデンの析出量が、主金属とモリブデンの合計100重量%のうち50重量%を上回る52.0%である試料25の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率,層間剥離発生率ならびにクラック発生率は0%であったが、ESRが583Ωで極めて高く劣ったため、本発明の範囲外となった。
【0068】
また、銅粉末とモリブデン粉末を混合した、比較例である試料26の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率が100%となったため、ESRの測定はできなかった。また、クラック発生率が100%で極めて高く劣った。
【0069】
これに対して、モリブデンの析出量が、主金属とモリブデンの合計100重量%のうち0.1〜50重量%の範囲内である試料16〜25の積層セラミック電子部品は、ショート不良発生率,層間剥離発生率ならびにクラック発生率が何れも0%であり、またカバレッジも86〜92%で高く優れた。さらに、ESRも99〜127Ωで、何れも許容できる範囲内であったため、本発明の範囲内となった。なお、試料16〜21は、カバレッジが高くESRが小さく優れたため、本発明の特に優れる範囲内となった。
【0070】
【発明の効果】
以上のように本発明の金属粉末の製造方法は、少なくとも主金属を含む主金属塩と、タングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩と、を溶媒中に分散させた金属塩溶液と、還元剤を含有する還元剤溶液と、を準備し、これを混合し、主金属塩に含まれる主金属と、タングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩に含まれるタングステンまたは/およびモリブデンと、を析出させて金属粉末を得ることを特徴とすることで、焼結開始温度を高温側にシフトさせるとともに、急峻な焼結収縮を抑制させた金属粉末の製造方法、このような金属粉末、このような金属粉末を含有する導電性ペースト、ならびにこのような導電性ペーストを用いて内部電極を形成し、層間剥離(デラミネーション)ならびにクラックの発生を抑制した積層セラミック電子部品を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一つの実施形態の積層セラミック電子部品の断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミック電子部品
2 セラミック積層体
2a セラミック層
3 内部電極
4 端子電極
Claims (10)
- 少なくとも主金属を含む主金属塩と、タングステン酸塩または/およびモリブデン酸塩と、を溶媒中に分散させた金属塩溶液と、
還元剤を含有する還元剤溶液と、を準備し、これを混合し、
前記主金属塩に含まれる主金属と、前記タングステン酸塩または/および前記モリブデン酸塩に含まれるタングステンまたは/およびモリブデンと、を析出させて金属粉末を得ることを特徴とする、金属粉末の製造方法。 - 前記還元剤は、ヒドラジン,ヒドラジン水和物,水素化ホウ素化合物およびアミノボラザン系還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の金属粉末の製造方法。
- 前記主金属は、Ag,Pd,CuおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴する、請求項1または2に記載の金属粉末の製造方法。
- 前記主金属塩は、塩化物,硫酸塩および硝酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の金属粉末の製造方法。
- 前記タングステン酸塩または/および前記モリブデン酸塩は、リチウム塩,ナトリウム塩,カリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の金属粉末の製造方法。
- 前記溶媒は、水または水・アルコール混合溶液であることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の金属粉末の製造方法。
- 析出する前記タングステンまたは/および前記モリブデンの合計重量は、前記主金属と前記タングステンまたは/および前記モリブデンの合計100重量%のうち0.1〜50重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の金属粉末の製造方法。
- 請求項1〜7の何れかに記載の金属粉末の製造方法によって得られたことを特徴とする、金属粉末。
- 請求項8に記載の金属粉末を含有することを特徴とする、導電性ペースト。
- 複数のセラミック層が積層されてなるセラミック積層体と、前記セラミック層間に形成された複数の内部電極と、前記セラミック積層体に接して形成された端子電極と、を備える積層セラミック電子部品であって、
前記内部電極は、請求項7に記載の金属粉末の製造方法によって得られた金属粉末を含有する導電性ペーストを用いて形成されていることを特徴とする、積層セラミック電子部品。
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