JP4441951B2 - 積層セラミック電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品に関するもので、特に、内部電極における改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムなどのセラミック誘電体材料は、その高い比誘電率を利用して、コンデンサ材料として広く用いられてきた。また、受動部品であるコンデンサは、近年の電子部品の小型化の流れから大きい静電容量と小型化が望まれている。
【0003】
一方、セラミック誘電体を誘電体層に用いた積層セラミックコンデンサは、空気中で1300℃程度の高温で焼成することが必要であったため、内部電極としてバラジウム、白金などの貴金属またはこれらの合金が使用されてきた。しかし、これらの電極材料は非常に高価であり、製品コストに占める電極材料コストの割合が高く、コストダウンが困難であった。
【0004】
上記問題を解決するため、積層セラミックコンデンサの内部電極材料の卑金属化が進められ、焼成時に、電極を酸化させないために中性または還元性雰囲気で焼成できる耐還元性を考慮したセラミック誘電体材料が種々開発されてきた。このような卑金属内部電極材料としては、コバルト、ニッケル、銅などがあるが、コストや耐酸化性の点から、ニッケルが主に用いられている。
【0005】
現在、積層セラミックコンデンサは、さらなる小型化、大容量化が求められており、そのため、セラミック誘電体材料の高誘電率化、およびセラミック誘電体からなるセラミック層の薄層化が検討され、同時に、電極についても、その薄層化が検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
積層セラミックコンデンサの内部電極は、一般に、金属粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷などの印刷法により付与することによって形成される。このような導電性ペーストに含有される金属粉末として、たとえばニッケル粉末が用いられるとき、ニッケル粉末としては平均粒径が250nmを超えるものが多く使用されている。しかしながら、このように粒子径が大きいと、内部電極の薄膜化が困難である。
【0007】
また、平均粒径が250nm程度もあるニッケル粉末を使用した場合には、誘電体セラミックの誘電特性を引き出すために内部電極の厚みを0.8μm以上とすることが必要であった。
【0008】
また、内部電極間に位置するセラミック層を薄くすることは、積層セラミックコンデンサの静電容量を向上させるための最も有効な手段であるが、たとえば、内部電極の厚み0.8μmに対して、セラミック層の厚みが3.0μm以下になると、内部電極材料とセラミックとの収縮率の違いにより、デラミネーション、ショート不良、クラックといった積層セラミックコンデンサにとって致命的な構造欠陥が頻繁に生じる。
【0009】
また、ニッケル粉末の平均粒径および/またはセラミック原料粉末の平均粒径が大きい場合には、内部電極とセラミック層との界面での凹凸が大きくなり、焼成後において、内部電極のカバレッジ(有効電極面積)の低下(電極切れの増大)の問題がもたらされ、このことが、積層セラミックコンデンサの信頼性の低下につながっている。
【0010】
そこで、この発明の目的は、積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品において、構造欠陥なく、内部電極およびセラミック層の薄層化を可能とする技術を提供し、大容量というような高性能な、しかも小型の積層セラミック電子部品を高い信頼性をもって提供しようとすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、セラミック原料粉末を焼結させて得られた複数の積層されたセラミック層と、これらセラミック層間の特定の界面に沿って位置され、かつ金属塩を溶解して得られた金属塩溶液を、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンと、水酸化ナトリウムとを溶解した還元溶液に投入することによって生成した金属粉末を焼結させて得られた内部電極とを含む、積層体を備える、積層セラミック電子部品に向けられるものであって、上記のような技術的課題を解決するため、内部電極の厚みを0.2〜0.7μmとしたことを特徴としている。
【0012】
この発明は、上述した積層体の相対向する各端面上に形成される外部電極をさらに備え、セラミック層はセラミック誘電体からなり、複数の内部電極が、何れかの外部電極に電気的に接続されるように、それぞれの端縁を端面に露出させた状態でそれぞれ形成されている、そのような積層セラミックコンデンサに対して特に有利に適用される。
【0013】
この発明において、好ましくは、セラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径が0.5μm以下とされる。
【0014】
また、この発明の好ましい実施形成において、内部電極を形成するために溶液中で金属塩を還元することにより得られた金属粉末を含む導電性ペーストが使用されるが、この導電性ペースト中の溶液中で金属塩を還元することにより得られた金属粉末の平均粒径は10〜200nmとされることが好ましい。この場合、溶液中で金属塩を還元することにより得られた金属粉末としては、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンによって溶液中で金属塩を還元することによって得られた金属粉末、特定的には卑金属、より特定的にはニッケルまたはニッケル合金のようなニッケルを含む金属からなる粉末が有利に用いられる。
また、この発明において、内部電極を形成するため、好ましくは溶液中で金属塩を還元することによって得られた金属粉末を含む導電性ペーストが印刷法により付与される。
【0015】
また、この発明において、セラミック層を形成するための焼結前のセラミック原料粉末の平均粒径は、0.5μm以下であることが好ましい。
【0016】
また、この発明は、内部電極に接するセラミック層の厚みが3.0μm以下である場合に特に有利に適用される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明が図1に示すような構造の積層セラミックコンデンサ1に適用された場合の実施形態について説明する。
【0018】
図1を参照して、積層セラミックコンデンサ1は、複数の積層されたセラミック誘電体からなるセラミック層2を有する積層体3と、この積層体3の第1および第2の端面4および5上にそれぞれ設けられる第1および第2の外部電極6および7とを備える。積層セラミックコンデンサ1は、全体として直方体形状のチップタイプの電子部品を構成する。
【0019】
積層体3の内部には、第1の内部電極8と第2の内部電極9とが交互に配置される。第1の内部電極8は、第1の外部電極6に電気的に接続されるように、各端縁を第1の端面4に露出させた状態でセラミック層2間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成され、第2の内部電極9は、第2の外部電極7に電気的に接続されるように、各端縁を第2の端面5に露出させた状態でセラミック層2間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成される。
【0020】
この積層セラミックコンデンサ1を製造するため、出発原料として、チタン酸バリウムなどの主原料すなわちセラミック原料粉末と特性改質などを目的とした添加物とが用意される。セラミック原料粉末としては、好ましくは、後述する理由により、たとえば仮焼温度を調整することによって、平均粒径が0.5μm以下とされたものが用いられる。
【0021】
これらセラミック原料粉末および添加物は、所定量ずつ秤量され、湿式混合を経て、混合粉とされる。より具体的には、各添加物成分は、酸化物粉末あるいは炭酸化物粉末の形態で、セラミック原料粉末に混合する方法によって添加され、湿式混合される。このとき、各添加物を有機溶媒に可溶な状態とするため、アルコキシドとしたり、アセチルアセトネートまたは金属石鹸のような化合物としてもよい。また、各添加物成分を含む溶液を、セラミック原料粉末の表面に付与し、熱処理するなどの方法も可能である。
【0022】
次いで、上述の混合粉に有機バインダおよび溶媒を添加することによって、セラミックスラリーが調製され、このセラミックスラリーを用いて、セラミック層2となるセラミックグリーンシートが作製される。セラミックグリーンシートの厚みは、後述する理由により、好ましくは、焼成後における厚みが3.0μm以下になるように設定される。
【0023】
次いで、特定のセラミックグリーンシート上に、内部電極8および9となるべき導電性ペースト膜がスクリーン印刷などの印刷法によって形成される。この導電性ペースト膜の厚みは、焼成後における厚みが0.2〜0.7μmとなるように設定される。
【0024】
上述の導電性ペースト膜を構成する導電性ペーストは、金属粉末、バインダおよび溶剤を含むもので、金属粉末としては、後述する理由により、金属塩を溶解して得られた金属塩溶液を、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンと、水酸化ナトリウムとを溶解した還元溶液に投入することによって生成した金属粉末で平均粒径が10〜200nmのものを用いるのが好ましい。一例として、ニッケル粉末、エチルセルロースバインダおよびテルピネオールなどの溶剤を含む導電性ペーストが用いられる。この導電性ペーストは、平均粒径が10〜200nmといった極めて小さい粒径のニッケル粉末の凝集を解きまたは防止し、これらを良好に分散させるため、たとえば3本ロールミルなどを用いて入念に調製される。
【0025】
次いで、上述のように導電性ペースト膜を形成したセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、プレスされた後、必要に応じてカットされる。このようにして、複数のセラミックグリーンシート、およびセラミックグリーンシート間の特定の界面に沿ってそれぞれ形成された複数の内部電極8および9となる導電性ペースト膜を積層したものであって、内部電極8および9となる導電性ペースト膜の各端縁を端面4または5に露出させている、生の状態の積層体3が作製される。
【0026】
次いで、この積層体3は還元性雰囲気下で焼成される。このとき、好ましくは、後述する理由により、セラミック層2を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径は、0.5μm以下となるように設定される。
【0027】
次いで、焼成された積層体3における第1および第2の内部電極8および9の露出した各端縁にそれぞれ電気的に接続されるように、積層体3の第1および第2の端面4および5上に、それぞれ、第1および第2の外部電極6および7が形成される。
【0028】
外部電極6および7の材料組成は、特に限定されるものではない。具体的には、内部電極8および9と同じ材料を使用することができる。また、たとえば、Erg、Pd、Erg−Pd、Cu、Cu合金などの種々の導電性溶液中で金属塩を還元することによって得られた金属粉末の焼結層、または、上記導電性溶液中で金属塩を還元することによって得られた金属粉末とB203−Li2O−SiO2−BaO系、B2O3−SiO2−BaO系、Li2O−SiO2−BaO系、B2O3−SiO2−ZnO系、などの種々のガラスフリットとを配合した焼結層によって構成されることができる。このような外部電極6および7の材料組成は、積層セラミックコンデンサ1の用途、使用場所などを考慮して適宜選択される。
【0029】
金属粉末、より特定的にはニッケル粉末は、たとえば、液相法または、化学気相法、水素アーク放電法、ガス中蒸発法のような気相法によって作製することができることが知られている。
【0030】
本発明において好適に用いられる金属粉末、より特定的にはニッケル粉末は液相法によって作製され、作製方法は次の通りである。
液相法によるニッケル粉末の作製方法は具体的には、ニッケル塩を溶液に溶解して得られたニッケル塩溶液を抱水ヒドラジンと水酸化ナトリウムを溶液に溶解した還元溶液に適宜投入することによってニッケル微粉末が生成できる。
【0031】
液相法と気相法で得られたニッケル微粉末は粒径は同じであっても物理的特性は大きく異なる。液相法でニッケル粉末を作製すると多結晶体になるが気相法で作製すると総じて結晶度の高い単結晶に近い粉末が得られる。また、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンを用いて液相法でニッケル粉末を作製した場合にはニッケル粉末中に窒素が同時に析出する。上記の特徴から液相法で作製したニッケル粉末を用いて還元雰囲気中で焼成した場合、気相法で作製したニッケル粉末を用いた場合は焼結が急峻に進むのに比して焼結が緩やかに進み、また同時に析出する窒素によって還元雰囲気のコントロールが容易に行える。このため焼成時にセラミック層が焼成しやすい条件で焼成できるので、焼成後の内部電極のショート不良やクラックの発生を抑えることが容易になる。
【0032】
なお、外部電極6および7は、前述のように、その材料となる導電性ペーストを焼成後の積層体3上に塗布して焼き付けることによって形成されてもよいが、焼成前の積層体3上に塗布して、積層体3の焼成と同時に焼き付けることによって形成されるようにしてもよい。その後、必要に応じて、外部電極6および7は、Ni、Cu、Ni−Cu合金等からなるめっき層10および11によってそれぞれ被覆される。また、さらに、これらめっき層10および11上に、半田、錫等からなる第2のめっき層12および13が形成されてもよい。
【0033】
この発明において、内部電極8および9の厚みについて、また、この発明に係る好ましい実施形成では、内部電極8および9を形成するために使用される導電性ペーストに含まれるニッケル粉末、セラミック層2を形成するための焼結前のセラミック原料粉末およびセラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインのそれぞれの平均粒径、ならびにセラミック層2の厚みについて、前述したように、好ましい範囲が規定される。なお、この明細書において、「平均粒径」と言うときは、粉末またはグレインの電子顕微鏡写真を画像解析して求めた個数基準の粒度分布における50%粒子相当径(D50)を意味している。
【0034】
この発明において、内部電極8および9の厚みを0.7μm以下と規定したのは、0.7μmを超えると、セラミック層2の厚みが3.0μm以下のように薄くされた場合に、ニッケルを含む内部電極8および9とセラミック層2との収縮率の差によって生ずるデラミネーションの発生が避けられないためである。言い換えると、内部電極8および9の厚みを0.7μm以下とすることによって、上述のように、セラミック層2の厚みを問題なく3.0μm以下とすることができ、積層セラミックコンデンサ1の大容量化に貢献できる。
【0035】
他方、内部電極8および9の厚みを0.2μm以上と規定したのは、0.2μm未満にすると、焼成時において、内部電極8および9に含まれるニッケルがセラミック層2に含まれるセラミックと反応し、それによって、ニッケルの酸化が生じたり、この酸化によってデラミネーションが起こり、内部電極としての機能を果たせなくなるためである。
【0036】
また、セラミック層2を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径を、好ましくは、0.5μm以下と規定したのは、以下の理由による。すなわち、セラミックグレインの平均粒径が0.5μm以下の場合には、内部電極8および9とセラミック層2との間の界面での凹凸が小さくなる。この効果により、内部電極8および9において、電極切れが減少し、電極のカバレッジ(有効電極面積)が大きくなり、さらには界面凹凸部にかかる電界集中が抑制される。これらのことから、高温負荷試験などでの寿命時間が長くなり、積層セラミックコンデンサの信頼性がより向上することになる。
【0037】
また、内部電極8および9に使用する導電性ペースト中のニッケル粉末は、金属塩を溶解して得られた金属塩溶液を、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンと、水酸化ナトリウムとを溶解した還元溶液に投入することによって生成した金属粉末で好ましくは平均粒径を10〜200nmに規定したのは、以下の理由による。気相法で作製したニッケル粉末を内部電極に用いた場合には焼成後、内部電極内または内部電極とセラミック層との界面に内部応力が残る、この内部応力が開放されると時間の経過とともに内部電極内または内部電極とセラミック層との界面に応力が発生して問題となる恐れがある。これに比して液相法で作製したニッケル粉末を用いて還元雰囲気中で焼成した場合、焼結が緩やかに進む。このため焼成時にセラミック層が焼成しやすい条件で焼成できるので、内部電極中や内部電極層とセラミック層の界面で内部応力が発生しにくくなる。このため、焼成後の内部電極のショート不良やクラックの発生を抑えることが容易になる。
【0038】
また、ニッケル粉末の平均粒径が10nm未満であると、スクリーン印刷などの印刷法に適用可能な粘度をもって、導電性ペーストを作製することが困難になる。また、仮に、そのような粘度の高い導電性ペーストを用いてスクリーン印刷したとしても、高粘度のために、内部電極8および9となる導電性ペースト膜を平滑に形成することが困難で、「かすれ」やピンホールを生じ、これらが原因となって、カバレッジの低下や電極切れがもたらされることがある。
他方、ニッケル粉末の平均粒径が200nmを超えると、ニッケル粒子が大き過ぎるため、内部電極8および9となる導電性ペースト膜を平滑に形成することが困難となり、カバレッジを低下させてしまう。また、内部電極8および9とセラミック層2との間の界面での凹凸が大きくなる。
【0039】
また、セラミック層2を形成するための焼結前のセラミック原料粉末の平均粒径を、好ましくは、0.5μm以下に規定したのは、このようにセラミック原料粉末の平均粒径を0.5μm以下であると、グリーンシートにおけるセラミック充填率が向上し、また、グリーンシートの平滑性が良好となり、たとえば3μm以下の厚みのセラミック層を問題なく形成することができるようになるためである。
【0040】
また、内部電極8および9を形成するための導電性ペースト中のニッケル粉末の平均粒径を前述のような好ましい範囲内に選ぶばかりでなく、これに加えて、セラミック層2を形成するための焼結前のセラミック原料粉末の平均粒径を上述のような好ましい範囲内に選ぶようにすると、カバレッジ、信頼性などの点で、さらに好ましい結果が得られる。
【0041】
また、本発明の実施形態は、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを用いたが、実質的に同様の構造を含む、例えば多層セラミック基板等の他の積層セラミック電子部品に対しても、本発明を適用することができる。
【0042】
また、内部電極を形成するための導電性ペーストに含まれる、金属塩を溶解して得られた金属塩溶液を、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンと、水酸化ナトリウムとを溶解した還元溶液に投入することによって生成した金属粉末としては、上述したようなニッケル粉末の他、ニッケル合金、あるいは銅もしくは銅合金のような他の卑金属、さらには、貴金属の粉末であってもよい。
【0043】
【実施例】
次に、この発明をより具体的な実施例に基づき詳細に説明する。なお、この発明の範囲内における実施可能な形態は、このような実施例のみに限定されるものではない。たとえば、この実例では、誘電体セラミックについては、チタン酸バリウム系のみを例示しているが、この他に、チタン酸ストロンチウム、チタンカルシウムなどを主成分とするペロブスカイト構造を示す誘電体セラミックについても、同様の効果が確認されている。
【0044】
この実施例において作製しようとする積層セラミックコンデンサは、図1に示ような構造の積層セラミックコンデンサ1である。
【0045】
まず、セラミック原料粉末としてのチタン酸バリウム(以下、BaTiO3)粉末を加水分解法で作製し、このBaTiO3粉末を、表1に示すように、種々の「仮焼温度」で仮焼することによって、粉末としての平均粒径(D50)が0.1〜0.8μmの範囲で変えられた複数種類のBaTiO3粉末A〜Eをそれぞれ用意した。
【0046】
【表1】
次に、上述のBaTiO3粉末A〜Eの各々に、表2に示すように、添加物(αDy+βMg+γMnおよびSi焼結助剤)を、酸化物粉末あるいは炭酸化物粉末の状態で、種々のモル部を持って添加し混合することによって、複数種類のセラミック組成物を作製した。
【0047】
【表2】
表2の「セラミック組成物の種類」において、「a」が添えられているもの(たとえばAaなど)は、焼成してもセラミックはグレイン成長しない系であり、焼結後のセラミックのグレイン径と原料粉末径とは、実質的に同じである。他方、「b」が添えられているもの(たとえばAbなど)は、焼成時にグレイン成長しやすい系であり、セラミックグレインの平均粒径は、原料粉末の平均粒径に比べて大きくなる。
【0048】
次に、表2に示したチタン酸バリウム系の各セラミック組成物の粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびエタノール等の有機溶剤を加えて、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを調整した。次いで、このセラミックスラリーにドクターブレード法を適用することによって、セラミックグリーンシートを成形した。このとき、ドクターブレードのスリット幅を調整することによって、4.2μmおよび1.4μmの各厚みのセラミックグリーンシートを作製した。なお、セラミックグリーンシートにおける4.2μmおよび1.4μmの各厚みは、後述する評価結果からわかるように、積層工程および焼成工程を経た後でのセラミック層における3.0μmおよび1.0μmの各厚みに相当する。
【0049】
他方、平均粒径が5nm、15nm、50nm、100nm、180nm、および250nmというように変えられた球状のニッケル粉末を以下の方法でそれぞれ作製した。すなわち、液相法によって平均粒径が5nm、15nm、50nm、100nm、180nm、および250nmのニッケル粉末を作製し、気相法によるものは、平均粒径が5nmおよび15nmのものはガス中蒸発法で作製し、平均粒径が50nmおよび100nmのものは水素アーク放電法で作製し、平均粒径が180nmおよび250nmのものは化学気相法で作製した。
なお、液相法の球状のニッケル粉末は、ニッケル塩を溶解して得られたニッケル塩溶液を抱水ヒドラジンと水酸化ナトリウムを溶解した還元溶液に適宜投入することによって生成した。また、ニッケル粉末の製造方法はこの実施例に限られるものではなく、多結晶体でありかつ窒素を含有しているものなら適宜使用できる。
【0050】
次に、これら各ニッケル粉末42wt%に対して、エチルセルロース系バインダ6wt%をテルピネオール94wt%に溶解して作製した有機ビヒクル44wt%とテルピネオール14wt%とを加えて、3本ロールミルにより入念に分散混合処理を行なうことによって、良好に分散したニッケル粉末を含有する導電性ペーストを調製した。
【0051】
次に、前述の各セラミックグリーンシート上に、これらニッケルを導電成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極となる導電性ペースト膜を形成した。このとき、スクリーンパターンの厚みを変更することによって、導電性ペースト膜の乾燥後の厚みが、1.2μm、1.0μm、0.6μm、0.3μm、および0.15μmとそれぞれなる各試料を作製した。なお、導電性ペースト膜の乾燥後における1.2μm、1.0μm、0.6μm、0.3μm、および0.15μmの各厚みは、後述する評価結果からわかるように、積層工程および焼成工程を経た後での内部電極における0.8μm、0.7μm、0.4μm、0.2μm、および0.1μmの各厚みに相当する。
【0052】
次いで、セラミックグリーンシートを、上述の導電性ペースト膜の引き出されている側が、互い違いとなるように複数層積層し、熱プレスして一体化した。次いで、一体化したプレス体を所定の寸法にカットし、生の積層体としての生チップを得た。この生チップを、N2雰囲気中にて300℃の温度に加熱し、バインダを燃焼させた後、酸素分圧10は9〜10-12MPaのH2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気中において、後掲の表3〜表6の「焼成温度」に示す1100〜1300℃の範囲内の何れかの最高焼成温度で2時間保持するプロファイルで焼成した。
【0053】
焼成後の積層体の両端面にB2O−Li2O−SiO2−BaO系のガラスフリットを含有し、銀を導電成分とする導電性ペーストを塗布し、N2雰囲気中において600℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成した。
【0054】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅が5.0mm、長さが5.7mm、厚さが2.4mmであり、内部電極間に介在するセラミック層の厚みは3μmまたは1μmであった。また、有効誘電体セラミック層の総数は5であり、1層当たりの対向電極の面積は16.3×10-6m2であった。
【0055】
次いで、これら得られた積層セラミックコンデンサの各試料について、以下のような要領で、その積層構造、電気特性および信頼性を評価した。これを順に説明する。
【0056】
得られた積層セラミックコンデンサのセラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径は、積層セラミックコンデンサの断面研磨面を化学エッチング処理し、走査型電子顕微鏡で観察することによって求めた。
【0057】
内部電極およびセラミック層の各厚みは、積層セラミックコンデンサの断面研磨面を、走査型電子顕微鏡で観察することによって求めた。
【0058】
積層セラミックコンデンサの層間剥離(デラミネーション)については、試料断面を研磨し、顕微鏡観察することによって目視判定し、全試料数に対する層間剥離の発生した試料数の比率(剥離発生率)を求めた。
【0059】
内部電極の被覆面積率(カバレッジ)は、試料の内部電極面を剥離し、電極面に穴が空いている様子を顕微鏡写真に撮り、これを画像解析処理することによって定量化した。
【0060】
以上の構造評価の結果で良好と判断された試料について、以下の電気特性を評価した。これを順に説明する。
【0061】
静電容量(C)および誘電体損失(tanδ)については、これらを自動ブリッジ式測定器を用いてJIS規格5102に従って測定し、得られた静電容量から比誘電率(e)を算出した。
【0062】
高温負荷試験については、温度150℃にして10kV/mmの直流電圧を印加しながら、その絶縁抵抗の経時変化を測定し、各試料の絶縁抵抗値(R)が105Ω以下になった時点を故障として、故障に至る時間の平均すなわち平均寿命時間を求めた。
【0063】
高温保持試験としてJIS規格C0021に基づき各試料を250℃に72時間保持した後のショート不良率を測定した。ショート不良率は作製した積層セラミックコンデンサの電気容量を測定したときに短絡等によって電気容量の得られなかった試料の比率を求めた。
【0064】
同時に高温保持を行った試料のクラック発生率を測定した。クラック発生率は作製した積層セラミックコンデンサを樹脂に埋めて研磨を行い顕微鏡観察を行い、内部電極内にひびが発生している試料の比率を求めた。
【0065】
以上の各結果を、表3,表4,表5,および表6に示す。なお、各表の試料番号に*が付された条件は、この発明の範囲から逸脱したものである。
【0066】
次に、内部電極の厚みおよびニッケル粉末の平均粒径について考察する。表3(試料番号1〜32)は、本発明に係る液相法により作製したニッケル粉末を使用して、作製した積層セラミックコンデンサについての結果である。一方、表3.2(試料番号33〜50)は気相法(ガス中蒸発法、水素アーク放電法、化学気相法)により作製したニッケル粉末を用いて作製した積層セラミックコンデンサについての結果である。
【0067】
表1の「BaTiO3粉末の種類」として平均粒径が0.2μmの「B」を用いながら、表2の「セラミック組成物の種類」としてグレイン成長しない「Ba」を用いることによって、積層セラミックコンデンサのセラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径が0.2μmとなった各試料について、セラミック層の厚みが3μmおよび1μmの各場合において、内部電極の厚みを種々に変え、この内部電極の厚みと層間剥離(デラミネーション)発生率との関係を主として示したものである。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
表3において、*が付された試料1〜4および17〜20は、内部電極の厚みが0.8μmであり、高い比率でデラミネーションが発生している。また、同様に*が付された試料14〜16および30〜32は、内部電極の厚みが0.1μmであり、これについても高い比率でデラミネーションが発生している。後者のデラミネーションは、ニッケルの酸化によるものである。
【0070】
表4に示した試料33〜50は高温保持後、クラックが15%以上発生している。これに比して表3に示した試料1〜32はクラックが発生していない(発生率0%)。これは、液相法で作製したニッケル粉末が多結晶体であることに起因して、焼結が気相法で作製したニッケル粉末よりも緩やかに進むため焼成時にマイクロクラックが発生しないことによる。これに比して気相法で作製したニッケル粉末を内部電極に用いると気相法で作製したニッケル粉末は単結晶に近い状態であるため焼結がある温度で急峻に進むので焼成時にマイクロクラックが発生する、この試料を高温保持することで空孔の移動や残留応力の開放に伴って顕微鏡で観察可能なクラックが現れる。
【0071】
表4に示した気相法で作製したニッケル粉末を用いた試料33〜50はショート不良が起こっている。これに比して表3に示した試料で*の付されてない液相法で作製したニッケル粉末を用いた試料5〜13、21〜29はショート不良が起こらない。クラックが発生すると内部電極同士が短絡して電気容量が得られなくなりコンデンサとして機能しなくなるのでクラックはショート不良の原因となる。クラックはショート不良の原因であることは表3,表4に示すようにクラック発生率が高いときにはショート不良率が高く、クラックが発生しないときにはショート不良も発生しないことからもがわかる。これらのことからショート不良の発生しない液相法で作製したニッケル粉末は内部電極用金属粉末として好適である。
【0072】
これに対して、試料5〜13および21〜29のように、内部電極の厚みが0.2〜0.7μmの範囲内にあるときには、デラミネーションは発生しないか、ほとんど発生していない。
【0073】
以上の結果より、セラミック層の厚みが3.0μm以下の場合において、デラミネーションの発生をなくし、あるいは抑制できる内部電極の厚みは、0.2〜0.7μmであることがわかる。
【0074】
また、内部電極の厚みを問題なく0.2〜0.7μmにすることができるニッケル粉末の特性、特に平均粒径にについて考察する。
【0075】
試料5および21は、それぞれ、ニッケル粉末の平均粒径が250nmであり、カバレッジの低下、取得容量の低下が生じている。また、試料13および29は、それぞれ、ニッケル粉末の平均粒径が5nmであり、この場合においても、カバレッジの低下、取得容量の低下が生じている。
【0076】
これに対して、試料6〜12および22〜28のように、ニッケル粉末の平均粒径を10〜200nmにすることで、カバレッジの低下が少なく、高い静電容量を確保することができる。
【0077】
以上の結果からわかるように、内部電極の厚みが0.2〜0.7μmであれば、3.0μm以下のセラミック層厚を持った積層セラミックコンデンサにおいても、デラミネーション等の構造欠陥を生じないようにすることができる。また、カバレッジの低下が少なく、高い静電容量を確保できるようにするには、ニッケル粉末の平均粒径を10〜200nmにすればよいことがわかる。
【0078】
次に、グレイン成長しないセラミック組成物を用いた場合のグレイン平均粒径について考察する。以下の表5は、表1の「BaTiO3粉末の種類」として平均粒径が0.1μmの「A」、0.3μmの「C」、0.5μmの「D」、および0.8μmの「E」をそれぞれ用いながら、表2の「セラミック組成物の種類」としてグレイン成長しない「Aa」、「Ca」、「Da」、および「Ea」をそれぞれ用いることによって、積層セラミックコンデンサのセラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径を0.1μm、0.3μm、0.5μm、および0.8μmと変えた各試料について、セラミック層の厚みが3.0μmおよび1.0μmの各場合において、内部電極の厚みと層間剥離(デラミネーション)発生率との関係を主として示したものでニッケル粉末は溶液中で塩化ニッケルを抱水ヒドラジンを用いて還元して作製したニッケル粉末を用いた。
【0079】
【表5】
前の表3と表4に示した試料と同様、表5において、*が付された試料51,56,61および66は、内部電極の厚みが0.8μmであり、高い比率でデラミネーションが発生している。また、同様に*が付された試料55、60、65、および70は、内部電極の厚みが0.1μmであり、これについても高い比率でデラミネーションが発生している。後者のデラミネーションは、ニッケルの酸化によるものである。
【0080】
これに対して、試料52〜54,57,59,62,64および67〜69のように、内部電極の厚みが0.2〜0.7μmの範囲内にあるときには、デラミネーションは発生していない。
【0081】
以上の結果からも、セラミック層の厚みが3.0μm以下の場合において、デラミネーションの発生をなくし、あるいは抑制できる内部電極の厚みは、0.2〜0.7μmであることがわかる。
【0082】
また、表5に示す各試料において、セラミック原料粉末の平均粒径が0.1〜0.8μmの範囲にあり、グレインの平均粒径は0.1〜0.8μmの範囲にあるが、セラミック原料粉末およびグレインが大きいと、内部電極とセラミック層との界面の凹凸が大きくなるため、平均寿命が短くなる傾向が認められる。すなわち、試料52、53,62および63のように、セラミック原料粉末の平均粒径が0.8μmであり、グレインの平均粒径が0.8μmになると、平均寿命が50時間未満と短くなっている。
【0083】
これに対して、試料54,57〜59,64、および67〜69のように、グレインの平均粒径が0.5μm以下であると、平均寿命が50時間以上と信頼性が高くなる特徴が認められる。
【0084】
以上の結果からわかるように、内部電極の厚みが0.2〜0.7μmであれば、3.0μm以下のセラミック層厚を持った積層セラミックコンデンサであっても、デラミネーションの発生を抑制できる。また、グレインの平均粒径が0.5μm以下であれば、平均寿命を長くすることができる。
【0085】
以下の表6は、表1の「BaTiO3粉末の種類」として平均粒径が0.1μmの「A」、0.3μmの「C」、0.5μmの「D」、および0.8μmの「E」をそれぞれ用いながら、表2の「セラミック組成物の種類」としてグレイン成長しやすい「Ab」、「Cb」、「Db」、および「Eb」をそれぞれ用いるとともに、焼成温度を調整することによって、積層セラミックコンデンサのセラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径を0.2〜1.0μmの範囲で変えた各試料について、セラミック層の厚みが3.0μmおよび1.0μmの各場合において、内部電極の厚みと層間剥離(デラミネーション)発生率との関係を主として示したものである。
【0086】
【表6】
前の表3、表4および表5に示した試料と同様、表6において、*が付された試料71,75,85および89は、内部電極の厚みが0.8μmであり、高い比率でデラミネーションが発生している。また、同様に*が付された試料79,82,93および96は、内部電極の厚みが0.1μmであり、これについても高い比率でデラミネーションが発生している。後者のデラミネーションは、ニッケルの酸化によるものである。
【0087】
これに対して、試料72〜74,76〜78,80,81,83,84,86〜88,90〜92、94,95,97および98のように、内部電極の厚みが0.2〜0.7μmの範囲内にあるときには、デラミネーションは発生していない。
【0088】
以上の結果からも、セラミック層の厚みが3.0μm以下の場合において、デラミネーションの発生をなくし、あるいは抑制できる内部電極の厚みは、0.2〜0.7μmであることがわかる。
【0089】
また、表6に示す各試料のセラミック原料の平均粒径は0.1〜0.8μmの範囲にあり、グレインの平均粒径は0.2〜1.0μmの範囲にあるが、この表6に示す各試料においても、セラミック原料の平均粒径およびグレインが大きい場合、あるいはセラミック原料の平均粒径は小さいがグレインが大きい場合、内部電極とセラミック層との界面の凹凸が大きくなるため、平均寿命が短くなる傾向が認められる。
【0090】
すなわち、試料72〜74,83,84,86〜88,97および98では、いずれも、グレインの平均粒径が0.7μm以上である。このうち、試料72および86では、セラミック原料粉末の平均粒径が0.8μmと既に大きいが、試料73,74,83,84,87,88,97および98では、セラミック原料粉末の平均粒径が0.5μm以下であっても、グレインの平均粒径は0.7μm以上となっている。特に、試料83,84,97および98は、セラミック原料粉末の平均粒径は0.1μmと小さいが、焼成温度を1250℃まで上げて、グレインの平均粒径を1.0μmまで成長させている。このように、セラミック原料粉末の平均粒径に関わらず、グレインの平均粒径が0.7μm以上になると、平均寿命が50時間未満と短くなっている。
【0091】
これに対して、試料76〜78,80,81,90〜92,94および95のように、セラミック原料粉末の平均粒径が0.3μmまたは0.1μmというように0.5μm以下であるばかりでなく、グレインの平均粒径が0.5μm以下であると、平均寿命が50時間以上と信頼性が高くなる特徴が認められる。
【0092】
また、試料76および90は、それぞれ、ニッケル粉末の平均粒径が250nmであり、カバレッジの低下、取得容量の低下が生じている。また、試料81および95は、それぞれ、ニッケル粉末の平均粒径が5nmであり、この場合においても、カバレッジの低下、取得容量の低下が生じている。
【0093】
これに対して、試料72〜74,77,78,80,83,84,86〜88,91,92,94,97および98のように、ニッケル粉末の平均粒径を10〜200nmにすることで、カバレッジの低下が少なく、高い静電容量を確保することができる。
【0094】
以上の結果からわかるように、内部電極の厚みが0.2〜0.7μmであれば、3.0μm以下のセラミック層厚を持った積層セラミックコンデンサであっても、デラミネーションの発生を抑制できる。また、セラミックのグレイン成長が起こったとしても、グレインの平均粒径が0.5μm以下であれば、平均寿命を長くすることができる。また、内部電極において使用するニッケル粉末の平均粒径が10〜200nmであれば、積層セラミックコンデンサの静電容量が高くなり、カバレッジの低下が少ないことがわかる。
【0095】
次に、積層セラミックコンデンサの断面の走査型電子顕微鏡写真について考察する。図2および図3には、積層セラミックコンデンサの断面研磨面を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真が示されている。
【0096】
図2は、この発明に係る積層セラミックコンデンサを示すもので、ここには、複数のセラミック層14およびこれらセラミック層14間の界面に沿って位置する内部電極層15が現れている。また、図3は、従来の積層セラミックコンデンサを示すもので、ここには、複数のセラミック層16およびこれらセラミック層16間の界面に沿って位置する内部電極層17が現れている。
【0097】
上述した内部電極層15および17は、これら積層セラミックコンデンサに形成されていたニッケルを含む内部電極を撮影するにあたり、塩化第二銅によってエッチング処理することによって除去した後に残された空洞となっている。
【0098】
図2に示したこの発明に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック層14の厚みを2.0μm、内部電極(内部電極層15)の厚みを0.5μmにそれぞれ設定したものであり、図3に示した従来の積層セラミックコンデンサは、セラミック層16の厚みを2.5μm、内部電極(内部電極層17)の厚みを1.4μmにそれぞれ設定したものである。
【0099】
図2から、この発明に係る積層セラミックコンデンサによれば、内部電極(内部電極層15)とセラミック層14との界面における凹凸が小さく、また、内部電極(内部電極層15)の厚みが0.5μmと薄いにも関わらず、電極切れがほとんど生じていないことがわかる。
【0100】
これに対して、図3に示した従来の積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極(内部電極層17)とセラミック層16との界面における凹凸が比較的大きく、また、内部電極(内部電極層17)、の厚みが1.4μmと比較的厚いにも関わらず、一部において電極切れが生じている。、また、図3に示した部分では明らかではないが、この従来の積層セラミックコンデンサでは、デラミネーションも発生した。
【0101】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、内部電極の厚みが0.2〜0.7μmであるため、セラミック層の厚み約3.0μm以下に薄くなった場合でも、積層セラミック電子部品のデラミネーション、ショート不良、クラックの発生を抑制することができる。このことは、この発明が積層セラミックコンデンサに適用された場合、積層セラミックコンデンサの小型かつ大容量化を図るのに極めて有効である。
【0102】
この発明において、セラミック層を構成する焼結後のセラミックグレイン平均粒径が0.5μm以下であるとき、内部電極とセラミック層との界面における凹凸が小さくなり、電界集中が抑制でき、高温負荷試験などでの平均寿命時間が長くなり、信頼性を高くすることができる。
【0103】
また、この発明において、内部電極を形成するために、金属塩を溶解して得られた金属塩溶液を、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンと、水酸化ナトリウムとを溶解した還元溶液に投入することによって生成した金属粉末を含む導電性ペーストが使用され、この導電性ペースト中の金属粉末として、平均粒径が10〜200nmの範囲内のものが使用されると、内部電極における金属粉末の充填密度および平滑性が向上するため、上述した0.2〜0.7μmというような薄い厚みの内部電極であっても、セラミック層を構成するセラミックの誘電特性のような電気的特性を十分に引き出し得るカバレッジを実現し、内部電極としての性能を十分果たすことが可能となる。内部電極材料とセラミックとの収縮率の違いにより発現するデラミネーション、ショート不良、クラックといった積層セラミックコンデンサにとって致命的な構造欠陥を抑えることができるようになる。また、内部電極を形成するためスクリーン印刷等の印刷法を問題なく適用できるので内部電極の形成工程を能率的に進めることができる。
【0104】
上述した溶液中で金属塩を還元することによって得られた金属粉末として、卑金属からなる粉末が用いられると、貴金属を用いるよりも、また気相法を用いるよりも材料コストの低減を図ることができ、卑金属としてニッケルを含む金属が用いられると、銅等に比べてより高い耐酸化性を期待することができる。
【0105】
また、この発明において、セラミック層を形成するための焼結前のセラミック原料粉末として、平均粒径が0.5μm以下のものを使用すれば、セラミック層におけるセラミック充填率および平滑性が向上するため、厚みが3.0μm以下といった薄層のセラミック層を問題なく形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形成による積層セラミックコンデンサ1を示す断面図である。
【図2】この発明のより具体的な実施例に係る積層セラミックコンデンサの断面を走査型電子顕微鏡によって撮影した図である。
【図3】従来の積層セラミックコンデンサの断面を走査型電子顕微鏡によって撮影した図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
2 セラミック層
3 積層体
4、5 端面
6、7 外部電極
8、9 内部電極
14 セラミック層
15 内部電極層
Claims (16)
- セラミック原料粉末を焼結させて得られた複数の積層されたセラミック層と、前記セラミック層間の特定の界面に沿って位置され、かつ金属塩を溶解して得られた金属塩溶液を、抱水ヒドラジンまたはヒドラジンと、水酸化ナトリウムとを溶解した還元溶液に投入することによって生成した金属粉末を焼結させて得られた内部電極とを含む、積層体を備える、積層セラミック電子部品であって、前記内部電極の厚みが0.2〜0.7μmであることを特徴とする、積層セラミック電子部品。
- 前記積層体の相対向する各端面上に形成される外部電極をさらに備え、前記セラミック層はセラミック誘電体からなり、複数の前記内部電極が、何れかの前記外部電極に電気的に接続されるように、それぞれの端縁を前記端面に露出させた状態でそれぞれ形成され、それによって、積層セラミックコンデンサを構成している、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
- 前記セラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径が0.5μm以下である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
- 前記内部電極を形成するために前記溶液中で金属塩を還元することにより得られた金属粉末を含む導電性ペーストが使用され、前記導電性ペースト中の前記溶液中で金属塩を還元することにより得られた金属粉末の平均粒径が10〜200nmである、請求項1ないし3の何れかに記載の積層セラミック電子部品。
- 前記溶液中で金属塩を還元することにより得られた金属粉末は、卑金属からなる、請求項4に記載の積層セラミック電子部品。
- 前記卑金属は、ニッケルを含む金属である、請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
- 前記内部電極は、前記溶液中で金属塩を還元することによって得られた金属粉末を含む導電性ペーストが印刷法により付与される工程を経て形成されたものである、請求項4ないし6に記載の積層セラミック電子部品。
- 前記セラミック層を形成するための焼結前の前記セラミック原料粉末の平均粒径が0.5μm以下である、請求項1ないし7の何れかに記載の積層セラミック電子部品。
- 前記内部電極に接する前記セラミック層の厚みは、3μm以下である、請求項1ないし8の何れかに記載の積層セラミック電子部品。
- 金属塩を溶解して得られた金属塩溶液を、抱水ヒドラジンと水酸化ナトリウムを溶解した還元溶液に投入して金属粉末を得る工程と、
前記金属粉末と有機ビヒクルと溶剤を混合して導電性ペーストを得る工程と、
セラミック原料粉末を主成分とした、複数のセラミックグリーンシートを得る工程と、
所定枚数の前記セラミックグリーンシートに前記導電性ペーストを印刷して、焼成後の内部電極の厚みが0.2〜0.7μmとなる導電性ペースト膜を形成する工程と、
前記複数のセラミックグリーンシートを積層して、積層体を得る工程と、を備える、積層セラミック電子部品の製造方法。 - 前記積層体を焼成して、セラミック層と内部電極とからなる焼結体を得る工程と、
前記焼結体の両端部に、導電成分とガラスフリットとからなる外部電極ペーストを塗布し焼付けして外部電極を形成する工程と、
をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。 - 前記積層体両端部に、導電成分とガラスフリットとからなる外部電極ペーストを塗布し、前記積層体と前記外部電極ペーストを同時に焼成して、セラミック層と内部電極と外部電極とからなる積層セラミック電子部品を得る工程と、
をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。 - 前記金属粉末の平均粒径が10〜200nmである、請求項10ないし12の何れかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
- 前記セラミック原料粉末の平均粒径が0.5μm以下である、請求項10ないし13の何れかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
- 前記セラミック層を構成する焼結後のセラミックグレインの平均粒径が0.5μm以下である、請求項10ないし14の何れかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
- 前記内部電極に接する前記セラミック層の厚みは、3μm以下である、請求項10ないし15の何れかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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