JP4083394B2 - スラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシール - Google Patents

スラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油室を有する水中ポンプに装備されるメカニカルシールであって、硬質材で構成される両密封環の対向端面たる密封端面を相対回転摺接させることにより油室とこれに隣接する流体室との間を軸封するように構成されたスラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、水中ポンプにあっては、ポンプ室からモータ室への流体侵入を防止するために両室間に油室を設けると共に、油室とこれに隣接する流体室であるポンプ室との間を軸封する手段としてメカニカルシールが使用されている。而して、かかるメカニカルシールとしては、図6に示す如く、油室ケース2に軸線方向移動可能に且つ相対回転不能に保持された密封環たる固定環1と、回転軸4に固定保持された密封環たる回転環3と、固定環1と油室ケース2のリテーナ部5との間に介装されて固定環1を回転環3へと押圧附勢するスプリング6とからなり、両密封環1,3の対向端面たる密封端面1a,3aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域である油室Aとその内周側領域であるポンプ室(流体室)Bとを軸封するように構成した端面接触型のものが周知である。
【0003】
ところで、メカニカルシールは、密封環の構成材上、密封環1,3の一方を焼結炭化珪素(SiC)や焼結タングステンカーバイト(WC)等の硬質材で構成すると共に他方を焼結カーボン等の軟質材で構成したもの(以下「硬質材/軟質材シール」という)―と、両密封環1,3を上記した硬質材で構成したもの(以下「硬質材/硬質材シール」という)とに大別されるが、水中ポンプにあっては、固形成分を含むスラリ流体を扱うことが多いため、硬質材/軟質材シールを使用した場合には、密封端面がスラリ流体により摩耗,損傷し易く耐久性に問題があり、長期に亘って良好な軸封機能(シール機能)を発揮できない。したがって、水中ポンプのようにスラリ流体を扱うことの多い回転機器においては、一般に、硬質材/軟質材シールは使用されず、両密封環1,3を耐摩耗性に優れるSiC,WC等の焼結材で構成した硬質材/硬質材シールが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、SiC,WC等の硬質材はカーボン等のような自己潤滑性を有しないものであり、摩擦係数が高いものであることから、硬質材/硬質材シールにあっては、密封環1,3の摺動による発熱や摩耗が激しく、長期に亘って良好な軸封機能を発揮できない。また、密封端面1a,3a間には油室Aに封入された油により潤滑油膜が形成されるが、SiC,WC等の硬質材は親油性に乏しいため、密封端面1a,3a間に安定した潤滑油膜を形成,維持しておくことができず、密封環1,3の摺動による発熱をさほど抑制することができない。そして、かかる発熱により油温が上昇して油の粘度が低下し、密封端面全体に潤滑油膜が形成されなくなり、所謂油切れの半ドライ状態となって、摩耗や漏れを生じる虞れがある。さらには、密封端面1a,3a間に高温による油の分解物が堆積して、漏れを増大させる虞れがある。かかる問題は、食品衛生上や環境汚染上から油室Aに封入する油として潤滑性に乏しい流動パラフィン等を使用せざるを得ない場合や油室Aが小さく封入油量が少ない場合には、更に顕著に生じることになる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、両密封環を硬質材で構成する場合にも、油室に封入される油質や油量に拘わらず、密封端面間に適正な潤滑油膜を安定した状態で形成,維持することができ、相手密封環との摺動による発熱や摩耗を可及的に抑制し得て、長期に亘って良好な軸封機能を発揮することができるスラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシールを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、硬質材で構成される両密封環の対向端面たる密封端面を相対回転摺接させることにより油室とこれに隣接するポンプ室たる流体室との間を軸封するように構成されたスラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシールにおいて、上記の目的を達成すべく、特に、一方の密封端面における油室側の周端縁部に、密封端面の相対回転に伴って油室から密封端面間へと油を強制的に導入させる凹溝を形成しておくと共に、少なくとも一方の密封環を、緻密な硬質材組織中に微細な親油性材が密集する親油性材組織を分散配合してなる複合焼結材で構成して、密封端面間に凹溝によって導入された油による潤滑油膜が形成,維持されるように構成してあり、親油性材組織は1〜100μmの大きさをなすものであって硬質材組織に対して5〜50%の割合で配置されたものであり且つ硬質材組織と同質材である硬質材の微粒子が親油性材:硬質材=100:0〜20:80の割合で配合されているものであることを特徴とするスラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシールを提案するものである。
【0007】
かかるメカニカルシールにあって、一方の密封端面に形成される凹溝は、所謂ハイドロダイナミックシール又はサーモハイドロダイナミックシールにおいて密封端面に形成される流体導入溝ないし流体循環溝と同一の機能を有するものである。すなわち、本発明のメカニカルシールは、ハイドロダイナミックシール又はサーモハイドロダイナミックシールに構成されたものである。なお、凹溝の形状,配置,数はシール条件に応じて任意に設定することができる。一般には、凹溝は密封端面の周方向に等間隔を隔てた複数箇所に形成され、ハイドロダイナミックシールとして機能させる場合には、凹溝は一端部が油室側に開口する扇形状等とされ、サーモハイドロダイナミックシールとして機能させる場合には、凹溝は両端部が油室側に開口する円弧形状,U字形状等とされる。また、凹溝は、何れの密封環に形成してもよいが、凹溝による油の攪拌作用に起因する油温上昇を考慮すれば、固定側の密封環(固定環)に形成しておくことが好ましい。
【0008】
また、硬質材としては耐摩耗性等に優れる炭化珪素,タングステンカーバイト等が使用され、親油性材としては油の吸着性,保持性に優れる非晶質カーボン等が使用される。好ましい実施の形態にあっては、硬質材組織は炭化珪素粒子又はタングステンカーバイト粒子が焼結してなるものであり、親油性材組織は微細な非晶質カーボンが密集した状態でその周囲の硬質材組織により保持されたものである。ところで、硬質材組織をなす部分は焼結時において大きく収縮する(例えば、炭化珪素組織は焼結時において約1/2程度の容積減となる)ことから、微細な親油性材が密集する親油性組織部分は、その周囲の硬質材組織部分の収縮力によって強力に圧縮されることになる。その結果、親油性組織部分における粒子間結合力は、焼結による結合力自体は弱くとも、上記した硬質材組織部分の収縮による外周側からの圧縮作用によって大幅に増大することになる。したがって、硬質材組織中に親油性材組織が分散配置された複合焼結材全体としての硬度,耐摩耗性等は硬質材のみからなる単一焼結材と同等となり、両密封環の一方を当該複合焼結材で構成すると共に他方を当該複合焼結材又は一般的な硬質材(炭化珪素焼結材等)で構成したメカニカルシールは、スラリ流体を扱う水中ポンプ等の回転機器にも好適に使用しうる硬質材/硬質材シールである。
【0009】
而して、本発明のメカニカルシールは、上記した如く、ハイドロダイナミックシール又はサーモハイドロダイナミックシールに構成されたものであるから、一方の密封端面に形成された凹溝により、両密封端面の相対回転に伴って、油室の油が密封端面間に強制的に導入される。そして、少なくとも一方の密封環は、緻密な硬質材組織中に親油性材組織を分散配置してなる複合焼結材で構成されていて、全体として硬質で耐摩耗性に優れたものであるが、当該密封環の密封端面には油を吸着,保持を積極的に行う親油性材組織が存在していることから、他方の密封環(相手密封環)が同質の複合焼結材で構成されている場合には勿論、一般的な硬質材(SiC,WC等の緻密質焼結材)で構成されている場合(つまり硬質材/硬質材シールである場合)にも、凹溝によって導入された油が密封端面間に確実に保持されることになる。したがって、油室に封入される油質や油量に拘わらず、密封端面間には適正且つ安定した潤滑油膜が形成,維持されることになり、密封環の摺動による発熱や摩耗が可及的に防止される。
【0010】
ところで、親油性材組織の大きさが1μm未満であるとき又は親油性材組織の硬質材組織に対する配合割合((親油性材含有量/(親油性材含有量+硬質材含有量))×100で与えられる割合であり、以下「親油性材配合割合」という)が5%未満であるときは、密封端面における油の吸着力,保持力が十分に発揮されず、密封端面間における潤滑油膜の形成,維持を効果的に行い得ない。かかる潤滑油膜の形成,維持は、親油性材組織の大きさが5μm以上である場合に、より効果的に行われる。一方、親油性材組織の大きさが100μmを超えるとき又は親油性材配合割合が50%を超えるときは、複合焼結材全体の硬度,耐摩耗性が低下して、スラリ流体のような固形成分を含む流体を扱う回転機器に好適に使用できる硬質材/硬質材シールを構成し得ない。特に、一般的な硬質材製の密封環と同等の硬度,耐摩耗性を確保するためには、親油性材組織は50μmとしておくことが好ましい。したがって、親油性材組織の大きさは1〜100μmとしておくことが好ましく、5〜50μmとしておくことがより好ましい。また、親油性材配合割合は5〜50%としておくことが好ましい。
【0011】
また、親油性材組織は非晶質カーボン等の親油性材のみで構成する他、硬質材組織と同質材である硬質材(炭化珪素,タングステンカーバイト等)との混合組織となすこともできるが、硬質材の配合割合は、上記した親油性材組織による潤滑油膜の形成,維持機能を確保するために、親油性材:硬質材=20:80を超えないように設定しておくことが好ましい。すなわち、親油性材組織には、硬質材組織と同質材である硬質材の微粒子が親油性材:硬質材=100:0〜20:80の割合で配合されていることが好ましい。
【0012】
【実施例】
実施例1として、図1及び図2に示すメカニカルシールを製作した。すなわち、実施例1のメカニカルシール(以下「第1シール」という)は、図1及び図2に示す如く、シールケースたる油室ケース2に軸線方向移動可能に且つ相対回転不能に保持された密封環たる固定環1と、回転軸4に固定保持された密封環たる回転環3と、固定環1と油室ケース2のリテーナ部5との間に介装されて固定環1を回転環3へと押圧附勢するスプリング6とからなり、両密封環1,3の対向端面たる密封端面1a,3aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域である油室Aとその内周側領域である流体室Bとを軸封するように構成された端面接触型のものであって、固定環1を一般的な硬質材である炭化珪素焼結材で構成すると共に回転環3を上述した複合焼結材で構成した硬質材/硬質材シールであり、固定環1の密封端面1aにおける油室側の周端縁部たる外周端縁部に、周方向に等間隔を隔てた3箇所に配して、密封端面1a,3aの相対回転に伴って油室Aから密封端面1a,3a間へと油を強制的に導入させる扇状の凹溝7…を形成したハイドロダイナミックシールに構成されている。
【0013】
而して、回転環3は、緻密な炭化珪素組織中に微細な非晶質カーボンが密集する親油性材組織を分散配置してなる複合炭化珪素焼結材で構成されたものであり、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作されたものである。
【0014】
予備造粒工程: 平均粒子径0.7μmのα型炭化珪素(α−SiC)粉末100gと、焼結助剤としての炭化ホウ素(B4 C)粉末0.5gと、ポリマ助剤である平均分子量1000のポリビニルアルコール(PVA#1000)2gを水300gに溶解させた溶解液とからなる親油性材組織原料に、親油性材である非晶質カーボン(カーボンブラック)の粉末100gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒(顆粒化)し、径20〜80μmの球形状の予備造粒材(顆粒)を得た。
【0015】
焼結原料混合工程: 平均粒子径0.7μmのα−SiC粉末80gに、焼結助剤としてのB4 C粉末0.4g、カーボン源としてのフェノール樹脂(残炭率50%)3.5g、成形助剤としての平均分子量6000のポリエチレングリコール(PEG#6000)2g及びステアリン酸1gを添加し、これらを溶剤であるメタノールと共にボールミルで24時間混合して、硬質材組織焼結原料を得た。
【0016】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた硬質材組織焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材20gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリをスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒(顆粒化)して、径20〜80μmの球形状の本造粒材(顆粒)を得た。
【0017】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を所定の金型に充填した上、1500kg/cm2 で冷間プレス成形して、回転環3に対応する環状形態をなす予備成形体を得た。なお、予備成形体の形状は、焼結時における収縮を考慮して設定される。
【0018】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰囲気中で焼成して、回転環3に相当する密封環形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0019】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材の端面(密封端面3a)をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、回転環3を得た。
【0020】
かくして得られた回転環3は、図3に示す如く、緻密な硬質材組織(炭化珪素の焼結組織)中に親油性材組織(非晶質カーボン(カーボンブラック)と炭化珪素との混合組織であり、図3における黒色部分である)が分散配置された複合炭化珪素焼結材である。かかる複合炭化珪素焼結材における親油性材組織の大きさは5〜50μmであり、親油性材配合割合は10%であり、親油性材組織における非晶質カーボンと炭化珪素との配合比率は親油性材(非晶質カーボン):硬質材(炭化珪素)=50:50である(以下、かかる組成,構成の複合炭化珪素焼結材を「当該複合炭化珪素焼結材」という)。なお、図3は回転環3の密封端面(表面研磨された鏡面)3aを100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【0021】
また、固定環1は緻密質の炭化珪素焼結材で構成されたものであり、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作されたものである。
【0022】
造粒工程: 平均粒子径0.6μmのβ−SiC粉末100gに、焼結助剤としてのB4 C粉末0.5g及びカーボン源としてのフェノール樹脂(レゾール型)4gを添加し、さらに成形助剤としてPEG(#6000)2g及びステアリン酸1gを添加して、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合し、その混合スラリをスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して、径20〜80μmの球形状の造粒材を得た。
【0023】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を所定の金型(以下「固定環成形用金型」という)に充填した上、1500kg/cm2 で冷間プレス成形して、固定環1に対応する環状形態をなす予備成形体を得た。なお、予備成形体の形状は、焼結時における収縮を考慮して設定される。
【0024】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰囲気中で焼成して、固定環1に相当する密封環形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0025】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材の端面(密封端面1a)をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、固定環1を得た。かくして得られた固定環1は、一般的な炭化珪素製密封環と同質の炭化珪素焼結材(密度:3.10g/cm3)である(以下、かかる組成の炭化珪素焼結材を「当該単一炭化珪素焼結材」という)。
【0026】
また、実施例2として、固定環1を当該複合炭化珪素焼結材で構成した点を除いて、第1シールと同一構成のメカニカルシール(以下「第2シール」という)を製作した。すなわち、第2シールは、図1及び図2に示す構成をなすものであり、両密封環1,3を当該複合炭化珪素焼結材で構成したものである。
【0027】
また、実施例3として、凹溝7…を回転環3の密封端面3aに形成した点及び回転環3を当該単一炭化珪素焼結材で構成した点を除いて、第2シールと同一構成のメカニカルシールを製作した。すなわち、実施例3のメカニカルシール(以下「第3シール」という)は、図4及び図5に示す如く、油室ケース2に軸線方向移動可能に且つ相対回転不能に保持された密封環たる固定環1と、回転軸4に固定保持された密封環たる回転環3と、固定環1と油室ケース2のリテーナ部5との間に介装されて固定環1を回転環3へと押圧附勢するスプリング6とからなり、両密封環1,3の対向端面たる密封端面1a,3aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域である油室Aとその内周側領域である流体室Bとを軸封するように構成された端面接触型のものであって、固定環1を当該複合炭化珪素焼結材で構成すると共に回転環3を当該単一炭化珪素焼結材で構成した硬質材/硬質材シールであり、回転環3の密封端面3aにおける油室側の周端縁部たる外周端縁部に、周方向に等間隔を隔てた3箇所に配して、密封端面1a,3aの相対回転に伴って油室Aから密封端面1a,3a間へと油を強制的に導入させる扇状の凹溝7…を形成したハイドロダイナミックシールに構成されている。
【0028】
さらに、実施例4として、回転環3を当該複合炭化珪素焼結材で構成した点を除いて、第3シールと同一構成のメカニカルシール(以下「第4シール」という)を製作した。すなわち、第4シールは、図4及び図5に示す構成をなすものであり、両密封環1,3を当該複合炭化珪素焼結材で構成したものである。
【0029】
また、比較例1として、何れの密封端面1a,3aにも凹溝7…を形成しない点及び両密封環1,3を当該単一炭化珪素焼結材で構成した点を除いて、第1メカニカルシールと同一構成のメカニカルシール(以下「第5シール」という)を製作した。すなわち、第5シールは、図6に示す一般的な硬質材/硬質材シールと同一構成をなすものである。
【0030】
また、比較例2として、両密封環1,3を当該単一炭化珪素焼結材で構成した点を除いて、第1シールと同一構成をなすメカニカルシール(以下「第6シール」という)を製作した。
【0031】
さらに、比較例3として、両密封環1,3を当該単一炭化珪素焼結材で構成した点を除いて、第3シールと同一構成をなすメカニカルシール(以下「第7シール」という)を製作した。
【0032】
而して、第1〜第7シールを使用して、次のようなシール試験を行った。すなわち、このシール試験にあっては、油室Aに油として流動パラフィン(粘度:60mPa.s)を封入すると共に流体室Bに工業用水を供給した状態で100時間連続運転して、運転中における両密封端面1a,3aからの油の漏れ量(ml)を測定し、100時間経過後における油温(℃)を測定すると共に摺動面状態を判定した。摺動面状態の判定は、密封端面1a,3aにおける油分解付着物の有無を確認する共に表面形態(相手密封環との摺接により環状痕が発生しているか否か等)を視認することによって行った。
【0033】
かかるシール試験の結果は、表1に示す通りであった。なお、表1において、当該複合炭化珪素焼結材で構成されている密封環については「複合SiC」と記載し、当該単一炭化珪素焼結材で構成されている密封環については「SiC」と記載し、凹溝7が形成されている密封環については「/H」と記載してある。また、摺動面状態の判定結果については、油分解付着物の有無のみを記載した。
【0034】
表1から理解されるように、本発明に係る第1〜第4シールについては、漏れを全く生じておらず、油温も55〜63℃に上昇するに止まった。また、密封端面1a,3aの状態も、摺接による環状痕等は全く認められず、油分解付着物もなく、極めて良好であった。これに対して、比較例の第5〜第7シールでは、5〜15mlの漏れを生じ、油温も71〜78℃まで上昇しており、密封端面1a,3aには茶褐色の油分解付着物が認められた。これらの点から明らかなように、凹溝7によるハイドロダイナックシール機能と親油性材組織による油の吸着,保持機能により、安定した潤滑油膜が形成,維持され、良好なシール機能が発揮されることが理解される。
【0035】
また、凹溝7を有する第6及び第7シールでは、凹溝7を有しない第5シールに比して、漏れ量及び油温の上昇が小さくなっているが、同じく凹溝7を有する第1〜第4シールに比しては、漏れ量及び油温の上昇が大きくなっている。かかる点から、適正な潤滑油膜の形成,維持を行うに凹溝7の形成のみでは不十分であり、少なくとも一方の密封環を親油性材組織を有する当該複合炭化珪素焼結材で構成しておくことが必要であることが理解される。なお、第3及び第4シールにあっては、第1及び第2シールに比して、油温がやや高くなっているが、これは、凹溝7を回転環3に形成したために、凹溝7の回転による油の攪拌作用が促進されたことによると考えられる。この点からして、凹溝7は固定環1に形成しておくことが好ましいと考えられる。
【0036】
【表1】
Figure 0004083394
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明のスラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシールによれば、油室に封入される油が流動パラフィンのような潤滑性の低いものである場合等、潤滑条件が悪い場合にも、密封端面間に適正な潤滑油膜を安定した状態で形成,維持することができ、相手密封環との摺動による発熱や摩耗を可及的に抑制し得て、長期に亘って良好な軸封機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1又は第2シールを示す縦断側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う縦断背面図である。
【図3】当該複合炭化珪素焼結材で構成された密封環の密封端面(鏡面)を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図4】第3又は第4シールを示す縦断側面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う縦断正面図である。
【図6】一般的な端面接触型メカニカルシールを示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1…固定環(密封環)、1a…固定環の密封端面、3…回転環(密封環)、7…凹溝、A…油室、B…流体室。

Claims (2)

  1. 硬質材で構成される両密封環の対向端面たる密封端面を相対回転摺接させることにより油室とこれに隣接するポンプ室たる流体室との間を軸封するように構成されたスラリ流体用の端面接触型メカニカルシールにおいて、一方の密封端面における油室側の周端縁部に、密封端面の相対回転に伴って油室から密封端面間へと油を強制的に導入させる凹溝を形成すると共に、少なくとも一方の密封環を、緻密な硬質材組織中に微細な親油性材が密集する親油性材組織を分散配合してなる複合焼結材で構成して、密封端面間に凹溝によって導入された油による潤滑油膜が形成,維持されるように構成してあり、親油性材組織は1〜100μmの大きさをなすものであって硬質材組織に対して5〜50%の割合で配置されたものであり且つ硬質材組織と同質材である硬質材の微粒子が親油性材:硬質材=100:0〜20:80の割合で配合されているものであることを特徴とするスラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシール。
  2. 硬質材組織は炭化珪素粒子又はタングステンカーバイト粒子が焼結してなるものであり、親油性材組織は5〜50μmの大きさをなすものであって微細な非晶質カーボンが密集した状態でその周囲の硬質材組織により保持されたものであることを特徴とする、請求項1に記載するスラリ流体を扱う水中ポンプ用の端面接触型メカニカルシール。
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