JP3650739B2 - 摺動体及びその製造方法並びにメカニカルシール - Google Patents

摺動体及びその製造方法並びにメカニカルシール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メカニカルシールの密封環や軸受部材等に好適に使用される摺動体及びその製造方法並びに当該摺動体を密封環として使用したメカニカルシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、メカニカルシールとしては、図8に示す如く、シールケース2に固定保持された密封環(以下「固定環」という)1と、回転軸4に軸線方向移動可能に且つ相対回転不能に保持された密封環(以下「回転環」という)3と、回転軸4に固定されたスプリングリテーナ5と回転環3との間に介装されて回転環3を固定環1へと押圧附勢するスプリング6とからなり、両密封環1,3の対向端面たる密封端面1a,3aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域たる機内領域Aとその内周側領域たる機外大気領域Bとをシールするように構成した端面接触型のものが周知である。
【0003】
ところで、炭化珪素は硬質で耐摩耗性に優れるものであり、熱的,化学的,機械的特性にも優れたものであることから、一般に、上記したメカニカルシールの密封環や軸受け部材等の摺動体の構成材として使用されている。
【0004】
しかし、炭化珪素はカーボン等のような自己潤滑性を有しないものであることから、炭化珪素製の摺動体は相手部材との相対摺動による摩耗や発熱が生じ易いといった問題があった。
【0005】
そこで、従来にあっては、摺動性を向上させるために、摺動体を多孔質炭化珪素焼結材で構成して、その気孔に油やフッ素樹脂等の低摩擦材を含浸させたり或いは銀,鉛,アンチモン等の低摩擦金属材を溶浸させておくこと、又は微細な固体潤滑材(カーボン,黒鉛,窒化ホウ素,二硫化モリブデン等)を分散させた複合炭化珪素焼結材で摺動体を構成しておくことが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の場合には、多孔質炭化珪素焼結材における炭化珪素同士の結合力が弱いため耐摩耗性に劣り、摺動体としての耐久性に問題がある。しかも、摺動面が摩擦熱により高温となると、摺動面から含浸材,溶浸材が蒸発分解したり、酸化により劣化して、摩擦係数が大きくなる。
【0007】
また、後者の場合には、焼結材全体に焼結挙動を妨げる潤滑材が分散しているため、密度,強度(曲げ強度)が低下して、耐摩耗性に劣る。また、黒鉛粒子等の潤滑材粒子は炭化珪素粒子と或る程度は結合するものの、その結合力(焼結力)は弱い。したがって、両者の境界部分において炭化珪素粒子が脱粒して、これが摺動面間に介在して所謂砥石作用が働き、摺動面を損傷させる虞れがある。また、十分な潤滑性を確保するためには大量の潤滑材を含有させる必要があるが、このようにすると上記した問題がより顕著となる。
【0008】
このように、何れの場合にも、潤滑性を高めることによって炭化珪素本来の特性(耐摩耗性等)が大幅に低下することになり、摺動体としての機能を向上させることはできない。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、炭化珪素本来の特性を担保しつつ、潤滑性の大幅な向上を図ることができる摺動体を提供すると共に、これを好適に製造しうる方法及びこれを密封環として使用することによって良好なシール機能を発揮しうるメカニカルシールを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1に、上記の目的を達成すべく、微細な固体潤滑材粒子が密集した状態で炭化珪素粒子と結合する複合炭化珪素組織が、独立して、炭化珪素粒子同士が結合する緻密な単一炭化珪素組織中に分散する複合炭化珪素焼結材で構成されていることを特徴とする摺動体を提案する。
【0011】
かかる摺動体にあっては、複合炭化珪素組織をなす部分(以下「複合炭化珪素組織部分」という)が基材部分である単一炭化珪素組織をなす部分(以下「単一炭化珪素組織部分」という)に独立した形態で分散配置されており、各複合炭化珪素組織部分においては、多数の微細な固体潤滑材粒子が密集した状態で配合されている。すなわち、摺動体の表面つまり摺動面は、あたかも大径の固体潤滑材を散点状に配置したかの如き形態をなしている。したがって、摺動面においては、多数の微細な固体潤滑材粒子が相互に近接した状態で摺動面全体に均一に分散配置されている場合と同等又はそれ以上の潤滑性(自己潤滑性)が確保されることになる。
【0012】
一方、複合炭化珪素組織部分においては、冒頭で述べた複合炭化珪素焼結材における場合と同様に、固体潤滑材粒子と炭化珪素粒子との結合力(焼結力)が頗る弱い。しかし、摺動体全体において複合炭化珪素組織部分が占める割合は単一炭化珪素組織部分に比して極めて小さく、複合炭化珪素組織部分はこれに比して十分に大きな単一炭化珪素組織部分で完全に囲繞されていることから、摺動体全体としての粒子間結合力が高く、密度(焼結密度)及び強度(曲げ強度)が冒頭で述べた複合炭化珪素焼結材(及び多孔質炭化珪素焼結材)に比して大幅に向上することになる。
【0013】
すなわち、単一炭化珪素組織部分は焼結時において大きく収縮する(一般に、炭化珪素は焼結時において約1/2程度の容積減となる)ことから、複合炭化珪素組織部分はこれを囲繞する単一炭化珪素組織部分の収縮力によって強力に圧縮されることになる。その結果、複合炭化珪素組織部分における粒子間結合力は、焼結による結合力自体は弱くとも、上記した単一炭化珪素組織部分の収縮による外周側からの圧縮作用によって大幅に増大することになる。また、複合炭化珪素組織と単一炭化珪素組織との境界部分においては、炭化珪素粒子同士の焼結による結合作用と上記圧縮作用による結合力増大作用とによって、単一炭化珪素組織におけると同等の粒子間結合力が確保されることになる。したがって、単一炭化珪素組織部分における粒子間結合力は勿論、複合炭化珪素組織部分における粒子間結合力及び両組織部分間の結合力が高くなり、その結果、焼結密度,強度が向上すると共に脱粒現象の発生も確実に防止することができる。
【0014】
このように、上記した構成の複合炭化珪素材は、潤滑性が単一炭化珪素組織部分から複合炭化珪素組織部分へと傾斜状に向上すると共に、粒子間結合力が複合炭化珪素組織部分の中心から単一炭化組織部分へと傾斜状に増大するものである点からして、いわば、耐摩耗性等に優れる炭化珪素に潤滑性に優れる固体潤滑材を傾斜配合した傾斜機能性材料であるということができるものであり、炭化珪素本来の特性を損なうことなく、潤滑性を向上させ得るものである。
【0015】
而して、固体潤滑材としては、一般に、粒子径1〜100μmの黒鉛,カーボンブラック,窒化ホウ素等が使用される。上記した複合炭化珪素組織部分による潤滑性の向上を図るためには、複合炭化珪素組織における固体潤滑材の含有率(以下「局部潤滑材含有率」という)を10%以上(より好ましくは20%以上)とし、複合炭化珪素部分の径を20μm以上とし、炭化複合炭化珪素焼結材における固体潤滑材の含有率(以下「全体潤滑材含有率」という)を2%以上(より好ましくは4%以上)としておくことが好ましい。また、単一炭化珪素組織部分の収縮による粒子間結合力の増大効果が十分に発揮され、炭化珪素本来の特性を確保するためには、局部潤滑材含有率を50%以下とし、複合炭化珪素部分の径を50μm以下とし、全体潤滑材含有率を25%以下(より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下)としておくことが好ましい。すなわち、炭化珪素本来の特性を損なうことなく潤滑性の向上を図るためには、局部潤滑材含有率を10〜50%(より好ましくは20〜50%)とし、複合炭化珪素部分の径を20〜50μmとし、全体潤滑材含有率を2〜25%(より好ましくは4〜20%、更に好ましくは4〜10%)としておくことが好ましい。なお、局部潤滑材含有率又は全体潤滑材含有率は、複合炭化珪素組織又は単一炭化珪素組織における炭化珪素及び固体潤滑材の合計含有量に対する固体潤滑材の含有量の比率(=(固体潤滑材の含有量)×100/(炭化珪素の含有量+固体潤滑材の含有量))である。
【0016】
また、本発明は、第2に、上記した摺動体を好適に製造するために、微細な固体潤滑材粒子が混合分散する複合炭化珪素焼結原料を造粒してなる予備造粒材を、固体潤滑材を含有しない単一炭化珪素焼結原料と混合して、その混合スラリを造粒して得られる本造粒材を所定形状に加圧成形し、その加圧成形体を焼成処理することにより、固体潤滑材粒子が密集した状態で炭化珪素粒子と結合する複合炭化珪素組織が、独立して、炭化珪素同士が結合する緻密な単一炭化珪素組織中に分散する複合炭化珪素焼結材を得るようにしたことを特徴とする摺動体の製造方法を提供する。
【0017】
かかる方法によれば、本造粒材の一部に含まれる予備造粒材により、複合炭化珪素組織が形成される。したがって、予備造粒材つまり複合炭化珪素焼結原料における炭化珪素及び固体潤滑材の含有量によって局部潤滑材含有率を容易に制御することができ、単一炭化珪素焼結原料における炭化珪素の含有量及び予備造粒材の添加量によって全体潤滑材含有率を容易に制御することができる。すなわち、複合炭化珪素焼結原料における固体潤滑材の含有率及び本造粒材の原料である上記混合スラリにおける固体潤滑材の含有率の好ましい範囲は、夫々、局部潤滑材含有率及び全体潤滑材含有率における上記した好ましい範囲に一致する。なお、これら固体潤滑材の含有率は、局部潤滑材含有率及び全体潤滑材含有率と同様に、炭化珪素及び固体潤滑材の合計含有量に対する固体潤滑材の含有量の比率である。また、複合炭化珪素組織部分の径は予備造粒材ないし本造粒材の径によって決定されるが、これらは任意に制御することができる。
【0018】
また、予備造粒材は複合炭化珪素組織を形成するためのものであるから、単一炭化珪素焼結原料との混合時において当該予備造粒材の顆粒形態(造粒形態)が破壊されると、独立した形態の複合炭化珪素組織を適正に形成することができない。したがって、予備造粒材を調整するために複合炭化珪素焼結原料に含有されるポリマ助剤としては、単一炭化珪素焼結原料に含有される溶剤に溶解しないものを使用することが必要である。例えば、上記混合スラリを調整する際に使用される溶剤としてメタノールが使用される場合は、予備造粒材を調整するためのポリマ助剤としてポリビニルアルコールを使用する。
【0019】
また、本発明は、第3に、2つの密封環が相対回転摺接するように構成されたメカニカルシールにおいて、少なくとも一方の密封環を上記した摺動体で構成したことを特徴とするメカニカルシールを提案する。かかるメカニカルシールによれば、当該摺動体が上記した如く炭化珪素本来の特性(耐摩耗性等)に加えて潤滑性に優れたものであることから、相手密封環の構成材をシール条件に応じて適宜に選択しておくことにより、如何なるシール条件下においても良好なシール機能を発揮させることができる。特に、両密封環を本発明の摺動体で構成した場合には、スラリを扱う場合等の過酷な条件下でも良好なシール機能を発揮させることができる。
【0020】
【実施例】
実施例1として、図8に示す構成のメカニカルシール(以下「当該メカニカルシール」という)の回転環3として使用しうる本発明の摺動体A1を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。
【0021】
予備造粒工程: 平均粒子径0.7μmのα型炭化珪素(α−SiC)粉末80gと、焼結助剤としての炭化ホウ素(B4 C)粉末0.4gと、ポリマ助剤である平均分子量1000のポリビニルアルコール(PVA#1000)1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、固体潤滑材である粒子径1μmの黒鉛粉末20gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒(顆粒化)し、径20〜80μmの球形状の予備造粒材(顆粒)を得た。
【0022】
焼結原料混合工程: 平均粒子径0.7μmのα−SiC粉末90gに、焼結助剤としてのB4 C粉末0.45g、カーボン源としてのフェノール樹脂(残炭率50%)4g、成形助剤としての平均分子量6000のポリエチレングリコール(PEG#6000)2g及びステアリン酸1gを添加し、これらを溶剤であるメタノールと共にボールミルで24時間混合して、単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0023】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材10gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:2%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒(顆粒化)して、径20〜80μmの球形状の本造粒材(顆粒)を得た。
【0024】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を所定の金型に充填した上、1500kg/cm2 で冷間プレス成形して、回転環3に対応する環状形態をなす予備成形体を得た。なお、予備成形体の形状は、焼結時における収縮を考慮して設定される。
【0025】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰囲気中で焼成して、回転環3に相当する密封環形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0026】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材の端面をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、回転環3として使用しうる摺動体A1を得た。なお、摺動体A1の鏡面は、回転環3として使用した場合における摺動面(密封端面3a)として機能する。
【0027】
また、実施例2として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A2を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備造粒工程、焼成工程及び仕上げ工程は実施例1と同一であり、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例1と同一である。
【0028】
予備造粒工程: 実施例1と同一の予備造粒工程により、実施例1と同一の予備造粒材を得た。
【0029】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末80gに、B4 C粉末0.4g、フェノール樹脂3.5g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0030】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材20gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:2%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0031】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0032】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例1と同一の焼成工程により焼成して、実施例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0033】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A2を得た。
【0034】
また、実施例3として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A3を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備造粒工程、焼成工程及び仕上げ工程は実施例1と同一であり、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例1と同一である。
【0035】
予備造粒工程: 実施例1と同一の予備造粒工程により、実施例1と同一の予備造粒材を得た。
【0036】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末70gに、B4 C粉末0.35g、フェノール樹脂3g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0037】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材30gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:6%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0038】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0039】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例1と同一の焼成工程により焼成して、実施例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0040】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A3を得た。
【0041】
また、実施例4として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A4を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備造粒工程、焼成工程及び仕上げ工程は実施例1と同一であり、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例1と同一である。
【0042】
予備造粒工程: 実施例1と同一の予備造粒工程により、実施例1と同一の予備造粒材を得た。
【0043】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末50gに、B4 C粉末0.25g、フェノール樹脂2g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0044】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材50gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:10%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0045】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0046】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例1と同一の焼成工程により焼成して、実施例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0047】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A4を得た。
【0048】
また、実施例5として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A5を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、焼成工程及び仕上げ工程は実施例1と同一であり、予備造粒工程、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、固体潤滑材,α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例1と同一である。
【0049】
予備造粒工程: α−SiC粉末60gと、B4 C粉末0.3gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、黒鉛粉末40gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:40%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0050】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末70gに、B4 C粉末0.35g、フェノール樹脂3g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0051】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材50gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0052】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0053】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例1と同一の焼成工程により焼成して、実施例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0054】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A5を得た。
【0055】
また、実施例6として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A6を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、焼成工程及び仕上げ工程は実施例1と同一であり、予備造粒工程、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、固体潤滑材としてカーボンブラックを使用した点及び固体潤滑材,α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例1と同一である。
【0056】
予備造粒工程: α−SiC粉末80gと、B4 C粉末0.4gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、粒子径0.02μmのカーボンブラック粉末20gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0057】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末80gに、B4 C粉末0.4g、フェノール樹脂3.5g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0058】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材20gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:4%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0059】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0060】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例1と同一の焼成工程により焼成して、実施例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0061】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A6を得た。
【0062】
また、実施例7として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A7を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備造粒工程、、焼結原料混合工程、焼成工程及び仕上げ工程は実施例6と同一であり、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例6と同一である。
【0063】
予備造粒工程: 実施例6と同一の予備造粒工程により、実施例6と同一の予備造粒材を得た。
【0064】
焼結原料混合工程: 実施例6と同一の焼結原料混合工程により、実施例6と同一の単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0065】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材50gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:10%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して、本造粒材を得た。
【0066】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例6と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0067】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例6と同一の焼成工程により焼成して、実施例6と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0068】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例6と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A7を得た。
【0069】
また、実施例8として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A8を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、焼結原料混合工程、焼成工程及び仕上げ工程は実施例6と同一であり、予備造粒工程及び本造粒工程は、固体潤滑材,α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例6と同一である。
【0070】
予備造粒工程: α−SiC粉末50gと、B4 C粉末0.25gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、カーボンブラック粉末50gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:50%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0071】
焼結原料混合工程: 実施例6と同一の焼結原料混合工程により、実施例6と同一の単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0072】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材20gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:10%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0073】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例6と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0074】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例6と同一の焼成工程により焼成して、実施例6と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0075】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例6と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A8を得た。
【0076】
また、実施例9として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A9を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、焼成工程及び仕上げ工程は実施例6と同一であり、予備造粒工程、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、固体潤滑材,α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例6と同一である。
【0077】
予備造粒工程: α−SiC粉末50gと、B4 C粉末0.25gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、カーボンブラック粉末50gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:50%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0078】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末70gに、B4 C粉末0.35g、フェノール樹脂3g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0079】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材30gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:15%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0080】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例6と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0081】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例6と同一の焼成工程により焼成して、実施例6と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0082】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例6と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A9を得た。
【0083】
また、実施例10として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A10を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、焼成工程及び仕上げ工程は実施例6と同一であり、予備造粒工程、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、固体潤滑材,α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例6と同一である。
【0084】
予備造粒工程: α−SiC粉末60gと、B4 C粉末0.3gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、カーボンブラック粉末40gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:40%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0085】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末70gに、B4 C粉末0.35g、フェノール樹脂3g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0086】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材50gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0087】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例6と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0088】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例6と同一の焼成工程により焼成して、実施例6と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0089】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例6と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A10を得た。
【0090】
また、実施例11として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A11を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、焼成工程及び仕上げ工程は実施例6と同一であり、予備造粒工程、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、固体潤滑材,α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例6と同一である。
【0091】
予備造粒工程: α−SiC粉末50gと、B4 C粉末0.25gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、カーボンブラック粉末40gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:40%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0092】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末70gに、B4 C粉末0.35g、フェノール樹脂3g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0093】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材50gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0094】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例6と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0095】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例6と同一の焼成工程により焼成して、実施例6と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0096】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例6と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A11を得た。
【0097】
また、実施例12として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A12を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、焼成工程及び仕上げ工程は実施例6と同一であり、予備造粒工程、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、炭化珪素としてβ型のものを使用した点及びその添加量並びに固体潤滑材,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例6と同一である。
【0098】
予備造粒工程: 平均粒子径0.6μmのβ型炭化珪素(β−SiC)粉末80gと、B4 C粉末0.4gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、カーボンブラック粉末20gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0099】
焼結原料混合工程: 平均粒子径0.6μmのβ−SiC粉末80gに、B4 C粉末0.4g、フェノール樹脂3.5g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0100】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材20gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:4%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0101】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例6と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0102】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例6と同一の焼成工程により焼成して、実施例6と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0103】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例6と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A12を得た。
【0104】
また、実施例13として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A13を、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備造粒工程、焼成工程及び仕上げ工程は実施例1と同一であり、焼結原料混合工程及び本造粒工程は、固体潤滑材として窒化ホウ素を使用した点及び固体潤滑材,α−SiC,B4 C,フェノール樹脂,予備造粒材の添加量が異なる点を除いて、実施例1と同一である。
【0105】
予備造粒工程: α−SiC粉末80gと、B4 C粉末0.4gと、PVA1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる予備焼結原料に、粒子径10μmの窒化ホウ素(BN)粉末20gを添加して、これらをボールミルにより24時間混合し、その混合液たる複合炭化珪素焼結原料(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して予備造粒材を得た。
【0106】
焼結原料混合工程: α−SiC粉末80gに、B4 C粉末0.4g、フェノール樹脂3.5g、PEG2g及びステアリン酸1gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合して単一炭化珪素焼結原料を得た。
【0107】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた単一炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、これに予備造粒工程で得られた予備造粒材20gを添加し、これらを1時間攪拌混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:4%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して本造粒材を得た。
【0108】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を使用して、実施例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0109】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例1と同一の焼成工程により焼成して、実施例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0110】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体A13を得た。
【0111】
また、比較例1として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B1を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は、実施例1と同一である。
【0112】
造粒工程: 平均粒子径0.7μmのα−SiC粉末98gと、焼結助剤としてのB4 C粉末0.45gと、カーボン源としてのカーボンブラック2gと、成形助剤としてのPEG(#6000)2g及びステアリン酸1gと、ポリマ助剤であるPVA(#1000)1gを水200gに溶解させた溶解液とからなる炭化珪素焼結原料に、固体潤滑材として粒子径1μmの黒鉛粉末2gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:2%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して、径20〜80μmの球形状の造粒材を得た。
【0113】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、実施例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0114】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を実施例1と同一の焼成工程により焼成して、実施例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0115】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に実施例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B1を得た。
【0116】
また、比較例2として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B2を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、α−SiC,固体潤滑材の添加量が異なる点を除いて、比較例1と同一である。
【0117】
造粒工程: α−SiC粉末の添加量を90gとした点を除いて比較例1と同一の炭化珪素焼結原料に、固体潤滑材として黒鉛粉末10gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:10%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0118】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0119】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0120】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B2を得た。
【0121】
また、比較例3として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B3を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、α−SiC,固体潤滑材の添加量が異なる点を除いて、比較例1と同一である。
【0122】
造粒工程: α−SiC粉末の添加量を80gとした点を除いて比較例1と同一の炭化珪素焼結原料に、固体潤滑材として黒鉛粉末20gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0123】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0124】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0125】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B3を得た。
【0126】
また、比較例4として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B4を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、固体潤滑材としてカーボンブラックを使用した点及びα−SiC,固体潤滑材の添加量が異なる点を除いて、比較例1と同一である。
【0127】
造粒工程: α−SiC粉末の添加量を90gとした点を除いて比較例1と同一の炭化珪素焼結原料に、固体潤滑材として粒子径0.02μmのカーボンブラック粉末10gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:10%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0128】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0129】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0130】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B4を得た。
【0131】
また、比較例5として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B5を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、α−SiC,固体潤滑材の添加量が異なる点を除いて、比較例4と同一である。
【0132】
造粒工程: α−SiC粉末の添加量を85gとした点を除いて比較例4と同一の炭化珪素焼結原料に、カーボンブラック粉末15gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:15%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0133】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0134】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0135】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B5を得た。
【0136】
また、比較例6として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B6を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、α−SiC,固体潤滑材の添加量が異なる点を除いて、比較例4と同一である。
【0137】
造粒工程: α−SiC粉末の添加量を75gとした点を除いて比較例4と同一の炭化珪素焼結原料に、カーボンブラック粉末25gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:25%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0138】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0139】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0140】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B6を得た。
【0141】
また、比較例7として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B7を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、β−SiCを使用した点を除いて、比較例4と同一である。
【0142】
造粒工程: α−SiC粉末に代えて平均粒子径0.6μmのβ−SiC粉末90gを使用した点を除いて比較例4と同一の炭化珪素焼結原料に、カーボンブラック粉末10gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:10%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0143】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0144】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0145】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B7を得た。
【0146】
また、比較例8として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B8を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、固体潤滑材としてBNを使用した点を除いて、比較例2と同一である。
【0147】
造粒工程: 比較例2と同一の炭化珪素焼結原料に、固体潤滑材として粒子径10μmのBN粉末10gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:10%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0148】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0149】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0150】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B8を得た。
【0151】
また、比較例9として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B9を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一であり、造粒工程は、α−SiC,固体潤滑材の添加量が異なる点を除いて、比較例8と同一である。
【0152】
造粒工程: α−SiCの添加量を80gとした点を除いて比較例8と同一の炭化珪素焼結原料に、固体潤滑材としてBN粉末20gを添加して、これらをボールミルで24時間混合し、その混合スラリ(固体潤滑材の含有率:20%)をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して造粒材を得た。
【0153】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0154】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす複合炭化珪素焼結材を得た。
【0155】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B9を得た。
【0156】
また、比較例10として、当該メカニカルシールの回転環3として使用しうる摺動体B10を、次のような造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作した。なお、予備成形工程、焼成工程及び仕上げ工程は比較例1と同一である。
【0157】
造粒工程: 平均粒子径0.6μmのβ−SiC粉末100gに、焼結助剤としてのB4 C粉末0.5g及びカーボン源としてのフェノール樹脂(レゾール型)4gを添加し、さらに成形助剤としてPEG(#6000)2g及びステアリン酸1gを添加して、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合し、その混合スラリをスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して、径20〜80μmの球形状の造粒材を得た。
【0158】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を使用して、比較例1と同一の予備成形工程により予備成形体を得た。
【0159】
焼成工程: 予備成形工程で得られた予備成形体を比較例1と同一の焼成工程により焼成して、比較例1と同一形状をなす炭化珪素焼結材を得た。この炭化珪素焼結材は、一般的な緻密質の炭化珪素焼結材と同質のものである。
【0160】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結材に比較例1と同一の仕上げ工程を施して、回転環3として使用しうる摺動体B10を得た。
【0161】
以上のようにして得られた本発明の摺動体A1〜A5は、図1に例示する如く、黒鉛粒子が集合した状態で炭化珪素粒子と結合した複合炭化珪素組織(同図において黒色をなす部分)が独立して炭化珪素粒子同士が結合した緻密な単一炭化珪素組織中に分散するものであり、摺動体A6〜A12は、図2に例示する如く、カーボンブラック粒子が集合した状態で炭化珪素粒子と結合した複合炭化珪素組織(同図において黒色をなす部分)が独立して炭化珪素粒子同士が結合した緻密な単一炭化珪素組織中に分散するものであり、摺動体A13は、図3に示す如く、BN粒子が集合した状態で炭化珪素粒子と結合した複合炭化珪素組織(同図において黒色をなす部分)が独立して炭化珪素粒子同士が結合した緻密な単一炭化珪素組織中に分散するものである。なお、図1は摺動体A1の鏡面を、図2は摺動体A8の鏡面を、また図3は摺動体A13の鏡面を、夫々100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【0162】
これに対して、摺動体B1〜B9は、摺動体A1〜A13と同様に固体潤滑材を含有するものであるが、図4〜図6に例示する如く、固体潤滑材である黒鉛粒子,カーボンブラック粒子,BN粒子が部分的に集合せず、炭化珪素組織全体に分散している。すなわち、摺動体B1〜B9全体が、上記の複合炭化珪素組織と同様の組織をなしている。また、摺動体10は、図7に示す如く、固体潤滑材を含有せず、緻密な炭化珪素組織をなしている。なお、図4は摺動体B3の鏡面を、図5は摺動体B6の鏡面を、図6は摺動体B9の鏡面を、また図7は摺動体B10の鏡面を、夫々100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【0163】
而して、摺動体A1〜A13の全体潤滑材含有率(摺動体全体における固体潤滑材の含有率)及び局部潤滑材含有率(各複合炭化珪素組織における固体潤滑材の含有率)は表1に示す通りであり、摺動体A1〜A13における各複合炭化珪素組織部分の径は20〜50μmであった。また、摺動体B1〜B10における固体潤滑材の含有率(上記全体潤滑材含有率に相当する)は表1に示す通りである。また、摺動体A1〜A13,B1〜B10について密度(水置換法による)及び曲げ強度を求めたところ、表1に示す通りであった。
【0164】
表1から明らかなように、固体潤滑材を含有する摺動体A1〜A13,B1〜B9については、固体潤滑材の含有率(全体潤滑材含有率)が高くなるに従って密度及び曲げ強度が小さくなっている。しかし、摺動体A1〜A13における密度及び曲げ強度は、固体潤滑材を含有しない摺動体B10及び固体潤滑材の含有率が最小(2%)である摺動体B1を除いて、固体潤滑材の含有率に拘わらず摺動体B2〜B9に比して高くなっている。特に、固体潤滑材の含有率が同一である場合には、摺動体A1〜A13の密度及び曲げ強度は、摺動体B1も含めて、摺動体B1〜B9よりも大幅に高くなっている。これらのことは、冒頭でも述べているが、次のような理由によるものと考えられる。
【0165】
すなわち、固体潤滑材粒子が摺動体全体に分散している摺動体B1〜B9においては、固体潤滑材粒子と炭化珪素粒子との結合力が炭化珪素粒子同士の結合力より小さく且つ固体潤滑材の存在が炭化珪素の焼結作用を妨げることから、摺動体全体としての焼結力が低下し、その低下度は固体潤滑材の含有率が増加するに従って顕著となる。これに対して、摺動体A1〜A13では、固体潤滑材粒子が摺動体全体に分散していないため、炭化珪素粒子同士が直接に結合している部分(単一炭化珪素組織部分)が占める割合が多い。しかも、固体潤滑材を含有する部分(複合炭化珪素組織部分)は、摺動体B1〜B9と同様に炭化珪素と固体潤滑材との結合力が低いものの、単一炭化珪素組織部分の焼成時における収縮作用によって、その外周側から中心側へと強力に締め付けられることになり、複合炭化珪素組織における結合力は増大される。また、複合炭化珪素組織と単一炭化珪素組織との境界部分においても、炭化珪素粒子同士の焼結による結合作用と上記収縮作用による結合力増大作用とによって、単一炭化珪素組織におけると同等の粒子間結合力が確保されることになる。すなわち、単一炭化珪素組織部分における粒子間結合力は勿論、複合炭化珪素組織部分における粒子間結合力及び両組織部分間の結合力も高くなる。したがって、摺動体A1〜A13にあっては、摺動体全体としての結合力が大きくなって密度が向上し、曲げ強度も向上するのである。
【0166】
また、当該メカニカルシールに摺動体A1〜A13,B1〜B10を回転環3として組み込んで、シール試験を行った。なお、固定環1としては、比較例10において摺動体10を得た場合と同様の工程により得た緻密質の炭化珪素焼結材(密度:3.130g/cm3 )からなるものを使用した。
【0167】
而して、このシール試験は、当該メカニカルシールを負荷圧力:0.1MPa,周速:2m/sのドライ条件下で2時間連続運転して、両密封環1,3の摺動面(密封端面1a,3a)の摩耗速度(μm/Hr)、摩擦係数及び温度(℃)を求めると共に、固定密封環3の摺動面状態を判定した。摺動面状態の判定は、相手密封端面(固定環1の密封端面1a)との相対回転摺接により発生する環状痕及び摩耗粉の発生程度を目視観察することにより行った。なお、環状痕については、表2において、明瞭に目視される環状溝が形成されているものには「×」を付し、明瞭に目視されないものの僅かに擦過傷がついているものには「△」を付し、環状痕が全く認められないものには「○」を付した。また、摩耗粉については、表2において、顕著に摩耗粉が発生したものには「×」を付し、僅かに摩耗粉が発生したものには「△」を付し、摩耗粉が全く発生していないものには「○」を付した。
【0168】
表2から理解されるように、摺動体A1〜A13を使用した場合には、何れの場合にも、摺動体B1〜B10を使用した場合に比して、摩耗速度,摩擦係数,摺動面温度の値が大幅に低くなっている。また、摺動面状態についても、摺動体B1〜B10は、全て、環状痕又は摩耗粉が顕著に発生しているのに対し、摺動体A2〜A10は環状痕及び摩耗粉が全く発生せず、摺動体A1,A11〜A13において環状痕又は摩耗粉の何れかが僅かに発生しているにすぎない。
【0169】
したがって、摺動体A1〜A13は、固体潤滑材を分散させた摺動体B1〜B9及び固体潤滑材を含有しない摺動体B10に比して、明らかに摺動特性に優れたものであり、メカニカルシールの密封環として好適するものであるということができる。また、表2に示すシール試験結果から判断した場合、全体潤滑材含有率は4〜20%としておくことがより好ましいということができる。さらに、表1に示す密度,曲げ強度をも考慮して総合的に判断した場合、全体潤滑材含有率は4〜10%としておくのが最適であるということができる。
【0170】
なお、上記したシール試験の結果は、相手密封環(固定密封環1)として自己潤滑性を有しない炭化珪素製のものを使用した場合についてものであるから、相手密封環として自己潤滑性に優れるカーボン製のものや本発明の摺動体を使用した場合には、表2に示す値より優れたシール試験結果が得られるであろうことは容易に想定される。したがって、一般に、相手密封環の構成材はシール条件に応じて選択される(例えば、ドライ条件下やスラリ流体を扱う等の過酷なシール条件下では相手密封環を緻密質の炭化珪素焼結材製のものや本発明の摺動体等の硬質材製密封環が選択され、一般的なシール条件下ではカーボン等の軟質材製密封環が選択される)が、何れの場合にも、本発明の摺動体を使用したメカニカルシールによれば良好なシール機能を発揮させることができる。
【0171】
【表1】
Figure 0003650739
【0172】
【表2】
Figure 0003650739
【0173】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解されるように、本発明の摺動体は、耐摩耗性,硬質性等の炭化珪素本来の特性を損なうことなく、潤滑性を大幅に向上させ得るものであり、メカニカルシールの密封環や軸受部材等として好適に使用することができるものである。
【0174】
また、本発明の製造方法によれば、かかる摺動体を容易に製造することができる。
【0175】
また、本発明のメカニカルシールによれば、シール条件に応じて両密封環又はその一方を上記の摺動体で構成しておくことにより、如何なるシール条件下においても良好なシール機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摺動体A1の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図2】摺動体A8の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図3】摺動体A13の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図4】摺動体B3の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図5】摺動体B6の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図6】摺動体B9の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図7】摺動体B10の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図8】端面接触型メカニカルシールの一例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1…固定環、1a…固定環の密封端面、3…回転環(摺動体)、3a…回転環の密封端面。

Claims (7)

  1. 微細な固体潤滑材が密集した状態で炭化珪素粒子と配合する複合炭化珪素組織が、独立して、炭化珪素粒子同士が結合する緻密な単一炭化珪素組織中に分散する複合炭化珪素焼結材で構成されていることを特徴とする摺動体。
  2. 複合炭化珪素組織における固体潤滑材の含有率が10〜50%であることを特徴とする、請求項1に記載する摺動体。
  3. 複合炭化珪素組織をなす部分の径が20〜50μmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する摺動体。
  4. 複合炭化珪素焼結材における固体潤滑材の含有率が2〜25%であることを特徴とする、請求項1、請求項2又は請求項3に記載する摺動体。
  5. 微細な固体潤滑材が混合分散する複合炭化珪素焼結原料を造粒してなる予備造粒材を、固体潤滑材を含有しない単一炭化珪素焼結原料と混合して、その混合スラリを造粒して得られる本造粒材を所定形状に加圧成形し、その加圧成形体を焼成処理することにより、固体潤滑材粒子が密集した状態で炭化珪素粒子と結合する複合炭化珪素組織が、独立して、炭化珪素同士が結合する緻密な単一炭化珪素組織中に分散する複合炭化珪素焼結材を得るようにしたことを特徴とする摺動体の製造方法。
  6. 予備造粒材を調整するために複合炭化珪素焼結原料に含有されるポリマ助剤が、単一炭化珪素焼結原料に含有される溶剤に溶解しないものであることを特徴とする、請求項5に記載する摺動体の製造方法。
  7. 2つの密封環が相対回転摺接するように構成されたメカニカルシールにおいて、少なくとも一方の密封環を請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載する摺動体で構成したことを特徴とするメカニカルシール。
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