JP4077237B2 - 冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法に関し、その目的は、既存の建築物を増築する際に冷暖気循環構造を付加し、増築建築物における居住性の向上と省エネルギー化を達成することにある。
【0002】
【従来の技術】
従来より、住宅の壁を二重構造として内壁と外壁の隙間に空気を循環させることによって冷暖房の効率を高めるようにした技術が知られており、このような技術は、例えば特開平11―211176号公報や特開2001−65074号公報等に開示されている。
しかしながら、これら公報の開示技術に代表される従来の技術は、全て新規に建築される住宅を対象としたものであって、増築された住宅への適用は全く考慮されていなかった。
すなわち、従来の技術は、建築前の設計段階から予め通気用の空間を住宅構造の中に設計しておくことによって初めて実施し得るものであるため、通気用としての空間が設計されることなく構築されている既存住宅を増築する際にそのまま適用することはできないものであった。
このように、従来、建設業界では、専ら新築の建築物において空気の循環構造を取り入れることのみに注目が払われており、既存の建築物を増築する際に空気の循環構造を付加するという発想自体が皆無であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであって、既存建築物を増築する際において、増築後の建築物に対して冷暖房の効率を高めるための空気循環構造を付加することを可能とし、増築建築物における居住性の向上と省エネルギー化を達成することができる冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法を提供せんとするものである。
【0004】
請求項1に係る発明は、既存建築物の側壁の外側に、上端が既存建築物の屋根部材の上方まで延在する支持部材を立設し、該支持部材の上端に新規の屋根部材を設けた後に前記既存建築物の屋根部材を除去し、次いで屋根部材が除去された既存建築物の最上階の天井部材の上部に新規の床部材を設けることにより、該新規の床部材と新規の屋根部材との間に居住空間を形成するとともに該新規の床部材と前記天井部材との間に通気空間を形成し、前記既存建築物の側壁の外壁材及び断熱材を除去した後、前記支持部材の外側に新規の壁部材を装着することにより、該壁部材と前記既存建築物の側壁との間に通気空間を形成し、これらの通気空間に暖気及び/又は冷気を循環させるための循環装置を前記新規屋根部材の屋根裏に設置することを特徴とする冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法に関する。
【0005】
請求項2に係る発明は、前記既存建築物の床部材の上に空洞コンクリートブロックを敷設するとともに、該ブロックの空洞部を前記既存建築物の側壁と新規の壁部材との間の通気空間と連通させ、前記循環装置からの暖気及び/又は冷気を該ブロックの空洞部を通して循環させることを特徴とする請求項1記載の冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明は、冷暖気循環構造を全く有していない既存建築物を増築するに際して増築後の建築物に冷暖気循環構造を付加することを特徴とするものであり、この点で、設計段階から予め冷暖気循環構造を取り入れることが考慮された新規の建築物とは根本的に相違するものである。
本発明の基礎をなす既存建築物の増築方法については、本願発明者が既に特開2000−282696号公報において開示した方法が使用され、本発明はこの増築方法を応用して増築後の建築物に冷暖気循環構造を付加するものである。以下、本発明を説明するにあたって、この本発明の基礎をなす増築方法について先ず簡単に説明する。
【0007】
図1及び図2はこの増築方法により得られる建築物の増築前と増築後の状態をそれぞれ示しており、図示の如く、既存建築物(1)の屋根部材(屋根小屋組)(3)を除去して、その外周及び上部を囲うように新規の壁部材(4)及び屋根部材(5)を構築することによって増築建築物(2)が構築される。
この構築方法は、具体的には、既存建築物の側壁の外側に、上端が既存建築物の屋根部材の上方まで延在する支持部材(鉄骨柱等)を立設し、該支持部材の上端に新規の屋根部材を設けた後に、前記既存建築物の屋根部材を除去し、次いで屋根部材が除去された既存建築物の最上階の天井部材の上部に床部材を設けて、この床部材の上方に新規の居住空間を形成するとともに、前記支持部材の外側に新規の壁部材を装着するものである。尚、この方法は、特開2000−282696号公報において既に開示した通りであるため、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0008】
尚、図示例では、既存建築物(1)が2階建てであって、増築後の建築物(2)が3階建てである場合を示しているが、本発明では、既存建築物(1)が1階建てで増築後の建築物(2)が2階建て以上である場合や、既存建築物(1)が3階建てで増築後の建築物(2)が4階建て以上である場合にも適用可能である。また、図示例は一戸建て住宅を示しているが、所謂長屋といわれる集合住宅に適用することも可能である。
【0009】
本発明は、このような増築方法を応用して増築後の建築物に冷暖気循環構造を付加するようにしたものであって、図3は冷暖気循環構造が付加された増築後の建築物(2)を示し、図4はその内部構造をより詳しく示した図である。
本発明では、上記増築方法において、新規の壁部材(4)と既存建築物(1)の側壁(6)との間に垂直方向の通気空間(7)を形成する。この通気空間(7)は、増築の際に単に既存建築物(1)の側壁(6)の外面(外装材)と新規の壁部材(4)との間に隙間を設けることによって形成してもよいが、図5に示すように、新規の壁部材(4)を設ける前に、既存建築物(1)の側壁(6)の外壁材(61)及び断熱材(62)を順次除去して室内側の壁下地及び仕上ボードのみを残し、その後に新規の壁部材(4)を側壁(6)との間に隙間をもって構築することにより形成することが好ましい。
【0010】
このように、通気空間(7)の形成に際して、既存建築物(1)の側壁(6)の外壁材(61)及び断熱材(62)を除去することによって、図4に波線の矢印で示すように、通気空間(7)を流通する冷気又は暖気と室内の空気との熱交換が効果的に行われるようになり、冷暖房の効率を大幅に向上させることができる。
【0011】
また、本発明では、屋根部材(3)が除去された既存建築物(1)の最上階の天井部材(8)と、その上方に新たに設けられる床部材(9)との間に水平方向の通気空間(10)を形成する。
この通気空間(10)は、上記した増築方法において、既存建築物の天井部材(8)の上部に新たに床部材(9)を設ける際に、天井部材(8)と床部材(9)との間に空間を形成することで、この形成された空間を利用することができる。
この水平方向の通気空間(10)は、図示のように垂直方向の通気空間(7)と連通させて互いに空気が流通し得るようにする。
【0012】
さらに、本発明においては、既存建築物(1)の内部にも水平方向の通気空間(11)を形成する。
図6は、この通気空間(11)の形成方法を示す説明図である。
通気空間(11)は、既存建築物(1)の床部材(12)の上に空洞コンクリートブロック(13)を敷き詰めることにより形成され、図7に示すように、敷き詰められた空洞コンクリートブロック(13)の空洞部(14)が暖気又は冷気の流通を可能とする通気空間(11)として機能する。尚、図6では空洞部(14)の図示は省略されている。
このように通気空間(11)を形成する空洞コンクリートブロック(13)は、単に暖気又は冷気を流通させる通路としての機能だけでなく、蓄熱材としての機能も果たす。すなわち、空洞コンクリートブロック(13)は、内部を通過する暖気の熱を蓄えることができるので、既存建築物(1)の床に対して床暖房の効果を発揮することが可能となる。
尚、既存建築物(1)が2階以上ある場合、空洞コンクリートブロック(13)の向きは、図示例のように1階毎に向きを変える(直交させる)ようにしてもよいし、全ての階で同じ向きとしてもよい。
【0013】
図8は、通気空間(11)を形成した増築後の建築物(2)の構造を具体的に示す断面図である。
図示例では、空洞コンクリートブロック(13)は既存建築物(1)の1階及び2階の床部材(12)の上に連続して敷設されている。そして、その端部のブロック(13a)は、外壁材(61)及び断熱材(62)が除去された既存建築物(1)の側壁(6)から突出しており、これによって空洞コンクリートブロック(13)の空洞部(14)が、新規の壁部材(4)と既存建築物(1)の側壁(6)との間に形成された垂直方向の通気空間(7)と連通している。尚、本発明では、空洞コンクリートブロック(13)を側壁(6)から突出させずにパイプ等を用いて空洞部(14)と通気空間(7)とを連通させるようにしてもよい。
【0014】
尚、図8において、(15)は新規の壁部材(4)に内蔵された断熱材であり、このように新規の壁部材(4)に断熱材(15)を内蔵することによって、建築物外への放熱が抑えられるので、冷暖房の効率をより向上させることができる。
また、図示の如く、既存建築物(1)の土台(16)と新規の壁部材(4)との間を繋ぐように板材(17)を架設し、この板材(17)の内部にも断熱材(18)を設けるように構成することによって、通気空間(7)の密閉性をより高めることが可能となり、冷暖房の効率をより一層向上させることができる。
また、図示していないが、空洞コンクリートブロック(13)の下に断熱材を敷設することも可能である。
尚、図8中、(19)は既存建築物(1)の既存基礎であり、(20)は増築後建築物(2)の支持部材(鉄骨柱等)を立設するための増築部基礎であり、(21)は増築後建築物(2)の地中梁である。また、(22)は既存建築物(1)の既設柱であり、(23)は増築建築物(2)の増築柱(支持部材)である。
【0015】
本発明においては、図3及び図4に示すように、新規に設けられた屋根部材(5)の屋根裏に、冷暖房装置(15)及び換気装置(16)からなる循環装置が設置され、この循環装置の駆動によって、上記した垂直及び水平方向の通気空間(7)、(10)、(11)に暖気又は冷気を循環させる。
【0016】
さらに、本発明においては、図3及び図4に示すように、新規の屋根部材(5)の上部に太陽光発電パネル(17)と該発電パネル(17)により発生した電力を蓄えるバッテリー(図示せず)を設置し、発電パネル(17)により発生した電力を利用して上記循環装置を駆動できるように構成することが好ましい。
このように構成すると、循環装置の駆動のために電力を消費することがなくなり、しかも余った電力を室内の電気機器の駆動にも用いることができるから、上記した二重壁を用いた冷暖気循環構造の効果と相まって、省エネルギーで居住性に優れた増築建築物が得られる。
【0018】
請求項1に係る発明によれば、空気循環構造が設けられていない既存の建築物を増築するに際して、冷暖房の効率を高めるための空気循環構造を有することが可能となり、居住性の向上と省エネルギー化を図ることができる増築建築物を得ることが可能となる。
請求項2に係る発明によれば、新規の壁部材を装着する前に既存建築物の側壁の外壁材及び断熱材を除去することにより通気空間を形成するので、通気空間を流通する冷気又は暖気と室内の空気との熱交換が効果的に行われ、冷暖房の効率を大幅に向上させることができる増築建築物を容易に得ることができる。
請求項3に係る発明によれば、空気循環構造が設けられていない既存の建築物を増築するに際して、増築建築物内の既存建築物の部分にも新たに冷暖気循環構造を付加することができる。また、得られた増築建築物は、通気空間を形成する空洞コンクリートブロックが、内部を通過する暖気の熱を蓄えることができることによって、既存建築物の床に対して床暖房の効果を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基礎をなす増築方法により得られる増築建築物の増築前の状態を示す図である。
【図2】本発明の基礎をなす増築方法により得られる増築建築物の増築後の状態を示す図である。
【図3】本発明により冷暖気循環構造が付加された増築後の建築物を示す図である。
【図4】本発明により冷暖気循環構造が付加された増築後の建築物の内部構造をより詳しく示した図である。
【図5】既存建築物の側壁の外壁材及び断熱材を順次除去する様子を示す図である。
【図6】既存建築物の内部に水平方向の通気空間を形成する方法を示す説明図である。
【図7】空洞コンクリートブロックの空洞部が暖気又は冷気の流通を可能とする通気空間として機能する様子を示す図である。
【図8】通気空間を形成した増築後の建築物の構造を具体的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 既存建築物
2 増築建築物
3 既存の屋根部材
4 新規の壁部材
5 新規の屋根部材
6 既存建築物の側壁
61 既存建築物の側壁の外壁材
62 既存建築物の側壁の断熱材
7 垂直方向の通気空間
8 既存建築物の最上階の天井部材
9 新規の床部材
10 水平方向の通気空間
11 水平方向の通気空間
12 既存建築物の床部材
13 空洞コンクリートブロック
14 空洞部
15 冷暖房装置(循環装置)
16 換気装置(循環装置)
17 太陽光発電パネル
Claims (2)
- 既存建築物の側壁の外側に、上端が既存建築物の屋根部材の上方まで延在する支持部材を立設し、該支持部材の上端に新規の屋根部材を設けた後に前記既存建築物の屋根部材を除去し、次いで屋根部材が除去された既存建築物の最上階の天井部材の上部に新規の床部材を設けることにより、該新規の床部材と新規の屋根部材との間に居住空間を形成するとともに該新規の床部材と前記天井部材との間に通気空間を形成し、前記既存建築物の側壁の外壁材及び断熱材を除去した後、前記支持部材の外側に新規の壁部材を装着することにより、該壁部材と前記既存建築物の側壁との間に通気空間を形成し、これらの通気空間に暖気及び/又は冷気を循環させるための循環装置を前記新規屋根部材の屋根裏に設置することを特徴とする冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法。
- 前記既存建築物の床部材の上に空洞コンクリートブロックを敷設するとともに、該ブロックの空洞部を前記既存建築物の側壁と新規の壁部材との間の通気空間と連通させ、前記循環装置からの暖気及び/又は冷気を該ブロックの空洞部を通して循環させることを特徴とする請求項1記載の冷暖気循環構造を有する増築建築物の構築方法。
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