JP4075750B2 - スタータ - Google Patents
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Description
また、何らかの原因で電磁スイッチに不具合が生じた場合には、スタータモータが無負荷状態で連続通電される恐れもある。
また、特許文献2及び3に記載されたスタータでは、モータリード線やブラシリード線(ピグテール)等に断面積を局部的に小さくした凹部を設け、この凹部が通電電流による発熱で所定温度に達すると溶断して、モータ回路を遮断する構造が示されている。
本発明のスタータは、始動電流が流れる電流経路に通常使用時より過大な熱的負荷が加わった場合に、電流経路を構成する複数の部品のうち、界磁コイルが溶断することで電流経路を遮断できる通電遮断機能を有し、この通電遮断機能が、界磁コイルの全長の1/2以上の範囲に渡って、界磁コイルの断面積を減少させることにより設けられている。
請求項1に記載したスタータにおいて、通電遮断機能を有する界磁コイルは、モータの内部に配置されている。
この場合、断面積を減少させた部位が発熱して界磁コイルが溶断した時に、その溶断した界磁コイルから、モータの外側に配置される車両側の部品やワイヤハーネス等に熱的な影響を与えることがないため、スタータの電流経路に過大な熱的負荷が生じた時に、安全に電流経路を遮断できる。
請求項1または2に記載したスタータにおいて、通電遮断機能は、界磁コイルの断面積を全長に渡って減少させることにより設けられている。
この場合、断面積を減少させる部位をより長く設定することができるので、溶断に必要な熱エネルギを効率的に得ることができる。また、界磁コイルに断面積の大きい部位と小さい部位とを形成する場合は、その製造が困難であるのに対し、界磁コイルの断面積を全長に渡って減少させる場合は、線径の細い界磁コイルを使用すれば良いので、コスト面で有利である。
請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、電流経路を構成する複数の部品のうち、界磁コイル以外に、可燃性の部材に接触または近接して配置される高温忌避部品を有し、この高温忌避部品の電流密度が、複数の部品の中で最も小さくなる様に、高温忌避部品の断面積を全長に渡って大きくしている。
この構成によれば、高温忌避部品の電流密度が最も小さい、即ち断面積が大きいので、高温忌避部品を流れる電流によって発生するジュール熱を抑えることができる。その結果、スタータの電流経路に過大な熱的負荷が加わった場合に、通電遮断機能を有する界磁コイルが溶断するまでに、可燃性の部材に与える熱的影響を抑えることが可能である。
請求項4に記載したスタータにおいて、高温忌避部品の電流密度は、界磁コイルの断面積を減少させた部位の電流密度の略1/2である。
これにより、スタータの電流経路に過大な熱的負荷が加わった場合に、界磁コイルが溶断する時の温度に対し、高温忌避部品の温度を略半分に抑えることができる。その結果、高温忌避部品が接触または近接する可燃性の部材に対する熱的影響を抑えることができる。
請求項4または5に記載したスタータにおいて、高温忌避部品は、可燃性の部材であるゴム製のグロメットに保持されて、一端側がモータのフレームより外側に取り出されてモータ端子に接続され、他端側がフレームの内側に引き込まれたモータリード線である。
これにより、スタータの電流経路に過大な熱的負荷が加わった場合に、ゴム製のグロメットがモータリード線から受ける熱的負荷を抑えることができ、グロメットの熱的な損傷を防止できる。
請求項4または5に記載したスタータにおいて、高温忌避部品は、可燃性の部材であるゴム製のグロメットに保持されて、一端側がモータのフレームより外側に取り出されてモータ端子に接続され、他端側がフレームの内側に引き込まれたモータリード線と、可燃性の部材である樹脂製のインシュレータに保持されて、モータリード線と界磁コイルとを電気的に接続するコネクションバーである。
これにより、スタータの電流経路に過大な熱的負荷が加わった場合に、ゴム製のグロメットがモータリード線から受ける熱的負荷を抑えることができ、グロメットの熱的な損傷を防止できる。同様に、樹脂製のインシュレータがコネクションバーから受ける熱的負荷を抑えることができ、インシュレータの熱的な損傷を防止できる。
本実施例のスタータ1は、図1に示す様に、回転力を発生するモータ2と、このモータ2に駆動されて回転する出力軸3と、この出力軸3上に配置されるピニオン移動体(後述する)と、シフトレバー4を介してピニオン移動体を反モータ方向(図1の左方向)へ押し出す働きを有すると共に、図4に示すモータ回路(後述する)に設けられた接点手段Aを開閉操作する電磁スイッチ5等より構成される。
界磁6は、図2に示す様に、磁気回路を形成すると共に、モータ2の機枠を兼ねる円筒形状のヨーク6aと、このヨーク6aの内周に固定される複数の界磁極6b、及び各界磁極6bに巻線される複数の界磁コイル6cとで構成され、この界磁コイル6cに本発明の通電遮断手段(後述する)が設けられている。なお、本実施例のスタータ1は、図4に示す様に、4極モータ2を使用するものであり、界磁極6b及び界磁コイル6cは、それぞれ4個ずつ設けられている。
整流子7は、回転軸8aの後端部外周に絶縁保持された複数のセグメントを円筒形状に配置して構成され、各セグメントがそれぞれ電機子コイル8cに電気的且つ機械的に結合されている。
出力軸3は、減速装置を介して電機子8の回転軸8aと同軸線上に配置され、反モータ側である一方の端部が、フロントハウジング14に回転自在に支持され、他方の端部が、センタケース15に回転自在に支持されている。
センタケース15は、減速装置の外周を覆って、フロントハウジング14とヨーク6aとの間に配設されている。なお、センタケース15と減速装置との間には、減速装置に過大トルクが作用した時に、その過大トルクを吸収する滑り板式の衝撃吸収装置18が組み込まれている。
一方向クラッチは、出力軸3の回転をピニオンギヤ19に伝達するもので、出力軸3にヘリカルスプライン嵌合するスプラインチューブ20と、このスプラインチューブ20と一体に設けられたアウタ21、このアウタ21の内側に配置されるインナ22、及びアウタ21とインナ22との間に形成されるくさび状空間に配置されるローラ23等から構成される。
ピニオンギヤ19は、一方向クラッチのインナ22と一体に設けられて、インナ22の軸方向反モータ側(図1の左側)に配置され、出力軸3に軸受24を介して支持されている。
シフトレバー4は、電磁スイッチ5のプランジャ27と一方向クラッチのスプラインチューブ20とを連結して、支点部4aを中心に揺動可能に設けられ、プランジャ27の動きをピニオン移動体に伝達する。
バッテリ端子29には、接点カバー5aの外側に取り出されたボルト部にバッテリケーブル33(図4参照)が接続され、モータ端子30には、同じく接点カバー5aの外側に取り出されたボルト部にモータリード線34が接続される。
通電遮断機能は、モータ回路に通常使用時より過大な熱的負荷が加わった場合に、モータ回路を構成する複数の部品のうち、特定の部品が溶断することでモータ回路を遮断する機能であり、特定の部品の全長の1/2以上の範囲に渡って、その特定の部品の断面積を減少させることにより設けられている。この実施例1では、前記特定の部品を界磁コイル6cとし、その界磁コイル6cに使用される銅線の断面積を全長に渡って減少させている。つまり、従来の界磁コイル6cより線径の細い銅線が使用されている。具体的には、従来品の90%程度の断面積を有する銅線が使用される。
始動スイッチの閉操作により、電磁スイッチ5の励磁コイル26が通電されてプランジャ27が吸引されると、シフトレバー4を介してピニオン移動体が出力軸3上を反モータ方向へ押し出され、ピニオンギヤ19がエンジンのリングギヤに当接して停止する。
一方、プランジャ27の移動により接点手段Aが閉じると、電機子8が通電されて回転し、その電機子8の回転が減速装置で減速されて出力軸3に伝達される。
エンジン始動後、始動スイッチが開操作されると、励磁コイル26への通電が停止して磁力が消滅するため、リターンスプリング28の反力でプランジャ27が押し戻される。このプランジャ27の移動により、接点手段Aが開いてモータ2への通電が停止されると共に、シフトレバー4を介してピニオン移動体が出力軸3上を反リングギヤ方向へ後退して、図1に示す静止位置に停止する。
なお、界磁コイル6cは、通常、1つの界磁極6bに対して複数回(例えば4回)巻き付けられているため、発熱により界磁コイル6cの被膜が損傷して、隣接するコイル同士が短絡(レア)した時に、その部分の電流密度が低下するため、界磁極6bに巻き付けられている部分で溶断することは殆どなく、実際には、図6に破線部分で示す様に、界磁極6bから引き出された界磁コイルの端部6d(巻き始め部または巻き終わり部)にて溶断する可能性が高い。
本実施例のスタータ1は、界磁コイル6cの断面積を全長に渡って減少させることにより、界磁コイル6cに通電遮断機能を持たせている。この構成によれば、例えば、モータリード線34の断面積を局部的に小さくしてヒューズ機能を持たせた公知技術(特許文献2及び3)と比較すると、断面積を減少させた部位が広範囲に渡っているため、熱伝導による温度低下が抑制される。つまり、界磁コイル6cに発生したジュール熱が逃げにくいため、界磁コイル6c全体の発熱を利用して効率的に且つ短時間に溶断させることが可能である。
この構成によれば、モータ回路の一部である界磁コイル6cに通電遮断機能を持たせているので、公知技術(特許文献1)の様に、温度ヒューズあるいはバイメタル等の部品を追加する必要がなく、部品点数の増加に伴うコストアップを抑制できる。
スタータ1には、モータリード線34を保持するゴム製のグロメット35、及びコネクションバー37を保持する樹脂製のインシュレータ38等、可燃性を有する部材が使用されている。このため、モータ回路に過大な熱的負荷が加わった場合、グロメット35やインシュレータ38が高熱の影響を受ける恐れがある。
図8はモータリード線34の平面図である。
本参考例は、通電遮断機能をモータリード線34に設けた例を示すものであり、図8(b)にモータリード線34の断面積を全長に渡って減少させた例を示し、図8(c)にモータリード線34の断面積を全長の1/2以上に渡って減少させた例を示す。
モータリード線34の断面積を全長の1/2以上に渡って減少させる場合、つまり、図8(a)に示す従来品と同じ断面積を有する部分を残している場合は、線径の細い部分の断面積を従来品の40%程度とする。
図9はブラシ9の斜視図である。
本参考例は、通電遮断機能をブラシピグテール11に設けた例を示すものであり、図9(b)にブラシピグテール11の断面積を全長に渡って減少させた例を示し、図9(c)にブラシピグテール11の断面積を全長の1/2以上に渡って減少させた例を示す。
ブラシピグテール11の断面積を全長の1/2以上に渡って減少させる場合、つまり、図9(a)に示す従来品と同じ断面積を有する部分を残している場合は、線径の細い部分の断面積を従来品の40%程度とする。
本参考例は、通電遮断機能をコネクションバー37に設けた例を示すものであり、コネクションバー37の断面積を全長に渡って減少させる場合、つまり、従来品より直径の細いコネクションバー37を使用する場合は、例えば、従来品の70%程度の断面積とする。これは、コネクションバー37の全長が、界磁コイル6cよりは短く、且つモータリード線34及びブラシピグテール11より長いため、断面積の減少率をモータリード線34及びブラシピグテール11の場合より小さく設定している。
また、コネクションバー37の断面積を全長の1/2以上に渡って減少させる場合、つまり、従来品と同じ断面積を有する部分を残している場合は、直径の細い部分の断面積を従来品の50%程度とする。
2 モータ
5 電磁スイッチ
6 界磁
6a ヨーク
6b 界磁極
6c 界磁コイル
6d 界磁コイルの端部(巻き始め部分または巻き終わり部分)
7 整流子
8 電機子
9 ブラシ
10 エンドフレーム(フレーム)
11 ブラシピグテール
25 バッテリ
29 バッテリ端子
30 モータ端子
34 モータリード線(高温忌避部品)
35 グロメット(可燃性の部材)
37 コネクションバー(高温忌避部品)
38 インシュレータ(可燃性の部材)
Claims (7)
- 界磁と電機子とを備えると共に、前記界磁は、磁気回路を形成するヨークと、このヨークの内周に固定される界磁極と、この界磁極に巻線される界磁コイルとで構成され、前記電機子に設けられる整流子上にブラシが配置され、このブラシを介してバッテリから前記電機子に始動電流が供給されることにより、前記電機子に回転力を発生するモータと、
前記バッテリに接続されるバッテリ端子と前記モータに接続されるモータ端子とを有し、前記バッテリ端子と前記モータ端子との間を電気的に断続する電磁スイッチとを備えたスタータであって、
このスタータ内部を前記始動電流が流れる電流経路に通常使用時より過大な熱的負荷が加わった場合に、前記電流経路を構成する複数の部品のうち、前記界磁コイルが溶断することで前記電流経路を遮断できる通電遮断機能を有し、
この通電遮断機能は、前記界磁コイルの全長の1/2以上の範囲に渡って、前記界磁コイルの断面積を減少させることにより設けられており、且つ、前記界磁コイルには、予め引っ張り力が付与されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1に記載したスタータにおいて、
前記通電遮断機能を有する前記界磁コイルは、前記モータの内部に配置されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
前記通電遮断機能は、前記界磁コイルの断面積を全長に渡って減少させることにより設けられていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、
前記電流経路を構成する複数の部品のうち、前記界磁コイル以外に、可燃性の部材に接触または近接して配置される高温忌避部品を有し、この高温忌避部品の電流密度が、前記複数の部品の中で最も小さくなる様に、前記高温忌避部品の断面積を大きくしたことを特徴とするスタータ。 - 請求項4に記載したスタータにおいて、
前記高温忌避部品の電流密度は、前記界磁コイルの断面積を減少させた部位の電流密度の略1/2であることを特徴とするスタータ。 - 請求項4または5に記載したスタータにおいて、
前記高温忌避部品は、前記可燃性の部材であるゴム製のグロメットに保持されて、一端側が前記モータのフレームより外側に取り出されて前記モータ端子に接続され、他端側が前記フレームの内側に引き込まれたモータリード線であることを特徴とするスタータ。 - 請求項4または5に記載したスタータにおいて、
前記高温忌避部品は、前記可燃性の部材であるゴム製のグロメットに保持されて、一端側が前記モータのフレームより外側に取り出されて前記モータ端子に接続され、他端側が前記フレームの内側に引き込まれたモータリード線と、前記可燃性の部材である樹脂製のインシュレータに保持されて、前記モータリード線と前記界磁コイルとを電気的に接続するコネクションバーであることを特徴とするスタータ。
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