JP4075088B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トランス等の鉄心に用いられる高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は軟磁性材料として、主にトランスその他の電気機器の鉄心材料に使用されており、磁気特性としては、B8(磁化力800 A/m における磁束密度) に代表される励磁特性とW17/50(周波数50Hzで1.7Tまで磁化したときのエネルギー損失) に代表される鉄損特性の良好なものが要求される。
【0003】
このような特性を備えた方向性電磁鋼板は、最終仕上げ焼鈍工程で2次再結晶現象を起させ、鋼板面に{110 }面、圧延方向に<001 >軸をもったいわゆるゴス組織を発達させることにより得ることがてきる。したがって、良好な磁気特性を得るためには、磁化容易軸である<001 >軸を圧延方向に高度に揃えることが重要である。
【0004】
2次再結晶を安定して起させるためには、粒成長を抑制する効果のあるMnS 、MnSeおよびAlN などの析出物やSb、Sn等の粒界に偏析する成分、いわゆるインヒビターが不可欠であり、これらのインヒビターを用い、2次再結晶前の脱炭焼鈍後の平均粒径すなわち1次再結晶粒径を適正化することが重要である。
【0005】
これに関して従来技術では、1次再結晶粒径を適正範囲とし、かつその他の工程条件を規定した手段が多数開示されている。これらは、それぞれ脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径を制御した上でさらに、特開平5-125445号公報、特開平6-145801号公報、特開平6-145802号公報、特開平6-145803号公報、特開平7-300620号公報および特開平7-310124号公報等ではAlおよびN含有量を規定する方法、特開平5-156361号公報、特開平5-295438号公報および特開平6-17129 号公報等では2次再結晶直前までに窒化処理を行う方法、
特開平7-118744号公報ではAlおよびN含有量を規定しかつ2次再結晶直前までに窒化処理を行う方法、特開平6-306474号公報にはMnとSまたはSeの比を規定する方法、特開平7-118745号公報、特開平7-118747号公報および特開平7-138641号等では仕上げ熱間圧延条件を規定する方法、
特開平5-295443号公報、特開平6-179916号公報、特開平6-179917号公報および特開平7-138642号公報等では熱間圧延後の焼鈍条件を規定する方法がそれぞれ提案されている。
【0006】
また、1次再結晶粒径について、特開平6-158165号公報では粒径分布から平均粒径を求める方法、特開平6-33141 号公報、特開平6-73509 号公報および特開平7-268469号公報には1次再結晶粒の変動系数を制御する方法などがそれぞれ提案されている。
【0007】
磁気特性の良好な2次再結晶粒径を発現させるためには2次再結晶直前の1次再結晶粒径に最適な範囲が存在すると考えられる。しかし、この最終仕上げ焼鈍中の2次再結晶直前の1次再結晶粒径を測定する有効な手段が存在しないため、これまでのように脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径をもって制御を行わなければならなくなる。
ところが、1次再結晶粒は最終仕上げ焼鈍中の2次再結晶直前までにかなりの粒成長が起っており、この成長の度合いは最終仕上げ焼鈍条件により変化することが考えられる。
従来技術では、上記のように、脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径の制御と脱炭焼鈍以前の工程条件の制御を組み合わせることにより磁気特性の改善もしくは2次再結晶の安定化を意図した技術が多く開示されていて、1次再結晶粒径を制御し脱炭焼鈍以降の工程条件を最適化する技術は少なく、そのほとんどが、脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径を所定の条件に整えたのちに、仕上げ焼鈍中のN2 分圧調整により窒化制御する方法(特開平5-295438号公報、特開平6- 17129号公報等) や脱炭焼鈍後に窒化処理を行う方法等(特開平7-118744号公報、特開平7-138642号公報等) である。
【0008】
したがって、脱炭焼鈍後の1次再結晶粒が、これらの方法に開示されている適正粒径範囲にある場合でも、2次再結晶不良等が発生し良好な磁気特性が得られない場合が発生するという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明のうち請求項1の発明は、脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径を制御した上で最終仕上げ焼鈍条件を最適化することにより、極めて高い磁束密度が安定して得られるAlN を含有する方向性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的とするものであり、加えて、請求項2の発明は素材にSbを含有させることにより磁束密度のさらなる向上をはかることを目的とするものである。
【0010】
ところで、特開平6-172939号公報には、1次再結晶粒径を制御し、焼鈍分離剤のMgO 中にSb系、B系等の添加物を含有させた場合、添加物が低温溶融型であるか高温溶融型であるかを分けて最終仕上げ焼鈍での昇温速度を限定する技術が開示されているが、これは、より早く確実にフォルステライトの生成を行うことを目的とするものであり、この発明の技術とは本質的に異なるものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、種々実験・検討を重ね、脱炭焼鈍後の鋼板を最終仕上げ焼鈍する際に様々な速度で昇温した結果、脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径が前記従来技術に開示されている適正範囲内にあっても、2次再結晶粒方位の劣化あるいは2次再結晶不良が発生して良好な磁気特性が得られない場合があることを確かめ、良好な2次再結晶を生成させるためには、脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径を制御し調整した上で、最終仕上げ焼鈍時の昇温条件についても厳密に制御する必要があることを新たに見出し、この発明を達成したものである。
すなわち、この発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0012】
1.C:0.0030〜0.090 wt%、
Si:2.0 〜4.5 wt%、
Mn:0.05〜0.15wt%、
Sol.Al:0.0050〜0.040 wt%、
N:0.0010〜0.0150wt%および
SもしくはSeのうちの1種または2種の合計:0.010 〜0.040 wt%
を含有し、残部は Fe および不可避的不純物からなるけい素鋼スラブを素材とし、該スラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径Dを5〜30μm の範囲内に制御し、得られた1次再結晶粒径D(μm)と下記式(1)に基づき、最終仕上げ焼鈍の昇温過程での800 ℃の温度から1100℃の温度までの昇温速度H(℃/h)を定め、この定めた昇温速度で最終仕上げ焼鈍を行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法(第1発明)。
〔記〕
0.6 D+2≦H≦0.4 D+18 ---(1)
【0013】
2.素材が、さらに、Sb:0.005〜0.20wt%を含有することを特徴とする第1発明に記載の磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法(第2発明)。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、この発明を達成するに至った実験例について以下に述べる。
【0015】
実験1
素材として、C:0.068 wt%(以下単に%であらわす)、Si:3.2%、sol.Al:0.028%、N:0.0080%、Se:0.024%、Sb:0.029%およびCu:0.05 %を含有する鋼塊を用意し、該鋼塊を1300℃の温度に加熱したのち熱間圧延し板厚:2.3mmの熱延板とした。ついで1000℃・3分間の熱延板焼鈍後、950 ℃および1100℃の加熱温度でそれぞれ2分間の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延で最終冷延板厚:0.23mmに仕上げたのち、湿水素雰囲気中にて820 ℃および860 ℃の均熱温度でそれぞれ4分間保持する脱炭・1次再結晶焼鈍を行った。
【0016】
得られた各脱炭焼鈍板の平均1次再結晶粒径を光学顕微鏡および画像解析装置で測定した。このとき、中間焼鈍を950 ℃の温度でかつ脱炭焼鈍を820 ℃の温度で行った脱炭焼鈍板の平均1次再結晶粒径D(以下単に粒径Dであらわす)は6.8 μm であり、中間焼鈍を1100℃の温度でかつ脱炭焼鈍を860 ℃の温度で行った脱炭焼鈍板の粒径Dは25.3 μm であった。
【0017】
つづいて、これらの脱炭焼鈍板にそれぞれMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上げ焼鈍を行い製品とした。この最終仕上げ焼鈍は、焼鈍開始から800 ℃の温度までを30℃/sの昇温速度で急速加熱後、800 ℃から1100℃の温度までの昇温速度H(以下単に昇温速度Hであらわす)を5,10, 15, 20, 25および30℃/hとそれぞれ変化させた。
かくして得られた製品の磁束密度B8 を測定した。これらの測定結果を図1に示す。
【0018】
図1は、粒径Dをパラメーターとする昇温速度Hと磁束密度B8 との関係を示すグラフである。
図1から明らかなように、昇温速度Hが変化するにつれて磁束密度B8 が変化し、昇温速度Hがある値で磁束密度B8 が最大となるピークを有することがわかった。しかもB8 が最も高くなる昇温速度Hは、粒径Dが6.8 μm のときは昇温速度Hが11℃/hであり、粒径Dが25.3μm のときは昇温速度Hが23℃/hであることから、最も高い磁束密度B8 を与える昇温速度Hは粒径Dによって異なることが明確になった。また、これに伴い、磁束密度B8 が1.92T を超える高磁束密度が得られる昇温速度Hの範囲も粒径Dにより変化することがわかった。
【0019】
実験2
さらに、1050℃から1150℃の範囲での中間焼鈍温度と780 ℃から880 ℃の範囲での脱炭焼鈍温度を組合せた以外は上記実験1と同様にしてそれぞれ脱炭焼鈍板とし、その結果得られた平均粒径Dが4〜35μm の範囲の脱炭焼鈍板について、昇温速度Hを5,10, 15, 20, 25, 30および35℃/hと変化させて最終仕上げ焼鈍を行いそれぞれ製品とした。
かくして得られた各製品について、それぞれ測定した磁束密度B8 を整理し図 2に示す。
【0020】
図2は粒径Dおよび昇温速度Hに対する磁束密度B8 を示すグラフである。この図において、磁束密度B8 が1.92T を超える磁気特性が良好なものを○印、2次再結晶は起ったがB8 が1.92T に満たないものを△印そして2次再結晶不良となったものを×印としてそれぞれ示した。
【0021】
図2より明らかなように、良好な磁気特性が得られる昇温速度Hの範囲は、粒径Dが5〜30μm の範囲でかつこの粒径Dによって定まり、その昇温速度Hの範囲は、0.6 D(μm )+2≦H(℃/h)≦0.4 D(μm )+18であらわされることがわかる。
【0022】
以上より、最終仕上げ焼鈍中の800 ℃から1100℃の温度までの昇温速度Hについては、最も高い磁束密度B8 が得られる昇温速度Hは脱炭・1次再結晶板の平均1次再結晶粒径Dによって異なること、および、昇温速度Hが0.6 D(μm )+2≦H(℃/h≦0.4 D(μm )+18の範囲において高磁束密度の製品を得ることができることを新規に見い出したものである。
【0023】
つぎに、この発明の方向性電磁鋼板の素材の成分組成や製造方法について、この発明の効果を得るための要件とその作用などについて以下に述べる。
【0024】
この発明の対象とする方向性電磁鋼板の製造においては、従来用いられている製鋼法で得られた溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んで素材とするスラブを得たのち、熱間圧延を行う。
この時の素材の成分組成の限定理由を以下に述べる。
【0025】
まず、2次再結晶を生じさせるためのインヒビターとしてsol.AlおよびNを含有させることを必須とする。
sol.Al:0.0050 〜0.040 %、N:0.0010〜0.0150%
sol.AlおよびNは、AlN として2次再結晶前に微細に分散し、1次再結晶粒の成長に対し強い抑制作用を有する。この作用を発揮させるためにはAl:0.0050〜0.040 %の範囲およびN:0.0010〜0.0150%の範囲で含有させることが必要である。この上限を超えると析出物が粗大化して抑制力が減少し、下限未満ではAlN の量が不足し抑制力が不十分となる。
【0026】
C:0.0030〜0.090 %
Cは、熱間圧延組織の改善に必要な成分であるが、多すぎると脱炭が困難となるため、その含有量は0.0030〜0.090 %の範囲とする。
【0027】
Si:2.0〜4.5 %
Siは、電気抵抗を増大させ鉄損を低減させるために不可欠の成分であるが、多すぎると冷間圧延が困難になるので、その含有量は2.0 〜4.5 %の範囲とする。
【0028】
また、Mn, Sおよび/またはSeをインヒビター形成成分として含有させる。これらはMnS, MnSe 等のインヒビターを形成し、AlN を補強するインヒビターとして有効に作用する。
Mn:0.05 〜0.15%
Mnは、上記の通りインヒビター形成成分として必要であるが、多すぎると溶体化が困難となるため、その含有量は0.05〜0.15%の範囲とする。
SもしくはSeのうちの1種または2種の合計:0.010 〜0.040 %
Sおよび/またはSeは、上記と同様にインヒビター形成成分として必要であり、MnS, MnSe を析出させるために単独または併用のいずれの場合も、前記実験の通りその含有量は0.01〜0.04%の範囲がよい。
【0029】
更に、インヒビター補強成分であるSbを添加することがよく、磁気特性のさらなる向上に有効である。
Sb:0.005〜0.20%
Sbは、粒界に偏析し、最終仕上げ焼鈍中に1次粒成長の抑制力を補うことにより磁気特性をさらに改善させるものと考えられる。ただし多すぎると加工が困難になるので、その含有量は0.005 〜0.20%の範囲がよい。
【0030】
なお、上記成分に加えて、Cu:0.02 〜0.20%、Sn:0.02 〜0.30%、Ge:0.01 〜0.30%、Ni:0.02 〜0.20%およびMo:0.01 〜0.05%のそれぞれの範囲で単独または複合して含有させることも磁気特性を改善する上で好ましい。
【0031】
熱間圧延後は、熱延板焼鈍を行い、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終冷延板厚とする。このとき、最終の冷間圧延下率は80%未満では2次再結晶粒の方位が悪くなり、95%を超えると2次再結晶が困難となるので、その圧下率は80〜95%の範囲とすることが好ましい。
【0032】
ついで脱炭焼鈍を行う。この脱炭焼鈍では、脱炭焼鈍後の粒径Dを5〜30μm の範囲にすることがこの発明の一つの必要条件である。
脱炭焼鈍板の粒径Dが小さくなると粒界面積が増加し粒界エネルギーが増すため、2次再結晶粒が成長する際の駆動力が大きくなり、再結晶しやすくなる。しかしながら、成長しにくいと考えられる2次再結晶粒すなわちゴス方位からのずれが大きい方位の結晶粒の成長が可能となり、鋼板全体の平均結晶方位が悪くなることが考えられ、磁気特性が劣化する。また、粒径Dが大きくなると、逆に2次再結晶粒が成長する際の駆動力が小さくなり、この駆動力の低下により、ある程度の粒径Dまでは結晶方位の悪い成長しにくい2次再結晶粒に対して結晶方位の良い成長しやすい2次再結晶粒の成長が優位になるが、さらに粒径Dが大きくなると2次再結晶が困難になることが考えられる。以上り粒径Dには最適な範囲があり、その範囲が5〜30μm となる。
【0033】
続いて、脱炭焼鈍板にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布したのち、最終仕上げ焼鈍を行う。
この最終仕上げ焼鈍において、800 ℃から1100℃の温度までの昇温速度Hが粒径Dの関係式0.6 D(μm )+2≦H(℃/h)≦0.4 D(μm )+18を満たす範囲に制御することがこの発明の特徴とするところである。
【0034】
最終仕上げ焼鈍での昇温中の800 〜1100℃の温度域にては、前記実験の通り、粒径Dにより適切な昇温速度Hは変化する。粒径Dがおおきくなるほど磁気特性が良好となる昇温速度Hは全体として速くなり、粒径Dとの関係で昇温速度Hが、0.6 D(μm )+2≦H(℃/h)≦0.4 D(μm )+18を満たす範囲で磁気特性が良好となる。
【0035】
このメカニズムは明らかではないが、発明者らは次のように考えている。
2次再結晶直前での1次再結晶粒径には最適な範囲があり、初期の1次再結晶粒径(粒径D)が最終仕上げ焼鈍中の2次再結晶直前までに最適な1次再結晶粒径範囲へと成長することによって2次再結晶が良好に起るものと考えられる。したがって、まず粒径Dが小さいとき、最終仕上げ焼鈍中に最適1次再結晶粒径に成長させるには、適切な温度で十分な時間を要するので、昇温速度Hは比較的緩やかにする必要があり、逆に粒径Dが大きいときは、最適1次再結晶粒に成長するまでの時間が短くなり、昇温速度Hは比較的早くする必要があるものと考えられる。
【0036】
また、最終仕上げ焼鈍中の2次再結晶直前の1次再結晶粒径が最適範囲から外れた場合に磁気特性が劣化する理由については、以下のように推察される。すなわち、最適粒径範囲より小さい場合は、2次再結晶粒成長の駆動力は1次再結晶粒径の逆数に比例するので、駆動力が大きくなり方位がゴス方位(110) 001 からはずれた核の成長する余地を与えてしまい、このため2次再結晶はするが磁束密度は劣化する。逆に最適粒径範囲より大きい場合は、2次再結晶粒成長の駆動力が低下してしまい、2次再結晶させること自体が困難となり2次再結晶不良を起こすことになる。
【0037】
なお、上記の最終仕上げ焼鈍後に、鋼板に張力を付与するコーティングを施してもよく、これにより鉄損が一段と低下し、さらなる低鉄損の製品を得ることが可能となる。
【0038】
【実施例】
表1に示す成分組成を含み残部は実質的にFeよりなる鋼塊を用意した。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1
表1に示した鋼塊符号A,BおよびCを、それぞれ1350℃の温度に加熱したのち熱間圧延し板厚:2.3 mmの熱延板とした。
これらの熱延板にそれぞれ1000℃・3分間の加熱後急冷する熱延板焼鈍を施したのち、板厚:1.6 mmまでの冷間圧延を行い、ついで、1000〜1100℃の温度範囲で2分間の加熱後急冷する中間焼鈍ののち、最終冷延板厚:0.23mmとする冷間圧延をそれぞれ行った。
【0041】
その後、これらの冷延板に脱炭・1次再結晶焼鈍を施すにあたり、均熱温度を700 〜880 ℃の間で変化させ1次再結晶粒径すなわち粒径Dをそれぞれ変化させた。このとき均熱時間は全て4分間とした。また、各脱炭焼鈍板についてそれぞれ粒径Dを測定した。
【0042】
つづいて、これらの脱炭焼鈍板にTiO2を5%添加したMgO を焼鈍分離剤として塗布してから最終仕上げ焼鈍を行いそれぞれ製品とした。この最終仕上げ焼鈍では、800 〜1100℃の温度間の昇温速度Hをそれぞれ5、10、15、20、25および35℃/hとして行った。
【0043】
かくして得られた各製品について、2次再結晶状況および磁束密度B8を調査した。
粒径D、昇温速度H、2次再結晶状況および磁束密度B8の調査結果を表2にまとめて示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示す通り、粒径Dおよび昇温速度Hがこの発明に適合する適合例は、2次再結晶が安定しており、磁束密度B8が1.92Tを超える良好な磁気特性が得られている。
【0046】
実施例2
前掲表1に示した鋼塊符号Aを、それぞれ1350℃の温度に加熱した後、熱間圧延し板厚:2.5 mmの熱延板とした。
これらの熱延板にそれぞれ900 〜1100℃の温度範囲で3分間の加熱後急冷する熱延板焼鈍を施したのち、最終冷延板厚:0.35mmとする冷間圧延をそれぞれ行った。
その後、これらの冷延板に脱炭・1次再結晶焼鈍を施すにあたり、均熱温度を700 〜880 ℃の温度間で変化させ1次再結晶粒径すなわち粒径Dをそれぞれ変化させた。このときの均熱時間はすべて4分間とした。また、各脱炭焼鈍板についてそれぞれ粒径Dを測定した。
【0047】
つづいて、これらの脱炭焼鈍板に TiO2 を5%添加したMgO を焼鈍分離剤として塗布してから最終仕上げ焼鈍を行いそれぞれ製品とした。この最終仕上げ焼鈍では、800 〜1100℃の温度間の昇温速度Hをそれぞれ5,10, 15, 20, 25および35℃/hとして行った。
かくして得られた各製品について、2次再結晶状況および磁束密度B8 を調査した。
粒径D、昇温速度H、2次再結晶状況および磁束密度B8 の調査結果を表3にまとめて示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3に示す通り、1回の冷間圧延により鋼板を製造した場合においても、粒径Dおよび昇温速度Hがこの発明に適合する適合例は、2次再結晶が安定しており、磁束密度B8 が1.92Tを超える良好な磁気特性が得られている。
【0050】
実施例3
前掲表1に示した鋼塊符号D、E、FおよびGをそれぞれ1350℃の温度に加熱したのち熱間圧延し板厚:2.3 mmの熱延板とした。
これらの熱延板にそれぞれ1000℃・3分間の加熱後急冷する熱延板焼鈍を施したのち、板厚:1.6 mmまでの冷間圧延を行い、ついで、1050℃・2分間の加熱後急冷する中間焼鈍ののち、最終冷延板厚:0.23mmとする冷間圧延をそれぞれ行った。
【0051】
その後、これらの冷延板に脱炭・1次再結晶焼鈍を施すにあたり、粒径Dが約12μm (脱炭焼鈍板1)および約25μm (脱炭焼鈍板2)となるように、均熱時間を4分間として均熱温度を780 〜880 ℃の間で変化させた。
【0052】
つづいて、これらの脱炭焼鈍板にTiO2を5%添加したMgO を焼鈍分離剤として塗布してからそれぞれ最終仕上げ焼鈍を施し製品とした。この最終仕上げ焼鈍では、800 〜1100℃の温度間の昇温速度Hを、脱炭焼鈍板1については15℃/h、脱炭焼鈍板2ついては25℃/hとして行った。
【0053】
かくして得られた各製品についてそれぞれ磁束密度B8を測定した。これらの磁束密度B8の測定結果を素材のSb含有量で整理して図3に示す。
図3は素材中のSb含有量に対する磁束密度B8の変化を示すグラフである。
【0054】
図3に示すように、粒径Dおよび昇温速度Hがこの発明に適合し、素材のSb含有量がこの発明の第2発明に限定する範囲にある場合2次再結晶がさらに安定し、磁束密度B8がより良好となる磁気特性が得られている。
【0055】
【発明の効果】
この発明のうち第1発明は、脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径Dを5〜30μm に制御し、得られた1次再結晶粒径D(μ m )と次式
0.6 D(μ m )+2≦H(℃/h)≦ 0.4 D(μ m )+ 18
に基づき、最終仕上げ焼鈍での800 ℃から1100℃までの温度間の昇温速度Hを定め、この定めた昇温速度で最終仕上げ焼鈍を行うものであり、この第1発明によれば、安定した2次再結晶の下で磁束密度の高い方向性電磁鋼板を安定して製造することができる。
また、第2発明は、素材にSbを0.005 〜0.20wt%の範囲で含有させたうえで、上記の条件に制御するものであり、この第2発明によればさらに高い磁束密度を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粒径Dをパラメーターとする昇温速度Hと磁束密度B8との関係を示すグラフである。
【図2】粒径Dおよび昇温速度Hに対する磁束密度B8を示すグラフである。
【図3】素材中のSb含有量に対する磁束密度B8の変化を示すグラフである。
Claims (2)
- C:0.0030〜0.090 wt%、
Si:2.0 〜4.5 wt%、
Mn:0.05〜0.15wt%、
Sol.Al:0.0050〜0.040 wt%、
N:0.0010〜0.0150wt%および
SもしくはSeのうちの1種または2種の合計:0.010 〜0.040 wt%
を含有し、残部は Fe および不可避的不純物からなるけい素鋼スラブを素材とし、該スラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
脱炭焼鈍後の1次再結晶粒径Dを5〜30μm の範囲内に制御し、得られた1次再結晶粒径D(μm)と下記式(1)に基づき、最終仕上げ焼鈍の昇温過程での800 ℃の温度から1100℃の温度までの昇温速度H(℃/h)を定め、この定めた昇温速度で最終仕上げ焼鈍を行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
〔記〕
0.6 D+2≦H≦0.4 D+18 ---(1) - 素材が、さらに、Sb:0.005〜0.20wt%を含有することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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JP33801696A JP4075088B2 (ja) | 1996-12-18 | 1996-12-18 | 方向性電磁鋼板の製造方法 |
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